アメ リカ人 と日本人の断わ り表現の比較
荒 巻 朋 子
【キーワ ー ド】断わ り、異文化 間コミュニ ケーシ ョン、発話行 為、
ステ レオタイプ
1
. は じめ に「日本人 はアメ リカ人に比 べ て、はっき り物 をい わない
。
」「日本人 の表現方法 は唆 味である。」逆 に 「アメ リカ人の表 現方法 は直接 的であ る
。 」
とよく言 わ れる。角谷 ( 1 9 9 6)
は、単一民 族 に属す 日本人の コ ミュニケ ーシ ョンは、同 じ コンテ クス トを共有 している とい う安心 感 か ら、 おの ず と、r言 わ な くて もわ かるJ r
以心 伝心」的な もの となる、 と述 べ てい るが 、 日本 人の言 語表 現や行 動様式 の唆昧 さは、他 にも多 くの著書 によって指摘 されて いる。特 に、「依頼
」
や 「招待」「要請」 な どに対 して 「断わる」 とい う発話行為 は 相手の 意向に逆 ら うことに なるので、一般的 に相手の気 持 を傷つ けない よう に、感情 を害 さ ない ようにす る と、 ある程度娩 曲的 な表現 が要求 され る。 しか し、
日本人 に とって必 要 と思 わ れる娩 曲表 現は欧米人 に とって は時に「時間の 浪費
」
と受 け取 られ、批判の対象 とな った り (直塚
、1 9 8 1 )
反対 に、アメリ カ人 日本 語学習 者は、英語の言語表現 または知 識 を日本 語 に転移す ることに よって、 直 接 的な断わ りを多用 し、 日本人 に とって は 「失礼 で ある」
と受 け取 られる危険 性 もあ ると指摘 されている。 (志村 ・生駒、1 9 9 2)
一方、横 山
( 1 9 9 3)
はこういったア メリカ人 に対 して抱 く 「アメリカ人は 日 本人 よ り直接的 である。」 とい うステ レオ タイプ によ り、 日本 人は、 日本 人に 対 して 断わる時 よ り、 アメ リカ人に対 して断わ る時の方 が直接的 に ものをい う 傾 向が ある とい う調査結 果 を待、 この為 却 って 「日本人 はアメリカ人には直接的に話 して失礼 だ。」 とア メリカ人に反感 を抱かせ て しまうこ ともあ る と指 摘 してい る。
アメ リカ人 は本当 に日本 人 より直接 的に ものを言 うの であろ うか。Be
e be
&1 06
アメ リカ人 と日本人の断 り表現の比較Ta ka ha s hi ( 1 989) は日本人 アメ リカ人 それぞれ に対 す るス テ レオタイプが 果 た して真実 であ るのか を調査 し、「アメ リカ人 は必 ず しも日本人 より直接的 で はな い
。」つま り、 「 アメ リカ人 は日本人 よ り直接 的であ る。 」 とい うステ レオ タイプは必ず しも正 しくない という結論 を得た
。この結寵 は一般 的な認識 とは異 な り興 味深 い もので ある
。このため筆 者は Be e be&Ta ka ha s h i( 1 9 8 9) の調査 方法に修正 を加えた ものを用い て、更 にア メ リカ人 に対 して持つステ レオタイプの妥当性 を 、1 9 9 4 年 と 1 9 9 9 年の二度 に亘 り 検証 した。
一般 に外国人が 第二言語 を話 した場合、発音 ・文法上の誤 りは母 語話者に と って、「まだ、 学 習言 語 をよ く知 らないか らだ」 と容認 されやす いが 、社 会 的 ・文 化的なルール上の誤 りは、母語話 者 にとって、表面に現れてこないだけ に、「失礼 である、不誠 実であ る」 などの誤解 を生 じる危 険性が ある
。異文 化 間の コミュニケ ーシ ョンにお いて は、いわ ゆる文 法や発音 な どの 「 文法 能力 」 ( g r a mma t i c a lc ompe t e nc e ) に加 えて、言語社会の中でその価値観や文化的前提 、 社 会 的 ルー ル に適合 す る言葉 を使 う能力 「社 会言 語能 力 」( s oci ol i ngui s t i c c omp e t e nc e ) が必要 となる
。一般的 に日本人がアメ リカ人に対 して持 って いるステ レオタイ プが、真実で なかった とした ら、ステ レオタイプ に基づい た行為に よっても誤解や摩擦 が生 じうる
。本論 文は「断わ り
」の発 話行為 にお いて、 この ステレオタ イプが真実 か どうか検証す ることに より、異文化 間コミュニケーシ ョンの研 究、及び日本 語教育 の実践のための、一つの参考材料 を提供する ことが 目的 である
02 第‑回 調査の契横
Be e be&Ta ka ha s hi ( 1 9 8 9) は日本 人アメリカ人それぞ れに対するステ レオタ イプが果た して本当で あるのかを検証す るため 、英語 母語話 者 (アメ リカ人) と日本語 母語 話者 (日本 人)それ ぞれ 1 5 人に英語 による、「 談話 完成 テス ト
」( Di s c ou r s eComp l e t io nTe s t[ m ])を用い た調査 を行 った。「談話完 成テス ト
」とは被験者 に「断わ り
」が必 要にな るよ うない くつか の状 況 を与 え、実際 にそ の状況 におかれ た場合、被験者 ならどの ように答 えるかを、話 し言 葉で空欄 に 書いて もらうものである。
Be e be &Ta ka ha s hi ( 1 9 89) が行 ったテス トでは 「 会社 で部下 があ る提案 をし
上司 に同意 を求 めるが、 上司はそれが上手 くいか ないと思い、異論 を唱える。」
「上司 がある提案 を し部 下 に同 意 を求めるが、 部下 はそれ が上 手 くい か ない と 思い、 上司 に対 して異 論 を唱 える。」 とい う
2
つ の状 況が設 定 され 、被験 者 は 実際 に上司 また は部下 に話す言葉 を空欄 に記 入す る。 質問 、回答共 に英語で あり、 日本人 は上級 レベ ルの英語 力 をもつ男 女 とされた。
