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臓側胸膜壁側胸膜脂肪層胸内筋膜最内肋間筋 肋骨 肋間筋間脂肪織および肋間動静脈 肋間筋 図 1 胸膜 胸壁の正常解剖 ( 文献 2) より一部改変して転載 ) 胸膜 胸壁の代表疾患日常的に遭遇する可能性が高い疾患は 腫瘍であれば原発性肺癌からの直接浸潤や転移性腫瘍 非腫瘍性疾患であれば胸水 膿胸など

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Academic year: 2021

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全文

(1)

縦隔・胸膜疾患における画像診断の役割

はじめに

1) 胸膜は、肺と胸壁の間に挟まれて存在し、臓側胸膜と 壁側胸膜に分けられる。正常では、通常の5~10mm厚 のCTでは臓側胸膜と壁側胸膜の分離は困難であり、連 続する線状影として正常胸膜を捉えることも難しい。し かし、逆にいえば、本来認められない胸膜や胸膜腔が認 められれば異常所見と考えられ、CTで胸膜病変の有無 が容易に診断できるようになる。胸壁は骨と周囲の軟部 組織からなるが、CTではこれらの各組織を分離するこ とが可能である。また、CTは胸膜や肺内病変の胸壁へ の進展範囲の診断にも役立つ。しかし、CTでは組織間 コントラストの不足のため、腫瘍の進展範囲や組織の性 状などに関する十分な情報が得られにくいことが多い。 その場合は、組織間コントラストに優れるMRIの方が有 用性が高い。

Diseases of the Chest Wall

Shoichiro Matsushita, M.D.1), Yasuyuki Kurihara, M.D.2), Kazuhito Nozu, M.D.1),

Yukinori Okada, M.D.1), Atsuko Fujikawa, M.D.1), Shin Matsuoka, M.D.1),

Tsuneo Yamashiro, M.D.1), Kunihiro Yagihashi, M.D.1), Yasuo Nakajima, M.D.1)

Summary

In evaluation of chest images in daily practice, we should pay attention not only to the lung parenchyma but also to the pleura and the chest wall because there are many kinds of chest wall diseases, although they are not common. We present radiologic features of several impor-tant diseases including pyothorax-associated lymphoma, chylothorax, pericostal tuberculosis, actinomycosis, nocardiosis, neurogenic tumor, elastofibroma, relapsing polychondritis and SAPHO syndrome. It is important to understand their imaging characteristics for precise di-agnosis and treatment.

1) Department of Radiology, St. Marianna University School of Medicine

2) Department of Radiology, St. Luke’s International Hospital NICHIDOKU-IHO Vol.59 No.1 102-110 (2014)

3.胸膜・胸壁疾患

3-2.胸壁疾患

松下彰一郎

1)

,栗原 泰之

2)

,野津 和仁

1)

,岡田 幸法

1)

,藤川あつ子

1)

松岡  伸

1)

,山城 恒雄

1)

,八木橋国博

1)

,中島 康雄

1) 聖マリアンナ医科大学 放射線医学講座1) 聖路加国際病院 放射線科2)

胸膜・胸壁の正常構造とHRCT解剖

1、2)

(図1)

胸膜は臓側胸膜と壁側胸膜からなるが、胸水貯留か気 胸の場合以外は、これらを分離識別することは困難であ る。胸壁は、肋骨、胸椎、胸骨からなる骨性胸壁と、筋 肉を主としたその周囲の軟部組織からなる。CTでは明 確にこれらの組織を識別することができる。正常では、 CTで胸膜外脂肪層を同定できない場合が多く、肋間で は胸膜と胸内筋膜および最内肋間筋が重なって線状構造 として認められる。肋骨下には、胸膜、胸膜外脂肪層お よび胸内筋膜が存在しているが、正常では胸膜の同定は できない。したがって、肋骨下に線状の構造物を認めた 場合は、胸膜肥厚と診断できる。

(2)

図1 胸膜・胸壁の正常解剖 (文献2)より一部改変して転載)

胸膜・胸壁の代表疾患

日常的に遭遇する可能性が高い疾患は、腫瘍であれば 原発性肺癌からの直接浸潤や転移性腫瘍、非腫瘍性疾患 であれば胸水、膿胸などであると思われるが、ここでは、 頻度はやや下がるが是非知っておきたい疾患について取り 上げた。代表的な疾患に関しては成書を参考にされたい。

