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(1)

I 国際法改革の場としてのロースクール・クリニック

ローレル・E・フレッチャー(1)

 カリフォルニア大学バークレー校ロースクール(以下,「UCバークレー」

とする。)において,私が担当する臨床法学教育であり,指導するリーガル・

クリニックである国際人権法クリニック(International Human Rights Law Clinic)について紹介する。

 国際法改革において臨床法学は,重要かつ多様な役割を果たす。私たちの目 標設定次第で,クリニック活動の取組方法が大部分決まる。特に,それぞれの クリニックは,教育目的及び社会貢献の目的を定め,目的の調整を図らなけれ ばならない。国際人権法クリニックでは,人権侵害の被害者への正義を実現す ることを優先とし,それと並んで,この正義実現を前進させる機会を学生に提 供することによって,私たちの推進する計画を定めている。そのため,このよ うな点に触れながら,国際人権法クリニックを3つの側面から紹介しようと思 う。まず,国際人権法クリニック活動について,何が私の構想に生命を吹き込

(1) Laurel E. Fletcher is a Clinical Professor of Law and Director of the International Human Rights Law Clinic at the University of California Berkeley School of Law. She delivered these remarks during an invited lecture at Waseda University Institute of Comparative Law, May 25, 2017.

講  演

アメリカのロースクール・クリニックによる 国内法と国際法の改革

─カリフォルニア大学バークレー校の取組み─

ローレル・E・フレッチャー

ジェフリー・セルビン

宮川成雄=橋本和大

(訳)

(2)

んだのか,次に,どのように目標を実現してきたのか,最後に,達成した国際 法改革の例に言及する。

 まず,人権クリニックとは何かについて話すことにする。人権についての法 と政策の関係に注目していたロースクールの学生の時代から,私は人権問題に ついて熱心に取り組んできた。私の人権への取組みは,大規模暴力被害者の経 験に関する深い興味によって,動機付けられてきた。私は,暴力がどのように 被害者に影響を与えたのか,及び,被害者の生活を立て直すために被害者が目 指しているのは何かということに関心がある。

 アメリカ西海岸で人権に関するキャリアを重ねてきたことから,私の経歴は やや異色である。まず,ハーバード・ロースクールに在学しながら,国際人権 ジャーナルの編集に参加し,南アフリカで反アパルトヘイト人権活動を支援す る夏季インターンを経験した。ロースクール卒業後は,西海岸に戻った。アメ リカにおける国際人権活動の中心地は,ニューヨークやワシントンDCといっ た政治経済的な国家の中心地でもある。しかしながら,私はサンフランシスコ の一般弁護士事務所に勤務する傍らも,国際人権への興味を深め続けた。ま た,卒業後8年にわたり,プロボノ活動として人権活動も続けていた。その後 19年間,バークレー・ロースクールの臨床法学教員として活動してきた。1998 年に,パティ―・ブラムとともに,国際人権法クリニックを開始した。それ は,国内で2番目の国際人権法クリニックであったが,現在では,全米に約40 の国際人権法クリニックがある。

 私は,2002年から,バークレーの国際人権法クリニックのディレクターであ る。私たちの指導原理は次の3つである。(1)被害者中心主義を採用するこ と,(2)人権活動における最先端問題に取り組み,クリニックとしての資源 を最大に活用すること,(3)学生の役割を最大化することである。各原理は,

私たちの推進する計画,教育方法論,そして社会への影響に意味をもつ。

 クリニックの法実務において,被害者中心とは何か。そして,なぜそれが国 際人権領域では重要になるか。被害者中心という観点は,私たちが人権活動を するに際し,規範的・制度的視点から選択する場面で意味を持つ。私は人権を 侵害された被害者の利益を増進するような学生の取組みを期待している。私の 目的は,学生が人権侵害の被害者の立場にできる限り近づけるような臨床法学 教育を推進することである。なぜなら,学生が被害者の立場に最も近いときこ そが,学生にとって,プロの法律家へと変化していく可能性が最も高いからで ある。学生は,この目的に沿って,侵害に苦しみ,顧みられることなく隅に追

(3)

いやられた被害者が,正義の実現を求める者であることから問題を分析しなけ ればならない(2)

 私たちは,その取組みが効果的であることを望んでいる。では,「効果的」

とは何を意味するのか,また,それは計測することができるのだろうか。私は 学生とともに,以下のような数々の被害者中心の取組みを行ってきた。国際的 正義と社会的制度改革の関係についての実証的研究,グアンタナモ被収容者の 解放後の処遇に関する政策提言,国際紛争における性的虐待の男性被害者の正 義を前進させる戦略について人権機関に対する相談や助言,国際刑事法廷にお ける被害者の法的代理等である。これらの取組みの目的は様々であり,達成度 を評価する方法も異なる。

グアンタナモ収容所の被収容者

 例として,グアンタナモ収容所から解放された人たちへのインタビューによ る2年間の調査研究を紹介する。私たちは,被害者が収容中に合衆国のテロと の戦いで経験したこと,及び,その経験がどのような影響を生活に及ぼしたか ということを解明しようとした。私たちは,その成果を広く世に知らしめるた めに図書を出版した(3)。私たちの成果は,被収容者の処遇に関するオバマ大統 領による改革のいくつかを下支えすることになった(4)。しかし,違法収容及び 被収容者に対する拷問に関する合衆国の責任を認めることに対して敵対的な政 治情勢のために,多くの提言は採択されなかった。しかし,それが無駄だった とは思わない。

 国連は,加盟国による人権条約の遵守について監視をしている。拷問禁止条 約は,合衆国が批准している数少ない人権条約の一つである(5)。4年ごとに,

国連拷問禁止委員会が合衆国政府に対して,条約上の義務をどのように遵守し ているか質問を行う。私たちは,当該委員会に報告書を提出し,合衆国がグア

(2) For more on client─centered lawyering in human rights contexts, see Dina Francesca Haynes, Client─Centered Human Rights Advocacy, 13 CLINICAL L. REV. 379, 416 (2006).