この調 査方法 に は、い くつ かの問題 点が考 え られる。 即 ち 、
1
) この談 話完 成 テス トは 日本 語母語話 者 (日本人) に対 して も英語 で行 われ てお り、 このた め必ず しも英語 母語話者 と同 じレベルで英語 が話せ な い 日本人 が 回答者 に含 ま れた場 合、唆味 に断わ りたい と思 って も、唆味 に表現す る英 語能力が 足 りず に、直接 的 になって しまった 可能性が ある。
2)
このテ ス トが英 語で答 え る とされ ている ことか ら、 日本 人 回答者 は 日本 人に対 して とい うよ り 「アメ リ カ人 に対 して話 している」状況 を想定 した と考 え られ、従来 の英語教育 または一 般 的 な 知識 を背景 とす る 「アメ リカ人には 直接 的に もの を言 わなければ な らない」
と い う認識 の影響 で、意図 的 に直接 的 になっ て しま った 可能性 もある。 また3)
談話完 成 テス トで使用 された設問 は2
間であ り、 一般的 な結論 を得 るには さらに検証 が必要では ないか、 とい う点である。
こ うした ことか ら筆 者 は
1 9 9 4 年 3
月 か ら6
月 にか け て、Be e b e & Ta k a h a s h i ( 1 9 8 9 )
と同 じ状 況の設 問 に さらに4
間 を加 え て、英語 母語 話者 (アメ リカ人) には英 語で、 日本語 母語話者 に は 日本語 で談話完成 テス トを行 い、調査 した。3
第1
回調査( 1 9 9 4
年3
月〜6
月)3‑1
被験者第 1回調査 にあた って、被験者 を以下の よ うに定め た。
表
1 第
1回調査 被験者被 験 者 年 令 男性 女性 全体
AE:
英語母 語話者 (アメ リカ人)2 0
歳〜6 0
歳6
名6
名1 2
名被験者 全員が
2 0
歳か ら6 0
歳 まで の会社員 (公務員 を含 む 。以下同 じ) または 会社勤 め経験者 で ある。1 08
アメ リカ人 と日本人の断 り表現の比較英語 母語 話者 (アメ リカ人) とは 、 アメ リカ で生 まれ 育 ち英語 を母 語 とす る者 で 、以下
AE ( Ame r ic a nss pe a k i ngEn gl i s h)
と略す。 第 1回 調査 では 、全月 がニュ ー ヨーク在 住 であ る。日本 語母 語話 者 (日本 人 ) とは 、 日本 で生 まれ 育 ち 日本 語 を母語 とす る者 で、以下
J J ( J a pa ne s es p e a ki ngJ a pa ne s e)
と略す 。第 1回 調査 では、2 0
歳 まで は日本 で 育 ったが 、調査期 間において ニュー ヨー ク在住 の 日本人であ る0
な お 、 英 語 母 語話 者 (ア メ リカ人 ) の 男 性 を
AEM ( Ame r i ca nss pea ki ng Engl i s h, Ma l e)
女性 をAEF ( Ame r ic a nss p e a k i n gEng l i s h,Fe ma le)
、 日本語 母語話者 (日本 人) の 男 性 を
J J M ( J a pa nes es pea ki ngJ a pa nes e,Ma l e)
女 性 をJ J F ( J a pa ne s es p ea k i ngJ a pa ne s e , Fe ma le)
と以下 略す。3‑2
デ ータ収集方法デー タ収集方法 は前述 した ように、「談話完 成テス ト
」( Di s c o ur s eCo mp l e t i o n Te s t[ DCT])
の方 法 を用 いた。AE
は英 語で書 かれた 「談話 完成 テ ス ト」 に英語で回答 し
、J
Jは 日本 語で書かれ た「談話完 成 テス ト」に 日本 語で回答す る。3‑2‑1
状況設 定第 1回調査 の 「談話完成 テス ト」 (資料
1
)では、6
つの状況が設定 された。全 て が会 社 内 での 人間 関係 (上司 、 部下 、同僚 間 ) にお ける 会話 とい う状 況 設定 で ある。
設問 1、
2
は、Be e be &Ta ka ha s hi ( 1 9 8 9)
の結 果 と比 較す る ため に 、 ほぼ 同 じ状 況設定 になっ ている。即 ち、設問1
は上 司があ る 「提案」
を捷 示 し、 「ど うだ 、 いい 案 だ と思 わな いか」 と同 意 を求め るの に対 し、 部下 が 「そ う思 わ ない」
気持 を伝 える。 設問2
は部下 があ る 「提案」
を提 示 し、 それ に対 し上 司が 「いい と思 わない」気持 を部下へ伝 え る1)0設問3、 4は 部 下か らの休暇 の 「要請 」、 また上司 か らの残 業 の 「要請 」 に対 す る 「断わ り」であ る。 設問 3は上司 か ら部下 へ 、設問 4は部下 か ら上 司へ答 える。
設問
5
、6
は 同僚 か ら同僚へ 答 え る もので ある。間5
は異 性 の 同僚 か ら の食 事 の 「招待」、間6
は同僚 か らの車 を貸 して欲 しい とい う 「依頼」 に対 す る 「断わ り」 である2)0<設問 の状況設定 >
設問
1
上司‑部 下 設問2
部下‑‑上 司 設問3
上司‑部 下 設問4 部下一一上 司 設問5
同僚‑ 同僚 設問6 同僚‑ 同僚提案 (上 司が 部下の提案 を断わる) 提案 (部 下が 上司の提案 を断わる ) 要請 (上司が 部下の休暇 申請 を断 わる) 要請 (溝β下が 上司の残業 要請 を断 わる) 招待 (同僚か らの食事の誘い を断 わる) 依頼 (同僚 か らの車の借 用依頼 を断わる)
なお 「談話完 成テス ト
」
で得 た デー タの分析 ・解 釈 におけ る補足資料 を得 る 為、何 人か の被験者 に直接 イ ンタビュ ーを行 った。 その内 容 は第2
回調査 の 分 析結果 で使用 され ている。3‑3
データ分析方法3‑3‑1
