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博 士 ( 工 学 ) 高 橋 龍 尚 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 工 学 ) 高 橋 龍 尚

学 位 論 文 題 名

スリットレーザ光を用いた螢光生体顕微鏡法によるラット腸間膜 集合リンパ管の蛋白濃縮輸送機能の解明

学 位 論 文 内 容 の 要旨

  リン パ系は ,血 漿容積 の維持 ,組織内水分調節,月旨肪・蛋白の輸送,リンパ球の輸送,リンパ 節で の免疫 反応と 有害物 質の フィル ター作 用,な どの 働きを 通して 生体の ホメオスタシス維持に 重要 な役割 を果た してい る。

  この りンパ 管の 機能う ち,リ ンパ管 自発性 収縮 やりン パ管周 囲組織 から の外カによるりンパ輸 送 の メカニ ズムに っいて は, 近年,in vivoあるい はin vitro実 験に よって 詳しく 研究さ れてき た。 一方, リンパ の蛋白 濃度 に関す る流れ を考慮 した 直視下 の研究 は,計 測技珊の困難さから十 分に 行われ ていナ ょい。 その ためル ンパ管は単に物質を輸送するだけの経路として考えられてきた が, 近年リ ンパ管 からの サン プリン グによ って, リン パの蛋 白濃度 が末梢 から胸管ヘ進むにっれ て次 第に高 くなる ことが 知ら れるよ うにな った。 また ,リン パ管像 影によ っても同様の知見が得 られ ている が,そ のりン パ輸 送過程 に於け る蛋白 の高 濃度化 現象の 機序に っいては今日まで解明 され ていな い。本 研究は この 蛋白濃 縮輸送 機能を 解明 するた め,生 体顕微 鏡を用いラット暢間膜 集合 リンパ 管を流 れるり ンパ の濃度 を,螢 光トレ ーサ (フル オレセ イン・ イソチオシアネートで 螢 光 標 識 し た デ キ ス 卜 ラ ン ,FITC−Dx: MW148,900)法 に よ っ てinvivo下 に 観 察 し た。 こ の収 縮弛緩 運動を 伴うり ンパ 管観察 に,従 来の透 過光 あるい は落射 光照明 による螢光生体顕微鏡 を使 用した 場合, リンパ 管を 通過す る励起 光によ って 顕微鏡 焦点面 以外の 螢光色素も励起される ため ,螢光 情報の 重畳が 妨げ となり 定量的 な計測 が困 難とさ れてき た。こ の問題を解決するため に , 本研 究 で は り ンパ 管 の 内径よ りも 十分に 薄い, 厚さ20umのレー ザ光を 斜め 上方か ら励起 光 とし て照射 する螢 光生体 顕微 鏡シス テムを 開発し た。 斜めに 進む薄 い帯状 のレーザ光は,顕微鏡 焦点 面に対 して一 定の厚 さで 螢光色 素を励 起する 為, リンパ 管の内 径に関 係なくりンパのトレー サ濃 度変化 の定量 的な計 測を 可能に した。 そして ,こ の開発 した顕 微鏡シ ステムを用いて,ルン パ管 の収縮 弛緩運 動がり ンパ 輸送と 同時に 蛋白の 濃縮 に重要な役割を果たしていることをin vi・ vo実 験 に よ っ て 明ら か に し, 更に その生 理学的 意義を 明ら かにす ること が,本 研究の 目的 であ

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る。

  第1章 は 序 論とし て,生 体顕微 鏡を 用いた 微小循 環観察 法の 現状と その問 題点を 述べ, 本研 究 の目 的と 意義を 明示し た。

  第2章 で は , 第4章 で 解 明 す るラ ット 腸間膜 集合リ ンパ 管の蛋 白濃縮 輸送機 能の 生理学 的特徴 を理 解す るため ,リン パ問質 液循環 にっ いて文 献を基 に解説 した 。

  第3章 で は , 微小 リ ン パ 管 内を 流 れ る 螢 光 トレ ー サ 濃 度 を計 測 ・ 定 量 化す る た め に 開発 さ れ た 螢 光生 体 顕 微 鏡 シス テ ム に っい て説 明し,in vitro試験 によ る使用 特性の 検討結 果を示 し た。

  開 発した スリッ トレー ザ照 明螢光 生体顕 微鏡シ ステム は, 励起光 照明に 特徴が あり,リンパ管 の 内 径 より 十 分に薄 い,厚 さ20 umのレ ーザ光 を試料 面に 対し斜 め上方 から照 射す る。顕 微鏡対 物レ ンズ の面に 対して 斜めに 進むレ ―ザ 光は, 対物レ ンズの 焦点 面で一 定の厚 さの螢 光トレーサ を励 起す る為, 一般の 照明法 で問題 とな る試料 の厚さ に依存 した 螢光の 重畳問 題は無 く,定量的 なト レー サ濃度 の計測 を可能 とする 。こ の顕微 鏡シス テムの 使用 特性は ,リン パ管に みたてた微 小 ガ ラ ス管 にFITCーDx溶 液を 封 入 し , テー パ 一 部 位 で の濃 度 計 測 を 行うin vitro試験に よっ て 検 討 した 。 その結 果,ス リッ トレー ザ照明 螢光生 体顕微 鏡シ ステム は,試 料の厚 さが50〜200 ロmの 範 囲 でFITC―Dx溶 液 の 濃 度 を定 量 的 に 計 測 でき る こ と が 確認 さ れ た 。 第4章 で 対 象 と す る ラ ット 腸 間膜集 合リン パ管 の収縮 弛緩運 動時の 直径は50〜200〃卩 の範囲 にあ り,本 計測シ ス テ ム によ るin vivo実験で の定量 的な計 測が 可能で あるこ とが示 された 。ま た,本 計測シ ステ ムをin vivo計測に 用い る際の 諸条件 を決定 した。

