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保健体育科の器械運動領域における生徒の内発的動機づけを高めるための指導法に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)学位論文. 保健体育科の器械運動領:域における生徒の. 内発的動機づけを高めるための指導法に関する研究. 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 学校教育専攻 教育方法コース. MO1021A. 阿 部 浩 二.

(2) 【目次】. はじめに.問憲_. ●.●’..●’○●’●●.○’.●’’”●●.●●●●●●.●..’●○●●●.●. 研究1 ・……・・……・. .........。.。「 D.....。.。.......。....1. 目的……………・ 方法 …・・………・・. 結果 ・…………… 考察 ・・…・・………. D。.。...... ●……… P………●………’…●’…’” ●. ●. ● ●. ● ●. 方法 ・……・・……・. 22. ・ ● ■ ■ ● o ● o ● O o ● ● ○ ● ● ● ● ◎ ● ● ● ● ● ● o o ● ● ● ■ ● ● ■ ● ■ ● ● ● ● o ●. 結果 ・……・∵・・・…. 考察 ・………・…・・. ●. ●. o. ●. o. ●. ■. ●. ● .. 9 ● ●. ●. 27. o ● o , o ● ● . . ● ● ■ ● ● o ■ ● ● . ● ● o o ● ● ○ ● ● o o ● ● ● ● ・. 31. ■ ● ● ● ● o o ● ● ● ● ■ ● ● o ● ● ● ● ● ■ o ● ● o ■ ● ● ○ O o ● ● ●. 39. o , ● o o ● , 9 , ● , ● , ○ ● ● ● o ● ● ● ● ■ ● ■ o ■ , , ● ○ ● o ● ● ■ ● ● ● ● ● ●. 研究III・…………… ●……………’…●…’.………●●. D●’●●●. 目的・…・…・……・. .”●’ 諱D●...●●’○●●”.●’●’●’.●..●’○●.●●●’●’. 方法 ._∴___.. .._._._..._....____∴._.. 結果 一…・・………. ● ● ■ o ● ・ . ● ● . ○ ● o ■ o ・ . . o ● ● o o ● ● ● . ● ● ■ ● o ◎ ■ ● ● ● ● ● o ● o. 考察 ・………・…・・. ● ● ● o ● ● o ● ● ● ■ ■ ● ● o o ● ● ● ■ ● ■ o ● ● ■ ■ ■ ● ● ● ● o o ● o ◎ ● ● ● o ●. 引用文献・参考文献・・ 付記 ・…・・……・・…・. 巻末資料・…・………. ●. ●. ■. ●. o. ■ ●. ● ● . ● ● ○ ● ● ● ● ● ○ ■ ● o ● . . ● ● ● o o ● ● ■ ● ● ● ● . ● ○ ● ●. 。』. D。..。..。..。.....。。.。..。.。...。............. ● ● ● ● ● ● ■ ● ■ ● o ● ● o o o ● ● ● ● ■ ● ● o ● ● ● ■ ● ● ● ● o ● ■ ● ●」● ● ■ ● o. .1一. 27. 27. ● ● o 、 o ● o o ● ● , ● ● ● ● ● ■ ● ■ ● o ■ ● ■ ● ● ● ● ● ● ■ ● ■ o ● o o ● ● ■ ● ◎. o. 9. 11. ● ● . ● ● ○ ● ● o ◎ ● ● ● o ● o ● ● ● ■ ● ● o ● ● ● ● ● ● ○ ■ ■ o ● ●. 研究II・…………?・・ ___∴__...._.∴.__.__.. 目的・……………. 9 9. o ・ ● ● ● ● o ● ◎ ● ● o ● ○ ● ● ● ● ■ ● o o ● . ● ● ● o ● ● ● ● ● o ● o ● ● ■ ● ● ●. ●. 2. 44 44 44 53 63. 72. 74 75.

