7 68 金 沢大 学 十 全 医学 会 雑 誌 第98巻 第4号 7 6 8 −7 7 9 く1 9 鍋1
先 天 性赤緑色覚異常における網膜電 図 オフ応答急峻部の臨床応 用
工. 色覚異常の程度と網膜電 図 所 見との相関 関係につ い て
金沢大 学 医 学部 眼 科学 講 座 く主任こ河 崎一 夫教 授1
花 崎 秀 放
く平 成1 年7 月1 8日受 付I
非 定型 的 先天性 赤 緑 色 覚 異 常 者の診 断に関す る研 究の準 備段 階と し て, まず6 8名の定 型 的先天性 赤 緑 色 覚 異常 者に お け る網 膜 電 図くele ctr o r etin ogr a m ,E R Gl オフ応 答 急 峻 部の短 波 長く入11 にお け る分 光 感 度の長 波長 く入21 にお け る分光 感 度に対す る比の対 数 便 りog s e n sitivit y qu otie ntl SQ く11, 入21 ま た は SQ ナ 所 見を検 討し た. SQ く4 8 0n m , 6 2 0n ml の平 均 値 くm e a n , Ml 土壌 準 備 善 くsta nda rd de viati。。.S Dンは第1色 覚 異 常 者 群 く2 1勧 で は 0.9 5 士0.1 2 で あ り, 第2色 覚 異 常 者 群 く3 6射 で は − 0.09士0.1 1 であり, 前 者は後 者に比較し有 意に大き かったくp く0.0 0 1J. SQ く50 0n m , 6 0 0n ml の M 士 S D は第1 色覚 異 常者 群 く3 2創 で は 0.6 6 士 0.1 1 で あ り, 第2 色 覚 異 常 者 群 く3 6創 では −OtO 3士0■0 9
で あ り, 前 者は後者に比較し有 意に大きか ったくp く0■0 0 1ト 定 型 的先天性 赤 緑 色 覚 異 常 者の色 覚 異 常の 程 度を社 会 適性 判 定 基 準 く馬 場 いこ従っ て微 塵.弱 度 . 中等 度 .強 度の4群に分 類し た■ SQ く4 8 0n m ,
6 2 0n ml の M 士S D は第1 色 覚 異 常 者に お いて は弱 度群で0.9 5 士0.1 4, 中等 度 群で 0.9 9 士0.13, 強 度 群 で 0.9 3士0.12 であり. 第2 色 覚 異 常 者において は微 度 群で −0.1 3士0■1 4, 弱 度群で −0■09士0■15, 中 等 度群で −0.0 8士0.11, 強 度群で −0−0 5士0.0 7 であった. SQ く5 0 0n m ,6 0 0n ml の M 士 S D は第1 色 覚 異常 者におい て は弱 度 群で 0.6 2土0.1 0, 中 等 度群で 0.6 7土0.1 0, 強 度 群で 0−6 8士0■1 3,で あ り, 第2 色 覚 異 常 者において は微 塵 群で −0■0 3 士0.0 9, 弱度 群で −0.0 3士0−1 1, 中 等 度 群で −0.0 3士0.11, 強 度 群で −0.0 2士0.0 7 であっ た■ SQ く4 80n m ,6 2 0n ml あ るいは SQ く5 0 0n m , 60 0n ml の M に関し て は,
第1色 覚 異 常 者の う ち微 度を除いた 3群の問およ び第2 色 覚 異 常 者の 4 群すべ て の間で有 意 差は認め ら れ なかった. 定 型 的 第1 およ び第2色覚 異 常 者群のそ れ ぞ れにおいて色 覚 異 常の程 度に かか わ らずSQ の M が ほ ぼ 一定であ ること は, 異 常 錐 体の光に対す る脆 弱 性, 錐体の網 膜に おけ る分 布の個 人 差 あるい は神経 伝 達 系の異 常によ るので は ないか と考え ら れ た.
