博 士 ( 情 報 科 学 ) 村 田 賢 太
学 位 論 文 題 名
Topological properties dynamics of coupled
and synchronization oscillator networks
( 結 合 振動 子ネットワ ークのト ポロジカ ル特性と 同期ダイ ナミクス )
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
近年 ,多数 の要素 から成 る複雑系 として ,複雑 なネッ トワー ク構造 を内在 する系 が注目さ れてい る. この内 在ネット ワーク は,系 の構成 要素を ノード,構成要素間の相互作用を辺と解釈したグラフ 構造 で表現 される. 系のモ デル化 は,構 成要素 の孤立 ダイナ ミクス および相 互作用 の関数 を,注 目 して いる現 象につい て適合 できる ように 定義し ,内在 ネット ワーク を表すグ ラフを 相互作 用場と す るこ とによ って行な われる ,例と して, 同期現 象につ いては 結合振 動子ネッ トワー クとガ オス結 合 ネッ トワー ク,伝搬 ダイナ ミクス につい てはパ ーコレーション,集団フラストレーションダイナミク ス に つ い てPottsモ デ ル や ネ ッ ト ワ ー ク 上 の 繰 り 返 し ゲ ー ム な ど が , そ れ ぞ れ 挙 げ られ る . 以上 を背景 とし, 本論文 では結合 振動子 ネット ワークに関し,内在ネットワークのトポロジカル特 性と 同期ダ イナミク スの関 係が未 だ十分 明かに されて いなぃ 事に着 目し,こ れを明 らかに するこ と を目 指す. そこでま ず,既 存のネ ットワ ーク・ モデル によっ て生成 された各 ネット ワーク の上で 機 能す る結合 振動子が どのよ うナょ 同期ダ イナミ クスを発現させるかを調べた.次に,ネットワークを 動的 に変化 させたと きに, 結合振 動子の 同期ダ イナミクスがどのように影響を受けるかを解析した.
最後 に,こ れらの調 査・解 析結果 をネッ トワー クのトポロジカル特性の観点から捉えなおし,トポロ ジカル特性と同期ダイナミクスの関係を検証した.
本論文は次の章から構成される,
第1章 では, 本論文 で述べ る研究 内容への 導入と して, 研究の 背景, 問題設定,および目的につい て述 べる. また,過 去もし くは同 時期に 実施さ れた関連研究を紹介することで,本論文で述ぺる研究 の位置付けを明らかにする.
第2章で は , 静 的な ネ ッ トワーク 構造の 上で観 測され る結合 振動子 ネット ワーク の同期グ イナミ クスについて述べる.振動子の相互作用場となるネットワークは,p−モデル,Barab缸i−Albe・nモデル,
お よ びCNNモ デ ル の3種類 の ネ ッ トワ ー ク 生 成モ デ ルを用 いて生 成した .そし て,各 ネット ワーク 生成 法が持 っパラメ ータの 変化に 対する 同期ダ イナミ クスの 応答に ついて考 察した .ここ で扱う 問 題は,ネットワーク構造が時間経過に対して不変である.
第3章 でtま, 動的な ネット ワーク 構造の 上で観測 される 結合振 動子ネ ットワ ークの 同期同 期ダイ ー34―
ナ ミ クス につ いて 述ぺ る .ネ ット ワー ク構 造 を動 的に 変化 させる方 法は2種類取り上げられる. ひ とっ はB arabasiーAlbertモデル によるネットワークの成長 である,もうひとっはニっの同期集団を複 数 本 の辺 で動 的に 結合 す る方 法で ある, これらの各々について,ネッ トワークの構造変化ダイナ ミ ク ス と結 合振 動子 の同 期 ダイ ナミ クスを 同時並行的に発展させた.そ して,これらの振舞いを観 測 し, 前者では成長に伴う同期の 強さの変化,後者では集団の 結合が同期ヘ与える影響に ついて考察し た . ここ で扱 う問題は,ネットワーク構造 が時間経過に対して可変で ある点において,第2章の問 題 と異 なる.
第4章 で は , 第2章お よび 第3章で の観 測結 果 をネ ット ワー クの 構 造特 性の 観点 から 再 考し ,新 た な 実験 を加 えて,振動子間相互作用のト ポロジと同期現象の関係に ついて考察した,第2章では , ネ ッ トワ ーク の生 成パ ラ メー タに つい て, そ して 第3章で はネットワ ーク構造変化ダイナミクス に つい て実験結果を考察した.こ れに対し,本章で|ま,ネットワークのトポロジカル特性の観点から,
異 な るネ ット ワー ク生 成 モデ ルお よびネ ットワーク構造変化ダイナミ クスについて横断的な視点 で 同期 について考察した,
最 後に ,第5章 では ,実 世界 で 確認 され てい る系 に 内在 するネット ワークが類似のトポロジカ ル 特 性 を持 つ事 実を 挙げ , 本研 究で 得られ た結果が対象の詳細に寄らな ぃ性質を抽出していること を 結論 付け,本論文をまとめた.
