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―油汚染の概要・処理方法の検討編―

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Academic year: 2022

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(1)

高圧ジェット水を用いた変圧器絶縁油汚染土壌の洗浄(第1報)

―油汚染の概要・処理方法の検討編―

東京電力㈱(正)○矢野 康明 (正)佐藤 博 小林 治男 東電設計㈱(正) 司代 明 木村 應志 ハザマ 山口 修一 (正)一ノ瀬 広樹

㈱土壌環境プロセス研究所 藤井 忠広 志方 洋介

1.はじめに

平成19 年7 月16 日に発生した新潟県中越沖地震(M6.8)により変圧器から漏洩した絶縁油で汚染した土壌

(最大濃度30,000mg/kg 程度)約35,000t を、高圧ジェット水を使用してオンサイトで洗浄し、洗浄済み土を 埋戻しに再利用した。洗浄の結果、油の除去率が約96%と高い洗浄性能が得られ、処理期間、コストともに十 分に所期の目標を達成することができた。ここでは第1報として汚染の概要と処理方法について述べる。

2.地震および発生した油汚染の概要

今回被害をもたらした地震の震源は新潟県上中越沖で、震源深さは17km であり、この地震により新潟県と長 野県で最大震度6 強を観測し、ライフライン、斜面、港湾ならびに住宅等多数の被害が生じた。柏崎刈羽原子 力発電所(発電設備8,212MW(沸騰水型軽水炉BWR、7 基))までの震源距離、震央距離はそれぞれ23km、16km で ある。原子炉建屋基礎マット上で観測された記録は1号機が最大で、水平加速度680Gal(東西方向)である。

さらにいずれの原子炉建屋も設計時の基準地震動S2 による応 答値を上回る地震動であった。

地震時には、7 基の原子炉のうち3 基が定期検査のため停 止中で4 基が稼働していた。地震直後、稼働中の4 基の原子 炉に制御棒が自動挿入され、止める、冷やす、放射性物質を 封じ込めるという機能が確実に働いて、原子炉は安全に停止 した。

一方、原子炉および発電所タービン建屋周辺地盤(建設時 に沖積砂や洪積砂を主体とする掘削土に粒度調整のため安田 層と呼ばれる現地発生粘土を混合して埋戻されたもの)は、

広い範囲で沈下し、埋戻し土に直接支持された相対的に重要 度が低いB、Cクラスの設備に大きな被害が発生した。

図-1に、火災事故が発生した3号機所内変圧器の損傷原 因を示す。地震発生時、所内変圧器内の絶縁油が放圧装置を 通して器外へ放出した。杭基礎で新第三期層(西山層)に支 持された所内変圧器に対し、埋戻し土に直接支持された接続 母線部が相対的に20~25cm 沈下したため、変圧器母線がショ

ートし、発生した火花により器外放出した絶縁油が引火して火災が発生した。同様な絶縁油の器外放出が全号 機で発生した。器外放出した絶縁油は防油堤に留まるはずであったが、6 号機以外の各号機で埋戻し土に直接 支持された防油堤が損傷したため地盤中に浸透し、約35,000t の土が油により汚染した。その内最も被害の大 きかった2号機変圧器では、漏洩量145kL、汚染土約30,000t と全体の約90%を占めた。汚染土の掘削搬出時の 調査やボーリング調査から把握した変圧器基礎地盤の油汚染分布、土の細粒分含有率分布を図-2に示す。漏 洩した油は地下に浸透したが、細粒分含有率15%以上の領域で遮蔽され、細粒分含有率の差によって油の浸透の 違いが認められる。

キーワード 新潟県中越沖地震,高圧ジェット水,絶縁油,汚染土,洗浄

連絡先 〒100-8560 東京都千代田区内幸町1-1-3 東京電力㈱建設部新エネルギー導入推進担当 TEL:03-6373-1111(代表) 沈 下

変圧器基礎 変圧器

タービン建屋

杭基礎 (沈下しない )

直接基礎 (沈下しない)

基礎形式 の違い により 構築物間 で不同 沈下が 発生

ダクトに ズレが 発生

沈 下 変圧器基礎

変圧器

タービン建屋

杭基礎 (沈下しない )

直接基礎 (沈下しない)

基礎形式 の違い により 構築物間 で不同 沈下が 発生

ダクトに ズレが 発生 接続母線部

図-1 3号機所内変圧器の損傷原因 土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)

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Ⅶ‑204

(2)

図-2 2号機変圧器基礎地盤の油汚染分布 3. 汚染土処理方法の検討

大量に発生した汚染土を限られた期間で速やかに処理するために、洗浄期間、費用、周辺地域への影響など の多角的な面から、表-1に示すような種々の方法を検討し、さらに

・ 建屋の揚圧力低減のため各建屋には周辺地盤の地下水を集水・低下させる機能があり、漏洩油が地下水と 接触することで海洋への流出拡大が懸念されること

・ 遮水壁による封じ込めや原位置浄化のような掘削除去しない方法は、遮水や浄化の信頼性が低いこと

・ 掘削除去して全量構外処分する方法は、大量の輸送車両が周辺地域を通過するため復興途上の周辺地域へ の環境負荷が増加すること

等を考慮した結果、掘削除去、浄化、浄化後の土による埋戻しと、汚染土をリサイクルできる方法を採用する ことにした。浄化方法としては、これまでの研究で開発した高圧ジェット水による洗浄技術を採用した。

4.まとめ

新潟県中越沖地震による地盤の沈下によって変圧器から地盤中に絶縁油が漏洩し、

35,000tの汚染土が発生し

た。詳細調査の結果、地盤中の油の分布は細粒分の多い地盤で遮蔽されていることを把握した。また,環境負 荷低減等の観点から大量の汚染土の処理には、掘削除去して浄化する方法が適切であると評価された。

表-1 油汚染土の処理技術の比較

掘削除去 遮水壁による封じ

込め 原位置浄化

セメント原料化(構

外処分) バイオ 熱処理(構外処分) 洗浄 概要

鋼矢板,注入固化等 により対策範囲を 囲み,周囲への油分 の拡散を防止する。

微生物や化学作用 により油分を分解 する。

セメント工場へ搬 出し,セメント原料 として焼成処理す る。

ヤードに敷き均し,

好気性微生物によ り分解処理する。

工場で数百度以上 に過熱し油分を揮 発または分解させ る。

水で洗浄・分級し,

油分を除去した粗 粒分を再利用,細粒 分を産廃処分する。

長所

・大深度の掘削が不

・大深度の掘削が不

・確実

・掘削・搬出後の処 理が不要

・高濃度汚染に対応 可能

・確実

・安価

・確実

・掘削・搬出後の処 理が不要

・高濃度汚染に対応 可能

・確実

・高濃度汚染に対応 可能

・安価

短所

・モニタリングが長 期に亘って必要

・数千ppmまでの 改良が限界

・分解に時間がかか

・モニタリングが長 期に亘って必要

・掘削・埋戻しが必

・高価

・掘削・埋戻しが必

・数千ppmまでの 改良が限界

・分解に時間がかか

・掘削・埋戻しが必

・高価

・掘削・埋戻しが必

評価

汚染源を残して長 期モニタリングす るのは困難

浄化の不確実性が

難点 確実であるが高価 安価であるが時間 がかかり,数千ppm までの改良が限界

確実であるが高価 確実であり安価

土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)

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参照

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