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石灰岩洗鉱沈澱による強酸性土壌の改良について: 沖縄地域学リポジトリ

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Title

石灰岩洗鉱沈澱による強酸性土壌の改良について

Author(s)

比嘉, 照夫; 嵩原, 亜弓

Citation

沖縄農業, 18(1・2): 5-14

Issue Date

1983-03

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/1209

Rights

沖縄農業研究会

(2)

石灰岩洗鉱沈澱による

強酸'性土壌の改良について

比嘉照夫・嵩原亜弓

(琉球大学農学部) TeruoHIGA,AyumiTAKEHARA:Improvementofanacidsoilwiththe

settlingmudfromlimestonewaShigs.

I緒論 に検討を行なったものである。 沖縄本島中・北部に分布する通称,国頭マージは,中・

古生紀の粘板岩や千枚岩.結晶質石灰岩,および第4紀

国頭礫層を母材とした風化土壌1,21で、塩基(Ca,Mg等)

が溶脱された強酸性士壌である。この土壌は,リン酸も 欠乏し,有機物含量も少ない。さらに下層士が繊密で硬 く,根.水.空気の侵入が困難である。その為,透水'性 も悪く,多雨時には停滞水による湿害をうけやすい。3’ このような欠点を改良する為に,種々の改良材を施用 してきた。たとえば,パイナップル.茶などの好酸性作 物以外の栽培の場合は,クチヤや石灰の施用による化学 性の改良を行ない,物理性の改良には,砂の施用が普及 している。31しかしながら,クチヤの場合は中.南部か らの運搬費の問題,石灰の場合は営農上,有利とは言え ない状況にあり,より効果的な改良資材の開発も,酸性 土壌改良上の大きな問題点となっている。前述のク チヤ.石灰のかわりに,使用し得る改良材として,アル カリ性の海砂.水砕スラグ・石灰岩地帯の砕石所から出 る洗鉱沈澱土などが上げられるが,海砂は環境保全問題, 水砕スラグは運搬などの問題があり,当面の課題として, 洗鉱沈澱土を検討する必要がある。 沖縄における洗鉱沈澱士は,石灰岩地帯の砕石場で鉱 石から洗いおとされ,沈澱したもので,石灰含量が高い 為,国頭マージのpH矯正に効果的であることはすでに 明かであるが,鉱業における産業廃棄物とみなされてい る為,農地への搬入はもとより,廃棄については,厳し い規制を受けている。沖縄県公衆衛生協会によれば,沖 縄産の洗鉱沈澱±の重金属含量は ̄般土壌と同じく基準 値以下となっているが,公的機関における改良材として の検討がなされておらず,処理に関して大きな問題をか かえている。 本報は,それらの経緯をふまえ,洗鉱沈澱士を国頭マー ジの改良材として使用する場合の基礎的な資料を得る為 Ⅱ実験材料および方法 供試土壌には,恩納村字伊武部で採取した強酸性の国 頭マージ,国頭村半地国頭砕石場の沈降剤未使用洗鉱沈 澱士(鉱石から洗いおとした後,自然に沈澱させた士), 同地の沈降剤使用洗鉱沈澱士(鉱石から洗いおとした後, 沈降剤で沈澱を促進した士),西原町森川のクチヤを用 いた。 まず,原士の反応を見る実験として,ポリポットに, 国頭マージに対する沈降済未使用洗鉱沈澱土1%. 3%・5%・7%・10%・15%・20%・30%・50%施用 区,国頭マージに対する沈降剤使用洗鉱沈澱土1%. 3%.5%・7%・10%・15%・20%・30%・50%施用 区,国頭マージに対するクチヤ1%・3%・5%. 7%・10%・15%・20%・30%・50%施用区,国頭マー ジのみの区の計28区を設定した。それらのポットを温室 内に置き,毎日十分に潜水し,溶脱のある自然状態と同 じ条件に近い形で継続し,それを対照区とした。一方,プ ラスチックコップに前述の自然状態と同じ28区をつく り,滞水しないよいに湿らせ,ビニールで覆をして溶脱 のない湿潤状態にし,施用直後・1週間後・1カ月後. 2カ月後にサンプリングし,pH・ECの測定を行なっ た。4.5) 次に作物を露地とガラス室でポット栽培を行ない生育 状況の調査を行なった。まず,トウモロコシ・山東菜・ホウ レンソウをそれぞれ,国頭マージのみのコントロール区, 国頭マージに対する沈降剤未使用洗鉱沈澱士5%・10% 20%施用区,国頭マージに対する沈降剤使用洗鉱沈澱士 5%・10%・20%施用区の計7区の実験を行なった。 施肥は,ホウレンソウはOK-F-1(15-8-17) を使用し窒素換算で10a当たり20k9とした。山東菜はC DU(15-15-15)を使用し窒素換算で10a当たり10k9,

