• 検索結果がありません。

学位論文内容の要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学位論文内容の要旨"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 獣 医 学 ) 北 村 剛 規

学 位 論 文 題 名

     血管内皮細胞におよぼす

プ ロ イ ン ス リ ン C − ベ プ チ ド の 作 用 ーMAP キナーゼを介した遺伝子発現の調節―

学位論文内容の要旨

  C‐ベ プチドはプ 口インス リンを構成しているぺプチドで、膵臓ロ細胞の分泌顆粒中にプ 口イ ンスリンの 切断によ り生じたインスリンと共に存在する。したがってC‐ペプチドはイ ンス リンと同時 に血中へ 分泌されるが、インスリンの著明な血糖降下作用に比ベC―ベプチ ドに は生理活性 が無いと 考えられてきた。しかし近年、インスリン及びC‐ベプチドの分泌 が著 しく低下し ているイ ンスリン依存性糖尿病(IDDM)の患者やモデル動物にC―ペプチドを 投与 すると、末 梢血流が 増大し糖 尿病に伴 う種々の 病態が改善される可能性が示されてい る。 しかしなが ら、C‑ペプ チドに結 合する特 異的受容 体の存在や、血流調節に関わる分子 メカ ニズムは未 だ不明で ある。本学位論文では血管内皮細胞がC‐ベプチド応答細胞である こと を発見し、C‑ペプチド がMAPキナー ゼの活性 化とそれ に続く遺 伝子発現を 介して血 管 内皮 細胞の機能 を調節し うること を明らか にした。

  第 一章ではま ず、C‑ベプ チド作用 の指標と して細胞 内情報伝達のキー・エンザイムであ るp44/42MAPキナーゼ(ERK)のりン酸化(活性化)を検出することでC‐ベプチド応答細胞 を 探した。調 べた11種類 の細胞の うちLEu血管 内皮細胞 株ではC‐ペプチドによる著明なり ン 酸化の増大 が認めら れた。こ の様な効 果は3T3−F442Aお よびSwiss3T3線維芽細胞株でも み られた が、肝細 胞株や骨 格筋細胞 株、神経 系細胞株 では認めら れなかっ た。MAPキナ ー ゼ フ ァミ リ ー にはEl水の 他 にp38MAPK、蝌Kがあ り、いず れも様々 な細胞機能 に関与す る こ と が知 ら れ てい る 。そ こ で 次に、C‐ペプチ ドのp38MAPKとmKに 対する効果 について 調 べ たところ、3T3−F442AおよびSwiss3T3細胞では いずれの 活性化も認められなかったが、

LEH細胞ではEI水に加えp3蹴{APKの活 性化がみ られた。 これらの 結果より、LEH血管内皮 細胞株はCーペプチド応答細胞のーつであり、C‐ベプチドによってEI水とp3跡{APKが活性化 さ れ るこ と が 示さ れ た。 こ の 反応の 基本的性 質をLEu細胞 を用いて調 べたとこ ろ、ERKと p38MAPKい ずれ の り ン酸 化 もlpMという 低濃度のC‐ベプチ ドで促進 され1nMで最大 となっ     ―1312ー

(2)

た。C−ペプチドの血中濃度は0.1〜InMなので、上記の結果はC―ペプチドによるMAPキナ ーゼの活性化が生理的条件で起こりうることを示している。また、この様なMAPキナーゼ に対する作用は立体異性体であるD型アミノ酸からなるC−ペプチドやアミノ酸配列を逆に したC‐ペプチドでは認められなかったことから、C―ベプチドはその立体構造を認識しうる 受容機構(特異的受容体)を介してMAPキナーゼのシグナル経路を活性化していることが示 唆された。

  第二章では、LEII血管内皮細胞株を用いてC―ペプチドによるMAPキナーゼ活性化細胞 内機構を調べた。C‐ベプチドによるERKおよびp38MAPKのりン酸化は、しゝずれも百日咳毒 素感受性G‑蛋白質(GiIGo): PI‑3キナーゼ(PI‑3K)、プ口テインキナーゼC(PKC)に対する阻害 剤で有意に抑制された。したがって、C‑ペプチドはG一蛋白質(Gi/Go)とPI‑3K、PKCが関与 す る共通の経 路を介してERKとp38MAPKを活性化することが示された。MAPキナーゼや それによって活性化されるプ口テインキナーゼは様々な転写因子をりン酸化しDNAへの結 合能を変化させることで、遺伝子発現の調節に関わることが知られている。そこで次に、

