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急性心停止と蘇生法 金沢大学医学部第一外科学教室(主任

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(1)

急性心停止と蘇生法

金沢大学医学部第一外科学教室(主任

      村  上  誠       橘    貞       高  橋  一

ト部美代志教授)

亮郎

(昭和40年6.月9日受付)

 最近における外科臨床の進歩はめざましいものがあ るが,一方,これに伴って手術適応は拡大され,そ の内容は複雑多岐にわたるようになってきており,術 前,術中,術後を通じて急性心停止,すなわちacute cardiac arrestを来たし,不幸の転帰をとる症例も稀 ではない.急性心停止には,従来から心拍静止,す なわち,cardiac standstillと心室細動ventricular fibri11ationが含まれており,この両者は本質的には 別個のものであることはいうまでもないが,何れも心 臓からの血液面出が欠如した状態であり,正常心拍の 再開,血流の回復は寸刻の遅延も許されない.この場

合,不可欠の治療対策は所謂蘇生法(resuscitation)

であるが,最近比較的簡単で,しかも,有効な方法が 普及され,急性心停止の蘇生成功率の向上はめざまし いものがある.

 金沢大学第一外科教室において,昭和35年より今日「

に至るまで,原病進行の末期において心停止を来たし たもの,すなわち,末期心停止を除いて,蘇生法が施 行された急性心停止例は19例であり,その結果心拍の 再開をみたもの,すなわち,一応成功を含めた場合は 15例(79%),約完全に蘇生に成功したのは11例(約 58%)であった.

 本論文ではその経験について述べるとともに,蘇生 法実施の要点について若干の検討を加える.

 昭和35年より現在に至るまで蘇生法が実施された急 性心停止例は19例であるが,末期心停止例のほか,心 臓手術例,脳腫瘍などによる呼吸麻痺例,止血不能の 大出血例の発見がいちじるしく遅延した例などについ ては,蘇生の成否を論ずるに当っては不適当と考えら れるので除外した.

 心停止の原因については従来からいろいろのものが 挙げられているが,何れにしても,手術室内において 発生したものと,それ以外の場所で発生したものの間 には自ら差異があり,加うるに,心停止の発見や蘇生 法施行に当っても,人員の多少,各種装置や薬剤の有 無等によって,『その成否は一律に論ずることはできな いと考えられる.この見地から,本論文では症例を手 術室内群とそれ以外の病室,外来或いは中央検査部な どにおいて心停止を来たした手術室外宮に分けて観察

した.

 以下,それぞれについて説明する.

 第1群:手術室外面(表1)

 本病には7例が属しており,さきにも述べた如く,

末期心停止例を除いたものである,なかには急性心停 止との閥にあって,何れの範疇に入れるべきか判断に 迷うものもある.本玉では,手術室内の場合に比較し て,心massageは閉胸式のものclosed chest car・

diac massage,(以下CCCMと略する)が多くを占 めている.これは,急性心停止の発生場所が開胸を躊 躇せしめるような病室,外来,中央検:査部などである ためであろう.

 なお,人工呼吸法については,救急の場合が多い 関係上,呼気吹き込み人工呼吸法のうちmouth to mouth and nose法が施行されている.

 本群での蘇生成功率は部分的成功を含めて71.4%で あり,完全成功率は28.6%である.不成功例はNo.5,

6であるが,何れも心停止の発見がおくれたものであ る.また,部分的成功例のうちNo.1は全身衰弱が 甚だしいため,No.2は再度にわたる大量嘔吐と誤嚥 があったために,No.3は発見が遅延したために結局 死亡したものである.

 Acute Cardiac Arrest and Resuscitation. Seiitsu M:urakami. Tei8uke Tachfbana&Ichiro TakahaShi, Department of Surgery(1)(Director:Prof. M. Urabe), School of Medicine,

Kanazawa University.

(2)

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(3)

 第2群:手術室内群(表2)

 幽幽には12例が含まれている.このうち,閉胸式 massage(CCCM)ないし前胸壁叩打を施行したも の6例,開胸式心massage(open chest cardiac

massage,以下OCCMと略する)を行なったものは

6例でそれぞれの部分的成功を含めた場合の蘇生率は 100%および66.7%であり,完全蘇生率は100%および 50%である.全症例について,疾患別にみると,開胸 操作を必要とする食道癌および肺癌例が最:も多く,次 いで,脳腫瘍が3例である.開胸操作は心肺系統に悪 影響を及ぼすということ,中枢神経系の障害は不整脈 を始めとしてややもすれば循環動態を不安定ならしめ るという従来からの定説を如実に示している.

