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博 士 ( 工 学 ) 今 村 克 平 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 今 村 克 平

学 位 論 文 題 名

1 次 元 周 期 超 格 子 に お け る フ ォ ノ ン の 群 速 度 と 格 子 熱 伝 導 に 関 す る 理 論 的 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  近年、サブ・ビコ 秒領域の光パルスを用いてコ ヒーレントな音響フオノンを励起・検出するス ペクトロスコビー技 術(ビコ秒超音波法)が確立 し、ナノスケールの単一薄膜やへテロ多層膜構 造の音響的特性や熱 伝導度に関する実験的研究が 急速に進んでいる。しかし、これらの系におけ る音響フオノンの振 る舞いに関する理論的研究は 少なく、実験結果の多くは十分に解明されてい ない 。この様な状況を踏まえ 、本研究では超格子におけ る音響フオノンに関し、特に 以下の3点 の 興 味 深 い 現 象 と の 係 わ り に お い て 理 論 的 考 察 を 展 開 し 、 新 知 見 を 得 た 。   (1)第一章ではナ 丿構造の表面・界面におけ る局在振動と、バルクフオノンの共鴫相互作用、

特に半無限超格子表 面に局在振動(表面フオノン )が存在する場合の固体(基盤)―超格子―液 体系におけるフオノ ン透過の理論解析を行った。 一般に大きな音響不整合のため、固体一液体間 のフオ丿ン透過率は 小さな値を持っが、その界面 に表面フオノンが存在し得る超格子を介在させ ると 、表面フオノンの固有振 動数にー致する入射フオノ ンは、この系を透過率1で共 鳴的に透過 する こと を 明ら かに した 。 さら に、 この よう な 固有 振動 数を 含む フ オノ ンバルス が、GaAs− (GaAs/ AlAs)N―H20の系 を 透過するときの時間発展を考 察した。特に、矩形パルス を入射させ た場合の波束の変形 と遅延効果を、位相時間に基 づぃて解析した。興味深いことに反射フオノン 波東 には2重ピーク構造が生 じることを、解析的計算、並 びにシミュレーションによ り明らかに した。また、その物 理的起源が表面局在振動の有限な寿命に由来するものであると、突き止めた。

  (2)第二章では有限周期超 格子中のフオノンの群速度に 対する解析を、波束の数値 シミュレー ションと、転送行列 法に基づく解析計算により展 開した。分散関係においてフオノンの伝播が禁 止さ れる周波数禁制帯(ギャ ップ)中のフオノンの群速 度は、伝播が禁止されること よりOに落 ち込むと予想される 。しかし有限周期超格子にお いては、群速度はギャップ近傍で期待通り一旦 0に 近づ くが 、ギ ャ ップ 内部 では0とはならず、逆に許容 帯(バンド)中の値を大き く上回るこ とを見いだした。こ の群速度の増大は超格子の周 期数に依存し、またゾーン端(または中心)と ゾーン内部に存在す るギャップでは定性的に異な ることを理論的に示し、更にその物理的理由を 解析的計算に基づぃ て明らかにした。

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  (3)第三章では半導体超格子の垂直熱伝導率に対する理論解析を、分子動力学(MD)法に基づ き行った。ここ10年余りの間に行われた超格子の熱伝導率の測定実験により、その値がバルク 結晶と比較して著しく減少し、また超格子の周期長が短くなるにっれ減少することが明らかにな った。これは超格子におけるフオノンの分散関係の折り返し効果とそれに伴う群速度の低下が原 因であると考えられたが、群速度に基づく理論解析では熱伝導率の低下の理由を十分に説明出来 なかった。そこで本研究では、MD法を用いて超格子における熱伝導率を計算し、その減少の物 理的起源を明らかにすることを目的とした。MD法のアルゴリズムとして非平衡MD法を用いた。

超格子の両端に高温と低温の熱浴をそれそれ設定し、超格子中に温度勾配と定常的な熱流を生じ させ、フーリエ則を用いて熱伝導率を求めた。理想的な界面を有する超格子においては、フオ丿 ンの群速度に基づく理論解析から予測される熱伝導率と同様の結果が得られ、実験とは合致しな かった。一方、界面の乱れを有する超格子においては、実験で見出された熱伝導率の著しい減少 とその周期長に対する依存性が良く再現された。このことから超格子で見られる短周期領域での 熱 伝 導 率 の 低 下 が 、 超 格 子 の 界 面 の 乱 れ の 効 果 に よ る も の と 判 明 し た 。

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学位論文審査の要旨 主査    教授

副査    教授 副査    教授

田村信一朗 明楽浩史

ライト・オリノヾ

学 位 論 文 題 名

1 次元周期超格子におけるフオノンの群速度と 格子熱伝導に関する理論的研究

  非 金属超格 子中の 熱工ネル ギー伝播 は音響 フォノン が担っ ており、 その群 速度がェ ネ ルギー輸 送特性を 決定す る重要な要素となっている。これまでの研究の蓄積により、

