博 士 ( 工 学 ) 西 山 修 輔
学 位 論 文 題 名
加速器ビームモニ夕解析に用いる数値解析法に関する研究 学位論文内容の要旨
今日 では 、加 速 器は 学術 研究 用途 以外 にも 医療用、産業用など幅広い分野で利用され 、加 速 さ れ る 粒 子の 種類 やェ ネル ギー 、パ ワー は非 常に 幅 広く なっ てい る。 その 中で も、 電子 加 速 器 は シ ンク ロト 口ン 放射 光や 自由 電子 レー ザー を はじ め、 その 他方 法も 含め て次 世代 の 光源 とし ての 利 用や 研究 が行 われ てお り、 それに伴って加速器のビームには、低工ミ ッタ ン ス 、 低 エ ネル ギー 広が り、 高輝 度、 高安 定性 が要 求 され てい る。 この よう な高 品位 ピー ム の 発 生 は 、電 子ピ ーム の発 生源 や加 速機 構の 発展 に よる もの であ るが 、加 速し たビ ーム を 計 測 診 断 する 種々 のピ ーム モ二 夕の 果た す役 割も 大 きい 。そ のた め、 ピー ムの 位置 やプ ロ フ ァ イ ル 、工 ネル ギー 、エ ミッ タン ス、 波形 など を 精度 よく 測定 でき るビ ーム モニ タが 必 要と され てい る 。特 に、 ピー ムに 影響 を与 えずに測定できる非接触型のピームモ二夕 は、
加 速 器 運 転 中 の 常 時 監 視 や フ イ ー ド バ ッ ク 制 御 に 必 要 で あ り 、 重 要 で あ る 。 非 接 触 型 のピ ーム モ二 夕の 設計 や動 作解 析に は、 電 磁気 理論 によ る設 計と 実験 によ る検 証 と と も に 、数 値解 析に よる 設計 や動 作解 析も 行わ れ てき た。 近年 では 、電 子計 算機 の能 カ お よ び 数 値解 析手 法の 発達 に伴 い、 数値 解析 によ る 設計 で詳 細な 検討 が行 われ るこ とも 多 い 。 こ の 際、 加速 器内 部に 設置 され るピ ーム モ二 夕 の解 析に は、 加速 管な どの 解析 に用 い ら れ る 各 種の 加速 器設 計用 、あ るい は汎 用の 電磁 界 解析 コー ドが 使用 され てい る。 その 一 方 で 、 加 速器 の外 部で 用い るピ ーム モ二 夕の 解析 に は、 自由 空間 を模 擬で きる こと が必 要 であ り、 さら に 、加 速さ れた ピー ムの 位置 や方向を自由に設定できることが望ましい が、
こ の よ う な 解析 に関 する 報告 は少 なく 、解 析コ ード も 整備 され てお らず 、汎 用の 電磁 界解 析 コー ドで は対 応 して いな しゝ 。
本 論 文 で は、 この よう な加 速器 のピ ーム モ二 夕の 解 析に 用い るた めに 、有 限差 分時 間領 域 法(FD−TD法) にお いて 、加 速器 のパ ルス 状 ピー ム、 特に 相対 論的 な電子ピームを電 磁波 源 とし て扱 い、 そ の軌 道を 空間 差分 の格 子に かかわらず自由に設定可能な方法を提案し た。
FDーTD法 は、 マク スウ ェル 方程 式を 空間 差分 およ び 時間 差分 で近 似し て、 定め られ た境 界 条 件 と 初 期値 から 時間 発展 的に 電磁 界を 解く 数値 解 法で あり 、時 間領 域に おけ る電 磁界 の 数 値 解 法 とし て広 く用 いら れて いる 方法 であ る。FD―TD法に おい て、 加速 器の バル ス状 ピ ー ム は 移 動す る局 在化 した 電流 とし て扱 われ 、電 流 密度 とし て差 分化 され たマ クス ウェ ル 方 程 式 中 に現 れる 。電 流密 度も 空間 差分 の格 子に し たが って 方向 別に 分け られ 、各 々が 僅 か に 異 な る位 置に 配置 され る。 その ため に、 ビー ム の軌 道が 空間 差分 の格 子に 一致 しな い 場 合 に は 、電 荷保 存則 を満 足し たま ま電 流を 移動 さ せる こと が難 しく なる 。一 方、 散乱 界 表 示FD―TD法 で は 、 解 析 空 間 に 到 来 す る 入 射 電 磁 界 は 既 知 で あ ると して 、解 析空 間中 に 存 在 す る 導体 表面 や誘 電体 内部 など で発 生す る散 乱 電磁 界の みをFD―TD法 で計 算す る。
