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【学位論文審査の要旨】

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Academic year: 2021

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【学位論文審査の要旨】

1 研究の目的

近年,内燃機関のための石油代替燃料のひとつとしてバイオエタノールが注目されてい る.しかし,バイオエタノールはガソリンに比べて単位発熱量あたりの燃料価格が高いこ とから,従来のエンジンで使用すると出力あたりの燃料コストが高いという問題がある.

そのため,バイオエタノールの製造コスト低減やバイオエタノールを利用したエンジンシ ステムの高効率化が求められる.通常の場合,バイオエタノールは製造工程において蒸留 および脱水により高濃度化され無水エタノールとされる.これに対して,蒸留を簡略化し て脱水を行なわない含水エタノールは,無水エタノールに比べて製造に必要なエネルギー を大幅に削減できる.

一般に,エンジンに供給される燃料がもつ化学的エネルギーのうち 40%程度が仕事に変 換されるが,残りは排気損失や冷却損失として捨てられる.排気損失は供給燃料エネルギ ーの 30%程度と大きいため,排気熱の一部を回収して動力に変換することができればエン ジンの熱効率向上のために有効である.このような技術のひとつに,吸熱反応を利用して 排気熱を化学的に回収する手法が考えられる.エタノールと水を反応させて水素を含む改 質ガスを生成する水蒸気改質は吸熱反応であり,その反応熱としてエンジンの排気熱を利 用することで排熱回収が可能となる.含水エタノールはこの反応に必要な水を含んでおり,

そのまま水蒸気改質に使用することができる.

このような背景から,本研究は,排気熱を利用してバイオエタノールを改質して燃料と して用いるエンジンシステムを提案し,その可能性を検討するとともに高効率化のための 知見を得ることを目的としている.

2 研究の方法と結果

実験に先立って,水素を含む改質ガスを用いたエンジンの熱効率向上効果についてのサ イクル論的な検討および含水エタノールの濃度が改質ガス組成に与える影響についての化 学平衡計算による検討を行い,まず基本的な実験指針を得た.

そのうえで,含水エタノールのエンジン燃料としての利用可能性を検討するために,燃 料改質エンジンシステムにおいてエタノール濃度の変化および改質ガスの供給がエンジン の燃焼および熱効率因子へ与える影響について実験による検討を行った.これにより,本 システムではエタノール濃度 60wt%未満の含水エタノールを用いた運転において,通常の 無水エタノールを用いた従来型のエンジンと同程度の熱効率および低い窒素酸化物排出濃 度が実現できることなどが明らかになった.

次に,エタノールの水蒸気改質による組成を模擬した模擬改質ガスを用いたエンジン実 験により水素混合燃焼および高圧縮比化の効果について検討するとともに,エンジンの排 気系に改質反応器を取り付けてエタノールを改質することによる排熱回収効果について検 討を行った.その結果,含水エタノールを改質したガスを吸気に導入し,無水エタノール

(2)

をエンジンに直接噴射することで,改質ガスに含まれる水素の燃焼促進効果による希薄燃 焼,耐ノック性の高い水素の共存に伴う高圧縮比化による理論熱効率の向上,および吸熱 反応を利用した燃料改質による排熱回収の効果によって 48.5%という高いシステム効率を 達成できることが示された.

さらに,排気損失の次に大きな冷却損失を低減することも熱効率向上のために有効であ ることから,燃焼室の遮熱化が燃料改質エンジンシステムの熱効率因子に与える影響につ いても検討を行った.通常のアルミニウム合金製ピストンに比べて低熱伝導率のマグネシ ウム合金製のピストンを用いたエンジン実験を行った結果,エンジンの冷却損失低減によ る熱効率の向上と排気熱量の増加が可能であることが明らかになり,とくに排気熱を改質 反応に利用するエンジンシステムにおいて有効であることなどが示された

3 審査の結果

エタノール改質器を火花点火エンジンの排気系に実際に組み込んでシステムの成立性や エネルギー効率を検討した研究はこれまで報告されておらず,本研究には高い新規性が認 められる.また,得られたシステム効率は非常に高いものであり,含水エタノールの利用 により燃料コストや二酸化炭素排出を削減できる効果とあわせて,本研究の成果には高い 有用性が認められる.さらに,排熱回収燃料改質エンジンシステムの効率を一層向上させ るために燃焼室の遮熱化の効果を検討した実験による知見は,燃料改質エンジンのみなら ず水素が共存する他のエンジン燃焼方式への応用も可能であり,高い波及効果を有するこ とが考えられる.

以上のように,本研究はバイオエタノールの利用における新規性と有用性の高い知見を 得るとともに,高効率化のための指針を示しており,工業的および工学的に高い価値を有 することが認められる.また,本研究の知見は今後の低炭素社会の構築においても有用で あり,社会的な価値も高いと考えられる.これらの点から判断して,本研究の成果は博士

(工学)の学位に値するものと判定した.

4 最終試験の結果

3名の論文審査委員による審査会を3回にわたって開催し,論文の内容および関連分野に ついて申請者に対する筆答および口頭の試験を実施した.また,公開の論文発表会を開催 して,関連分野の企業の研究者を含む学内外からの参加者を得て幅広い討論を行った.以 上の状況から,申請者は論文内容および関連科目に関して博士(工学)として求められる 水準の専門知識を有するものと判断し,合格と判定した.なお,本学位論文全体について 学術論文 剽窃 検知ツールによる確認を行ったが,本人による公表論文以外で 1%以上の一 致を示す論文は検出されなかった.

以上.

参照

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