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博 士 ( 工 学 ) 芝 清 之 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 工 学 ) 芝    清 之

学 位 論 文 題 名

低 放 射 化 フ ェ ラ イ ト 鋼 の耐 照 射 特 性と 核 融 合 ブ ラ ン ケ ッ ト 設 計 指 針 に 関 す る研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

核融合炉は人類究極のエネルギー源として期待され、2030年に発電実証炉の建設が計画さ れている。しかし、商用発電までには解決すべきいくっかの課題があり、核融合炉用構造 材 料の開発 もそのーっである。最有カの方式であるトカマク型核融合炉では、D‑T反応の 14MeV中性子 から熱エネルギーと同時に燃料のトリチウムを得る。この熱エネルギー取り 出しとトリチウム増殖を行うのがブランケット部であり、特にこの第ー壁構造材料はプラ ズマ側からの多量の中性子による照射損傷を受けるが、このような過酷な環境で使われる 実用材料は現存しなぃ。また、高工ネルギー中性子は材料に照射損傷を与えるだけでなく、

核 反応によ りHやHeなどの ガス元素 を生成 したり、 材料を 放射化させたりする。このよ うな状況から、過酷な環境に耐える低放射化フェライト鋼が開発されてきた。本研究では この低放射化フェライト鋼の機械的性質の耐照射性について、照射温度や照射量の挙動か ら明らかにすることを目的とした。また、研究結果を反映した材料の最適化から、より高 靭 性 の 材 料 を 開 発 し 、 照 射 特 性 を 含 め た ブ ラ ン ケ ッ ト 設 計 へ の 指 針 を 得 る 。 第1章では、核融合炉材料、特にブランケット構造材料の研究;開発の背景と課題につい て 概説し、 本研究の 目的に ついて述 べた。

第2章では、 低放射 化フェラ イト鋼を、従来の候補材の316系ステンレス鋼と比較しその 特徴を 述べた。 また、 研究対象 である低放射化フェライト鋼F82H鋼の開発経緯を述べる ととも に、照射 方法を 概説した 。

第3章で は、F82H鋼の引張特性およびシャルピー衝撃特性などの機械的特性への中性子照 射の影響について述べた。核融合炉環境の照射では、核反応生成ガス原子、特に、ヘリウ ムの影響が大きいと考えられるため、ボロン添加法によるへりウム効果のシミュレーショ ン照射を実施した。照射硬化はおよそ350℃以下の比較的低温度で顕著であり、400℃以上 の照射ではほとんど起こらないことを明らかにした。また、照射硬化は照射量の対数に比 例して増加することを明らかにすると共に、照射硬化した材料の降伏応カの試験温度依存 性が非照射材と同じであることを見出した。これにより、300℃以下の照射での降伏応カが 予測可能となった。いっばう、ヘリウムは照射硬化への寄与は小さいが、伸びや絞りなど の延性を低下させることを突き止めた。また、ヘリウムは材料の靭性に影響を及ばし、延 性 脆性遷移 温度(DBTT)を 上昇さ せる効果があり、特に照射硬化の顕著な低温で影響が大 き い こ と を 明 ら か に し 、 さ ら にDBTTの 上 昇 に つ い て の モ デ ル を 提 唱 し た 。 第4章では、フェライト鋼の溶接にかかわる諸問題と溶接材の照射効果について述べた。

低放射化フェライト鋼により核融合炉ブランケットを製作する場合、溶接による接合が不 可欠 である。F82H鋼のTIGおよ び電子ビ ーム溶接 材を製 作し、その機械的特性について 調べ た結果、TIG溶 接材では 熱影響 部(HAZ)に 焼鈍に よる軟化 部分が あること がわかっ

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た。いっぼう、電子ビーム溶接材でも熱影響部は存在するが、強度特性ーの影響はほとん どなかった。そのため、特性的に劣るTIG溶接材を選択し、中性子照射試験を行った。300℃ 照 射において、TIG溶接継手のうち溶接金属部(溶融金属部)の照射硬化量は母材部と同 等 である が、HAZ軟化部 の照射硬化量は母材または溶接金属部の約1/2であることを見出 し た。その結果、溶接金属部とHAZ軟化部との強度差は照射により拡大する結果となり、