(3) LAUREL EMILE FLETCHERAND ERIC STOVER. THE GUANTÁNAMO EFFECT: EXPOSING THE CONSEQUENCESOF U.S. DETENTIONAND INTERROGATION PRACTICES(2009).

(4) See, Robert M. Gates, A Balanced Strategy: Reprogramming the Pentagon for a New Age, FOREIGN AFFAIRS, Jan./Feb. 2009, 28.

(5) Convention Against Torture and Other Cruel, Inhuman or Degrading Treatment or Punishment, Dec. 10, 1984, 1465 U.N.T.S. 85.

(4)

ンタナモ被収容者への補償義務に違反していることについて議論した(6)。合衆 国は,被収容者を解放したものの,拷問及び違法残虐行為の結果として苦しん でいる被収容者に対して,いかなる賠償や被害救済もしていない。私たちは,

ジュネーブに赴き,合衆国政府に対してこの問題を取り上げるよう拷問禁止委 員会メンバーに働きかけた。

 私たちの要求に応え,公聴会でこの問題を取り上げたのが日本からの委員で あったことを言っておきたい。この問題は最終報告書に記載され,委員会は,

合衆国に対し,被収容者への虐待を調査すること,加害者を裁判で処罰するこ と,被害者が救済を実効的に受けることを確保するように要求した(7)。このこ との意義は,合衆国による条約上の義務不遵守を確認した独立の国際機関があ るという点にある。

 これは小さな勝利かもしれないが,一部であれ,国際的な法の支配が前進し たことを示す。政府による重大な人権侵害について正義を達成することは困難 であり,それは,数十年かかることもある。人権活動家として私たちがするこ とには,虐待とその影響を研究し文書化して,これらの問題の記録を残すこと がある。これを「証言の記録」という者もいる。法による正義が達成されない としても,被害者は,自らの体験が認識・認証されたことによりある程度被害 感情が癒されるといえる。

クメール・ルージュ訴追

 裁判による正義を求める機会がある場合,私たちは,被害者の利益のため に,彼らが必要とすること,及び望むことが考慮されるように尽力してきた。

私たちは,カンボジア特別法廷の下でカンボジアにおける民族虐殺の被害者の

(6) Center for Constitutional Rights, Human Rights Center, Int l Human Rights Law Clinic, The United States Compliance with the United Nations Convention Against Torture with Respect to Guantánamo Bay Detainees and the Cumulative Impact of Confinement, the Abuse of Detainees Post Release, and the Right to Redress, Submitted for the 53rd Session, Geneva, 3 November28 November 2014,   https://www.law.berkeley.edu/files/Berkeley_Law_and_Center_for_

Constitutional_Rights_CAT_Shadow_Report.pdf.

(7) United Nations Committee Against Torture, Consideration of Reports Submitted by State Parties Under Article 19 of the Convention, Concluding observations on the third to fifth periodic reports of United States of America, U.N. Doc. CAT/C/USA/CO/ 3─5 (Nov. 20, 2014), ¶ 14.

(5)

権利擁護に取り組む弁護士を支援した。1975〜79年の民族虐殺の指導者は国際 犯罪にかかる公訴の提起を受けていた。クメール・ルージュ体制は,カンボジ アにおけるいくつかの少数民族を狙い撃ちにしていた。私たちは被害を受けた 一つの少数民族集団を代表した。生存者・遺族は,自らの受けた犯罪被害が訴 追に含められるように願ったのである。私たちは,正義のために,その民族の 被害者の視点,つまり,その犯罪被害も裁判所によって認定されるべきである という視点から,被告人に対する訴追がなされるように嘆願書を準備した。最 終的な判決に際して,カンボジア法廷がどのように救済を構築すべきかについ て報告書を提出することによって,私たちはこの取組みを終了した(8)。  カンボジア特別法廷は,被害者個人の損害賠償判決を下す権限を持たなかっ たゆえに,唯一の救済として可能であったのは,集団的救済であった。被害者 コミュニティーに利益となる方法はあるのだ。私たちは,ガイドラインを起案 し,裁判所が救済のために被害者の求めることを考慮に入れる方法をいくつか 提示した。その中には,そのコミュニティーにおける被害者の追悼施設を設計 したり,紛争中の出来事に関する地域史を紹介する教育施設を建設することを 支援するものがあった。被害者らは,クメール・ルージュ時代における苦難と 忍耐を確認するために,彼らが救済案の形成に関わることを求めた。裁判は,

事案の複雑さのゆえに事実審理は二分され,訴訟手続は現在も継続中であ る(9)。しかしながら,被害者らに,彼らに代わって彼らの権利擁護に取り組む 者が付いたという事実は,一定の満足と救済を与えた。裁判においては,彼ら の地位が強化され,かつ,訴訟の利用によって,彼らの関心事について裁判外 で公衆の注目を集めることができた。

人権擁護者

 より最近は,世界やアメリカにおける政治的な発展のおかげで,私は,人権 擁護者を保護することに焦点を合わせた計画を進めることができた。私がこれ に取り組むのは,世界中における独裁体制の広がりが人権擁護者の取組みを脅

(8) ACCESS TO JUSTICE ASIA,CENTER FOR JUSTICE &ACC.,INT L HUMAN RIGHT LAW

CLINIC,VICTIMS RIGHT TO A REMEDY:AWARDING MEANIGFUL REPARATIONS AT THE

ECCC (2011), https://works.bepress.com/laurel_fletcher/65/.

(9) For more information on the special court called the Extraordinary Chambers in the Courts of Cambodia (ECCC) see generally About ECCC, ECCC, https://

www.eccc.gov.kh/en/about─eccc.