(3)

沖縄農業第18巻第1.2併号(1983年) 水位透水性および定水位透水性測定法で行なった。 トウモロコシもCDUを使用し10a当たり窒素換算で

10k9とした。さらに,前実験の栽培前および終了後のpH,

EC(451生体重・草丈の結果をふまえて,国頭マージに対す る沈降剤未使用洗鉱沈澱士1%・15%・50%施用区,国 頭マージに対する沈降剤使用洗鉱沈澱士1%・15%・ 50%施用区,国頭マージに対するクチヤ1%・15%・ 50%施用区及び国頭マージのみの対照区の計10区を設定 し山東菜の3連作を行なった。施肥は,OK-F-1(15 -8-17)を使用し,窒素換算で10a当たり10k9とした。

調査項目は栽培前および終了後のpH・EC,透水性・

生体重・草丈・展開葉数とした。なお透水性の測定は変

Ⅲ実験結果 1.国頭マージに対する洗鉱沈澱士,クチャの施用量 とpHの関係 国頭マージに対する洗鉱沈澱士,クチャの施用量とp Hの関係について施用直後の結果を第1図に示した。酸 性土壌に対する石灰の反応は,3-7日程度の時間を要 すると言われており,61第1図の結果を緩衝曲線として

用いることに難があるが,施用量とpHとの関係を見れ

ば,三者の差異は明らかである。細目についてみると, 7 6

(○因由)固』

5 先鉱沈澱土(沈降剤未使用) 先鉱沈澱土(沈降剤使用) クチャ 洗洗

一一

4 p-年 3 01020304050脇 施用割合(重量比)

第1図国頭マージに対する洗鉱沈澱土,クチヤの施用量とPHの関係(施用直後)

0.8 06

=04

洗洗ク 洗鉱沈澱土(沈 洗鉱沈澱土(沈 クチャ 降剤未使用) 降剤使用) =○--0- =○--0- 0.2

一屯

一屯

0 1020304050閉 施用割合(重量比)

第2図国頭マージに対する洗鉱沈澱士,クチヤの施用量とECの関係(施用直後)

(4)

比嘉・嵩原:石炭岩洗鉱沈澱による強酸性土壌の改良について 7

施用割合を30%以上に増大すると三者ともほぼ同じpH

値となりほぼ一定の値となっている。

国頭マージに対する洗鉱沈澱とクチャの施用量とpH

の関係を経時的に測定した結果を第3図・第4図・第5 図に示した。潅水による溶脱が起こる状態(図における 沈降剤未使用沈鉱沈澱士は,1%の施用割合でpH6ま で急上昇しており,沈降剤使用洗鉱沈澱士は,5%の施 用割合でpH6,クチヤはその15倍量の15%で同じpJ となっている。また沈降剤未使用沈鉱沈澱土と沈降剤使 用洗鉱沈澱士は,20%の施用割合で同じpH値に達し, 8 87

'朧 ̄

i崖三二三

7 6 5 (○園国)四四 湿潤密閉状態 6 湿潤自然状態 5 (○園■)四四 一一施用直後 一一施用1週間後 一施用1ケ月後 一一施用2ケ月後 一一施用直後 一一施用1週間後 -も-施用1ケ月後 一□-施用2ケ月後 4 4 01020304050”0 施用割合(重量比) 第3図国頭マージに対する洗鉱沈澱士(沈降剤未使用)の施用量とpHの関係 1020304050彫 施用割合(重量比) 8 8 圭牌ヨーヨー--ヨ

i7

7 7

6 湿潤密閉状態 5 (○国国)四四 6 5 ○面■)函」

施用直後 施用1週間後 施用1ケ月後 施用2ケ月後 一一施用直後 一施用1週間後 一一施用1ケ月後 一口_施用2ケ月後 4 4 20304050彫 施用割合(重量比) 1020304050m010 施用割合(重量比) 第4図国頭マージに対する洗鉱沈澱土(沈降剤使用)の施用量とpHの関係 0 8 一一毛 -- 二B-エー 7 7 股F' 6 5 (○国因)四四 (○句国)四四