(3) 【はじめに】. 教育課程審…議会は、1998年の答申蓋}において、保健体育科改善の 基本方針を次のように示し七いる。①明るく豊かで活力のある生活をの ぞむ態度の育成を目指し、生涯にわたる豊かなスポーツライフおよび健 康め保持増進の基礎を培う観点に立って内容の改善を図る。(中略)特 に運動に興味をもち、活発に運動する者とそうでない者に二極化してい たり、生活習慣の乱れやストレスおよび不安感が高まっている現状を踏 まえ、児童生徒が運動が好きになり、健康な生活習慣を身につけること ができるようにする。②体育については、自ら運動する意欲を培い、生 涯にわたって積極的に運動に親しむ資質や能力を育成するとともに、積 極的に体力を高めることを重視する。. 研. このように学校体育は、生涯体育・生涯スポーツの一環として、そし てまた生涯体育・生涯スボーッの基礎として、生涯にわたる運動生活や スポーツ参加への意欲と能力の根底を形成することに、最も重大な責任 を担うことになる。そのため、身体運動やスポーツに対する児童生徒の 学習意欲がこれまで以上に重視され、それらを一層発展させるような学 習指導の理論や方法が明らかにされる必要がある。. さて、学習意欲という用語は、教育現場においても日常的に使われる 用語であるが、心理学的には、「学習への動機づけ」として捉えること ができよう。本研究ではとりわけ内発的動機づけという観点から、学習 意欲を論じていくこととする。. 1)教育課程審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校 の教育課程の基準改善について(審議のまとめ). 一2..

(4) 【 問 題 】. 本研究は、保健体育科の器械運動領域における学習に対する生徒の内 発的動機づけに影響を与える要因について調べ、それらをもとにした具 体的な指導を行うことによって、この領域での生徒の内発的動機づけが どのように変容するのかを、実証的に検討することを目的とする。. 一般に、内発的に動機づけられた活動とは、「当の活動以外には明白 な報酬が全くないような活動(Deci,1975)」とされている。この内発的 動機づけという概念について、White(1959)、 Atkinson(1964)、 deCha㎜1s (1968)、Deci(1971)▽稲垣(1980)、桜井(1983)らは、様々な研究を行って きた。. 保健体育科の分野でもこれらの研究をもとにして、学習に対’する生徒 の内発的動機づけに関する様々な研究が行われてきた。伊藤(1987)は、. スボーヅ行動場面における成功(失敗)の原因帰属が身体的有能さの認 知に影響し、その有能さの認知はスポーツ行動に影響を及ぼす・という原. 因帰属モデルを立て、スポーヅ行動に関する指標(経験年数・実施の状 況)とあわせてこのモデルの妥当性を検討している。この研究ではまず 大学生を対象に、原因帰属様式と身体的有能さを測定する質問紙を作成. し、因子分析によってそれぞれの尺度を決定した。そしてこれら2つの 尺度に、先のスポーヅ行動に関する指標を加えてパス解析を行った。そ の結果、スポーツ行動が正事態で能力に帰属した場合、身体的能力の認 知に正のパスを、負事態で能力に帰属した場合、負のパスをそれぞれ示 し、さらに身体的能力が正事態に認知された場合、スポーツ行動に正の パスを示すことを明らかにした。伊藤・織奥(1988)は、内発的動機づけ. が体育学習の楽しさを規定する最も重要な要因であると考え、体育学習. 一3一.

