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ビ ジ ネ ス リ ス ク ー 海 外 で の 失 敗 事 例 か ら学 ぶ もの(中)

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(1)

ビ ジ ネ ス リ ス ク

ー 海 外 で の 失 敗 事 例 か ら学 ぶ もの(中)

橋 本 光 憲

3.ビ ジ ネ ス リ ス ク の 具 体 的 事 例 (そ の2)金 融 関 係

(1)〜(6)

II金 融 関 係

(1)邦 銀 の 国 際 業 務

(個 別 企 業 で は な い が 対 象 とす る) オ ー バ ー プ レゼ ン ス は 昔 語 り

(1987‑)世 界 各 地

(2)ア ル ゼ ン チ ン債 の 不 払 い

「サ ム ラ イ 債 」(円 建 て 外 債)の 落 と し穴 (2001‑)ア ル ゼ ンチ ン,日 本 (3)プ リ ンス トン債 事 件

高 リ ス ク 運 用 で 損 失,後 日 大 半 が 救 済 へ (1990?一 一2002)ニ ュ ー一ヨ ー ク,日 本 (4)大 和 銀 行 の お 粗 末

① 大 和 銀 行 ニ ュ ー ヨ ー ク 事 件

(2)

(1995‑1996)米 国,日 本

② 大 和 銀 行 株 主 代 表 訴 訟 (!995‑2001)日 本 (5)山 一 証 券 の 退 場

四 大 証 券 の 一 角,崩 壊

(1997‑1999)日 本,そ の 他 (6)ベ ア リ ン グ ズ 事 件

名 門 銀 行 を潰 した デ ィ ー ラ ー,影 響 は 日本 に も (1995)シ ン ガ ポ ー ル,英 国,日 本

(7)エ ン ロ ン破 綻 の 余 波

(2001‑)米 国,日 本

ビ ジ ネ ス リス ク の 具 体 的 事 例 一 皿(1) 邦 銀 の 国 際 業 務

オ ー バ ー プ レゼ ン ス は 昔 語 り 時 期1989一

場 所 世 界 各 地

資 料1.牧 野 昇 編 『ク ロ ニ ク ル 日 本 経 済 事 典1945‑‑1994』 東 洋 経 済 新 報 社, 1996年,397ペ ー ジ

2.全 国 銀 行 協 会 連 合 会 調 査 部 編 『図 説 わ が 国 の 銀 行 』 平 成3年 改 訂 版,1991年,178ペ ー ジ

3.同 上,平 成12年 改 訂 版,2000年,162ペ ー ジ 4.「 日本 経 済 新 聞 』

2002.7.11,12,13邦 銀 縮 む 国 際 業 務 上,中,下 5.『 ニ ッキ ン』(日 本 金 融 通 信 社)

2002.10.!4「 世 界 の 主 要100大 金 融 機 関 ア メ リ カ ン ・バ ン カ ー 調 べ 」

364国 際経営論集No.252003

(3)

事 例(ケ ー ス)

世 界 商 業 銀 行 番 付,邦 銀 が 上 位 独 占

20日 発 売 の 米 週 刊 誌 ビ ジ ネ ス ・ウ ィ ー ク(6月27日 号)は,世 界 の 商 業 銀 行 上 位50行 の ラ ン キ ン グ(1987年)を 発 表 し た 。 … …

総 資 産 に よ る 比 較 で は,第 一 勧 銀 が2669億 ドル で 第 一 位,続 い て 住 友(2506億 ドル),富 士(2441億 ドル),三 菱(2275億 ドル),三 和

(2182億 ドル)の 順 と な っ て い る 。

十 位 以 内 に 顔 を 出 し た 日本 以 外 の 銀 行 は,6位 の ケ ス ・ナ シ ョ ナ ル ・ ド ・ク レ デ ィ タ グ リ コ ル(フ ラ ン ス),7位 の シ テ ィ コ ー プ(米 国),9位 の バ ン ク ・ナ シ ョナ ル ・ ド ・パ リ(フ ラ ン ス)の み 。

ビ ジ ネ ス ・ウ ィー ク 誌 は 「昨 年 の 敗 者 は 明 らか に 米 国,カ ナ ダ,英 国 の 商 業 銀 行 だ 」 と述 べ,そ の 要 因 と して,第 三 世 界 債 務 国 に 対 す る 貸 し倒 れ 引 当 金 の 積 み 増 し を 指 摘 した 。 ま た,邦 銀 が 上 位 に 大 量 進 出 した 背 景 と して,日 本 の 大 幅 貿 易 黒 字 に よ る 資 金 流 入 と円 高 ドル 安 で 銀 行 の 資 産 評 価 が 高 ま っ た こ と を挙 げ た 。(『朝 日新 聞 』 昭 和63年6月

18日=共 同 通 信 提 供)

(資 料1) こ の 記 事 が 書 か れ た の は1988(昭 和63)年,す な わ ち1987年10月19日(月), ニ ュ ー ヨ ー ク証 券 取 引 所 の 株 式 暴 落(ブ ラ ッ ク ・マ ン デ ー)の 一 年 余 後 で あ

る 。 当 時,世 界 の 商 業 銀 行 の 総 資 産 上 位 十 行 の 中,7行 を 独 占,オ ー バ ー プ レゼ ン ス を非 難 さ れ た の で あ っ た 。

ち な み に,2001年 度 で は 相 次 い だ 金 融 統 合 に よ り,漸 くみ ず ほ ホ ー ル デ ィ ン グ ス(第 一 勧 銀,富 士,興 銀)が1位,三 井 住 友 銀 行(住 友,さ く ら)が 3位i三 菱 東 京 フ ァ イ ナ ン シ ャ ル ・グ ル ー プ(三 菱,東 銀,三 菱 信 託)が6 位 に 返 り咲 い た が,後 は14位 のUFJホ ー ル デ ィ ン グ ス(三 和,東 海,東 洋 信 託)が20位 以 内 に 留 ま っ て い る だ け と な っ て い る 。

こ れ を邦 銀 の 海 外 拠 点 推 移 で 見 る と,以 下 の よ う に な る 。

(4)

邦銀 の海外拠点推 移(各 年6月 末 日現在〉

(資料:週 刊 『金融財政事情 』 各8月 第1週 号) 支 店(銀 行数) 事 務 所,出 張 所 現地 法人 合 計(増 減)

1955 184(25) 323 53 560

1990 296(44) 442 276

1,014(454‑)

1995 395(55) 393 367 1,155(141)

2000

205(?)

