最 近経験 した稀 な胸 腺腫瘍 の2例
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(2) 日呼 外 会誌. 102 (540). Fig. 1. Chest. X-ray. on admission. 第10巻4号. (1996年5月). in case 1.. Glimerius染. 色 が 陽 性 の顆 粒 を 有 す る異 形 性 の. あ る 腫 瘍 細 胞 が 胞 巣 状 に 増 生 し て い た(Fig. 3).免. 疫 組 織 学 的 に は,HMB‑45(antihuman. melanoma),. S‑100,. NSE,. 陽 性 で あ り(Fig.4),悪. Chromogranin等. が. 性 黒 色 腫 と診 断 さ れ. た. 術 後 経 過:臨. 床 的 に 皮 膚,眼. 球,口. 腔,鼻. 腔,. 上 部 下 部 消化 管 及 び子 宮付 属 器 等 を含 めた 全 身 検 索 を 施 行 し た が 異 常 は な か っ た.MTTア セ イ に よ る抗 癌 剤 感 受 性 試 験 で は,有. Fig.. Fig. 2. Chest. MRI showing. thymic. tumor.. 3. Histological (HE •~. 100).. section. of. the. tumor. ッ. 効性 のあ. in. case. 1.
(3) 稀 な胸腺腫瘍 の2例. 103 (541). 既 往 歴:特 記 す べ き こ とな し. 現 病歴:13歳. 時,学 校 検 診 にて胸 部X線 上 中. 心 陰 影 の 拡 大 を指 摘 され経 過 観 察 され て いた. 同陰 影 の 増 大傾 向を 認 め,1995年3月. 当科 紹 介. 入 院 と な った. 理 学 的所 見:異 常所 見 な し. 一 般 検 査成 績:HCVが 陽 性 で,若 干 の肝 機 能 障 害 を 認 めた 他 は異常 な く,腫 瘍 マ ー カ ー も 正 常 範 囲 で あ った. 胸 部 単 純 写 真:CTRは48%,中 Fig.. 4. Photomicrograph chemical. of staining. with. positive. immunohisto-. HMB-45. 心陰影左側. の若 干 の拡 大 を認 め た(Fig.5).. (•~ 200).. 胸 部CT所. 見:前 縦 隔 に上 縦 隔 か ら心 横 隔膜. 角 に お よぶ辺 縁 平 滑 で 内部 構 造 比較 的均 一 な低 る薬 剤 を 見 出 し得 ず,腫. 瘍 のAdverse. effectを. 吸収 域 の陰影 を認 め た.CT値. は脂 肪組 織 と ほ. 考 慮 し,本 症 例 に 対 し て は 化 学 療 法 は 施 行 し な. ぼ 同値 で あ り,造 影 に よ る腫 瘍 の 濃染 は なか っ. か っ た.術. た.. 後5ヵ. 月 を経 て 再 発 な く生 存 中 で あ. る.. MRI所 症 例2(胸. 症. 例:21歳,男. 主. 訴:胸. 家 族 歴:特. 見:腫 瘍〒 は,T1お. よびT2強. 調像 と. も に 高 信 号 を 呈 し,血 管 構 造 物 の ほ か は,. 腺 脂 肪 腫). dynamic. studyに よ る染 ま りは ほ とん ど無 か っ. た.脂 肪 抑制 イ メー ジ にて信 号 は抑制 され,胸. 性.. 部 異 常 陰 影.. 腺 脂 肪 腫 を疑 った(Fig.6). 手. 記 す べ き こ と な し.. Fig. 5. Chest. X-ray. 術:胸 骨 正 中切 開 の も と腫 瘍 の摘 出 を行. on admission. in case 2..