Iiey w o rds ele ctr o r etin ogr a m , r apid off−r e SpO n S e, C O nge nital r ed−gr e e n c olo r d eficie n cy, Cla s sific atio n of gr ade, Spe Ctr al s e n sitivit y qu otie nt
先天性赤 緑 色 覚 異 常は, 日本に お い て は男子の約
5%という高い発生頻 度を有す ること1 ,2−, さ らに色 覚
異 常 者に対す る就 学.就 業上の制 約が未だに存 在す る こと よ り, 非 常に重 要な疾 患であ る とい え る■ 先天性 赤緑 色 覚 異 常を診 断す るに際し少な く と も 2 つの問 題 点が あ る. その 1つは, 従来よ り先天性 赤緑 色覚 異 常
の診 断に用いら れて い る検査法は すべて自覚 的 手法で あ るの で, 被 検 者の意 志の影 響を完 全には排 除す るこ と ができ ないという点であ る. こ の点から, 従 来の色 覚 検査法で は, 検 査 結 果を信 頼でき ない例や返 答拒否
によ る実施 不 能例が生 ずること が考え ら れ る. こ のよ う な状 況か ら, 先天性 赤緑 色 覚 異常の他 覚 的 診断法の
A b br e viatio n s 二A O H −R−R,A m e ric a n Op tic al H a rdy−Ra nd−R ittle r三b勒 photopic bニE R G,
ele ctr o r etin ogra m i M , m e a n ニP a n el D−1 5, Fa r n s w o rth Dichoto m o u s Te st P a n el D−15 ニS D,
sta nd a rd de viatio ni S P P, Sta nda rd P s e ud ois o chr o m atic P late sニ S Q , log s e n sitivity
色 覚 異 常の程 度と網 膜 電 図 所 見との相 関 関係
確立が望ま れ ていた.
先天 性 赤繹色 覚 異 常は錐 体の異 常に端を発す るの
で3川, その他 覚 的診 断には錐 体 系 機 能を 反映す る指 標を用いる必 要が あ り, これ ま でに フリッ カ ー 網 膜 電 図 くele ctr o r etin ogr a m . E R Gl乃8 ,や E R G photopic b
仙 波恥 0,を用いた研 究が試み ら れ ている■
Yo n e m u r a ら1 1 1, 米 村ら1 2 1 お よ び 田辺瑚 は, 人眼 E R G 諸 波のう ちでオフ応 答 急 峻部が主に錐 体 電 位で
構成さ れ, 先天性 赤 緑 色 覚 異 常の他 覚 的 診 断に応用可 能であること を報 告し た. さ らに当教 室の仲里瑚 は先 天性赤緑 色 覚 異 常に おけ る オフ応 答 急 峻 部の分光 特 性 を検討し, 短 波 長 く入1いこ おけ る分 光 感 度の長 波 長 くA 21 にお け る分 光 感 度に対す る 比 の対 数 値 りog s e n sitivit y qu otie nt, SQ く入1, 入21 ま た は SQ ナを 用 いることによ り, 色 覚正常者, 第1色 覚 異 常 者お よ び 第2色 覚異 常 者の 3 群を 互い に鑑 別し う ること を報 告 した, こ こ に至 り, 当 教室 の 一連の研 究によって先天 性赤緑 色覚 異 常の他 覚 的 診 断法が確 立さ れ, 第1 の問 題点が解 決さ れ た.
第2の問題 点は非 定型的先天性 赤 緑 色 覚 異 常 者の存 在で あ る. 先天性 赤 緑 色 覚 異常の診 断は被 検 者にとっ
て重 大な意 味を持つので, 判 定にあ たっ て は 正確さ が 要求さ れ, 曖昧な診 断は極 力 排 除さ れ る べきであ る が,
一部に非定型的な検 査 結 果を示 す先天性 赤 緑 色 覚 異常者が存 在し, 診 断に苦 慮す る場 合がある. 具体 例 と し てスク リ ー ニングに用いる仮性 同 色表を も 正読す
る異常者1 5 ト 川, ア ノマ ロ スコ ー プ検 査でほ ぼ 正常 所 見
を 示 す異常 者 錮1 8I 1 9I, 仮 性 同 色 表によ り異 常の型 を誤 分類さ れ る 異常 者艶 卜 訂Iが挙げ ら れ る.
本研 究の目 的は, 当教 室の 一 連の研 究によ り確立 さ れ た他 覚 的診 断 法1 1 ト 141を 用い, 上述の非 定型的 先天性 赤緑色 覚異常 者に つ いて詳 細な検 討を加え, オフ応 答 急峻 部が定型的 先天性 赤緑 色 覚 異 常の他 覚 的 検 出の み
にと どま らず, 非 定 型 的 先天性 赤 緑 色 覚 異 常の診 断お よ び病 態把 握にも有用 で あ ること を 示 すことにあ る. 本報では ま ず, 非 定型的 先天性 赤 緑 色 覚 異 常 者に おけ る E R G 所 見と色 覚正常 者あ るいは定 型 的 先天性 赤 緑 色覚異常 者に おけ る E R G 所 見との比較 検 討に先立 ち, 定型 的先天性 赤 緑 色 覚異 常 者に お け る色 覚異常の 程 度が E R G 所 見に どのよ うに反映さ れ るの かを検 討 し, 定型的先天性 赤 緑 色 覚 異 常に おけ る色 覚 異 常の程 度の多様 性およ び その病 態に つい て考 察す る.