244 273 722(‑433}

2002 140(?} X68 ? ?(?)

?は 計数未詳 を示す

な お,在 日外 国 銀 行 の 支 店 数 も, い る 。

こ こ数 年 間,緩 や か な減 少傾 向が 続 い て

資 料4を 集 約 す る と,次 の よ う にな る。

上 一色 あせ る存 在 感 体 力 消 耗 相 次 ぎ撤 退

邦 銀 の 国 際 業 務 が 縮 んで い る 。 不 良 債 権 処 理 で 体 力 を消 耗,海 外 拠 点 や貸 し出 しの大 幅 な リス トラ を迫 られ て い るた め だ。

中 一外 貨 繰 りに不 安 潜 む 日本 プ レ ミア ム

ジ ャパ ン プ レ ミア ム(邦 銀 向 け上 乗 せ 金 利)は,2000年 以 降 は ほ ぼ 解 消 して い る。 だが,信 用 力 の低 下 で,必 要 な資 金 を欧 米 金 融 機 関 か ら調 達 す る こ とが 難 し くな っ て い る。

下 一 中 国 ビジ ネ ス に活 路 進 出支 援,利 益 薄 く

期 待 が 大 きい 中 国市 場 で の業 務 も視 界 は 開 け て い な い 。 商 売 の う まみ は ま だ小 さい 。 商 機 へ の期 待 は大 き く膨 らむが,リ ス ク も 潜 ん で い る 。

教 訓(レ ツ ス ン)

か っ て,邦 銀 の ユ ー ロ 預 金 の シ ェ ア は,ポ ン ド 換 算5804億 ポ ン ド の 37.9%も 占 め て い た 。(ユ987.6.30現 在,資 料2)そ れ を 元 手 に,邦 銀 は 366国 際 経 営 論 集No.252003

(5)

外 国 の優 良企 業 へ の融 資 に まで 進 出 し,ハ ラ キ リ ・ボ ン ドの よ うな 出血 競 争 を行 っ た。

しか し,大 和 銀 行 ニ ュ ー ヨー ク事 件(1995年)を 契 機 と して,ジ ャパ ン ・プ レ ミア ム が 高 騰 し,97年 秋 の 金 融 危 機 に は1%前 後 に 達 した 。 BIS規 制 の 強化,公 的 資 金 の受 け 入 れ に伴 う制 約 に よ り,邦 銀 の 海外 融 資 は細 る一 方 とな った 。

オ ー バ ー プ レゼ ンス を非 難 され た邦 銀 の業 容 も,バ ブ ルの 後 始 末 に失 敗 し,資 産 は縮 小 して,昔 日のお もか げ は ない 。

ビ ジ ネ ス リ ス ク の 具 体 的 事 例 一 皿(2) ア ル ゼ ン チ ン 債 の 不 払 い

「サ ム ラ イ 債 」(円 建 て 外 債)の 落 と し穴 時 期2001‑2002

場 所 ア ル ゼ ン チ ン,日 本 資 料1.『 日本 経 済 新 聞 』

(1)2001.11.4サ ム ラ イ 債 高 利 回 りに リ ス ク潜 む (2)2001.11.25「 サ ム ラ イ 債 」 の 落 と し穴

(3)2001.12.24国 内2万 人 購 入,1915億 円 (4)2002.3.27円 建 て 外 債 利 払 い さ れ ず (5)2002.6.15円 建 て 外 債 の 利 払 い な し

(6)2002.10.10ア ル ゼ ンチ ン 国 債300億 円 返 済 せ ず 事 例(ケ ー ス)

海 外 の 企 業 が 日本 で 発 行 す る 円 建 て 外 債 「サ ム ラ イ 債 」。 高 利 回 り 商 品 と し て,超 低 金 利 で 行 き場 を 失 っ た 日 本 の 個 人 マ ネ ー の 運 用 先 と な っ て き た 。 た だ 格 付 け は 低 く,ア ル ゼ ン チ ン債 の 場 合,経 済 混 乱 で 代 償 を 払 わ さ れ る投 資 家 も 出 て き そ う だ 。 投 資 家 や 発 行 す る 国 が 偏 っ た い び つ な 市 場 構 造 を 放 置 す れ ば,政 府 が 掲 げ る 円 の 国 際 化 もつ まず

(6)

き,個 人 が リス ク を背 負 い か ね な い。

(資 料1.(2)) サ ム ラ イ債 とは,海 外 の政 府 や 政 府 機 関,企 業 とい っ た非 居 住 者 が, 日本 国 内 で募 集 ・発 行 す る 円 建 て外 債 の こ と。 ア ジ ア,中 南 米 な ど経 済成 長 の 途 上 で資 金 需 要 が お う盛 な 国 々が,1400兆 円 とい わ れ る 日本 の個 人 金 融 資 産 に注 目。 起 債 ラ ッシ ュ と もい え る様 相 を呈 して きた。

しか し,ア ル ゼ ンチ ンの経 済 混 乱 を きっ か け に価 格 が急 落,サ ム ラ イ債 発 行 市 場 は事 実 上 ス トップ した。

(資 料ユ.(1)) サ ム ラ イ債 は 日本 円 の 超 低 金 利 を背 景 に発 行 が 急 増 して お り,2000 年 は2兆8000億 円超,今 年 も1兆 円 を超 え た 。特 に格 付 け の低 い 新 興 国 の 政 府 や 企 業 が 発 行 す るサ ム ラ イ債 は高 利 回 りで あ る こ とか ら個 人 投 資 家 の 人気 も高 く,発 行 額 は増 加 傾 向 だ っ た。

8月 に サ ム ラ イ債 と して は過 去 最 大規 模 とな る2000億 円 を発 行 した ブ ラ ジ ル 政 府 の サ ム ラ イ債 は,期 間2年 で 表 面 利 率 は3.75%だ っ た 。 ほぼ 同 じ時 期 に発 行 され た2年 物 の 日本 国 債 の利 率 に比 べ る と30倍 以 上 に な る。

