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博士(工学)永田衞男 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)永田衞男 学位論文題名

光合成膜系ポルフイリン・キノン誘導体の      組織化と電子伝達

学位論文内容の要旨

  本研 究は 、光 合成 膜中 で行 われて いる 効率 の良 いエネルギー移動および電子 伝 達シ ステ ムの 構築 を目 的と して、 光合 成膜 系の ポルフアリン・キノンを脂質 二 分子 膜お よび 光収 穫系 タン パク質 を用 いて 、距 離と配向、酸化還元電位を制 御 して 電極 上に 組織 化す るこ とによ り、 その 効率 の良い電子伝達をモデル的に 検討したものである。

  第一 章で は、 光合 成膜 など の生体 エネ ルギ ー変 換膜における、エネルギー変 換 の重 要性 と問 題点 を提 起し た。光 合成 膜の 効率 のよい電子伝達が、弱い分子 間 の相 互作 用に よる 自己 組織 化構造 によ り、 その 機能が発現しているかについ て 現 在 解 明 さ れ て い る 部 分 を 解 説 し 、 本 研 究 の 目 的 を 述 べ た 。   第二 章で は、 光合 成膜 での キノン プー ルの モデ ル化を行うため、脂質二分子 膜 環境 にお ける キノ ン誘 導体 の電子 伝達 を検 討し た。生体系のユビキノンなど は 疎水 的な イソ プレ ノイ ド鎖 により 、膜 中に 安定 に存在しているため、アルキ ル スペ ーサ ーを 介し てり ン脂 質と結 合し たナ フト キノンおよびアントラキノン 誘 導体 を合 成し た。 これ らの キノン 誘導 体は りポ ソーム膜および脂質二分子膜 中´に安定に導入でき、キノンプールのモデルとして有用であった。脂質二分子 膜 環境 下で のキ ノン 誘導 体の 酸化還 元挙 動を 、膜 被覆電極を用いて、サイクリ ックボルタンメトリー(cyclic voltammetry,CV)で検討した。膜中でのキノン誘導 体 は、 膜を 構成 する りン 脂質 膜のゲ ル― 液晶 相の 相転移温度およびpHに依存し た 。キ ノン 誘導 体は 膜の 疎水 場にあ って も、 酸性 、中性付近で二電子二プロト ン 反応 をし てお り、 塩基 性で 二電子 一プ ロト ン反 応をして、その酸化還元電位 がpHに 依存 する こと が分 かっ た。脂 質二 分子 膜中 でのキノン誘導体の電子伝達 は 電子 とプ ロト ンの ホッ ピン グを含 んだ キノ ン誘 導体の拡散に律遠されると示 唆された。

  第三 章で は、 自己 組織 化キ ノン単 分子 膜を 組織 化することにより、キノン―

電 極問 の距 離を 制御 した キノ ン誘導 体の 電子 伝達 を検討した。キノン誘導体と し て、 長さ の異 なる アル キル スペー サー を介 して ジスルフィドと結合したナフ トキノンおよびアントラキノン誘導体を合成した。自己組織化法として、金(Au) と ジス ルフ アド の特 異的な吸着を用いた自己組織化単分子膜(S」心Dを組織化し た 。二 電子 二プ ロト ン反 応を 行うキ ノン 自己 組織 化単分子膜においても、キノ ン―電極問の距離と電子伝達速度は比例関係が成り立っことが分かった。また、

電極界面にキノン分子が固定化された系であるため、キノン/ヒドロキノン反応 の pH依 存 性 か ら 、 そ の 反 応 ス キ ー ム が 異 な る こ と が 示 唆 さ れ た 。   第四 章で は、 ポル フア リン 色素を 含む 脂質 二分 子膜電極を用いて光―電流変 換 モデ ルを 構築 した 。脂 質二 分子膜 中で の光 電流 測定から、天然に見られるMg

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やZnを中 心金 属に 持っ もの が、 光電 流変 換能 が高 いこ とが確認できた。この方 法 は、簡 単に 電極 を作 成で き、 生体 類似 の膜 環境 での ポルフィリンのCV応答お よ び光電 流応 答が 観測 でき るた め、 様々 なポ ルフ ィリ ンの膜中でのエネルギー 準位を求めることができた。

  第五章 では 、光 合成 で高 効率 に光 エネ ルギ ー収 穫お よび伝達機能をもっタン パ ク質― 色素 複合 体の 脂質 二分 子膜 中へ の組 織化 およ び、その複合体の動的な 構 造変化 とシ ンク ロナ イズ した 電子 伝達 との 相関 にっ いて電極基板上での光電 流 応 答 か ら 明 ら か に す る こ と を 目 指 し た 。 光 収 穫 系 タ ン パ ク 質(R.rubrum LH‑a, ‑p)を用 いてBChlaおよ びZn置換 した クロ ロフ イル色 素(ZnBChla)の組 織 化 を行っ た。 脂質 二分 子膜 にLH複合 体を 導入 する こと により、室温でも安定な LH複 合 体 を 再 現 で き た 。LH複 合体 の 脂 質二 分子 膜中 に導 入は 、膜 の構 造変 化 と 密 接 な 関 係 が あ っ た 。Zn‑BChlaはLH‑a単 独系 にお いて もLH複合 体類 似の 複 合 体を形 成す るこ とが 認め られ た。 さら にそ れら を電 極基板上に組織化しても LH複合体 はそ の形 態を 保っ てお り、 光電 変換 能を 示し た。その光電変換能は色 素 、LH複 合体 の構 造な らび にそ れと 連動 した 脂質 二分 子膜の構造変化に大きく 依存することが認められた。

