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国 籍 の 剥 奪 と 国 際 法

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(1)国籍の剥奪と国際法. 一︑序 論. 一︑ソピエト国籍剥奪命令の内容. 二︑ソピエト国籍剥奪命令と各国の判例 二︑各国の判例. 三︑ナチス国籍剥奪命令と各国の判例. 一︑ナチス国籍剥奪命令の内容. 論. 二︑各国の判例 四︑結論. 一︑序. 長. 谷. 川. 正. 国. 何人がいかなる条件に基づいてその国の国籍を取得し︑いかなる条件に基づいてその国の国籍を喪失するかは︑各. 国の裁量により決定されるというのが︑確立された国際法の原則である︒この原則は︑常設国際司法裁判所の﹁チュ. 一二七. ニス及びモ・ッコ国籍法事件に関する勧告的意見﹂の附随的意見で次のように述べられている︒﹁ある事項がもっぽ 国籍の剥奪と国際法.

(2) 国籍の剥奪と国際法. 二一八. ら国内管轄事項か又はそうでないかの問題は︑本質的に相対的なものであり︑それは国際関係の発達にかかっている︒. そこで︑本裁判所の意見によれば︑国際法の現状において︑国籍問題は原則としてこの︵国内管轄に︶留保された領. 一九三七・七・一・発効︶は︑この原則を第. 域に属する﹂︒﹁国籍法の抵触についてのある種の間題に関する条約﹂︵9昌<o耳δβ9Ω肖貫ぎO琶鋒o参寄巨冒磯. 8些OO9律9亀2妥9巴一ない 譲の︵一九三〇・四・一二・署名︑. 一条前段で︑﹁何人が自国民であるかを自国の法令によって決定することは︑各国の権限に属する﹂と規定し︑第二. 条で︑﹁個人がある国の国籍を有するかどうかに関するすべての問題は︑その国の法令に従って決定する﹂と規定す. る︒しかし︑この原則には︑第一条の後段で﹁右の法令は︑国際条約︑国際慣習及び一般的に認められた法の原則と. 一致する限り︑他の国家により承認されねばならない﹂として︑制限が付されている︒この規定は︑国際法が国籍の. 取得及び喪失を定める国家の権限に制限を加えているとの主張に︑有力な根拠を与える︒しかし︑そうした制限が存. 在するとすれば︑その存在は国際条約又は国際慣習により証明されねばならない︒これは国籍の得喪に関するすべて の問題についていえるのであるが︑ここでは︑国籍の剥奪の問題をとりあげる︒. 国籍の剥奪︵U窪銭9巴冒毘oPU似昌畳o壁冒蝕9︶とは︑国家が一定の理由に基づいてその国民から一方的命令 か により国籍を奪うことを意味する︒国籍剥奪の理由は様々であり︑各国の法律に統一性があるわけでないが︑概括的. な分類は可能である︒たとえばミo一ωは次のような五つの分類を行う︒e外国の文官若しくは武官の地位についた. り︑又は外国の栄誉をうけた場合︑⇔外国に出国したり︑滞在した場合︑㊧特定の犯罪をおかした場合︑㊨ある政治. か 的立場又は行動をとった場合︑㊨人種的及び民族的理由に該当する場合︒また︑冨鼠o頗鼻い器の≦oFピ自昌αq−9屋.

(3) Oぎ昌は︑共同論文で次のような三つの分類を行う︒e戦時における兵役忌避又は軍隊からの脱走を含む︑国家に対. む. する犯罪をおかした場合︑⇔︵国家に対して︶敵対的な政治的結合を行ったり︑活動をした場合︑㊧特定の人種的︑ 種族的又は宗教的特質を有する場合︒. 国際法は国家のかかる国籍剥奪を行う権能を制限していないとの原則が︑従来一般的とされている︒しかし︑この. 原則に対しては︑・シア革命直後ソビエト・・シアによる国籍剥奪処置によって︑大量の無国籍者がでて以来︑様々. な批判がなされている︒こうした批判は︑大体二つの考え方に分けられる︒第一の考え方は︑ある国家によりなされた. 国籍剥奪の効果を︑主権国家相互の間にひきおこす不利益の問題としてとらえる︒つまり︑国際法は︑一国が国籍剥奪. を行い︑そのことが国籍を剥奪された者を受け入れる他の国家に過度の責任を負わせる場合には︑そうした国籍の剥 ぶ 奪を禁ずるとする︒こうした考え方を︑巧崔冨旨ωは︑国籍を剥奪した国家は︑国籍剥奪の結果として無国籍となった の 者で︑国外に所在する者を︑自国に受入れる義務を負うという形で主張する︒冨葺①∈8算は︑かかる国籍の剥奪を む 一国の他国に対する権利の濫用であるとする︒第二の考え方は︑国籍剥奪を個人の側面から批判する︒これにはω8一一〇 の のように︑個人の国際法主体性の概念から国籍剥奪を禁ずる原則が導びきだされると主張する者もいるが︑=亀置躍 ω のように︑個人は国際法主体でないからこそ︑国家に対し国籍を剥奪されない権利を主張しうるとする者もいる︒. こうした批判は︑第二次世界戦争以後︑宣言又は条約の規定の中に反映されている︒﹁世界人権宣言﹂〇三くRω巴. ∪①o一醇畳99国q日き園蒔拝ω︵一九四八・=・︸○・第三回総会採択︶の第一五条第二項は﹁何人もほしいま. 一二九. まにその国籍を奪われ︑又はその国籍を変更する権利を否認されることはない﹂と規定する︒﹁無国籍の減少に関す 国籍の剥奪と国際法.

(4) 国籍の剥奪と国際法. 二二〇. る条約﹂Oo昌く①算一〇ロ§些o勾①含呂2亀ω梓暮巴o霧器紹︵一九六一・八・二六・将来の無国籍の除去及び減少に関. する国連会議採択︑未発効︶は︑第八条第三項及び第四項︑並びに第九条で詳細に条文化する︒第八条第三項は︑締. 約国は国籍の剥奪がその者を無国籍とする場合には︑国籍の剥奪を行ってはならないとしながら︑他国に奉仕した. り︑自国の重大な利益をおかしたり︑明白に他国に忠誠を誓ったり又は自国への忠誠を拒否したときには︑国籍の剥. 奪を行うことができるとする︒第四項は︑そうした国籍の剥奪は法律に従い︑かつその法律がその者に対し裁判所叉. は独立の機関による十分な審間の権利を与える場合にのみ許されるとする︒第九条は﹁締約国は︑いかなる個人又は. 個人のグループからも︑人種的︑種族的又は政治的理由に基づいて︑その国籍を剥奪することができない﹂と規定す. る叫︒この背景には︑人権の国際的保障の発展があり︑直接に国籍剥奪の禁止に関する規定を持たないとはいえ︑﹁国. 連憲章﹂の人権規定︑﹁ヨー・ツパ人権条約﹂↓訂国畦O需き09︿窪島90昌国ロヨき幻貫算ω︵一九五〇・二・四署. 名︑一九五三・九・三・発効︶︑﹁国際人権規約﹂ぎ富彗妥自巴9髪窪菖8自国仁B碧困讐富︵一九六六・二τ. 一六・第一二回総会採択︑未発効︶︑及び﹁あらゆる種類の人種差別の禁止に関する国際条約﹂冒盆導暮一自巴Oo亭. く窪ユgg些①固一B﹃暮一89≧一男畦目ω9勾8一巴望零ニヨぎ讐凶8︵一九六五・二丁二一・第二〇回総会採. 択︑未発効︶が︑その根拠を与えている︒しかし︑実際に︑国籍剥奪を規定する国際文書の効力に問題がある以上︑. いずれにしても従来の無制限的な国家国籍剥奪権が一般国際法上制限されているかどうかは︑実行を検討することに より明らかにされ ね ば な ら な い ︒. この論文では︑国家による国籍剥奪のうち︑特に政治的︑又は人種的理由に基づいてなされる場合を検討する︒政.