サ ム ラ イ債 高 利 回 りに リス ク潜 む 今 年 発 行 され た 主 な低 格 付 け の サ ム ラ イ債 (格 付 け は発 行 時,R&1,※ は ム ー デ ィー ズ)

発 行 発 行体 発 行 額

(億 円)

表 面 利 率

(%) 格付 け 年限

4月 ブラジル連 邦共和国 SOO 4.75 BB一 6年

4月 コ ロ ン ビ ア 共 和 国 300 5.50 Ba2・X 4年

6月 ブ ラ ジ ル 開発 銀 行 900 4.75 is 5年

8月 ブ ラ ジ ル連 邦 共 和 国 2,000 3.75 'ri 2年 (論 者 注)ダ ブ ルBや シ ン グ ルBは 「投 機 的 格 付 け 」

368国 際 経 営 論 集No.252003

(7)

利 率 が 高 い の は リス ク の裏 返 しで もあ る。 アル ゼ ンチ ン政 府 の サ ム ライ債 は債 務 不 履 行 に は な っ て い ない が,仮 に今 売 却 す る と元 本 が3 割 以 上 減 っ て しま う。投 資 家 は売 る に売 れ な い状 態 だ 。

野 村 証 券 で は低 格 付 け の債 券(ト リプ ルB未 満)を 個 人 に売 買 す る 際,「 低 格 付 け債 に 関 す る確 認 書 」 を と る な ど,投 資 家 の注 意 を喚 起 して い る とい う。 現在 の よ う な経 済 環 境 の なか で は,債 券 投 資 で も痛 手 を被 る可 能 性 が 高 まっ て い る。

(資 料1.(1)) 教 訓(レ ツス ン)

債 務 支 払 い停 止 損 失 避 け られ ず

ア ル ゼ ンチ ンが 事 実 上 の 債 務 不 履 行 状 態 に陥 っ た こ とで,同 国政 府 が 発 行 した サ ム ラ イ債(円 建 て外 債)な どの 債 券 を保 有 す る 日本 の投 資 家 の損 害 は避 け られ ない見 通 しだ 。 サ ム ラ イ債 の管 理 会社 と投 資 家 は債 権 者 集 会 を開 き,早 急 に対 応 を決 め る こ とに な りそ う だ。 ア ル ゼ ンチ ン政 府 が 日本 で 発 行 した サ ム ラ イ債(未 償 還 分)は4本 で,残 高 は1915億 円。

2万 人 を上 回 る個 人投 資 家 が 購 入 した。 海 外 発 行 分 を含 め る と円建 て 債 の残 高 合 計 は3千 億 円 を超 え る 。

(資 料1.(3)) 総 務 庁 は地 方 自治 体 が 出資 す る公益 法 人 と第 三 セ ク ター に よる ア ルゼ ンチ ン債(円 建 て)保 有 状 況 を明 らか に した 。(中 略)保 有 額 が7億1 千 万 円 と最 も多 か っ た北 海 道豆 類 価 格 安 定 基 金協 会 は 「運 用 収益 の確 保 が 必 要 だ った」 と説 明 して い る。

(資料1.(4))

「ア ル ゼ ンチ ン債 の 不 払 い」(1915億 円)事 件 の帰 趨 は未 だ不 明 で あ る が,い つ れ に して もな け な しの 金 を投 じた個 人 の損 失 は免 れ な い。 そ れ に して も地 方 自治 体 が らみ で も34億 円 と大 きな損 失 を出 して い る とは オ ドロキ で あ る。バ ブ ル後 遺 症 の 「欲 ボ ケ」 これ に極 まれ り とい うこ とか。

(8)

19法 人 が34億 円保 有

19法 人 の ア ル ゼ ンチ ン債 保 有 額(単 位 百 万 円) 北 海道豆類価格安 定基金協会

翠生 農学振興会 東 京防災指導協 会 新潟 県文化振興財 団 新潟 県国際交流協 会 福 井 県文化振 興事業 団

福 井 県 フ ァッシ ョン産業振 興基 金協会

福 井県 産業 支援 セ ンター 福 井県 内水面 漁業振 興 会 長 野県消 防協 会

710 9 30 100 6 674

599 100 10 25

香 川県民 間社 会福祉 施設進行財 団 香 川県 ボ ランテ ィア基金

愛 媛県水産振興 基金

港北 ニ ュー タウン生活対策協会

㈱横 浜交通 開発 大坂城 ホ ール

品川区文化振 興事業 団 宝塚市 文化振 興財 団

出雲市教 育文化振興財 団

50 50 65 150 20 530 165 goo 60

なお,ア ル ゼ ンチ ン危 機 は他 の 中南 米 諸 国 に も広 ま りを見せ てい る の も 見 逃 せ な い 。

ビ ジ ネ ス リス クの 具 体 的 事例 一 皿(3) プ リ ンス トン債 事 件

高 リス ク運 用 で損 失,後 日大 半 が救 済 へ 時 期

場 所 資 料1.

1990t?)‑2002

ニ ュ ー ヨ ー ク,日 本

『日 本 経 済 新 聞 』

(1)2000.6.19(夕 刊)瀬 戸 川 元 会 長 無 罪 を 主 張 (2)2001.12.14850億 円 返 還 で 和 解 へ

(3)2001.12.18(夕 刊)日 本 企 業51社 に870億 円

(4)2002.5.30判 決 は9月12日 プ リ ン ス ト ン 債 事 件 (5)2002.9.12(夕 刊)ヤ ク ル ト元 副 社 長 に 懲 役7年 (6)2002.10.10(夕 刊)瀬 戸 川 被 告 に 懲 役3年

事 例(ケ ー ス)

370国 際 経 営 論 集No,252003

(9)

プ リ ンス トン債 は 自己 破 産 した ク レスベ ー ル 証 券 東 京 支 店 が 窓 口 とな り,日 本 企 業 向 け に90年 代 初 め か ら販 売 を開始 。 ク レスベ ー ル 社 の親 会 社 で あ る米 投 資 顧 問 プ リ ンス トン ・エ コ ノ ミ ック ・イ ン ター ナ シ ョナ ル が 同債 で 得 た資 金 を不 正 に流 用 し,販 売 残 高 の ほ ぼ全 額 にあ た る1千 百 億 円前 後 が 事 実 上 の デ フ ォル ト(債 務 不 履 行)と な っ た。