 梅壷呼吸法は全例とも気管内tubeの挿入の下にそ のまま用手船歌的陽圧呼吸(IPPB)を行なっている.

本群のなかで,蘇生法が不成功に終ったものは大部分 数時間にわたる手術を経過し,その間何らかの点で循 環系に負荷が続いていたために心衰弱が強くなり心停 止を来たしたと考えられるものである.時間が比較的 短い点を除けば,末期心停止に近い状態のものと考え られる.これにひきかえて成功例は何れも極めて短時 間の事故によって突発的に心停止を来たしたものが多 く,心拍の再開も順調であり,一旦心拍が再開した後 には,速かに心停止前の状態に回復している♂

 両面を通じて,CCCMないし前胸壁叩打を行なっ た11例中,3例に肋骨々折をみている.この他には 肺,肝などの破裂の如き重篤な合併症は経験していな い.なお,心室細動のためとくに除細動を必要とした ものは1例であった.

 以上2群の成績から最も明瞭にされた事実は,蘇生 法の成否が一にかかって急性心停止の迅速な発見にあ

ることである.蘇生に成功した症例では,何れも心 massageや画工呼吸法さらに各種薬剤の使用などが 適応になされたことはいうまでもない.しかし,CC・

CMに比較して有効な心拍出量:が得にくいとされてい る前胸壁叩打法のみでも,完全蘇生に成功している例 もあることは,発見までの時間が短いことが重要な因 子であることを物語っている.

 図1は,第1群のNo.2の症例について急性心停

止より,心拍再開に至るまでのECGの変化を経過を 追って示したものである.すなわち,心拍再開よりほ ぼ正常心拍に回復するまで変化に富んだ所見を呈して いる.この症例で.は1一旦椌骨動脈に微弱ながらも拍 動触知が可能となったが心一massageを中止して経過 を観察じたところ;再びECG上に所見の増悪をみと めたので,さらに心massage一を再開続行するととも

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(5)

甲状腺全別術後急性心停止 (谷○詩○子 21才 ♀)

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心マッサージ中止、経過観察

    心マッサージ再開

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撃ST下降著明

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ことが心筋の緊張を回復させるきっかけとなることを 示すとともに,たとえ,心拍が再開した後でも,脈拍 が微弱な間は,心massageを続行して心拍出量の増 大をはかるべきであることを示している.

われわれの蘇生法実施の要点

 一旦心停止に陥ると,生体は急激に無酸素状態に陥 るが,この場合,とくに大脳皮質のpyramidal ce11 や心筋はanoxiaに弱く,数分聞内に不可逆性の器質 的変化を来たす.しかも,急性心停止は突然に発生す るので,麻酔医,外科医はいうまでもなく,内科系の

医師や看護婦に至るまで,日常急性心停止および蘇生 法について,深い知識と充分な技術を身につけておく ことが望ましい.以下,私共が行なっている蘇生法実 施の要点について述べる.

 (1)心停止の発見

 心停止は臨床的には脈拍が触れない,心音が聴取で きないこと,手術中ならば鶴野よりの出血がみられな いなどの所見によって判断することができるが,この ほか顔面蒼白,意識喪失,呼吸停止,瞳孔散大などに よって発見することもある.これらの諸反応を速かに 把握するためには,手術にあっては伊藤9)らのいう如 く,麻酔医は左手で絶えず患者の浅側頭動脈あるいは 総懸動脈の拍動をふれているべきであり,あるいは,

常に患者の状態の変化に注意を怠らず,万一異常あり と考えられるときには脈拍触知あるいは心音聴取の有

(6)

無を確かめるなどの必要がある.最終的な診断は,

ECGによらなければならないが,早;期診断が完全蘇 生を得るに不可欠の条件であるという理由で私共は上 記の諸症状のうち,一つでも疑わしい場合には,直ち に人工呼吸とCCCMを開始することにしている.

