公法抵触と国際租税法の端緒と進展(その2) : 国 際関係法と英国判例の観点から
その他のタイトル Conflict of Public Law ; Origination and Development of International Tax Law (2) : from the view‑point of International Relation Law and English Judicial Decisions
著者 本浪 章市
雑誌名 關西大學法學論集
巻 50
号 3
ページ 431‑478
発行年 2000‑10‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/00023601
公法抵触と国際租税法の端緒と進展︵その2 ︵お断り︒先の公法抵触と国際租税法の端緒と進展︵その
1)
で︑﹁国際法の一般原則﹂を本論の一のつもりで一としたが︑途中で序論が一となっているので︑これを二の積りで﹁二重課税条約と国際私法﹂を三としたが︑続刊なのでこの分
類は不自然なのでこれを訂正し︑三のフォーゲルの所説は別途の独立した問題として取扱うか︑あるいはむしろ今回の論稿の最後尾に付すべきものと考えるので︑序論に付した一は削除し︑今回の﹁国際私法と国際租税法の関連性﹂は本論の
二として開始することにした︒突拍子もないことであるが︑何卒御了承を賜りたい︶
国 際 私 法 と 国 際 租 税 法 の 関 連 性 序文で触れたように︑嘗ってのビールのぼう大な労作はその根底に州際ないし国際間における課税管轄権の配分を 想定し︑また相当程度その体系化を達成したことは紛れもない事実である︒
( 2)
で租税を取上げ︑
この分野への抵触法学者の参入を刺激し鼓舞したが︑国際二重課税条約のネットワークの拡がりを ー
国 際 関 係 法 と 英 国 判 例 の 観 点 か ら
その結果︑若干の同調者が自己の体系書 本
浪
公法抵触と国際租税法の端緒と進展︵その
2 )
︵四 三一
︶
ヽ ノ
章
市
釈化され霧散したと考えるのが妥当であろう︒ 第五0
巻 第 三 号
︵四
三二
︶
契機として芽吹いた近来のOECD
の活動は︑本来の専門家である租税法学者並びに実務家の関心を国際的側面でも 惹きつけ︑国際課税の主要領域や重要議題は租税法専門家の研究対象となった︒けだし︑国際課税のもたらす不合理 を解消し︑納税者の負担の公平を計ると共に︑租税回避の企図の封殺による歳入の確保を目指すという矛盾する要請 に対応するには︑個別国家の努力もさることながら︑二重課税防止条約の締結推進と条約解釈の明確化を国際的規模 で実現する以外にないからである︒しかし︑極めて限定された範囲で︑しかも甚だ抑制された形ではあるが︑なお国
( 3 ) ( 4 )
際私法学者の関与の妥当性を啓示する曙光を一九六四年のグッドリッチや一九七四年のクレーヴソンの著述中に見出 すことができる︒もちろん︑昨今では︑合衆国の抵触法の体系書から︑租税の項目が姿を消しつつあることは確かで ある︒筆者は本編の序文でその現象を新抵触法アプローチの急速かつ劇的展開に帰着するかのように説述したが︑む しろ︑合衆国では各州課税権が自己抑制のないまま肥大化し︑なお私見を付加えることを許されれば︑裁判管轄権の 重複と同様に︑租税立法管轄権の重複も容認されて行き︑そのたの︑課税管轄権の配分という初期の理想と理念は稀 州際課税の調整原則を考究し︑やがてそれが国際課税の局面にも推及ないし拡張されることも期待された初期の楽
天的時期を既に経過し︑合衆国自体の内部的情況によって︑その考察が終燻に向おうとしていたとき︑なお観念的で なく︑綿密・着実に判例に即応しつつ︑州際ないし国際租税事件の解決の学理を追求し続け︑従前の体系書と並んで 租税の項目に多数のページを割いたグッドリッチの著書に筆者は租税抵触規則をめぐる合衆国での見事な恐らく最終
的な開花を看取するのである︵この版ではまたスコール教授がその業績を引継いでいることの意義も大きい︒︶︒この
連邦控訴院判事は︑課税管轄権を抵触法並びに憲法上の特殊問題としつつも︑次のように述懐し慨嘆する︒﹁課税管
関法
轄権に関する合衆国のおおかたの規則は専ら憲法の問題であるけれども︑ある憲法規定の権威に基づいて頻繁に解決
された別の問題は︑ある抵触法の原則が独特の憲法上の制限に具体化されていると見倣されるとの理由から憲法問題
とされたのである︒だが︑課税管轄権に対する憲法上の制限は最近の合衆国最高裁判所判決によって極端に大幅に狭
(5 )
められてきた﹂と︒しかし︑現代的価値よりもむしろ沿革的な意義しかもちえなくなったとは云え︑華者は故人の叡
