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学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 工 学 ) 大 塚 淳 一

学 位 論 文 題 名

砕波乱流中の気液相互作用及び気体輸送の素過程 学位論文内容の要旨

  

沿岸域で発達す る波浪の砕波は, 連続する砕波ジェ ットの着水によって流体中に大量の気泡と大規模な三次 元渦を生成する. 流体中に混入した 大量の気泡は個々 の気泡からの溶解を通じて大気から海中への気体輸送の 役割を担う一方, 大規模を三次元渦は底質の巻き上げや浮遊砂等の輸送,拡散に大きく寄与することが指摘され ている.これら砕 波に伴う気泡と大規模渦による物質の輸送,拡散は沿岸流による広域流動場の物質輸送と共に 沿岸域の生態的, 物理的環境変化に大きく影響を与えていると考えられる.砕波帯における物質の輸送,拡散を 定量化するために は,気液各相の速 度や乱れおよびそ れらの時空間遷移を明らかにする必要があるが,砕波帯 は空 隙率 が

10%

以 上で 混入 する気泡と液 相が異をる時空間ス ケールで運動する 極めて複雑な気液 混相乱流場 であり.それらの 物理量を精度良く計測した例は少をく十分を情報が得られていをい.従来,多くの流体計測で 使用 され て いる 超音 波 流速 計(ADV) や レ ーザ ー流 速計(LDV) は液相単相を対象 とした点計測法で あり,砕波 帯に生成される気 泡の運動や三次元 的渦の時空間遷移 を明らかにすることはできをい.一方,平面上の瞬時流 速分布を計測可能 をParticle Image Velocimetry(PIV) や超音波放射軸上の瞬時流速プロファイルを計測可能誼

Ultrasonic Velocity Profiler(UVP)

に代表される新たを流体計測手法は,波浪場の空間的を速度情報を効率よく 取得することが可 能であり,点計測 では困難であった 砕波帯における乱れ構造やその遷移等を解明するための 有効 を計測手法として 期待されている. 本研究では,UVP および気泡 ・流体同時画像計測 手法を適用したPIV により,未だ不明 を点が多い砕波下の気泡運動および三次元的渦の構造やスケール,さらにそれらの時空間遷移 について明らかに するとともに,これらの情報をもとに,砕波により海中へ輸送される気体として炭酸ガスの輸 送量,拡散過程を 明らかにすること を目的としている .

  

本 研 究 は

4

つ の 章 で 構 成 さ れ て お り , 各 研 究 の 内 容 お よ び 主 要 を 結 果 を 以 下 に 示 す .

(1 )実 海域における砕波 下の気泡生成および 気泡輸送過程の観 測

  

実海域において 砕波帯の海底面に 水中ピデオカメラ を設置し,砕波ジェット着水による気泡の生成および輸 送.拡散過程を撮 影した,砕波ジェット着水時に生成された大量の気泡は無秩序に拡散するのではをく,その多 くが底面方向ヘ輸 送され,局所的に大量の気泡が集中する気泡塊を形成する.この気泡塊は砕波フロントの進行 とともに雲状に広 く分布し,砕波フ ロント直下および その背後において規則的に配列する組織的構造を形成す る.気泡塊に巻き 込まれて底面近傍まで連行される気泡の多くな非常に径が小さく,浮上せずに非常に長い間対 流を続ける.これ ら比較的深い領域に連行される気泡は,深部に対する気体の供給源として重要を役割を有する 可能性があり,(3) ,(4) により詳細 に検討される.

(2)UVP

による波峰 方向流速分布の計 測

  

二 次元 造 波水 路に お いてUVP による波 峰方向流速分布の計 測を行い,砕波後 の三次元乱流構造 の時空間変

化を特徴化した, 遷移領域において,水路横断面上で循環するー対のセル状大規模渦および二対の循環渦が形成

    ‑ 85

(2)

さ れ , こ の 大 規 模 循 環 渦 の 生 成 箇 所 に 比 較 的 強 い 乱 れ エ ネ ル ギ ー 領域 が 存在 す るこ とを 発 見し た .計 測 され た     f

波 峰 方 向 流 速 に 対 す るWavelet波 数 ス ベ ク ト ル に よ り 波 峰 方 向 に 非 一 様 教 分 布 を 持 つ三 次 元流 れ の波 数 分布 を 特 徴 付 け た . 波 高 の 半 分 程度 のス ケ ール を もつ 高 工ネ ルギ ー 領域 は ,砕 波 初期 段 階で は管 状 に岸 沖 方向 ヘ 伸張 す る 分 布 を も ち , 遷 移 領 域 では 斜め 下 方へ 伸 びる 分 布と をる , これ ら の分 布 と砕 波 直後 に発 生 する 交 互交 代 縦渦 お よ び 斜 降 渦 の 分 布 と の 類 似 性 は , こ の ス ケ ー ル の 波 峰 方 向 流 速 成 分が こ れら の 渦の 波峰 方 向変 動 を特 徴 付け て い る .

