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論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨の公表

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論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨の公表

学位規則第 8 条に基づき、論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨を公表する。

○氏名 朝倉 圭一(あさくら けいいち)

○学位の種類 博士(理学)

○授与番号 甲 第 1035 号

○授与年月日 2015 年 3 月 31 日

○学位授与の要件 本学学位規程第 18 条第 1 項 学位規則第 4 条第 1 項

○学位論文の題名 ヒト心筋細胞数理モデルの開発とEAD・DADメカニズムの 数学的解析

○審査委員 (主査)野間 昭典 (立命館大学生命科学部教授)

天野 晃 (立命館大学生命科学部教授)

田中 秀和 (立命館大学生命科学部教授)

<論文の内容の要旨>

医薬品開発過程において、新規医薬品候補化合物の心毒性安全性評価、特に催不整脈 リスク評価は極めて重要である。アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration;

FDA)は2013年統合的心毒性リスク評価方法を提案している。その提案では、1) マルチ

イオンチャネルアッセイ、2) ES/iPS 細胞を用いたアッセイおよび、3) 心筋細胞数学モデ ルを用いたin silico評価法が提案されている。今回我々は、in silico評価法開発に向けて細 胞レベルで観察される不整脈である早期後脱分極(Early afterdepolarization, EAD)およ び、後期後脱分極(delayed afterdepolarization, DAD)を再現できるヒト心室筋細胞モデル を開発することに成功した。

EADやDADの発生には、細胞膜イオンチャネルだけでなく、細胞内のCa2+動態が関与 していると考えられてきた。この仮説を検証し、定量的なレベルで確立するため、ヒト心 室筋細胞モデルを開発し、これに数学解析(リードポテンシャル解析)を適用して、その メカニズムを解明した。この心室筋細胞モデルには、Hinch et al(2004)による Ca2+

releasing unit model (CaRU)を改編して用いた。イオンチャネル動態については、これま で報告されたヒト心室筋細胞を用いた実験研究成果を基盤として、動物実験から得られた 枠組みの中で、実験式を作成した。一方、筋小胞体からのCa2+放出部位近傍のCa2+濃度勾 配を三つのCa2+分画として再現し、Ca2+動態を精緻化した。これによって、正常な電気的 活動から、細胞内 Ca2+の一過性上昇、筋収縮に至る一連の反応を再現できるヒト心室筋細 胞モデルが完成した。

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<論文審査の結果の要旨>

モデル解析の結果、活動電位の再分極相(-1.20 mV/ms)は内向き整流K+チャネル(IK1)によ る-0.55 mV/msに加えて、Na/Ca交換電流(INCX)による-0.20 mV/ms, Na+電流(INaT)による

-0.13 mV/msなどによって構成されていることが解明された。DADは実験研究で通常用い

られている Na+ポンプの部分的な抑制と高頻度刺激、あるいは、Ca2+イオンのマイクロ注 入法によって誘発することができた。EADは今回新規に開発したINaLモデルの不活性化を 遅延することによって誘発することができた。EADのリードポテンシャル解析では、正常 活動電位では最も大きな役割を演じている IK1が、EAD の誘発では逆に、その開閉機序に よって活動電位再分極相を反転する主要な役割を演じることが明らかになった。他の電流 系は逆に、EADの発生を抑制する方向で作用した。更に、EADの急速立ち上がり相の45%

がICaLに、残り54%がINCXによることが結論された。これらの数学モデルによる定量的解 析は、新規に開発する薬物の催不整脈リスクを評価するために有力な手段として応用でき ると結論した。

本論文の審査に関して、2015 年 2 月 2 日(月)15 時 00 分~16 時 30 分、クリエーション コア会議室において公聴会を開催し、申請者による論文要旨の説明の後、審査委員は学位 申請者・朝倉圭一氏に対する口頭試問を行った。各審査委員および公聴会参加者より、心 臓不整脈の病理と治療、新規薬物の開発、薬物の副作用としての催不整脈作用予測方法、

心筋細胞モデルの開発とその応用、などの質問がなされたが、いずれの質問に対しても申 請者の回答は適切なものであった。よって、以上の論文審査と公聴会での口頭試問結果を 踏まえ、本論文は博士の学位に値する論文であると判断した。

<試験または学力確認の結果の要旨>

本論文の主査は、本論文提出者と本学大学院生命科学研究科博士課程後期課程在学期間 中に、研究指導を通じ、日常的に研究討論を行ってきた。また、本論文提出後、主査およ び副査はそれぞれの立場から論文の内容について評価を行った。

本論文提出者は、本学学位規程第18条第1項該当者であり、論文内容および公聴会での 質疑応答を通して、本論文提出者が十分な学識を有し、課程博士学位に相応しい学力を有 していると確認した。また、本論文提出者は理学的な面においても学術的な面においても 国際的に評価される研究を行っており、副論文にある2014年Progress in Biophysics and Molecular Biology 116, pp.11-24は心筋バイオシミュレーション研究領域では権威ある国 際誌であり、高い評価を受けている。本論文提出者の量的ならびに質的に優れた研究業績 により後期課程(一貫制博士課程)2年6ヶ月在学での修了が適当と判断した。

以上の諸点を総合し、本論文提出者に対し、「博士(理学 立命館大学)」の学位を 授与することを適当と判断する。

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