(4) 104 (542). Fig. 6. 日呼外 会 誌. Chest. MRI showing. suppressed. っ た.腫. a fat density. in the fat suppression. 瘍 は 薄 い 被 膜 に 包 ま れ,周. 浸 潤 は 認 め な か っ た.左 甲 状 腺 動 脈 よ り1本. mass in the anterior (FS). mediastinum.. 第10巻4号. The signal. (1996年5月). of the tumor. was. image.. 囲組 織 へ の. 腕 頭 静 脈 よ り2本,下. の 流 入 血 管 を 処 理 し,周. の 脂 肪 組 織 を 含 め 腫 瘍 を 摘 出 し た.重. 囲. 量390g. の 被 包 化 さ れ た 充 実 性 腫 瘍 で あ っ た. 病 理 組 織 学 的 所 見:成 Hassa1小. 熟 した脂 肪 組 織 の 中 に. 体 を含 む 胸 腺 組織 が 島状 に散 在 した. (Fig.7).悪. 性 所 見 は な か っ た.. 術 後 経 過:術. 後 経 過 は 良 好 で,術. 後2週. 間 目. に退 院 した。 Fig.. 考. 7. 察. Histological (H •~. section. of the. tumor. in. case. 2. 100).. 悪 性黒 色腫 は極 め て転 移 を来 しや す い腫 瘍 と し て 知 ら れ て い る.今. 回 我 々 は,胸. 腺 以外 に そ. の 分 化 ・遊 走 の 段 階 で 胸 腺 に 迷 入 し た. の局 在 を見 いだ し得 な か った 悪 性 黒 色腫 を経 験. melanocyteが. した.本. 性 黒 色 腫 の特 異 的 な現 象 と して原 発 巣 の 自然 脱. 症 例 に お け る腫 瘍 の 発 生 成 因 と し て,. 癌 化 した 可 能 性 で あ る.ま た,悪. 以 下 の 二 つ の 可 能 性 を 考 慮 し た.Melanocyte. 落 が あ り,原 発 巣 不 明 の 悪 性 黒 色 腫(い. の発 生 起 源 は胎 生 期 早 期 の 神 経 管 に存 在 す る. unkowon. neural. 約4%に. crestで. あ り,こ. こ か ら発 生 し た. melanoblastはmelanocyteと. し て 分 化 し,身. primary. 生 ず る と さ れ る2).第 二 の 可 能 性 は,こ primary. 色 腫 の 解 剖 学 的 分 布 は 文 献 上,皮. 体 各 部 に 遊 走 す る と さ れ る9.第. 一 の 可 能 性 は,. 性 で あ る.黒. 至 る この 一連. 膚 以 外 で は,眼. らmelanocyteに. わゆ る. 悪性 黒 色 腫 の. のunknown. neural. crestか. melanoma)は. melanomaの. 部 が 約79%と. 転移の可能. 最 も多 く,外. 陰 ・.
(5) 稀 な胸腺腫瘍の2例 腔 が約10%,消. 化 管3.5%,呼. 105 (543). 吸器2。6%等 とな. 肪 腫 に特 徴的 な分 葉 状 の構 造 を 認 めず,胸 腺 か. っ てお り,こ の4領 域 で95%以 上 を 占め る3).縦. ら有 茎 性 に発 育 して い た として胸 腺 由来 の 脂肪. 隔原 発 例 は黒 色 腫 の他 に,神 経 原 性腫 瘍 が母 体. 腫 をthymolipomaと1ipoma. とな るmelanotic. 分 類 す る こ とを提 唱 したB).現 在 まで の と ころ,. tumorと. して報 告 され て い. of the thymusに. るが,後 者 を除 く縦 隔 発 生例 は,検 索 し得 た 限. 成 熟 脂 肪 組 織 の み か ら な る1ipoma. りで は12例 の報 告 を認 め るのみ で あ り,さ らに. tymusの. 胸 腺 発 生 例 は 本 邦 報 告 史 上2例 た4,5).一方,unknown. primary. のみであっ melanomaの. of. the. 報 告 例 は1例 のみ で あ る.. 本 邦 報 告 例胸 腺 脂 肪 腫(tymolipoma)の. 臨床. 像 は,58例 を検 討 した 竹 内 らに よる と平均 年 齢. 転 移部 位 として は,多 発 性 の 内蔵 転 移 が64%と. は35歳 と比 較 的若 く,男 女比 は ほ ぼ同 比,摘 出. 最 も多 く,多 発 性 の皮 膚 ・リンパ節 転 移 が28%. 腫瘍 の平 均 重 量 は656g,43例(74%)が. で これ に次 いで い た6).な お,初 発転 移 巣 と して. で あ った14>.