(3)PIVに よ る 砕 波 帯 の 気 液 両 相 の 速 度 同 時 計 測

  光 学 的 波 長 選 択 に よ る 気 泡 ・ 流 体 同 時 画 像 計 測 手 法 を 適 用 す る こと に より 砕 波乱 流場 の 気泡 と 水粒 子 を分 離 し て 撮 影 し ,PIVに よ る 速 度 計 測 を 経 由 し て, 気 液両 相の 乱 流統 計 量お よ びそ れ らの 相互 作 用の 水 深・ 岸 沖方 向 変 化 に つ い て 特 徴 化 , 定 量化 を行 っ た, 砕 波時 に 生成 され た 大量 の 混入 気 泡は 砕 波後 の水 位 変動 に 起因 す る強 い 水 平 圧 力 勾 配 と 砕 波 に 伴 う 三 次 元 大 規 模 渦 内 の 圧 力 勾 配 に 敏 感 に 応答 し ,水 粒 子の 運動 軌 道に 追 従せ ず 高速 で 輸 送 さ れ る . こ の と き 発 生す る水 粒 子よ り 卓越 し た気 泡速 度 は流 体 側に 新 たな 乱 れを 誘発 す る. 気 泡の 運 動が 誘 発 す る 乱 れ エ ネ ル ギ ー は 遷 移 領 域 の ト ラ フ レ ベ ル に お い て 最 大 値 を示 し ,砕 波 によ って 生 成さ れ る乱 れ エネ ル ギ ー の10%程 度 と を る .

(4)砕 波 帯 に お け る 溶 存 炭 酸 ガ ス 濃 度 の 計 測

  密 閉 し た 二 次 元 造 波 水 路 内 の 気 相 に 炭 酸 ガ ス を 充 填 し 造 波 す る こと に より , 砕波 帯で 水 中に 溶 解す る 炭酸 ガ ス の 濃 度 を2色 の 螢 光 試 薬 を 用 い るLaser Induced Fluorescence(UF)に よ っ て 計 測 した . 砕波 ジ ェッ ト 着水 点 近 傍 で は , 複 雑 に 変 形 し た 気 液 界 面 お よ び 混 入 気 泡 か ら 炭 酸 ガ ス が水 中 に溶 解 する ため ,200ppm以上 の 高濃 度 溶 存 炭 酸 ガ ス 領 域 が 現 れ る. 混入 気 泡は 三 次元 的 渦に よっ て 深部 ま で輸 送 され , 個々 の気 泡 から 炭 酸ガ ス を溶 解 す る . 遷 移 領 域 で は 三 次 元的 渦に よ って 輸 送さ れ る気 泡量 が 多く , 深部 に おけ る 炭酸 ガス の 供給 源 とし て 大き く 寄 与 す る と と も に , 気 泡 運動 が溶 解 した 炭 酸ガ ス を拡 散す る 乱れ の 供給 源 とし て も作 用す る .三 次 元的 渦 によ る 乱 流 拡 散 は , 水 面 近 傍 の 高濃 度溶 存 炭酸 ガ スを 急 速に 深部 ヘ 輸送 し ,そ の 速度 は 静水 時に お ける 分 子拡 散 速度 の 20000倍 以 上 に 達 す る , 水 深 が 深 い 遷 移 領 域 で は 供 給 さ れ た 溶 存 炭 酸 ガ ス が 容 易 に 拡散 す るた め ,比 較 的長 時 間 , 低 濃 度 状 態 を 継 続 す る. 一方 , 水深 が 浅い ボ ア領 域で は 供給 さ れた 溶 存炭 酸 ガス が空 間 的に 十 分混 合 され や す く , 相 対 的 に 速 く 継 続 的 な 濃 度 上 昇 を 開 始 す る .

以 上 ,(1)か ら(4)に 示し た 各研 究 の結 果よ り ,本 研 究は , 今ま で 計測 され を かっ た 砕波 帯 への 気泡 混 入過 程 と砕 波 乱 流 に よ る 輸送 過 程, さ らに こ れら を通 し た砕 波 帯へ の ガス 輸 送過 程に つ いて 系 統的 に 実験 を行 い ,未 解 明で あ る 砕 波 下 の 気 液 混 相 乱 流 と 物 質 輸 送 過 程 に 関 す る 新 た を 知 見 を 与 え る も の で あ る .