局 所的変形が助長されることを指摘した。いっぼうで、HAZ軟化部での照射硬化が少ない ことは材料の耐照射性を高める方策があることを示唆しており、今後の耐照射性の高い材 料の開発の糸口となるものである。

第5章では、照射結果と使用条件からの靭性の改善、および、ブランケット設計の要求に 応じた材料の最適化について述べた。基礎的研究の結果、′raの増加により結晶粒を微細化 して靭性を高めることができるが、粗大な′raCの析出を誘発し材料を脆化させることを突 き 止めた 。また、 標準的 焼準温度とされてきた1040℃が、現在のTa濃度(0.04%′ra)で は 高過ぎることを明らかにした。これらのことからTiおよびNを極力除去した高純度材に 低温熱処理を施すことにより、F82H鋼の靭性を高めることができることを示した。さらに、

HIP接合 処理での 高温加 熱や品質安定化のためにTaをO.1%に増やした材料(F82H mod3) を開発した。

第6章では、設計の高度化と照射材の変形挙動の解明のために、F82H鋼の真応力一真歪解 析について述べた。室温から600℃までの引張試験による真応力―真歪曲線をモデル化し、

各パラメータの温度依存性を求め、真応力一真歪曲線を計算により得ることが可能となっ た。また、この結果は同様の試験から材料の変形挙動を広範に予測する上で有用である。

第7章 では、F82H鋼のブランケット設計に対する指針について述べた。実証炉材料の想定 使 用温度 は300〜500℃ であり、400℃以 上では 照射の影 響は大きくないとされるため、

300℃近辺での照射硬化と照射脆化が最大の材料上の問題となる。検討の結果、75 dpa程 度の照射量までは静的応カで破壊しないと推定されるが、繰返し応カにより疲労亀裂が導 入 さ れ た 場 合 や 、 衝 撃 的 応 カ が 作 用 し た 場 合 に 注 意 が 必 要 で あ る 。 以 上、本 論文は核 融合炉 ブランケット構造材料として開発された低放射化フェライト鋼 F82H鋼について、ヘリウム効果を含めた耐照射性を明らかにするとともに、ブランケット 設 計に寄 与するモ デル化 を行った。また、これらの照射データからF82H鋼の最適化を行 い 、実証 炉ブラン ケット 材料として適合性を高めた材料の開発に成功した。さらにF82H 鋼を用いてブランケット設計を行う場合の指針を作成した。

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学位論文審査の要旨

主 査   教 授   大 貫 惣 明 副 査   教 授   工 藤 昌 行 副 査   教 授   成 田 敏 行 副 査   助 教 授   柴 山 環 樹 副 査   教 授   幸 野   豊

学 位 論 文 題 名

(室蘭工業大学大学院工学研究科)

低放射化フェライト鋼の耐照射特性と 核融合ブランケット設計指針に関する研究

本 研 究 は 核 融 合 炉 実 験 炉 の ブ ラン ケッ ト構 造材 料 の候 補で ある 新 規低 放射 化フ ェラ イ ト鋼 に つ い て 、 特 に 機 械 的 性 質 の 照射 温度 依存 と照 射 量の 影響 を明 ら かに する こと 、高 靭 性の 材 料 へ の 改 良 、 さ ら に 、 照 射 特性 を含 めた ブラ ン ケッ ト設 計の 指 針を 得る こと を目 的 とし て い る 。 そ の 主 要 な 成 果 は 次 の 点 に 纏 め ら れ る 。

@ 新 規 に 開 発 さ れ た 放 射 化 フ ェ ラ イ ト 鋼(F82H)を 中 性 子 照 射 し 、 そ の 機 械 的 特 性 に 及ぼ す 中 性 子照 射 効果 を検 討し た 。照 射硬 化は350℃以 下の 比 較的 低温 で顕 著で あ り、 照射 量の 対 数 に 比 例 し て 増 加 す る こ と 、 降 伏応 カ の試 験温 度依 存 性が 非照 射材 と同 一 であ るこ とを 見出 した 。 これ によ り、300℃以 下で 照 射し た場 合でも降伏応 カを予測出来るようになっ た。