 (2)蘇生法の施行順序

 急性心停止と診断したならば,硬い床の上にあれば そのままとし,ばねのよく効いた柔い寝台の上にある 場合には直ちに患者を硬い平坦な板あるいは床の上に 移して仰臥せしめてCCCMを開始する.その要領に 胸骨下端の部分すなわち,剣状突起の上に術者の両手 を重ねておき,体重を利用して垂直に強く胸壁を圧迫 するのであり,この動作によって,胸骨は3〜4cm 後方へ移動する.次いで,圧迫を除いて胸廓の再拡張 をはかり心房への血液還流をまつ.本法の回数につい ては,余り早すぎると血液による心臓充満が不充分と なるために,却って心massageの効果が挙がらな い.私共は60〜80回/分が適当な回数と考えている.

 なお,この際,第1の介助者によって積極的に人工 呼吸を行なっているが,この人工呼吸と心massage は,兵頭によれば1:4の割合で行なうのが好ましい

という.

 この間,心拍出が得られているか否かは,血管の拍 動によって確かめなければならないが,実際には心 massageの動作,人工呼吸などに妨げられ,拍動触 知に容易ではないことがある.私共は第2の介助者に 鼠径靱帯より末梢の部において股動脈の拍動を確かめ させながらCCCMを行なっている.鼠径靱帯より中 枢の部では,腹腔内臓器の波動を拍動と誤って触知す

ることがあるからである.

 噌方,迅速に心電計を装置し,その所見を検討する ことはいうまでもない.

 CCCMのみで有効な心拍出量を得ることが,困難 で,瞳孔も縮瞳の傾向をみとめないときには直ちに

OCCMに切り換える.この判断は少なくともCCCM

開始後2〜3分間以内になされるべきである.このよ うなことは,肥満体の患者や,老入で高度肺気腫を伴 っている場合によくみられる.

 次にOCCMについて述べる.本法は,緊急を要す るので,正式の皮膚消毒や被覆は省略される場合が多 い.私共は,第IV〜V肋間で,胸骨左記から左腋窩腺 まで皮膚切開を加えて開胸し,片手が胸腔内に入るよ うになったならば,直ちに心嚢の上から心massage を開始する.この間,心電計の装着,静脈点滴経路の 確保を行なうことはいうまでもない.症例によって は,この段階で心拍が再開することもあるが,不充分

な場合には,肋膜切開部の上下肋骨を切断して術野を 拡大し開胸器をかける.横隔膜神経の前方で心嚢を縦 に開き,直接心massageを施行する.直接心mas・

sage実施方法はいろいろあるが,心臓の機械的損傷を 最小限に止めるという点で,多くの場合両手掌の聞に 心臓を狭んでmassageす・るかあるいは右手掌で心臓 を脊柱あるいは胸骨に二って心尖部から心基部の方向 に圧迫している.本法では術者の疲労が激しいので,

必らず介助者を備準して,交代しながら心massage を続行している.この場合もmassageの回数が余り 早すぎると,血液の心臓への還流(cardiac return)

が不充分になるので,60〜80回/分位で行なっている.

 CCCMあるいはOCCMの場合, ECG上被刺激

性が低いかあるいは直接に心筋の弛緩がみられ,心拍 再開の見通しが暗いときには,1/10000のepinephrin

3〜5cc,10%CaC122〜4ccならびに1000倍・ad・

renaline O.2を5%ブドー糖で10 ccに稀釈したも のなどを胸骨左縁に沿って,第】:V〜V肋骨上縁より心 臓内に注入するかあるいは直接に冠動脈を損傷しない ようにして心室内に注入して心筋の緊張度を昂めて心 massageを続行する.

 ECG上あるいは直視下に心室細動を認みた場含に は,胸壁外からあるいは直接に除細動を試みるべきで ある.まずcounter shockによる除細動を試みるべ きである. これができない場合には,hypoxiaや体 温下降のない場合,心筋に酸素を充分にゆきわたちせ るように心massageを行ないながら4〜10%KC1,

2〜4ccあるいはAmisaline 200〜500mgを心室内注 入することによって,時として細動が消失することも

ある.

