Title
ラットの急性および慢性炎症反応における細胞間接着分子
ICAM-1の役割( 内容の要旨 )
Author(s)
飯郷, 裕
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 乙第026号
Issue Date
1998-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2010
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 学 位 論 文 題 目 審 査 委 貞 飯 郷 裕 (東京都) 博士(獣医学) 獣医博乙第26号 平成10年3月13日 学位規則第4条第2項該当 ラットの急性および慢性炎症反応における細胞間接 着分子ICAI-1の役割 主査 岩 手 大 学 副査 帯広畜産大学 副査 岩 手 大 学 副査 東京農工大学 副査 岐 阜 大 学 授 授 授 授 授 教 教 教 教 教 助 志 之 治 郎 幸 篤 和 啓 利 田 藤 口 生 崎 岡 斉 谷 桐 岩 論 文 の 内 容 の 要 旨 炎症反応は外因性もしくは内因性の侵襲に対する生体の防御機構であり、抗原提示反応、 細胞浸潤はその中心的役割を果たしている。これらの反応では細胞同士の接着が必要であり、 前者では抗原提示細胞とT細胞、後者では白血球と血管内皮細胞の接着が必要とされる。近 年の研究から1ymPh∝ytefumdion-aSSOdacdantigenl(1∫A-1)もしくはMac-1をリガンドとする intercellularadhesionmol∝ulel(ICAM-1)は炎症反応において重要な役割を果たしていることが 明らかにされてきた。本研究ではラットICⅧ-1に対する中和活性を有するモノクローナル抗 体(1A29)を用いて、ラット急性および慢性炎症モデルにおけるICAM-1の役割を明らかにした。 さらに蛍光標識した抗ICAM-1抗体を正常ラットに投与し、腸間膜、肝臓の微小血管を共焦点 レーザー蛍光顕微鏡で親祭するという方法を用いることにより血y血でのICAM-1の恒常的 発現を観察した。ICAM-1発現の定量的解析では共焦点顕微鏡の特性を活かし、既知濃度の F汀C溶液の蛍光量から標準曲線を作製し、腸間膜および肝微小血管より測定した蛍光量から ICAM-1の見かけ上の濃度(apparentconcentration)を算出し、その発現様式を明らかにした。 急性炎症モデルであるラットカラゲナン胸膜炎の好中球浸潤は1AZ9の投与により用量依 存的に有意に抑制され、IC旭-1に弓重く依存した反応であった。ICAM-1を恒常的に発現して いるラット培養血管内皮細胞、分離好中球を用いた血vカサ結合試験及び、FMIゴを腸間膜上 に表面港流することにより好中球の血管内皮細胞への接着を誘導するラット腸間膜微小循環 の生体顕微鏡観察においても、1A汐により好中球の接着は抑制された。以上の結果より抗 ICAM-1抗体の胸膜炎好中球浸潤抑制効果は投与した抗体が好中球の血管内皮細胞への接着 を阻害したことによるものと考えられた。 ICAM-1の血vivoにおける恒常的発現を検索するため、FrrC標識した抗ICAM-1抗体を正常
-251-ラットに静脈内投与し、共焦点レーザー蛍光顕微鏡を用いて、腸間膜、肝臓における微小血 管の観察を行った。その結果、少なくともラット腸間膜微小血管においてはICAM-1は恒常的 に発現しており、白血球上のLFA-1が活性化すれば、ICAM-1几FA-1経路に依存した細胞接着 が誘導されると考えられた。ICAM-1の恒常的発現には多様性があり、腸間膜血管では細動脈、 毛細血管に比較し、管径25岬lを中心とした後毛細血管細静脈で発現が高く、腸間膜血管で 明らかにされている白血球の接着部位によく一致していた。一方、肝臓においては中心静脈 のみならず、毛細血管に相当する類洞においても弓重く発現しており、臓器、器官の違いによ り発現様式に違いのあることが明らかとなった。 慢性炎症のモデルであるラットアジュバント関節炎モデルを用いた実験では抗ICAM-1抗 体を投与することにより関節炎の発症、進展が有意に抑制され、足根部関節腫脹の他、骨変 化、血清シァル酸濃度、血沈値など各種炎症パラメーターに対する有意な改善効果が認めら れた。1A29を投与した関節炎ラットの局所リンパ節細胞では抗原特異的増殖反応が抑制され れており、抗ICAM-1抗体は抗原提示反応に強く作用すると考えられた。抗IM-1抗体によ る関節炎抑制機序をさらに詳細に解析するため、養子移入実験を実施した。関節炎を発症し たドナーラットの牌細胞を移入したレシピエントラットに抗ICAM-1抗体を投与すると、レシ ピエントラットの関節炎の程度は約50%抑制された。また、抗ICAM-1抗体を投与したドナ ーラットの牌細胞を移入したレシピエントラットでは関節炎の発症が完全に抑制された。す なわち、抗ICAM-1抗体は、炎症反応のinductbnphaseである抗原提示反応に強く作用し、関 節炎惹起能を有する1)ンパ球の産生を抑制するとともに、efftctorphaseである炎症局所での細 胞浸潤にも作用し、これら二つの抑制メカニズムにより抗関節炎作用を発揮していることが 明らかとなった。 以上の研究成績より細胞間接着分子であるICAM-1は急性炎症反応における好中球の血管 内皮細胞への接着に関与しており、この細胞接着には細静脈でのⅠ皿-1の恒常的発現が大き な役割を果たしているものと考えられた。また、ICAM-1が慢性炎症において抗原提示反応な どのinductionphaseと細胞浸潤などのeborphaseに深く関与することから、ICAM-1に俵存 した細胞接着を抑制することは慢性関節リウマチなどヒト慢性炎症性疾患治療の新たなアプ ローチとなりうることが強く示唆された。 審 査 結 果 の 要 旨 申請者は製薬メーカーで新薬の探索研究を担当しており、炎症性疾患治療の新たな 標的分子として細胞間接着分子に着目した。Interceuular adhesion moleculel
qCAM-1)は細胞間接着分子のなかでは比較的早期より研究されてきた分子であるが、 ヒト臨床においては病理組織材料を用いた検索から、炎症局所で発現が高いことなど が報告されていた。申請者はICAM-1の炎症反応における役割を詳細に検討するため、 急性および慢性炎症モデルに抗ラットICAM-1モノクローナル抗体を投与するとい う手法を用い、以下のことを明かにした。
-252-急性炎症モデルであるラットカラゲナン胸膜炎の好中球浸潤は抗ICAM-1抗体 1A29の投与により有意に抑制され、この好中球浸潤はICAM-1に強く依存した反応 であった0ICAM-1を恒常的に発現しているラット培養血管内皮細胞、分離好中球を 用いた血流ro結合試験、FMLPを腸間膜上に表面潜流することにより好中球の血 管内皮細胞への接着を誘導するラット腸間膜微小循環の生体顕微鏡観察においても、 1A29により好中球の接着は抑制された0以上の結果より抗ICAM-1抗体の胸膜炎好 中球浸潤抑制効果は投与した抗体が好中球の血管内皮細胞への接着を阻害したこと によるものと考えられた。