(5) 治的又は人種的理由に基づく国籍剥奪の例は︑極めて多い︒最近のものとしては︑政治的理由によるものであるが︑. 一九七三年九月一一日のチリ軍事クーデタ以後の︑チリ軍事政府による旧≧一窪8政府要人の国籍剥奪︑及び一九 圃 七四年二月一三日のソビエト連邦によるωo一旨窪富旨の国籍剥奪の例がある︒しかし︑国籍剥奪の集団性とそれ ⑬ が与えた法的効果からして︑・シア革命直後の・シア社会主義ソビエト共和国及び他のソビエト共和国︑並びにそれ. らの発展たるソビエト連邦によりなされた国籍剥奪と︑ナチス・ドイツ︑イタリア及びその衛星国家ハンガリー︑ル. ーマニア等の諸国によりなされた国籍剥奪に及ぶものはない︒前者は主として政治的な理由に基づくものであり︑後. 者は人種的な理由に基づくものである︒これらの場合︑国籍を剥奪された者は︑自国又は他国で様々な理由に基づい. て訴訟を提起しており︑それらには国籍剥奪の効力を争ったものがある︒そこで︑この論文ではとりわけ︑ロシア社. 会主義ソビエト共和国の国籍剥奪命令︵一九二一・一〇・二八及び一九一二・一二・一五︶とその発展たるソビエト. 連邦の国籍剥奪規定︵一九二四・一〇・二九及び一九二五・一一・一三︶︑及びナチス・ドイッの国籍剥奪命令︵一. 九四一・一一・二五︶が︑各国の裁判所によって︑どのように判断されたかを検討する︒そうしたものには︑政治的. 又は人種的理由に基づく国籍剥奪が国際法上許されるかどうかについて︑貴重な示唆を含むものがある︒こうした材 料を基礎として問題点を整理し︑一応の結論を述べたい︒. 二二一. ︐ρ一.y>量ω︒蔓O℃ぎ凶8zρ倉ω&︒の切為男︒ぼ轟量. なお︑この論文では︑市民権︵Ω欝窪昌眞Ω8器暮o叡︶との用語が国籍を意味する場合には︑便宜的に﹁国籍﹂ の訳語を用いることにする︒ ωz注8巴一蔓∪Φ§︒巴ω弩aぎ2昌 且冨︒8︒8. 国籍の剥奪と国際法.

(6) 国籍の剥奪と国際法 ︵一旨ωy℃●漣9. 一H曽ヨN口匹a4︵一〇お︶︸℃︒ωO一︒. 二二二. ↓訂零oけo&80略些o冒自三−. <o一・<堕︵一〇謡y宰障⁝ーコO.Oo目oF一90旨暮一〇轟一ピ帥ヨ<oド戸N且o負︵一SO︶℃す①ooω嚇一︒騨o妻ロ一凶ρギ凶暑旦8. o ℃<o﹃国葺一暮o旨蝕8巴鼠毛凶昌聾曾o旨巴勺Rω需鼠くo・ ②≦耳o目彗℃U凶oq8けo︷一暮oヨ豊8巴ζヨ<〇一︒oo℃︵一〇需︶矯すOo. 0騰勺βび一凶o一暮oB暮凶o口. ユ8巴幽蔓目自ω冨匡o詔8のの冒冒器ヨ&o冨一ピ帥ヨ︵一〇㎝①y箸﹂拐−穽. ω言ψ竃鼠8鴇一︸畢∪●ピm器ミoFピ琶隣・090冨92暮凶o旨一一蔓暫且出9目目履讐諺. ③即≦9ω︾Z. αロ巴日国蓉03巴︾﹃oロ器い↓げo喫巴oピm箋一〇仁旨箪<o一●ooω︸︵一〇謹y℃●逡一■. ミ05は次のように主張する︒﹁国籍の剥奪を行うことは︑すべての国家に認められているが︑たとえばそれが単に人種的理. ⑤型零o凶9ω后3pgoω︸マ一Noo嚇竃.O︒国且の09属o貰げ8犀oh一旨oヨ曽ユ8巴富毒OoB且邑op<o一.戸︵一〇認︶二y一〇・. ⑥. 霞●≦〇一錘ギぞ讐oご密ヨ讐δ口巴. 由からなされるならば︑国際法違反となるかもしれない︒というのは︑このことは人道的及び道徳的信条との不一致は別とし ても︑大量の移民をもたらし︑他の国家を外国人で充満させることになるからである﹂︒ ■帥ぎN口山09︵一〇㎝Oy℃マ一N宇ーωO・. 国家の国籍剥奪権そのものが制限されるとは考えない︒. ①一男≦旨貯ヨρOo口緯δロ巴冒暮δP切ユ件凶ωげ属o胃びoo犀9冒梓R昌暮凶o口巴ピ勢ヨ︵一旨刈y℃サ麻甲ーOドただし︑ミ臣置Bωは. ⑧国●富耳R冨o冥℃↓ゴo問巨oけ一80胤富零冒些Φ一艮o旨畳o塁一〇〇ヨヨ巨凶§︵一〇ωoo︶噂箸.ω8−o︒O一●. 毛>器8冨ユo口閑80昌<9器・︵一〇障yや刈ド. ⑨O●ω8一一︒℃寄毒09一且5α︒穿o凶二暮︒旨蝕8巴℃ユ奉︵一︒謹︶署︒O㌣為9り●薯︒凶ω℃旨質帥8霊ωも・旨S. ︵一8qy℃マ一謹i胡・. 一九三八年八月一九日のソビエト国籍法は︑第七条において︑﹁個々の場合に︑ソビエト連邦最高幹部会の特別命令により︑. 切8毛巳一ρ閃器凶oUo窪B8房oロ=仁ヨき匹碗年ω. ⑩ 国亀窪口αqは︑英米法系でかちとられた自由権を評価する︒冒8旨讐δ昌筥ピ ⑪一. ⑫. 〜. 一九三八年. 口αω冨鼠一8弩O器器勢08ω8q88900口塗992暮凶8巴一貯矯■. ソビェト国籍を剥奪することができる﹂と規定する︒ωo一号窪律望昌の場合には︑反国家的行動が理由とされた︒ 国籍法については︑ωO︿一9Ω焦器拐匡唱卜o笹巴讐δロ.

(7) 一●ρピ●ρ℃︵一〇〇〇yり一●. ↓量oQ目一〇℃↓冨ωo︿一9d. 凶o昌帥口山一暮oヨ. 誠o口巴■餌ヨ︵一〇翫y℃●旨O︒. ⑫ ウクライナ社会主義ソビェト共和国︑白ロシア社会主義ソビエト共和国︑トランス・ コーカサシヤ社会主義ソビェト共和国︒. 二︑ソビエト国籍剥奪命令と各国の判例 一︑ソビエト国籍剥奪命令の内容. 一九二一年一〇月二八日︑・シア社会主義ソビエト共和国人民委員会議は︑﹁ある種の在外・シア人から国籍を剥. 奪する命令﹂を発した︒ついで︑同年一二月一五日︑全・シア中央執行委員会及び人民委員会議は︑同名の命令を発. した︒二つの命令の相違は︑パスポートの有効期間に関してのみである︒一九二一年一二月一五日の命令は︑第一条. 第一項で国籍剥奪に該当するものとして︑次の五つの分類をあげている︒ω継続して五年以上外国に居住し︑一九二. 二年七月一日以前に︑ソビエト代表部からパスポート叉はそれに相応する証明書を受けとっていない者︒ただし︑こ. の規定はソビエト代表の所在しない国には適用されない︒@ソビエト当局の許可なくして︑一九一七年一一月七日以. 後︑・シァを去った者︒のソビエト体制に敵対する軍隊に自発的に応じたり︑又は反革命組織に参加した者︒◎ソビ. エト国籍を選択する権利を有するが︑所定の期間内にその権利を行使しなかった者︒㈲外国に所在し︑所定期間内に. 登録を行なわなかった︑ωの分類に入らない者︒また︑一九二四年一二月二四日の﹁ソビエト連邦国籍法﹂の国籍剥. 二二三. 奪規定は︑同年一〇旦三日の連邦刑法第一三条の社会防衛としての国籍剥奪規定を反映し︑法律又は裁判所の決定 国籍の剥奪と国際法.