  第4章で は, 第3章 の螢 光生体 顕微鏡 システ ムを 用いて ,ラッ ト腸間 膜集合 リン パ管内のトレー サ濃 度変 化を計 測した 結果を 示し, リン パ管の 蛋白濃 縮輸送 機能 を解明 すると 共にそ の機序につ いて 考察 した。

  分 岐合 流 の な い 集合 リ ン パ 管 に沿 って上 流・中 流・下 流の 三点で トレー サ濃度 を計測 した 結 果 , 上 流 に 比 ベ 下 流 で は 濃 度 が 統 計 的 に 有 意 に 増 加 し て い る こ と が 認 め ら れ た 。   ト レーサ 静注10分 後に 得られ たりン パ管の 直径 とりン パの トレー サ濃度 の経 時的変化では,

デー 夕時 系列の 一部で 収縮期 に濃度 が増 加し拡 張期に 減少す る傾 向が見 られる が,リ ンパ管の直

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のり ンパ 管閉塞 部位で のりン パ管の 収縮 弛緩運 動とト レーサ 濃度 の関係 を調べた。その結果,ル ンパ 管の 直径と トレー サ濃度 の経時 変化 は,収 縮期に 濃度が 増加 し拡張 期に濃度が減少している 傾向 を顕 著に示 した。 更に, 直径と 濃度 の相互 相関関 数にっ いて は,時 間遅れ無しの逆位相の関 係を 強く 示した 。また ,この 直径と 濃度 のデー タを基 に二者 の逆 位相の 関係を相関回帰分析する と ,負 の傾き を持っ た回 帰直線 となり ,その 回帰係 数は0.1% レベル で統計 的に有 意で あった 。 すな わち ,リン パ管の 収縮期 にトレ ーサ 濃度が 増加し 拡張期 に濃 度が減 少していることが定量的 に確 認さ れた。

  以 上の結 果を基 に考察 を示 すと, リンパ 管の蛋 白濃縮 輸送 現象の 機序に っいては,毛細血管系 に 於 け るStarlingの 水 分調節 機構 と同様 に,静 水圧と 膠質 浸透圧 による りンパ 管壁を 介す る水 分濾 過に よるも のと推 察され る。ル ンパ 管壁の 水分濾 過,蛋 白の 非透過 性を仮定すると,文献値 を基 に集 合リン パ管壁 を介し て生じ る静 水圧差 ,膠質 浸透圧差による水分駆動力tま,収縮期に十 4. 5mmHg程度 となル リンパ 管内か ら組 織への 水分濾 過が生 じ,ま た拡 張期生 には‑O. 5mmHg程 度 と な ル リ ン パ 内 へ の 若 干 の 水 分 の 再 吸 収 が 生 じ て い る と 示 唆 さ れ る 。   集 合リン パ管の 蛋白濃 縮輸 送機能の生理学的意義にっいては,特に次の点にあると考えられる。

一っ は, リンパ の脂質 や蛋白 の輸送 の際 ,その 輸送効 率を上 げる のに電 要であると考えられる。

蛋白 濃縮 輸送機 構によ る蛋白 の輸送 効率 は,粘 性によ る損失 を考 慮して も,十分に良くなってい ると 考え られる 。

  も うーっ の重要 な役割 は, 局所的 な浮腫 を改善 する働 きで ある。 先に述 べたように,リンパ管 壁を 介し て水分 濾過が 生じて いると する と,静 水圧の 上昇し た浮 腫組織 からのりンパが正常組織 を通 過す る過程 で組織 へ濾過 される 。ま た,浮 腫組織 からの 低膠 質浸透 圧であるりンパは,水の 引込 が弱 いため 相対的 に組織 への水 分濾 過を促 進する 。従っ て, 局所的 に発生した浮腫の過剰な 組織 液は ,リン パ管の 蛋白濃 縮輸送 機構 によっ て正常 組織へ 分散 される 。これは,浮腫に対する 防御 因子 のーっ として ,重要 な役割 を果 たして いると 考えら れる 。