6 殖用直り

腿用I自初

5 ■■ 間磯

"

晒用1ケ月囮 4 晒尉1ケ月後 01020304050陶 施用割合(重量比)

第5図国頭マージに対するクチャの施用量とpHの関係

湿潤自然状態,以後自然状態と記す)では,洗鉱沈澱士 は1週間以内に反応をほぼ終了し,pH8付近で安定と なる。クチヤは反応が緩慢で,60日以上も不安定な状態 01020304050剛 施用割合(重量比) を示すが,時間の経過とともに,pH8付近に達している。 溶脱のない状態(図に示した湿潤密閉状態以後密閉状 態と記す)では,自然状態により反応が緩慢であるが、

(5)

沖縄農業第18巻第1.2併号(1983年) 国頭マージに対する洗鉱沈澱土,クチヤの施用直後の 施用量とECの関係の結果を第2図に示した。第2図の 結果は施用割合が30%まで増加する間は第1図のpH曲 線に添った値を取るのに対し,それの後は,クチヤと逆 転する現象が認められる。ECは土壌の溶出無機養分の 目安の確認のために活用され,0.6-0.9mmhoがほど望 ましい値とされている。原士のECは,0.07である点を基 準に見ると石灰施用がECに対し大きく影響しているこ とが認められ,特に施用量が少ない沈澱±の区において その傾向が著しく現われている。 pH8付近でぽ定常値を示している。pHと施用割合の関 係を示す曲線を見ると,反応の進行に伴ってpH値の上 昇が認められるが、その曲線の変化は施用直後の曲線と ほぼ同じである。安定後のpHは,沈降剤未使用洗鉱沈 澱士では1%の施用割合でpH7をこえ,沈降剤使用洗 鉱沈澱士では3%の施用割合でpH7をこえている。ク チヤ(2カ月後の結果)では,7%の施用割合でpH7 となっている。 2.国頭マージに対する洗鉱沈澱±,クチャの施用量 とECの関係 0.8 0.8

,fZiLiL-塾

湿潤自然状態 06 0.6 飛用l白5 L) 0.4 回 L) 0.4 回 施用1週間後 施用1ケ月後 施用2ケ月後

L尹墨--二

0.2 02 0 0 1020304050燭10 施用割合(重量比) 第6図国頭マージに対する洗鉱沈澱土(沈降剤未使用)の施用量とECの関係 203040506{;) 施用割合(重量比) 0.8 0.8 0.6 施用直後~ 施用1週間後 施用1ケ月後 0.6

月04

-●- 1園l潤密閉状態 --0- -。 -△- 湿潤自然状態 一一施用直後 一一施用1週間後 一一施用1ケ月後 一□-施用2ケ月後

:04

--p-施用2ケ月後 0.2 0.2

>に;云う

01020304050”010 施用割合(重量比) 第7図国頭マージに対する洗鉱沈澱土(沈降剤使用)の施用量とECの関係 20304050615) 施用割合(重量比) 0.8 0.8 湿潤自然状態 0.6 一一施用直後 0.6 一一施用1週間後 一△-施用1ケ月後 一一施用2ケ月後

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一施用直後 一一施用1週間後 一施用1ケ月後 一口-施用2ケ月後 02 0 0 1020304050”1020304050燭 施用割合(重量比) 施用割合(重量比) 図8図国頭マージに対するクチャの施用量とECの関係 第6図・第7図・第8図は,国頭マージに対する洗鉱定している。具体的にみると,洗鉱沈澱士は1%の施用 沈澱土および,クチャの施用量とECの関係を経時的比割合で0.2mmho付近になり,施用割合を増しても

較したものである。いずれの区も自然状態では一時的な0.2mmho付近で安定し,クチヤは5%の施用割合で

増大は認められるが1週間以内に,ほぼ0.2mmhoに安0.2mmho付近になり,施用割合を増してもほぼ

(6)