(8) 国籍の剥奪と国際法. 二二四. による国籍の剥奪を規定する︒一九二五年一二月一三日の命令は︑在外捕虜及び抑留者︵赤軍・白軍を問わない︶か め らの国籍の剥奪を規定する︒一方︑一九三一年四月二二日の命令は︑国籍を剥奪された者がソビエト連邦中央執行委 の 員会又は連邦構成国中央執行委員会によってソビエト国籍を回復する旨を規定している︒. 一九三四年九月一九日ソビエト連邦最高裁判所は︑既にのべた一九二一年一二月一五日の命令の解釈に関して助言 的意見を与えたが︑それは次のようなものであった︒. ﹁正当な許可又は証明書なくして︑上記命令の公布以後に︑任意にソビエト連邦を去った者は︑ソビエト連邦又は. 連邦構成共和国の政府若しくは司法機関の特別の命令によって︑ソビエト国籍が剥奪された場合にのみ︑それを失う ものと︑考慮される︒﹂. なお︑ソビエト連邦は第二次世界戦争後︑各国に居住する旧・シア人に対し︑個別的立法により容易に国籍を回復 する措置をこうじた︒. 次に検討する各国の判例は︑もっばら︑一九二一年︑一九二四年及び一九二五年の命令の効力に関してである︒. フランス判例. 二︑各国の判例. e. フランスは︑一九二四年一〇月二八日ソビエト政府を承認した︒承認以前にはフランス裁判所は︑ソビエト政府の. 未承認を理由として︑ソビエト国籍剥奪命令を適用することを拒否し︑その命令に該当する者を無国籍者とすること. なく・シア国民として扱った︒承認後はこれと異る判断のなされた場合が多い︒次の判例は︑承認後︑国籍剥奪命令.

(9) に該当する者を・シア国民として扱い︑かつソビエト法を適用した事件である︒ む 冒暮巴評わ仁巴一5︵セーヌ民事裁判所︑一九二六年一二月二四日判決︶. ∪①三昌窪器. 原告はモスクワ生れで︑・シア軍士官であったが︑一九一九年八月一九日︑非嫡出子の認知を行った︒その後︑フ. ランス裁判所に対して︑この認知がソビエト政府成立以前の・シア法に反すること︑及び自分がソビエト政府に政治. 的に反対し︑かつ国籍剥奪のなされている者であるから︑この間題は旧・シア法に基づいて決定さるべきであること を理由として︑認知の取消を取めた︒裁判所は次のように判示した︒. ﹁認知取消の理由はない︒原告は一九一九年八月一九日︑・シア国民であった︒必要なことは︑いずれの・シア法. が適用されるかを決定することである︒フランスによるソビエト政府の法的承認はフランス裁判所に対し︑国家事項. に関して︑・シア法がフランス公序に反する場合を除ぎ︑ロシア法により決定された法的地位を︑・シア国民に与え. ることを強制する︒ソビエト政府承認の効果は︑既存権利をそこなわない限り遡及的であり︑新政府の法的開始まで 遡る︒﹂. ⇔ ポーランド判例 カ 即旦きo楯≦冨≦︵ポーランド最高裁判所︑一九二七年一〇月三一日判決︶. ソビエト・ポーランド間の﹁リガ平和条約﹂︵一九二一・八・一八︶は︑第一七条において︑﹁締約国民間の私法上. の間題は︑条約の発効以後に生じたもので︑条約自体によって解決できない場合には︑混合請求委員会によって決定. 二二五. されるものとする﹂と規定していた︒本件上告人は被上告人との間のパートナーシップに関する訴訟をはじめからポ 国籍の剥奪と国際法.

(10) 国籍の剥奪と国際法. 二二六. ーランド国内裁判所に提起した︒その控訴審でワルシャワ高等裁判所は︑二つの理由1ーすなわち︑ポーラソドのソ. ビエト連邦承認により︑ポーランドの見解からすれば︑ソビエト領域に住所を有するすべての者が・シア国民である. こと︑及び︑原告が外国に居住することによって︑他国の国籍を取得することなくソビエト国籍を失なったとの事実. はとるにたらないことであることーに基づいて請求を却下し︑管轄権は混合請求委員会にある旨判示した︒そこで. 本件はポーランド最高裁判所に係属したが︑裁判所は上告人が無国籍者であることを理由として︑﹁リガ平和条約﹂. 第一七条の適用はなく︑上告人はポーランド裁判所に対して訴権を有すると判示した︒裁判所の国籍に関する判断は 次のとおりである︒. ﹁ソビエト国籍法に基づいて国籍を剥奪された上告人は︑他国によって︑とりわけポーランドのようにソビエト連 邦を法的に承認した国家によって︑ソビエト国民とみなされない︒. 上告人による自分が国際連盟の保護のもとで︑ベルリンにおいて生活を営む無国籍者であるとの申し立ては︑無視. できない︒というのは︑裁判所はたとえいまなお上告人が形式的にソビエト国民であると仮定しても︑上告人により. 申し立てられている事実から︑以下のことすなわち︑上告人が政治的亡命者であったこと︑及び上告人はソビエト国. 民と考慮されることができず︑いまや無国籍者であるとみなされねばならないことーを結論することが正当化され るであろうからである︒﹂. ㊧ スイス判例. スイス裁判所は︑初期にはソビエト政府の未承認︵承認は一九四六・三・一八︶を理由として︑ソビエト国籍剥奪.

(11) 命令を適用することを拒否した︒しかし︑後になって未承認に関係なく︑ソビエト国籍剥奪命令を適用した︒次の二. む. つの判例は︑いずれも未承認にかかわりなく︑ソビエト国籍剥奪命令を適用したものであるが︑後者は国家の国籍剥 奪権の国際法上の意味を︑論じている︒ ① ↓魯①ヨ一葵く●↓9①旨一接︒︵スイス連邦裁判所︑一九二八年六月一五日判決︶. 本件は離婚請求事件である︒原告は一九一四年から一九一八年の戦争期間中︑スイスに居住していたが︑ジュネー. ヴ裁判所はその離婚請求を︑離婚を決定する権限をもたないとして︑却下した︒この決定は︑同州控訴裁判所でもソ. ビエト政府の不承認を理由として支持された︒しかし︑本連邦裁判所は︑ソビエト国籍剰奪命令を適用して︑原告を. ・シア国民であるとした後に︑離婚に関するスイス法及び離婚判決が︑ソビエト裁判所で承認される可能性を指摘し. て︑本件を州裁判所に差し戻した︒国籍剥奪命令に関する裁判所の判断は次のとおりである︒. ﹁当事者の国籍問題に関し︑一九二一年一二月一五日の全・シア中央執行委員会命令第一条第一項に定める︑国籍. 登録要件の五年の期間がいまだに開始していないことは︑たしかである︒なぜならば︑・シアはスイス連邦に代表部 を有していないか ら で あ る ︒ ﹂ の ②冨目需旨〜団O嘗O一●︵スイス連邦裁判所︑一九三四年六月一五日判決︶. 本件控訴人の父Oo霧鼠旨冨目窟昏は︑一九一九年白・シア軍が一時的にオデッサ市を占領した時に︑オデヅサ. の白・シア軍司令官から発給されたパスポートと︑スイス領事及びオデッサ市の国際管理事務所から交付されたビザ. 二二七. とをもって︑オデッサを去り︑一九二九年までスイスに留った︒この間︑一九二三年に身元証明の原本は︑ナンセン 国籍の剥奪と国際法.