― 35 ‑
学位論文 審査の要旨 主 査
教 授
古 川 正 志 副 査
教 授
栗 原 正 仁 副 査
教 授
山 下
裕 副査
准教授 山本雅人
学 位 論 文 題 名
Topological properties dynamics of coupled
and synchronization oscillator networks
( 結合 振 動 子ネット ワークの トポロジ カル特性 と同期ダ イナミク ス)
本論文では結合 振動子ネットワークに関し,複雑ネットワークが内在する構造特性とネットワー ク上 で の結 合振 動子 の同 期 ダイ ナミ クス の 関係 を明 らか にす る こと を研 究目 的としている.
そのために,まず,代表的な3つの複雑ネットワークモデルのパラメータ,すなわち,スモールワー ルドモデルにおけ る辺かけ替え率と平均最短パ ス長,スケールフリーモデ ルであるBAモデルの辺 選好 率及ぴCNNモデルにおける潜在辺顕在 化率が,それらによって生 成きれていく過程のネット ワークモデル上で の結合振動子にどのような同期ダイナミクスを生じさせているかを解析し、各パ ラメータともある 臨界点から振動子の同期現象 を生じさせるダイナミクス を明らかにしている.
ついで,構造が 動的に変化する2ネットワー クモデルとして,BAモデルのネットワークの成長モ デルとニつの同期 集団を複数本の辺で動的に結合するモデルにっいて,時間変化にともなう結合振 動子の影響を調ぺ,前者では,モデルの成長によって同期が異なること,後者では,ネットワーク内 の ク ラ ス タ リ ン グ の 大 き さ が 同 期 に 強 く 影 響 す る こ と を 明 ら か に し て い る . 上 記で得ら れた結果として,BAグラフ とCNNグラフは,グラフの構 造特徴量である次数分布は 同じであるが,クラスタリング係数によって同期現象は異なることが半IJ明した.このため.ネット ワークモデルの次 数分布を一定にしながらクラスタリング係数を制御する配位法を用いた方法を提 案し,これによって同じ次数分布であっても,クラスタリング係数が異なると結合振動子の同期が大 きく変化することを発見している.
こ れ らに より 複雑 ネッ ト ワークモデル の構造特微量と結合振動子 の同期現象を明らかにして いる,
本論文は以下のように構成されている.第1章では,本論文の序章であり.,研究の背景,問題設定,
目的,関連研究について述べている,第2章では,静的なネットワーク構造の上で観測される結合振 動子ネットワーク の同期ダイナミクスについて述べている.振動子の相互作用場となるネットワー クは,スモールワ ールドグラフ,BAモデル,及び,CNNモデルの3種類のネットワーク生成モデルを 用い,各ネットワ ーク生成法が持っパラメータの変化に対する同期ダイナミクスの応答を明らかに
― 36−
している.第3章では,動的なネットワーク構造の上で観測される結合振動子ネットワークの同期 ダイナミクスにっいて述べている.ネットワーク構造を動的に変化させる方法として,BAモデルの ネットワークの成長方法とニっの同期集団を複数本の辺で動的に結合する方法である.これらのニ モデルにっいて,ネットワークの構造と結合振動子の同期ダイナミクスを同時並行的に時間変化さ せ,前者では成長にともなう同期の強さの変化,後者ではクラスタリングが同期へ与える影響を明ら かにし ている .第4章 では, 第2章お よぴ第3章で得られた結果をネットワークの構造特微量であ る次数分布とクラスタリング係数の観点から再考し,配位法に基づく指定した次数でクラスタリン グ係数を変える方法を提案し,同じ次数分布であっても,クラスタリング係数によって結合振動子の 同期が大きく影響されることを見いだしている.最後に,第5章では,これまでの結果を取りまとめ ている.
これを要するに,著者は,複雑ネットワーク上の振動子の挙動を主として,ネットワーク構造及ぴ 要素属性のダイナミクスが振動子の同期現象のダイナミクスと相互作用することを明らかにし,複 雑系工学に関して新知見を得たものであり,情報科学の進歩に寄与するところ大である.よって著者 は , 北 海 道 大 学 博 士 ( 情 報 科 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る .
― 37−