「直接的」/「娩曲的 」の定義本論文 では 「談話完 成 テス ト」 で得 た 回答 を 「直接 的」 な表現 と 「直接的 で ない、娩曲的」 (以下、「娩 曲的」 と呼ぶ ) な表現 とに分類 した。 これ らは本論 文では以下の ように定義 した。
直接 的 :被験者 の属する 国の文化 的 ・社会的 背景 また は習慣、 コミュニケー シ ョン ・ルール等 によって補足 され ることな しに、 その言 語表現 の みか ら判 断 し て、相手の 意向 に対 す る 「話者の 意図 (否定的 な気持)」 (本論文 では 「話者の 本 当の気持」 とい う意味で以 下 「真意 」 と呼ぶ) が明確 に聞 き手 に伝わる断わ
り表現 を指す。
娩 曲的 :上記の 「直接 的
」
に分類 される以 外の断わ り表現 を指す。 即 ち、被験 者の属 する国の 文化的 ・社会的背 景 または習慣、 コニユニケ‑シ ヨン ・ル ール 等 に補 足 される ことな しに、 その言 語表現 の みか ら判 断 した場 合、相手 の意向に反す る、 話者の 「真意 」が明確 に聞 き手 に伝 わ らな い。
例 えば 第
1
回談 話完成 テ ス トの設 問5
の状況 (異性 の 同僚か ら 「来週、食事 に行 か ないか」 と誘 わ れたが 、「この人 とは行 きた くない」か ら 「断わる」 )
の 場合 に は、答 える側 (話者) の 「この人 と一緒 に行 きた くない」 という気持が 話者 の 「真意」
である。 例 えば 「付 き合 っている人がいる か ら、行 けません。 」
110
アメリカ人 と日本人の断 り表現の比較とい う回答 は 「真意」 が明 確 に聞 き手 に伝 わ る為、「直接 的」 と分 類す る。 し か し、 「来週 は忙 し くて 、 ち ょっ と行 け ませ ん。」 とい う回答 は 「一緒 に行 き た くない」 のか、 「一緒 に行 きたい」 が 「来週 は本 当 に忙 し くて断 わっ た」 の か聞 き手 には 明確 に伝 わ ら ない 為 、 聞 き手 は また誘 っ て し まう こ とがあ りえ る。 この よ うな回答 は 「娩 曲的」と分類 す る。
3‑ 3十 2
「断 わ り表現の レベ ル」 によ る分析以上 の よ うな判断 基準 で 「直接 的 」 か 「娩 曲 的 」 かの 分類 を した上 で さ ら に、 どの 程度 「直接 的
」
「娩 曲 的」
かで 、最 も 「直接 的」 な レベ ル#8
か ら最 も 「娩 曲 的」 な レベ ル#1
まで8
つ の 段 階 の レベ ル分 け を行 っ た。 (以下 「断 わ り表 現 の レベ ル」 と記す 。)(資料3)
8
段 階の レベ ルに分 け た ものの うち、 レベ ル# 8‑ 5
を 「直接 的 」、 レベ ル#4‑ 1
を 「娩 曲 的」 と定 めた。基本 的 に全 ての状 況 で 「断 わ る」 こ と を前提 と していた が 、回答 の中 に 「承知 しま した」 とい うよう な 「断 わ ってい ない 」 回答 が あ ったため 、それ は レベ ル 0と示 しt 3)03‑ 4
第1
回 目調査結果3‑ 41 1
「直接的」 回答者 数の割合談話 完成 テス トで 得 られた 回答 を 「断 わ り表 現 の レベ ル」 に よ って
8
段 階 の レベ ル に分 け、 レベ ル8‑5
の 「直接 的」 と判 断 さ れた 回答 者数 を各 設問 ご と にま とめ た。 そ して各 設問 につ いて 「直接 的 」 と判 断 された 回答 数 の全 回答 者数 に対 す る割 合 (% ) をJ J M,J J F,J J,AEM,AEF,AE
ご とにま とめ た ものが 表2
であ る。 この 割合 が高 いほ ど 「直接 的」 な回答者 が多 か っ た と い うこ とであ る。そ して 、グラフ1
はJ J(
日本 人 全体 )、AE
(アメ リ カ人全体 ) のみ を グラフに した もので ある。 <表2
、 グラフ1参照>
表 2
第1回調査 「直接的」 (レベル
8‑5)回答者 数の割合
被験 者
間 1
間 2 間 3 間 4 間 5 間 6J J M
67% 100% 100% 50% 0% 33%J J F
100% 50% 100% 67% 33% 50%J J
83% 75% 100% 58% 17% 42%AEM
50% 33% 83% 17% 17% 50%AEF 1 ∝) %
83% 100% 50% 67% 100̲%グラフ
1 第
1回調査 「 直接的」 (レベル
8‑5)回答者 数の割合
間1 間
2
問3 問4閉5
開6卑JJ(日本人全体)口AE(米国人全体)
112 アメリカ人と日本人の断り表現の比較 基本的傾向は以下 の通 りで ある。
設問1 、2、3、4:ほ ほ近 い割 合で ある ものの 、J Jの方 が AE よりやや 直接的 である
oAE<J J
設問5、6:AEのほ うが J Jより直接的である
oAE>J J
*設 問1 、2: Be e be &Ta ka ha s hi( 1 989) とほぼ同 じ状況 設定で 、同 じ
設問 1 ( 上司が部下の企 画案に対 し同意 しない) と設問 2 (部下が 上司の出 した案 に対 し同意 しない )では 「直接的
」回答者 数の割合 が、 アメ リカ人女性 は高い ものの、全体で は日本人 のほ うが 若干高い。設問 2 は 「直接 的」 回答が 日本人男性の全 点であるのに対 しアメリカ人男性が半 数 に満た ないのは興 味深 い。 つ まり、 日本人男性 は上 司に対 してはっき り物 をいい、アメリカ人男性 は はっき り言わない というこ とを示 して いる
。設問 3 ( 会社 の上司 が部 下の休 暇申請 を断 わる) では、「 直接 的」回答 者の 割合 が 日本 人男 女、アメ リカ人女性 が 1 0 0% となった。 アメ リカ人男性 もかな り高 い率で 、 この状況に関 しては、双方 とも、 はっ きり断 わる とい うことだ
。設問 4 ( 部下が上司の残 業要請 を断わる
