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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) サ ブ リ ナ ジ ェ ス ミ ン

     学位論文題名

Physiological and Pathological Significance of Coronary     and Cerebral Capillary lVIorphometric Regulation     by AngogenicCrowthFactorVEGF

     (血管増殖因子VEGF による心・脳毛細血管構築制御機構の      生理学的および病態生理学的意義)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【背景・目的】

  Vascular endothelial growth factor (VEGF)は、血管内皮細胞の発生分化、増殖においてその中 心 となる増殖因子であり、血管新生の調節に重要な働きを演じている。VEGFの受容体として、1型 受容体であるFIt‑lと、2型受容体であるFlk‑l/KDRが主たるものとして知られているが、Flk‑l/KDR が 内皮細胞 の増殖 に重要 な役割 を果た してお り、一方FIt‑lはVEGFを卜ラップしてその作用を打 ち 消す作用があると考えられているものの、Flt‑lを介したVEGFの作用にはまだ不明な点も多くあ るようである。

  閉 経後女 性へのホ ルモン 補充療 法(HRT)は 、虚血 性心疾患 の発症 予防へ の効果 は疑問 視され て いるもの の心臓 自体に 対する保護作用については確信的な証拠が提供されており、また相矛盾 す る報告は あるが 脳血管 障害の 発症を 予防し その程度を軽減するとされている。そのようなHRT による心臓や脳への保護効果の機序として、エストロゲンがVEく弭発現を誘発することから、VEく汀 を 介した生 理学的 な血管 新生の 調節と 関係し た、冠 および 脳毛細血 管構築 の促進作用が可能性 として考えられるかも知れなぃ。そこで本研究の第ーの目的は、体内エス卜ロゲンレベルを卵巣摘 除 あるいはHRTによ り変化 させた時 、心臓 および 脳における毛細血管網の構造がどのように修飾 さ れるか、 そして その時 のVEGFおよびその受容体の発現変化がどのように関わっているかを明ら かにすることである。

  現在、側副血行を発達させる目的で血管新生をターゲットとする治療が進んできており、糖尿病 性 神 経 症に 対 し てVEGFが 有効 であ ることが 報告さ れてい るが、 その一 方で糖 尿病性 網膜症 は VEGFが 増悪因 子とし て働い ている ことが知 られて いる。 また糖 尿病性 腎症の病因として、VEGF の過剰発現が重要であることを示唆する報告もある。それ故、糖尿病心臓における冠血管の動・静 脈 のりモデ リング におい てもVEGFが深く関 わって いる可 能性が ある。 本研究の第二の目的は、

VEGFに よ る 毛 細血 管 構 築 制御 機構 が及ばす 病態生 理学的 意義を 理解す るため 、糖尿 病病態 に お ける心臓 での毛 細血管 構築の 変化とVEGFおよび その受 容体発 現との 関連を明らかにし、臨床 的 に糖尿病 に併発 する循 環器病への有効性が報告されている、カルシウム拮抗薬とアンジオテン シ ン II(AngII) タ イ プ1受 容 体 拮 抗 薬 の 治 療 効 果 を 検 討 す る こ と で あ る 。

【方法】

1)実験動物:40週齢の経産ラットをsham手術群(腹部切開のみで縫合)、卵巣摘出群(腹部切開

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(2)

  後卵巣摘出し縫 合)およびエストロゲン補充群(卵巣摘出後、皮下に包埋した浸透圧ミニポンプ   から17p‑estradiol3い〆日を持続投与)に分け、4週後に大脳およぴ心臓を摘出し切片標本を作   成した。

  ま た 、糖 尿病 動物 とし て 、イ ンス リン 抵 抗性 糖尿 病早 期に 相当する20週齢の雄亅陸Otsuka     Long‑Evans Tokushima Fatty (OLETF)ラッ トを用い、対照として雄性Long‑Evans Tokushima     Otsuka (LETO)ラットを用いた。

2) 毛細 血管 密 度を 算出 する など の 形態学 的検討は、心臓においては動 脈系と静脈系毛細血管   を 分 別 す る 二 重 染 色 法で 、脳 に おい てはG4レ ク チン で染 色あ るい は 抗第Mn因 子抗 体を 用   いた螢光染色法 で行った。

