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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

希硫酸によるウラン鉱石の Chemical Leaching に ついて

著者 梅田 甲子郎

雑誌名 奈良学芸大学紀要. 自然科学

巻 11

ページ 25‑30

発行年 1963‑02‑28

その他のタイトル On Chemical Leaching of Uranium Ores by Dilute Sulphuric Acid

URL http://hdl.handle.net/10105/3478

(2)

希硫酸によ る ウ ラ ン鉱石の Chemical I」eachingについて

梅 田 甲 子 郎 (奈良学芸大学地学教室) (昭和37年9月29日受理)

0‑i Chemical Leaching of Urani‑lm Ores by Dilute Sulphuric Acid K6shir6 U MEDA

(Department of Earth Science) Abstract

Uranium minerals consisting Ningy∂t8ge ore deposits, such as Autunite, Meta‑autumte and Ningyoite, are dissolved by various acids and alkalies. In this paper, the writer descr

‑ibes about chemical leaching of ores of NingycitSge by sulphuric acid.

Uranium contained in the ores was most efficiently leached in beaker by dilute sulphuric acid of strength of 0.5^ in volume percentage, and that in the ores packed in the glass tube was easily dissolved by circulating dilute acid.

Considering the genesis and occurence of the sedimentary‑like uranium deposits, it had been thought to leach out uranium directly from ore deposits by injecting some solvent into them. It may be impossible on account of the complexity of groundwater, but the high solubility of uranium minerals into dilute acid may be available in concentration of ore or treatment of low‑grade ore.

ま え か き

人形峠をはじめとする我国の堆積状ウラン鉱床は、基盤岩類上の新期堆積層の低部にいわゆる channel構造を形成している。この鉱床の主体であるAutuniteなどのウラン鉱物は、炭酸根・

硫酸根などを含む水に溶解し易く、常に地下水の下流‑と移動しつつある。このような鉱床、と くに低品位鉱床に直接適当な溶剤を投入して人工的にウランを溶出せしめ、その溶液を回収する ことにより、採掘という手段を経ずにウラン鉱床を有利に開発できはしないかという着想のもと に若干の実験を行った。その結果について、昭和35年秋の関西地質学会例会で講演したが、散々 の酷評を頂いた。しかし、それらの批評は重々尤もと思われる点が多く、深く反省させられた。

それまでは、現地において早速実験をと意気込んでいたが、考慮の末、実験は一応中止して再検 討することにした。ここに従来までの実験結果をとりまとめ、かつそれらの当初の目的としたと ころの"堆積状ウラン鉱床より直接ウランを抽出する‑試案"の可能性を改めて考察してみた。

現在の所では、本試案は実施困難と思われるので、いわば思考過程への自己批判であり、結果と してほウラン鉱石の希硫酸によるIeachingの状態の観察にとどまった。

本研究は元京都大学理学部助教授鵜飼保郎博士の御教示と御指導によるもので、実験中止以来

(3)

26 梅 田 甲 子 郎

2年たった今日、引き出しの隅に埋もれていたこれらの資料を整理したのも、同博士の御憩切な 御教導により得た実験結果を、このまま未発表にしておくにしのびなかったからでもある。な お、本実験に種々御援助御指導賜った名古屋工業技術試験所森田清課長・新日本金属化学株式会 社西村新一研究課長・清風工業株式会社川上隆也研究課長・元京都大学理学部地質鉱物学教室研 究員木村安宏氏に対し感謝の意を表す。

希硫酸によるウランの溶出

人形峠鉱床のウラン鉱石は、一次的鉱物とされているいわゆるNingyoiteと、二次的鉱物であ るAutunite・Meta‑autuniteを含む。これらの鉱物は各種の酸・アルカリに溶解し易い。ここに は主として希硫酸によるウランの溶出状態を調べた。実験には主に人形峠鉱床の鉱石を使用し た Autunite・Ningyoiteの硫酸による反応式はつぎのように与えられる。

Autunite : CaO・2UOs・P305・8H30+3H3SO4

‑CaSO4+2UO3・SO4+2HsPO4+8H盟O

Ningyoite: UCa(PO4)2 1.5H30+2HっSO4

‑CaSO4+UO2・SO4+2H3POi+0.5H30

(a)硫酸濃度とウラン溶出量

一定量の鉱石から、一定量の希硫酸によって溶出されるウランの量は、その硫酸濃度に左右さ れるが、必ずしも比例関係ではない。人形峠鉱床の峠地区の二つの鉱石試料AおよびBについ て、その関係を調べてみた。試料AはAutuniteを含む鉱石でウラン含有率は0.327%、試料B はNingyoiteを主とする鉱石でウランを0.100^含む。

