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鋼箱桁橋の桁内除湿による防食効果に関する調査

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Academic year: 2022

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(1)

鋼箱桁橋の桁内除湿による防食効果に関する調査

東日本高速道路 関東支社 杉崎 幸樹 高速道路総合技術研究所 ○酒井 修平 日本塗料検査協会 西本 悟 ワイ・シー・イー 大間知 良晃 1.調査目的

空調機や除湿剤を用いた鋼橋の桁内除湿による防食効果の把握を目 的に、実橋に約

15

年間設置した無塗装試験片の調査を行った。

2.橋梁および桁内除湿方法の概要

1)橋梁概要 桁内除湿を行った橋梁は長野道豊科~麻績間に位置する西

沢橋(上下線)で、形式は鋼単純

2

主箱桁橋(橋長

L=50m

図 1)、 塗 装仕様は、外面A1塗装系、内面D1塗装系(エッチングプライマー

15μm×2、タールエポキシ樹脂塗料 120μm×2)である。

図 1 長野道西沢橋の架橋環境

2)桁内除湿の概要 桁内除湿方法を表 1 に示す。

表 1 西沢橋の桁内除湿方法

箇所 除湿方法 概 要

上り線 G1桁

下り線 G2桁

除湿機 桁内の両端に産業用除湿機(除湿能力約

2

/h

消費電力

630

㍗)を計

2

台設 置。ダクトを設け桁内全体に乾燥空気を分配。相対湿度50%以下を管理目標 として

40

%を超えると自動運転するように設定。ダクト送風機は常時運転。

(図2)

シリカゲル

1箇所あたり200g×16袋×2のシリカゲル塊を設置。ダイヤフラムに囲まれる

空間毎計

9

箇所に設置。(図

3

図 2 除湿機と送風ダクト 3.調査内容 調査項目、目的および内容を表 2 に示す。

表 2 西沢橋の桁内除湿に関する調査内容

項目 目的 調査内容

環境調査 腐食環境の把握 G1~4桁内の支間中央および橋台の気温および相対湿度の計測

・除湿機の動作および稼動状況の調査

・除湿材の重量測定、外観等の調査 塗膜調査 錆、膨れ等の塗膜の劣

化状況、塗膜厚調査

桁内の塗膜劣化の調査、塗膜厚の測定 試験片調査 防食効果 無塗装試験片の錆、重量減少量の測定 除湿方法に

関する調査

除湿機の稼動、除湿材 の現有能力

図 3 シリカゲルの設置状況 4.調査結果

4-1環境および除湿方法に関する調査

桁内外の気温および相対湿度の計測結果を図 4 および図 5 に示す。桁 内は外気と比べ気温が高く(平均約

2℃)、湿度が低い(平均約 10%)

。 桁内の相対湿度は、気温の上下とほぼ正反対に上下しており、温度によ る飽和水蒸気量の増減にしたがって変化する一方、気密性が高いため桁 の内外の湿度が直に連動し

ない。除湿機がある桁内は、

相対湿度

50%以下を確保し

ており、

15

年以上使用した 除湿機においても管理目標 は維持していた。シリカゲ ルを用いて除湿した桁は、

設置していない桁と相対湿 度は同程度で、変色して乾 燥した状態であり、現在で はほぼその機能を果たして いないことが判った。

20 22 24 26 28 30 32 34 36

気温 (℃)

20 30 40 50 60 70 80 90 100

7/2 7/7 7/12 7/17 7/22 7/27 8/1 2008年

相対湿(%R.H.)

GA1(除湿機有の桁内) GB2(除湿機無の桁内) 外気(橋台)

30 40 50 60 70 80 90.

0%

20%

40%

60%

80%

100%

時間比率

相対湿度(%R.H.)