(12) 国籍の剥奪と国際法. 二二八. パスポートに切替えられた︒一九二七年︑Oo霧ユ昌冨日需旨は︑ベルン州ボルフォル市の市民たる婦人と婚姻した︒. 妻はロシア法に従って︑スイス国籍を保持した︒一九二九年︑夫婦がベルギーに滞在中︑控訴人冒8器一冒oが誕生. した︒一九三三年スイスに帰ると︑両親はボンフォル市に対し︑子供の市民権を請求した︒ボンフォル市は市民登録. を拒絶し︑本籍証明書の発給を拒否した︒そこで︑両親は子供を名儀人として︑訴訟を提起した︒. 控訴人は︑その父が一九二一年一〇月二八日のソビエト国籍剥奪命令により無国籍者であるから︑スイス法の規定. によって母のスイス国籍を取得すると主張し︑パリのソビエト総領事の意見も援用した︒これに対しボンフォル市. は︑控訴人が国籍剥奪命令に基づいて無国籍者でないこと︑及び︑その命令が︑普通的に承認された国際法の原則. 1すなわち︑国家はその制度に好意的でない者から国籍を剥奪しえないのみならず︑それを他国に所在するその国. 民に強制しえないとの原則1に反するとの抗弁を行った︒結局︑裁判所は控訴人の主張を認容したが︑国籍剥奪命 令の国際法上の評価について︑次のような判断を行った︒. ﹁裁判所は︑各国家がその裁量により国籍の得喪の条件を定めるという基本的な主権的権利が国際交通の考慮によ. って︑どの程度制限されるかについて見解を表明する必要はない︒叉裁判所は︑この種の規定を選定することを許し. 難いとする︑明白かつ適切な原則を国際法からどの程度集めうるかについて︑見解を表明する必要もない︒というの. は︑本件がたとえそういう場合であるとしても︑そのことは︑国家間を規律するものとしての国際法の本質からし. て︑せいぜいその規定により侵害をうけた他の国家に対する義務違反を構成するにすぎないからである︒そうした義. 務違反という概念は︑次のような場合1すなわち︑他国が国籍を剥奪した本国に対し︑国籍剥奪を取消し︑かつ︑.

(13) その者を再び受け入れることを強制する法的手続のない場合には︑無意味である︒それは︑かく非難されている法律. に従ってその者が無国籍であるという事実︑つまり︑その者の本国がその者を国民とみなさないとの事実を︑変更し. その他の国家の判例. えないであろう か ら で あ る ︒ ﹂. ㊨ ω 中国判例. ・シア革命以後︑中国東北地区には多数の・シア人が居住していた︒こうした・シア人に関する事件でソビエト法. 適用の問題が生じた︒一九一二年一二月一二日︑中華民国大理院は東省区域高等審判庁からの︑ソビエト法適用に関 する質疑に対し て ︑ 次 の よ う な 回 答 を 与 え た ︒. ﹁査するに大理院の前回の解釈は︑・シアの新国家をまだ我国が承認しないのであるから︑・シア人が国籍をもつ. 者と認めることはできないとするものであった︒ただし︑無国籍とはいっても︑実際上は他の無国籍者とは事情が違. うのであるから︑法律適用条例第二条第二項の規定︵無国籍者に関する規定︶は︑もとより適用すべきであるが︑な. お例外を認めないわけにはいかない︒表函に述べるところの身分︑親族等事件は︑もし法律適用条例によりロシア人. の本国法を適用すべぎ場合は︑すなわち本院前回の解釈により︑当然地方︵すなわち・シア人の本国法︶の新旧法律. 二二九. を斜酌し︑条理として援用することができる︒普通の民商事事件は︑当該・シア人が︑中国の領域内に住所をもつ場. エジプト判例. 合は︑当然中国 法 に よ っ て 処 理 す る ︒ ﹂. ω. 国籍の剥奪と国際法.

(14) 国籍の剥奪と国際法 の =き餌註ダ98詳い岩弓毘9︵アレクサンドリア略式裁判所︑一九二五年一月二四日判決︶. 二三〇. 通常の意味での国内裁判所の判決とは異るが︑エジプトにおける混合裁判所が︑ロシア人の相続問題に関して︑す. べての法律点について旧・シア法︵革命以前の・シア法︶を適用した例がある︒この場合︑ソビエト政府の未承認が 決定的であった︒判旨は次のとおり︒. ﹁エジプトにおける・シア国民は︑・シアの外交代表が存在しないにもかかわらず︑外国国民の性質をもつ︒そう. した者は身分上の地位に関してその者の属する国家の法により規律される︒旧・シアの旧・シア領事は︑身分上の問 題に関してロシア国民の請求を支持するために︑いまなお相続の証明書を発行しうる︒. ・シア国民の相続権は︑旧巨シアの制度のもとで効力のあった法律により規律される︒そして︑エジプトが事実的. にも︑法的にも承認していないソビエト政府によりなされた旧・シア法に対する修正は︑本裁判所によって︑考慮さ. ソビエト国籍剥奪命令に関して︑U・ドωき象富きω〇三9Ω藏器霧置ダ>・ン︵這3︶︸<O一・ωρ唱マ①置looご↓審8信臥o・. れない︒﹂. ω. P閃oo皿o凶一自oのOo仁﹃即<o一.直oo︸℃や一①㍗﹃oo.. 寄℃R8富留U3一二旨oヨ蝕8巴ω后覧似ヨo旨一︵一〇認y廿﹄#. 鶏窟欝℃や目?Nご匡︒<凶9乱. ②乞まo器. 一㎝冒口ρ一〇Noo︸︾口昌仁帥一9αqoの叶. o︶︸℃唱︒81㎝ω● ︵一〇ミーNo. ︵一〇ミーNooy箸・ω一 1一9. 一〇暮Φ一国ωわ奉一一罫Ωく鵠↓旨彗巴oh昏oωo置o﹄轟Uo8ヨげg一89>g慧一U蒔8f︵一〇ミーNo︒︶︸℃や. ③︾身δo蔓O且巳89ω薯一gω唇3BoO8員一〇●ω98Bぴg一3食>旨一琶U蒔窃8︵お器II撃︶Zo●=9. ①oolOP. ④Uo蜜亀︒目o. ↓魯R巳接く・↓9震巳接いω註霧司a震巴Oo目旨. ㈲ 男且30彊ダピo惹 ω仁窟oヨoOo自什o賄℃o一目 ω一〇〇8げ①5一〇N8︾口口琶一U一騎oのけ. ㈲.

(15) ︵一〇ωωー謹yマNO?緯■. 入江啓四郎﹁日本と中華人民共和国の関係﹂アジア研究第四巻︑一八頁︑註一五︑大理院解釈例︑統字第一六五〇号︒. ■oヨbo旨<・閃o旨o一℃ω惹NR一きα問9震巴Ooξ計一㎝甘昌ρ一〇ω合>昌昌ロ巴U蒔oの一. ︵一〇謡ー8y. ω. 一U蒔oの幹. ⑧. もりωOlω一●. ⑨国弩餌註<・9&津ピ巻馨巴ρω仁日B聾蔓客一図&⇒ま盲巴≧o惹鼠ユ帥︸障冒2巽ざお謡讐︾馨ロ. 三︑ナチス国籍剥奪命令と各国の判例 閣︑ナチス国籍剥奪命令の内容. ナチス・ドイッは反ユダヤ政策の一環として︑一九三五年一一月一四日の命令により︑ユダヤ系ドイッ人から連邦. 一九四一年一二月二五日のライヒ市民法に関する第二命令田津①<Ro巳§㎎跨ヨ国90富甲. 市民としての地位を剥奪した︒しかし︑これは国民としての地位︵ω富緯の碧閃魯酵碍①︶の剥奪まで意味するものでな. かった︒その後︑. 鐸楯段鴨紹冒︵以後ナチス国籍剥奪命令︶によって︑外国に居住するユダヤ系ドイッ人から︑ドイッ国籍を剥奪した︒. 外国に通常の居所を有するユダヤ人は︑ドイッ国籍を失う︒. それは次のように規定していた︒. ①. ② ユダヤ人は︑この命令が効力を発する日にその通常の居所を外国に有する場合には︑その日に︑後に外国に居 所を移す場合には︑そのときに︑ドイッ国籍を失う︒. このナチス命令は︑ナチス・ドイッ降伏後連合国派遣軍最高司令部の法律第一号︵一九四四・九・一八︶により廃. 一≡二. 止された︒このことは︑ドイッ管理理事会の法律第一号︵一九四四・九・二〇︶にも︑規定された︒ 国籍の剥奪と国際法.

