斜角を有する長大箱桁橋(清幌橋)の耐風検討
中央コンサルタンツ(株) 正会員 野田 勝哉 北海道土木現業所 菊池 俊 中央コンサルタンツ(株) 正会員 ○小島 朋樹 石川島播磨重工業(株) 正会員 上島 秀作 北海道土木現業所 山本 文昭 石川島播磨重工業(株) 正会員 松田 一俊
1.はじめに 本報告は,計画中の中央支間
156m
を有する長大箱桁橋(清幌橋)について,その耐風性の 検討を風洞実験によって行ったものである.検討では,主に,本橋の構造的特徴である橋梁斜角(約50°)
と架橋位置の自然条件である積雪の影響に着目した.また,実験で確認された振動現象のうち,実橋での発現 が有害と予想されるものに対しては、実橋に即した耐風対策工の選定を行った.
2.清幌橋の概要 清幌橋は,空知郡南幌町において夕張川を跨ぐ橋梁であり,現橋の架け替えが計画され ている.架け替え後は,橋長
692(m)の橋梁となり,低水路部を跨ぐ中央径間部は図-1 に示すように 109.7(m)+156.0(m)+109.7(m)の支間を有する3径間連続鋼床版箱桁橋となる.橋梁計画上,橋軸方向と河川流
下方向(橋脚軸方向)が約50°で交わる,斜角の小さい橋梁となっている.
3.風洞実験条件 実橋に対して
1/70
の3次元弾性模型を製作し,風洞実験を実施した.実橋と模型の振動 特性を表-1 と図-2 に示す.構造減衰は対数減衰率で0.02
を設定した.その他の実験条件を表-2,図-3 に総括 した.風向は,歩道が片側のみに設けられている非対称性断面を持つことと,橋脚の向きが橋軸に対して斜角を有していることか ら,図-3 に示すように 6 方向を考慮した.
4.対風応答特性 風向に着目した応答実験結果を図-4 に示す.
橋軸直角方向風の下では,実橋風速=20m/s強の風速でギャロッピ ングが発現するが,斜風下においては照査風速
Vrg=44.6(m/s)以下
でギャロッピングは発現しない.キーワード 耐風安定性調査,風洞実験,連続鋼床版箱桁橋,制振対策
連絡先 〒060-0034 北海道札幌市中央区北4条東1丁目2番地3 中央コンサルタンツ(株) TEL011-233-2351
P3
P6 P5 P4
β=135° β=225°
β=315°
β=45°
表-1 固有振動数振動モード 実橋 (Hz)
(解析値)
模型 (Hz)
(実測値) 風速倍率 鉛直曲げ
1
次0.507 4.90 7.24
鉛直曲げ2次
0.853 7.61 7.86
鉛直曲げ3次
1.125 9.34 8.43
表-2 風洞実験条件
気 流
一様流 および 境界層乱流2種 冬季乱流:Iu=12.1(%),Iw=7.1(%) 夏季乱流:Iu=17.0(%),Iw=9.2(%) 積 雪 高欄閉塞あり(冬季),なし(夏季)
図-1 清幌橋概要図
-1.0 -0.5 0.0 0.5
1.0 実橋解析値
模型実測値
モード値
P3 P4 P5 P6
-1.0 -0.5 0.0 0.5
1.0 実橋解析値
模型実測値
モード値
P3 P4
P5 P6
-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0
実橋解析値 模型実測値
モード値
P3 P4 P5 P6
(1)鉛直 1 次モード
図-2 振動モード
(2)鉛直 2 次モード
(3)鉛直 3 次モード
図-3 風向角の定義
β=270°
β=90°
土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)
-589- 1-296
一方,渦励振振幅に関しては,斜 風下では橋軸直角方向風に比べて 顕著に増大していることが判る.
積雪による高欄閉塞を考慮した 場合の実験結果を図-5 に示す.高 欄が閉塞された場合,ギャロッピ ング発現風速が若干低下する結果 となった.
5.耐風制振対策 風洞実験に おいてはギャロッピングと渦励振 の発現が確認されたが,特にギャ ロッピングの発現風速は照査風速 以下であり,制振対策の実施が必 須であると考えられる.本橋では,
箱桁橋のギャロッピング制振対策 として実績のある水平プレート (図-6)を採用した
1)
.水平プレー トを設置した場合の応答特性を図 -7 に示す.水平プレートの効果に よりギャロッピングは消滅したが,渦励振振幅は逆に増大し,悪化の 傾向を示すことが明らかとなった.
図-8 は,一様流中および乱流中の 渦励振振幅と構造減衰(対数減衰 率)との関係である.結果より,
δ=0.05
程度の減衰が確保されれば渦励振は十分小さいレベルに抑制 されることが判った.