比嘉・嵩原:石炭岩洗鉱沈澱による強酸性土壌の改良について 9 q2mmho付近に定常値となる特徴を示している。密閉 状態では,自然状態よりやや高い値となっている。クチヤ は60日を経過しても安定状態に達せず,反応が極めて緩 慢である。 3.国頭マージに対する洗鉱沈澱±,クチャの施用量 と透水性の関係 透水係数は6.69×10-3から4.10×10-2までの間にあ り,各区間に有意差は認められなかった。 4.トウモロコシ・山東菜・ホウレンソウの生育に及 ぼす,国頭マージに対する洗鉱沈澱±の施用量の影響 トウモロコシ・山東菜・ホウレンソウの生育に及ぼ す,国頭マージに対する洗鉱沈澱土の施用量の影響を, 第9図に示した。 84087654399876543210000 0(U 41ワ】〔d o回 (○m国)西口 生体重 般大葉長 ▲ 。 △ 。 △ C a O △ 。 △ 。 △

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8408765439000000000000J 246m I87654321 00 く (○囚出)困凸 ○回 生体重 草 丈 △ 。 △ 。 ▲ 。 △ o p o ▲ 。 ▲ ○ F-F-L-L-」

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ホウレンソウ oSepl6 Nov,4 トウモロコシ 山東菜

nnlnl

生体量

ⅢⅡ

最大葉長 (c、)COnt5%10%20%5%10%20%(c、)COnt5%10%20%5%10%20日う(c、)Conr5%10%20%5%10%20% 沈降剤未使用沈降剤使用沈降斉I未使用沈降剤使用沈降剤未使用沈降剤使用 第9図トウモロコシ,山東菜,ホウレンソウの生育に及ぼす国頭マージに対する洗鉱沈澱土の施用量の影響 耐酸性が強く,アルカリ性でも生育できるトウモロコている。 シは71,コントロール区で最も良い生育を示している。 好アルカリ性作物であるホウレンソウは,コントロー

コントロール区以外の洗鉱沈澱士施用区では,施用量のル区に比べ,洗鉱沈澱士施用区は顕著な効果が認められ,

増加に伴って,生体重も増加している。pHは,コントローpHの上昇に伴って生体重も増加している。pHについて

ル区で栽培後低下しているが,洗鉱沈澱士施用区で栽培見ると,コントロール区で栽培後低下しているのに対し,

後上昇し,pH7付近に達している。ECについて見る洗鉱沈澱士施用区では0.5-1程度の上昇が認められて

と,コントロール区で栽培後上昇し0.2mmho付近に達いる。ECは,コントロール区・洗鉱沈澱士施用区共に, し,洗鉱沈澱士施用区では,栽培後変化が認められない変化がないか,または上昇の傾向にある。

か,または低下の傾向にあり,ほぼq3mmhoの値を示し,5.山東菜の生育に及ぼす,国頭マージに対する洗鉱

一見,生育と矛盾する結果となっているが,その点につい沈澱±,クチヤの施用量の影響 ては考察の項で考えたい。 山東菜の生育に及ぼす,国頭マージに対する洗鉱沈澱

中性を好む山東菜は,コントロール区に比べ,洗鉱沈士,クチヤの施用量の影響を第1o図に示した。

澱士施用区で極めて良好な生育を示している。pHとE

山東菜の生育を生体重で比較すると,第1作・第2作 Cについては,トウモロコシ区とほぼ類似の結果を示しでは,各施用区がすべてコントロール区より,良好な結

(7)

沖縄農業第18巻第1.2併号(1983年) 10

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IcdContl形15$50%1%15%50%1$15%50$ 洗鉱沈澱土洗鉱沈澱土クチャ (沈降剤未使用)(沈降剤使用) 第10図111束菜の生育に及ぼす国頭マージに対する洗鉱沈澱土,クチヤの施用凪の影響