胸膜(腔)の代表疾患

1. 慢 性 膿 胸 続 発 悪 性 リ ン パ 腫 (PAL: pyothorax-associated lymphoma) 1)、3- 5)(図2) 慢性膿胸に続発する悪性リンパ腫で、慢性膿胸の2% に合併するという報告もある。また、80%の症例で人工 気胸術の既往があり、人工気胸術からPAL発症までの期 間は平均で43年だったという。PALの組織型としては、 diffuse large B-cell lymphoma(DLBCL)が最も多い。 発生の要因として、慢性膿胸による慢性炎症による刺激 の他、Epstein-Barr virus (EBV)との強い関連が示唆 されている。PALは高齢者に多い(平均年齢70歳)。背 景には慢性膿胸があり、呼吸機能も低下しているため、 予後は悪く、5年生存率は35%程度である。治療法とし ては手術(胸膜肺全摘)、化学療法、放射線療法などが ある。また、PALは痛みで発症することが多い。60%程 度の症例で、胸痛、あるいは背部痛が見られるとされて いる。単純X線写真では膿胸腔陰影の拡大や、膿胸壁の 石灰化の破壊像、肋骨の溶骨性変化などを見ることが多 く、CT/MRIでは膿胸壁に接する腫瘤を認める。膿胸腔 と腫瘍部の区別には造影CTやMRI、PET/CTが有用で ある。 2.乳糜胸 6、7)(図3) 乳糜胸とは胸腔内にリンパ液が存在する状態である。 乳糜胸水は悪性細胞や他の胸水中細胞の編成や、コレス テロールの集積により起こる。胸腔における乳糜の貯留 の原因は、主に次の3つの機序による。すなわち、①胸 管や大きなリンパ管の破綻からくる漏出、②胸膜のリン パ管からの漏出、③横隔膜を介した乳糜腹水の胸腔への 漏出である。約50%の乳糜胸は新生物由来で、25%が外 傷によるもの、15%は特発性である。新生物病変の75% はリンパ腫で、乳糜胸はリンパ腫の初発症状となりうる。 胸管は、第5~7胸椎の高さで脊椎を横切るため、これよ り下部での傷害では右、これより上部での傷害では左に 乳糜胸を生じる傾向にある。乳糜のCT値は脂肪成分を 含んでいるにもかかわらず、通常の胸水のCT値との区 別が困難である。それは乳糜がタンパク質も豊富に含む からである。

胸壁の代表疾患

1.胸囲結核3、4) (図4) これまで胸壁冷膿瘍、結核性胸壁膿瘍、肋骨周囲膿瘍 など様々な名称で呼ばれてきた胸壁軟部組織内の結核性 病変の総称である。胸囲結核は必ずしも結核後遺症とし て見られる病態ではないが、その発生機序は①結核性胸 膜炎による胸膜の癒着・肥厚により、リンパ管新生が起 肋間筋

(3)

こり、胸腔内の結核菌がリンパ行性に胸壁軟部組織に到 達し乾酪性病変を形成する、②胸壁軟部組織に直接穿破 して胸壁膿瘍を形成する、③結核菌の血行性播種により 病変を形成する、④胸腔穿刺などの処置により、医原性 に胸腔内へ結核菌が播種する、などが考えられている。 特に、胸腔内と交通を有する場合には胸壁穿孔性膿胸と 呼ばれる。臨床的には結核既往のあるものが8割ほど、 活動性結核のあるものが17.4~62.5%で、肺病変既往と も明らかでないものも症例報告されている。画像所見は 基本的には膿瘍のそれであるものの、各症例で胸腔内病 変からの交通や、内部もしくは近傍に骨破壊(腐骨)を認 めるなど病変の進展経路を示す所見が多彩に認められ る。 2.放線菌感染症4、8)(図5) Actinomycesによる感染症を放線菌症と呼び、多くは Actinomycosis israelliによる慢性化膿性肉芽腫性疾患で ある。嫌気性グラム陽性桿菌で、口腔内や消化管内に常 在する。放線菌症の約15%が胸部に発生する。肺内に病 変が限局する気管・肺期から病変の進展ごとに肺胸壁期、 軟部組織~皮膚にまで到達する瘻孔期に分類される。た だし胸壁のみに所見を来した症例も報告されているため 胸壁腫瘍の鑑別には挙げておきたい。放線菌症特有の画 像所見はないが胸壁病変としては胸壁を含む異常な軟部 組織の腫脹や膿瘍形成、またこれらに連続性のある膿胸 からの瘻孔形成の他、骨膜炎と骨髄炎の所見などが見ら れる。軟部腫瘍様の画像所見を呈することがありその際 図2 慢性膿胸続発悪性リンパ腫(PAL: pyothorax-associated lymphoma) 70歳代,男性.3ヵ月程前から右胸壁の腫瘤,疼痛を自覚した.症状改善な く,精査目的に当院受診.20歳頃,右肺結核のため胸郭形成術の既往がある. 胸部単純X線写真では右胸腔内には慢性膿胸によると思われる石灰化( ) を認める.この膿胸腔と連続するように右側胸部皮下には腫瘤性病変が認め られ,また膿胸腔の頭側部分では肋骨の溶骨性変化も認められる(A).CT では右胸腔内には石灰化を伴った慢性膿胸を認め,この腹側に肋骨を破壊す る腫瘤性病変を認める(B,C).縦隔および肺門には病的リンパ節腫大は認 めない.その後,開胸生検でDLBCLと診断された.Epstein-Barr virus(EBV) 陽性であった.化学療法(R-THP COP)および放射線療法が施行された.