智と努力を埋没させないためにもここで触れておきたい衝動に馳られるのである︒
課税管轄権
抵触法との関連で研究するのが適切であろうような︑租税に関する最重要問題は︑課税管轄権に関係する問題であ
る︒租税を徴収する州以外の州で告発される被課税者に対する訴訟という幾分異常な事態を簡潔に考察するとしよう︒
課税管轄権という主題には解説的な文言を付け加えなければならない︒本書では一般的に憲法または租税の理論と
考えられている学理を取扱うことはしない︒例えば︑ある税金が合衆国政府またはその諸機関の方策に対立するか︑
もしくは︑ある税金がガスの﹁生産﹂に課せられるのか︑あるいは州際商事における﹁商品の発送﹂に課せられるか
(7 )
否か等はわれわれ抵触法学者のあずかり知らぬところである︒
本章の目的は︑適正手続条項のもとで管轄権という観念によって課せられる州課税権に対するこれらの制限を論議
しようとするにある︒これらは州際活動の領域における他の州権限の行使に依拠または類似するがゆえに︑通常の法
律抵触との関連においてそれらを考察することが適切であると考えられる︒連邦憲法のもとでの通商条項と適正手続
1 (
)
公法抵触と国際租税法の端緒と進展︵その
2)
(6 )
Aグッドリッチの叙述︵抜粋︶
︵四 三三
︶
第五0
巻 第 三 号
︵四 三四
︶
条項上の制限との区別は明確であるとの主張は何らなされていない︒反対に諸事件における判決の基礎は屡々重複し
制限されると見倣されえない︒諸国はできる限り巨額の歳入を得ようとやっきとなり︑納税者との極めて些細な関連
を根拠として税金の厳しい取立てを続けるであろう︒︵州際的局面では︶他の考慮事項が関係してくるから︑そうし
(8 )
た些細な関連を根拠とする州課税が許容されることもあろうし︑また許容されないこともある︒
以下の議論は合衆国各州間で広く行われている事態に限定されるであろう︒但し︑種々の問題の国際的局面もそれ
らの考察が州際問題の討議に役立つと思われる場合︑その幾つかの事例について考察することにしよう︒
長年にわたって︑合衆国最高裁判所は課税管轄権の問題について各州間の競合する諸要因を調整し︑同一目的物へ
の二重課税を防止するため︑修正第十四条の適正手続条項を発動した︒租税の目的物は所在をもつと考えられ︑かつ
州内における所在は課税管轄権にとって最重要な基準とされる︒所在という観念は有体物と同様に無体物にも適用さ
れ︑相抵触する州の主張は適正手続条項の権威のもとに解決された︒これらの事実の根底にある前提は唯一の州のみ
が同一の目的物に課税しうるというものであった︒
(9 )
St at e T ax C om m' n o f U ta h v . Al dr ic
hによって頂点に達した一連の判決において︑無体財産への課税で︑重複課
税は遂に適正手続問題と見倣されなくなった︒複数の州と重要な関連が存在する場合には︑判決はもはや競合する諸
要因の調整を考慮しなくなり︑州の権限が認められた︒最高裁判所の判決文では︑﹁⁝⁝無体財産への課税権は一州 ている︒ーロ衆国最高裁判所の最近の判決ではより明確でなくなってきたが1課税管轄権問題の州際的局面と国︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑際的局面の間には相違がある︒例えば︑合衆国内にあっては︑管轄権という観念は時折り租税負担を公平に分配する︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑手段として用いられてきた︒しかし︑世界の諸国家の間では︑国際協定がなければ︑課税権は公正への配慮によって 関法
四
五
に制約されない︒﹃有体財産に対する乃至は無体財産の出所に関係を有する人に対する支配を通じてにせよ︑あるい
は課税する主権によって付与される利益および保護に基づくにせよ︑またはその双方によるにせよ︑当裁判所は州の
課税権を課税客体に対する権力に基礎づけられると見倣すものである﹄﹂︒課税州によって与えられる何らかの利益な
いし保護から当然の結果として生じる権限が現在では憲法上の課税管轄権の基礎である︒このことは実際の利益の抵
触を各州がそれらの各州間で解決するがままに委すのである︒無体財産への課税管轄権の制限が同様に縮小されるか
( 10 )
どうかは未だ不明確である︒
そこで︑われわれは︑合衆国で取扱われてきた態様に準じて︑課税管轄権の問題の考察に移る︒﹁課税権は︑その
性質がいかに広大であり︑その程度がいかに峻厳なものであろうとも︑必然的に州域内の対象に限定される﹂と
フィールド判事は言及した︒﹁これらの対象とは人︑財産および事業である︒然らば︑州の課税権に服するような州