 最後に急性心停止時の人工呼吸について述べる.す なわち,急性心停止により生体は一挙にanoxiaに追 い込まれるので,anoxiaに弱い重要臓器の不可逆性 変化を防止しなければならない.それには直ちに心 massageにより血流を維持することは不可欠の条件 である.一方,蘇生の完全成功は,充分に酸素化され た(well oxygenated)生体,心筋についていえば oxygenated heart muscleにあってはじめて可能で あり,たとえ有効な心massageが行なわれていても anoxiaが存在しているときには心拍再開は;期待でき ない.これが,蘇生法に入工呼吸が不可欠な条件であ る所以である.私共は手術室内であるならば,まず常 備されている麻酔器とmaskで三二陽圧呼吸すなわ

ちIPPBを行ない,要すれば気管内tubeの挿管を

行なっている.手術室外にあっては,まずmouth to mouth and noseによる入工呼吸を行ない,この間

(7)

に,病棟各所に配置してあるto and fro装置と酸素bombeを準備して,

mask下に,あるいは気管内tube下

に.IPPBを施行している.

 以上私共の行なっている蘇生法実施の 要点を述べたが,Loeschcke 16)らはこれ を表3の如く纏めており,私共にも大い に参考とするに足るものである.急性心 停止に対する蘇生成功のためには,最も 大切なことは限られた時間内に致命的な 状態に陥るという性質上,熟練した医師 による早期発見と治療開始が行なわれる ことであり,このためには,必要にして 充分な装置,器具あるいは各種薬剤が院

表3 除細動と心massage 胸壁外心 massage 瞳

 縮 ﹁/知一← 触 拍 脈

   E

  / 洞性調律   ↓  続 行   ↓

各種薬剤

内の要所要所に偏ることなく常備されているべきもの と考える.

考 按

 1:急性心停止の定義

 急性心停止とは,生体が充分な余力を胎していると きに,基質的な変化に基づくことなく,急激に心機能 が停止することをいう.このなかには,従来から,心 拍静止と心室細動が含められており,最近では,たと え心拍が消失していなくても有効心拍出量がみられぬ 場合も含めて,acute cardiac collapseとして蘇生 法の対照としていることはすでに述べた如くである,

 次に,急性心停止め発生頻度については,一般外科 手術例では3000〜5000例中1例(Gibbon),全身麻酔 症例では1500例中1例(Beecher),517151例中217例 Stephenon22)などといわれている.私共の統計では,

とくに急性心停止が頻発するとされている低体温麻酔

C G

   \   心室細動

  ↓ 胸壁外除細動

(250〜750V1〜3 Al。1〜0.3秒)

i勲直凱massag・1

  \搏拍不触,散瞳     ↓

  / 洞性調律   ↓

続 行   ↓

各種薬剤

 \心室細動

  ↓

直接除細動

(lll三鋤

(Loeschcke18)による)

例の第2群No.1,6,8の3例と,末期心停止に近い と考えられる第2群No.10,12の2例および気道確 保に過誤のあったと考えられる第1群No,3の計6 例を除いて考えた場合でも,全身麻酔2514下中7例で あり,比較的高率に発生している.との点については 既に報告した如く17),導入中の誤った操作によって急 性心停止を来たしたものが多く含まれており,何れも 蘇生に完全成功をおさめ,その大部分のものは後日再 手術に成功している.

 急性心停止の原因としては,従来から種々のものが 挙げられているが,Shillingford 21)によれば大略表 4の如く纏めることができるという.ト部26)らは,心 動停止の備準状態(transient carrdiac arrest)を想 定して,これに第2のstressが加わった場合に心停 止が発生するとしており,前者の原因としては,ano・

xia, hypercapnia,麻酔剤の過量投与,冠動脈の異 常ならびに低体温 後者としては,心臓の直接刺激 や心臓調節神経の刺激を挙げでおり,このうちとくに

1

2

︶3

︶4

︶︶︶︶︶ 56789

       表4 Cardiac arrestに至る諸原因 Myocardial d圭sorders:

℃o云)nary occlusion;cardiomyopathy;Myocarditis.

Obstructive lesions of the cardiac circulation :

Pulmonary embolus;severe aortic stenosis;Pulmonary hypertension;ba11−valve thro・

mbosis or penduculated myxoma of the heart.

Compression of the heart=

Pericardial effusiop with tamponade.

Conduction defect : Stqkeミニムd艮典塁….βttacks.

Trauma: Pericardial, myocardial and endocardial; rupture of the aorta.

Electrolyte disorders:

Anoxia:

Drugs and poisons:

Vagal inhibition and anaphylaxia:

       (Shillingford,J.P.21)より引用)

(8)

hypoxiaと低体温に注目している27).