3) VEGFと そ の 受 容 体 、 そ し て 他 の 標 的 分 子 のmRNAお よ び タ ン パ ク の 発 現 はmsitu   hybnmzぬonおよ び免疫組織学的技法により検 討した。

【結果・考察】

  経 産ラッ卜の冠血管(内径く100 ym)にはエス卜ロゲン受 容体の2つのサブタイプERaおよびERp が 共 に存 在し ており、ERpのmRNAおよびタ ンパク発現のみが、卵巣摘除 およびERTにより強く影 響 さ れた 。卵 巣摘除により動脈系毛細血管 の減少と関係して冠毛細血 管密度の低下が認められ た 。HRTは 静脈 系 毛細 血管 を増 加 させ、冠 毛細血管密度を正常レベル に回復させた。VEGFおよ びflk‑l/KDRの 冠 血管 にお ける 発 現は 卵巣 摘除 後減 少 した が、HRTに より正常化した。VEGFと flk‑l/KDRは経産ラッ卜で若年ラットより高発現であったが、これは経産ラッ卜でのhypoxia‑inducible factor‑l (HIF‑1)のタンパク発現増加と関係していた。すなわち更年期女性に相当する経産ラットで の 冠 毛細 血管 網はVEGFを介した生理学的な 血管新生によって調節され ており、エス卜ロゲン欠 乏 に よる 冠血 管で のVEGF発現 の低 下は 閉経 後 女性 での 冠動 脈疾患の 発症の分子的病因として 重視すべきであることが示唆された。

  経産ラッ トの大脳皮質部における毛細血管密度も、卵巣摘除後に有意な減少を示した。ここでも ま た、 脳血 管 (内 径く100 Lun)でのVEGFとflk‑l/KDRのmRNAおよびタ ンパクの著明な減少と関 係 して いた。 脳血管におけるERaおよびE即の発現レベルは共に卵巣摘 除により有意に減少して いたが、こ の傾向はER9でより劇的であ った。卵巣摘除による上記の一連の変化は、HRTにより完 全に抑制さ れた。したがって、VEG・Fは経産ラッ卜での生理的な脳血管新生のための重要な調節 分子である ことが示唆された。VEく亜はエス卜ロゲンの血流保持機構を介した神経保護作用におい て、重要な 役割を果たしていると考え られた。

  インス リン抵抗性糖尿病早期のOLETFラットでは、対照(LETOラット)に比較し、冠血管(内径 く100 pun)で のVEGFとflk‑l/KDRのmRNAお よび タン パク レベ ル での 発現 が顕 著 に増 加してい た。VEGFの発現レベルの増強は、増加L虎advanced glycation end products (AGEs)によって活性 化されたHIF‑laの蓄積と強く関係して いた。OLETFラットでは、冠 毛細血管密度の増加が認めら れたが、 これは静脈系毛細血管の動脈 化に起因していた。OLETFラ ットでは、Ang IIおよびその type1受容 体の冠血管での発現レベル が増加しており、この受容体拮抗薬であるcandesartanで治 療することにより、上記変化は全て抑制された。またカルシウム拮抗薬であるbenidip血eによっても 優 れた 治療 効 果が得られた。すなわち、VEGFは、糖尿病早期よりんIgII、AGEs、そして細胞内 CP濃度上 昇などによってその発現が誘 導され、病的な冠毛細血管新生を起こすことにより、生理 学的な冠 血管退行現象が損なわれ、冠 血管リモデリング形成の重要な要因となっていることが示 唆された。

  以 上、 本研究により、VEGFによる毛細血管構築制御 機構が、循環器病領域におい て、生理学 的 に も あ る い は 病 態 生 理 学 的 に も 重 要 な 意 義 を 有 し て い る こ と を 明 ら か に し た 。

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(3)

学位論文 審査の要旨

     学位論文題名

Physiological and Pathological Significance of Coronary     and Cerebral Capillary Morphometric Regulation     by Angiogenic Crowth Factor VEGF

(血管増殖因子VEGF による心・脳毛細血管構築制御機構の      生理学的および病態生理学的意義)

  閉経後 女性へ のホル モン補充 療法(HRT)は、心 臓や脳への保護効果を有するが、その機序とし て、エ ストロゲ ンのVEGF発現亢進作用による血管新生促進が考えられる。本研究では、体内エス トロゲ ンレベル を卵巣 摘除あ るいはHRTにより 変化さ せた時、心臓および脳における毛細血管網 の構造 がどのよ うに修 飾され るか、またその際VEGFおよびその受容体の発現変化がどう関与する か検索した。