(6)

威にさらしているからだ(10)。活動家が市民社会を組織することができなけれ ば,人権保障は衰退し,人権侵害が増大するだろう。脆弱で社会の隅に置かれ た者への人権保障の制度を維持することについて,弁護士の役割は決定的に重 要である。学生は,人権擁護者の権利のために戦うことができ,そうすること によって,ロースクールの学生も民主主義と人権を擁護する上で役割を果たす ことが出来るとわかるのである。

 世界における独裁政府の成立によって,人権擁護者に対する物理的な攻撃が 生じてきた。独裁政府を持つ国々は,人権団体が海外資金の受取りができない よう法規制をして,彼らの活動を機能不全に陥らせている。私たちは,過去一 年で,このような国内規制が女性の権利の擁護者に与えた影響に関する報告書 を作成した。私たちは,学生チームを女性の権利の擁護者が参加する国際会議 に派遣し,インタビューを行った。学生は,国内法及び,その国内法を評価す るための国際法の枠組みを調査した。その報告書の受け手は人権資金の提供者 である。この報告書は,現地で生じている事態についての情報,及び,女性の 権利擁護者が活動を続けられるように,財源支援戦略を変更するための提案を 提供することになるだろう。

 資金提供者が私たちの報告書に如何に反応するかによって,私たちの報告書 の影響力が計られるだろう。私は,グアンタナモでの取組みのように,私たち が得た情報は他の支援目的のために利用可能であると考える。例えば,私たち の調査結果を国際人権政策に組み入れられるように,国連の人権メカニズムに 情報を提供することができる。

 最後に,学生の役割について考える。私は,クリニックにおける取組みが学 生の変化を促すものであると思う。私たちの取組みの影響は,依頼者にだけで なく,学生にももたらされる。学生には,実務における喫緊の課題に寄与する 機会を与えたいと考えている。そうすることで,彼らの取組みに緊張感を持た せ,最新の議論に触れさせ,そして,ロースクール卒業後にこの分野での実務 を続けるかどうか,また,それをどのように行うかを判断することができるよ うになると考える。

(10) CIVICUS, PEOPLE POWER UNDER ATTACK: FINDINGSFROMTHE CIVICUS MONITOR(2017); Michel Forst (Special Rapporteur on Situation of Human Rights Defenders), Report of the Special Rapporteur on the Situation of Human Rights Defenders on Best Practices for Protecting Human Rights Defenders, ¶ 28, U.N. Doc. A/HRC/31/55 (Feb. 1, 2016).

(7)

 人権侵害についての説明責任を促す取組みによって,学生は,被害者の体験 を深く理解し,その理解を被害者の救済を実現するために生かすことができる ようになる。最良の場合,クリニックは,学生に人権擁護者の役割を課し,依 頼者にとって直接の関心である複雑な問題について,学生が判断するように迫 るわけである。

 私は,学期初めに,惑星と遠くの星を模した大小2つの円を表した図を示し て,クリニックの活動の役割を説明する。大きな方を「安全地帯」,小さな方 を,「魔法が起こる場所」と説明する。私は,学生に,「私の目標は,あなたた ちを魔法の起こる場所に押し出すことだ」と伝えるのである。

 このように,学生は,チームで作業をし,その取組みが目に見えた成果を出 すときを迎える。それは,報告書を出版すること,人権機関に解決策の覚書を 示すこと,現地調査の体験をすることかもしれない。学生は,取り組んだ課題 の専門家となり,その専門性と判断を求めて頼ってくる依頼者と直接の接触を 持つことができるのである。

私たちの活動の影響

 「学生にとって」:学生は彼らの期待を超える成功体験ができる。学生は,複 雑な問題に取り組み,依頼者の目的を実現するための成果物を作り出す。彼ら は,様々な方法でこのようなサイクルを向上させていく。困難な問題に立ち向 かい,それに取り組むべき術を持っているという自信をもって専門家になる。

 「依頼者にとって」:私たちは,彼らの地位向上を達成し,被害者に正義をも たらすための救済の実現に寄与してきた。グアンタナモの被収容者の賠償のた めの取組みにせよ,カンボジア少数民族虐殺の正しい評価にせよ,人権擁護者 を機能不全にする国内法の廃止にせよ,私たちのクリニックは,被害者の声を 伝え,国際的な正義実現運動に貢献してきた。「私たちは世界を変える。一学 期で。」

(8)

Ⅱ 国内法改革の場としてのロースクール・クリニック

ジェフリー・セルビン(11)

 アメリカのロースクール・クリニックを,法制度改革の推進の場として論じ る。この講演は,次の順序で行う。第1に,臨床法学教育に関わってきた私自 身のバックグラウンドと関心事項についてである。第2に,国内法改革の場と してのクリニックの起源と原理について述べる。第3に,現在,政策支援クリ ニックで行っているプロジェクトのいくつかを紹介し,このクリニックが実務 でどのように活動しているかを示し,その中での学生の役割についても述べ る。第4に,このクリニックが直面している課題のいくつかを挙げて私の講演 を結びたい。

1  バックグラウンド

ハーバード法律サービスセンター

 臨床法学教育について私の関心が生まれたのは,1987年に,第2学年のロー スクール学生として,法律サービスセンターに参加したときであった。同セン ターは,ハーバード・ロースクールと提携した地域密着型の民事法律扶助クリ ニックである(12)

 私が大変に幸運であったのは,ギャリー・ベロー(Gary Bellow)とジー ン・チャーン(Jeanne Charn)の指導監督の下,2年間はロースクール学生と して,1年間は修了生教育助手として学ぶことができたことである。彼等2人 は,アメリカにおける現代臨床法学教育運動の創始者である(13)。ハーバード のリーガル・クリニックには,当時私をひきつけ,今日まで影響を及ぼしてい

(11) Jeffrey Selbin is a Clinical Professor of Law and Director of the Policy Advocacy Clinic at the University of California Berkeley School of Law. He delivered these remarks during an invited lecture at the Waseda University Institute of Comparative Law, May 25, 2017.