(資 料1.(2)) ク レスベ ー ル証 券 事 件 東 京 地 裁 初 公 判 証 券 取 引法 違 反 な ど脱 税 は 認 め る。

私募 債 「プ リ ンス トン債 」 をめ ぐる0連 の事 件 で,所 得 税 法 違 反(脱 税)や 証 券 取 引 法 違 反(偽 計 取 引)な ど四 罪 に問 わ れ た元 ク レス ベ ー ル 証 券 東 京 支 店 会 長,瀬 戸 川 明被 告(66)に 対 す る初 公 判 が19日,東 京 地 裁(池 田耕 平 裁 判 長)で 開 か れ た。 瀬 戸 川被 告 は 四件 の 起 訴 事 実 の う ち 脱 税 は認 め た が,残 る 三 罪 につ い て は 否認 し無 罪 を主 張 した。 冒頭 陳 述 で 検 察 側 は,瀬 戸 川 被 告 が プ債 が 契 約 通 りに償 還 され ない 恐 れが 高 い こ

とを認 識 しなが ら,顧 客 か らプ債 の解 約 が 殺 到 す る こ とな ど を恐 れ,実 態 を隠 して販 売 を続 け た経 緯 を詳 述 した。

一 連 の事 件 で は,商 法 の特 別 背 任 な ど五 罪 に 問 わ れ た元 ヤ クル ト本 社 副 社 長,熊 谷 直樹 被 告(69)も 先 月 の 初公 判 で脱 税 を除 く四罪 で 無 罪 を 主 張 して お り,両 被 告 が検 察 側 と真 っ向 か ら対 決 す る形 とな っ た。

(資料1.(1)) 日本 企 業51社 に870億 円 「プ リ ンス トン債 」 和 解 発 表

日本 企 業 が 千 億 円超 の 損 失 を被 った プ リ ンス トン債 事 件 で英 大 手 銀 行 HSBCの 米 国 法 人(論 者 注,前 記 親 会 社 の管 理 会社 リパ ブ リ ック社 を買 収 〉 は,17日,日 本 企 業51社 に6億600万 ドル の賠 償 金 を支 払 う こ とで 和 解 した と発 表 した 。 プ リ ンス トン債 の 払 戻 金 も含 め る と約6億8千 万

ドル(約870億 円)が 日本 企 業 に戻 る見 通 しだ 。

(資料1.(3))

(10)

中電工

企業名

ア マ ダ マ シ ニ ッ ク ス ア マ ダ

山洋 電 気 アサ ツ ー

主要企業へ の返還額

(注)証 券取引所 で発表 した企 業のみ 123

61 51 33 22

返 還 額(億 円) 昭 和 飛 行 機 工 業

マ ス プ ロ電 工 参 天 製 薬

イ トー キ ク レ ビオ ダ イセ キ

7))54111

プ リ ンス トン債 は 米 プ リ ンス トン ・エ コ ノ ミ ッ クス ・イ ン ター ナ シ ョ ナ ル(PEI)が 設 立 した ペ ー パ ー会 社 の 発 行 した 私 募 債 。PEIが 元 利 払 い を保 証 す る年 利 数%程 度 の 商 品 と,元 本 保 証 は な いが 年 利 数 十%の 高 利 回 り商 品 の 二 種 類 が販 売 され た 。 日本 企 業 の 中 に は運 用 資 産 の 多 様 化 の ほ か,損 失 先 送 りの た め に購 入 した会社 もあ っ た。

ク レス ベ ー ル証 券 東 京 支 店 は顧 客 企 業 に対 し,信 用 力 の 高 い 米 連 邦 住 宅 抵 当金 庫 債 な ど安 全 性 の 高 い債 券 で 運 用 す る と説 明 して い た 。しか し, 運 用 を指 示 して い た マ ーチ ン ・ア ー ム ス トロ ン グPEI会 長 は購 入 した抵 当 金 庫 債 を担 保 に,複 雑 で 危 険 度 の高 い デ リバ テ ィブ取 引 を拡 大 した。

当初 は利 益 を.ヒげ て い たが,そ の 後,損 失 が 拡 大 。 そ こで 同会 長 は 米 リパ ブ リ ッ ク ・ニ ュー ヨー ク証 券 に対 し日本 企 業 に損 失 を隠 した虚 偽 の 報 告 をす る よ う指 示 。 そ の 一 方 で損 失 穴 埋 め に顧 客 の 資 金 を流 用 した。

(資 料1.(2)) 教 訓(レ ッス ン)

事 件 の発 生 は バ ブ ル破 裂 後 間 もな い90年 代 初 め 。 日本 企 業 に は財 テ ク の 反 省 が 見 られ な い 。 瀬 戸 川被 告 に は懲 役3年,罰 金6千4百 万 円 の 地 裁 実 刑 判 決 。 熊 谷 ヤ クル ト元 副 社 長(国 税 庁 出 身)は 多 額 の リベ ー ト

(約5億3千 万 円)を 受 け取 っ て お り,最 も悪 質,経 営 倫 理 に反 す る最 悪 の事 例 。 東 京 地 裁 は熊 谷 被 告 に懲 役7年,罰 金6千 万 円,ヤ クル ト本

372国 際 経 営 論 集No.252003

(11)

社 に罰 金1千 万 円 を言 い渡 した。(控 訴 ・未 結 審)

英 銀 の肩 代 わ りに よ る賠 償 支 払 い は,僥 倖 に過 ぎな い 。

ビ ジ ネ ス リ ス ク の 具 体 的 事 例 一一 皿(4) 大 和 銀 行 の お 粗 末

① 大 和 銀 行 ニ ュ ー ヨ ー ク事 件

② 大 和 銀 行 株 主 代 表 訴 訟 時 期 ①1995‑199601995‑2001

場 所 米 国,日 本 日本

資 料1.『 か く して 巨 額 損 失 は 海 外 で 生 ま れ た 』

「大 和 銀 行 一 名 目 の 国 際 化 一 」(67‑74ペ ー ジ)

2.水 野 隆 徳 『ニ ュ ー ヨ ー ク発 大 和 銀 行 事 件 一 日本 の 銀 行 が 陥 っ た 国 際 金 融 犯 罪 の 全 貌 一 』 ダ イ ヤ モ ン ド社,1996年