年 齢 は 幅広 く分 布 す るが(3〜76. は肺 が圧 倒 的 に多 く6),胸 腺 の み の 転 移 例 は 見. 歳),49例 の検 討 か ら山村 らは20歳 代 と40〜50歳. あた ら なか った.想 定 した 二 つ の 可能 性 は どち. 代 の2峰 性 の分 布 を認 め た と報 告 した15).無 症. らも極 め て稀 な事 象 で あ るが,原 発巣 を離 脱 し. 状 に経過 す るこ との 多 い本 疾 患 は,腫 瘍 が あ る. たmelanoma細. 無症 状. 胞 が胸 腺 組織 に のみ 補足 され,. 程 度 の 大 き さに発 育 す るま で発 見 され な い場 合. 且 つ初 発 転移 巣 を形 成 す る上 で の強 い臓 器 親 和. が多 い と考 え られ,そ れ は摘 出腫瘍 の平 均 重 量. 性 を胸 腺 にの み呈 した と仮 定 す る こ とは,従 来. に も反 映 され て い る.従 って,発 生年 齢 は さ ら. の 転移 仮説7‑9>から はや や 考 えづ らい と思 わ れ. に低 い こ とが予 想 され,本 疾 患 が 比較 的 若 い年. る.臨 床 的 に他 に原 発 巣 を見 出せ ず,切 除標 本. 齢 層 を 中心 に発 生 す る可 能 性 が示 唆 され た.ま. 上 も孤 立 性 の 病 巣 で あ った こ と,周 囲 リンパ節. た,本 邦 報 告例 の有 症 状 例 を検 討 す るに,症 状. に転移 を認 め な か った こ と,過 去 に母 斑切 除歴. の 約半 数 は腫瘍 の圧 排 に よ る もので あ り,残 り. を 有 さ な い こ とな ど か ら,unknown primary. 半 数 は筋 無 力 症様 の症 状 で あ っ た.重 症筋 無 力. の転 移 の可 能 性 は否 定 しきれ な い が,本 症 例 の. 症 と本疾 患 との 関連 性 につ い て は否 定 的 な見 解. 場 合 む しろ胸 腺 原 発 が疑 わ れ た.本 邦 報 告 例2. もあ るが16),本 例 を含 めた 本邦 報告 例59例 中6. 例 の 胸腺 発 生 悪 性 黒 色腫 の うち,予 後 の 明記 さ. 例(約10%)に. れ た1例 は術 後 約1年 後 に多 発 性 の遠 隔 転 移 を 来 し 癌 死 し た.ま melanomaの. た,unknown. primary. 予 後 も一般 に不 良 と され て お り10),. 重症 筋 無 力 症 が存 在 した.. 本 症 の診 断 にMRIは. 有 用 だ が,高 分 化型 脂. 肪 肉腫 との鑑 別 が 必 ず しも容 易 で は な い場 合 が あ り14),ま た腸 瘍 の 増 大 に よる圧 迫 症 状 出 現 の. 現 在 本 症 例 の経 過 を外 来 に て慎 重 に見守 っ て い. 可 能 性 が あ る こ とか ら,た とえ無 症状 で あ って. る.術 後4ヵ 月 を経 て非担 癌 生 存 中 で あ る.. も年 齢 が 若 い場 合 に は,積 極 的 な手術 適 応 が あ. 胸 腺 脂 肪 腫 が 胸 腺 腫 瘍 中 に 占 め る割 合 は2 〜9%と そ の発 生頻 度 は稀 で あ り11) ,本 邦 で は. る と考 え る.術 式 は,再 発 の報 告 が な い こと よ. これ ま でに58例 の報 告 を認 め るにす ぎな い.胸. 症 状 とし て筋 無力 症 を伴 わ な く とも抗 ア セ チ ー. 腺 脂 肪 腫 の 発 生 成 因 は末 だ 不 明確 だ が,従 来 ①. ル コ リン受 容 体抗 体 陽 性 例 が存 在 す る こ とよ り. 胸腺 腫 の脂 肪 変 性,② 胸 腺過 形 成 組 織 の 脂肪 変. 胸腺 腫 に準 じた拡 大 胸 腺 摘 出術 を主 張 す る意 見. 性,③ 胸 腺 脂 肪 組織 由来 の新 生物,④ 胸 腺 お よ. もあ る15).良性 腫 瘍 で は あ るが,重 症 筋 無 力症 を. び胸腺 脂 肪 組 織 由 来 の混 合 腫瘍 説 が提 唱 され て. 合 併 した症 例 や抗 ア セ チ ール コ リン受 容 体抗 体. きた12).組織 学 的 には,成 熟 した脂 肪 組 織 の 中 に. 陽 性 例 に対 して は選 択 的 に拡 大胸 腺 摘 出術 を施. 正 常 な胸 腺 組 織 が 島 状 に散 在 す る とい う特 徴 的. 行 す るの が妥 当 と考 え る.. な所 見 を呈 す る.一 方,遠. 山 らは 成熟 脂 肪 組織. のみ か らな り,胸 腺 組織 を腫 瘍 組織 内 に全 く認 め なか った症 例 を報 告 し,形 態 学 的 に も胸 腺 脂. り腫 瘍 切 除 で十 分 とす る考 えが あ る一 方 で17),.