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(3)

学位論文審査の要旨 主査   准教授   渡部靖憲 副査    教授    山下俊彦 副査    教授    清水康行 副査    教授    泉    典洋

学 位 論 文 題 名

砕波乱流中の気液相互作用及び気体輸送の素過程

  

沿岸域では波浪の砕波によって.流体中に大量の気泡と大規模教渦が生成される.大量の気泡は大 気から海中への気体輸送に対して重要を役割を担う一方,大規模渦は気液両相の輸送,拡散に影響を 与えることが指摘されている.このようを砕波による海中への気体輸送は,海生生物による生産活動 が活発を沿岸域において,その活動に必要を溶存酸素や溶存炭酸ガスの供給源として大きく寄与し ている.多様かつ複雑を生態系を有する沿岸域の環境変化を予測するためには.砕波による気体の輸 送メカニズムを明らかにし,その輸送量を求めることが不可欠といえるが,砕波現象に関する多くの ことが未だ不明であり,砕波による気体輸送の基本的メカニズムすら解明されていをいのが現状で ある,

  

砕波現 象の理 解を困難にしている主要を原因は,次のとおりである.(1) 流体中の気泡の径や数 など, 気泡に 関する 物理量の計測では主に高速ビデオカメラやボイド計が使用されているが,こ れらの 計測法 は砕波 帯のよ うに気 泡が空隙 率10 % 以上で混 入する 領域では計測精度が著しく低 下するため適用することができをい.(2) 従来,多くの乱流計測で使用されているAcoustic Dopplar

Velocimetory (ADV)

Laser Dopplar Velocimetory (LDV)

は空間上のある点の流速を取得する計 測法であり,時間的,空間的に変化する砕波下の渦構造を把握することができをい.(3) 砕波帯に混入 する大 量の気 泡がそ の浮カや抗カによって流況全体の変化に影響を及ばすことが指摘されている が。そのメカニズムを解明する計測手法が確立されていをい.っまり,砕波帯において適用可能を計 測ツールがをいことが砕波現象の理解を妨げているおもを要因といえる,こうした背景の中、本研究 は,新たを流体計測法を適用・開発することにより,これまで十分理解されていをかった砕波帯にお ける気液両相の運動について新たを知見を得るとともに,これらの情報をもとに砕波による海中へ の気体輸送の素過程を明らかにするものである,

本研究で得られた主要を結果を以下に示す.

  

@実海域において砕波帯の水中撮影を行い,砕波ジェット着水による気泡の生成および輸送,拡散 過程を明らかにした.砕波ジェット着水時に生成された大量の気泡は無秩序に拡散せず,その多くが 底面方向ヘ輸送され,局所的に大量の気泡が集中する気泡塊を形成する.この気泡塊は砕波フロント の進行とともに雲状に広く分布し,砕波フロント直下とその背後において規則的に配列する組織的 構造を形成する.

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(4)

  

◎二次元造波水路において超音波放射軸上の流速分布を計測可能をUltrasonic Velocity Profiler

(UVP)

による波峰方向流速分布の計測を行った結果,砕波後,水路横断面上で循環するセル状循環

渦が生成され,その生成箇所に比較的強い乱れエネルギ一領域が存在することを発見した.この領域 では水面から底面方向への気体輸送が促進される.

  

◎ ◎で取得された波峰方向流速分布に対してWavelet 波数解析を行い,砕波フロント背後におい て管状の高強度ウェーブレットスベクトル領域が,水面から斜め下方に生成されることを明らかに した.この形状は斜降渦と極めて類似性が強く,これまで気泡の運動軌道からのみ確認されていた斜 降渦のスケールを初めて計測することに成功した.

  

@光学的波長選択による気泡・流体同時画像計測手法を開発し,砕波乱流場の気泡と水粒子を分 離して面的計測を行い乱流中の砕波連行気泡のカ学的相互作用を見積もることに成功した.砕波時 に生成された大量の混入気泡は砕波後の水位変動に起因する強い水平圧力勾配と砕波に伴う大規模 渦内の圧力勾配に敏感に応答し,水粒子の運動軌道に追従せず高速で輸送される.このとき発生する 水粒子より卓越した気泡速度は流体側に新たを乱れを誘発し,その乱れは遷移領域のトラフレベル において最大値を示すことを明らかにした,

  

◎ 砕波帯 で水中 に溶解 する炭 酸ガス の濃度 を2 色の螢光試薬を用いるLaser Induced Fluores‑

cence(LIF)

によって計測した.砕波ジェット着水点近傍では,複雑に変形した気液界面および混入

気泡から炭酸ガスが水中に溶解するため,高濃度溶存炭酸ガス領域が現れる.◎に示した斜降渦に よって輸送される大量の気泡は,深部における炭酸ガスの供給源として大きく寄与するとともに,溶 解 し た 炭 酸 ガ ス を 拡 散 す る 乱 れ の 供 給 源 と し て も 作 用 す る こ と を 明 ら か に し た .

  

これを要するに,著者は,今まで計測し得をかった砕波特有の流れを抽出する計測法と解析法を提 案し,砕波乱流に関する新たを知見を得ることに成功するとともに,砕波による海中への気体輸送の 素過程を明らかにしており,海岸工学のみ顔らず流体力学,混相流体力学,海洋物理学に寄与すると ころ大をるものがある,

  

よ っ て 著 者 は , 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学位 を 授 与 され る 資 格 ある も の と 認め る .

88―

参照

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