  第6章 では 、兄sphaeroides LHipをモデル化した、末端にチオール基をもっタ ン パク質 とポ ルフ ィリ ン色 素複 合体 を距 離と 配向 を規 制して電極上に組織化す る こ と を 目 的 と し た 。ZnMPMMEお よ び そ の ダ イ マ ー 誘 導 体 に 関 し て はRb.

sphaeroidesのLHpモデルタンパク質による配向規制された組織化が認められた。

そ れぞれ の複 合体 は金 電極 上に 単分 子膜 を形 成す るこ とができ、色素の距離と 配向を規制したタンパク質‐色素複合体の自己組織化単分子膜電極ができ、光電 流応答を示した。

  以上の こと から 光合 成膜 にお ける 効率 のよ い光 収穫 系、光励起ならぴに電子 伝 達のメ カニ ズム を解 明す るだ けで なく 、様 々な 機能 性電極を組織化すること が できた 。こ れら の知 見に より 、生 体材 料を 用い て優 れた機能をもつ超微細の デ バイス の開 発が 可能 にな る。 この 光合 成の 機能 を持 つ光合成材料を用いて、

生 体類似 のエ ネル ギー 変換 膜を 構築 する こと によ って 、諸種の光合成機能をも っ ナノレ ベル の超 微細 材料 の開 発が 期待 でき るで あろ う。特に、近年のバイオ サ イエン スの 急展 開で 、さ まざ まな 生物 のゲ ノム が明 らかにされ、生物と自然 の 考え方 が急 速に 変化 しつ っあ る。 生体 はタ ンパ ク質 や核酸などの物質から成 り 立って おり 、す でに 遺伝 子操 作や 化学 的手 法で これ らの物質の加工技術もで きつっある。

  さ ら に 今 後 、LH1のX線 結 晶 構造 解 析 、超 高速 な螢 光寿 命測 定や 理論 的な 解 析 などが 分か って くる であ ろう 。本 研究 の組 織化 法は 脂質二分子膜、LHタンパ ク 質、色 素な どの 光合 成材 料を 様々 組み 合わ せる こと ができるため、ナノレベ ル(分子単位)での光合成の効率的なエネルギー変換の解明のみならず、超高速な 光 エネル ギー 移動 を使 った 新し い分 子素 子へ の発 展が 期待される。LH複合体は 光 合成の 初期 過程 で効 率よ く太 陽の 光エ ネル ギー を集 めて反応中心ヘ移動させ て いる。 反応 中心 の配 向を 制御 する タン パク 質で あるPufXなどの存在が確認さ れ てきて 、反 応中 心な どを 第五 章で 述べ た光 収穫 系複 合体膜ヘ生体と同様に再 構 成でき る可 能性 があ るた め、 効率 よく 集め た光 エネ ルギーから電子エネルギ ー を効率 よく 取り 出す こと がで きる 。さ らに 、第 二章 で述べたキノンプールの モ デルと 組み 合わ せる こと によ り、 ポル フィ リン ・キ ノンを用いた光合成膜を モデル化した太陽電池としての活用も期待できる。

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学位論文審査の要旨

主査   教授    大塚俊明 副査   教授    瀬尾眞浩 副査   教授    高橋英明

副査   教授   南後    守(名古屋工業大学工学部)

     丶

学 位 論 文 題 名

光合成膜系ポルフイリン・キノン誘導体の      組織化と電子伝達

  本 研 究 は 、 光 合 成 膜 伝 達 シ ス テ ム の 構 築 を 二 分 子 膜 お よ ぴ 光 収 穫 御 し て 電 極 上 に 組 織 化 検 討 し た も の で あ る 。   第 一 章 で は 、 光 合 成 換 の 重 要 性 と 問 題 点 を 間 の 相 互 作 用 に よ る 自

