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博 士 ( 工 学 ) 八 尋 秀 典

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 八 尋 秀 典

学 位 論 文 題 名

銅 イ オ ン 交 換 ゼ オ ラ イ ト を 用 い た 一 酸 化 窒 素 の 新 し い 接 触 除 去 法 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  高 温 燃 焼 反 応 は 人 類 が 化 石 資 源 か ら エ ネ ル ギ ー を 取 り 出 す た め の 最 も 簡 便 な 方 法 で あ り , 種 々 の プ 口 セ ス で 広 く 利 用 さ れ て い る . と こ ろ が , こ の プ ロ セ ス に お い て 発 生 す る 窒 素 酸 化 物 (NOx) が 地 球 環 境 保 全 の 立 場 か ら 極 め て 重 要 な 問 題 と な っ て い る . 即 ち , 排 ガ ス 中 に 含 ま れ るNOx( 大 部 分 は 一 酸 化 窒 素 (NO)) は そ れ 自 体 が 有 害 で あ る ば か り で な く , 酸 性 雨 の 原 因 に も な っ て お り , そ の 防 除 が 急 務 と な っ て い る . こ れ ま で も あ る 程 度 の 対 策 は 実 施 さ れ て い る が , 現 行 の プ ロ セ ス に は 多 く の 問 題 が 残 さ れ て い る . 例 え ば , ア ン モ ニ ア 還 元 プ 口 セ ス の 場 合 , 設 備 費 が 高 い , 高 価 な ア ン モ ニ ア を 消 費 す る , ア ン モ ニ ア 自 身 が 危 険 で あ り 二 次 災 害 を 引 き 起 こ す 恐 れ が あ る , 等 の 欠 点 が あ る . ま た , 三 元 触 媒 法 で は 過 剰 の 酸 素 が 共 存 す る と 脱 硝 効 率 が 大 き く 低 下 す る の が 問 題 で あ る . 現 在 , 新 し いNO除 去 プ 口 セ ス の 実 現 が 望 ま れ て い る .

  こ れ に 対 し , 銅 イ オ ン 交 換 ゼ オ ラ イ ト がNOの 直 接 分 解 反 応 に 低 温 で 活 性 を 示 す こ と が 最 近 報 告 さ れ た . し か し な が ら , こ の 反 応 の 機 構 や ゼ オ ラ イ ト 中 の 銅 イ オ ン の 状 態 な ど 未 解 明 の 部 分 が 多 く 残 さ れ て お り , さ ら に 高 活 性 な 触 媒 を 開 発 す る 上 で 障 害 に な っ て い る . 本 研 究 で は 銅 イ オ ン 交 換 ゼ オ ラ イ ト のNO直 接 分 解 反 応 を 基 礎 的 に 解 明 し , 触 媒 設 計 の た め の 指 針 を 確 立 す る こ と を 目 的 と し て , 銅 イ オ ン の 交 換 挙 動 , 銅 イ オ ン の 存 在 状 態 の 解 明 , 分 解 反 応 の 機 構 に つ い て 検 討 し た . ま た , 本 研 究 の 遂 行 中 に 種 々 の 触 媒 上 で 過 剰 酸 素 共 存 下 , 炭 化 水 素 に よ るNOの 選 択 還 元 が 可 能 で あ る こ と を 見 い 出 し た の で , こ の 新 し いNO除 去 法 に つ い て も 検 討 し た .   第1章 で は ,NOの 特 性 と そ れ に よ る 被 害 , こ れ ま で に 提 案 さ れ て い るNOx除 去 法 の 特 徴 と 問 題 点 , 及 び ゼ オ ラ イ 卜 の 基 本 的 特 性 に つ い て 述 べ た 後 , 本 研 究 の 目 的 及 び 概 要 を 述 べ た ,