これが同著で究明されているテーマであり︑第一級の著述にふさわしい精密かつ長大な検討が後続し︑我々を驚嘆
させるが︑本稿では所得税と相続税に限定して言及することにした︒ところで︑国際的局面で多発するのは︑圧倒的
に納税者の世界的規模の経済活動に基づく収益に対する課税問題であり︑相続税事件を取扱った州際判例の増大や︑
それに伴い彫琢を加えられた思索に比して︑国際間では相続税に関する租税条約の締結数は僅少に止まる︒しかし︑
同時に州際課税では相続税に興味をそそられる所も多い︒というのも州際面では移動が容易であり︑法律抵触事件に
おけるような連結素がそれらに関連し︑錯綜︑競合するからである︒従って︑国際面ではとも角︑抵触法との関連に
おいては州際相続税事件の検討は貴重である︒もちろん︑論述の順序の重要性に鑑みれば︑所得税を優先的に取扱う
公法
抵触
と国
際租
税法
の端
緒と
進展
︵そ
の 2)
内の人︑財産ないし事業とは何であるか︒﹂
︵四 三五
︶
一州は課税州内の源泉から引出される所得に対して所得税を賦課することができる︒
たとえその全所得が他州に所在する財産から引出されるとしても︑これに課税する管轄権を有する︒
所得税を課する管轄権には二つの主要な側面がある︒即ち︑①
一州はその州内に在る財産または州内で行われる事業から発生する以上︑州に住所をもたずまた州の市民でもない
人の所得にも課税しうることは︑明白に確定されている︒所得が州内で発生する時期の決定に当って︑厄介な事件が
出来する︒証券類が州内で保持され︑また基金がその州内で投資や再投資される場合には︑受益者が他州に住所をも
ちかつ信託から受取った所得がその他州で課税されるとしても︑州内で管理されている信託からの所得はその管理地
州で課税されるのが相当と考えられる︒ニューヨーク株式取引所の会員資格に付属する権利の売却によって非居住者
がもうけた利得への︑ニューヨーク州の所得税は支持された︒
( 12 )
この分野の興味深い事件は
Wi sc on si n v .
J .
C . P en ne y C o.
である︒当該事件では︑州外並びに州内会社によって支
払われる配当金に対する税金が﹁配当を宣言し︑また受取るという特権﹂を理由として徴収されたが︑それは有効で
あると判決された︒多数意見は︑州内源泉からの法人所得に対する課税は︑配当が支払われるまでは徴収が延期され
ると考えた︒ごく最近の諸判例は︑徴税が差別的でなく︑その徴税を支持するに足る十分な連結を形成している課税
州内での︑域内活動に適正に割当てられているのを条件として︑いかなる純所得税も有効であることを指示している︒ による非居住者の所得への課税である︒ のが当然の理であろう︒
( 11 )
所得税
( 2 )
関法第五0
巻 第 三 号
納税者の住所地州による課税︑②所得発生地州 一般に納税者の住所地州は︑ 六
︵四 三六
︶
財産の所有者が死亡し︑その者の財産が他の者に譲り渡されるときに生じる財産移転に対してある租税が賦課され る ︒
in
he
ri
ta
nc
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x ,
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a x,
su
cc
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si
on
tax
あるいは
tr
an
sf
er
ta
x等いろいろの呼び方はあるが︑そうした税金は
殆ど総ての州で見出させる︒これらの租税は財産それ自体に対してかかる税金と考えられる︒総ての相続税
de
at
h
公法
抵触
と国
際租
税法
の婚
緒と
進展
︵そ
の 2)
Jとのできるのはその州のみである︒
(イ)
を徴収することを容認するのである︒
( 13 )
相続税
3)
七
このことから︑裁判所は重複課税を回避するよう企図された種々の要素を反映する公式を基準として所得税を割当て
納税者の住所地州は彼が受取った所得をもとに課税しうることは明らかなように思われる︒法人の場合には︑設立
地は通常この権限をもつと考えられる︒但し︑商業住所という観念は州外法人にそうした実質的関連をもつ州に対す
る所得税義務を指示することもあろう︒その居住者の所得に課税する州の権限は所得の源泉によって制約されない︒
一州はその住民が州外役務からの報酬として︑州外不動産からの賃貸料収益として︑あるいは︑州外信託か
らの所得として受取った所得に課税しうる︒しかし︑幾つかの州は重複課税の苛酷さを認識し︑他州に所在する有体