(5) の楽しさを規定する要因を検討し、それぞれの要因ごとに、小学生・中 学生・高校生を対象に、児童・生徒と教師の間の認識を調べた。その結 果、「自己決定」と「集団活動」という要因において、児童・生徒は、. これらが楽しさを規定する要因であると認識しているのに対し、教師は これらが楽しさを規定する要因であるとは認識していないことを明らか にした。また奥村・梅野・辻野(1989)は、体育科の授業では運動技能や. 体育の向上だけではなく、その過程で授業に対する態度を好意的に変容. させる必要性を考え、小学校3・4年生を対象とした体育科の授業にお ける態度尺度を作成した。その結果、.体育授業に対する児童の態度は「体 育授業に対する評価」「体育授業に関する価値観」「運動のよろこび」「運. 動生活に対する価値観」の4因子から構成されていることが示された。 一方西田(1990)は達成動機づけの観点から、体育における学習意欲を「体. 育における学習活動を自発的、積極的に推進させ、それらの学習を一定 の卓越した水準にまで到達させようとする内発的動機づけ」であると定 義し、体育における学習意欲検査(AMPET:Achievement Motivation in Physical Education Test)を作成し、その標準化を行っている。この研究は、. 小学校4年生から高校3年生までを対象に実施され、1保健体育科におけ る内発的動機づけは、「学習ストラテジー」「困難の克服」「学習の規範 的態度」「運動の有能感」「学習⑱価値」「緊張性不安」「失敗不安」の. 7つの下位尺度から構成されていることが示された。この尺度は、個人 差としての内発的動機づけを調べたり、様々な指導法の有効性について の客観的検証に利用したりすることができ、保健体育科における内発的 動機づけを多面的に分析することができるものである。さらに西田・澤. (1993)は、小学校5・6年生を対象に、AMPETやその他の学習意欲 を測定する尺度などを参考にして、体育における内発的動機づけを規定. 一4一.

(6) する要因の分析を行い、体育における内発的動機づけを規定する期待・ 感情モデル(EAモデル:expectancy−affect modeDを作成した。このモデ. ルでは、1次的要因として「期待」(成功への期待・能力向上への期待). 「感情」(体育学習での感情・運動に関する感情・成功・能力向上への. 感情)、2次的要因として「運動への参加」(現在の運動参加・過去の 運動経験)「体育授業での対人関係」(体育教師との関係・友人との関 係)、3次的要因として「対人関係」(親子関係)「健康」(精神的健康 ・身体的健康)「環境」(学習・運動環境)を、それぞれ位置づけている。. そしてパス解析を用いて、これらの変数間の因果関係を明らかにした。. これによると、体育場面での学習や運動環境が整備され、精神的にも身 体的にも健康で、また親子関係が良好であればや子どもたちの現在や過 去の運動経験が豊富になり、生徒を取りまく体育教師や友人との人間関 係が良好になってくる。そして運動経験が豊富になり、体育教師や友人 との関係が良好になれば、体育学習での成功や能力向上への期待および 感情が高まり、その結果、体育における内発的動機づけが高まるという. ものである。また岡沢・北・諏訪(1996)は、有能感(competence; White,1959)という観点から保健体育科における児童生徒の内発的動機 づけについて研究を行っている。この研究ではHarter(1979)によって作 成され、桜井(1983)によって日本語訳された「有能感測定尺度」をもと. にして、努力による結果の予測の側面や親和による社会的な有能さの側 面などを含めた「運動有能感」測定尺度を作成し、小学生から大学生ま でを対象に、運動の有能感の発達傾向や性差について検討している。. しかしこれらの研究は、体育における内発的動機づけの構造や実態把 握を目的とした研究であり、内発的動機づけを高めるための指導法に関 する研究ではない。また特定の領域についての技術的な指導法に関する. 一5..