3.井 口俊 英 『告 白 』(TheConfession),文 芸 春 秋,1997年

4.久 原 正 治 『銀 行 経 営 の 革 新 一 日 米 比 較 研 究 一 』 学 文 社,1997年 (特 に 第4章 「邦 銀 経 営 組 織 の 特 質 」)

5.橋 本 光 憲 「大 和 銀 行 ニ ュ ー ヨ ー ク事 件 の 教 訓 」 神 奈 川 大 学 経 営 学 部

『国 際 経 営 論 集 』 第14号,1997年12月(同 著 『金 融 不 祥 事 と内 部 管 理 』2001年,エ ル コ に収 録)

6.井 上 泉 「ケ ー ス ス タ デ ィ 「大 和 銀 行 事 件 」 日本 経 営 倫 理 学 会 誌 第5 号,1998年

7.日 本 経 済 新 聞 社 編 『金 融 迷 走 の10年 』 日本 経 済 新 聞 社,2000年,第 2章 大 和 銀 ニ ュ ー ヨ ー ク 支 店 事 件,52〜59ペ ー ジ

8.『 日経 ビ ジ ネ ス 』

「敗 軍 の 将,兵 を 語 る」 井 口 俊 英 氏 〔元 大 和 銀 行 ニ ュ ー ヨ ー ク支 店 行 員 〕 「ず さ ん だ っ た 大 蔵 省 の 検 査 米 の 厳 しい 断 罪 予 測 で きず 」

1998年3月2日 号,93〜96ペ ー ジ

(12)

9.寺 田一 彦 『実 録 大 和 銀 行 株 主 代 表 訴 訟 の 闘 い 被 告 が 書 い た 詳細 記 録 』 中経 出版,2002年

10.『 旬 刊 商 事 法 務 』 大 和 銀 行 代 表 訴 訟 事 件 判 決 一 大 阪 地 裁 平 成12 年9月20日 判 決 全 文 一,商 事 法 務 研 究 会,2000年10月5日 号

11.田 村 達 也 『コー ポ レー ト ・ガ バ ナ ンス 』 中 公 新 書,中 央 公 論 社, 2002年,「 株 主代 表 訴 訟 とコ ー ポ レー ト ・ガバ ナ ンス 」175〜185ペ

ー ジ

12.須 田慎 一 郎 『メガ バ ン ク 破 綻 ・再 生 の 法 則 』 角 川 書 店,2002年, 第5章

な お,新 聞記 事 につ い て は 関係 の あ る もの を個 別 に表 示 した。

ま た,両 事 例 と も余 りに も有 名 な事 件 なの で,こ こで は要 点 を示 す に留 め る。

事例(ケ ー ス)①

大 和 銀 行 ニ ュー ヨー ク支 店 巨 額損 失 事 件

大 和 銀 ニ ュ ー ヨー ク支 店 の井 口俊 英 元 行 員 が1995年 まで の11年 間 にわ た っ て米 国 債 の 不 正 な簿 外 取 引 な どで約11億 ドル の 損 失 を 出 した事 件 。 大 和 銀 は この 損 失 を隠 す た め米 連 邦 準 備 理 事 会(FRB)に 虚 偽 の報 告 を

した との疑 い を もた れ,「 共 同 謀 議 」 な ど24件 の 罪 で 起 訴 され た 。 同行 は96年2月 に16件 の 罪 を認 め,司 法 取 引 に応 じて3億4千 万 ドル(約 357億 円)の 罰 金 を払 った 。

株 主 代 表 訴 訟 は この 事 件 に対 す る役 員 の責 任 を問 う もの 。 第sa判 決 で大 阪 地 裁 は不 正 な簿外 取 引 を長 期 間 チ ェ ックで きな か っ た役 員 の責 任

を認 め,元 ニ ュ ー ヨー ク支 店 長 の 安 井 健 二 被 告 に は この部 分 だ け で5億 ドル 強 の 賠 償 を命 じた 。 大 企 業 で は 「取 締 役 の 監 視 義 務 違 反 が 正 面 か ら 問 わ れ た 初 め て の 代 表 訴 訟 判 決 だ」(企 業 法 務 に 詳 しい 中 島 茂 弁 護 士)

とい う。(日 本 経 済 新 聞2000.10.23) 教 訓(レ ツス ン)①

374国 際 経 営 論 集No.252003

(13)

この 事 件 は 論 者 の 分 類 に よれ ば,「 従 業 員 不 正 」 か ら,「 組 織 不 正 」

「経 営 者 不 正 」 へ と発 展 した 内 部 管 理 上 の重 大 事 件 で あ り,国 内 外 に多 大 の影 響 を及 ぼ した 。 その 意 味 で は,世 界 的 不 祥 事 と して後 世 に名 を留 め よ う。

日本 の金 融 界 は,こ れ を大 きな教 訓 と して受 け留 め,国 際 ル ー ル,国 際 基 準 の確 立 に努 め な け れ ば な らな い 。

井 口被 告 に見 くび られ た 内 部 検 査(残 高 証 明 書 の 偽 造),コ ンフ ァ メ ー シ ョンの 隠 蔽 の 看 過 に して も

,有 価 証 券 預 入 先 と主 要 勘定 保 持 先 数 行 に検 査 員 が 実査 に赴 くか,ヒ ア リ ン グ を行 え ば,残 高 の 大 幅 不 突 合 を発 見 す る の は容 易 だ っ た筈 で あ る。

(資料5) 事 件 の 決 着

大 和 銀 行 事 件 の 関係 者 の 処 分 と判 決 内容 の 概 略 は次 の とお りで あ る。

〈大 和 銀 行 〉

・米 国 にお け る銀 行 業務 の 免 許 剥 奪 一一追 放(95年11月2日)

・共 同 謀 議 ,重 罪 隠 匿 等16の 起 訴 事 実 を 認 め,罰 金3億4千 万 ドル (357億 円)(96年2月28日 司法 取 引 成 立)

〈 大 和 銀 行 経 営 陣 〉

・藤 田彬 頭 取 ,安 井 健 二 副 頭 取,山 路 弘行 常 務 … 辞 任(95年10月9日)

・安 部 川澄 夫 会 長 … 辞 任(95年11月3日)