(16) 国籍の剥奪と国際法. 二三ニ. ボン基本法︵一九四九・五・二三・公布︑同年五・二四・発効︶は︑第一一六条第二項において︑政治的︑人種的︑. 又は宗教的理由によって国籍を奪われた旧ドイッ所属民及びその卑属が申請によって国籍を回復しうることを定め. た︒この規定の解釈をめぐり︑ドイッ連邦憲法裁判所は︑ナチス国籍剥奪命令を無効として︑次のように判示した︒. ﹁ナチス命令は極めて明白かつ耐え難い程正義の基本的原則に反しているので︑それは原始的に無効と考えられね の ばならない︒したがって︑その条文によりもたらされた国籍の喪失は︑最初より無効である︒﹂ 次に検討する各国の判例は︑ナチス国籍剥奪命令の効力に関してである︒. フランス判例. 二︑各国の判例. e. フラソスには︑ナチス命令により国籍を剥奪された多くのユダヤ人が居住していたが︑こうした者が戦争終結後︑. 無国籍者としてフランス法上の利益をうけるか︑敵性国民︵ドイッ人︶としてその利益を拒否されるかが問題となっ. た︒フランスは第二次世界戦争中︑ナチス命令を承認していたので︑この問題は特に︑ドイッ占領管理理事会の発し. た法律第一号の︑フラソスにおける適用の間題︑又はその法律の遡及効の間題として論じられた︒最初判例に混乱が. 一九四七年二月八日判決︶. ㈲. みられたが︑結局フラソス破殿院は︑一九五〇年一二月二〇目の判決で︑ユダヤ人は無国籍者であると判示した︒こ れらの判例の中に︑国籍剥奪とその回復との関係を論じたものがある︒ ↓o旨09︿●∪窪象ロ9>器一曾碧8勺qび一5器●︵パリ控訴裁判所︑. ﹁国際法は国家に対し︑国籍の問題を規律する準裁量的権限を与えている︒しかし︑文明国ではその権限は︑人格.

(17) 権︑つまり︑成年に達した者はその剥奪された国籍を再び課せられるかどうかを︑みずから決定せねばならないとの. 自由選択権によって︑制限されている︒この法律︵ドイツ占領管理理事会法律第一号︶のこれ以外の他のいかなる解. 釈もうけ入れがたい結果を導びく︒ナチス法を廃止する法律は︑既に指摘したようにナチスの不法行為を廃止するこ. スイス判例. とを目的としたものであり︑その犠牲者の地位を更に悪化させる効果を持つことはない︒﹂. ⇔. ナチスからの被追害ユダヤ人は永世中立国スイスにしばしの安息を求めた︒そうした者でスイス人と婚姻した者が. 多い︒スイス法によれば︑スイス婦人であって︑夫の国籍を取得しない者は︑依然としてスイス国籍を保持すると︑. 定められている︒ナチス降伏後︑ドイッ占領軍によりナチス命令が廃止されたために︑ナチス命令により国籍を剥奪. されたユダヤ人が無国籍者かどうか争われた事件がある︒スイス裁判所は︑はじめナチス命令の効力を認めず︑ドイ. い①<一挙蜜爵一馨Oβ. U①需旨ヨ①昌け国亀R巴8冒呂89勺98︵スイス連邦裁判所︑ 一九四六年六月一四. ツ国籍を保持するとしたが︑後にこれを改めて無国籍者とした︒次の二つの判例はこの発展を示すものである︒ ω 日判決︶. 原審判決は︑控訴人の夫がナチス命令によりドイッ国籍を失ったことを承認したが︑控訴裁判所は︑公序を理由と してこれを斥けた︒内容は︑次のとおり︒. ﹁ナチス国籍剥奪命令は︑人種的理由に基づいてユダヤ人とアーリア人との間に差別を行っているのであるから︑. 二三三. スイスの公序に反しており︑その故にスイスにおいて適用されない︒それを適用することは︑スイスにおける正義の 国籍の剥奪と国際法.

(18) 国籍の剥奪と国際法. 二三四. 感情を耐え難い程害するであろう︒ドイッ法により︑かつ人種的な議論に基づいてなされる差別は︑正義の感情と両. 立し得ない︒それは人間の平等の原則に反し︑スイスにおいて理解されている法の前における市民の平等の原則に反. するからである︒したがって︑そうした差別を行う規定はスイスにおいて適用できず︑原則としてスイス法廷により. 国Oω窪爵巴<・田鴨呂の器90の冒の§⁝血勺O雨Oこ①冨旨日①暮︵スイス連邦裁判所︑一九四八年一〇月八日判. 承認されない︒それゆえ︑スイス法上︑控訴人の夫はドイッ国籍を失っていない︒﹂ ② む. 測︶. 控訴人は︑自分の夫がナチス命令によって︑ドイッ国籍を失い︑無国籍者であると主張したが︑原審判決はこれを. 認めなかった︒控訴裁判所は︑逆に︑無国籍者としたが︑特に︑ドイツ占領軍の法律の遡及効に関して︑次のように 判示した︒. 冨ξ富. ﹁ナチス国籍剥奪命令は︑連合国派遣最高司令部︑及び︑ドイッ管理理事会の法律により廃止された︒しかし︑こ. れらの法律は遡及的効力を持つものではない︒さらに︑その法律は︑占領地にのみ適用のあるものである︒. 〜匡昌巨oぎにおいて︑ナチス命令は遡及的に廃止され︑かつ︑とりわけ国籍を剥奪された旧ドイッ市民が︑国籍 を自動的に回復したとの推定は︑正当なものと立証されなかった︒﹂. ㊧ イスラエル判決 の O器需二拐〜9聲R日の︵イスラエル最高裁判所︑一九五四年一〇月二八日判決︶. イスラエル法によれば︑遺言の準拠法は︑外国人の場合には︑その者の本国法︑無国籍者の場合には︑イスラエル.

(19) 法である︒上告人は︑ナチス命令はその非人道性の故に他のすべての文明国の裁判所におけると同様︑イスラエルの. 裁判所においても承認されず︑したがって︑ナチス法の対象となったその母たる遺言者は︑死亡するまでドイッ国籍 を有していたと主張した︒裁判所はこれについて︑次のように判示した︒. ﹁上告人の主張は︑それ自体健全なものである︒しかし︑遺言者にナチス国籍をおしつけることはできない︒これ. は他のいかなる問題とも異る︒そうでなかったら︑途方もない結論になってしまう︒つまり︑ナチス法の野蛮さのまさ. にそのゆえにイスラエルに所在する者が︑その野蛮国の市民としてみなされねばならなくなる︒すべてのナチス人種. 法が裁判所において非難されるのはいうまでもないが︑裁判所は︑ユダヤ人に関する限り︑そのみさげはてた制度と. の法的結合を承認するために︑その法律を無効とする用意はない︒それゆえ︑裁判所は︑その法律のあからさまなユ. ダヤ人排斥的な動機にもかかわらず︑その法律が国家と市民の間との連結を切断することが可能であったと考える︒﹂. ㊨ イギリス判決. ︾洋o旨甲. イギリス裁判所は︑イギリスとドイッが戦争状態にある間は︑ドイッによる国籍剥奪の措置を承認しなかった︒こ ぶ. れは︑↓ぎ因冒⑳︿●↓箒=o目①ω8お件震零国図冨旨oピきα>ぎ甚①ごいo≦9浮巴きα︾昌o芸巽. 09震巴において︑確認される︒ドイッ命令の不承認は︑内務大臣の指示しているように︑﹁公の政策﹂ の問題であ ⑳ る︒. ドイッとの戦争状態終了後︵一九五一・七・九︶︑イギリス裁判所においてナチス命令の効力が争われた判例があ. 二三五. る︒はじめに︑ドイッからの亡命ユダヤ人○署①昌ユヨR︵一九四八・六・四・イギリスに帰化︶は︑所得税委員会 国籍の剥奪と国際法.