財産からの所得を免税する︒生じうる経済的負担にも拘らず︑最高裁判所によって宣告された現時の適正手続理論は︑
住所地州を何らかの割当て理論に服させるという制限を課さず︑所得の地理的源泉を顧慮しないで住所地州が所得税
土地の相続税
所有者の死亡による土地の移転に対してかかる相続税は︑土地の所在地州がこれを課することができ︑また課する 例
えば
︑
る現時の州慣行を是認したように思われる︒
︵四
一二
七︶
第五0巻第一二号
︵四 三八
︶ d ut i
e s によって徴税される対象は死亡によって財産を移転する権利
po we
あるいは財産の伝承または受領である︒r
それでは死亡に基づく被相続人の財産の移転に対して相続税を課しうるのはいかなる州であろうか︒
土地の相続は土地の所在地州がこれを課しうる︒課税州の境界外の土地の相続に対して相続税は全くかけられない︒
これこそ人が法律であると期待する見解である︒けだし︑土地はその所在地州の専一的支配下にあり︑他州のいかな
る土地の諸権利の創設および移転に関わりないからである︒土地が譲渡抵当に服する場合を想定してみよう︒抵当債
( 14 )
務者︵譲渡抵当権設定者︶
mo rt ga to
の死亡に際して︑所在地州が相続税を課しうることに疑問の余地はありえないr
( 15 )
と思われる︒その者の衡平法上の受戻権
eq ui ty o f re de mp ti on
は土地についての権利であること明らかである︒抵当
債権者は︑抵当債務者の受戻権に服することを条件として︑土地に対する権原を所有すると見倣されるにせよ︑ある
いは自己の請求権の保証として︑不動産に対する物的権利
l i e n
を有するに過ぎないと考えられるにせよ︑いずれに
しても抵当債権者は土地についての権利を有している︒この権利の相続は課税されるであろう︒これに反対する判例
の幾つかは︑負債は債務者の住所地において課税されるべきでないという古い見解を根拠として判決している︒その
( 16 )
ことはここで問題とはなっていない︒課税されているものは負債ではなく︑土地についての権利の相続なのである︒
( 17 )
﹁衡平法上の形態変換﹂
e qu i t ab l c e on ve rs io
n原則のもとで︑土地はある目的上動産に変換されたとして取扱われ
る︒典型的な事例は土地を差押えて死亡した遺言人が遺言執行人にその土地を売却し遺産を金銭化して支払うよう指
示する事例である︒遺言執行人は土地を売却する義務を負っているから︑ある目的上は土地は動産として取扱われる
であろう︒しかし︑遺言人が一州に住所をもって死亡し︑他州で土地を残したと仮定せよ︑遺言人の住所地州は衡平
法上の財産の形態変換原則のもとで土地は動産として取扱われるべきであるとの理論に依拠してその土地の相続に課 関法
八
所が宣告しているように︑この衡平法上の擬制は課税する過程では介入の余地はない︒
( 18 )
被相続人の住所地州による動産への課税
もつ有体動産の
九
税できるであろうか︒その答えは明らかに否定的でなければならず︑大多数の判例はそう判決している︒擬制は土地
の所在を変更することはできない︒その土地は依然として所在地州の支配するところである︒さらに︑幾つもの裁判
動産所有者の死亡当時の住所地州は概して所在場所のいかんに拘わりなく︑その者の動産に課税できる︒しかし︑
住所地州外に永続的に所在している有体動産は住所地における税金の算定に際し︑これを含めることはできない︒
財産所有者の全動産の相続は最近までその者の死亡当時の住所のある法域がこれに課税できるとされていた︒その
ような課税が合衆国における一般の慣行であり︑その適法性は多くの諸判決によって確定されてきた︒
( 19 )
重要判例である
F r i c k v . Co mm on we al th of Pennsylvania
において︑被相続人の住所地州が他州内に現実の所在を
︵権利︶移転に課税するのは修正第十四条の適正手続条項違反であると判決された︒この判決は無体
動産には適用されない︒だが有体動産に適用されるから二重課税を回避するのに非常に重要である︒
被相続人の住所地州が被相続人の無体財産の全部から相続税を徴収する管轄権をもっと考えられている事実は厄介
な重複課税問題を生じる︒以下の条項で指摘するように︑最近の判例では住所地に加えて多くの法域が自己の法域と
関連を有する被相続人の無体財産に課税することがあるために︑この問題は今日ますます尖鋭さを増している︒その
上︑二重住所の問題まである︒複数の州の裁判所が別々に被相続人はそれぞれの法域内に住所を有していたと認定す