(12) LEGAL SERVS. CTR., http://www.legalservicescenter.org/ (last visited Sept. 16, 2017).

(13) For representative contributions, see Gary Bellow, Steady Work: A Practitioner s Reflections on Political Lawyering, 31 HARV. C.R.─C.L. L. REV. 297 (1996); Jeanne Charn, Service and Learning: Reflections on the Three Decades of the Lawyering Process at Harvard Law School, 10 CLINICAL L. REV. 75 (2003).

(9)

る3つのカギとなる特徴があった。

 まず,地域密着ということであった。特に重要なのは,このクリニックがロ ースクール付近に所在していなかったことである。クリニックはボストンの低 所得者の居住区域にあり,このことは,クリニックが教育と同価値の任務とし て,地域社会に法律サービスを提供することを重視する姿勢を示すものであっ た(14)

 次に,戦略的なサービス提供モデルであった。重点事件の訴訟代理,及び医 療と法の協力などの革新的な方法によって,クリニックは資源が足りない状況 でサービスの効果を最大化する努力を優先してきた(15)

 3つ目に,実証性の志向である。私は,証拠の裏付けのある実証性によっ て,指導者が臨床教育と依頼者サービスの両方の質及び結果を評価することに 専心してきたと思う(16)。これは,過去及び現在においても,法律扶助と臨床 教育のコミュニティーにおいて珍しいことである。

 私は若い臨床法学教育の指導監督者として,イースト・ベイ地域法律センタ ー(East Bay Community Legal Center, EBCLC)に,地域社会との密着性,戦 略的思考,そして実証性志向を,その活動の重要な要素として持ち込んだ。

(14) See Charn, supra note 13, at 100 (analogizing the Legal Services Center to a teaching hospital)

(15) See Gary Bellow, Turning Solutions into Problems: The Legal Aid Experience, 34 NAT L LEGAL AID & DEFENDER ASS N BRIEFCASE 106, 121─22 (1977)(advocating focused representation); Gary Bellow & Jeanne Charn, Paths Not Yet Taken:

Some Comments on Feldman s Critique of Legal Services Practice, 83 GEO L.J. 1633

(1995)(describing focused case representation as a strategic delivery model preferable to the first─come, first─served model of many legal aid offices).

(16) See Charn, supra note 13, at 113 (describing the Legal Services Center as a laboratory for experimenting with the delivery of legal services). For descriptions of the clinic as a site of inquiry regarding teaching and service, see Jeanne Charn

& Jeffrey Selbin, Legal Aid, Law School Clinics and the Opportunity for Joint Gain, MGMT. INFO. EXCH. J., Winter 2007 at 28, https://ssrn.com/abstract=1126444;

Jeffrey Selbin, Josh Rosenthal & Jeanne Charn, Access to Evidence: How an Evidence─Based Delivery System Can Improve Legal Aid for Low─and Moderate─

Income Americans, CTR. FOR AM. PROGRESS, https://ssrn.com/abstract=1868626;

and Jeffrey Selbin & Jeanne Charn, The Clinic Lab Office, 2013 WIS. L. REV. 145

(2013), https://ssrn.com/abstract=2229976.

(10)

EBCLC

 EBCLCは,1988年に,カリフォルニア大学バークレー校ロースクールの学 生により,教育と法律サービスの二重の使命をもって設立された(17)。それは,

早稲田大学法科大学院と協力関係にある弁護士法人早稲田リーガルコモンズと 似ているところである。EBCLCは,ロースクールと正式の連携関係にあり,

ロースクールは経済的支援を提供している。

 私は1990年に,HIVに苦しむ低所得者が必要とする法律サービスを提供す るプロジェクトに着手し,約10年携わることとなった(18)。その後,数年間は 臨床部門ディレクターを務め,さらにその後5年間は,臨床部門執行ディレク ターを務めた。また,2015年までロースクールの臨床プログラム教員ディレク ターを務めてきた。

 ハーバードの地域密着型クリニックのように,EBCLCは,大量の法律扶助 案件を扱う事務所である。そこでは,学生が,緊密な教員の指導監督の下,主 に私法問題を広範囲にわたって低所得依頼者を支援している(19)。現在,毎年

100人以上のロースクールの学生がこのプログラムに参加し,1年に何千人も

の低所得依頼者に対応している(20)

 EBCLCは,医学教育における研修病院に相当するロースクールの学生の実 務教育機関となっている。EBCLCは,臨床法学教育を提供するクリニックと してUCバークレー校ロースクールで最も規模の大きなものであり,サンフラ ンシスコ湾東部地区で無料の法律ービス提供機関として最大規模である。ここ でのすべての活動が,直接に現在の私の仕事につながっている。

(17) EAST BAY COMMUNITY L. CTR., https://ebclc.org/ (last visited Sept. 16, 2017); Angela Harris, Margaretta Lin & Jeff Selbin, From the Art of War to Being Peace: Mindfulness and Community Lawyering in a Neoliberal Age, 95 CALIF. L.

REV. 2073, 2093 (2007), https://ssrn.com/abstract=1024004 (for a short history of EBCLC).

(18) Jeffrey Selbin & Mark Del Monte, A Waiting Room of Their Own: The Family Care Network as a Model for Providing GenderSpecific Legal Services to Women with HIV, 5 DUKE J. GENDER L. & POL Y 103 (1998), https://ssrn.com/abstract

=1015861.

(19) EAST BAY COMMUNITY L. CTR., supra note 17.

(20) Id.