果となり,第3作ではクチヤ1%施用区とコントロール0.5mmho前後となり,栽培中大きな変化は認められず

区に有意差なく,他の施用区はコントロール区よりも,安定した状態を保っている。沈降剤未使用洗鉱沈澱土

収量が増如し有意差が認められた。各作期ごとについて15%施用区では,第1作栽培中O3mmhoまで低下し,

見ると,第1作ではクチヤ50%施用区.沈降剤未使用洗第3作栽培中にq35mmhoに上昇した。同50%施用区で

鉱沈澱士1%施用区が最高値を示し,クチヤ1%施用区も,同様に0.25mmhoまで低下した後,再び後0.5mmho

が施用区内の最低値を示している。第2作では沈降剤未まで上昇した。沈降剤使用洗鉱沈澱士50%施用区でも,

使用洗鉱沈澱士15%施用区・沈降剤使用洗鉱沈澱士1%同様な傾向を示し0.3mmhoまで低下した後,O45mmho

施用区,クチヤ50%施用区が最高値を示し,クチヤ1%まで上昇が認められた。

施用区,沈降剤使用洗鉱沈澱士50%施用区が施用区内の 沈降剤使用洗鉱沈澱土15%施用区では,第1作・第2

最低値となっている。第3作では,クチヤ50%施用区が作栽培中0.35mmhoまで低下し,第3作栽培中

最高値を示し,クチヤ1%施用区が最低値を示している。O6mmhoまで上昇し,クチヤ15%施用区でも,同様に

土壌pHの変化を見ると,コントロール区では,栽培0.35mmhoまで低下した後,0.5mmhoまで上昇している。ク

前後を通して,ほぼ35前後にあり,クチヤ1%施用区チヤ1%施用区では,0.1mmhoから0.2mmhoに,コン

でも,3.8前後にあり,両者における差は認められなトロール区では,0.O7mmhoからO17mmhoに緩慢な上 い゜前二者を除くその他の処理区について見ると,第1昇が認められている。 作栽培後に測定したPHは,沈降剤使用洗鉱沈澱士1% 施用区で低下が認められたのに対し,その他の区におい ては上昇が認められた。第3作栽培後に測定したpHは, Ⅳ考察 沈降剤使用洗鉱沈澱土15%施用区で低下が認められたの

に対し,その他の区において第1作栽培後から第3作栽本報は,沖縄本島中・北部に分布する強酸性士壌国頭

培後まで安定した状態を保っている。すなわち,沈降剤マージの効果的な改良材として予想される洗鉱沈澱土の 未使用洗鉱沈澱士1%施用区では6.8前後・同15%施用施用効果又は影響を既存改良材であるクチヤとの比較に 区.50%施用区では7.9前後・沈降剤使用洗鉱沈澱士おいて検討を行なったものである。 1%施用区では約4.2,同.5%施用区では7.5前後,同50%先ず産業廃棄物の再利用を考える場合,最も重要な点 施用区では7.8前後,クチヤ15%施用区では7.2前後,同は有害物質の有無である。沖縄県公衆衛生協会が行なつ 50%施用区では7.8前後で安定している。た洗鉱沈澱士の重金属含量及び溶出量の分析値は第1表 次にECの項を比較すると,沈降剤未使用洗鉱沈澱士に示す通りである。 1%施用区ではO4mmho前後,沈降剤使用洗鉱沈澱土その結果は洗鉱沈澱士における有害重金属は定量限界 1%施用区ではO2mmho前後,クチヤ50%施用区では値以下で一般の土壌の重金属含量よりも低い数値となつ

(8)

比嘉・嵩原:石炭岩洗鉱沈澱による強酸性土壌の改良について 第1表洗鉱沈澱土の重金属含量 (沖縄県公衆衛生協会) 種別 採取年月曰

採取場所

含有量試験 昭和56年7月20日 国頭村字半地563 備考 定量限界値 アルキル水銀化合物 水銀又はその化合物

カドミウム又はその化合物

鉛又はその化合物

有機燐化合物

六価クロム化合物

ひ素又はその化合物 シアン化合物 ポリ塩化ビフェニール ● ● N00)1-N D062D 125 0.01 (叩/hg) (噸/hg) (岬/h,) 0.1 (”/h,) 1.3 N、, 0.01 種別 採取年月曰

採取場所

溶出試験 昭和56年7月20日 国頭村字半地563 備考 定量限界値 アルキル水銀化合物

水銀又はその化合物

カドミウム又はその化合物

鉛又はその化合物

有機燐化合物

六価クロム化合物

ひ素又はその化合物

シアン化合物

ポリ塩化ビフェニール DDDDDDDDD ●●●o●●●●D NNNNNNNNN 0.0005 0.0005 0.02 0.1 0.1 005 0.05 0.02 0.0005 注:ND:定量限界値未満 ておりW基本的には一般土壌の客土と大差のないものであり,内容的に見て規制の対象となるものではない。