鉱石を荒割りして充分混合し、そ の鉱石試料IOgrずつに対し、種々の  mtA to

濃度の希硫酸IOOccずつを加え、一 昼夜放置後のウラン溶出量を第1図 に示す。鉱石が荒削りであるため各 試料が完全に均一ではないが、第1 図より、硫酸容量比が0.001^より 0.19cまでは、濃度の増加に従い、

ウラン溶出量はわづかずつ増加して いる。しかし、 0.1%と0.596の間に ウラン溶出量は急激に増加し、この 付近では試料Aは全ウラン量の20

%、試料Bでは30%が溶出してい

7♂

60

50 40 30 '20 /♂

β

Dissolve/

U Content BOX

0001 0005 0〝 0‑05 0‑1 05 1.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0%

H2SO4‑ (. Volume % )

第1図 硫酸濃度と溶出ウラン量との関係 る。 0.5^より10%までは硫酸濃度

が大となってもウラン溶出量は同程度またはそれ以下となった。すなわち、この条件下における 鉱石のウラン溶出量は0.5;付近を境として不連続的に急増し、それ以上の濃度(10#まで)で

は溶出量の増加は認められない。

比較のために試料A5grずつに対して炭酸ソーダ(Na2COsとNaHC03を等量に加えたもの)を

いろいろの割合に加えたIOOccの水溶液中に浸した際の炭酸ソーダ量と溶出ウラン量とを第1表に

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第1表 炭酸ソーダの量とウラン溶出量 Na2CO3+NaHCO3   溶出ウラン量

r g

2

O   t

‑ A   ( M  

^  

l ‑

O

0. 46 mg.

0. 6 6 0. 6 8 0. 7 9 0. 7 9

かかげる。この場合の溶出ウラン量は希硫酸

の場合に比してずっと少なく、また溶剤の量 第2図 硫酸濃度と鉄・アルミニウムの 溶出量との関係

に応じて漸次少しずつ溶出量が増加している。

希硫酸で鉱石を処理すると、当然、鉄・アルミニウムなども溶出してくる。それらの溶出量は 第2図のように、大体硫酸濃度に応じて漸増している。

(b)反 復 溶 出

鉱石中のウランは一度希硫酸に浸して も、一部が溶出するのみで、かなりのウラ ンが残存する。この残存ウランを溶出する ために、 IOOccの希硫酸に浸した鉱石試料 Aを溶液と炉別し、あらためて等量の同一 濃度の希硫酸に浸す。これを三回反復し た。各回に溶出したウラン量を第3図に示 す。図上のi ,n,Diは反復した順序で、 0.

5‑10%の硫酸濃度の溶液による溶出量に ついて測定した。

理想的な条件下においては第1回に溶出

サ>y¥‑

ci

50 40 30

.〃  rb

N    

‑ I

X

〜‑一・一・‑J一・一    ̲ ( Ⅲ )

0

OS/.0 2.0   4,0   6.0 SO H2S04 ‑ (Volume %1

第3図 反復溶出によるウラン溶出量 する溶出量をUl、第2回をU2‑.・・一第n回

をUnとし、鉱石中の全ウラン量をP、溶剤に溶けな いウラン量をC、溶出率をαとすると

Ui‑(P‑C̲)α U3‑(P‑C)α (1‑α)‑  ・Un‑

(P‑C)α(1‑α)サー!

となり、総溶出呈UはU‑Ui+U3+‑蝣+Un‑ (P‑ Fe C){1‑(1‑αnう〉      AL

ただし、 αは常に一定ではなく、回数により異な るかも知れないし、今回の実験では炉別の不完全・

試料の不均一などにより、 αの値は不規則で、一定 の値を得るに至らなかった。

3回反復溶出による全ウラン溶出量の試料中の全 ウラン量に対する割合は、第2表に示すごとく、最 大は硫酸濃度0.5^の36.496、最低は25.3&であっ

J.