(11)

2  政策支援クリニック

 EBCLCは長年に亘り,低所得地域における社会正義を最大限に実現するこ とに取り組んできた。

 直接の法律サービス提供者として,EBCLCの弁護士や学生は,低所得層の 依頼者に影響を及ぼす広範囲にわたる制度上の問題を見てきた。そのすべて は,必ずしも個々の事件の訴訟提起や伝統な制度改革訴訟で,対処することが できるものではない。

 政策支援は当然の取組方法であるが,地域社会の圧倒的な数の案件に対処し ながら,政策支援に時間を取ることは困難であった。市議会や州議会に対して 制度改革を提言することは,ほとんど常に後回しになってしまう。

 数年後,私たちは,このような問題を解決しようと政策支援クリニックを進 め始めている(21)。私たちは,直接的なサービス活動をする学生の中から,あ る学生グループを選び出し,政策分野に参加できるよう教育・訓練するため に,様々な手法を試している。

指導原理

 当初より,私たちは,ハーバードやEBCLCでの経験から得た一連の指導原 理によって,新しいクリニックを運営してきた。

 第1に,ボトムアップである。言い換えれば,私たちは,各所における地域 構成員や擁護者によって認識された問題に対応してきた。州や国のレベルで関 与することを考える前に,私たちは,現場のレベルで特徴的にみられることか ら始めるのである。それは,私たちの取組みを問題に深く根差すようにするた めである。

 第2に,問題解決方式である。私はこれを特定の方法に固執しないことと捉 える。よく言われるように,金槌を持って打つべき釘を探すのではなく,むし ろ,依頼者の利益を推進することができるならば,どのようなものでも梃子と して使いその政策目的を実現するということである。

 第3に,依頼者指向型である。法律サービスの結果を向上させる面において も,学生に対して法専門職の模範としての面においても,地域集団に対して責 任をもって対応することが重要であると考える。私たちは哲学の帝王でもなけ

(21) POL Y ADVOC. CLINIC, https://www.law.berkeley.edu/experiential/clinics/

policy─advocacy─clinic/ (last visited Sept. 16, 2017).

(12)

れば,人々から遊離した社会改革者でもない。私たちは現実の人々のための活 動に取り組んでいる。

 以上のバックグラウンドとこれらの指導原理を念頭に置いて,簡潔に,現在 の政策支援クリニックのプロジェクトを述べることにする。

3  プロジェクト

 アメリカでは刑事司法制度と貧困は直接に関係しているので,─また,私た ちは,現在,刑事司法改革のための政策支援の経路を持っているので─私たち のクリニックの取組みの大部分は,1つないし複数の刑事司法制度と関わって きた。

 過去数年間に,クリニックの学生たちは,以下のような取組みをしてきた。

 (1) ホームレスを罰する法律の廃止

 (2) 人種的少数者の低所得地域における警察の職務責任の向上  (3) 保釈保証金制度の改革

 (4) 少年司法制度における少年犯の家族に科される罰金の廃止

(1) ホームレスの犯罪化の廃止

 ホームレスの人びとは,食と住を確保する上で気持ちの滅入る問題に直面す る。ホームレスの人びとは座込み,睡眠,食料の共有,そしてトイレの使用と いった生活の基本的動作を,公共の場で行わざるをえない。自治体条例はその ような行為を処罰対象としており,そのような法の執行と政策は問題をさらに 悪化させる(22)

 1980年代からアメリカでは,カリフォルニア州も含めて,ホームレスの犯罪 化が増加している(23)。私たちの依頼者は,ホームレスを経験している者の人 権を擁護するNPOである(24)

 依頼者は,カリフォルニア州において,ホームレスを狙い撃ちにする州法が 制定されていること,及びそれらの州法が選択的に執行されていることについ

(22) NAT L LAW CTR. ON HOMELESSNESS & POVERTY, HOUSING NOT HANDCUFFS: ENDING THE CRIMINALIZATIONOF HOMELESSNESSIN U.S. CITIES, https://www.nlchp.org/

documents/Housing─Not─Handcuffs (last visited Sept. 16, 2017).

(23) Id.

(24) W. REGIONAL ADVOC. PROJECT, http://wraphome.org/ (last visited Sept. 16, 2017).

(13)

て調査するように求めた。反ホームレス法の制定について調査するため,学生 は,ホームレスと結びつけられた活動を犯罪化する地方自治体の条例に関する 情報を集めた。法執行の傾向を調べるため,学生は,カリフォルニア州司法省 及び連邦捜査局からの逮捕情報を検討し,いくつかの市で詳細なケーススタデ ィを行った。

 2015年に私たちは,政策報告書を公表した(25)。この報告書は,反ホームレ ス法の制定が急激に増加していること,及びホームレスが公衆の面前に存在す ること自体を厳しく罰する法執行が増加していることを資料によって示した。

 報告書は,カリフォルニア州でのこの問題への関心を高めた。例えば,学生 たちは,サンフランシスコの市政監視委員会で,これらの法執行がホームレス に悪影響を与えたことについて,証言を求められた。また,少なくとも3つの 別のロースクールと1つのNGOがそれぞれの州におけるホームレスの犯罪化 について,関心を呼び起すために私たちと同じ方法を採用した(26)

(2) 警察の職務責任

 毎年,アメリカでは,警察官が1000人以上を殺害し,1万人以上を傷害して いる(27)。これは,目新しいことではないが,正当化されえない多くの事例を

(25) JEFFREY SELBIN, MARINA FISHER, NATHANIEL MILLER & LINDSAY WALTER, CALIFORNIA S NEW VAGRANCY LAWS: THE GROWING ENACTMENTAND ENFORCEMENT OF ANTI─HOMELESS LAWSIN THE GOLDEN STATE. (2015), https://ssrn.com/

abstract=2558944.