(20) 国籍の剥奪と国際法. 二三六. ↓幕Oo目目一ωωδ器お8﹃些oω需9巴b琴宕の89荘o冒8目①↓與に対し︑自分はナチス命令に該当するユダ. ヤ人であるけれども︑イギリス裁判所はこの命令を承認しないのであるから︑二重国籍者として︑イギリス・ドイツ. 連邦共和国間の二重課税回避条約︵一九五五・一九六七︶に規定する所得税免除の利益を享受しうると申し立てた︒. 委員会は︑これに対し︑請求人はナチス命令によらなくても︑一九一三年のドイッ国籍法に基づきイギリスに帰化し. Oも冨嘗9ヨR〜O舞什RBo一〇︵冒ω冨08お亀↓貰8︶︵大法官裁判所︑一九七一年一二月一六二一日判決︶. たことにより︑ドイツ国籍を喪失したと審判した︵一九七〇・一・一九︶︒そこで本件は︑大法官裁判所に係属した︒ ⑳ ω. 裁判所はナチス命令を認めず︑又︑一九一三年のドイッ国籍法も適用しなかった︒理由は次のとおり︒. ﹁第二次世界戦争は後の段階ではナチス制度の野蛮さに対する聖戦としての様相を呈した︒その戦争の勝利という. 結果が︑事実上それまで否定されていたナチスのユダヤ人追害法の一つを承認するとすれば奇妙なことである︒︵中 略︶. 裁判所は︑イギリス法の目的上︑原告が一九四八年にイギリス国籍を取得した時の︑原告はいまなおドイッ国籍を. 保持しているとの主張を正当なものと判断する︒原告は帰化申請をする際にその旨を主張している︒︵中略︶. 被告の︑原告は一九四八年に一九二二年のドイッ国籍法によりその国籍を喪失したとの主張には︑原告の次のよう な抗弁がある︒. ﹃否︑ドイッ法のもとでは︑原告はそれをとうの昔に失っているのである︒それにもかかわらずイギリスの公の政 策の原則によって︑まさに被告は︑この法廷でその事実を主張できないのである﹄.

(21) 裁判所はこれにいかなる誤りも見い出すことが出来ない︒﹂. 次に︑本件は控訴裁判所に係属した︒ 働 O象け震ヨ08︵ゴω需999↓輿霧︶︵控訴裁判所︑一九七二年七月一八・一九・二〇日判決︶. ②O唱需昌蝕ヨ震. 裁判所は︑原審をくつがえし︑ナチス命令を適用した︒判決要旨は次のとおり︒. ﹁一九四一年のナチス命令によれば︑納税者たるO℃需嘗o巨窪はドイッ法によってドイッ国民でない︒外国法. であって︑それが懲罰的又は没収的なものである場合は︑イギリス裁判所により承認されないとの原則は︑国籍又は 市民権の問題に適用されない︒. イギリス裁判所は︑戦時において︑イギリスに居住するドイッ人から国籍を剥奪することを目的とするドイッ法を. 承認すべきでないが︑この原則は戦争状態が終結した時に︑その機能を終止する︒したがって︑一九四一年のナチス. 命令は︑イギリス裁判所により納税者からドイッ国籍を剥奪するものとして︑承認されねばならない︒﹂. ㊨ ベルギー判決. ベルギー裁判所において︑敵性財産の管理に関し︑ユダヤ人がその国籍を剥奪されたことを理由として︑そうした. 措置から免れることを主張した︒その判決において︑ナチス命令の国際法上の効力が論じられている︒ ⑬ 国旨犀ρO曲88ωω9ロ霧賃霧︵ベルギー破殿院一九五三年五月二六日判決︶. この判決で︑破殿院は︑上告人がナチス命令に基づいて︑国籍を失ったものとして扱われていなかったとして︑ド. 二三七. イッ国籍を保持していると判示した︒そのために︑破殿院は国際法上の観点からの判断を不必要としたが︑控訴裁判 国籍の剥奪と国際法.

(22) 国籍の剥奪と国際法. 所の次のような判示を指摘している︒. 二三八. ﹁控訴裁判所は︑そうした立法措置︵ナチス国籍剥奪命令︶が︑国際条約及び国籍に関して認められた国際法の原. 則を無視してとられたとの特別の理由により︑ベルギーにおいて適用されないと考慮する︒その結果として︑ナチス. 人種法が︑ベルギーに強いた戦争に責任あるドイッ共同体と︑その被害者を区別している以上︑そのナチス人種法の. 働 一九四八年二月二〇日判決︶. 効果を無視することは︑もとよりベルギー法の意図するところではないけれども︑ドイッ人たる地位にとどまる控訴 人は︑有効に敵産管理に従うことになる︒﹂. 寅Ω︿一一望讐且騨. 丙その他の国家の判例 ① アルゼンセソ判例 冒8留日o器●︵9日. 請求人は︑旧ユダヤ系ドイッ人であり︑ナチス命令により国籍を剥奪された︒しかし︑ドイッ降伏後︑占領連合軍. によリナチス命令が廃止されたことによって︑アルゼンセン裁判所において︑無国籍者たる請求人はドイッ国籍を回. 復したのか︑もしそうとすれば敵性国民に関する法律に基づいて敵産管理に従わされるのかの間題が提起された︒こ の点につき︑裁判所は次のように判示した︒. ﹁ドイッ人種法の廃止は︑人種法の結果として移住した無国籍者に︑ドイッ国籍を回復させるものではない︒ただ. し︑無国籍者たる地位は︑敵性国民に対するある命令の適用について︑異議申し立て人としての地位を有する者と は︑解釈されない︒﹂.

(23) ②アメリカ合衆国判例. ナチスドイッによるオーストリアの併合︾諺o匡参ω︵一九三八・三・二二︶は︑はじめ︑アメリカ合衆国により. 承認された︒したがって︑旧オーストリア人は︑すべてドイッ人となった︒しかし︑当時国外にあったオーストリア. 霞自臣ω巳9臣80け90P目ヨ蒔轟菖自︵アメリカ合衆国第二巡回控訴. 人については問題がある︒かかるオーストリア人のある者がアメリカ裁判所でナチス命令の効力を争った事件があ る︒. q巳冨α誓舞2国図勾9留ゲ名薗詩O鳳 ㈲ 裁判所︑一九四三年八月一八日判決︶. 控訴人は︑チェコ生まれのユダヤ人であったが︑一九二七年オーストリアに帰化し︑ナチスのオ!ストリア併合に. より︑ドイッ人となった︒控訴人は一九三八年以来︑割当移民としてアメリカに居住していたが︑一九四一年帰化を. 申請した︒しかし︑この申請は控訴人が敵性国民としての管理下にあったため︑未決とされた︒そこで︑まず原審で. はω9≦震ざ風の人身保護令状の申請が却下された︒しかし︑次に控訴裁判所は原審を破棄し︑控訴人を敵性国民. としての管理から免れさせることを決定した︒その理由は︑控訴人はオーストリアが併合された時︑すでにアメリカ. に居住していたのであるから︑併合に際して国籍選択権を有する筈であり︑かつ控訴人はドイッ国籍の選択に同意し. なかったとするものである︒そして︑さらにナチス国籍剥奪命令を次のように判断した︒. ﹁裁判所が控訴人の国籍選択権を否認したり︑その地位を決定するためにドイッ法のみによるならば︑控訴人はド. 二三九. イッ国民でないでないであろう︒つまり︑控訴人がナチスによるオーストリアの併合と︑七月三日の命令により︑ド 国籍の剥奪と国際法.