/♂♂

0.5I         5 6    8 3 10%

HzSO* (Volume %)

第4図 反復溶出による鉄・アル

ミニウムの溶出量

(5)

28

第2表 反復溶出3回により溶出ウラン量と 全ウランに対する割合

梅 田 甲 子 郎

硫酸濃度 溶出ウラン量     溶出率 % mg/300cc  溶出ウラン/仝ウラン×100

0. 5    ユ1. 29 1       9, 5 4 3. 3 2 4       8. 84 3. 3 6 7‑ 6 8 1 0       3. 7 8

'dl N ‑ql O cO in O)

tfl Q Ifi N Ifl CO cD

m   M   N   N   N   N   W

また、反復溶出による鉄・アルミニウムの 溶出量を第4図に示す。ウランの場合とは逆 にi,n,n回と回を

追うにつれて溶出量 が増加する傾向があ

蝣*0 ‑i

(C)溶出筒による 溶出

‑上述の実験はビ‑

カー中において、 10 a/aぉFib*.ト Glass Pin‑

grの鉱石に対してIOOccの溶液を加えたものであって、試料に比して溶 液の量が多い。今度は運に、鉱石中に希硫酸を通過せしめて、その際に

溶出するウラン量を測定した。その目的のために、第5図のような筒を Extract 作り、ほぼ10cmの高さに鉱石を充

壊し、上方より希硫酸を滴下して鉱 石中に藩透させ、下方に流出してく る溶液を約IOOccごとにそのウラン 濃度を測定した。

実験に使用した鉱石はつぎの三種 である。

鉱石I 倉吉地区東郷 U:0.32796 Autuniteを主とする粘土質鉱 石

鉱石Ⅱ 人形峠地区 U:0.17896 Autuniteを主とする鉱石 鉱石Ⅲ 人形峠地区 U:0.025S

Ningyoiteを主とする砂質鉱

′ォ5H ,V; s 悶

0 WO 200 300 400 500 600 700cc Solvent

第6図 溶出筒による鉱石Iのウランの溶生状態 石

上の鉱石に対して、 0.5^および0.1&の濃度の希硫酸を港透させた。

鉱石Iに対してO.f と0.1の希硫酸を作用させた場 合のウラン溶出の状態を第6図に、鉄・アルミニウムの 溶出状態を第7図に示す。横軸は溶出筒の下方より滴下 する溶液の量を表わし、縦軸にはほぼIOOcc毎のウラン 濃度を示した。鉱石の量はいづれも300gr、簡内におけ る高さは約10cmである 0.5^の希硫酸の場合はpHが 1.0の一定値に達した滴下量400ccの所で、ウラン濃度 が最高の240mg/^となり、それ以後は次第に減少す る。鉄・アルミニウムはウランより早く、200‑300cc

の所で最高となり、以降は少なくなる 0.1 の希硫酸 第7図 溶出筒による鉱石Iの鉄ア

ルミニウム溶出状態

(6)

の場合のウラン溶出量は、 0.596の希硫酸の場合に比して造かに小であって、 300ccの所で最高の 15mg/^の濃度にすぎなかった。

鉱石Ⅱに対する0.5^と0.196の希 硫酸によるウランの溶出状態を第8 図に示す。この場合の鉱石の量は 430grである。鉱石Iの時と異なる 点は、全般的に溶出量が大であるこ と、最高ウラン濃度に溶液が達する 所が少し遅れること、 0.596と0.196 の希硫酸のときのウラン溶出量に鉱 石Iはの差のないこと、溶液のウラ ン濃度の減少がそれほど急でないこ となどあるO

鉱石Ⅲに対する0.5:の希硫酸に よる溶出はいづれも微弱で、ウラン 濃度は最高21mg//にすぎなかっ た。なお、 0.15?の希硫酸による 溶出は極めて微弱と予想されるの で省略した。

上述の五例の子容出筒によるウラ ン溶出量を第3表にかかげる。溶 出量にかなりの差異があるが、こ れは鉱石のウラン含有量・鉱石の

第8図 溶出筒による鉱石Ⅱのウランの溶出状態

第3表溶出筒によるウラン溶出量の比較

試料 硫酸濃度溶液量菅ラン豊号等孟U:Fe十Al

鉱石   0.5 %  660cc 77.7mg 117.7mg// 1:7.7 鉱石   0.1   770   0.22   0.29   : 295 鉱石    0.5    930  276.3  297.1   1:3.1 鉱石   0.1  1560  241.1 154.6   1: 3.2 鉱石hi 0.5   1470   3.79   2.58   1: 18 量・鉱石の鉱物組成・透水性など

に原因があると考えられる。例を透水性にとると、鉱石i・n・mで10cmの高さまで満たされ た溶出筒を、 IOOccの溶液が通過するに要した時間は、それぞれ100‑500分 5‑160分および5分