(26) ALLARD K. LOWENSTEIN INT L HUMAN RIGHTS CLINIC, YALE LAW SCH., FORCED INTO BREAKINGTHE LAW : THE CRIMINALIZATIONOF HOMELESSNESSIN CONNECTICUT

(2016), h t t p s : / / l a w . y a l e . e d u / s y s t e m / f i l e s / a r e a / c e n t e r / s c h e l l / criminalization_of_homelessness_report_for_web_full_report.pdf, Sara Rankin, Scott MacDonald & Justin Olson, Washington s War on the Visibly Poor: A Survey of Criminalizing Ordinances & Their Enforcement (Seattle Univ. Sch. of Law Research Paper No. 15─19, 2016), https://ssrn.com/abstract=2602318;

Tony Robinson, No Right to Rest: Police Enforcement Patterns and Quality of Life Consequences of the Criminalization of Homelessness, URB. AFF. REV. (prepublished Feb. 5, 2017), http://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/1078087417690833;

and AM. CIVIL LIBERTIES UNION, DECRIMINALIZING HOMELESSNESS: WHY RIGHTTO

REST LEGISLATION ISTHE HIGH ROADFOR OREGON(2017), https://aclu─or.org/

sites/default/files/field_documents/aclu─decriminalizing─homelessness_full─

report_web_final.pdf.

(27) FRANKLIN E. ZIMRING, WHEN POLICE KILL(2017).

(14)

含め,警察の行為がこのような事態への関心をより一層高めている。1960年代 の市民の暴動以来,政府関係者は,警察行為の監視強化や警察に関する社会の 信頼形成を進めてきた(28)

 この困難な課題に対して,多くの都市は,市民による監視委員会を創設し た。これは,市民からの不満を調査し,警察官に対する懲戒処分を調査・勧告 する独立機関である(29)。しかしながら,長年にわたって裁判所や立法府は,地 方自治体の監視委員会の権限を弱体化し,人的物的な資源を減少させてきた。

 私たちの依頼者は,警察の職務責任を向上させるためにオークランドで形成 された個人と地域グループの連合体である。オークランドはサンフランシスコ に近く,面積が大きく多様性に富むカリフォルニア州の都市である(30)。依頼 者は,オークランドで独立した警察監視委員会を創設するために,草の根運動 への技術的支援を求めていた。私たちの学生は,国内で最も独立性が高くかつ 最も強力な市民監視機関を設立するために調査を実施し,かつ,その住民投票 条例案の重要事項の起案を支援した

 2016年11月に,大統領選挙の結果に注意が集中する中,オークランドの投票 者は,新条例を圧倒的多数で承認した(31)。そのとき以来,学生たちは,新条 例のためのより詳細な授権法規の起案を支援してきている。また,授権法規に 関して市議会に提言文書を提出した。提言の多くは,現在の条例案の中に採用 されており,市議会で検討中のものである(32)。学生たちは,市議会のいくつ かの委員会において条例の諸論点について証言してきた。

(28) See Samuel Walker, The History of Civilian Oversight, in POLICE ACCOUNTABILITY: THE ROLEOF CITIZEN OVERSIGHT 3(2001), https://apps.americanbar.org/

abastore/products/books/abstracts/5330089samplech_abs.pdf.

(29) Id.

(30) COALITIONFOR POLICE ACCOUNTABILITY, OAKLAND, CA, https://coalitionforpolic eaccountability.com/ (last visited Sept. 16, 2017).

(31) Kat Ferreira & Cinque Mubarak, Celebrating Measure LL: Oakland’s

“Gateway Reform for Citizen Oversight into Police Misconduct, OAKLAND VOICES

(Nov. 11, 2016), http://oaklandvoices.us/celebrating─measure─ll─oaklands─

gateway─reform─citizen─oversight─police─misconduct/.

(32) Policy Advocacy Clinic, U.C. Berkeley School of Law, Public Comment on the Police Commission Enabling Ordinance to City of Oakland Public Safety Committee

(Mar. 7, 2017), https://coalitionforpoliceaccountability.files.wordpress.

com/2017/02/uc─berkeley─law─policy─advocacy─clinic_public─comment─on─

police─commission─ordinance.pdf.

(15)

(3) 保釈金改革

 アメリカは,公判前勾留の制度が悪いことで世界をリードしている(33)。裁 判官は保釈金(保釈保証金)(bail)の納付を条件として,被告人を公判前勾 留から解放する。実務上,商業的な保証代理業者が保釈金の納付に代えて,被 告人から手数料を受け取り,保釈金保証書(bail bond)を裁判所に提出して保 釈が執行されるが,その実態はそれに携わる者以外に,ほとんど知られていな い(34)

 カリフォルニアでは,半数以上の拘禁者は,有罪判決を受けていない─なぜ なら,保釈保証金が捻出できないために拘禁されているからだ─(35)。いくつ かの州が保釈金の使用を制限ないし廃止し始めているが,改革は遅々としてお り,州によってまちまちである。カリフォルニアの拘置所が満杯になり,保釈 金改革の議論が復活してきた。

 地方自治体,州,及び全国の依頼者のために,学生たちは,制度改革の提言 を含む,カリフォルニアの保釈金制度についての調査メモを作成した(36)。メ モの準備にあたり学生は,①保釈保証金に関する国際人権法及び比較法の標 準,②連邦保釈金法改正や州保釈金改革への取組み,③カリフォルニアにおけ る保釈金制度や従前の改革の取組みについて,調査した。

 学生は,何百もの保釈審理を見学し裁判実務を文書にまとめ,保釈金に関し 困難を経験した多くの低所得層の被告人と直に面談した。この調査の全貌は,

昨月,ある依頼者の公表した報告書の中で特集されている。そこでは,カリフ ォルニアにおける保釈保証金の悪影響についての質量ともに優れた考察が含ま れている(37)。この取組みが一つのきっかけになって,現在,カリフォルニア 州議会は,保釈金に関する包括的な改革のパッケージを検討している(38)

(33) See PRETRIAL DETENTION: HUMAN RIGHTS, CRIMINAL PROCEDURAL LAWAND

PENITENTIARY LAW, COMPARATIVE LAW(Piet Hein van Kempen ed., 2012)

(comprehensive overview of pretrial detention practices worldwide).