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対 象および方 法
工. 対 象
定 型的 第1 色 覚 異 常 者3 2名 く9 歳か ら2 2歳, 平 均 1 5.7歳, 男 性3 1名, 女性1名うお よび定型的 第2 色 覚 異 常 者3 6名 く9歳か ら2 5歳, 平 均16.1歳.男 性34名,女 性2 引 を対 象と し た. 定 型 的な色覚 検 査 結 果と は,
仮 性 同色 表におい て先天性 赤 緑 色 覚異 常 者に期待さ れ る読み方を し, かつアノマ ロ スコ ー プ検 査に お いて も 仮 性 同色 表の所 見に対応す る異 常を示 す場 合と し た. 第1 色覚 異 常 者と第2色 覚 異 常 者の2 群を, 馬 嶋劫,が 提 案し た社 会 適 性 判 定基 準に従って異 常の程 度 別 く微 塵. 弱度 .中 等 度. 強度の 4 栗駒 に分 類し た.
仲里1 弟が述べた色 覚正常 者3 0名 く1 5歳か ら 2 9歳, 平 均2 3,5歳,すべて男性1 を比較 対 照と し た,
王I. 方 法 1 . 色 覚検 査 法
仮 性 同 色 表と して T he Se rie s of P late s De sign ed
a s a Te stfo r Colo u r−B lindn e s sく3 8 P late s E ditio n,
金原 出版, 東 京, 19 8 4, 石原表3 8表 版I, 総 合色 盲 検 査 表 く半田 屋 , 東 京, 発 行 年 度 無 記 載. 石原 表 伴田 嵐 県 東 京 医 科 大挙 式検 査 表く村上色 彩 技術 研 究 所, 東 京, 昭 和5 8年 度版. Tokyo M ed ic al Co11ege Ps e ud.
Ois o chr o m atic P late s, T M Cl,標 準 色 覚検 査 表 く第1
版 第1 刷, 医 学 書院, 束 京,1 9 7 8 , Sta nda rd Ps e ud.
Ois o chr o m atic Plate s, S P Pl, 石原.大 熊 色 覚 異常 検 出表 . 程 度 表 伴田 屋, 東 京, 1 9 7 7, 石 原 .大 熊 熱, A m e ric a n Op tic al H a rdy.Ra nd−R it tle r Ps e udois o− Chr o m atic P late sく第2 版, A m e ric a n Op tic al, N e w
Yo rk, U.S.A .,A O H −R−Rl の6 種を 用いた. ア ノマ ロ スコ ー プ検査には ナ イツアノマ ロスコ ー プ O T け イツ. 蒲 郡1 を 用いた. 太 田 ら2 9,, 岡 島抑 は, 本 器の検 査結果 が ナ ー ゲル ア ノマ ロスコ ー プ I 型くSch mi dt u.
Ha e n s ch, Be rlin , D.D.R.I の検 査 結果 と よ く山一致 す
る こと を報 告し てい る. こ の ほか に Fa r n s w o rth
D ichoto m o u s Te st Pa n el D−1 5 t Psychologic al As s o ciate s, Saint Lo uis, U. S. A., Pa n el D−1軋 Ichi ka w a,s Colo r Pe r c ep tio n La nte r nく高田 器械, 東
京, ラ ンタン1 を 用いた. Pa n el D.15 と ラン タ ン の検 査 結果に おけ る .1pa s s
,, ぉよ び i くfail,, に対す る慣用
的和訳は ないが , 本 報で は そ れ ぞ れ 卜正答J およ び r 誤答J と 記載し た. 検査 は午 前1 0時から午 後3時ま
qu otie nt 三T M C , T okyo M edic al Collegeニ石 原 . 大 熊 表, 石 原 . 大 熊 色 覚 異 常 検 出 表■ 程度 表こ石 原 表38表 版, T he S e rie s of P late s D e signed a s a T e stfo r Colo u r B lindn e s s 三石 原 表
伴田屋上 総 合 色 盲 検 査 表ニ ラ ンタン , Ichik a w a,s Colo r Pe r c ep tio n L a nte r n