ERKおよびp38MAPK経路の共通の標的転写因子であるCREB/ATFの活性化について調べた ところ、C‐ベプチド刺激によってCREB/ATF1のりン酸化とDNAへの結合が促進された。

また阻害剤を用いた検討により、これらの転写因子の活性化にはERKは関与せずp38MAPK とそれにより活性化されるMAPK activated protein kinase2(MAPKAP−K2)が関与することが 明らかとなった。

  しかしながらLEII細胞は株化された細胞であり、必ずしも生体内での血管内皮細胞と同 じ性質を保持しているとは限らない。そこで第三章では、C―ベプチドによるMAPキナー ゼ経路の活性化について、ラットより分離培養した肺微小血管内皮細胞(RLMEC)と大動脈 血管内皮細胞(RAEC)を用いて検討した。RLMEC細胞では、LEII細胞と全く同様にC‑ペプ チ ド 刺激 に よっ てERK、p38MAPK、CREB/ATF1の 活性化が促 進された。 一方、RAEC細 胞 では、ERKの活性化は みられるも ののp38MAPKとCREB/ATF1の活性化は認められなか った。これらの結果はC‐ベプチドが血管内皮細胞に直接作用すること、その効果が大動脈 と微小血管の内皮細胞では異なることを示している。特に微小血管内皮細胞においてはC− ペ プチドがp38MAPK〜CREB/ATFl経路によって何らかの遺伝子発現の制御に関わってい ることが示唆される。

  一方、ERKの経路も血管内皮細胞の機能に重要な内皮型NO合成酵素(eNOS)などの遺伝 子発現に関与することが知られているが、C‐ペプチドによるERK活性化の機能は明らかで はない。そこで第四章では、CペプチドがERK経路を介して遺伝発現を誘導しうるか否か を 、RAEC細胞にお けるeNOSの発現に焦点を絞って解析した。RAEC細胞をCペプチドで 刺 激すると、10分から1時間にかけてeNOS mRNAの発現が増加し、それに伴ってeNOS蛋 白質の発現量が増加した。また、刺激後3時間でNO産生量が約2倍に増加していた。これ らの変化はいずれもEI水経路の阻害剤でほぽ完全に抑制されたことから、C−ペプチドは

(3)

ERK経路を介してeNOS遺伝子の発現を促進すること、それに伴い血管保護・血管弛緩作 用をもつNO産生を増大させることが明らかとなった。

  以上のように、C−ベプチドは大動脈および微小血管の内皮細胞に作用し、前者において はG・蛋白質.PI‑3K.PKCを介したERKの活性化によりeNOS遺伝子の発現を増加させ、後 者に おいてはERKに加えp38MAPKを介して転写因子CREB/ATF1を活性化させることが明 らかとなった。即ち、C‐ペプチドはMAPキナーゼのシグナル経路を活性化して遺伝子発現 を誘導する機能調節ペプチドであることが示された。この様な血管内皮細胞に対するC‐ベ プチドの作用がIDDM患者やモデル動物で認められているC‑ペプチドの血流促進効果に関 与しているものと考えられる。

(4)

学位論文 審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

斉 藤 昌 之 桑 原 幹 典 稲 葉    睦 木 村 和 弘

     学 位 論 文 題 名 血管内皮 細胞におよぼす

プロイン スリン C −ベプチドの作用

一MAPキ ナ ーゼ を 介し た 遺伝 子 発現 の調節―

  C−ベプチドはプロインスリンを構成しているべプチドで、プ口インスリンの切断により 膵臓ロ細胞からインスリンと共に分泌される。一般にC‑ベプチドには生理活性が無いと されてきたが、最近、インスリン依存性糖尿病の患者やモデル動物にC―ペプチドを投与 すると、末梢血流が増大し糖尿病に伴う種々の病態が改善される事が報告された。しかし ながら、C‐ペプチドに結合する特異的受容体の存在や、血流調節に関わる分子メカニズム は不明である。本学位論文では血管内皮細胞がC‑ベプチド応答細胞であることを発見し、

C‐ペプチドがMAPキナーゼの活性化とそれに続く遺伝子発現を介して血管内皮細胞の機 能を調節しうることを明らかにした。

  第一章ではまず、C‐ベプチド作用の指標として細胞内情報伝達のキー・エンザイムで あるp44/42 MAPキナーゼ(ERK)のりン酸化(活性化)を検出することでC‐ベプチド応答 細 胞 を探 し た 。調べた11種類の細胞 のうちLEII血管内 皮細胞株と3T3‑F442Aおよび Swiss3T3線維芽細胞株では、C―ペプチドによる著明なりン酸化の増大が見られたが、肝 細胞株や骨格筋細胞株、神経系細胞株では認められなかった。MAPキナーゼファミリー に はERKの 他にp38MAPK、JNKがあり 、いずれも 様々な細胞 機能に関与 することが 知 ら れているが 、LEII細胞ではERKに加えp38MAPKの活性 化がみられ た。ERKとp38MAPK いずれのりン酸化もlpMのC‐ベプチドで促進され生理的血中濃度であるInMで最大とな った。しかし、立体異性体であるD型アミノ酸からなるC‐ベプチドやアミノ酸配列を逆 にしたC‐ペプチドでは、高濃度でもMAPキナーゼの活性化は認められなかった。これら