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この場合はビームの軌道や位置は空間差分の格子とは無関係に設定可能だが、全ての時刻 において、導体表面や誘電体内部の全ての位置でピームが発生する電磁界が計算できなけ ればならない。任意の位置におけるピームが発生する電磁界は、遅延ボテンシャルを用い てビーム軌道全体にわたって空間積分を行って求めなければならず、散乱体の全ての位置 で数値積分で求めるとその計算量は非常に多くなる。
本論文で提案した方法では、ビームと同じェネルギーを持つ点電荷がピームと同じ軌道 を運動ずる場合の電磁界を入射電磁界として用いて散乱界表示FD ―TD 法で計算を行い、
得られた電磁界の波形をパルス状ピームの波形と畳み込み積分することで、ビームの軌道 に制約を受けず、計算量の大幅な増加も無く、ピームによって生じた電磁界が散乱体で散 乱された結果を得ることが可能である。しかしながら、相対論的な点電荷の周辺の電磁界 は極めて高速のパルスとなり、非常に高い周波数のスベクトルを含む。そのため、FD ―TD 法のような離散時間系で扱う場合にはサンプリング定理に注意しなければならない。そこ で、運動する点電荷の周辺電磁界のスベクトルを求め、軌道からの距離、点電荷の運動エ ネルギー、許容できるェイリアス誤差から必要なサンプリング間隔を決定する式を導出し た。また、FD −TD 法では、離散時間の間隔を小さくすると計算時間が増大するだけでな くグリッド分散による誤差も増加するため、入射電磁界は細かい時間間隔でサンプリング を行い、それよりも粗いFD ―TD 法の離散時間間隔へ変換する方法を用いた。この場合に 数値的な低域通過フィルタが必要となるが、この低域通過フィルタの設計およびフィルタ を通すことによって生じる振幅や位相の誤差についても検討した。これらサンプリングや フィルタによる誤差は、FD ―TD 法自体による誤差と同程度であれば十分である。そのた め、FD ―TD 法の空間や時間の離散化に伴って生じるグリッド分散誤差についても検討を行 い 、 空 間 差 分 の 格 子 の 間 隔 と 分 散 性 、 異 方 性 に よ る 誤 差 の 関 係 を 示 し た 。
この方法を用いて定在波分布測定による電子線形加速器の微細構造パルス幅推定法の解 析を行った。時間領域において、電子ビームに伴う電界とその反射波および誘起された電 荷からの輻射波が複雑な定在波分布を形成することを示し、先に実験によって得られてい た定在波分布の様子を良く説明することに初めて成功した。
一方、本論文では、静電界や周波数領域での解析に用いる、境界要素法における薄い金 属境界の扱いに関する方法についても示した。
境界要素法では、支配方程式から導いた境界積分方程式を境界上に節点を置いて離散化 を行い、境界積分は区分的に数値積分で処理することで節点上の変数に関する連立方程式 に帰着させる。境界積分の積分核には、特異性のあるグリーン関数かより特異性の強いグ リーン関数の導関数が含まれている。そのため、薄い導体板のように境界が隣接している 場合には数値積分の精度が悪化するのを防ぐため、導体板の厚さに応じて境界要素を細か く離散化するなどの対策が必要となる。
本論文で示した方法では、境界要素の大きさは変えずに隣接した境界の距離を0 とする ことで、隣接した境界に対する境界積分を解析的に処理して数値積分に起因する誤差を除 いた。このとき、金属境界であれば境界条件からより特異性の強いグリーン関数の導関数 が含まれている境界積分は相殺される点に着目した本方式では、隣接していない節点から の数値積分においても誤差が減少し、解析の精度が向上した。
解析例としてストリップラインの特性インピーダンスを求め、従来の方法と比較して薄
い金属境界を含む場合でも境界要素を増加させずに解析の精度を保つことが可能であるこ
とを示した。
学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 教授 助教授
榎 戸 武 揚 澤 村 貞 史 成 田 正 邦 富 岡 智
学 位 論 文 題 名
加速器ビームモニ夕解析に用いる数値解析法に関する研究