ると仮定しよう︒住所は一っしか存在しえないけれども︑同一の諸事実に基づいて裁判所が相矛盾する結論に到達す
( 20 )
ることのあるのも事実である︒実際に︑まさしくこれがかの有名な
Do rr an ce
訴訟で起ったことである︒当該事件で
(口)
公法
抵触
と国
際租
税法
の端
緒と
進展
︵そ
の 2)
︵四 三九
︶
第五 0巻 第 三 号
︵課税︶請求が遺産の価格を超過する事態につ
︵四
四
0)
被相続人はペンシルヴェニア州とニュージャージィ州の双方に本居を保持していた︒彼の死亡に際して︑ペンシル
ヴェニア州は同州が住所地州であるとの論理に依拠して無体財産権に対して相続税の徴収に着手した︒この税金は州
裁判所で支持され︑また︑この訴訟手続きでは何らの連邦問題も適切に提起されて来なかったので︑連邦最高裁判所
は州裁判所判決の再審を拒否した︒その後ニュージャージー州が同様の租税の徴収を開始し︑同州裁判所は被相続人
はニュージャージー州に住所を有すると認定した︒連邦最高裁判所はこの判決の再審も拒否した︒
長期にわたった
Do
rr
an
ce
訴訟の最終結果は一︱つの過大な課税請求権に応じた支払いであり︑将来における類似の
性質をもつ事態の再発に対する確実な保護手段は存在しないように思われる︒マサチューセッツ州およびカリフォル
ニア州の税務署員を告発した莫大な遺産の遺言執行人は連邦競合権利者確定手続法に依拠したが︑連邦最高裁判所は
当該訴訟は二つの州自体に対する訴訟に相当し︑従って修正第十一条によって棄却されると判決した︒この結論に到
達するに際して︑連邦最高裁判所は必然的に︑修正第十四条は︑特定の被相続人の住所に関して複数の州裁判所が矛
盾する認定をなすことを妨げないと判決したことになる︒
Te
xa
sv .
Flori~~
ごにおいて︑競合権利者確走
b i l l
of
in t
e r ,
pl
ea
de
rの申立というべき性質を帯びた本来の訴訟において裁判所は被相続人は他の関係諸州のいずれでもなくむし
ろマサチューセッツ州に住所を有していたとの補助裁判官の認定を支持した︒だが連邦最高裁判所は︑そのような事
件で管轄権が制限されるのは︑被相続人の住所を主張している諸州の
いてだけであると特に言及している︒この限定された例外があるだけだから︑住所について相抵触する認定が起る場
合に︑いろいろの州の税務署員が諸州のうち一州の裁判所に赴いて︑其処で基礎事実を最終的に解決してもらうよう
促して納得させることが出来ない以上︑相続税の重複課税の可能性を防ぐ憲法上の保護は殆ど存在しないように思わ 関法
10
(ホ)
会社株式への相続税
(二)
でき
る︒
れる︒このことが行われてきたのは僅かな事例においてだけである︒
所有者の死亡に際しての有体動産の移転は︑動産がその者の死亡当時恒常的に所在する州がこれに課税することが
人が一州に住所を有し︑他州に所在する有体動産を残して死亡したとき︑財産所在地州は所有者の死亡に基づいて
生じる財産移転に課税しうる︒これは相続税における普通の慣行である︒そうした財産は課税州に物理的に所在し︑
その州の支配に服する︒その相続に対する課税管轄権を承認するのに何の不都合もない︒しかし︑所有者の死後に州
内に持込まれた財産の相続はその州の相続税には服さない︒所有者の死亡時に移転が行われるのであり︑前提事実と
なる死亡は州内での財産所在に先立ってが発生したのである︒
所有者の死亡時に単に一時的に州内にあった財産の相続は︑その州の相続税には服さないと判決されてきた︒他方︑
財産が一時的に州内に存在してなくても︑そのことは財産が恒久的に所在する州が相続課税を行うことを妨げない︒
( 23 )
債権的財産
ch os ei n ac t i on
にかかる相続税
債権的財産について利害関係をもつ人に与える潜在的保護と利益という観点から︑債権的財産は︑そうした人的財
( 24 )
産に相当の関係をもついかなる州による相続税にも服する︒
所有者の死亡に基づく会社の株式の移転は︑死亡した所有者の住所地州により︑また設立地州により︑さらに恐ら
く株式に利害関係をもつ人に与えられる潜在的な保護と利益という観点から︑株式に相当の関係を有するその他の州
公法
抵触
と国
際租
税法
の端
緒と
進展
︵そ
の 2)
い 動 産 に 対 す る 所 在 地 課 税
︵四
四一
︶
場合
に︑
券に対し︑ 第五0
巻 第 三 号
︵四 四二
︶
重要な発展が行われてきたのは︑無体動産への相続税の領域においてである︒連邦最高裁判所は︑被相続人の住所
地州が一切の被相続人の無体動産につき相続税を徴収する専属管轄権をもっと考えられるとの長らく確定してきた命
( 2 5 )
題を否認した︒