  第2章 で は ,NO分 解 反 応 に 高 活 性 な 銅 イ オ ン 交 換 ゼ オ ラ イ ト 触 媒 の 調 製 と 交 換 機

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構 に つい て 検討 し た .母 体 ゼ オライ トとしてZSM―5を用い ,繰り返 し銅イオ ン交換 を 行 う と 銅 イオ ン 交 換率 が100%を超 え る 触媒 が 調製 で き るこ と を見 い 出 した . ま た , 交換 母 液に 塩 基 性化 合 物 ,特 に ,ア ン モ ニア を 添加 す る と1回のイ オン交換 で 銅 イオ ン交換率 が100%を超 える触媒が 調製でき ることが わかった .調製さ れた触媒 の 銅 イオ ン 交換 率 は 交換 母 液 のpHの増 加 と 共に 増 加し た が ,NO分 解活性はpH7.5で 最 大 とな っ た. さ ら に,NaとCuを定量し ,ZSM−5ゼオ ライ卜中 での銅イ オン交換 は 以下の反応で進行すると結論した.

    Cu2+(s)+ 2Na+(Z)ヰH20こCu(OH)゛ ( Z) +H゛ ( Z) +2Na゛ ( s)     Cu2+(s)+H゛(Z)+H20こCu(0H)゛(Z)+2H゛(s)

    (sは溶液中,Zはゼオライト中を示す)

  第3章で は 交換 率 , ゼオ ラ イ ト構 造 が異 な る 種々 の 銅イ オ ン交 換ゼオラ イトのNO 分解 活性につ いて検討 し,銅イ オン交換ZSM―5の活性は 銅イオン交換率がl009¥6を超 え て も増 加 し, 過 剰 に交 換 さ れた銅 イオンも 反応に有 効である こと,ZSM―5構造を も つ 触媒 が 最も 高 いNO分 解 活性 を示す ことを明 らかにし た.また ,化学量 論以上の 銅 イ オン を 担持 し た ゼオ ラ イ トは耐 酸素性に 優れてい ることが わかった .さらに , 活 性 を支 配 する 因 子 につ い て 検討を 行い,触 媒反応に 有効に利 用される 銅イオン の 割 合 がゼ オ ライ ト 構 造お よ び 交換 率 によ っ て 決ま り ,有 効 な 銅イオン1個当たり の 活 性 はAl含 有量 が 減少 す る と指 数関数 的に増加 し,ゼオ ライト構 造に依ら ないこと を明らかにした.

  第4章 で はZSM−5中 に 交 換担 持 され た 銅 イオ ン の状 態 を 電子 ス ピン 共 鳴(ESR), 燐光 ,CO吸着に より測定 し, NO分 解反応との 関係を明 らかにした.イオン交換直後 の触媒を高温排気するとCu2゛がCu゛(あるいはCu゛‑Cu゛)に還元されることが明らか と な った . また ,NO分 解 活 性とCu゛量の 間によい 相関が認 められた こと,お よび,

Cu゛‑Cu゛が生成する温度で最も分解活性が高くナょることから,高温排気時にCu→‑Cu゛ の ダ イマ ー を形 成 す るCu゛ 種がNO分解反 応の活性 点の前駆 体となっ ているこ とを結 諭した.

  第5章 で は ,第4章 の 結 果を 踏 まえ , 赤 外分 光 法(IR)の 測 定 結果 に 基づ き ,NO 分 解 反応 機 構を 提 案 した . 銅 イオン 交換ZSM−5ゼ オライト にNOを室温 で吸着さ せる と,NO゛,NO−,(NO)z―のIR吸収バンドが確認された,その際,CO前吸着実験等から NO゛はCu2゛上に,NO→および(N0)2―はCu゛上に吸着したNO種であることを明らかにし た. NO゛の吸収バンドの強度は時間と共に増加し,NO一および(N0)2−は時間と共に減 少した. NO一および(NO)2−の滅少速度は2次速度式で整理できること,Cu゛に選択的 に吸 着するCOを 前吸着す るとNOーお よび(NO)2―は 生成せず,気相にN2を生じないこ と , 及 び 第4章 の結 果 か ら, 銅 イオ ン 交 換ZSM―5上 のNO分 解反 応 は,2Cu゛+2NO‑*