(7) 研究は多くなされているものの、生徒の心情の変化について測定したり 言及したりした研究は少ないように思われる。保健体育科は他の教科と 比較して領域(運動種目)の独自性などもあり、好き嫌いが分かれやす く、生徒間の能力差も大きいので、領域によって内発的動機づけには大 きなズレがあると考えられる。. とりわけ器械運動領域では、特に生徒の学習に対する内発的動機づけ が低いように思われる。末利(1978)は、小学校4・5・6年生を対象と し、運動の下手な子の原因の探究を行い、運動が嫌いになる主な原因と して、器械運動系・個人走系のように演技の正否がはっきり目に見える. 種目に対して拒否する傾向があると述べている。また波多野・中村 (1981)は、「運動嫌い」の生成機序に関する研究において∴1大学生を対. 象に質問紙調査を行い、この中で運動嫌いと自己評価する男女24名を 抽出し、それぞれの学生に対し、個別面接調査を行っている。この結果 「運動嫌い」’を起こす者の性格には内向的・消極的な者が多く、特に失. 敗するこどを恥ずかしく感じ、他人の目を気にして、運動に対する「食 わず嫌い」を起こ、す者が多い傾向があり、これらは特に演技の正否がは っきり目に見える種目に多いと報告している。一方佐々木(1997)は、中. 学生を対象に、体育学習において心理的ストレスの原因となっているス トレッサーを把握し、またそれら作因に対する心理的負荷の水準を測定 できる診断尺度の作成を試みている。この結果、ストレヅサー因子とし て「効力感の欠如」や「生理的不調」などの因子に混じって、運動種目 そのものである「跳び箱」が特定的に抽出されている。また「動機づけ 困難な運動」因子の記述内容として、マット運動や鉄棒運動を行うとき などがあげられている。. これらの知見から、器械運動領域の負の特性は、演技の正否がはっき. 一6..

(8) り見える個人種目であるということや、この種目自体が生徒にとっての. ストレスの要因になっているといえる。そしてこれらの負の特性が、生 徒にあまり好まれない原因と底っていると考えられる。. そこでこの原因を解消するためには、次のような方法が考えられる。 まず末利(1978)や波多野・中村(1981)らの指摘から、この授業を行う際、. 他者との比較ではなく個人内で評価できるようにしたり、劣等感・不安 感を取り除くような学習場面づくりに配慮したりする必要があるといえ よう。また生徒自身が「どうせやってもできないだろう」という考えか ら、「練習すればできるだろう」と考えることができるよう、少しずつ でも成功経験を積ませていくなどの方法により、有能感を高めていく必 要があると思われる。 また波多野・中村(1981)の知見を、Abr{㎜son(1978)の提唱している改.. 訂学習性無力感理論で説明すると、器械運動領域が苦手な生徒は、統制 不可能な現象(個人種目系の運動がうまくできない)の原因を内在的(で. きないのは自分に能力がないから)・安定的(いつもできない)・特殊. 的(特に器械運動領域では)に捉えているとみることができる。桜井 (1995)は学習性無力感について、その克服と予防について次のように述. べている。まず第1に、失敗などの経験を「統制不可能」と捉えやすい 人は無力感に陥りやすいという知見から、統制不可能な経験(失敗経験. など)を繰り返さないよう配慮する必要がある。また第2に、抑うつ的 帰属様式が無気力をもたらすといった知見から、対人スキルを身につけ、. 自分の社会性に自信をもつことが重要である。第3に、社会的特性とし ての公的自己意識や評価懸念が無気力を促進するといっ.た知見から、ソ. ーシャルサポートなど、生徒を取りまく学習環境などに配慮する必要が. ある。第4に、学習に関して成績目標をもつと無気力に陥りやすいとい. 一7一.