Cu rr yv . Mc Ca nl es
s でテネシー住民が信託財産に対し留保していた指名権を遺言によって行使した
テネシー州の住民によって設定された生存者間信託に基づいてアラバマ受託者が保持していた株式および債
アラバマ州とテネシー州の双方が課税することを認容された︒C日
ry v . Mc Ca nl es
s と同じ日に判決され
( 26 )
た
Gr av es v . E l l i o t t
ではニューヨークの被相続人がコロラド州に住所を有していた間に設定したコロラド債権信託に
つき︑それに対する撤回権が当該被相続人死亡に際し放棄されたので︑ニューヨーク州はこれに課税するのを認容さ
( 27 )
れた︒次いで
Gr av es v . Sc hm id la pp
にお
いて
︑
ニューヨーク州はニューヨーク住民の一人がマサチューセッツ居住
者の遺言のもとで彼に与えられた一般の遺言による指名権を行使したので︑受取勘定︵債権︶︑株式および証券より
なる信託財産への課税を認容した︒最後の二つの事件では問題は住所地州の課税権に関係するけれども︑交錯する他
の諸州もまた複雑にからむ利害とのそれらの州の関係のゆえに︑税金を課すことができるように思われる︒いずれに
しても︑これらの事件は主として州と課税に服する者との間に見出される﹁利益保護﹂関係に由来するから︑ここで
は重要である︒現下の目的よりしてこの線上にある一連の判例の頂点とも云うべき判例は
S ta t eT ax Co mm is si on of
( 28 )
Ut ah v . Al dr ic h で
ある
︒
死亡時に︑被相続人はユタ会社の株式を所有していたが︑株券はニューヨークの彼の住所において保持されていた︒
( 29 )
︵3 0
)
会社は株式原簿
st oc kb oo ks
︑会議の議事録および名義書換代理人日
a ns f e r ag en ts
をニューヨークで保持しており︑ によっても課税されえよう︒ 関法
され
うる
か︒
ュタではこれらのいずれをも備えていなかった︒株式に対するユタのある種の相続税は反対をうけ諸判決ことに
( 31 )
F i r s t N at io na l B an k o f B os to n v .
Ma in
eにおいて適用されたような修正第十四条が依拠された︒
S ta t eT ax o C nn is
,
s io n of Ut a v . Al dr ic
h 判決で︑最高裁判所は当該裁判︑即ち
F r i s t N at io na l B an k o f B os to n v . Ma in eを
破棄
した
︒ Cu rr y v . Mc Ca nl es
s および上記で引用した他の諸判決に依拠して﹁複数の州による無体財産への課税から免除する
憲法上の規則は何ら存在しない﹂と繰返した︒会社はその存在をユタ州に負っており︑同州は会社の株主たちの利益
を明確に示していると最高裁は特に言及した︒最高裁はユタ州による課税を正当化するに足るだけのユタ州側の保護︑
利益および権限を認定した︒
Cu rr yv . Mc Ca nl es s
の文言およびそれから引用して︑最高裁は﹁⁝⁝州の課税権は
⁝⁝有体財産に対する支配または無体財産権の源泉に関係を有する人に対する支配を通じて課税客体に及ぼす権力に︑
あるいは課税する主権者によって付与される利益および保護ないしはその双方に基礎づけられると見倣される︒﹂
( 32 )
従って︑これが死亡に基づく無体財産への課税管轄権の基準とされる︒
債権的財産
ch os es i n a c t i o
n に対する相続税の説明
債権者が一州に住所をもち︑他州に住所をもつ債務者に対する請求権を残して死亡したとすれば︑その債務は被相
続人の住所地における相続税の査定に含めうるのはもちろんである︒その相続はまた債務者の住所地においても課税
大多数の初期の判例はこれに否定的な解答をした︒それでも︑幾つかの州では︑債務者の住所地法は支払いを強制
する州であり︑従って課税するための根拠を与えるとの理論に基づいて課税が認められた︒
Fa rm er s' Lo an
&
Tr us t
( 33 )
Co
. v
S ta t e o f M in ne so ta
の最高裁判所は債権者の住所地法のみが課税できると判示した︒しかし︑
S ta t eT ax Co
m ,
公法
抵触
と国
際租
税法
の端
緒と
進展
︵そ
の 2)
(
へ)
︵四 四三
︶
の解答は不明確であった︒しかし︑ 第五0
巻 第 三 号
︵四 四四
︶ mi ss io n o f U ta h v .