(4)

は肺癌、肉腫との鑑別が困難である。生検で診断できる 症例は半数以下で、多くは確定診断が得られないまま、 外科的手術(VATS を含む)により診断されている。その 理由としては、肺放線菌症は慢性化膿性肉芽腫性疾患で あることから、Actinomyces属の菌塊は病変の深部に存 在することが多く、周囲は肉芽組織で囲まれており、通 常の生検針では肉芽組織を通過できず、菌塊の部位を適 切に採取できていないためと考えられている。 3.ノカルジア症 9) Nocardia属は好気性グラム陽性桿菌であり、土壌や水 中など広く自然界に分布する。Nocardia属の感染防御に はT細胞による細胞性免疫が主な役割を果たしているた め、リンパ腫、臓器移植、HIV感染症、ステロイドや免 疫抑制剤投与といった細胞性免疫障害患者で発症のリス クが高い。病原体の経気道吸入による肺ノカルジア症の 他、外傷からの経皮的感染による皮膚ノカルジア症、一 次感染巣から血行性に播種する播種性ノカルジア症に分 類される。ノカルジア症において特異的な画像所見はな いが、胸部単純X線写真および胸部CTで末梢側優位に 非区域性の浸潤影が広範囲に見られることが多い。細胞 性免疫障害という臨床背景を見たら鑑別に挙げるべき疾 患である。 4.神経原性腫瘍 10)(図6) 神経線維腫症で見られる叢状神経線維腫は、広範囲に 胸壁を侵す。CTでは、均一で境界明瞭な円筒形の腫瘤 として見える。MRIではT1強調像で低~等信号、T2強 調像で不均一な高信号を示す。 図3 乳糜胸 60歳代,女性.右肺S6のadenocarcinomaに対して,右中下葉切除術後. 胸部単純X線写真(A)および胸部CT(B, C)にて右胸腔内には多数のcavity を認め,内部にはair-fluid levelを形成している.ドレーン挿入およびピシ バニール注入を行うも,治療抵抗性であり,開胸乳糜胸掻爬術+胸管結紮 術が施行された. A B C

(5)

5.Elastofibroma (弾性線維種)1、2)(図7) 肩甲骨と肋骨との摩擦による結合組織の反応性増殖が 病因と考えられている。重労働の人に多く、南九州から 沖縄にかけて多く見られる。両側発生も少なくなく、通 常は無症状で発見される。CTでは肋間筋と連続する軟 部腫瘤として認められる。内部に索状の脂肪濃度域を認 めることが多い。 6.再発性多発軟骨炎3、11)(図8) 自己免疫機序によって、耳介、鼻、喉頭、気管気管支、 関節の軟骨の炎症を反復する疾患である。関節リウマチ、 全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群などの合 併が多い。胸部CTでは中枢部気道壁の肥厚が認められ る。気道壁の肥厚は、軟骨を有する部分に高度で、気管 では前方3分の2が高度になりやすい。画像上、肺野の末 梢気道病変が見られる症例もある。気管、中枢部気道の 狭窄、虚脱が見られ、ことに呼気で目立つ。また病変は 肋軟骨周囲にも認められることがある。 A C B D 図4 胸囲結核 20歳代,女性.右側胸部腫瘤.胸部単純X線写真では右側胸部から側腹部にかけて軟部腫瘤( )を認める(A).胸部CTでは胸腔内から胸壁にかけ て連続する腫瘤を認める.内部は低吸収域を呈し,嚢胞性腫瘤と考えられる(B, C).肺野では小葉中心性分布を呈する小結節(○)を認める(D). 本症例はクオンティフェロン陽性であり,胸囲結核と診断された.抗結核薬内服で腫瘤は消退した.