加 速器 は 古 くか ら 用 いら れ て いる 装 置 であ る が 、近 年 多く の学会に 加速器 部会が設 立さ れ る に至って いるよう に、そ の利用分 野は益 々広範囲 にわた っている 。中でも 電子線 加速器 は 次 世 代光 源 と して 特 に 高品 位 ピ ーム の 発 生が 要 求 され て いる装置 であり、 その発 生ピー ム を 計 測診 断 す る種 々 の ピー ム モ 二夕 の 果 たす 役 割 は重 要 で、特に ビームに 影響を 与えず に 測 定 でき る 非 接触 型 の ピー ム モ 二夕 は 、 加速 器 運 転中 の 常時監視 やフイー ドバッ ク制御 の た め に必 須 と され て い る。 こ の よう な 非 接触 型 ピ ーム モ ニタの設 計や動作 解析は 、今日 で は 数 値解 析 に よっ て 詳 細な 検 討 が行 わ れ てい る 例 が多 い が、これ までは加 速器ピ ームバ イ プ 内 に置 か れ たモ ニ タ の解 析 が 主で 、 ピ ーム パ イ プの 外 で計測す るタイプ のピー ムモ二 夕 の 数 値解 析 手 法の 整 備 は未 だ 不 十分 で あ る。
本 論文 は 、 バル ス 状 ピー ム 解 析に 適 す る時 間 領 域数 値 電磁 界解法で ある有 限差分時 間領 域 法(FD‑TD法 ) を 、 境 界 条件 に 関 らず ピ ー ム モ二 夕 設 計や 動 作 解析 に 適 用可 能 と する こ と を 目 的 と し て な さ れ た も の で あ り 、 そ の 主 要 な 成 果 は 次 の よ う に 要 約 さ れ る 。 (1) FD―TD法に お い て、 空 間 およ び 時 間の 離 散 化 に伴 って 生じるグ リッド 分散誤差 につ い て 検 討を 加 え 、伝 播 方 向、 周 波 数、 空 間 およ び 時 間の 離 散化の大 きさに対 する伝 播速度 の 誤 差 とい う 形 でま と め 、必 要 と され る 精 度を 満 た す空 間 および時 間の離散 化の大 きさを 決 定 す る指 針 を 示し て い る。
(2) FD―TD法に お け る、 加 速 器の バ ル ス状 荷 電 粒 子ピ ーム の取扱い につい て考察し 、荷 電 粒 子 ピー ム を 移動 す る 局在 化 し た電 流 と して 扱 う 従来 用 いられて きた方法 ではご 特に開 放 領 域 に お い て は 解 析 上困 難 が 多い こ と を指 摘 し 、 散乱 界 表 示FD―TD法 の 優位 性 に 言及 し て い る。 さ ら に、 そ の 際の 入 射 界の 計 算 量を 低 減 する た めに、パ ルス状荷 電粒子 ピーム を 点 電 荷で 置 き 換え て 入 射界 を 計 算す る こ とを 提 案 して い る。即ち 、この点 電荷の 作る入 射 界 か ら解 析 領 域中 の 電 磁界 の 時 間変 化 を 求め 、 そ の後 バ ルス状ピ ームの波 形との 畳み込
み積分で与えられる電磁界を周波数空間においてスベクトルの積として演算し逆変換する ことにより、実用的な計算量で計算できることを示している。
(3)
高工ネルギーの点電荷の移動に伴う周辺電磁界は非常に高周波のスベクトル成分を 含むため、FD −TD 法のような離散時間系で扱う場合にはサンプリング周期を適正に選び ェイリアス誤差を避ける必要があることに言及している。そのため、著者は、まず運動す る点電荷の周辺電磁界のスベクトルを求め、サンプリングによって生じるエイリアス誤差 とサンプリング周期の関係を示し、このことより、点電荷のェネルギ一、電磁界を求める 位置と点電荷の軌道との距離、許容できるエイリアス誤差等を考慮に入れてサンプリング 周期を決定する式を導出している。
(4)
上記の方法で決定したサンプリング周期はFD 一TD 法の離散時間幅の数分のーから 数十分のーとなるが、単にFD −TD 法の離散時間の幅をこのサンプリング周期に合わせて 小さくすることは上述の分散誤差のため計算精度や計算時間の面から不利であることにも 言及し、適正なサンプリング周期で求めた入射界をFD −TD 法の離散時間の幅に合わせる ための新しい手法を提案している。このときに用いる数値的な低域通過フィルタの特性に ついて考察し、FD −TD 法の解析精度に影響を与えない低域通過フィルタの諸定数の決定 法をも明らかにしている。
(5)
著者は、提案した手法を用いて、電子線形加速器の微細構造パルス幅推定法に用い られる定在波分布の解析を行い、時間領域において、電子ピームに付随する電界とその反 射波、誘起された電荷から放射される輻射波が複雑な定在波分布を形成することを初めて 定量的に明らかにすることに成功している。この結果は、実験によって得られる定在波分 布の様子と極めて良く一致していることを確認している。
(6)