サ ブ・ピコ 秒領域の 光バル スを用い てコヒ ーレント な音響 フォノシ を励起・ 検出す る ピ コ秒超音 波法が確 立し、 単一薄膜 やへテ 口多層膜 構造の 熱伝導度 をはじめ とし、 ナ ノ 構造中の エネルギ ー輸送 特性に関 する多 くの実験 的研究 が行われ ている。 しかし 、 こ れらの構 造中の音 響フエ ノンの振 る舞い に関する 理論的 研究は少 なく、実 験結果 の 多 くは十分 に解明さ れてい ない。本 論文は 超格子に おける 音響フォ ノンの群 速度を 中 心 に 、 以下 に 述 べる よ う に3点の興 味深い 物理現象 の理論 的考察を 展開し、 新知見 を 得 たもので ある。

  本 論文は全 五章よ りなって いる。

  第 一章は序 論であ り、超格 子構造に おける フエノン 研究の 背景と意 義が述 べられて い る。

  第 二章では 超格子 構造の表 面・界面 におけ る局在振 動と、 バルクフ エノン の共鳴相 互 作用、特 に半無限 超格子 表面に局在振動(表面フォノン)が存在する場合の固体(基 盤 )一超格 子ー液体 系にお けるフォ ノン透 過の理論 解析を 行ってい る。一般 に大き な 音 響不整合 のため、 固体― 液体間の フエノ ン透過率 は小さ な値を持 つ。しか し、そ の 界 面に表面 フエノン が存在 し得る超 格子を 介在させ ると、 表面フォ ノンの固 有振動 数 に 一 致 する 入 射 フエ ノ ン は、 この系を 透過率1で共 鳴的に 透過する ことを明 らかに し て いる。さらに、このような固有振動数を含むフォノンパルスが、GaAsー(GaAs/AAs)N ーH20の 系 を 透過 す る とき の 時間発展 を考察 し、特に 、矩形 パルスを 入射さ せた場合 の 波束の変 形と遅延 効果を 、位相時 間に基 づぃて解 析して いる。興 味深いこ とに反 射 フ エ ノ ン波 束 に は2重 ピ ーク 構造が 生じる ことを、 解析的 計算、並 びにシミ ュレー シ ヨ ンにより 見出し、 また、 その物理 的起源 を説明し ている 。

  第 三章では 有限周 期超格子 中のフエ ノンの 群速度に 対する 解析を、 波束の 数値シミ     −l139―

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ユレーションと、転送行列法に基づく解析計算により展開している。周波数禁制帯(ギ ヤップ)中のフォノンの群速度は、伝播が禁止されることより

0

に落ち込むと予想さ れる。しかし有限周期超格子においては、群速度はギャップ内部で0 とはならず、逆 に許容帯(バンド)中の値を大きく上回ることを見いだしている。この群速度の増大 は超格子の周期数に依存すること、またゾーン端(または中心)とゾーン内部に存在 するギャップでは定性的に異なることを理論的に示し、更にその物理的理由を解析的 計算に基づいて明らかにしている。

  

第四章では半導体超格子の垂直熱伝導率に対する理論解析を、格子の非調和性を取 り込んだ分子動力学法(

MD

法)に基づき行っている。超格子中の熱伝導率は、測定 実験により大きさがバルク結晶と比較して著しく小さく、また超格子の周期長が短く なるにっれ減少することが明らかになっている。これは、超格子におけるフエノンの 分散関係の折り返し効果と、それに伴う群速度の低下が原因であると考えられたが、

解析では熱伝導率の低下を十分に説明出来なかった。本論文では、MD 法を用いて超 格子における熱伝導率を計算し、その減少の物理的起源の解明を試みている。解析の 結果、理想的な界面を有する超格子においては、フォノンの群速度に基づく理論解析 から予測される熱伝導率と同様の結果が得られ、実験とは合致しないが、界面の乱れ を有する超格子においては、実験で見出された熱伝導率の著しい減少と、その周期長 に対する依存性が良く再現された。このことから超格子で見られる短周期領域での熱 伝 導 率 の 低 下 が 、 超 格 子 の 界 面 の 乱 れ の 効 果 に よ るも の と結 諭 し てい る 。

  

第 五 章 は 結 諭 で あ り 、 本 研 究 で 得 ら れ た 結 果 を ま と め て い る 。

  

これを要するに、著者は、非金属超格子中のエネルギー伝播を担う音響フォノンの 群速度と、垂直熱伝導率に対する理論解析を展開し、実験結果を良く説明し、さらに 新たな予言を行ったものであり、量子物理工学、応用物理学の発展に寄与するところ 大なるものがある。よって、著者は北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格 あるものと認める。

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参照

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