6.まとめ 風洞実験の結果,ギャロッピングおよび渦励振に対す る制振対策が必要であることが判明し,具体的な対策工として,前者 には水平プレートの設置,後者には
TMD
などによる構造減衰の付加 が考えられる.また,本橋の実験結果からは,橋軸直角方向風の場合 に比べ,橋軸斜方向風の場合に渦励振振幅が大きくなる場合があるこ とが判った.現象は断面形状と橋軸方向の断面変化度合いに影響する と考えられる2) ,3)
が,長大箱桁橋の耐風設計においては注意を払う 必要がある.謝辞 本検討を推進するに際し,横浜国立大学 山田教授,勝地助 教授には適宜ご指導を賜った.ここに記して謝意を表する.
参考文献 1)斉藤通・本田明弘:長大箱桁橋の耐風性および制振対策法について,構造工学論文集
Vol.36A, pp889-894, 1990.3.
2)宇都宮英彦・浅野浩一・長尾文明・松本達志:斜風が矩形断面の渦励振に及ぼす影響,土木学会第
48
回年次学術講演会概要集,
pp.798-799
,1993.9.
3)細見雅生・木場和義・小林紘士:長方形断面橋桁の渦励振に対する風向角の影響,第13
回風工学シンポジウム論文集,
pp.299-304
,1994.12.
図-5 高欄閉塞状態と対風応答性
0 2 4 6 8 10
0 1 2 3 4 5 6 7
水平プレート対策設置 基本断面
模型片振幅(mm)
風洞内風速(m/s)
0 10 20 30 40 50
1次モード 実橋換算風速(m/s)
実橋片振幅(mm)
0 10 20 30 40 50
2次モード 実橋換算風速(m/s)
10 20 30 40 50
0
3次モード 実橋換算風速(m/s) 400
300 200 100 0 500 700 600
渦励振2次 発散振動(ギャロッピング)
渦励振3次
対数減衰率δ=0.02 迎角α=0°
渦励振1次
積雪による高欄閉塞あり
0 2 4 6 8 10
0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 1次 モ ー ド(一 様流 中 ) 2次 モ ー ド(一 様流 中 ) 1次 モ ー ド(冬 季乱 流 中 ) 2次 モ ー ド(冬 季乱 流 中 )
模型振幅(mm)
対 数 減 衰 率 (δ ) 400
300 200
100
0 600 500 700
実橋振幅(mm)
1 次 許容 振 幅 (初 通 過 破 壊 )
1 次 許容 振 幅 ( 100gal相 当 )
2 次 許 容 振 幅 (100gal相 当 ) 2 次 許容 振 幅 (初 通 過 破 壊 ) 0
2 4 6 8 10
0 1 2 3 4 5 6 7
基本断面 水平プレート対策断面
模型片振幅(mm)
風洞内風速(m/s)
0 10 20 30 40 50
1次モード 実橋換算風速(m/s)
実橋片振幅(mm)
0 10 20 30 40 50
2次モード 実橋換算風速(m/s)
10 20 30 40 50
0
3次モード 実橋換算風速(m/s) 400
300 200 100 0 500 700 600
渦励振2次 渦励振3次 対数減衰率δ=0.02 迎角α=+3°
渦励振1次
積雪なし
図-6 水平プレート
図-7 水平プレート設置・未設置の場合の応答比較
図-8 渦励振振幅と構造減衰
(1)橋軸直角方向風(一様流中) (2)橋軸斜方向風(一様流中)
水平プレート
0 2 4 6 8 10
0 1 2 3 4 5 6 7
風向角β=90°
風向角β=270°
模型片振幅(mm)
風洞内風速(m/s)
0 10 20 30 40 50
1次モード 実橋換算風速(m/s)
実橋片振幅(mm)
0 10 20 30 40 50
2次モード 実橋換算風速(m/s)
10 20 30 40 50
0
3次モード 実橋換算風速(m/s) 400
300 200 100 0 500 700 600
渦励振1次 渦励振2次
発散振動(ギャロッピング)
渦励振3次 対数減衰率δ=0.02 迎角α=0°
0 2 4 6 8 10
0 1 2 3 4 5 6 7
風向角β=225°
風向角β=315°
模型片振幅(mm)
風洞内風速(m/s)
0 10 20 30 40 50
1次モード 実橋換算風速(m/s)
実橋片振幅(mm)
0 10 20 30 40 50
2次モード 実橋換算風速(m/s)
10 20 30 40 50
0
3次モード 実橋換算風速(m/s) 400
300 200 100 0 500 700
600 渦励振1次
渦励振2次渦励振3次 対数減衰率δ=0.02
迎角α=0°
(ピーク振幅は 計測していない。)
0 2 4 6 8 10
0 1 2 3 4 5 6 7
積雪による高欄閉塞なし 積雪による高欄閉塞あり
模型片振幅(mm)
風洞内風速(m/s)
0 10 20 30 40 50
1次モード 実橋換算風速(m/s)
実橋片振幅(mm)
0 10 20 30 40 50
2次モード 実橋換算風速(m/s)
10 20 30 40 50
0
3次モード 実橋換算風速(m/s) 400
300 200 100 0 500 700 600
発散振動(ギャロッピング)
対数減衰率δ=0.02 迎 角α=0°
風向角β=90°
図-4 風向と対風応答性
(1)橋軸直角方向風(一様流中) (2)橋軸斜方向風(一様流中)
土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)
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