とかなりの差異がある。とくに鉱石Ⅲは透水性大で、ウラン溶出量が少ない。

ウラン鉱床より直接ウラン溶出する試案について

本実験は標記の試案に関する基礎的資料を得るために行ったものである。その試案とはつぎの どとき方法である。 "基盤岩類の凹部の新期堆積層に濃縮しているウラン鉱床の露頭線および採 鉱用ボーリング孔より、経済的に最も有利な、適当な濃度の希硫酸を注入して鉱床に渉透させ るO その際に溶出したウランは、溶液と共に地下水の下流‑と流動するO それゆえ、地下水の下 流の適当な位置に集水抗を設けて地下水を集め、その地下水よりウランを回収する。"この案は、

基盤が非透水性でありその上の堆積層が透水性であること・ウラン鉱物が弱酸に溶解すること・

鉱床は常に地下水の下流へと移動していることなどに着目したものであるが、この方法が可能な ためには下記の条件が完全でなければならない。

(1)ウラン鉱物が弱酸によく溶けること。

(2)弱酸が充分鉱床に溶透すること。

(7)

30 梅 田 甲 子 郎

(3)それらの溶液を地下水と共に能率よく回収できること。

(4)回収した地下水よりウランが容易にとり出せること。

その他、硫酸がウラン鉱物以外にあまり消費されないこと・溶出したウランがすぐに粘土など に再吸着されな←、ことなども必要であろう。

(1)に関しては、ウラン鉱石は希硫酸によりよくIeachされ、本実験における条件では0.5

%程度の希薄な濃度の希硫酸が最も有効であった。溶出筒による溶出では、鉱石Iにおいて0.5

%の濃度の希硫酸660ccすなわち濃硫酸3.3ccにより77.7mgのウランが溶出し、鉱石Ⅱにおいて はO.J の希硫酸930ccすなわち濃硫酸4.7ccおよび0.1#の希硫酸1560ccすなわち濃硫酸1.5ccに より、それぞれ276.3mgおよび241.4mgのウランが溶出した。

したがって問題は(2)と(3)である。大自然の地下水系は、期待しているほど簡単なもので はない。堆積層中でも粘土質の部分は、地下水が静止していてほとんど流動しない所もあり、断 層付近などは地表水のごとく激しく流動している所もあり、溶剤が鉱床中をまんべんなく惨透す るということは、短時間ではなかなか難しい。さらにまた、地下水を能率よく回収するというこ とは一層困難であろう0 ‑旦地下へ注いだ溶液はいづこ‑離散するか判らないし、その付近の 地下水の流動方向・流量を正確に知ることも容易ではない。それゆえ、投入した溶剤を能率よく 回収するということは大変な難事であろう。本試案に対する批判の大部分はこの点にあった。本 案は旧態依然たる従来の採掘法によらず、鉱床の成因を利用しようとした点で、アイディアとし てはたしかに面白いが、地下水系が理想的条件にある場合は別として、地下水の複雑さを考える と実現性に乏しいとせざるを得ない。

しかし、鉱石中のウランが希硫酸に溶解し易いことおよびその溶液中よりウランが容易に回収 されることは、ウラン鉱石の選鉱あるいは低品位鉱・残鉱の処理などの採鉱の補助手段に利用す る途があるのではなかろうか。これは将来の問題としておく。

む  す  び

以上、人形峠鉱床の鉱石を使用して希硫酸によるウランの溶出状態を観察した。既述の条件に おいては、 0.5%前後の希薄な希硫酸でも効果的な溶出が行われた。しかし、本実験は限られた 条件下のみのものであり、微妙な挙動をもつウランの溶出状態の極く一部の大略の様子を見たに すぎない。ウラン鉱石処理に関しては、すでに多数の報告があり、今さら、この程度の結果を記 載するのも心苦しいが、実際の鉱石についてIeachingを行った例として、とりまとめ報告した 次第である。

文     献

Feaceful Uses of Atomic Energy (1956‑1958) Vols. 2,3,8 United Nations

鵜飼保郎・川上隆也・木村安宏(1958〕:蛍光分析装置の試作とジルコン中の微量ウランの定量について、

岩石鉱物鉱床学雑誌42巻5号

梶谷  敬(I960):希薄溶液からのウランの濃縮  名古屋工業技術試験所報告9巻7 ・ 8号

参照

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