Al dr ic
hで
Fo rm er s' Lo an
判決は事実上破棄された︒もっとも前者は会社株式を取扱ったもので
ある︒こうして︑現今では課税管轄権は課税当局による保護︑利益および権力を通じての︑租税客体との相当の関連
という基準に依拠している︒従って︑債務者の住所地州は人的財産
ch os
e と十分な関係を有し︑それは自州が徴収
被相続人の住所地州は彼が所持している他州法に基づいて設立された会社株式の移転に際して︑相続税を課しうる
ことは初期に意見の一致を見ていた︒そして︑株主の権益に対する相続について会社が設立された州が課税できるこ
ともまた極めて明らかとされていた︒設立州は会社の存立について責任があり︑同州の法律が株式の発行および移転
を規律するからである︒然るに後の命題は専ら被相続人の住所地の課税を認容した
F i r s t N at io na l B an k v .
Ma in e
に
よって否認された︑
S ta t eT ax Co mm is si on f o Ut ah
v .
Al dr ic
hが
F i r s t N at io na l B an
k判決を覆したので︑現今では
( 3 4 )
再び設立州が死亡による財産移転に対する税金を課しうるようになり循環が実現した︒
会社株式の所有権への相続税の別に考えられる根拠は︑州内での株券の所在である︒けだし︑この課税の根拠は今
株主の所有権への相続税に関するもう︱つの問題が提起されてきた︒州外会社が州内で財産を所有し事業を営んで
いて︑非居住者である会社株主が死亡したとせよ︒この会社が財産を保有している州は会社の域内財産に比例配分し
た相続税を課しえようか︒かつて︑この種の租税を支持する判決と無効とする判決の双方が拮抗していてこの問題へ
一九
二
0年代にこの問題が最高裁判所に提起されたとき︑最高裁が︑問題の財産 では利益保護基準の範囲内に入るようである︒
旧会社株式に対する相続税の展開と追完
する相続税の合憲性を支持するに足るものであろう︒
関法
一四
一五
かつこの判決を州と納税者間の利益保護関係説の頂点に立つ
︑︑
︑︑
︑
グッドリッチの所説のうちで最も注目すべきは
S t a t e T ax Co mm is si on of Ut ah v . Al dr ic
衆国最高裁がもはや調整を考慮しなくなったと言及し︑ ︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑ の課税で重複課税がなされても︑適正手続条項違反とは見倣されず︑複数の州と重要な関連が存在する場合には︑合 ︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑ h を重視し︑無体財産へ 困難はなかった︒この判示事項の拘束力は は別個の法律主体である会社に属しているから︑そのような基準に立脚する税金は不適切であると判決するのに殆ど
Al dr ic
h 判決以来幾分不確かであるけれども︑課税州が少くとも﹁商業
住所地﹂でない限り裁判所は州外会社の株主に課税するのを州に許容しそうにないとも思われる︒
これらの諸判例はその場限りの司法判決という方法によって解決するのが困難な多くの政策上の課題を残している︒
この領域に必要とされる予見可能性を与え︑生じうる重複課税を回避するために連邦制定法の指針が求められるのは
明らかである︒国会の行動がなければ︑最高裁判所は︑課税州がその租税の目的物に供与した保護および利益に相応
じて︑各州間で課税権を比例配分するという︑他の領域における重複課税について使用してきた割当理論に頼るであ
ろうと思われる︒
判例として把握している点である︒さらに
Wi sc on si n v .
J . P . Pe nn y C o.