。断わる理由は 「 大切な恋人 との約束 があ るため。」)では、全体 的に低い率で、特 にアメリカ人男性が 1 7 % と低 かっ た。 この間に対 して は、談話 完成テ ス トで 、丁 断わ る」 ことを前提 にしている のにもかかわ らず、「 基本的 に断われ ません 」 (レベル 0) と回答 又 はコメ ン ト を書い ている ものが、数人い た。また、断わる際に 「 恋人 との約束があ るか ら 」
という理由を書 いた回答 は、 日本人 では 0で あったが 、アメリカ人女性 に 1人 いた。
設問 5 ( 余 り好 きでない異性の同僚か ら食 事の誘いを断わる。 しか し、仕事 上の関わ りがあ るので無下に断われ ない。 ) では、「直接 的」回答 者の割 合が 、 アメ リカ人女 性は 6 7 % と最 も高 く、 日本 人女性 3 3 % 、アメ リカ人男 性 1 7 % 、そ
して日本人男性 は 0% で あった。 日本人男性では っきり断 わった回答者はいな かった
。日本人男性 は 「女性か らの誘い」 に慣れ てお らず 断わ り辛 いのだろ う か。 設問 5 ( 同僚か ら車 を貸 して欲 しい とい う依頼 を断わ る) ではア メリカ人 女性 は1 ( 氾%が直接 的であった
.日本人 、アメリカ人それ ぞれ男女 で比較す ると、設問 2 ( 部下が 上司の案 に
反対す る)の 日本 人女性 を除いては、全 ての状況 にお いて、女性 の方が男性 よ り直接 的であった。
3‑4‑2
仕事 とプライベー ト更 に設 問の状況 を 「仕事
」
「プライベ ー ト」 とい う視点か ら分 析 してみ る。間1 & 2
:仕事 に関連 した事柄間3& 4:
プライベー トに も多少関わ るが、基本的 には仕事 に関連 した事柄間5 & 6
:会社内 の人間関係 とはいえ、プライベー トな事 柄この 観点で分析 する と、 日本 人が若 干ア メリカ人 より直接 的 とな ったの は、
「上司 と部下 の上 下関係
」
で 「仕事」
にお ける事 柄で あ り、アメ リカ人 が 日本 人 よ り直漢 的 となった のは、「同僚 同士」
で 「プラ イベー ト」 にお ける事 柄で ある。つ ま り、「プライベー ト」 な事柄 では、「アメ リカ人は日本人 より直接的であ る」 とい うステ レオ タイプ の通 りであ るが 、「仕事」 にお ける事 柄で は、ステ レオタ イプは妥当 ではない と推察 され る。
3‑ 5
第1
回 目調査の考 察 と隈題第
1
回調査結果か ら、以下の ことが考え られる。「アメリカ人は 日本 人より直凄 的であ る」 とい うステ レオ タイプは 「断わ り」 の 発話行 為 におい ては、必ず し も正 しくない。特 に 「上下関係」での 「仕事
」
に おけ る 「断わ り」 表現 につい ては、「日本 人はア メリカ人 よ りやや 直接 的」 で あった。つ ま り
、Be e be &Ta ka ha s hi( 1 98 9)
と同 じ結果が第 1回調査 か ら得 られた。しか し、 第 1回調査 には以 下の ような問題点 も含 まれてい る。
1
)被験者 数が 日本人 、アメリカ人 とも12
名 と少 ないこと。2
) 日本人被験者 は全月がニ ューヨー ク在住 で、 アメリカ文化、社会の影響 を 多分 に受 けている と考 え られること。3
) 談 話完 成テ ス トの 問題 の状況 を、設 問1、2、3、4
を 「仕 事 」、間5、6
を「プライベー ト」な事柄 に設定 したが、話 し手 と聞 き手 の関係が 設問
1‑
4
は 「上司 と部下の関係」、設問5、6
は 「同僚 同士の関係 」のみで あったこ と。「仕事 / プ ライベ ー ト」 とい う区別 にもっと焦 点 をあてて 、比較 する114
アメリカ人 と日本人の断 り表現の比較た めに は 、話 し手 と聞 き手 が 「上 司‑ 部 下
」
「部 下‑ 上 司」
「同僚 同士 」の関係全 て につい て 「仕事
」
「プライベー ト」
双方 の状況 を設定 して 、分 析する必要がある こと。4
第2
回 調査( 1 999
年3
月‑4
月)第 1回調査 の問題 点 を踏 まえ
、1 9 99
年3
月か ら4
月に第2
回調査 を実施 した。4‑1
被験者第
2
回調査 では、被験者 を以下の よ うに定め た。表
3 第 2回調査 被験者被験者 年令 男性 女性 全体
AE:
英語母 語話者 (アメ リカ人)2 0
歳‑6 0
歳1 8
名25
名4 3
名第 1回調査 同様、被験 者全 員が
20
歳か ら60
歳 までの 会社 員 または会社 勤め 経験者 である。第
2
回調査 では、AE
は主 にカ リフォルニ ア州 、ニュ ー ヨーク州 、マサ チ ュ ーセ ッツ州 在住で ある。J
Jは主 に長崎 県、東京 都在住 である。J
Jの うちアメ リ カ在住 経験者 は4
名 (うち1
年以上滞在 は2
名 )である。4‑ 2
データ収集方法第一 回調査 同様、「談話 完成テス ト
( DCT)
」 (資料2)
を用 い、AE
には英語 でJ
Jには 日本 語で 回答 して も らっ た。第2
回調査 は第 1回調査 の反 省 を踏 ま え 、設問 を9
間に設定 した。 設問3
、6
、9
は前記 の3
つの 人間 関係 にお け る 「プライベー ト」 な事柄 とされてい る。<設問 の状況設定 >
設問
1
上司‑部 下 提案 (部下が 出 した捷案 を断わる) 設問2
上司‑部 下 要請 (部下か らの出張 申請 を断わ る) 設問 3 上司‑部 下 招待 (部下か らの招待 を断わる)設問
4
部下‑上 司 設問5
部下‑上 司 設問6
部下‑上 司 設問7
同僚‑ 同僚 設問8
同僚一 同僚 設問9
同僚‑ 同僚提案 (上司が 出 した提案 を断わる)
要請 (上司か らの資料作 成要請 を断わる) 招待 (上司か らの招待 を断わる)
提案 (同僚が 出 した提案 を断わる) 要請 (同僚か らの仕事の 要請 を断 わる) 招待 (同僚か らの食事の誘いを断 わる)