〈 大 和 銀 行 ニ ュ ー ヨー ク支 店 〉

・津 田 昌宏 前 支 店 長 …共 同 謀議 で 禁 固2ケ 月,保 護 観 察1年,罰 金10万 ドル(1100万 円)(96年10月26日 判 決 確 定)

・井 口俊 英 元 行 員 … 背 任 ,文 書 偽 造 で 禁 固4年,保 護 観 察5年,罰 金 200万 ドル(2億3000万 円),個 人 的 に着 服 した57万

ドルの 銀 行 へ の 返 還(96年12月16日 判 決 確 定) (井 上 泉,資 料6)

(14)

事例(ケ ー ス)②

大 和 銀 行 代 表 訴 訟 の決 着 と商 法 改 正 の 実 現

2001年12月,今 後 の 株 主 代 表 訴 訟 の あ り方 を決 め る 二 つ の 重 要 な進 展 が あ っ た。 一 つ は,経 済 界 を震 撚 させ た,大 和 銀 行 をめ ぐる代 表 訴 訟 が 和 解 に よる集 結 をみ た こ とで あ る。 原 告 側 は被 告 側 の大 和 銀 行 旧経 営 陣 49名 が 総 計2億5千 万 円 を大和 銀 行 に還付 す る こ とな どを条 件 に和 解 に 応 ず る こ とを決 定 した。 広 く注 目 を浴 び た代 表 訴 訟 事 件 は上 級 審 の 判 断 が 出 され る こ とな く収 束 す る こ と に な っ た わ け で あ る。 こ れ まで 一 貫 し て 旧経 営 陣 を厳 し く追 求 して きた原 告 側 が,こ の 時 点 で 急 遽 和 解 に応 ず

る方 針 に転 換 した の は,大 和 銀 行 は持 株 会 社 が株 式 の100%を 保 有 す る 子 会 社 に変 わ り,旧 大 和 銀 行 の個 人株 主 は現 行 適 格 を失 う状 況 に あ った

た め と解 釈 され る。

も う一 つ は,株 主 代 表 訴 訟 に か か わ る取 締 役 賠 償 責 任 を軽 減 す る商 法 改 正 が,2001年12月5日,国 会 で 可 決 成 立 した こ とで あ る 。 役 員 へ の過 酷 な賠 償 責 任 に歯 止 め をか け る と同時 に,社 外 監 査 役 制 度 の 補 強 に よ っ

て経 営 監 視 の 強化 を実 現 す る趣 旨か ら,次 の よ うな改 正 とな っ て い る。

① 代 表 訴 訟 に伴 う賠 償 責 任 の 限 度 額 設 定

代 表 取 締 役 につ い て は報 酬 の6年 分,代 表 権 の ない 取 締 役 につ い て は4年 分,社 外 取 締 役 ・監 査 役 につ い て は2年 分 まで を限度 と して 賠 償 額 を軽 減 す る こ とが 認 め られ る。(後 略)

② 監 査 役 制 度 の 補 強

社 外 監 査 役 に つ い て は,こ れ まで は監 査 役3人 以 上 の うち1人 以 上 を社 外 か ら起 用 す れ ば よか っ た が,改 正 商 法 の も とで は半 数 以 上, す な わ ち最 低2人 の 社 外 起 用 が必 要 とな る 。(後 略)

(田 村 達 也,資 料11,182〜183ペ ー ジ) 教 訓(レ ツス ン)②

大 和 銀行 ニ ュ ー ヨー ク事 件 は大 蔵 省 を巻 き込 み,同 行 の 米 国撤 退 を余

376国 際 経 営 論 集No.252003

(15)

儀 な くさせ た 大失 態 で あ っ た が,本 来 は米 国 当 局 との司 法取 引(罰 金3 億4千 万 ドル,357億 円 相 当)に よ り幕 引 き され る もの で あ っ た 。 と こ

ろが,こ の 問題 は株 主代 表 訴 訟 を引 き越 して,決 着 が 延 引 した。

この 間,事 件 を契 機 に ジ ャパ ン ・プ レ ミア ム が 再 燃 し,一 方大 蔵 当 局 指 導 を背 景 に住 友 銀 行 との合 併 問題 が 浮 上 した 。 しか し,大 和 経 営 陣 は

これ を忌 避 し,自 主 再 建 路 線 を選 択 した。

都 銀 中 下位 行 の 中 で は,北 海 道 拓 殖 銀 行 が破 綻(98年11月)し た後 も, 提 携 ・連 合 の 模 索 は 「東 海 一 あ さ ひ(旧 協 和 ・埼 玉)」 連 合 が 形 成 され るか に見 え た が,こ れ に 三和 が 近付 き2000年3月,三 行 統 合 を発 表 した。

とこ ろが,あ さ ひ行 内が 猛 反発 し,2000年6月 あ さひが 離 脱 した 。 これ に よ り 「あ さ ひ危 機 」 が表 面 化 し,株 価 は100円 割 れ とな り,合 併 相 手探 しに狂 奔 し,2002年3月 大 和 銀 ホ ール デ ィ ン グス の 傘 下 に収 ま っ た 。 しか し,勝 田 社 長 の 言 葉 を待 つ まで もな く,こ れ ら周 回 遅 れ の

「弱 者 」 連 合 ラ ンナ ー の将 来 は 厳 しい もの が あ ろ う。

(こ の 部 分 は,須 田慎 一 郎,資 料12を 参 照 した)

ビ ジ ネ ス リ ス ク の 具 体 的 事 例 一 ∬(5) 山 一 証 券 の 退 場

四 大 証 券 の 一 角,崩 壊 時 期1997‑‑1999

場 所 日本,他

資 料1.草 野 厚 『山 一 証 券 破 綻 と危 機 管 理1965年 と1997年 』 朝 日選 書,朝 日新 聞 社,1998年

2.読 売 新 聞 社 会 部 『会 社 が な ぜ 消 滅 し た か 山 一 証 券 役 員 た ち の 背 信 』 新 潮 社,1999年

3.岩 田 規 久 男 『金 融 法 廷 』 第7章 山 一 を廃 業 に 追 い 込 ん だ 「飛 ば し」

の 行 政 指 導(244〜276ペ ー ジ),日 本 経 済 新 聞 社 ,1998年

(16)