2Cu2+ ー NO→(‑(N0)2― ) ‑*2Cu゛ +N2+02で 進 行 し て い る と 結 論 し た .   第6章で は 銅イ オ ン 交換 ゼ オ ライ ト を用 い た 新し いNOの 選 択還元 プ口セス につい

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て検討した.本触媒上で反応系に炭化水素と酸素が存在すると 473 −573K という低 温でNO 除去活性が飛躍的に向上することを明らかにした.本反応は耐S02 性に優れ,

NO 分解反応とは対照的であった.また,NO 除去活性とイオン交換率,ゼオライト構 造,交換金属イオンとの関係を検討し,@活性は銅イオン交換率l0096 前後で最大を 示すこと,@銅イオン交換体の場合,ZSM −5 構造のゼオライトが高い活性を示すこ と,◎活性が発現する温度域は異なるが,銅イオン交換体以外にコバルト,銀,亜 鉛イオンおよびプロトン交換体が高い活性を示すこと,を見い出した.この反応は アンモニアを用いない NO の選択還元が可能であることを示しており,ディーゼルエ ンジンあるいは希薄燃焼方式のガソリンエンジン用脱硝触媒として今後の発展が期 待される・

   第7 章は総括で,本研究を総括し,成果の要約を述べた.

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学位論文審査の要旨

学位論文題名

   銅イオン交換ゼオライトを用いた一酸化窒素の新しい接触除去法に関する研究

   化石資源の燃焼は人類の生存のために必要不可欠なプロセスとして広く利用され ている.ところが,このプロセスにおいて発生する窒素酸化物(NOx) が深刻な地球環 境問題を引き起こしている.即ち,高温燃焼中に空気中の窒素と酸素から生成する NOx (大部分は一酸化窒素(NO) )が,人体に有害であるのは勿論,酸性雨の原因にも なっており,その防除が急務となっている.このNOx を除去するために幾っかの対策 がとられているが,現行プロセスには多くの問題が残されている.例えば,アンモ ニア還元法の場合,設備費が高い,高価なアンモニアを消費する,アンモニア自身 が危険であり二次災害を引き起こす恐れがある等の欠点がある.また,三元触媒法 では排ガス中に過剰の酸素が共存すると脱硝効率が大きく低下するのが問題である.

   これに対し,最近,銅イオン交換ゼオライトがNO の直接分解に低温で高い活性を 示すことが報告された.本反応はNO をN2 と02 に直接分解するものであり,除去プロセ スとして最も優れた方法である.しかし,この反応の機構やゼオライト中の銅イ オンの状態などはまだほとんど解明されていない.本研究では銅イオン交換ゼオラ イトの NO 直接分解反応を基礎的に解明し,触媒設計のための指針を確立することを 目的として,銅イオンの交換挙動,銅イオンの存在状態の解明,分解反応の機構に っいて検討している.また,本研究の遂行中に種カの触媒上で過剰酸素共存下,炭 化水素によるNO の選択還元が可能であることを見い出し,この新しいNO 除去法につ いても検討している・

   本論文ではまず,NO 分解反応に高活性な銅イオン交換ゼオライト触媒の調製と交 換機構について検討している.母体ゼオライトとしてZSM −5 を用いると,繰り返し銅 イオン交換により銅イオン交換率が100% を超える触媒が調製できること,交換母液 にアンモニアを添加すると1 回のイオン交換で銅イオン交換率が100% を超える触媒 が調製できることを見出している.調製された触媒の銅イオン交換率は交換母液の pH の増加と共に増加するが,NO 分解活性は pH7.5 で最大となる事を明らかにしてい る.さらに,Na とCu 量の定量的測定から,ZSM ―5 中での銅イオン交換機構を推定して しヽる.

