310 (94) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
ミ ウラ ヨシ ノリ則(昭和2
博士(医学) 乙第1341号平成5年1月22日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
実験的心筋梗塞犬における,セボフルレンー笑気麻酔の循環動態ならびに心筋 代謝に及ぼす影響 (主査)教授 鈴木 英弘 (副査)教授 村木 篁,溝口 秀昭論 文 内 容 の 要 旨
研究目的 セボフルレンは血液/ガス分配係数が,既出の揮発性 吸入麻酔薬の中で最も低い新しい麻酔薬であり,従来 の吸入麻酔薬にみられる心筋抑制作用,血管拡張作用, さらには冠動脈疾患時の冠血管拡張に由来する心筋内 血流分布異常(coronary steal)などの問題が報告され ているが,まだ一定の見解は得られていない.セボフ ルレソの虚血性心疾患患者に対する臨床応用を考え, 虚血心モデルを作製し,セボフルレンの循環勤態,冠 循環および心筋代謝について検討した. 方法 実験には体重15~20kgぼ)雑種成犬15頭を用い,50% 笑気とベントバルビタールで維持麻酔を行った.正常 心において,1.5%及び3.0%セボフルレンを吸入させ, 60分間にわたり観察した.冠動脈前下行枝を結紮する ことにより心筋梗塞を作製し,血行動態が安定した後, 虚血心について同様に1.5%及び3.0%セボフルレンを 吸入させ,60分間にわたり観察した.この際,心筋組 織血流量の測定には水素クリアランス法を応用し,冠 静脈洞にカテーテルを挿入して心筋酸素摂取率,心筋 乳酸摂取率の測定を行った.各測定値について平均値 及び標準偏差を求め,正常心及び虚血心の各対照値と 比較し,Student paired t testにより有意差検定を行 い,危険率5%以下を有意差有りとした. 結果及び考察 正常心において,吸入濃度依存性に心拍数,平均動 脈圧が有意(p<0.05)に減少し,3.0%セボフルレン では,心拍出量も有意に減少した.しかし体血管抵抗 はほとんど変化がなかった.このように心筋酸素供給 は減少したが,心筋酸素需要の指標である,脈拍血圧 積,左室仕事量も,吸入濃度依存性に著明に減少した. Endocardial viability ratio(EVR)は,3.0%セボフ ルレンで有意に増加を示し,1.0以上の値を示した.ま た,心筋酸素摂取率,心筋乳酸摂取率,冠静脈洞乳酸/ ピルビン酸はほとんど変化せず,心筋酸素需給バラン スは維持されていた. 次に虚血心についてみると,平均動脈圧は吸入濃度 依存性に有意に減少した.心拍数,心拍出量は,吸入 濃度依存性に減少傾向を示した.体血管抵抗は3.0%セ ボフルレンで有意に減少した.また,左室仕事:量,脈 拍血圧積は有意に減少し,心筋酸素需要の著明な減少 がみられ,心筋酸素摂取率と心筋乳酸摂取率は,減少 傾向を示した.心筋組織」血流量は,3.0%セボフルレン では,虚血隣接部,健常部で有意な減少が見られた, さらに冠静脈洞乳酸/ピルビン酸は減少した.つまり虚 血心では,吸入濃度に比例して心筋酸素需給バランス は良く保たれ,心筋虚血が増強しないことが明らかに なった. 結語 正常心においては吸入濃度依存性に心拍出量は減少 したが,体血管抵抗は変化しなかった.また心筋の酸 素需給バラン~《は保たれた.虚血心においては,吸入 濃度依存性に心拍出量と体血管抵抗は減少した.また 心筋組.織血流量は濃度依存性に虚血部になるほど減少 一944一311 したが,EVRおよび心筋代謝からみて心筋酸素需給バ ランスは保たれていた.