博 士 ( 工 学 ) 永 田 泰 浩
学 位 論 文 題 名
道 路 画 像 を 利 用 し た 視 界 情 報 シ ス テ ム に 関 す る 実 証 的 研 究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨
北海道の国 道における通行止めの原因は 冬期の約7割、年間の約4割 が吹雪によるものである。
道路利用者は 目的地ヘ安全、確実に到達す るために、道路管理者は道路維持作業や交通規制を的確 に行うために 道路上の吹雪の状況を知りた いと考えている。しかし、吹雪は時空間的教変化が大き い。吹雪によ って道路の視界状況は急激に 変化し、視界不良の区間も刻々と変化していく。吹雪は 短い時間間隔 で広域的に状況を捉えること が必要である。吹雪の状況を計測する観測機器として視 程 計が ある 。北 海 道内 に6000km以上 あ る国 道に対し、 道路沿いに整備されている 視程計は約25 地点である。 広域的を情報とは言えたい。 現在、吹雪の状況を最も広域的に捉えられるのは道路監 視用に整備さ れたCCTVカメラ(閉鎖回路テ レビカメラ)の画像情報で ある。北海道の国道沿いに は1200台以 上の 道 路監 視用CCTVカメ ラ があ り、 その うち105台の カ メラの画像は インターネッ トを通じて15分間隔で提供されている。画 像情報の短所は吹雪の状況 を把握するために目視によ る 評価 が必 要な 点 である。 そのため、多くの地点の状 況を短時間で判断することや1冬期を通じ て24時間連続 的に視界状況を把握すること は難しい。本研究の目的は 画像を目視して吹雪の状況 を評価する方 法に代わり、静止画像内の吹 雪や視界の状況を定量的、自動的に評価できるシステム
( 以 後 、 視 界 情 報 提 供 シ ス テ ム と 称 す る ) を 開 発 す る こ と で あ る 。 本研究は第1章から第8章で構成される。
第1章では、 本研究の背景として、吹雪 による道路障害の発生状況、 吹雪に関する情報へのニー ズと現状を示 している。北海道の国道にお ける通行止めの原因は吹雪が最も多い。時空間的顔変化 が大きい吹雪 に対して、道路利用者や道路 管理者が短い時間間隔で広域的に吹雪の状況を捉えられ る 情 報 を 望 ん で い る も の の 、 現 状 で は 十 分 教 情 報 が 存 在 し 教 い こ と を 指 摘 し て い る 。 第2章では、 吹雪を計測する既存技術に ついてのレビューを行ってい る。スノーパーティクルカ ウンターや視 程計を用いた現地における計 測手法のほかに、気象データを用いた推定によって吹雪 の状況を把握 する方法をレピューしている 。近年は画像から道路障害を捉える手法も研究されてい る。画像から 視界不良を捉える方法につい てもレビューを行い、画像内のエッジングやコントラス ト、光幕に着 目した評価技術の特長を整理 している。
第3章では、 目視に代わって画像情報か ら画像内の視界状況を自動的 に評価する視界情報提供シ ステムを開発 している。視界情報提供シス テムは画像のコントラスト感度を考慮した画像処理を行 い、被提供者がわかりやすい情報(以後、 視界情報 と称する)に変換する画像数値化装置、視界 情報を道路利 用者や道路管理者に提供する 送信装置、処理結果や元画像教どを格納する収集装置で
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構成している。視界情報提 供システムの目標を整理した上で、各装置の要求仕様を定めて視界情報 提供システムを構築してい る。
第4章 で は 、 被 験 者 評 価 実 験 に よっ て視 界情 報 提供 シス テム で用 い る画 像処 理手 法 の評 価 を行 って いる 。画 像 処理 手法 には 人 間の コン トラ スト 感度特性が高い空間周波数帯 域のパワー スベ クト ルに 着目 し た萩 原ら の研 究 結果 を用 いて いる 。画像処理によって得られた 画像評価値 (WIPS:Weighted Intensity of Power Spectra)と、被験者評価実験の結果を比較し、視界情報提供シ ステ ムが自動算出したWIPSが 大きく誼ると画像を目視し た被験者の評価が見やすぃ評 価に極るこ とを示している。