  第5章で は, 本研究 の結論 を要約 した 。   第6章で は, 今後の 課題に っいて 述べ た。

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学位論文審査の要旨

  近年 ,生体 顕微鏡 を用い た微小 循環 におけ る物質 移動あ るい は物質 輸送に 関する研究か盛んに 行われ ている 。し かし, 従来の 透過型 ある いは落 射型照 明によ る螢光 生体 顕微鏡 観察は,顕微鏡 対物レ ンズの 焦点 面前後 から重 畳する 螢光 が妨げ となり ,組織 や血管 系で の螢光 物質濃度の定量 化は困 難であ った 。

  本 論 文 は , ラ ット 腸 問 膜 集 合リ ン パ 管 を 流れ る り ン パ の螢 光 物 質(Fluorescein isothio‑

cyanate labeled dextran,FITC―Dx; MW148,900)濃度 を計測 ・定 量化す るため の螢光 生体 顕 微 鏡 シ ス テ ム を 試 作 し , リ ン パ 管 の 収 縮 弛 緩 運 動 が り ン パ輸 送 と 同 時 に蛋 白 (macro− molecules) の 濃縮 に 重 要 な 役割 を 果 た し てい る こ と をinvivo実 験によ って示 すと 共にそ の生 理学的 意義を 明ら かにす ること を目的 とし たもの である 。

  第1章 は序論 とし て,生 体顕微 鏡を用 いた 微小循 環観察 法の現 状とそ の問 題点を 述べ, 本研究 の目的 と意義 を明 示して いる。

  第2章 で は, 第4章 で 解明 す るラ ット 腸間膜 集合リ ンパ管 の蛋 白濃縮 輸送機 能の生 理学的 特徴 を 理 解 す る た め , リ ン パ 問 質 液 循 環 に っ い て 文 献 を 基 に 解 説 し て い る 。   第3章 で は , 第4章 の 動 物 実 験 に 於 ける 微 小 リ ン パ 管内 を 流 れ るFITC―Dx濃 度 を 計 測゛ 定 量化す るため の螢 光生体 顕微鏡 システ ムを 試作し ,in vitro試 験に よる使 用特性 の検討結果を示 してい る。

  試 作 螢 光 生体 顕 微 鏡 シ ス テム は,励 起光 照明に 特徴が あり, 厚さ20umのスリ ット 状のレ ーザ 光を試 料面に 対し 斜め上 方から 照射す る。顕微鏡対物レンズの面に対して斜めに進むレ―ザ光は,

対物レ ンズの 焦点 面で一 定の厚 さの螢 光ト レ―サ を励起 する為 ,一般 の照 明法で 問題となる試料

之 猛

敏 克

本 野

山 狩

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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管の太さにかかわらず同濃度の測定値を示している。したがって本螢光生体顕微鏡計測システム は,試料の厚 さが50〜200肛mの範囲でFITC―Dx溶液の濃度を定量的に 計測できることを示 している。

  第4章では ,第3章の螢光生体顕微鏡シ ステムを用いて,ラット腸間 膜集合リンパ管内の FITC―Dx濃度 変化を計測した結果を示し,リンパ管の蛋白濃縮輸送機能を解明すると共にそ の機序にっいて考察している。

  分岐合流のナょい集合リンパ管に沿って上流・中流・下流の三点でFITC―Dx濃度を計測した 結 果 , 上 流 に 比 べ 下 流 で は 濃 度 が 統 計 的 に 有 意に 増加 して い るこ とを 示し てい る 。   FITCーDx溶 液静注後に得られたりンパ 管の直径とりンパのFITC―Dx濃度の経時的変化で は,デー夕時系列の一部で収縮期に濃度が増加し拡張期に減少する傾向が見られるが,リンパ管 の直径と濃度の明確な関係は得られていない。この理由として,リンパ管の収縮弛緩運動によっ て,観察部位のりンパ液に上流からの異なった濃度のりンパ液が流入するため,リンパ管収縮と その運動によ るFITC―Dx濃度変化との直接的な関係が得られなかったとしている。そこで,

この点を明らかにするためりンパ管の下流側・上流側を二本の血管縫合糸で結紮し上流からのり ンパの流入を 防ぎ,そのりンパ管の収縮弛緩運動とFITC―Dx濃度の関係を調べている。その 結果,リンパ 管の直径とFITC→Dx濃度の経時変化は,リンパ管の収縮期に濃度が増加し拡張 期に濃度が滅少していることを定量的に示している。

  第5章でtま,本研究の結論を要約している。

  以上のように本論文は,スリッ卜状のレーザ光を螢光生体顕微鏡の照明に適用した新たな計測 システムを開発し,従来の顕微鏡観察で不可能であったりンパ管内螢光標識物質(FITC―Dx) 濃度の定量的な計測を可能にしたものである。また,リンパ管の収縮弛緩運動がりンパ輸送機能 と同時に蛋白(大分子物質)濃縮機能に重要な役割を果たしているという新知見を得ている。こ の生理学上重要な知見は,本研究のスリット状のレーザ光を照明とする顕微鏡システムとその計 測法によって初めて得られるものであり,著者は,学際領域に於ける生体工学の進歩に貢献する ところ大なるものがある。

  よ っ て 著 者 は , 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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参照