第2表洗鉱沈澱土の化学成分

(沖縄県工業試験場) SiO2 Al203 Fe303 Cao MgO

P205

灼減 253 028 0.88 52.12 1.01 0.07 43.11 備考:試用は風乾物,分析は「石灰,ドロマイト完全分析法」に準拠。 なお供試料のCaOを炭酸カルシウム(CoCo3)に換算すると93.02%とみなされる。 洗鉱沈澱土は第2表に示されるように炭酸カルシウム

(CaCo3)の含量が90%以上のため,炭酸カルシウム含

量がlo%程度のクチヤに比べ81少量の施用で,強酸性土 壌のpH矯正に効果があり,短時間で安定値に達してい

る。本実験期間中におけるpHは作物栽培の有無にかか

わらず,同じ結果となっている。 湿潤のまま溶脱のない状態に保った場合のpHは安定 値に達するまでにやや遅れる傾向にあるが,最終的には 溶脱の有無に関係なくほぼ類似の定常値を示すようにな る。したがって,洗鉱沈澱土による土壌pHの矯正は降

(9)

12 沖縄農業第18巻第1.2併号(1983年) 雨の多少にかかわらず,極めて安定していることが理解 される(第1図)。 pHに続いて重要な事項は土壌の肥沃効果すなわち, 無機養分の可溶性の程度である。可溶性塩類のレベルは 電気伝導度(EC)を測定することによって適正値を確 認することが可能であり,自然土壌においては O2mmho以上あれば基本的に良い土壌に属し,栽培に おいては0.6~0.9程度が望ましいと云われている。 それらの見地から洗鉱沈澱士の効果を見ると,当初の 原士のEC0.07を0.2-0.4まで改良しており,pHの矯 正のみならず肥沃度の改善にも多大な効果が認められ る。 次に生育についてみるとサントウサイやホウレンソウ において,洗鉱沈澱士処理の効果は著しいのに対し,ト ウモロコシの区においては無処理区の生育が最も良く, また処理区間の比較においては,施用量の多い区ほど良 好な生育を示しており,理論的に見ると矛盾した結果と なっている。(第9図) それらの矛盾点はトウモロコシの試験区が露地で行な われ,更には排水条件の悪い深いポットで行なわれた事 にも起因したものとも予想されるが,いずれにせよ再検 討が必要である。 第10図に示すサントウ菜の結果は生育に対する洗鉱沈 澱土とECの関係を示すものとして興味深いものがあ る。 その結果は低いpH値でもECが上昇すれば収量が増 加する傾向を示し,pHの矯正がある程度進めば,EC の上昇が促進される点である。

本実験においては,カセイソーダなどによるpH調整

区,すなわち,栄養的に直接関与しないpH矯正区を設 定していないため,pHとECが直接的に関連している と云う判断には検討の余地が残されるが,石灰含量の高 い洗鉱沈澱士やジヤーガルは酸性土壌の肥沃度の向上に 対し著しい効果があり,特に洗鉱沈澱土は1%程度の施 用でも極めて高い効果が認められる。 栽培土壌の優劣は土壌の化学性はもとより物理性も重 要視されるが,その中でも特に透水性は重要な因子であ る。本実験における透水性試験の結果はいずれの区にお いても有意差は認められていない。 一般に重粘質のクチャを施用した場合,土壌の透水性 は除々に悪化することが知られている。微細粒子の洗鉱 沈澱士も常識的には同じ傾向を示すものと思われるが, 一方では石灰含量が極めて高いため,酸性土壌に施用し た場合,団粒形成に効果があることも知られている。洗 鉱沈澱士の石灰含量は第2表に示されるように炭酸カル シウム(炭カル)値で93%もあり,その含量が10%内外 のジャーガルとは同レベルで論じることはできず,物理 性については経時的な検討が必要である。 本実験の結果はポット試験の下に得られたものであ り,実用に当っては圃場レベルの検討も必要と思われる が,成分全体の93%が炭酸カルシウムである点を考慮す ると,一般的に行なわれている炭カルによる土壌改良の 感覚で十分に対応し得るものである。 したがって実用に当たっては作土を30cmと想定した場 合,乾燥状態の洗鉱沈澱土で10a当たり3トンの施用が 目安となる。一方,レタス,ネギ類,ホウレンソウ,サ トウキビなど好石灰または耐アルカリ作物の場合は,そ の5~10倍程度の施用でも支障がなく,長期にわたる安 定した改良が可能である。 現在,北部地区における強酸性土壌の改良には,中南 部よりクチヤを運び10a当たり20-30トンも多量の客土 が行なわれている。 洗鉱沈澱士の場合,本実験結果および,その炭酸カル シウム含量を考慮すると,クチャの15分の1程度で同等 の効果が得られるのみならず,クチャの持つ土壌物理性 の悪化問題も解決される期待が持たれるものである。 更には,酸性土壌は北部に最も多く分布し,砕石場が 北部に立地している現実を考慮すればコスト的に見ても かなりの効果が期待できる。 V摘要