でも州内外からの配当金に対して各州が
﹁配当を宣言し︑また受取る特権﹂を理由として課税することを容認された事実を客観的に捕捉しつつ︑各州が納税
者に与える保護の割合いに応じて税金を割当てるという割当て方式に賛意を示し︑これに望みを託す論調の意見を提
示しているのも見逃せない︒しかし︑グッドリッチを継承したスコールスの著書からは租税の項目は削除された︒そ
れにも拘わらず筆者が﹃国際租税法序論﹄中で紹介し論評した第三の主要判例こそ忘脚されてはならないものである︒
( 35 )
︵3 6
)
レフラーがその大著の中で他書の追随を許さぬ守備範囲の広さを示す力量とオ知をかいまみさせた
No rt hw es te rn
公法
抵触
と国
際租
税法
の端
緒と
進展
︵そ
の 2)
︵四 四五
︶
な根拠に基づいて︑
( 39 )
Bグレーヴソンの解説1課税立法管轄権 第五0巻第一二号
︵課
税︶
主張
が相
( 37 )
S t a t e s P or tl an d C em en t C o. v・ Mi ne so ta
の解
5記tは
抵紬
g辻泣子芸Fとして誇るべく記憶に止めるべきページであったが︑
連邦議会はじめ関係諸機関の解決の模索にも拘らず︑連邦および諸州の間に多岐にわたる徴税制度の相違が介在し︑
また課税当局と私企業との利害が複雑に絡み合う領域でのその後の展開は︑州際課税の混迷の深さと調整の困難さを
例証するものでしかなかった︒そして事態収拾の努力が実らぬままに州際商事への州課税それ自体は一九七七年の
( 3 8 )
︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑
Co mp le te u A to Tr a n s i t I n c . v . Br ag y, r J
によって確定的に容認された︒合衆国最高裁判所は各州課税権に対し一様︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑の制約的規則を設定し︑もしくは法律抵触解決的規則を定立する企図を放棄したようにも思われる︒レフラーの著書
からも租税の項目は殆ど影をひそめ︑割当て方式が各州間で成功すれば︑待望の星となったかも知れない
P or t l an d Ce me nt Co
. 判決は一閃の光茫を放ちつつ消え去った︒これに対し国際事件が中心となっており︑かつ国内租税法が
先行的に整備されてきた英国では︑逆に国際税法抵触の調整について考察する余地が残されている︒ただ︑序文で筆
者が指摘したように︑国際租税法本来の急速な発達によって︑抵触法的考慮が介入する範囲は極限されている情況は
否定できない︒合衆国の関連判例は本文中でかなり詳細に解説されているので本稿では特に取扱わない︒
現代にあっては︑生存中も死亡時も人生のあらゆる段階で︑租税はますますその重要性を増しつつある︒どのよう
一国はこの機能の行使を要求すべきか︒人またはその財産に租税を賦課する管轄権の原則には二
つのアプローチがあると考えられる︒第一の合理的アプローチは︑納税者が関連を有する国家間の
抵触する場合に作動する法律選択規則を発見しまたは案出しようと努めることである︒第二の概括的アプローチは国
関法
一六 四四 六︶
一七
家にそれが捕捉しうるものは何であれ総て捕捉することを許容する︑換言すれば︑国庫の要求を強制する権力に課税
管轄権を基礎づけることである︒合衆国の各州間では管轄権の基準としての権力説が今や明らかに支配的であり︑
従って︑法律抵触規則が急速に発達する余地は殆ど残されていない︒連合王国に関する限り︑我々の課題は︑租税を
賦課するための国際的な法律抵触規則を確定する問題であり︑ここでは二つの主要項目の租税ー所得税と相続税を区
所得税に関する法律は連合王国の大部分︑即ち︑イングランドおよびスコットランド︑並びに北アイルランドにお
いて均一であって︑もろもろの所得税法は明示的に制限されると記述していない限り︑画一的に適用される︒連合王
国法の目的上︑所得とは金銭ないし金銭的価値であって︑外国会社の清算に当っての株式の価格のような資本ではな
い︒会社への投資からの所得は︑通常︑年間配当金の形をとる︒しかし︑時折り会社はそうした配当金に加えてまた
はそれに代えて︑無償株を発行する︒会社の資本の一部を形成するそのような株式は株主に帰属する所得と見倣され
るべきか︒こうして︑外国会社が連合王国に租税義務を負う株主の一人に無償株の発行をなす場合︑通例の性質決定
問題が出現する︒カリフォルニア会社による︵無償株の発行という形での︶株式配当の支払を取扱うに当って
La
w ,
( 4 0 )
s o n
v .
R o l f
のフォスター判事は先ず外国財産処分に基づく納税者の利益の性質を資本であるかあるいは所得である
かを考察し︑次いで英法における当該利益の性質を考察するという原則を受入れた︒決定的なのは後者の性質決定で
ある︒連合王国で所得税義務を賦課する際に従われる一般原則は二つある︒それらは言うに易く往々適用するに難い
原則である︒納税義務は国連合王国内における居所︑または事業の遂行︑乃至は閲連合王国内の源泉からの所得の受
(1
)
公法
抵触
と国
際租
税法
の端
緒と
進展
︵そ
の 2)
所得税 別しなければならない︒
︵四 四七
︶