 2:心室細動と除細動、

 心室細動とは,個々の心筋の収縮運動は失われてい ないが,心臓全体としての協調性がなくなった結果,

心臓からの血液拍出は零となった状態であり,当然,

蘇生法の対象となるものである.この発生機転につい ては,従来から種々の説がある.異所的刺激が同時に 心室で多発しているとするScherf 20)らあるいは,

Prinzmeta118)らの異所的刺激生成充進説,不応期を 脱した心室の部分へ興奮が次々と伝わってくるとする Wiggers28)のre−entery説あるいは興奮が心筋内を 駆けめぐるとするLewis 12)13)14)15)らあるいはRosen・

flueth 19)らの興奮旋回説などが主なるものである.

実際に,心室細動に遭遇した場合,除細動を行なって 一旦心拍静止状態にした後,心massageを行なうの であるが,除細動が行なわれるまでの閥の血流停止を どのようにとり扱えばよいかが問題となる.

 私共は閉取下であれ,開胸下であれ,まず心mas・

sageを行なうべきものと:考える.たとえ細動状態下

でも,心massageによって血圧を40〜50mmHgに

上昇せしめることができる.このようにして,脳や心 筋のanoxic damageを防ぎながら除細動になるわけ

である.

 除細動についてはHooker 5)らが比較的強い交流 電流を細動治療として体系づけて以来,徐に臨床に応 用されるようになってきたが,胸壁外からの除細動

(external defibrillation)1こついては, Wiggers 29)

も指摘した如く,大きな電圧を必要とするため,胸廓 に電撃傷を作る危険がある.これに対してZo1130)ら は,除細動に必要にして充分な通電量について報告

し,またKouwenhovenらは2例の成功例について

報告している.しかし,実際には,症例によって電気 抵抗が異なるために同一の通電量で毎常成功をおさめ ることは困難である.一方除細動そのものの成功率は たかいが,除細動後心筋に損傷をのこすという難点が あった.

 これに対して,最近開胸,空胸の何れを問わず,電

気抵抗の個人差に全く無関係に,・毎回,除細動に最も 適当な電流量を通電し得る直流の除細動装置が考案さ れているが,注目に価すると考えられる.

 薬剤による除細動法は,すでに述べた如く,飽くま でも副次的な手段であり,counter shockが準備され ていない場合の便法にすぎず,除細動成功率も低い.

 3:急性心停止の診断

 急性心停止の診断については,すでに述べた如くで あるが,このうち,心音については胸の厚い症例では 血圧が80mmH:gに保たれていても時に聴取し難いこ ともあり,やはり決定的診断法はECGであろう.し かし,なかには心室細動を始めとして,ECG上活動 電位が完全に消失していない高度のblock typeを示 すものでも,所謂acute cardiac collapseとして蘇 生法の対象となるものがある.なお最近急性心停止の 診断のために脳波が有力であるといわれており,有効 心拍出量の有無についてはことに敏感で,その変化は ECGに先行するといわれている.

 4:CCCMとOCCMとの比較

 急性心停止に対し,心massageを行なって心拍を 再開させるという試みは,文献上では1874年の独逸の 生理学者Schiffが最初であり1),その巧計接心mas・

sageの研究が旺盛となったが,臨床成功の第1例は 1902年Starling and Laneの経横隔膜的野massage

例である.

 その後OCCMは急性心停止の治療に当って不可欠 の技術とされて世界を風靡した.一方,左胸下に心 拍を再開させる目的で,急激に胸部を圧迫する方法

(Tournade;1934)や前胸壁を叩打する方法(Ro・

berts;1954)などが報告されたが1),有効心拍出量を 得るという点で必らずしも満足できない状態であっ た.1957年Stout 24)はメスを用いないで心massage を行なうことについて報告し,次いで1960年,Kou・

wenhover 11)により現在の方法が確立されて,蘇生成 功率は急激に向上した.

 なお,OCCMとCCCMとの優劣の比較をした結

果は表5に示す如くであるが,開胸が躊躇される手術

表5 開胸式心マッサージと閉胸誠心マッサージの比較 開胸式心マッサージ(0.C.C.M.)