沖縄本島中・北部に分布する通称国頭マージに対する

石灰質洗鉱沈澱士施用の影響をクチャ施用と対比しつ つ,検討した。

1.洗鉱沈澱士の施用はクチヤの施用に比べて,少量

で強酸性土壌のpH矯正に効果があり,安定が速い。

2.ECは,作物を栽培しない場合,施用1週間後に, コントロール区(国頭マージのみの区)クチャ1%・3%

施用区を除き,ほぼ,O2mmhoに安定した。

3.透水性は各区間に有意差は認められなかった。

4.山東菜の生育は,沈降剤未使用洗鉱沈澱土1%施

用区,沈降剤使用洗鉱沈澱土1%施用区,クチャ50%施

用区で,最高値を示し,ホウレンソウでも類似の傾向を

示した。 Ⅵ引用文献 1.国土庁土地局1977縮尺12万5千万の1土地分 類図47(沖縄県),土地分類図附属資料(沖縄県)P6 ~7 2.大屋一弘1976ジヤーガルとマージの化学性と 粘土鉱物について第47回農業土木学会九州支部講演会 (シンポジウム),沖縄の特殊土壌農業士木学会九州

(10)

13 比嘉・嵩原:石炭岩洗鉱沈澱による強酸性土壌の改良について 支部,1-13 3.喜久川宏1980沖縄農業読本社会経済研究所 4.三好洋1981土壌診断法農山農村文化協会 5.土の試験・調査実習書改訂委員会1980土の試 験実習書土質工学会 6.HomerDChapmanandParkerFPrattl961 Methodsofanalysisforsoils,plants,andwaters UniversityofCalifDivivionofAgriculturalSciences P244 7.農学大事典編集委員会1980農学大事典養賢 堂

a渡嘉敷義浩.田里明・志茂守孝1981ジヤーガ

ルとその母材に関する研究第7報琉球大学農学部学術 報告第28号別刷 9.早瀬達郎.安藤淳平・越野正義編集1976肥 料と環境保全(化学肥料の影響と廃棄物の肥料化),ソ フトサイエンス社 ,o・植物栄養・土壌・肥料大事典編集委員 会1976植物栄養・・土壌・肥料大事典養賢堂

1.繩,,

第11図山東菜の生育に及ぼす国頭マージに対する洗鉱沈澱土の施用量の影響

注:図中の数字は施用割合(%) Cont.国頭マージのみ

’蕊5%施用区

Ⅱ梨’0%施用区

使

Ⅲ垣20%施用区

5%施用区 10%施用区 20%施用区 Ⅳ (沈降剤使用) V Ⅵ

第12図ホウレンソウの生育に及ぼす国頭マージに対する洗鉱沈澱土の施用量の影響

(11)

沖縄農業第18巻第1.2併号(1983年) 14 Cont・国頭マージのみ 洗鉱沈澱土 (沈降剤未使用) 11%施用区 Ⅱ15%施用区 Ⅲ50%施用区 洗鉱沈澱土 (沈降剤使用) Ⅳ1%施用区 V15%施用区 Ⅵ50%施用区 第1作 クチ Ⅶ1% Ⅷ15% Ⅸ50% 区区区 用用用 ャ施施施 第2作

第13図山東菜の生育に及ぼす国頭マージに対する洗鉱沈澱土,クチャの施用量の影響

参照

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