4‑3
データ分析方法第一 回調 査 に行 っ た 「断わ り表 現 の レベ ル
」
による分 析 に加 え、以下 の分 析方法 を加 えた。4‑3‑1
意味公 式 による分 析Be e b e , Ta k a h a s h i &Ul i s s ‑ We l t z ( 1 9 9 0)
などが使 用 した 「意味 公式( s e ma n t i c f o r mu l a s )
」 (資料4
) という基準 に多少 修正 を加 えた ものを使 って 、分析 した。意味 公式 とは、「謝罪
」
「言い訳」
「代案」 など、 人が もの を断わる ときに使 う 言葉 を、 その 意味 内容 によって分類 した もの であ る。例 え ば、同僚 か ら食事の誘 いを受 け た と き、 「ごめ ん、 来 週 は忙 し くて。」 と断 わった場 合、 この
「断わ り」 は 「謝罪」 と 「言 い訳」とい う二つ の意味 公式 を使 っ ている と分析 する。 それ ぞれ の意 味公 式の分 類 ご とに発現 回数 を集計 し
、AE
,J
Jに違 いが 現れ た点 に着 目 して、AE
,J
Jそれ ぞれ の 「断わ り表 現」
の傾 向 、特徴 などを 考察 した。4‑4
第2
回調査持果4‑4‑1
「直接的」 回答者 数の割合表
4
は各 設問 につ いて 、直接 的 と判断 され た回答者 数の全 回答数 に対 する 割 合 をJ J M , J J F , J J, AEM , AEF , AE
ご とに まとめた もの であ る。 つ ま り、割合 の パーセ ンテ ージが高 いほ ど、直接 的 な回答が多 い とい う ことを示す。 グラ フ
2
は、 その うちJ J (
日本 人全 体)AE
(米国 人全 体 )のみ取 り出 して 比べ た ものである。<表4
、 グラフ2 参照>
116 アメリカ人 と日本人の断 り表現の比較
表
4第
2回調査 「直接 的」(レベル
8‑5)回答者 数の割合被験者 間 1 間 2 間 3 間 4 間 5 間 6 間 7 間 8 間 9
J J M
79% 63% 25% 83% 86% 4% 65% 33% 13%J J F
93% 69% 28% 86% 76% 28% 66% 10% 24%J J
86% 66% 26% 85% 81% 16% 65% 22% 19%AEM
78% 56% 22% 69% 71% 6% 41% 39% 47%AEF
76% 52% 21% 68% 64% 12% 60% 28% 52%グラフ
1
第2
回調査 「直接 的」 ( レベル
8‑5)回答者 数の割合開1 同之同3 同4 同5 問6 開7 開8 問9
鴨JJ(日本人全体)ElAE(米国人全体)
基本的傾向は以下 の通 りで ある。
設問1
, 2 , 3 , 4 , 5 , 6, 7:
JJ、AE
はほ ほ近い割 合である ものの、J
Jのほ うがや や直接 的である。AE<J J
設問8,9:
AE
の方 が直接 的であ った。設問8
は若 干であ るが 、設問 9 はA
Eがかな り直接的で あった。AE>J J
*第
2
回調査 の設問1
と4
がBe e be &Ta ka ha s hi( 1 989)
の使 用 した設 問 とほ ぼ同 じ状況 であ り、第1
回調査 同様、同 じ結 果が得 られ た。以上、今 回の調査研究 の第 1の 目的であ る 「アメリカ人に対 して もつ ステ レ オタイ プが真実 か どうか」検討す る とい う観点か ら見 る と、
9
間中、7
間にお いて ステ レオタ イプが 否定 され、「アメ リカ人 は必 ず しも 日本人 より直接 的 で ない」 という結果が得 られた。 下記 においては、設問の設定状況 に即 して、傾 向 を分 析 してみた。4‑4‑2
「仕事/ プライベー ト」と 「聞 き手 と話 し手の 関係」第 1回調査では設問の状 況 を 「仕事」 と 「プライベー ト
」
な事柄 とい う視 点 か ら考 察 し、「仕事」
では 「アメリカ人は日本人 より直接的でない」が、「プライ ベー ト」では 「アメ リカ人 は直接的で ある」 とい った傾 向が 出た。第2
回調査 の結果 において も、 まず 「仕事/ プライベ ー ト」 の事柄 という視 点で分析 して みたが、それ らによって は一般 的な傾 向が 見 られ なかっ たため 、「聞 き手 と話し手の 関係」 とい う視点 を加 え て分析 してみた。
この よ うに
2
つの視点 に従 って、 まとめ てみると次 の通 りで ある。設問
1
上司‑部 下 設問2
上司‑部 下 設問3
上司‑部 下 設問4
部下‑上 司 設問5
部下‑上 司 設問6
部下‑上 司 設問7
同僚‑ 同僚 設問8
同僚‑ 同僚 設問9
同僚‑ 同僚仕事
AE<J J
仕事
AE<J J
プライベー ト
AE<J J
仕事
AE<J J
仕事
AE<J J
プライベー ト
AE<J J
仕事
AE<J J
仕事
AE>J J
プライベー ト
AE>J J
118
アメリカ人と日本人の断り表現の比較まず 、 「プラ イベー ト」な事 柄 として設定 された設問
3
、6
、9
について見 る。 設問3
は 「部下 か らバ ーベキ ュー大 会の招待 を断わる」、設問6
は 「上司 のホ ームパー テ ィの招 待 を断わ る」、設問9
は 「同僚 の食 事の招待 を断 わる」
とい う状 況設 定で ある。 回答 結果 か らアメ リカ人は 「プラ イベ ー ト」 な事 柄 にお いて、伺僚 同士で は 「直接 的」であ るが、「上下 関係」 では 「直接 的でな い」 とい うこ とが 示 されて いるO但 し、 設問 3、 6に関 しては、プラ イベ ー ト面 とは いえ、上司 と部 下の 関係 であ るか ら、仕事 上で の立 場 を考 えず に は い られ な い状 況で は ある。 設 問
6
に関 しては、ア メリカ人回答者 の 中か ら、次の ような コメン トをも らった。 「実際 、上司 か らの この よ うな招 待 は、私 は 決 して断わ らない。 それ は、社内政治上 重要であ って