(24) 国籍の剥奪と国際法. 二四〇. イッ国籍を取得したとするならば︑その国籍は一九四一年の命令により失われる︒アメリカ合衆国の公の政策は︑控. ︾・乞・蜜. 犀震O〜∪窪富oぼωω冨讐器昌頓ゲ驚蒔ざ騨巽8鐸国Oヨヨo昌富きお譲. D.89この命令の聞題点について︑悼︾ぴ9 O. 訴人をドイッ国民として認めないとするドイッの権限を承認することを︑決して妨げない︒﹂. q P U①昌m識o口巴凶N緯一〇戸霞oα①旨い帥毛国o≦oヨ︵一〇蕊y勺や鴇訟.. ︒一一〇βヨ巴ユoU8犀一暮oヨ豊o塁一℃︵一S一︶℃箸﹄O︵下OS ②一Wロ巳oω︿巽壁ωの巨ひqのひq⑦旨耳峯欲巽坤︒び一逡o. 一〇〇畦号O. o・. 器魯δP20器目ぴRNo. ③国言q図Oロぽぴq&89UO一一〇富一ぎ甘畦尽一留U8律一昌9旨9凶8巴℃︵這包y℃℃・ミヱO・これ以前にドイツ占領管理事会. 霧o︒ユoP竃巴ωO℃一〇ミ︾>目G巴U碍8f︵一〇ミ︶︸. 命令を適用して︑ユダヤ人に再び国籍を付与した例は次のとおり︒囚仁嵩旨践〜O.因o 一漣9︾目惹一U蒔8ε︵一〇蕊︶︸29qO二WR8一〇〜≧突暫巳900員αoO. 男oロ9夢08旨9>℃冨巴9り貰量冒ロ昌ロ震矯. ︵一〇&y20●8馴ピg口9h︿・国円8FOo仁旨o︷>℃究巴o賄Oo一ヨ胃り冒帯曽℃一〇ホ℃︾昌口β国一U賞o・. 298・逆に無国籍者とした判例は次のとおり︒Oo置曾簿B〜ω090叡ピ. ︵一〇お︶u 乞 o ● 刈 ↑. Nω 一逡9>口ロロ巴U蒔oの什 の梓. ④↓o旨8ゲ〜U鋤民ぎg>ωω韓き8評ぴ言ロρOoロ濤oh︸℃驚巴oh評ユ切℃寄げ畦 蔓ρ一〇ミ鳩>目β巴U凝$ε︵一〇ミ︶・ も℃︒一N一IN癖●. U凶ひqoωけ. ︵一漣①y℃℃.一ω?ωO●. ︒し︒参>目琶 o§げRo. ⑤ピ︒ξ富自警巨o置〜Uo需旨Bo暮閏区o鋸一ユo冒豊80胤℃o一一8糟ω&器二帥且問&R巴↓ユび暮巴︸甘ロo罫一宝ρ>g慧一. U凶磯oωε︵一 〇 お y ℃ ℃ ● 謡 甲 ー 零 .. ⑥閃︒ω︒艮琶︿︒田昔︒&裟g①ω冒ω静巨ら勺︒一一N&8震琶︒賞ω&N︒旨且悶a︒泣↓喜琶鋤一. ℃掌一〇刈IOc. のO霧麗二5︿ O器℃R言ω℃同段器一ωq肩凶ヨoOoβ濤ω一二口碗器Oo仁旨o︷Ω︿出>℃罵帥一℃冒$旨暮一〇轟一ピ帥零国80詳ρ<o一・曽℃. ︵一漣o︒︶鳩20気一●. ︵一異﹀ム㎝︶℃乞o﹄P. o●. ⑨卜旨量一ご蒔8け. ⑧>旨奉一U蒔oの什.

(25) ⑩属28900B昌o房∪3暮o <○一﹄o︒ρOo﹃さミo︒●. 蜜帥網一ρ一〇認℃℃℃●一9望ー躍︒. ⑪O箸8訂ぎR O帥群震日o一〇︵冒呂8什R9↓髪oωyOげ目8qU三ω一8一S一Uoρ一9曽. ↓冨ミo魯ぞい即ミ国εo博の. ⑫O竈8訂冒R<︒9詳Rヨo一〇︵一β呂8ε﹃oh↓震①ρOoq旨o︷︾暑o巴﹂O認︸冒ぎ一〇︒︸一〇るρ↓ぽ名o爵ζ冨≦国︒℃o耳の鳩. oyマ8ρ O ヨ 声Ω︿一一留ρ琶鼠︑男oビ声昌8﹂漣oo層︾昌匡巴U蒔①曾 ︸︵一漣o. 国冤畠o.O臣8α8ω8器の耳①ρOoβ吋ユoO器ω暮一〇P8冨畦の噛一〇㎝oo一一〇霞蒙一αoU8津H箕①彗讐一〇昌巴︵一〇経y℃℃●島QI. o一9−N↑ 20︿oヨびRNト一〇認 ℃℃●o. 冒器ω帥目o矯ρ︾彊8ユ昌. o.. ωo. ㈹. αゆ. >唱℃o巴ω留8且Ω8鼠計︾q鵬5什一〇〇︸一〇お一︾μ昌仁巴∪凶αqoωけ. ︵一緯㌣ム駅︶. 〇〇 〇 1線 ℃℃.一〇. ⑮q鼻&ω§︒の穿寄一︒ωoげ譲震Nぎ嵐︿9d国■9ω艮o什9括90﹃ohぎ旨讐豊opq旨&ω馨oωΩ容鼻Oo畦貯o臨. 五︑結 論. 各国の判例は以上の通りである︒国籍剥奪によって生ずる多くの問題は︑これらの中にほぽ出尽くしていると思わ れる︒そうした問題点を整理した上で結論を述べたい︒. ソビエト国籍剥奪命令と各国の判例についていえば︑そこでの主要な問題は︑ソビエト政府によりなされた国籍剥. 奪の国際法的合法性如何というよりも︑ソビエト法適用の前提としての︑ソビエト政府承認の有無であった︒したが. って︑ソビエト政府の未承認の段階では︑各国の裁判所は︑ソビエト国籍剥奪命令を有効なものとして取扱うことを. 二四一. 拒否し︑その規定に該当する者をなお国籍を保持するものとして扱った︒ソビエト政府の承認がなされた後は︑逆に 国籍の剥奪と国際法.

(26) 国籍の剥奪と国際法. 二四ニ. ソビエト命令を有効なものとして︑かかる規定に該当する者を無国籍者として扱った︒実際に︑国際法が国家の国籍. 剥奪権に一定の制限を行っているとの主張は︑各国裁判所の正面から取りあげるところでなかった︒一般的にいって︑. この段階での国家の国籍剥奪権は︑極めて無制約的なものであったといえよう︒とはいえ︑スイス判例冨目需旨〜. ωo艮o一にみられるような︑国籍剥奪を制限する国際法原則の可能性を指摘しながら︑実効的な救済措置が存在しな. いことを理由として︑ソビエト政府による国籍剥奪を承認する見解は︑極めて示唆的である︒. ナチス国籍剥奪命令と各国の判例についていえば︑問題はより複雑である︒したがって︑いくつかの論点に整理す. ることが必要である︒第一に︑ナチス国籍剥奪命令が国際法上合法か否かの問題がある︒ドイッ判例を除いて︑明確に. 国際法違反としたのは︑ベルギー判例国旨国ρO臼8血窃ω8ロ8賃窃である︒イスラエル判例O霧需ユ器〜O霧−. 需ユ臣は︑原則として同様の立場をとったものと思われるが︑特殊な理由によりナチス命令を承認している︒それ. 以外の判決は︑公序によって排除する場合を除いて︑ナチス命令を有効なものとして取扱っている︒最近のイギリス. 控訴裁判所の判例Oも冨昌げ①一ヨ震 O讐什震目o一①が激しい批判をあびるのは︑裁判所がこの点についての判断を示 つ し︑ナチス命令の適用を排除すべきでなかったかということにある︒. 第二に︑ドイッ占領管理理事会によるナチス法を廃止する法律の適用の問題がある︒これは︑フランス︑スイス︑ア. ルゼンチンにおいて︑ナチス命令によって国籍を剥奪されて無国籍となった者が︑かかるナチス法を廃止する法律に. よっていかなる影響を受けるかの問題としてあらわれる︒この問題について︑各国の裁判所は︑かかる法律は遡及的. 効果を持ちえないこと︑及び︑かかる立法を行う国家の権限には領域的な限界があることを指摘している︒つまり︑.

(27) かつてある国家の国籍を保持し︑その後国籍を剥奪された者であって︑現に国外に居住する者に︑その国籍を剥奪し. た国家が再び強制的に国籍を付与することと︑以前その国家の国籍を保持した者でなくて︑現に国外に居住する者に. 国籍を強制的に付与することとの間には︑法的に相違がない︒そこで︑■窪冨∈8算は︑国際法上一国はその領域に. 居住する他国の国籍を剥奪された者に対し︑当該国籍を剥奪した国家が再び国籍を付与しようとする場合には︑そう. した処置に効力を与えることを拒否しうるのであり︑又拒否することが義務であると主張する︒ただし︑この前提に. は︑ナチス国籍剥奪命令についていえば︑それらの国家がナチス命令を承認していたということのある点に留意せね ばならない︒. 第三に︑具体的事件において︑誰がドイッ国籍を保持していることを主張し︑誰が無国籍者であることを主張した. かの問題がある︒一般的に︑ナチス国籍剰奪命令に該当する者が︑その国籍をなお保持すると主張するのは︑極めて. 例外的である︒特に︑ドイッ国籍を保持するならば敵産管理に従わねばならない場合には︑フランス判例↓段ぎ9. U窪象器什︾ωω翼碧8男q霞ρ器のように︑むしろそうした者の保護の為にもはや無国籍者であると認められると. の判断が下された︒その意味で特異なのは︑イギリス判例である︒○窓o旨虫ヨ震は︑自己がナチス命令の規定する. ユダヤ人であるが︑それにもかかわらずドイッ国籍を保持することを主張した︒これらの事実は︑国際法上国家の国. 籍剥奪権には一定の制限があるとの原則が明白となった場合︑むしろそうした国籍剥奪の結果を認めることがそうし た処置をうけた本人の利益になる時に︑重要な意味を持つものと思われる︒. 二四三. 以上︑各国の判例を検討してみたが︑国籍の剥奪を禁ずる国際法の原則が存在するかどうか︑もし存在するとすれ 国籍の剥奪と国際法.