(5)

の結果から、生理的濃度のC−ベプチドは、何らかの特異的受容体を介してLE II血管内皮 細 胞 のMAPキ ナ ー ゼ の シ グ ナ ル 経 路 を 活 性 化 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。   第 二章では、LEII血管内皮細胞株を用いてC―ベプチドによるMAPキナーゼ活性化の 細胞内機構 を調べた。C‑ペ プチドによ るERKとp38MAPKのりン酸 化は、いずれも百日 咳毒素感受J陸G―蛋白質、PIー3キナーゼ、プロテインキナーゼCに対する阻害剤で有意に 抑制されたので、C‐ペプチドはこれらの細胞内因子に共通する経路を介して作用すること が示された。MAPキナーゼ機構は、様々な転写因子を介して遺伝子発現の調節に関わる ことが知られている。そこで、予想される標的転写因子のーつであるCREB/ATFの活性 化について 調べたとこ ろ、C− ベプチド刺激によってCREB/ATF1のりン酸化とDNAへの 結合が促進された。また阻害剤を用いた検討により、これらの転写因子の活性化にはERK は関与せずp38MAPKとそれにより活性化されるMAPK activated protein kinase2が関与す ることが明らかとなった。

  しかしながらLEII細胞は株化された細胞であり、必ずしも生体内での血管内皮細胞と 同じ性質を保持しているとは限らない。そこで第三章では、ラットより分離培養した肺 微小血管内皮細胞(RLMEC)と大動脈血管内皮細胞(RAEC)を用いて検討した。RLMEC細胞 では、LEII細胞と 全く同様にC‐ベ プチド刺激 によってERK、p38MAPK、CREB/ATF1の 活性化が促 進された。 一方、RAEC細胞では、ERKの活性化のみが認められた。これら の結果はC‑ベプチドが血管内皮細胞に直接作用すること、その効果が大動脈と微小血管 の内皮細胞では異なることを示している。微小血管内皮細胞においてはLEII細胞と同様 にC‑ベプチドがp3 8MAPK〜CREB/ATF1経路によって何らかの遺伝子発現の制御に関わ っていると 思われる。 一方、ERK経路は血管内皮細胞の機能に重要な内皮型NO合成酵 素(eNOS)などの遺伝子発現に関与することが知られている。そこで第四章では、RAEC 細胞におけるeNOSの発現に焦点を絞って解析した。凡嘘C細胞をCベプチドで刺激する と、eNOSのITlRNAと蛋白 質の発現量が増加し、NO産生量も約2倍となった。これらの 変化はERK経路の阻害剤でほぼ完全に抑制されたことから、C‐ベプチドはERK経路を介 してeNOS遺伝子の発現を促進すること、それに伴い血管保護・血管弛緩作用をもつNO 産生を増大させることが明らかとなった。

  以上のように、本研究は、血管内皮細胞に対するC―ベプチドの作用を分子レベルで明 らかにしたものであり、生物医科学・基礎獣医学の発展に大きく寄与する成果である。よ って、審査員一同は、上記学位論文提出者北村剛規氏が博士(獣医学)の学位を授与され るに十分な資格を有するものと認めた。

参照

関連したドキュメント

ここから、われわれは、かなり重要な教訓を得ることができる。いろいろと細かな議論を

しかしながら生細胞内ではDNAがたえず慢然と合成

の多くの場合に腺腫を認め組織学的にはエオヂ ン嗜好性細胞よりなることが多い.叉性機能減

 1)血管周囲外套状細胞集籏:類円形核の単球を

(( .  entrenchment のであって、それ自体は質的な手段( )ではない。 カナダ憲法では憲法上の人権を といい、

 筆記試験は与えられた課題に対して、時間 内に回答 しなければなりません。時間内に答 え を出すことは働 くことと 同様です。 だから分からな い問題は後回しでもいいので

自分ではおかしいと思って も、「自分の体は汚れてい るのではないか」「ひどい ことを周りの人にしたので

これらの事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的