4.日 本 経 済 新 聞 社 編 『金 融 迷 走 の10年 』 第5章 山 一 自主 廃 業 へ,簿 外 債 務 を 黙 認 し た 「仲 良 し ク ラ ブ 」,最 後 通 告,大 蔵 省 は ど こ ま で

「飛 ば し」 を 知 っ て い た の か(174〜185ペ ー ジ),日 本 経 済 新 聞 社, 2000年

5.江 波 戸 哲 夫 『会 社 葬 送 山 一 証 券 最 後 の 株 主 総 会 』 新 潮 社,2001 年

6.『 月 刊 金 融 ビ ジ ネ ス 』 東 洋 経 済 新 報 社

(1)山 一 を 死 に 追 い や っ た 行 平 前 会 長 の 影 の 部 分,1998年2月 号,26〜27ペ ー ジ

(2)い ま だ か ら わ か る 巨 大 証 券 崩 壊 の 真 実 山 一 破 綻 が 証 券 業 界 を救 っ た!?2001年11月 号,48〜51ペ ー ジ

8.『 日経 ビ ジ ネ ス 』

「敗 軍 の 将,兵 を語 る 」 野 沢 正 平 氏 〔山 一 証 券 社 長 〕 「会 見 の 涙 は 悔 し さ と心 労 か ら 富 士 銀 の 支 援 拒 否 が 致 命 傷 」1998年12月21日 ・ 28日 号,119〜122ペ ー ジ

9.長 谷 川 俊 明 「証 券 会 社 の 国 際 倒 産 」 山 一 証 券 事 件 『国 際 金 融 』1082 号,2002.3.15

10.河 原 久 『山 一 証 券 失 敗 の 本 質 』PHP研 究 所,2002年 な お,新 聞 記 事 に つ い て はi大 な の で,省 略 した 。

ま た,本 事 例 も知 ら れ 過 ぎて い る 程 有 名 な の で,こ こ で は 概 要 を 述 べ る に 留 め る 。

事 例(ケ ー ス)

97年11月24日 の 月 曜 日。 振 り替 え 休 日 の 夜 明 け 前 に,東 京 ・新 川 の 山 一 証 券 本 社 前 に は 百 人 を超 す 報 道 陣 が 群 が っ て い た 。

午 後6時,山 一 百 年 の 歴 式 に 幕 を 閉 じ る 取 締 役 会 が 始 ま っ た 。 「自 主 廃 業 を 決 め ざ る を 得 な い 」。 社 長 の 野 沢 正 平 は こ う切 り 出 し た 。 二 日前 の22日 に 日本 経 済 新 聞 が 「山 一,自 主 廃 業 へ 」 と報 じた 直 後 に,「 会 社 378国1祭 糸蚤営論集No.252003

(17)

更 生 法 な ど生 き残 りの 道 は な い の か」 と野 沢 ら を突 き上 げ た役 員 ら も も う観 念 して い た。 取 締 役 会 は わす か30分 で 自主 廃 業 へ 向 け た営 業 停 止 を 決議,散 会 した 。

(資 料4.174〜176ペ ー ジ) 自主廃 業,自 主 清 算,破 産 の 道 を選 ば ざる を得 なか っ た の は なぜ で あ ろ うか。

理 由 の一 つ に,山 一 証 券 が か か え て い た 莫 大 な 海外 資 産 の 保 全 問題 が あ っ た とみ られ る。 同社 は,自 主 廃 業 当 時,米 国,英 国 ,オ ラ ン ダ,オ ー ス トラ リア

,ス イス な ど に,28の 海 外 子 会 社 を もっ て い た 。 当 時 の 会 社 更 生 法 は厳 格 な属 地 主 義 を とて い た こ とか ら,山0証 券 が会 社 更 生 を 申 し立 て る な らば,海 外 に あ る資 産 に対 し債 権 者 が 一斉 に差 し押 さ え る お そ れ が あ った 。

次 に,い わ ゆ る シ ス テ ミ ック リス クの 問題 が あ っ た。 山 一 証券 は金 融 市 場 にお い て 巨額 の 取 引 の決 済 を して い た 。 そ の 決 済 先 が さ ら に次 の 決 済 を して い くとい うか た で幾 重 に も リ ンク して い た 。 こ の連 鎖 が切 れ る と,シ ス テ ミ ック リス クが 一 気 に顕 在 化 す る こ と に な り,そ の影 響 は深 刻 で あ っ た。

そ の 上,山 一 オ ラ ン ダ,山 一 英 国 銀 行,山 一 ス イ ス銀 行 とい っ た 山一 証 券 の 海外 銀 行 が 全 部 デ フ ォル トを起 こす こ とが予 想 され た が ,当 時 海 外 に お け る 日本 の銀 行 の信 用 が 大 幅 に低 下 して お り,い わ ゆ る ジ ャパ ン プ レ ミア ム が 上 昇 して い た 。 そ こ に 日本 の 証 券 子 会 社 の 海外 子 会 社 で あ る銀 行 が デ フ ォル トを起 こす と,日 本 の銀 行 に た いす る信 認 は一 挙 に崩 れ,そ の 影 響 で大 手 銀 行 の 倒 産 さ え招 く危 険 が あ り,そ う な る と 日本 の 金 融 シス テ ム全 体 に対 す る信 認 す ら否 定 され か ね なか っ た。 さ ら に,シ ス テ ミ ック リス クの 顕 在 化 は世 界 の金 融市 場 に波 及 し,世 界 的 な金 融 恐 慌 の 引 き金 を ひ くこ とに さ え な りか ね な か った 。

(長 谷 川俊 明,弁 護 士,資 料9)

(18)

教 訓(レ ツス ン)

山一 証 券 は 四 〇 年 不 況(昭 和40年,1965年,山 陽 特 殊 鋼Tサ ン ウ ェー ブ な どが倒 産)の 中,日 本 銀 行 に よ る特 別 融 資(注)に よ っ て一 度 救 済 され て い る。

(注)二 日銀 特 融(旧 ・日本 銀 行 法25条 「日本 銀 行 は 主 務 大 臣 の認 可 を受 け信 用 制 度 の 保 持 育 成 の た め必 要 な業 務 を行 うこ と を得 」 発 動 に よ る特 別 融 資,当 時 の 額 で ピー ク282億 円,4年4か 月 後 に繰 上 げ返 済