血液の拍出量が大きい

Standsti11かFibrillationかの判断容易(除細 動容易)強心剤を適確に入れ得る

大動脈遮断等が容易

閉胸炉心マッサージ(C.C.C.M.)

時間,設備が不要

心穿破,肺損傷等を伴わない 胸腔内感染,気胸のおそれがない 術後管理が容易

(9)

12345

気道の確保:

人口呼吸法:

法法法法 轟磁  r 道 用二二気

胸腔内変圧法

  表7 術後管理

02の補給,循環器系統の被護 酸血症(acidosis)の対策 電解:質の補正,輸液 過高熱の対策 脳浮腫の防止

表6 呼 吸管 理

(head・tilt Esmarch・Heiberg式下顎淫乱法高)

(各種air Way, reScUe tube等)

(経口的,経鼻的,経気管切開的.等)

(呼気吹込法……mouth to mouth等)

(空気或いは酸素送入法・一resuscitor, respirator等)

(用手法……Holger・Nielsen法, Ivy法尻)

(器械法……鉄の肺等)

 室外の急性心停止に際しては,まずCCCMから施 行されることが多い.

 5:急性心停止の蘇生成功率

 文献上では,Stephenson 23)は1710例中454例の死 亡(蘇生成功率73.5%),Dale 3)は永久蘇生率10〜

52%,Bailey 8)は10%, Barber 1)は33%などを報 告している.私共の統計では,部分成功を含めた率は 79%で,一完全成功率は58%である.

 6:蘇生法と入工呼吸

 心massage施行中,人工呼吸を行なって酸素を補 給し,生体をwell oxygenatedな状態に保つことは 蘇生を成功させるために不可欠の条件である.

 このためには気道の確保が前提となるが,この方法 にはいろいろあり(表6),そのうち手術室以外の急 性心停止例では用手法を施行することが多い.何れの 方法を用いるにしても,ある程度の熟練を要すること はいうまでもない.

 また,入工呼吸法として急性心停止に対して蘇生法 施行中においては表6のうちの破線より下欄のものは 適用されない.一般に蘇生および人工呼吸に必要な装 置および器具のない場所での急性心停止に対しては,

mouth to mouth and nose法がまず施行されるわ けである.

 なお,CCCM中,気道さえ確保されているならば,

ある程度の換気が行なわれているのではないかという 問題については,兵頭は実測値では1回換気量が平均 156にしか達していないので,やはり積極的に入訳呼 吸を行なうべきであると強調している.

 7:蘇生成功後の管理

 一旦,心拍再開に成功しても,急性心停止の原因が

完全に除去されていない限り再び心停止を来たすこと は明らかである.

 このほかに,術後管理の要点を示せば表7の如くで あり,何れも蘇生に完全に成功するためには欠くこと のできない事項と考えられる.

結 語

 昭和35年より現在に至る約5年聞に金沢大学ト部外 科教室において蘇生法が施行された急性心停止例19例 において私共の蘇生成功率は,部分成功を含めた場合 の率79%,完全成功率58%であった.

急性心停止の原因については種々のものがあり,常 に細心の注意を払ってその防止に努めなければならな い.一旦,急性心停止が発生した場合には,早期発見 と早期蘇生法とを開始すべきである.手術室外での急 性心停止に対しては蘇生法としてはCCCMとmouth to mouth and nose法による人工呼吸法が用いられ,

手術室内のものに対してはOCCMと気管内tubeを

介してのIPPBが用いられている.心室細動は19雨

中1例にこれをみとあた.

稿を終るに臨み,御指導,御釣捷を戴いた恩師卜部美代志教授 に深謝します.

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       ・  Abstract

  Resuscitation was carried out on 19 cases of acute cardiac arrest which were experien㏄d during the period from 1960 to 1965 ill the Urabe surgical department of Kanazawa Univer−

sity H:ospital.

  As a result,79%of them could be recovered partially and 58%of them completely.

  The causes of acute cardiac arrest are extremely various. Once it happens an early diag・

nosis should be made and resuscitation resorted to. For the■esuscitation of arrest out of the operating room, closed chest cardiac massage(CCCM)combined with mouth to mouth and nose respiration is most suitable. During the operation, it should be carried out by open chest cardiac massage(OCCM)and intermittened positive pressure respiration(IPPR)

through the intratracheal tul〕e.

  Ventricular fibrillation was experienced only in one case of them,

参照

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