( p o l i t i c a l l yi mp o r t a n t )
、(嫌で も)たっ た数時 間我慢 すれば いい ことだ。私 と働 く人 間は、だれ も断わ らな いだ ろう。」設問
6
につい ては、 日本 人回答者 か ら も「断わ れな い」
とい うコ メン トを もらって お り、 日本 人ア メ リカ人 ともに最 も断 わ り辛い状況 で あっ た よ うだ。 しか し日本人 につ いて は予 想 された ことだが 、 アメ リカ人に つい ては予想 に反 す る もの であ った。 ホー ムパ ーテ ィの ようなプ ライベー ト な事 柄であ って も、それが上司 か らの招待で あれ ば仕事 上 も重 要 と考 えられ 、「直接 的に断 わる」 人が 少ない とい う点 は、 日米 あま り変わ らない とい う こと であろ うか。
次 に 「仕事 」 の事 柄 と して設定 され た設 問 1、
2
、4
、5
、7
、8
につい て見 る。「上下 関係 」であ る設問1
、2
、4
、5
について は 「アメ リカ人 は日 本 人 よ り直凄的で ない。
」 これに対 して 「同僚同士」 の設問7
、8
につ いては、設 問
7
(同僚が 出 した提案 を断わ る) は 「ア メリカ人は直接 的 でな い」
が 、 設問9
(同僚 の仕 事の 要請 を断 わる)は 「アメ リカ人は直接 的で ある」
という結果 になった。
む しろ、視 点 を 「話 し手 と聞 き手の 関係 」 に移 して分析 して みる と、 一定 の傾 向が見 られた。つ ま り、 「アメ リカ人 は上下 関係 におい て仕事 、 プラ イベ ー トを問 わず 、 日本 人 よ り直接的 では ない
。
」「ステ レオ タイ プは妥当 では な い。」 しか し、 「同僚 同士 のプ ライベー トな事柄 にお いて は、 日本 人 よ り直積 的であ る。」 という傾 向が導 きだされる。4‑4‑3
レベル#7
、8
回等 音数の割合以上 、回答 を 「直接 的
」(
「断わ り表現 の レベ ル」#8‑5)
「娩 曲 的」(
「断わ り表 現 の レベ ル
」# 4‑ 1)
に分 け た結果 か ら、総 括 的 な分析 を行 った。そ して 「日本 人は上 下関係 におい て、 アメ リカ人 よりや や直接 的で ある。」と い う結果 が得 られ たが、 この結果 を更 に検 証す べ く、「断わ り表 現の レベ ル」
#7
、8
回答 者数の割合 による分 析 を行 った。レベ ル
#8
の回答 とは (資料3
)に示 された ように、[ A:
遂行 動詞 を伴 うも の (例 「お断 わ りいた します」) B:
遂行 動詞 を使 わない断 わ り、否定 が入 った 表現 (例 「いい え」「
〜で きませ ん」「
〜 しませ ん」
「そ うは思い ませ ん」) ]
で ある。 これ はBe e b e &Ta k a h a s h i( 1 9 8 9)
らが 用いた意味公 式 (資料4
)おい て「直接 的な断 わ り」と分 類 され た表現 である。一般 的に非 常 に強 い断わ りの表 現であ る。
表
5
は、 レベル8
に分類 された回答 者数の割合 をJ J M,J J F,J J ,ARM,AEF ,
AE
ごとにまとめた もので 、その うちJ
J,AE
につ いてグ ラフ化 (グラ フ3
) した
。<表 5、グラフ 3参照 >
レベ ル#
8
回答者 の割 合 は 、設問6
(上司 か らの招 待へ の断 わ り) につ い ては、 回答 者 はJ J ,AE
共に0%
であ った。 設問9
(同僚 か らの食 事の誘いを 断 わる)はややAE
がJ
Jを上回 った。 しか し、設 問1
か ら設 問8
まで が 全 て (レベ ル#8
回答者の割合が)J
JはAE
より高い。特 に設問1
(部下 が出 した提 案 を断わ る)、設問2
(部下 か らの出張の 申請 を断 わる)、設問4
(上司 が出 した捷案 を断わ る)、設問5
(上司 か らの仕事 の申請 を断 わる)ではJ
Jがか な りAE
を上 回って いる。設問5
では 「上司 が会議 に使 う資料 の追加 作成 を要請 した」 のに対 して 「それ は必 要 じゃない と思い ます 」 とい うよ うな 回答 が 日 本人 で45 %
あっ た とい うこ とだ。 アメ リカ人に比 べ多 くの 日本人が 「いい え、そ うは思 いませ ん
」
とい うよ うな はっ きりとした強 い断 わ りの表 現 を上司 ま たは部 下 に対 して使 ってい るというこ とだ。さらに、意味 公式 において分類 された 「断わ りへの付随表 現4)」 を伴 った回 答 (例 「とて もいい考 えだ とは思 い ますが、私 はそ う思 い ませ ん
」
「あ りが とうご ざい ます。で も、行 け ません
」)
を本 論文で は レベ ル 7と分類 したが、 レ ベル 7と8を統合 した もの について も、表 6、 グラフ 4に示 した。<表 6、グラフ 4参照 >
1 20
アメ リカ人 と日本人 の断 り表現 の比較 表5 レベル #8
回答者数 の割合被験者
間 1 間 2 間 3 間 4 間 5 間 6 間 7 間 8 間 9 J J M 38% 33% 8% 21% 46% 0% 25% 21% 4%
J J F 28% 5 9% 0% 1 7% 45% 0% 7% 0% 0%
J J 33% 46% 4% 1 9% 45% 0% 1 6% 1 0% 2%
AEM 0% 1 7% 0% 0% 22% 0% 6% 0% 0%
AEF 8% 1 6% 0% 4% 2 4% 0% 8% 0% 8%
グ ラ フ
3 レベル #8
回答 者数の割合問1 閉2 同3
同4
間5 問6 同7 開8 開9!寓JJ(日本人全体)ロAE(米国人全体)
表
6 レベル #7、8
回答者 数 の割合被験者
間 1 間2 間3 間4 間5 間6 間7
問8
問9