(34) Id.

(35) HUMAN RIGHTS WATCH, NOTIN ITFOR JUSTICE : HOW CALIFORNIA S PRETRIAL

DETENTIONAND BAIL SYSTEM UNFAIRLY PUNISHES POOR PEOPLE(2017).

(36) Mel Gonzalez, Da Hae Kim & Danica Rodarmel, Policy Advocacy Clinic, U.C.

Berkeley School of Law, Background on Money Bail and Pretrial Detention to Human Rights Watch (June 30, 2016)(memorandum on file with author).

(37) HUMAN RIGHTS WATCH, supra note 35.

(38) S. 10, 2017─18 Reg. Sess. (Cal. 2017); Governor Brown, Chief Justice Cantil─

(16)

(4) 少年更生負債

 少年更生制度の目的は,少年犯が生産的な社会の一員となることを支援し,

公共の安全を守ることである(39)。しかしながら,多くの地方自治体は,少年 更生制度において少年犯の家族に,料金の負担をさせている(40)。この料金は,

経済的苦境を生じさせ,家族関係をひずませており,制度の目的は瓦解してい る(41)

 少年犯の身柄拘束,保護観察,監督,電子的監視,麻薬テスト,公設弁護の ために,少年犯の家族は何千ドルもの負債を負うことがある(42)。料金の支払 いができない家族の少年犯は,さらなる処罰と高額負債に直面し,より厳しい 更生処遇と深い貧困に追いやられてしまう(43)。更生制度の利用料金は再犯率 の増加と関連しており,少年更生制度の目的である社会復帰や公共の安全を阻 害している(44)

 少年更生団体の連合のために,私たちは,カリフォルニアの少年更生料金の 有害な影響について調査し,2つの報告書を発表した(45)。学生は文献を検討 Sakauye, Senator Hertzberg and Assemblymember Bonta Commit to Work Together on Reforms to California’s Bail System, OFF. OF GOVERNOR EDMUND G.

BROWN JR. (Aug. 25, 2017), https://www.gov.ca.gov/news.php?id=19917;

Marisa Lagos, Bail Reform Gets Backing of Governor, Chief Justice─But Is Delayed to 2018, KQED NEWS(Aug. 29, 2017).

(39) See, e.g., Youth in the Justice System: An Overview, JUV. L. CTR.,

   http://jlc.org/news─room/media─resources/youth─justice─system─

overview (last visited Sept. 16, 2017).

(40) JESSICA FEIERMANET AL., JUVENILE LAW CTR., DEBTORS PRISONFOR KIDS? THE HIGH

COSTOF FINESAND FEESINTHE JUVENILE JUSTICE SYSTEM(2016).

(41) POLICY ADVOCACY CLINIC, U. C. BERKELEY SCHOOLOF LAW, MAKING FAMILIES PAY: THE HARMFUL, UNLAWFUL, AND COSTLY PRACTICEOF CHARGING JUVENILE

ADMINISTRATIVE FEESIN CALIFORNIA(2017)[hereinafter MAKING FAMILIES PAY], https://ssrn.com/abstract=2937534.

(42) Id.

(43) FEIERMANETAL., supra note 40, at 3.

(44) Alex R. Piquero & Wesley G. Jennings, Justice System─Imposed Financial Penalties Increase the Likelihood of Recidivism in a Sample of Adolescent Offenders, 15 YOUTH VIOLENCE & JUV. JUST. 325 (2017).

(45) POLICY ADVOCACY CLINIC, U. C. BERKELEY SCHOOLOF LAW, HIGH PAIN, NO GAIN: HOW JUVENILE ADMINISTRATIVE FEES HARM LOW─INCOME FAMILIESIN ALAMEDA

COUNTY, CALIFORNIA(2016)[hereinafter HIGH PAIN, NO GAIN], https://ssrn.

(17)

し,重要な地方自治体の関係者と面談し,少年事件の法廷審理を見学し,カリ フォルニアの全58人の保護観察部長に調査を行い,更生料金の実施実態に関す る証拠を得るための法的請求を行った(46)

 少年更生制度にある少年の多くは,更生料金を支払うことのできない低所得 世帯出身であるが,それでも自治体は,なんとか料金を徴収しようとすること がよくみられる(47)。負債のために自宅を売却し,破産申請を余儀なくされた 後でさえも,料金徴収を試みた自治体もあった(48)。更生料金は,白人少年と 比べて少年更生制度におかれることの多いアフリカ系アメリカ人の少年や,ラ テン系アメリカ人の少年の家族に偏ってその害悪を与えている(49)。自治体は,

実態として,更生料金からわずかの収入しか得ていないが,料金収入のほとん どは,他の家族から更生料金を徴収する費用に消えている。

 取組みの成果として,次のことを達成した。

・ 大きな自治体では,少年更生料金の賦課徴収をやめ,3万2千の家族を,合 計4千万ドル以上の負債から解放した(50)

・ カリフォルニア州議会は,州全体で少年更生料制度を廃止する法案を検討し com/abstract=2738710; MAKING FAMILIES PAY, supra note 41.

(46) HIGH PAIN, NO GAIN, supra note 45; MAKING FAMILIES PAY, supra note 41.

(47) HIGH PAIN, NO GAIN, supra note 45; MAKING FAMILIES PAY, supra note 41.

(48) In re Rivera, No. 8 :11─bk─22793─TA (Bankr. C.D. Cal. Sept. 16, 2013), aff’d sub nom; Rivera v. Orange Cty. Prob. Dep t (In re Rivera), 511 B.R. 643 (B.A.P.

2014), rev’d, 832 F.3d 1103 (9 th Cir. 2016).

(49) MAKING FAMILIES PAY, supra note 41.