(6) 106 (544). 日呼外 会 誌. 文 1). 10) 柴 田 明 彦,森 嶋 隆 文,花 輪. 献. 神 保 孝 一:悪. 性 黒 色 腫 の 基 礎 と 臨 床,p. 富 士 書 院,札. 幌,1987.. .744,. 13) 遠 山 竜 也,水 野. ; reports. 発巣 が 皮. 力,柴. 田和 男,他:胸. 腺から. 発 生 した 脂 肪 腫 の1例.外 科52:1515‑1517, 1990. 14) 竹 内 英 司,佐 橋 清 美,山 瀬 博 史,他:術 前診 断 可 能 で あ った 胸 腺 脂 肪 腫 の1例.日 臨外医会誌 55:1994‑1997,1994. 15) 山村 光 弘,青 木 啓 一,高 梨 秀 一 郎,他:術 前抗 ア セ チ ル コ リン 受 容 体 抗 体 が 陽 性 を示 し た 胸. 6) Baab GH, McBride CM : Malignant Melanoma. Arch Surg 110 : 896-900, 1975. 7) Ewing J: Neoplastic Diseases : A Treatise on Tumors. 3rd Ed., Chap. 4. p 87-100, Saunders Inc., Philadelphia, 1928. 8) Paget S: The distribution of secondary growth in cancer of the breast. Lancet 1 : 571 -573 , 1889. 9) Bross IDJ, Blumenson LE : Metastatic sites that produce generalized cancer : Identification and kinetics of generalizing sites, Fundamental Aspects of Metastasis . 1st ed, p 121-150, North-Holland publ Co, Amsterdam, 1976.. tumors. 滋,他:原. 11) Teplick JG, Nedwick A, Haskin ME : Roentgenographic features of thymolipoma. Am J Roentgenol Radium Ther Nucl Med 117 : 873 -877 , 1973. 12) Reitogen D, Fetter BF, Roses A, et al : Thymolipoma in Association With Myasthenia Gravis. Arch Pathol Lab Med 102 : 463 -466 , 1978.. 4) 佐 藤 明,畑 日 出夫,束 原 進,他:胸 腺原発 と考 え られ た 悪 性 黒 色腫 の1剖 検 例.病 理 と臨 床5:1243‑1248,1987。 5) 田辺 貞 雄,入 江 嘉 仁,中 村 裕 司,他:急 速 な縦 隔 陰 影 拡 大 を 示 した 胸 腺 悪 性 黒 色 腫 と転 移 性 肺 腫 瘍(骨 肉 腫)と の 各1症 例.日 胸 外 会 誌 36:244,1988.. thymic. (1996年5月). 完 全 自然 消 裾 した 悪 性 黒 色 腫 の 小 児 例.臨 41:llO3‑1107.1987.. 2) Chang P, Knapper WH : Matastatic melanoma of unknown primary. Cancer 49 : 1106-1111, 1982. 3) Scotto J, Fraumeni JF, Lee JAH : Melanomas of the Eye and Other Noncutaneous Sites : Epidemiologic Aspects. J Natl Cancer Inst 56 : 489-491, 1976.. Rare. 第10巻4号. 腺 脂 肪 腫 の!手 術 例 一 本 邦 に お け る胸 腺 脂 肪 腫49例 の文 献 的 考 察 一.日 胸 外 会 誌42:237‑ 242,1994.. 16) Rosai J, Levine CD : Tumor of Thymus. Atlas of tumor pathology, Armed Forces Institute of Pathology, 2nd series, p. 162-166, Fascicle 13 : Washington DC, 1976. 17) 平 林 弘 久,早 川 正 宣,中 岡 和 哉,他:胸. 腺脂肪. 腫 の1例 一 胸 腺 脂 肪 腫 本 邦 報 告 例 の検 討 一.日 臨外 医 会 誌55:1748‑1752,1994.. of malignant. melanoma. and. thymolipoma. Yasuhiko Ohta, Junzou Shimizu, Makoto Oda , Yoshinobu Hayashi Ayurni Osari, Tsuyoshi Kajita, Yoh Watanabe Department. Recently, who. we. was. treated. diagnosed. primary it. was. metastasis. two. no. signs. as It. a. tumor. malignant. recurrence. 5 months. having. thymolipoma. without. weighted. 390. g.. with. malignant. tumor,. resected of. patients. not. solitary. reports. I, Kanazawa. having. could. The. of. two as. melanoma. because. only. of Surgery. be. measured melanoma. myasthenia. thymic. out,. other. after. rare. School. we. lesions 6.5 •~. .. 5.5 •~. be 3 .5. .. Case We. found cm. the. , Kanazawa,. 1 was. and. is. 2 was resected. from. originated. , and. there. was. thymus. Japan.. a 72-year-old. metastasis that. in .. Case. Although. could. operation gravis. .. suspected. originating the. of Medicine. tumors. melanoma. ruled no. University. an in. was. no. Japan. thymus,. lymph. node. There .. She. a 21-year-old with. unknown. the. encapsulated. in. it. female,. surrounding. male. is. are. alive. with. diagnosed fat. tissue. ..
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