(9) つた知見から、熟達目標をもたせることが重要である、と述べている。 一方佐々木(2001)は、中学生用体育学習ストレスコーピング2}尺度を開. 発・標準化している。こあ研究では、体育に対する感情が好意的になれ ば、能力的不適応に遭遇しても前向きなコーピングによってその状況に 適応しようと試みる。・また教師や友人から十分な支持・援助を得ること. ができる生徒は、能力的不適応の経験場面でも前向きな対処によって状 況への適応をはかろうとするだろうと述べている。これらの知見から、 器械運動領域での負の特性を解消するために授業者は周囲からの支持・ 援助ができるような環境をつくることも重要であると思われる。 さて本研究では、以上のように、先行研究(末利,1978;波多野・中村,. 1981など)や保健体育科の授業担当者としての経験をもとに、器械運動 領域の学習に対する生徒の内発的動機づけは、他領域に比べて低いであ ろうと仮説している。しかしながら、最近の中学生を対象としてこのこ. とについて実証された研究はみられない。そこで研究1では、体育学習 の器械運動領域を含む全領域について、それぞれの領域の学習に対する 生徒の内発的動機づけを測定し、その構造を分析するとともに、領域間 の差異について比較・検討する。. さらに間題1の結果及び考察をもとにして、研究II及びIIIでは、器械 運動領域における生徒の内発的動機づけを高める具体的な指導法につい て、実証的に検討することを目的とする。. 2)コーピング:個人と環境との相互的やりとりの結果、周囲の環境が個人の資質を脅か すと判断した場合に個人がとる認知的・行動淫声力. 一』. W..

(10) 研究1. 【目的】. 本研究では、保健体育科の各領域での生徒の内発的動機づけの特徴に ついて調べることを目的とする。. 【方法】. 1 対象者. 対象は愛媛県今治市の公立A中学校1・2年生6学級の生徒181 名(男子88名、女子93名)であった。. 2 質問紙の内容3} (1) 内発的動機づけ測定尺度. 西田(1990)によって作成された体育における学習意欲検査(AMP. ET)を一部修正したものを用いた。この尺度は、本来「学習のスト ラテジー」「困難の克服」「学習の規範的態度」「運動の有能感」「学. 習の価値」「緊張性不安」「失敗不安」の7つの下位尺度各8項目、. 合計56項目で構成されている。しかし本調査では各領域(体つくり 運動4}・器械運動・陸上競技・水泳・球技・武道・ダンス)全てにつ. いて測定するため、生徒にとって負担が大きくなると、正確な回答が. 3)資料1 参照 4)本来は「体つくり運動」に名称変更されているが、生徒が質問紙に答えやすいよう、 本研究では旧名称である「体操」と表記している. 一9..

(11) 得られにくくなるので、項目を3つずつ選定し、合計21項目を本研 究での内発的動機づけ測定尺度とした。また各領域での状況を思い出 しやすいよう質問項目の前に、例えば「体操をするとき」と付けたり. するなど、文章を修正した。回答形式は「よくあてはまる」「ややあ てはまる」「どちらともいえない」「あまりあてはまらない」「まった くあてはまらない」の5件法であった。 (2) 領域に対する好意度. それぞれの領域に対する好意度について問う1項目を用いた。項目 の具体的内容は、例えば体操領域の場合「体操は好きである」とした。. 回答形式は、内発的動機づけ測定尺度と同様に、5件法で答えさせた。. 3 質問紙の構成. 質問紙はB4サイズで、回答の仕方が書かれた表紙1枚と、各領域. それぞれ1枚ずつの、合計7枚を1セヅトとした。尺度項目は、1領 域につき1枚の用紙に、内発的動機づけ測定尺度21項目と領域に対 する好意度を問う1項目の、合計22項目を配置した。なお武道領域 は男子のみ、ダンス領域は女子のみ、それぞれ回答させた。また順序 効果を・相殺するため、測定した6クラスごとに領域の順番を変えた質. 問紙を用意した。6領域の設定順序は、例えばはじめのクラスが体操 領域から始まれば、次のクラスは器械運動領域からというように、ど の領域もいずれかのクラスで一番はじめに回答するようにした。. 4 実施手続 調査は無記名方式とし、学級単位の集合調査法で行った。質問紙を 各生徒に、座席順に配布し、調査者が回答の仕方をよく説明したあと. 一10一.