(50) Author s calculation based on documents obtained from fee moratoriums and repeals in five counties: ALAMEDA COUNTY., CAL., ORDINANCE NO. 35 (2016), http://

www.acgov.org/board/bos_calendar/documents/DocsAgendaReg_07_12_16/

GENERAL%20ADMINISTRATION/ Regular%20Calendar/CAO_Auditor_

Probation_PUBDEF_236774.pdf (codified at ALAMEDA COUNTY ADMIN. ORDINANCE

CODE§ 2.42.190); CONTRA COSTA CTY., CAL., RES. NO. 606 (2016)(enacted), http://64.166.146.245/docs/2016/BOS/20161025_813/27510% 5 FBO% 5 FJUV ENILE%20FEES%20CHARGED%20BY%20THE%20 PROBATION%20 DEPARTMENT% 2 Epdf; SANTA CLARA COUNTY., CAL., RES. NO. 6 (2017)

(enacted), http://sccgov.iqm2.com/Citizens/Detail_LegiFile.aspx?ID=84679;

SACRAMENTO COUNTY, CAL., RES. NO. 2017─0171 (2017)(enacted), http://www.

sccob.saccounty.net/Ordinances/2017─0171.pdf; Sonoma County, Cal., Res. No.

20151201─1 (2017)(enacted), http://sonoma─county.granicus.com/

MetaViewer.php?view_id=2 &clip_id=710&meta_id=221278.

(18)

ている(51)

・ 連邦司法省は,合衆国全土にわたり地方自治体に対して勧告を発表し,そこ では,少年更生制度の下での罰金や更生料金から,少年犯とその家族を法的 に保護する義務を述べている(52)

学生の役割

 以上に例示した中で,学生が様々なプロジェクトで果たしてきた役割に言及 してきたが,もう少しそれについて付言したい。セミナーやクリニックにおい て,学生はクリニックのプロジェクトや目的に関係のある実体法や政策技術を 学修している。

 私たちはセミナーで,プロジェクトの領域に特化したかなりの数の制定法・

規則・判例を初期段階で教える。私たちは,また,学生に対して,幅広く重要 な法的・政策的方法の訓練をする。そこには,プロジェクトマッピング(目 標,利害関係者,利益得失,広報対象者,及び戦略を包括的に設定),面談,

事実調査,法的・政策的調査が含まれる。

 政策支援クリニックでは,戦略や技術を磨き展開する。そこには,依頼者や 専門家との面談,法的・社会科学的な調査分析の実行,関係者(地域住民,法 政策とその提言組織,行政当局,学者等)からの意見聴取,口頭での意見提 供,法律・行政規則の起案,社会教育・メディア広報・集団代表・関係者との 連携関係の形成への参加が含まれる。

 学生は,多くの学修課題を文書で提出する。例えば,学生同士の討論のため の資料作成,依頼者のための内部文書の作成,依頼者の目的を実現するための 情報発信文書の作成(政策概要,調査報告書,実務マニュアル,権利の啓発文 書等)がある。

 大部分の学生にとって,クリニックは,地方自治体,州,及び全国レベルで の改革運動を支援する方法を学ぶユニークな機会である。同時に,学生が法律 や公共政策に対して影響力を持つこと,及びその限界を知る機会でもある。

(51) S. 190, 2017─18 Reg. Sess. (Cal. 2017).

(52) U.S. DEP TOF JUSTICE, OFFICEFOR CIVIL RIGHTS, ADVISORYFOR RECIPIENTSOF

FINANCIAL ASSISTANCEFROMTHE U.S. DEPARTMENTOF JUSTICEON LEVYING FINESAND

FEESON JUVENILES(2017), https://ojp.gov/about/ocr/pdfs/AdvisoryJuvFinesFees.

pdf.

(19)

4  課題

 結びとして,政策提言クリニックが直面するいくつかの課題について言及し ておく。

未知の領域

 第1に,アメリカには,約24もの政策立法クリニックがあるにもかかわら ず,ほとんどのクリニックでは,私たちのとるような,ボトムアップ,問題解 決方式,依頼者指向型の方法を取ることがない。

多面的なプロジェクト

 第2に,ボトムアップのプロジェクトであるからこそ,多面的になる。これ まで述べてきたように,私たちは,いくつかの法分野を横断して問題に取り組 んできた。国内法改革に従事するかなり多くのロースクールのクリニックは,

単一の法分野に焦点を絞っている。指導者にとっては,1つの法分野を極める ことの方が簡単であり,その分野内で学生を訓練・監督する方が容易である。

学生にとっても,同じ分野で活動する方が,よりためらいなく相互学修するこ とができる。

複数の支援モデルによるアプローチ

 第3に,問題解決方式であるからこそ,複数の支援モデルになる。私たち は,プロジェクトの内外で異なる複数の支援戦略を取る。アメリカにおける国 内法クリニックの多くは,単一の支援方式を利用する。彼らは,訴訟を提起し たり,行政手続において依頼者を代理したりする。あるいは,取引問題を扱 う。政策クリニックでさえ,この観点から,一つの次元にとどまりがちであ る。例えば,州の立法に焦点を絞ってしまうことだ。ここでも,一つの支援方 法で行う方が,学生の訓練・監督が容易である。

学際的なチーム構成

 最後に,プロジェクトが学際的であることから,クリニックの役割が時の経 過とともに,またプロジェクト毎に変化する。私たちは,困難な社会問題に取 り組もうとしている。そこでは,しばしば,複数の学問分野を横断する独創的 な解決法が要求される。しかし,専門職毎に異なる技能と規範があるために,

複数の専門分野に関わって,学生を訓練・監督することは簡単でない。

(20)

 今までのところ,私たちは,学生教育と依頼者サービスに目標を合わせるこ とに比較的成功してきた。しかし,監督教員,学生,そして依頼者のために,

モデルを単純化する必要性を感じている。

参照

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