J J M 5 0% 3 3% 1 3% 2 5% 5 0% 0% 3 3% 2 1% 8%
J J F 4 5% 6 2% 0% 2 4% 4 8% 3% 2 8% 1 0% 3%
J J 4 7% 4 8% 6% 2 5% 4 9% 2% 3 0% 1 6% 6%
AEM 3 3% 2 2% 1 1% 6% 3 3% 0% 2 2% 0% 0%
AEF 2 4% 2 4% 0% 1 2% 3 2% 0% 2 0% 0% 8%
グラフ
4 レベル #7、8
回答者 数 の割合問1 間2 間3 間4 開5 間6 間7 問8 問9
電
J J( E I 本人全体)口 AE(米国人全備)
1 22
アメリカ人と日本人の断り表現の比較設問
9
を含め全 ての設問 で 日本人 の方がアメ リカ人 よ り 「より強 い断わ り表 現であ る レベル7
、8
の回答」 が高い割合 を示 した。 これは興味ある結果である。
上司の提案 に対 して部下 が 「いえ、私はそ の案では上手 くい かない と思いま す 。」 仕事 の要請 に対 して、「それ は必要 でな い と思 います。」とい う言語 表現 が用 い られるわ けだが 、 これ らは時 として上司 を不愉快 に させて しま うのでは ないか と思 われ る程強い表現であ る。 多少 「断わ り」 を緩和 する付随 表現 (例
「それ はいい考 え だ とは思いますが 」等) を伴 った と して もであ る。 こういっ た発話 行為 を している日本人が今 回の調査 で は、アメリカ人に比 べ多かっ たの である。
4‑4‑4
インタ ビューによ る分析辞 釈本 当に 日本 人は上司 また は部下に対 してアメ リカ人 よ り直接 的 に ものをい っ ている のだろ うか。
今 回の調査 が実 際の会話 ではな く談話完成テ ス トとい う被験者 によって書 か れた発 話である ため、 実際の発言 と異 なった ものになっ ているので はないか と い う疑 問がある。 それを調べ るた め、 レベル 7または 8の回答 を した 日本人男 女の うち男性
2
人女性3
人 に、電話 あ るいは 、面接で インタビュ ーを行 った。その結 果、 まず
5
人のいず れか らも、 回答 で書いたよ うに実際 の状況で も答 える であろ うとい う説 明 を得 た。 その うち日本人女性1 ( 30
歳代 ) は、「今 ま での仕 事の経験 上、で きない ことは はっきりで きない と言わない と、後で支 障 をきたす ことが 多 く、特 に上 司には自分の意見 をはっき り、 直接 的 にい うこ と が多 い。 」
と答 えた。 これ と似た意見 を日本 人女性2 ( 2 0
歳代 )か ら、 また 第 1回調 査 で行 っ たインタ ビューで も 日本 人女 性3 ( 30
歳代) か らも得 た。上司 に直接 的に言 っ たことに よ り、 自分の昇進 な どの心配 を しないの だろうか。 こ の点 につい て 、 日本 人男性1 ( 30
歳代 )か ら この よ うな意見が 開かれ た。 「自 分が は っ きり言 ったことに対 して 、怒 って しまうよ うな上司 にはそ うい う発言は しな いが 、今の職 場では、与 え られた仕事 の責任 は、結局上 司ではな く現場 の人間 が責任 を取 るようになって お り、 日頃か らそ うい う自分の 意見 はあ る程 度尊重 されてい るか ら、(昇進等 の) 心配は ない。」 会社、職場の 人間関係 にも
よ りそ うである。
数名の アメ リカ人にもイ ンタビュ ーを行 った。第
1
回調査では 、アメリカ人男性
1 ( 20
歳代 ) より 「上司 か らの要 請 を断わ る と自分 の仕 事 を失 うことが あ りえるの で、断わ れない 。」 とい う発言 を得 た。第 2回調査 で も、 アメ リカ
人男 性2 (30歳代) か ら似 た発 言があ り、更 に、「仕事 の優先 順位 は上司が 判 断 し、それ によ って最終 的 に仕事 が失 敗 した場 合そ れは上司 の責 任 に なる。」とい う説 明 を受 け た。 もち ろん 、 日本 で も会社 によって 、 この よう なア メリ カ人 と同 じ状 況 の ところは ある だろ うし、 逆 もある と思 う。 しか し、 カリ フ ォル ニア州 のアメ リカの企業で働 く日本人男性 2 (30歳代 )の話 しによる と、
「日本 の企業 は最終 的な人事権 は人事 部が持 ってい て、 直属 の上司 でない こと が多 いが 、アメ リカでは、各部 門ご とに予算 が与 えられ 、その責任 者 (直属 の上 司) が部 下 に対 して評 価 を し、昇給 昇進 を含 む人事権 を一 切 もたされて いる。 日本 の場 合 、直属 の上 司 と馬が 合わ な くて も、他の 部に移 りそ こで活 躍 する こ ともあ りえ るが 、ア メ リカでは直属 の 上司 と上手 くい か なけ れ ば、
昇進 は望め ない。」とい うことであっ た。 この 意見 と同様 の 意見 を この他数人 のアメ リカ人、 日本人 か ら得てい る。
もち ろん企業 によ って 、 また職場 によ って それ は様 々で あ り、決 してこれ で一 般的 な解 釈 をす る ことはで きな いが、 こういった状 況が今 回 の調 査結 果 の背景 として考 え られるの ではないか。
4‑4‑5
レベル#1
、2
の回答者数の割合以上 「直接 的」 (レベ ル
4‑8
)、 特 に強い断わ り表 現 (レベ ル7
、8
) の 分析 を行 ったが、 ここでは逆 に 「断わ り表 現の レベ ル」分 け で最 も唆 味な言 語表 現 と分類 した レベ ル 1、2
の 回答 数の割合 につ いて も表7
、 グラ フ5
に 示 した。 レベ ル2
とは 「相手 の r提案J 等の 内容 に対 して特 にコ メン トせず、『延期 jす る等 して r断わ りJ を回避する」と判 断 された表現であ る。(例 「こ の案 につい ては少 し検討 して みたい と思い ます
