博 士 ( 医 学 ) 渡 邊 環
学位論文題名
フット同種左肺移植の旧姓拒絶反応時における 移植片への反応細胞の接着分子発現に関する研究
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
研究目的
臓器 移植 にお ける 急性 拒絶 反応 機構 の解明は,免疫抑制療法の開発や拒 .
絶反 応の 早期 診断 を試 みる 上で 重要 な課 題である.近年心移植や腎移植にお いてICAM ‑ 1/LFA ‑1,CD28.CTLA4/B7などの接着分子が急性拒絶反応に関与し て重 要な 役割 を果 たし てい るこ とが 明ら かとなり,これらの接着分子に対す るモ ノク ロー ナル 抗体 を用 いた 拒絶 反応 の抑制効果が報告されている.しか しな がら 肺移 植で は, その 拒絶 時に おけ る接着分子の役割りはいまだ十分な 研究 がな され てい ない .そ こで 純系 ラッ トを用いた左肺移植手技を導入し,
同種 肺移 植の 急性 拒絶 反応 時に おけ る移 植片および移植片への浸潤細胞にお け る 接 着 分 子 の 発 現 を 免 疫 組 織 化 学 的 手 法 に よ り 経 時 的 に 検 索 し た ・
実験材料および方法
1.ラ ット同 所性 左肺 移植 手技
1). 動物8 ‑10週齢の雄のラット(WKAH/Hkm:RT̲lK,F344/NSlc:RT‑lIvl)を 用い た.
2).麻 酔 エ ン フ 少 レ ン 吸 入 麻 酔 後pentobarbitalsodium 5mg/100gを 腹 腔 内 投 与 し , 続 い て 気 管 内 挿 管 に よ る 人 工 呼 吸 下 に 全 身 麻 酔 と し た . 3), 移植手 技ま ずrecipientを顕 微鏡下 に左 第4肋間 開胸 し左 肺門部 の結 合組 織を 剥離 した のち 左肺 を摘 出し た.donorは開 胸後heparinlOOOU/lkgを
心 腔内 注入 した 後recipientと 同様 に左 肺を 摘出した,吻合は肺静脈、主気管 支 ,肺 動脈 の順 番に9‑0ナ イロ ン糸 でそ れぞ れ連続縫合した.特に気管支の吻 合 はtelescopic型に 吻合 した. 移植 肺の 換気 は気 管支 吻合 が完 了し てす ぐに 開 始し た.CP2500mgを生 理食塩 水20mlに 溶か して 胸腔 内に 散布 した 後, 胸壁 は 絹 糸 で3層 に 閉 鎖 し た . ラ ッ ト が 完 全 に 覚 醒 し た こ と を 確 認 して 気 管 内 チ ュ ー ブ を 抜 去 し た . 術 後 は ス テ ロ イ ド , 抗 生 物 質 は 使 用 し なか っ た . 2.術後検査項目
1).経時的胸部X線写真
移 植 翌 日 か ら 連 日 , 無 麻 酔 で 胸 部 単 純X線 撮 影 を お こ な っ た . 2).移植肺の組織学的検索 ,
i). H‑E染 色術 後 経 時 的 に 屠殺 して 移植 肺を 摘出 し48時間 ホル マリ ン固 定 後5 umの切片を作製しH‑E染色を施行した.
11).免疫組織染色
a)..抗体:一次抗体(生化学工業,To kyo.Japan):すぺてマウス抗ラツ ト リ ン パ 球 モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗体 で, 抗CD5抗体(Rl‑ 383), 抗CD54抗 体(1A‑
29),抗 マク ロフ ァー ジ・ 好中 球抗 体(R2‑ 1A6a) ,抗CD11d抗体(WT.1) ,抗 CD18抗体くWT.3)を用いた.二次抗体はビオチン標識ヤギ抗マウスIgG+IgA+lgM
(二チレイ,Tokyo,Japan)を用いた.
b).凍結切片の作製と染色移植肺を摘出後直ちに0.C.T.包埋液で包埋し 液 体 窒 素 で 凍 結 さ せ た .6 umの 切 片 を 作 製し ア セ ト ン 固 定 を10分間 行な っ た 後 , 内 因 性 ベ ル オ キ シ ダ ー ゼ 除 去を 行 な い , 一 次 抗 体 を4℃ で12時 間 反 応 さ せ た . 二 次 抗 体 を ラ ッ ト 正 常 血 清 と1:1の 割 合 で 混 合 させ た後 室温 で 10分間反応させた.発色はDABを用いて行なった.
LFA ‑1陽 性細 胞の 判定 は,各 切片 につ き光 学顕微鏡下に400倍の倍率で10視 野 を無 作為 に選 び, 周囲 に5個 以上 の陽 性細 胞を認める血管の数を算定し、そ の 平 均 が0の も の を ー と し ,1ー5個 を 十 ,5ー10個 を 十 十 ,10個以 上 を 十 十十とした.
