112 (32) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
ノ ムラ ミノル野村 実(昭和31
医学博士 乙第1110号平成2年9月21日
学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者)
実験的心筋梗塞犬における,イソフルレンー笑気麻酔の循環動態ならびに心筋 代謝に及ぼす影響 (主査)教授 藤田 昌雄 (副査)教授 小柳 仁,小林 勝雄論 文 内 容 の 要 旨
研究目的 イソフルレンは導入覚醒が速やかで臓器障害が少な いと言われ,新しい吸入麻酔薬の1つであるが,心筋 内血流分布異常(coronary steal)を起こすという報告 もある.虚血性心疾患を合併する患者への麻床応用の 可能性を考え,虚血心モデルを作製し,イソフルレン の循環動態,冠循環および心筋代謝について検討した. 方法 実験には体重15~20kgの雑種成犬15頭を用い,50% 笑気とベントバルビタールで維持麻酔を行なった.正 常心において,1%および2%イソフルレンを吸入さ せ,60分間にわたり観察した.冠動脈前下行枝を結紮 することにより心筋梗塞を作製し,血行動態が安定し た後,虚血心についても同様に1%および2%イソフ ルレンを吸入させ,60分間にわたり観察した.心筋組 織血流量の測定には水素クリアランス法を応用した, また,冠静脈洞にカテーテルを挿入して,2%吸入時 の乳酸,ピルビン酸等を測定し心筋代謝を検討した. 各測定値については,平均値±標準誤差を求め,正常 心・虚血心の対照値に対するpaired-T-testを行い危 険率5%以下を有意差ありとした. 結果 正常心において,1%イソフルレンでは,平均動脈 圧と心拍出量の低下が同程度であったが,2%イソフ ルレンでは,平均動脈圧の低下が心拍出量の低下に比 べて著しく,体血管抵抗が著明に(p<0.05)低下した. 左室仕事量,脈拍血圧積,左室dp/dtも吸入濃度依存 性に有意に(p<0.05)低下した.しかし,心筋酸素摂 取率,心筋乳酸摂取率,冠静脈洞乳酸/ピルビソ酸比は 有意に(p<0.05)低下を示し,endocardial viability ratio(EVR)も保たれた.虚血心においては,正常心 と同様に吸入濃度依存性に血圧,心拍出量の低下が有 意に(p<0.05)見られた.左室仕事量,脈拍血圧積な どは正常心よりも低下の程度が著しく,酸素需要の著 明な減少が見られた.また,イソフルレン2%におい て,虚血部,隣接部における心筋組織血流量,EVR, 心筋酸素摂取率の有意な(p<0。05)低下がみられた. 冠静脈洞乳酸/ピルビン丁丁は上昇(p〈0.05)したが, 心筋乳酸摂取率には変化がなかった. 考察および結語 イソフルレンは,正常心においては,酸素需要と供 給が保たれ心筋代謝は維持されていると考えられた. 虚血心において1%イソフルレンでは循環動態に及ぼ す影響は少ないが,2%では虚血部における心筋組織 血流量の低下,冠静脈洞乳酸/ピルビン酸比の上昇, EVRの低下などが見られ,心筋代謝の面で虚血を生じ た可能性がある.以上より,虚血性心疾患を合併した 患者における高濃度のイソフルレンの単独使用は慎重 に行なうべきであると考えられる. 一722一1/3