(12) 記入させた。なお回答に要した時間は約30分であった。. 5 調査期日. 平成14年3月上旬. 【結果】. 1 内発的動機づけ測定尺度に関する因子分析. 内発的動機づけ測定尺度の各項目ごとに、評定値の平均と標準偏差 を算出し、尺度の上限値・下限値を超えていないか、度数分:布に大き. な偏りがないかを検討し、残った18項目を用いて因子分析・(主成分 分析、varimax.・回転)を行った。因子数を順次変化させながら因子解. 釈を行った結果、保健体育科における生徒の内発的動機づけ之して解. 釈が最も容易であった5因子解が適切であると判断した。因子分析の 結果はTable 1の通りである。. 第1因子はAMPETの「学習ストラテジー」「困難の克服」「学 習の規範的態度」から構成されていた(項目1、2、8、9、10、15)。 これはどれも学習に対する肯定的な態度についての項目であるから、. 「学習への肯定的な態度」と命名した。第II因子から第5因子までは. AMPETの下位尺度と同じ項目がそれぞれ抽出されていた。そこで AMPETの因子名をそのまま使用し、それぞれ第II因子から「緊張 性不安」(項目4、11、18)、「学習の価値」(項目6、13、20)、「運. 動の有能感」(項目5、12、19)、「失敗不安」(項目7、14、21)と した。. 一11一.

(13) Table 1 保健体育における生徒の内発的動機づけについての因子分析結果 No. 1. 項 目 内 容. H 皿 IV V 共通性. 9. 苦手な種目でもうまくなろうと一生懸命努力する. .80. 一.03. 1. 自分の良い点や悪い点をよく考えながら運動している. .79. .08. .10. 2. 上手になるために、何回も繰り返し練習す筍. 978. .10. .08. 8. うまくできる方法をよく考えてから運動するようにしている. .76. 一.06. 16. たとえうまくできなかったとしても、あきらめずに最後までがんばっている. .73. .08. 10. 体育の授業は、人よりもまじめに受けているほうだ. .65. 一.16. 4. 人に見られているとすぐに緊張して思うように運動できない. .02. .83. 一,04. 11. 自分の得意な種目でも,人に見られているとふだんの実力が発揮できない. 、03. .80. .05. 一,02. .77. 一.04. 一.19. .84. .13. .20. .04. .21. .19. .08. .16. 運動がうまくできるということは、勉強がよくできることと同じくらい重要だ. .24. .06. 運動がうまくできるよう1となれば,将来きっと役に立つと思う. ,20. 一.07. どんな種目でもたいてい人より上手にできるほうである. .28. r.10. 等2. 人よりもうまく運動ができてほめられることが多い. .22. 一.06. 19. 運動は、うまくできる自信がある. ,28. ㍉25. ,18. .76. 運動をするとき、.以前に失敗したことが思い出されて不安になる. .04. .22. .00. 一.04. 。36. .04. .16. .27. 21. 運動をするとき、ミスをおそれてしりごみすることが多い. 14. 先生に教えてもらったことがうまくできるかどうか心配である. 寄与率. ,06. .61. .75. 一.01. 7. .05. .23. ,28. .15. .18. .83. .20. .66. 一.06. 運動は、他の教科と同じくらい大切である. .14. .10. .51. 一.08. .81. .68. .05. 20. 5. .68. .19. 運動を、大勢の前で発表することは苦手なほうである. 13. .04. .18. .23. .82. .69. 22 一.09. 18. 6. .05. .83. .29. ,74. ,71. .28. .01. .80. .05. .76. .03. .73. 一.12. .8互. 一.07. .78. 一.15. .78. 一.02. .83. .73. 一.09. .73. .68. ∼20. 。65. .56. 212 12.9 12.8 12.7 10,7. 70.3. 2 各因子ごとの学年・性・領域別比較 因子分析によって同定された5つの因子に含まれた項目ごとに、因 子得.点の平均と標準偏差を算出した。各因子得点の算出にはミ第1因. 子は6項目、第II因子から第V因子まではそれぞれ3項目があてられ た。算出の方法は1「よくあてはまる」を5点とし、「ややあてはま る」牽4点、「どちらともいえない」を3点、「あまりあてはまらな. い」を2点、「まったくあてはまらない」を1点とし、それぞれの因 子ごとに、項目の得点を単純加算し、項目数で除することにより算出 した。なお得点の幅は、最高5点から最低1点であった.。. 一12一.