(6)

図6 神経原性腫瘍 70歳代,男性.スクリーニン グで施行したCTで,右肋骨 の背側部分に結節性病変( ) を指摘.造影では淡い造影効 果を有している(A, B).経時 的変化は認められず,臨床的 に肋間神経由来の神経腫と診 断された. A B 図5 放線菌感染症 40歳代,男性.胸部単純X線写真では右肺に多発結節を認め,右胸水貯留 を伴っている(A).胸部CTでは両側肺野末梢側優位に多発結節を認める (B).造影では内部は低吸収を呈している.一部の病変は胸膜にも認められ, 胸壁への浸潤を呈している(C, D).また,少量の胸水貯留を認める(未提 示). A B C D

(7)

7.SAPHO症候群3)(図9)

Synovitis(滑膜炎)、Acne(座瘡)、Pustulosis(膿 疱症)、Hyperostosis(骨化症)、Osteitis(骨炎)を特徴 とする。主に前胸部で無菌性の骨炎を認め、鎖骨と第一 肋骨部に骨硬化と腫大が見られる。胸鎖関節以外でも下 顎骨、脊椎、仙腸、関節、末梢関節が侵されることもあ る。

おわりに

胸部画像診断においては、肺を中心とした重要臓器に 目を奪われがちであるが、胸壁にも見逃してはならない 疾患が隠れていることがある。胸部の画像診断では、胸 壁も含めた隅々まで読影することが重要である。胸壁疾 患の理解に本稿が少しでもお役に立てれば幸いである。 図7 Elastofibroma(弾性線維腫) 70歳代,女性.背部腫瘤精査.CTでは肩甲骨下部の広背筋と肋骨の間に凸レンズ状の形態を呈する腫瘤( )を認める(A). MRIでは内部はT1強調像,T2強調像とも低信号で,内部には索状/線状の脂肪濃度(高信号域)が霜降り状に混在している(B, C). A B C 図8 再発性多発軟骨炎 50歳代,女性.前胸壁の腫脹( ),気管壁の肥厚( )を認める.肥厚は前方の3分の2の気管軟骨が存在する部分で認められ, 膜様部は保たれる.肋軟骨周囲の軟部組織の腫脹( )も認める. A B

(8)

図9 SAPHO症候群 胸部単純X線写真で胸鎖関節部の肥厚( )を認める(A).胸部CTで も胸鎖関節部で骨硬化,骨過形成( )が認められ,周囲軟部組織の 腫脹を伴っている(B).MRIでは胸鎖関節から胸骨柄周囲にはT2強 調画像で比較的低信号域な軟部腫瘤( )が認められ,同部はSTIR像 で不均一な高信号として描出されている.連続する皮下脂肪層や縦隔 側に浮腫状変化が見られる(C, D).骨シンチグラフィでは胸鎖関節部 に強い集積増加あり.胸椎にも集積増加あり(E)(CT所見などと合 わせてこちらの病変もSAPHO症候群の一部と考えられた). A B C D E

(9)

【参考文献】 1) 足立秀治, 森木健生: 胸膜・胸壁疾患. 村田喜代史, 上甲  剛, 村山貞之編:胸部のCT 第3版, メディカル・サイエンス・ インターナショナル, 東京, 667-687, 2011 2) Im JG, Webb WR, Rosen A, et al: Costal pleura: ap- pearances at high-resolution CT. Radiology 171: 125-131, 1989 3) 松下彰一郎, 栗原泰之, 藤川あつ子, 他: 胸壁腫瘤(乳房以 外). 臨床画像 29: 226-230, 2013 4) 藤川あつ子, 栗原泰之: 胸壁の非腫瘍性病変. 臨床画像 27: 690-699, 2011 5) 岩澤多恵, 小倉高志: 慢性膿胸続発悪性リンパ腫. 酒井文 和編:知っておくと役に立つ まれな呼吸器関連疾患ケース ファイル50, 克誠堂出版, 東京, 189-193, 2013 6) 長谷川好規, 島本佳寿広, 岩瀬三紀監訳: コリンズ・スターン 胸部画像診断エッセンシャル, 西村書店, 東京, 171, 2011 7) RSフレイザー, Nコールマン, NLミュラー, 他編著;清水英治, 藤田次郎監訳: 胸膜疾患.フレイザー呼吸器病学エッセンス, 西村書店, 東京, 911-912, 2009 8) 皿谷健: 放線菌肺炎:肺アクチノマイコーシス.呼吸器内科 24: 39-42, 2013 9) 濱田洋平, 青木洋介: ノカルジア症.呼吸器内科 24: 43-48, 2013 10) RSフレイザー, Nコールマン, NLミュラー, 他編著; 清水英治, 藤田次郎監訳: 横隔膜・胸壁疾患.フレイザー呼吸器病学 エッセンス, 西村書店, 東京, 996-997, 2009 11) 酒井文和: 再発性多発軟骨炎. 胸部画像診断スタンダード, メディカル・サイエンス・インターナショナル, 東京, 218-219, 2013

参照

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