222 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(50) ヨコ カワ横川すみれ(昭和
博士(医学) 乙第1297号平成4年9月18日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
冠動脈再建術麻酔におけるセボフルレン,イソフルレンの血行動態に対する評 価 (主査)教授 鈴木 英弘 (副査)教授 小柳 仁,白坂 龍谷論文、内容の要旨
目的 虚血性心疾患を合併する患者の麻酔では麻酔薬の特 に心血管系への作用が十分に把握されている必要があ る.しかし,虚血心に対する各種吸入麻酔薬の効果に 関してはSteal現象を含め,いまだ確立された見解が 出ていない.本研究は新しい吸入麻酔薬イソフルレン とセボフルレンの虚血性心疾患に与える効果を検討す ることを目的として,冠動脈再建術(CABG)の麻酔 において血行動態と交感神経緊張度の指標として血漿 カテコラミン濃度を測定し,両薬剤の有用性について 検討を加えたものである. 対象と方法 対象はCABG症例17例で,その内訳はセボフルレン 使用例(S群)7例,イソフルレン使用例(1群)10例 である.麻酔導入は両群共にフェソタニール20μg/kg を使用した.両吸入麻酔薬iはRPPを10,000以下に維 持する目的で適時吸入濃度を調節した.血行動態の測 定項目は平均動脈圧(MAP),心拍数(HR),心拍出 量(CO),心係数(CI),末梢血管抵抗(SVR),平均 肺動脈圧(MPAP),肺動脈襖入圧(PCWP),中心静 脈圧(CVP)と血漿カテコラミン濃度(NE, E)であ る.測定時点は麻酔導入前,麻酔導入後(対照値),皮 膚切開直後,胸骨切開直後,体外循環(CPB)離脱後 5分,15分,30分の7時点とした.測定値の統計学的 検定はunpaired t検定を用い, p<0.05をもって有意 とした. 結果 A)各計測値の群問比較:両別間で麻酔導入前後に おける血行動態,血漿カテコラミン濃度には有意差を認めなかった.1群に比較してS群でSVRはCPB前
までは増加傾向を示し,COは胸骨切開時に低利(p< 0.05)であった.B)経時的比較:S群ではSVRは皮膚切開後に増
加(p<0.05)し,MAPはCPB離脱後低値(p<0.05) を示した.1群ではHR, MAPで皮膚切開後減少(p〈 0.05)し,MAPは皮膚切開後とCPB離脱後半値(p〈0.05)を示した.またPCWPは胸骨切開直後とCPB
離脱後30分で増加(p<0.05)し,CVPはCPB離脱後 低値(p<0.05)を示した.C)血漿カテコラミン濃度の推移:CPB離脱後高
値(p〈0.05)を維持していた. 考察 皮膚切開直後にセボフルレン群で,SVRが上昇しCOの低下を認めたがMAPは著変なく,血圧降下に
対しSVRの上昇が血圧の維持に関与していることが 示唆された.MPAPからみた肺循環には大きな影響は ないと思われる.イソフルレンによる頻脈は,併用し た徐脈効果をもつフェンタニールで相殺され,適切な rate controlが行いえた.循環動態と血漿カテコラミ ン濃度との関連は個体差が大きく,一定の傾向が認め られなかった.これらの結果,CABGの麻酔でセボフ ルレソおよびイソフルレンは,フェンタニールの併用 で心機能への影響も少なく,有用性の高い麻酔薬であ ることが明らかになった. 一856一223 結語 CABGの麻酔でセボフルレンおよびイソフルレン はフェソタニール併用下で,共に有用性の高い麻酔薬 であることが確認された.