第5章 では 、第3章 、第4章 で開発した視界情報提供シ ステムを用いて、実際に多く の地点の道 路監 視用CCTVカメラの画像か ら、長期間、自動的に視界 情報を推定する視界情報提供 実験を行っ てい る。 視界 情報 提 供実 験は 一般 国 道230号と 一 般国 道231号 の2つの 国道 で行って いる。一般 国道230号中 山峠 付近 は吹 雪 や降 雪に よる 視界 不 良が発 生する山岳区間であり、一 般国道231号 は冬期には日本海側からの 季節風によって猛烈叔吹雪や地吹雪が発生し、視界不良の状況とその発 生区間が急激に変化する路 線である。実験後には視界情報提供システムの評価を行い、画像が取得 でき 教かった場合を除くと、10箇所以上の地点の画像か ら15分間隔で、長期間、安定 して視界情 報を推定していたことを示 している。
第6章では、視界情報提供 実験時の視界情報について 評価を行っている。被験者による評価実験 結果のほか、気象データや 衛星画像を用いて視界情報を評価している。被験者評価結果との比較で は、 信頼性評価手法であるク ロンバックのa係数を用い、0.8を越えると信頼性が高い と評価され るク ロンバックのa係数が0.877と高いことを示している 。気象データによる評価では 、吹雪の発 生 に つ をが る 強風 や降 雪が 計 測さ れた 際に 視界 情 報が 視界 不良 を示 す こと を示 唆し て いる 。 第7章 では 、第3章 、第4章 で構築した視界情報提供シ ステムを用いた視界情報の予 測手法を開 発し てい る。 予測 手 法と して 重回帰モデルとカルマンフ アルターを用いた結果、1時 間前のWIPS と風速、気温、降雪量の気 象予測データを用いたカルマンフィルターによる予測は変化する視界情 報に対する追従性が高いこ とを確認している。しかし、視界状況が急変する事例については両手法 では予測が難しかったこと も指摘している。
第8章では、本研究の成果 をとりまとめるとともに、 今後の課題を記している。成果は視界情報 提供システムを開発したこ と、視界情報提供実験を通じて視界情報提供システムと視界情報の評価 を行ったこと、視界情報の 予測手法の開発を行いその評価を行ったことである。一方、夜間の画像 に対する視界情報の算出方 法、静止画像の取得の安定性と取得時間の短縮、視界状況急変時の視界 情報予測手法次どを課題と して指摘している。
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学位論文審査の要旨
主査 教授 萩原 亨 副査 教授 加賀屋誠一 副査 教授 中辻 隆
副査 教授 長谷山美紀(情報科学研究科)
学 位 論 文 題 名
道路画像を利用した視界情報システムに関する実証的研究
本研 究では、吹雪の状況を広域的かつ長時間に渡って捕えることを目的とし、道路画像 を 用い た視 界情報提供シス テムの可能性に着目している。吹雪は時空間的を変化が 大き い。吹 雪によって道路の視界状況は急激に変化し、視界不良の 区間も亥U々と変化してい く。短 い時間間隔で広域的に吹雪の状況を捉えることが、道路交通の障害を軽減するとき 必 要と をる 。 北海 道の 国道 沿い には1200台以 上の 道路 監視 用CCTVカメラがあり、 それ らのカ メラから送られてくる映像を目視によって吹雪状況が評価されている。広域的に吹 雪を把 握することは可能と顔っているが、目視であることから、多くの地点の状況を短時 間に判 断すること、一冬期を通じて連続的に同じ評価基準で視界状況を把握することが難 しい。 そこで、本研究では、目視による評価に代わり、静止画像から吹雪や視界の状況を 定量的、自動的に評価できるシステム(以後、 視界情報提供システム と称する)を実現 した。