今 回 は,1990年 か らの バ ブ ル崩 壊 後,損 失 の 隠 蔽 が あ った 。す な わ ち, 含 み損 の 「飛 ば し」 で あ る。総 額2648億 円,う ち 国 内 取 引 に か か わ る損 失 が1583億 円,海 外 現 地 法 人 の外 債 取 引 な ど にか か わ る損 失 が1065億 円 で あ った 。

1997年 の 三 洋 証 券,北 海 道 拓 殖 銀 行 の破 綻 の あ お りを受 け,山 一証 券 は 海外 資 産 の 国 際 的 デ フ ォ ル トか ら来 る 日本 発 の世 界 恐 慌 を避 け る との 当 局 方 針 に よ って,97年11月24日,自 主廃 業 に追 い 込 まれ た 。 同 時 に行 われ た 日銀 特 融 は ピー ク字1兆5千 億 円 に上 っ た 。

野 村,日 興,大 和 各証 券 の最 後 尾 の ラ ンナ ー の 退 場 で あ る。 日銀 特 融 は,最 終 的 に約1100億 円が 回収 不 能 に終 わ る見 込 み 。

ビ ジ ネ ス リ ス ク の 具 体 的 事 例 一 正(6) ベ ア リ ン グ ズ 事 件

名 門 銀 行 を潰 し た デ ィ ー ラ ー,影 響 は 日本 に も 時 期1995

場 所 シ ン ガ ポ ー ル,英 国,日 本 資 料!.『 日本 経 済 新 聞 』

(1)1995.7.19(夕 刊)ず さ ん な 内 部 管 理 主 因 ベ ア リ ン グ ズ 破 た ん

380国 際 経 営 論 集No.252003

(19)

英 銀 行 監 督 委 が 報 告 中 銀 に 監 督 改 善 を 要 求

(2)1995.12.31リ ー ソ ン 被 告 の 刑 確 定(懲 役6年6か 月,控 訴 せ ず)

2.長 谷 川 俊 明 「証 券 会 社 の 国 際 倒 産 」 『国 際 金 融 』1082号 ,2002.3.15 3.ニ ッ ク ・リ ー ソ ン(戸 田 裕 之 訳)『 私 が ベ ア リ ン グ ズ 銀 行 を つ ぶ し

た 』 新 潮 社,1997年

4.ス テ ィ ー ブ ン ・フ ェ イ(宇 佐 美 洋 訳)『 ベ ア リ ン グ ズ 崩 壊 の 真 実 』 時 事 通 信 社,1997年

事 例(ケ ー ス)

英 国 名 門 証 券 会 社 ベ ア リ ン グ ズ ・グ ル ー プ は1995年2月 末,突 然 経 営 破 綻 に 追 い 込 ま れ,オ ラ ン ダ の 金 融 ・保 険 グ ル ー プiINGグ ル ー プ に 買 収 さ れ た 。 創 業233年 の 伝 統 あ る 金 融 機 関 を 一 気 に 事 実 上 の 倒 産 に 追 い 込 ん だ の は,デ リバ テ ィ ブ 取 引 で あ る 。 ベ ア リ ン グ ズ 証 券 の シ ン ガ ポ ー ル 現 地 法 人 の デ ィ ー ラ ー 一 人 が,会 社 に 無 断 で 日経 平 均 先 物 の 大 量 売 買 を して い た こ とが 引 き金 と な っ た 。

ベ ア リ ン グ ズ は ,オ ラ ン ダ の 金 融 ・保 険 グ ル ー プ のINGに 買 収 さ れ, ベ ア リ ン グ ズ に 対 す る 債 権 の 安 全 が 保 証 さ れ た こ とか ら,証 券 会 社 の 国 際 倒 産 事 例 と し て,委 託 顧 客 や 債 権 者 の 救 済 面 で 大 き な 混 乱 を も た ら さ な か っ た 。 だ が,外 国 金 融 機 関 の 破 綻 が 日本 の 取 引 所 取 引 に まで 影 響 を 及 ぼ し得 る こ と が こ の 事 件 で よ くわ か っ た 。 こ う した グ ロ ー バ ル な リ ス

ク に そ な え た 各 種 制 度 整 備 の 必 要 性 を 痛 感 させ た 事 件 と い っ て よ い 。 (長 谷 川 俊 明,弁 護 士,資 料2) 教 訓(レ ツス ン)

こ の 事 件 は,中 学 卒 の1ト レ ー ダ ー が1300億 円 の 損 失 を 出 し て ,英 国 の 「女 王 陛 下 の 銀 行 」 を潰 し て し ま っ た とい う点 で シ ョ ッ キ ン グ で あ っ た が,こ こ で 取 り上 げ た の は そ れ だ け の 理 由 で は な い 。

第 一 に は 投 機 失 敗 の 主 た る対 象 が 「日経 平 均 一 日経225の 先 物 」 で あ

(20)

り,日 本 の 証 券 市 場 で も リ ー ソ ン の 逃 亡(95年2月24日 一 金 曜 日)以 前 か らベ ア リ ン グ ズ の 巨 額 の 買 い 持 ち が 知 ら れ て い た こ と,第 二 に は 日 本 の ベ ア リ ン グ ズ 証 券 会 社(東 京 ・大 阪 支 店)に 約700億 円 の 債 務(預 か り証 券,他)が あ りt当 局 か ら裁 判 所 に 通 告 して 財 産 の 保 全 処 分 が 図

ら れ た 経 緯 が あ る こ とで あ る 。

ベ ア リ ン グ ズ ・グ ル ー プ は18世 紀 中 葉 か ら の 歴 史 を 持 つ プ ラ イ ベ ー ト ・バ ン カ ー で あ っ た が,約700億 円 相 当 の 過 少 資 本 で あ り,同 社 の の れ ん を 買 っ た オ ラ ン ダ のING(イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル ・ネ ー デ ル ラ ン デ ン ・グ ル ー プ)に よ り救 済 さ れ る こ と に よ っ て シ ン ガ ポ ー ル ・日本 に対 す る 債 務 履 行 が 保 証 さ れ た 。

しか し英 国 で は,ベ ア リ ン グ ズ の 永 久 債 の 保 有 者 は 大 幅 な 損 失 を 蒙 っ て い る 。

382国 際 経 営 論 集No.252003

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