  庚験動物としては、40週齢の経産ラット(コントロール群:Con)、卵巣摘出群(OVX)およびエスト ロゲン補充群(卵巣摘出後、浸透圧ミニポンプで17p‑estradiol3いヴ日を持続投与:ERT)に分け、4 週後に 大脳およ び心臓 を摘出 し切片 標本を 作成し た。形 態学的 検討は、 心臓では動脈系と静脈 系毛 細 血 管 を分 別 す る 二重 染 色 法を、脳 ではG4レクチン で染色 あるい は抗第Mn因子抗 体を用 いた螢 光染色法 を行っ た。VEく亜とその受容体、そして他の標的分子のmRNA.およぴタンパクの 発 現 は in situ hybridizationお よ び 免 疫 組 織 学 的 技 法 に よ り 検 討 し た 。   Conの冠血 管には エスト ロゲン 受容体 のサブ タイプERa,およびERpが共に存在しており、ERpの mRNAお よ び タ ン パ ク 発現 の み が 、OVXお よ びERTによ り 強 く 影響 さ れ た 。OVXで は 動 脈系 毛 細血 管 の減 少と冠 毛細血 管密度の 低下が 認めら れ、EIHは 静脈系 毛細血 管を増 加させ 、冠毛 細 血 管 密 度 を 回 復 さ せ た 。 冠 血 管 のVEGFお よ びKDRの 発 現 はOVXで 減 少 した が 、EIHで正 常 化 し た 。VEGFと1のRはC0nで 若 年 ラ ッ ト よ り 高 発 現 で あ っ た が 、 こ れ はC弧 で の bypoxia−洫luciblef恥torIlmIF・1)のタンパク発現増加と関係していた。すなわち更年期女性に相 当する 経産ラッ トでの 冠毛細 血管網はVEく預を介した生理学的な血管新生によって調節されてお り、エ ス卜ロゲ ン欠乏 による 冠血管 でのVEt諢 発現の 低下は閉経後女性での冠動脈疾患の発症の 分子的病因として重視すべきであることが示唆された。

  Conの 大 脳 皮 質 部 に お け る毛 細 血 管 密度 もOVXで 有意 に 減 少 し、 脳 血 管 のVEく 預 とKDRの m心岨お よびタ ンパクの 著明な 減少を 伴った 。脳血 管にお けるEIは およぴER8の発現レベルは共 にOVXで有 意に減 少した が、こ れはEI邨 でより 顕著であった。これらの変化EIばにより完全に抑 制され た。した がって 、VEGFは経産ラットでの生理的な脳血管新生の重要な調節分子であり、エ ストロゲンの血流保持機構を介した神経保護作用において、重要な役割を果たしていると考えられ

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顕 弘

   

   

畠 岡

北 吉

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

た。

  学位申請者サブリナ・ジェスミンは、インスリン抵抗´t生糖尿病モデルであるOLETFラットと、対照 のLETOラ ット を用 い 、糖 尿病におけ る冠毛細血管新生とその制御 におけるadvanced glycation endproduct丶アンジオテンシ ンII、VEGF/KDR系の役割を明らかとし、2編の原著を発表したが、発 表 時間の 関係で割愛した。以上、4編 の原著に掲載された研究によ り、VEGFによる毛細血管構 築 制 御 機構 が、 循環 器 病領 域において 、生理学的にもあるいは病態 生理学的にも重要な意義を 有 することを明らかとした。

  発表後、副査丸藤教授から 、血中エス卜ロゲン濃度と受容体との関係、エス卜ロゲンの血管新生 作用、さらに脳虚血とエストロゲンの効果について、副査吉岡教授から、卵巣摘出後のエストロゲン 受 容体減 少の機序、エストロゲン受容 体a*ロの作用差、さらにHIF‑1とVEく弭との関係につい て 質 問 がな され た。 ま た北 畠教 授か らは 、 最近 の大 規模臨床試験 におけるHRTの結果と本実験 結 果 との関係について質問がな された。これらに対し申請者 は、今回の実験成績と過去の文献を引 用し、概ね適切に回答した。

  審査員一同は、4編の原著をもとにthesisにまとめられたこれらの成果を高く評価し、申請者が博 士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと判定した。

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