(28) 国籍の剥奪と国際法. 二四四. ばその内容はいかなるものであるかについては︑直接的にそれらの判例からは明らかにされなかった︒しかし︑第二. 次世界戦争以前の判例︵ソビエト国籍剥奪命令に関するもの︶と第二次世界戦争以後の判例︵ナチス国籍剥奪命令に. 関するもの︶との間には︑法的判断に相当の差異がある︒そしてさらに各国の判例をより詳細に検討するならば︑多. くの裁判所が︑政治的な理由にせよ︑人種的な理由にせよ︑国籍をほしいままに剥奪することに対して極めて批判的. であり︑少くとも正当なものと考えていないことが明らかである︒一件であるが明白に国際法違反と判断した判例が. ある︒かかる事実と既に序論において検討した国籍剥奪に関する国際条約及び宣言の現状とを考慮すれば︑今日国際. 法上国籍剥奪を禁ずるなんらかの原則が存在するといえよう︒ただし︑その原則の詳細な内容については︑多くの国. 家が我国と異って︑その国内法に国籍剥奪規定を有し︑かつ︑独自の判断を下していることから︑なお検討の余地が. ある︒しかし︑今日︑少くとも人種的理由に基づく国籍の剥奪は禁止されるという原則は確立していると思われる︒. ドイッ判例は︑ナチス国籍剥奪命令が極めて恣意的な性質を持ち︑その中に権利の濫用を内在させているとの理由か の ら︑その命令は法ではなくて不法29ーピ曽名であると判断した︒一九六六年の﹁南西アフリカ事件﹂の個別的意見 む において︑田中耕太郎裁判官は︑人種無差別の規範は慣習国際法の一部をなしているとの意見を表明している︒これ. 以外の理由に基づく国籍の剥奪︑たとえば政治的理由等に基づく国籍の剥奪の国際法上の合法性如何の判断について. は︑より明確な基準が必要とされよう︒こうしたもののほかに︑集団的な国籍剥奪が他の国家に及ぼす重大な不利益. やO︑O自bo一一の主張するような︑国籍を剥奪しその者を追放した国家は再びその者を受け入れる義務を負うとの原則 ぶ などから︑国籍剥奪を国際法違反とする別の原則がひきだされよう︒.

(29) これまでの検討により︑少くとも︑人種的理由に基づく国籍の剥奪は禁止されるとの原則が︑明らかにされたと思. われる︒そこで最後に︑この原則が他国の裁判所で問題となる場合と︑その解決の可能性を検討してみたい︒まず︑. ある国家がこの原則に違反して国籍の剥奪を行った場合︑その対象となった個人が他国の裁判所において︑かかる処. 置の国際法違反を理由として︑自国による国籍剥奪の無効を主張したときには︑当該裁判所がこれを認容することは. 理論上問題がない︒問題なのは︑かかる国籍剥奪処置の対象となった個人が他国の裁判所において︑その国籍剥奪を. 否認する主張を行わなかった場合︑たとえば︑国籍の剥奪されたことを前提とする請求を行った場合についてであ. る︒既に検討した多くの判例でも︑各国の裁判所は︑これに類似した間題について︑実際上本人の請求を認容した例. が多いのであるが︑この場合に考えられる法的論理としては︑次の二つが可能であろう︒第一は︑裁判所が︑主権国. 家によってのみ構成されている現在の国際社会における︑既成事実の尊重と被害者個人の利益の現実的救済という観. 点から︑国際社会の利益をいちじるしくそこなわない限り︑国籍が剥奪された結果をそのまま認容することである︒. 第二は︑裁判所が︑個人は人種的理由に基づいて国籍を剥奪されないとの国際法の原則は認めつつ︑国籍を剥奪され. た場合にその個人は︑その国籍の回復を請求するか否かを自由に決定しうるものとし︑当該事件について本人の意思. を尊重して︑本人の請求しない限り現状の維持を認めることである︒以上のいずれの場合にも︑国籍が剥奪されたま. まの状態の継続を認めるということは︑国籍剥奪を行った国家の処置そのものを正当として認めることを︑決して意. 味しない︒ところで︑右の二つの法的論理を比較するならば︑結論は同じであるものの︑前者の場合には︑個人の地. 二四五. 位にあまり重点が置かれていないのに対し︑後者の場合には︑個人の地位に重点が置かれていることが指摘できるで 国籍の剥奪と国際法.

(30) 国籍の剥奪と国際法 あろう︒. 二四六. 論文を結ぶにあたって︑国籍剥奪の禁止ということを国籍間題という全体的視野でながめれば︑それが無国籍者の. 減少という枠組の中で発展してきたことは否めない︒これは︑ピ窪富∈8洋の指摘するように︑個人と国際法の間に の は国籍という不可欠の連結を必要とするという主権国家の論理の上にのっていることを意味する︒その意味で個人の. 国際法主体性が論議されてくると︑自ずとその色彩も変化してくるように思われる︒今日︑国際社会は依然として主. 権国家を基礎としたものであるが︑そうした社会に持ち込まれ︑その内容をなしている新たな要素を無視することは. 不可能である︒国家の国籍剥奪権に対する一定の制限は︑現にその新たな要素を取り入れる形で発展しつつある︒. O℃℃窪げゆ一ヨRく.O帥窪RBo一ρ一︒ρピ●ρ. ︵一〇置ソ. 毒ω一↓冨い四︵O量旨Rマ因o≦o名サ︵一〇おy℃b●一〇ら189い ↓ぎω甫目磯oO餌80︷. ω 男>︒寓窪P↓ぽ℃器のo耳< 謡&なo︷2欝一2緯一〇昌巴一蔓ピ. o旧寓巴自Rは︑冨o旨筐ωの評釈にボン基本法及びドイッ連邦憲法裁判所の判断からの考察が欠けていることを指 もマ一田lqo. O.蜜R議一ω︸O器2帥ユoゆ巴帥蔓04↓類oり. 摘した評釈を行っている︒国●匡巴目oびOづ℃8げo凶ヨR〜O帥窪Rヨo一9>問弩件ゲROoBヨo暮﹂9ρいρ︾︵ご謹y℃亨臼?鴇︒. ℃︒一〇〇●. ︒り. <o一︒o︒o. ②=●9暮o∈8耳↓箒Z讐一〇轟一凶昌o賄U8畳8巴凶Na℃Rのo拐﹂①註筈吋o畦げooドoh一旨o葺妥o口巴冨〜︵一〇おyもマ 旨中ー置︒. ③言ω =98恕一u甲U・ピ器塁o一一 ピ巨叩9口OぽpZ豊o墨一凶蔓目q=qヨき困αq窪ρ↓箒嘱巴oざ譲旨o偉B巴. ロ戸ω口窟帥口o富一. ︵這謹︶℃ロ℃︒O緕r$旧いO︒竃o旨一F鶏肩帥昌oけo一︸も℃●一鴇1㎝O●. 囲︒ρ︸・勾80旨︸︵一80︶︾℃唱●N宰ooO一. ヨ<o一・戸Nロ山&●︸︵一零Oy℃︒①鍵︒. 閏●>︒冨. ℃●O︑08ロo戸一暮o旨讐一〇冨一ピ. ω. ∪. ㈲ ㈲. ω甲9暮o弼碧F一暮R旨菖o尽一■僧≦餌且摺仁ヨ導困oq耳即︵一〇qO︶一やω禽..

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