和 恒

夫 浩

正 暢

道 眞

岩 竹

稲 瀬

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

   次 に, 交換 率, ゼオ ライ ト構 造が 異なる 種々 の銅 イオ ン交 換ゼオライトのNO 分解 活性 について検討し,銅イオン交換ZSM ―5 の活性は銅イオン交換率が100% を超えても 増加 し,過剰に交換された銅イオンも反応に有効であること,ZSM ー5 構造をもつ触媒 が最 も高 いNO 分解 活性 を示 すこ とを 明らか にし てい る. 化学 量論以上の銅イオンを 担持 した ゼオ ライ トは 耐酸 素性 に優 れてい るこ とも 見出 して いる.また,活性を支 配す る因 子に つい て検 討を 行い ,触 媒反応 に有 効に 利用 され る銅イオンの割合がゼ オラ イ. ト構 造お よび 交換 率に よって決まり,有効な銅イオン1 個当たりの活性はAl 含有 量が 減少 する と指 数関 数的 に増 加する こと を明 らか にし ている.さらに,本研 究で はZSM ―5 中に交換担持された銅イオンの状態を電子スピン共鳴,燐光,CO 吸着に より 測定 し, NO 分 解反 応と の関 係を 検討し てい る. イオ ン交 換直後の触媒を高温排 気す ると Cu2+ がCu+ に還 元さ れ, Cu+ 量とNO 分解 活性 の間 によ い相関が認められるこ と, Cu+ 一Cu+ が生 成す る温 度で 最も 分解活 性が 高く なる こと を明らかにし,高温排 気時 にCu+ ーCu+ の ダイ マー を形 成するCu+ 種がNO 分解反応の活性点となっていること を結論している.

   続 い て, 赤外 分光 法( IR) により NO 分 解機 構を 究明 し, まず ,NO は銅 イオ ン交 換 ZSM ー5 ゼオライトにNO+ ,NO −,(NO)2 ―の形で吸着し,NO+ はCu 2+ 上に,NO ーおよび (NO)2 ‑ はCu+ 上に吸着していることを明らかにした.さらに,吸着時間と共にNO −お よび (NO)2 ―の吸収バンドの強度が減少し,NO+ が増加すること,この時N2 が気相に生 成することを見出している. NO −および(NO) :―の減少速度が2 次速度式で整理できる こと,Cu+ に選択的に吸着するCO を前吸着させると,NO ―および(NO) :一が生成せず,

N2 も 生 じ な い こ と , 等 を 考 え あ わ せ , 銅 イ オ ン 交 換 ZSM − 5 上 で の NO 分 解 は ,     2Cu++ 2NO   →  2Cu2 十―NO −−う  2Cu+ 十N2 十02

で進行しているとの結論を得ている.

   最 後に ,銅 イオ ン交 換ゼ オラ イト 上で種 カの 共存 ガス の影 響を調べる過程で,炭 化水 素に よる NO の 選択 還元 反応 を新 たに見 出し てい る. 即ち ,本触媒上で炭化水素 と酸 素が 共存 する と473 ―573K と いう低温でNO 除去活性が飛躍的に向上することを明 らか にし た. さら に, イオ ン交 換率 ,ゼオ ライ ト構 造, 交換 金属イオンのNO 除去活 性に 対す る効 果を 検討 し, 活性 は銅 イオン 交換 率100% 前 後で 最大を示すこと,銅イ オン 交換体の場合,ZSM −5 構造のゼオライトが高い活性を示すこと,活性が発現する 温度 域は 異な るが ,銅 イオ ン以 外に もコバ ルト ,銀 ,亜 鉛イ オンおよびプロトン交 換体 が高 い活 性を 示す こと ,を 見い 出した .こ の反 応は ディ ーゼルエンジンあるい は希 薄燃焼方式のガソリンエンジン用脱硝触媒として今後の発展が期待されている.

     以上 ,本 論文 はNO の新 しい 接触 除去法 とし て期 待さ れて いる接触分解法および 炭化 水素 によ る選 択還 元法 につ いて 新知見 を得 たも ので あり ,本論文の成果は環境 化学,触媒化学の進歩に寄与するところ大である・

   よ って ,著 者は 北海 道大 学博 士( 工学) の学 位を 授与 され る資格あるものと認め

る。

参照

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