本 研 究 は 第 1章 か ら 第8章 で 構 成 さ れ る 。 以 下 に 各 章 の 要 旨 を 示 す 。 第1章では、本研究の背景として 、吹雪による道路障害の発生状況、吹雪に関する情報 へのニ ーズと現状を示した。北海道の国道における通行止めの原因は吹雪が最も多い。時 空間的 橡変化が大きい吹雪に対して、道路利用者や道路管理者が短い時間間隔で広域的に 吹雪の 状況を捉えられる情報を望んでいるものの、現状では十分を情報が存在しをいこと を明ら かにした。
第2章では、吹雪を計測する既存 技術についてのレビューを行った。スノーパーティク ルカウ ンターや視程計を用いた現地における計測手法のほかに、気象デニタを用いた推定 によっ て吹雪の状況を把握する方法をレピューした。画像から視界不良を捉える方法につ いても レビューを行い、画像内のエッジングやコントラスト、光幕に着目した評価技術の 特長を 整理した。
第3章 では 、目 視に 代わ って 画像 情報 から画像内の視界状況を自動的に評価する 視界 情報提 供システムを開発した。視界情報提供システムは、視界情報提供システムの目標を 一42ー
整 理した上 で、各装 置の要求仕様を定めて構築された。被提供者がわかりやすい情報f以 後、 視界情報 と称する)に変換する画像数値化装置、視界情報を道路利用者や道路管理 者 に 提 供す る 送 信装 置 、 処理 結 果 や元 画 像 をど を 格 納す る 収 集 装置 で構成 された。
第4章で は、被験 者評価 実験によ って視 界情報提 供シス テムで用 いる画像処理手法の 評価を行った。画像処理手法には人間のコントラスト感度特性が高い空間周波数帯域のパ ワースベクトルに着目した萩原らの研究結果を用いた。画像処理によって得られた画像評 価値(WIPS:Weighted Intensity of Power Spectra)と、被験者評価実験の結果を比較し、視 界 情 報 提供 シ ステム が自動算 出したWIPSが大き くをると 画像を目 視した 被験者の 評価 が見やすい評価に橡ることを示した。
第5章で は、第3章、 第4章 で開発し た視界 情報提供 システ ムを用い て、実際に多くの 地 点 の 道路 監 視用CCTVカ メラの 画像から 、長期 間、自動 的に視界 情報を 推定する 視界 情幸&提供実験を行った成果を示した。視界情報提供実験は一般国道230号と一般国道231 号 の2つ の国道で 行った。実験後には視界情報提供システムの評価を行い、画像が取得で き をかった 場合を除 くと、10箇所以上 の地点 の画像から15分間隔で、長期間、安定して 視界情報を推定できた。
第6章で は、視界 情報提供実験時の視界情報について評価を行った。被験者による評価 実験結果のほか、気象データや衛星画像を用いて画像処理により提供された視界情報を評 価した。被験者評価結果との比較では、高い信頼性を得た。気象データによる評価では、
吹雪の発生につをがる強風や降雪が計測された際に視界情報が視界不良を示すことを示唆 できた。
第7章で は、第3章、 第4章 で構築し た視界 情報提供 システ ムを用い た視界情報の予測 手 法を開発 した。予 測手法として重回帰モデルとカルマンフィルターを用いた結果、1時 間 前のWIPSと風 速、気 温、降雪 量の気 象予測デ ータを用いたカルマンフィルターによる 予測は変化する視界情報に対する追従性が高いことを確認した。しかし、視界状況が急変 する事例については両手法では予測が難しかった。視界情報の入力間隔、予測手法をどに おいて今後の改良が必要とをった。
第8章 で は 、 本 研究 の 成 果 をと り ま とめ る と とも に 、 今後 の 課 題を 記 し てい る 。 これらを要するに、本研究は吹雪時の視界情報提供に関する新しいシステムを開発し、
視程障害による防災技術の高度化を行う上で有益を知見を得たものであり、交通工学、地 域計画学に貢献するところ大をるものがある。よって、著者は北海道大学博士(工学)の 学位を授与される資格あるものと認める。
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