◎ 核 融 合 炉 照 射 環 境 で は 核 反 応 生成 ヘリ ウム の 影響 が大 きい と予 想 され るた め、 ボ ロン 添 加法 によ るシ ミュ レ ーシ ョン 照射 を 実施 した 。ヘ リ・ ウ ムは 照射 硬化 への寄与は 小さいもの の 、 伸 び や 絞 り な ど 延 性 を 低 下 させ るこ とを 明 確に した 。す なわ ち 、ヘ リウ ムは 延 性脆 性 遷 移 温 度(DBTT)を 上 昇 さ せ 、 特 に 照 射 硬 化 の 顕 著 な 低 温 で 影 響 が 大 き い こ と を 明 らか に し た 。 さ ら にDBTTの 上 昇 に つ い ての 新し いモ デ ルを 提唱 した 。こ の よう な実 用鋼 を 対象 と した へり ウム 効果 の 系統 的な 検討 は 有用 であ る。

◎ 低 放 射 化 フ ェ ラ イ ト 鋼 で 核 融 合 炉 ブ ラ ン ケ ッ ト を 製 作 す る 場 合 、 溶 接 法 が 不 可 欠で あ る た め 、F82H鋼 のTIGお よ び 電 子ビ ーム 溶接 材 を製 作し 、そ の機 械 的特 性を 調査 し た。TIG 溶 接 で は 熱 影 響 部(HAZ)に 焼 鈍 に よ る 軟 化 部 分 が 生 じ るこ とが 判明 した 。 また 、電 子ビ ー ム 溶 接 の 場 合 は 、 熱 影 響 部 は存 在す る が強 度特 性へ の 影響 はほ とん どな い こと を示 した 。

@ 溶 接 材 の ゛ 照 射 効 果 を 評 価 す る た め 、 溶 接 特 性 が よ り敏 感なTIG溶接 材に 対し て 中性 子 照 射 試験 を行 った 。 溶融 金属 部の 照 射硬 化は 母材 部と 同 等だ が、HAZ軟化 部の 照射 硬 化は 約 1/2で あ り 、 結 果 と し て 溶 融 金属 部 とHAZ軟化 部 との 強度 差は 照 射に より 拡大 し、 局 所的 変 形 が 助長 され るこ と を見 出し た。 ま た、HAZ軟 化 部の 照射 硬化 が 少な いこ とは 材料 の 耐照 射

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性を高める方策がありえることを示唆しており、今後の高耐照射性材料の開発に指針を与 えるものである。

◎F82H鋼の特 性評価 の結果を 基にその改良試作を行った。Taの増加は結晶粒を微細化し て靭性を高めるが、粗大なTaCの析出を誘発して脆化することを見出した。また、標準的 な焼準温度は当該のTa濃度では高過ぎるため、TiとNを極力除去した高純度材に低温熱処 理を施すことにより、F82H鋼の靭性が改良できることを示した。さらに、HIP接合処理の 高 温 加 熱 や 品 質 安 定 化 を 想 定 し てTaを 増 量 し た 材 料(F82H mod3)を 開 発 し た 。

◎計 算から変 形挙動 を求めることによルブランケッ卜設計を高度化するために、F82H鋼 の真応カー真歪解析を実施した。室温から600℃までの真応カー真歪曲線をモデル化し、各 パラメータの温度依存性を求め、変形挙動を計算により再現することに成功した。この方 法 は 他 の 材 料 の 変 形 挙 動 を 広 範 に 予 測 す る た め に も 適 用 で き る 。

◎F82H鋼をブラ ンケッ ト材料として使用する際の設計指針を明らかにした。実証炉材料 の想定温度は300〜  500℃であり、特に300℃付近の照射硬化と照射脆化が最大の問題にな ることを指摘した。照射量が75 dpa程度までは静的応カでの破壊はなぃと予測されるが、

特 に 繰 返 応 カ に よ る 疲 労 や 衝 撃 的 応 力 負 荷 は 重 要 な 項 目 で あ る 。 以上、本論文は核融合炉ブランケット構造材料として開発された低放射化フェライト鋼に ついて、ヘリウム効果を含めた耐照射性の実証、材料の改良、機械的性質のモデル化、ブ ランケット設計に当たっての指針の作成など、新知見を得たものであり、材料工学および エネルギー工学の発展に貢献するところ大なるものがある。よって著者は、北海道大学博 士(工学)の学位を授与される資格があるものと認める。

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