GA1(除湿機有の桁内)

GA2(除湿機無の桁内)

外気(橋台)

図 4 桁内外の気温および相対湿度 図 5 相対湿度の時間比率 キーワード 鋼橋、防食方法、桁内、除湿、ライフサイクルコスト

連絡先 〒194-8508 東京都町田市忠生

1-4-1 株式会社高速道路総合技術研究所

橋梁研究室 主任研究員 ℡042-791-1943 土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)

‑515‑

Ⅴ‑259

(2)

4-2桁内の塗膜調査

桁内の塗膜の状況を図 5 に示す。桁内除湿の有無 に関わらず、内面塗装は全般的にさび、ふくれ、は がれなどの塗膜劣化は見られず健全な状態を維持 していた。図 6 にウエブに結露跡があった箇所を示 す。除湿機がある桁内において南側に面するウエブ で結露跡がみられた。結露跡はそれほど古いもので はないと想定され、冬季期の昼夜など桁内外で温度 差が急に大きくなる時期にできたと考えられる。

結露跡

図 5 桁内の塗膜の状況

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

GB1

GB2

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪

GA2

GA1 上り線

除湿機 乾燥剤 下り線

無対策

無対策

ダイヤフラム

結露跡がある箇所

4-3試験片の調査

試験片の錆の発生状況を図 7 に示す。除湿機があ る桁に設置された試験片はほとんど錆が発生して おらず、他の桁に設置された試験片も表面錆が全面 もしくは部分的に発生している程度であった。重量 減少量の測定結果を表 3に示す。全ての試験片とも に重量減少量は非常に僅かで、除湿機のある桁に設 置した試験片は他の桁に設置した試験片より僅か に少なかった。試験片は磨き鋼

板であり、通常の橋梁製作後の 無塗装鋼板と金属表面の状態が 異なるので、試験片の結果によ って直ちに橋梁としての適用を 考えるのは難しいものの、桁内 の相対湿度を管理することによっ て無塗装でも相当の防食性能を維 持できると考えられる。

図 6 ウエブに結露跡があった箇所

(1)除湿機有の桁内の試験片 (2)除湿機無の桁内の試験片 図 7 ウエブに設置した試験片の錆の発生状況

表 3 試験片の腐食減量の計測結果 4-4桁内除湿のライフサイクルコストの試算

桁内除湿と現在一般的に使用している内面塗装について 桁内の防食のライフサイクルコストについて、除湿機の稼動 率等の調査に基づいて試算した結果を図 8 に示す。

5.まとめ

以上の結果から桁内除湿による防錆方法のライフサイク ルコストを推定し、一般的な内面塗装と同等程度であること を確認することができた。しかし、試算で用いた除湿機の耐 用年数などの検証が必要なこと、除湿機の稼動や配電設備の 点検・修繕などの費用やメンテナンスのための桁内への侵入 の困難さなどの管理者の労力を考えていないことから、除湿 機を用いた防食方法は、今回の現場のような点在する中小橋 では現地条件を考えなければならないことが判った。しかし、

桁内の塗替え面積が大きく、点検・補修などのメンテナンス ワークの困難な多室箱桁などの長大橋では、桁内除湿が有効 な防食方法となると考える。

腐食減少 重量(g)

腐食量

(g/㎡)

累積腐食 減量(㎜)

試験片A(除湿機有) 0.091 18.2 0.0023 試験片B(除湿機無) 0.145 29.0 0.0037 試験片C(乾燥剤有) 0.141 28.2 0.0036

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000

1 21 41 61 81 101

経過年数

費用(千円)

桁内除湿 塗装

図 8 ライフサイクルコストの試算結果

【試算条件】電力60千円/年(除湿機能力と実績稼働率より試 算)、除湿機・送風機800千円/2台(耐用年数は実績より15年

(メーカ推奨は10年))、更新時の撤去等費用200千円/回、塗装 費 新設3.8千円/㎡ 塗替え6.2千円/㎡

【参考文献】

1)日本橋梁建設協会

改訂鋼橋防食のQ&A、2002.3

2)藤野ら

鋼ボックス内部の腐食環境と防錆について、構

造工学論文集

Vol.36A、pp.1021-1033、1990

土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)

‑516‑

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参照

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