結果
1.移植成績
施 行 した48例の 移 植 手術 中,32例が予定 の屠殺目 まで生存 した.感 染例は 組織学的に評価し排除した,
i).同 系移植:Donor.RecipientがともにF344/NSlcの同系移 植で成功 例6例 が 得ら れ た. 術 後7日 まで 胸 部X線写真 上全例移 植肺の良 好な含気 が認められ た .術 後7日 目の 移 植 肺の 組 織像 は 全 例正 常 なラ ッ ト にみ られ る所見とほ ぼ 同様であった・
11).同 種移植:WKAH/HkmをDonorとし.F344/NSlcをRecipientとした組み合わ せ で26例の 成 功 例を 得 た. 胸 部X線写真 では術後4日目まで は同系移 植と同様 に 移 植 肺 の 良 好な 含 気 を認 め た が, 術 後5日目 よ り 浸潤 影 が出 現 し7日 目に ´.
は移植 肺は完全に 含気を失 った.H‑E染 色による 移植肺の 組織学的 評価では,
術 後1・2目 に はvenuleを 中心 とした 単核細胞 浸潤perivascularinfiltration を 散在 性 に認 め(Gradel),2‑3日目 にtま こ の所 見 の頻 度 が増し てさらに こ れ らの 血 管にEndolithialitisを認 め(Grade2),4‑6日目 では 浸潤細胞 はそ の 数を 増 してvenuleの閉 塞 もみら れ肺胞へ の浸潤も ときに認 められた(Grade 3).7日 以 降は 単 核 球浸 潤 は問 質 , 肺胞 腔 に多 数 み られ と きに肺 胞壁の破壊 像 を認 め た(Grade 4).術 後 日数 と 拒 絶の 程 度の 関 係 はF344/NSlcをDonorと し , WKAH/HkmをRecipientと し た 組 み 合 わ せ で も 同 様 で あ っ た ,
,2.免疫染色
同種肺 移植例にお いて経時的に免疫染色を施行した.抗CD5抗体(Rl ‑ 383)に よ る染 色 では 浸 潤 単核 細 胞の ほとん どが陽性 であった .抗マク ロファージ ・ 好中球 抗体(R2 ‑ 1A6a)染色ではGrade2‑3の時期にvenule周囲の浸潤単核細胞に 限局し た染色像が 認められ た.抗CD54抗 体(1A‑ 29)染色では肺胞上皮細胞に染 色が認 められ,経 時的変化 を認めな かった. 抗CD11 抗体くWT.1),抗CD18抗 体(WT.3)染色では共にve nule周囲に浸潤した単核細胞に局在して陽性細胞を 認め,Grade2‑3で最も強く染色された.
要約と考察
1. 同 系 移 植 の 成 績 よ り , 手 術 手 技 の 安 定 性 が 確 認 さ れ た . 、2.前記 の同種移 植の組み 合わせで は,急性拒 絶反応は 手術翌日より漸次 進 行 し 術 後 7日 目 ま で に 肺 胞 壁 の 破 壊 を 伴 う 像 が 完 成 し た . 3. 胸 部X線 写真 上,移 植肺に浸 潤影が認 められる 以前に組 織学的には すで に移植肺 への単核 細胞浸潤 を認めた .
4. 組織 学 的な 拒 絶 反応 の 変 化は 一 定の 進 行 形式 を とり ,4つ の 時期 に 分 類可 能 で それ ぞ れの 段階の組 織学的特 徴はヒト の場合の 急性拒絶程 度分類と よく一致 した.こ れよりこ のラッ. トの組み合わせはヒト肺移植急性拒絶反応 の検索に 適当なモ デルであ ると考え られた・
5.抗CD5抗体(Rl ‑ 383)による染 色結果は移植肺への浸潤単核細胞の多数を T細胞が占 め拒絶の 程度と相 関してそ の数が増加 すること を示した .浸潤単核 細胞の由 来は約10% が移植肺 由来で約9096が宿主由来であることが報告されて いる.ま た拒絶反 応の初期 から中期 にかけてはCD4陽性細胞 の割合が高く拒絶 が進行す るにつれ てCD8陽性細 胞の比率 が増すこと がすでに 報告されている.
6.R2 ‑ 1A6aによる 染色の結 果はこの抗体陽性の細胞が肺胞マクロファージ 以 外 の マ ク ロ フ ァ ー ジ も し く はdendritic cellで あ る こ と を 示 唆 し た . 7.ICAM ‑1は肺胞 上皮細胞 に発現し ており,急性拒絶反応時にLFA・1陽性細 胞のター ゲットと なってい る可能性 が示唆され た.
8.LFA.1の発 現はvenule周囲 への浸潤 単核細胞 に局在して 認められ,その 発現 の ピ ーク がGrade2‑3であ りGrade4ではす でに発現 が認めら れなかっ たこ とより, 急性拒絶 反応初期 から中期 段階でのLFA.1分子のvenule周囲での急性 拒絶反応 への関与 が示唆さ れた.
学 位 論文 審 査 の 要旨
学 位 論 文 題 名