」
「他の 人の意 見 も開 いてみ た ら」
等) そ して、 レベ ル 1はレベル2
に更 に断わ り表 現 を緩和 させ る役 割の「断わ りへの付随表 現」 を伴 っ た ものであ る。 <表
7
、グラフ5 参>
日本人 の割合 は、 設問
3
、6
(上下関係の招待) でやや 高 く、設問7
、8
、9
(同僚 同士)で、はっき りと高かっ た。 レベル7
、8
のグ ラフと比べ てみる と、設問3
、7
、8
、9
にお いては、 日本人 は レベル7
、8
で も レベ ル 1、2
で も高い割 合 を示 しているの は興味深い。つ まり、日本人の回答では 「直接的」
に断 わる と きは 「そ う思いませ ん
」
の よ うな強 い表現 を使い 、「娩 曲 的」
に断124 アメリカ人 と日本人の断 り表現の比較 表
7 レベル #1、2
回答者 数の割合被験者
間 1
間 2 間 3 間 4 間 5 間 6 間 7 間 8 間 9J I M
4% 4% 38% 4% 4% 33% 21% 13% 58%J J F
3% 7% 34% 3% 0% 45% 17% 38% 48%J J
4% 6% 36% 4% 2% 39% 19% 25% 53%AEM
11% 17% 39% 28% 6% 33% 6% 11% 22%AEF
8% 8% 24% 12% 0% 28% 0% 8% 12%グ ラ フ
5 レベル #1、2
回答者 数の割合間 1 問 2 問 3 間 4 問5 同 6 開7 問8 問 9
胃J J
(日本人全体)口AE (米国人全体)
わる ときは 「少 し考 えさせ て
」
「また今度 」 とい った特 に暖 味な表 現 を使 った 回答が 多か った とい うこ とだ。(この点 について は後述す る。)
設問9
(異性か らの食 事の誘い を断わる状況)では、特 に日本人男女 の レベ ル 1、2
の割 合が 高か っ た。 「断わ らない」
回答者 (レベ ル0)
がJ J M
では数 名あった。4‑4‑6
意味公 式による断 わ り表現 の具体例「直接 的
」
「娩 曲的」
表現 の比較 分析 は以上 の通 りであ る。第 2
回調査 の回 答 につ いては、意味公 式 ごとの発現 回数 の集計 を行 った為 、次 に、 断わ り表現 を具体 的にみて い く。 ここで は全てを記載する のでな く、 集計 した うち日本人 アメ リカ人に特徴 的に現れ た ものにつ いてのみ、言及 したい。<表
8
、表9
参 照 >< 「ごめん なさい」 より 「あ りが とう」 のアメ リカ人>
まず 、「断わ りへ の付随 表現
」
の発 現回数 に日本人 とアメリカ人 の違いが現 れ た 。 本 論 文 で は 「断 わ り‑ の 付 随 表 現 」 に は 以 下 の よ う に 、Be e b e &Ta k a h a s
hi( 1 9 8 9 )
の もの に、5
)の 「謝罪/ 残念」 を加 え てある。1好意 /賛意 (例 「それは いい考 えだが
、 」
「そ うしたいのは山 々だが、 」 ) 2
共感 (例 「大変な のはわかる んだけ ど、 」)
3
間を持 たせ る表 現(例 「そ うだ なあ、」
「う‑ん」
「あの‑」)4
感謝 /謝意 (例 「あ りが とう。 」)
5
謝罪 /残念 (例 「申 し訳 あ りませ ん が、 」
「残念 で すが、 」 )
設問3、6、9等 「招待 に対す る断 わ り」 におい て、 日本人 は#5 「謝罪/
残念」 の表現 の割合が 高 くそれ に#4 「感謝/ 謝意」が続 い ているが 、アメリ カ人は #
4
「感謝/ 謝意」 の割合 が高い。アメ リカ人は 「ごめん なさい」 より「あ りが とう」 の表 現 を好 むの だろうか。 また、設問 1、
4
、7
の 「上司、 部 下、同僚の提案 に反論する」状況で は、# 1の 「好意/ 賛意」の割合 が、 日本 人アメ リカ人 と も高い。 日本人 は20%
台30%
台である のに比べ 、アメリカ 人が50%
前後 を示 してい る。アメリ カ人はこの ように、相手の意見 に対 して、まず誉 めた り認め た りした上で異論 を唱える人が 多い とい える。
1 26
ア メ リカ人 と日本人 の 断 り表現 の比 較表
8
意味公式 に よる断 り表現 の分類 (日本 人 全体 )J J 間 1
間 2 間 3 間 4 問5 間 6 間 7 間 8 間 9 好 意 .賛意 30% 3% 6% 37% 5% 5% 21% 9% 9%共感 2% 0% 0% 0% 4% 0% 0% 0% 0%
感謝 2% 2% 15% 10% 0% 16% 0% 0% 6%
間 もた せ表現 0% 2% 2% 4% 2% 0% 29% 0% 0%
謝罪 .残念 7% 0% 42% 0% 2% 66% 3% 50% 54%
代 案 0% 0% 0% 0% 0% 2% 0% 0% 0%
将来約 束 0% 2% 26% 0% 0% 31% 0% 5% 50%
信 念 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0%
回避 0% 0% 0% 2% 0% 2% 2% 5% 0%
表
9
意味公式 に よる断 り表現 の分類 (米 国人 全体 )AE
間 1 間 2 間 3 間 4 間 5 間 6 聞 7 間 8 間 9 好 意 .賛意 52% 6% 13% 53% 5% 8% 47% 30% 2%共感 0% 2% 0% 0% 2% 0% 0% 2% 0%
感謝 14% 4% 64% 2% 5% 47% 0% 5% 48%
間 もた せ表現 0% 4% 0% 2% 2% 3% 0% 3% 0%
謝 罪 .残念 5% 0% 21% 5% 0% 31% 2% 23% 28%
代案 0% 2% 0% 0% 3% 3% 0% 0% 11%
将来約 束 0% 3% 14% 0% 0% 10% 0% 4% 9%
信念 0% 0% 0% 0% 0% 3% 0% 0% 22%
回避 10% 5% 4% 8% 2% 10% 3% 3% 0%