中 で 行 わ れ て い る 効 率 の 良 い エ ネ ル ギ ー 移 動 お よ び 電 子 目 的 と し て 、 光 合 成 膜 系 の ポ ル フ ア リ ン ・ キ ノ ン を 脂 質 系 タ ン パ ク 質 を 用 い て 、 距 離 と 配 向 、 酸 化 還 元 電 位 を 制 す る こ と に よ り 、 そ の 効 率 の 良 い 電 子 伝 達 を モ デ ル 的 に 膜 な ど の 生 体 エ ネ ル ギ ー 変 換 膜 に お け る 、 エ ネ ル ギ ー 変 提 起 し た 。 光 合 成 膜 の 効 率 の よ い 電 子 伝 達 が 、 弱 い 分 子 己 組 織 化 構 造 に よ り 、 そ の 機 能 が 発 現 し て い る か に つ い て 現 在 解 明 さ れ て い る 部 分 を 解 説 し 、 本 研 究 の 目 的を 述べ た。

  第 二 章 で は 、 光 合 成 膜 で の キ ノ ン プ ー ル の モ デ ル 化 を 行 う た め 、 膜 環 境 に お け る キ ノ ン 誘 導 体 の 電 子 伝 達 を 検 討 し た 。 ア ル キ ル ス ペ し て り ン 脂 質 と 結 合 し た ナ フ ト キ ノ ン お よ び ア ン ト ラ キ ノ ン 誘 導 体 脂 質 二 分 子 膜 環 境 下 で の キ ノ ン 誘 導 体 の 酸 化 還 元 挙 動 を 、 脂 質 二 分 極 を 用 い て 、サ イク リッ クボ ルタ ン メト リー(cyclic voltammetryCV) 脂 質 二 分 子 膜 中 で の キ ノ ン 誘 導 体 の 電 子 伝 達 は 電 子 と プ ロ ト ン の ホ 含 ん だ キ ノ ン 誘 導 体 の 拡 散 に 律 速 さ れ る と 示 唆 さ れ た 。   第 三 章 で は 、 キ ノ ン 単 分 子 膜 を 組 織 化 す る こ と に よ り 、 キ ノ ン ― 離 を 制 御 し 、 キ ノ ン / ヒ ド ロ キ ノ ン 酸 化 還 元 系 と 電 極 間 の 電 子 伝 達 と 水 溶 液pHの 関 数 と し て 検 討 し た 。 キ ノ ン 誘 導 体 と し て 、 長 さ の 異

脂 質 二 分 子 ー サ ー を 介 を 合 成 し 、 子 膜 被 覆 電 で検討した。

ッ ピ ン グ を 電 極 間 の 距 速 度 を 距 離 な る ア ル キ ル ス ベ ー サ ー を 介 し て ジ ス ル フ ィ ド と 結 合 し た ナ フ ト キ ノ ン お よ び ア ン ト ラ キ

フ ィ リ ン の 膜 中 で の エ ネ ル ギー 準 位を 求め るこ とが でき た。

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  第 五章で は、 光合 成で 高効 率に 光エ ネルギー収穫および伝達機能をもっタン パク 質一色 素複合体(LH複合体)の脂質二分子膜中への組織化を行った。その複 合体 形成と 電子 伝達 との 相関 にっ いて 電極基板上での光電流応答から明らかに した 。光収 穫系タンパク質(R.rubrum LH‑a,‐めを用いてZn置換したクロロフイ ル色 素(ZnBChla)の組織化を行った。LH複合体を脂質二分子膜に導入することに よ り、 安 定 なLH複 合 体 を 再現 でき た。 さらにLH複 合体 ・脂 質二 分子 膜系 修飾 電極は、LH複合体光吸収に基づく光電変換能を示した。その光電変換能は色素、

LHタ ンパク 質お よび 脂質 二分 子膜 の構 造に大きく依存することが認められた。

  第六章では、R.sphaeroides LHipをモデルとした、末端にチオール基をもっタ ンパ ク質と ポル フィ リン 色素 との 複合 体を電極上に組織化した。複合体ではタ ンパ ク質と ポル フィ リン 色素 間の 軸配 位と水素結合を使って、距離と配向を規 制し た。電 極上 に組 織化 した 。Znメソ ポルフィリン(ZnMP)およびそのダイマー 誘導 体はRb. sphaeroidesのLHpモ デル タンパク質による配向規制された組織化 が認 められ た。 その 規制 され たタ ンパ ク質‑ ZnMPの複合体は金電極上に単分子 膜 を 形 成 す る こ と が で き 、 こ の 単 分 子 膜 被覆 電 極 は 光 電 流 応 答 を 示 し た 。   第 七 章 で は 本 研 究 で 得 ら れ た 結 果 を 総 括 し 、 結 論 を 述 べ て い る 。   以上のことから光合成膜における効率のよい光収穫系、光励起ならびに電子伝 達の など、 様々 な機 能電 極を 組織 化す ることができた。これらの知見により、

生体 モデル 化合 物を 用い て優 れた 機能 をもつ超微細のデバイスが可能になる。

  これを要するに、著者は、生体エネルギー変換膜中で中心的に働く金属ポルフ ィリ ンおよ ぴキ ノン 化合 物を 人工 的に 再構成して、その効率良い電子伝達機構 に関して新知見を得たものであり、生体関連工学への寄与が大なるものがある。

よって、著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認 める。  ´

参照