不等脚を有する基礎変位鉄塔のボルト滑りを考慮した耐荷力解析法について
東京電力(株) 正会員 ○山崎 智之 東電設計(株) 若松 啓治 東京電力(株) 久保田邦裕 東電設計(株) 本郷榮次郎 東電設計(株) フェロー会員 中村 秀治
１．はじめに
基礎の不同変位や部材変形が生じた鉄塔の設備健全度の耐力評価法は，ボルト滑りを考慮した弾塑性大変形 解析法によっているが，本手法の妥当性は平坦地に立地する山形鋼鉄塔を対象とした実規模骨組試験により確 認されている．本報告は，更に山岳地や傾斜地に立地し不等脚を有する山形鋼鉄塔を対象とした実規模骨組試 験を行い，等脚の耐力評価に適用しているボルト滑りを考慮した弾塑性大変形解析法の適用の妥当性について 検証することを目的として実施したものである．
２．解析法の概要
(1)
解析法3次元はり要素を用いた弾塑性大変形解析
（解析コードはADINA ver.8.8を用いた．）(2) ボルト滑りの考慮
・鋼材の応力－ひずみ関係は２直線近似す るが，ボルト継手部を有するはり要素の 場合は軸力成分を解放して０にすると同
時にトラス要素を重ねて配置し，トラス
要素の物性値に滑り特性を埋め込む（図-1）．
(b)
ボルト滑りの解析モデル・図-1(a)中，ボルト滑り始め応力σsは， 図-1 ボルトの滑りを解析的に実現するためのモデル 鉄塔毎，部位毎に異なるので，パラメータ解析で当該鉄塔に適した値を見出す．
(3) パラメータ解析と耐荷力解析の内容
・最下節の腹材に作用する軸力状態については計測可能なので，ボルト滑り始め応力(図-1(a)のσs)と基礎変 位に対する施工誤差の割合をパラメータとして，自重載荷と基礎変位を与えた条件で80通りの解析を行う．
・解析結果の最下節腹材軸力が現地で計測した軸力と整合性の良いケースを選定する．
・選定された滑り条件の下，所定の上部荷重（主に風荷重）を載荷した解析を行い，耐力評価を実施する．
詳細は，参考文献1)，2)に述べた通りである．
３．不等脚を有する基礎変位鉄塔の試験法の概要
(1)
実規模骨組試験モデル：66kV送電鉄塔を基に基礎変位の影響が大きい下部4
パネルの骨組（図-2）．(2) 試験方法：基礎変位は油圧ジャッキによる変位付与装置により，上部荷重は反力鉄塔からワイヤーにより
図-2 実規模骨組みと試験方法 図-3 変位と荷重載荷状況 キーワード 不等脚鉄塔，基礎変位，補修・改修，ボルト滑り，弾塑性大変形解析
連絡先 〒110-0015 東京都台東区東上野３丁目３番３号 東電設計株式会社電気本部 TEL: 03-6372-5720 E-mail: h.nakamura@tepsco.co.jp
(a) ボルト滑りを考慮するため
のトラス要素の応力－ひず み関係土木学会第68回年次学術講演会(平成25年9月)
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表-1 試験ケース一覧
載荷（図-2，図-3）．
(3) 水平および鉛直基礎変位は長脚の b
脚に与えた（図-4，
図-5）．(4) 試験ケース１～4 は，表-1 の通りである． 図-4 試験状況(水平変位)
表中，Ｐは実規模骨組みで最弱部材の 2 パネル腹材応力が，解析で（降伏応力/1.5）になる荷重を意味している．
４．解析法の妥当性の確認
(1) 試験と解析による軸力比較の 1 例として，鉛直上向き変位
を20mm
を与え，上部荷重を0.6P
載荷した場合の，最下節 (3 パネル)の主柱材と腹材の軸力比較図を図-6に示す．(2)
主柱材，腹材のいずれも測定軸力と解析軸力が良い対応を 示しており，既実施の等脚鉄塔における場合の精度と同程度であった．
(3) 図-6
に比較した以外のパネル，試験ケースについても概ね同様の傾向であった． 図-5 試験状況(鉛直変位)
図-6 試験と解析との軸力比較 ５．結 び
本報告においては，不等脚を有する基礎変位鉄塔のボルト滑りを考慮した耐荷力解析法を検討した結果，
等脚に用いている解析法を適用できることが確認できた．紙面の都合もあり、試験ケースすべての試験結果 と解析結果について示していないが，詳細は講演会当日に示す予定である．
参考文献 1)山崎智之，河原章夫，高橋圭一，本郷榮次郎，中村秀治：基礎変位鉄塔のボルト滑りを考慮した 耐荷力解析法に関する検討，構造工学論文集，Vol.58A, 2012.3.
2) 山崎智之，本郷榮次郎，中村秀治：ボルト滑りを考慮し応力測定値との整合に留意した基礎変位鉄塔の実 用的耐荷力解析法について，構造工学論文集，vol.59A, pp.131-142, 2013.3.
腹材応力（ﾊﾟﾈﾙ
3
）鉛直上20mm+0.6P
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60
測定軸力(kN)
解析軸力(kN)
主柱材応力（ﾊﾟﾈﾙ
3
）鉛直上20mm+0.6P
-400 -300 -200 -100 0 100 200 300
-300 -200 -100 0 100 200 300
測定軸力(kN)
解析軸力(kN)
試験ケース 変位方向 変位量(mm)＋
上部荷重 上部荷重の
載荷順序 33+1P
50+1P 66+1P 15+1P 33+1P 45+0.8P
10+1P 15+1P 20+1P 10+1P 15+1P 20+0.6P
同上 境界条件：b脚強制変位，他3脚固定
強制変位後載荷
同上
同上 水平45度，塔体外向き
水平45度，塔体内向き
鉛直，下向き
鉛直，上向き ケース１
ケース２
ケース３
ケース４
土木学会第68回年次学術講演会(平成25年9月)