(14) (1) 学習への肯定的態度. Table 2は、「学習に対する肯定的態度」に関する得点の平均値を. 学年ごとに示したものである。この結果について、2(学年)×2 (性)×5(領域)の分散分析を行ったところ、性の主効果が有意 であり(F(1.・77)=10.87,p<.01)、男子よりも女子のほうが保健体. 育全体に対する肯定的態度得点が高かった。また学年×領域の交互 作用も有意であった(F(47・8)=5.63,p<.01, MSe=0.34)。. Table 2 各学年・性・領域ごとの「学習への肯定的態度」に関する因子得点の平均と標準偏差. 性 男(1年38名、2年50名、全体88名) 女(1年47名、2年46名、全体93名). 領域体操 器械 陸上 水泳 球技. 体操 器械 陸上 水泳 球技. 1年 Mc紐n 3.26 3・55 3・44 3・56 4.03 31). 1.00. 0.94. 0.76. 0.95. 0.85. 2年 Mean 3.12 338 3.47 2.98 3。70 31). 0.84. 0.88. 0.98. 1.01. 0.90. 全体 Mcan 3.18 3・45 3・46 3・23 3・84 8.Z). 0.92. 0,91. 0.89. 1.03. 0.90. 3。77. 3.86. 3.65. 3.75. 4.13. 0.76. 0.63. 0.62. 0.89. 0.79. 3.63. 3.83. 3.79. 3.36. 3.70. 0.73. 0,81. 0.93. 0.95. 0.74. 3.70. 3.84. 3.72. 3.56. 4.12. 0.75. 0.73. 0.79. 0.94. 0.77. そこで領域ごとに学年の単純主効果を検定したところ、水泳領:域 で、1年生のほうが2年生よりも有意に高かった(F(1.・77)=11.44,p. <.01)。しかしながら他の,領域では、学年間に有意な差はみられな. かった。また学年ごとに領域の単純主効果をみたところ、1年生も 2年生も有意であった(それぞれF(4708)=13.27,p<.01;F(4708)=. 5.63,p<.01)。そこで1年生について多重比較5)を行ったところ、球. 技領域は他の領域に比べて有意に高かったものの、他の領域間には. 5)本研究における分散分析の多重比較は全てLSD法を用いた。有意水準は原則としてp <.05としている。. 一13一.

(15) 有意な差はみられなかった。また2年生について多重比較を行った ところ、1年生とほぼ同じように球技領域が最も有意に高かったが、. 体操領域と水泳領域は他に比べて有意に低い結果となった(Figure 1)。. 5 得4 点. 團1年生 圃2年生. 平. 均3 2 体操. 器械運動 陸上競技 .水泳. 領. 球技. 域. ※ 異なるアル『ファベットを付与されたものの間には5%水準で有意な 差がみられたや. F嬉ure 1.学年別,領域別にみた学習への肯定的態度. (2) 緊張性不安. Table 3は、「緊張性不安」に関する得点の平均値を学年ごとに示 したものである。 Table 3 各学年・性・領域ごとの「緊張性不安」に関する因子得点の平均と標準偏差. 性 男(1年38名、2年50名、全体88名) 女(1年47名、2年46名、全体93名). 領域体操 器械 陸上 水泳 球技 体操 器械 陸上 水泳 球技. 1年 Mean. 2.69. 2.86. 2。75 2.55. 2.47. 3.29. 3.49 329. 2.80. 2,67. 8D. 0.95. a85. 0.84 1.11. 0.94. 1.07. 121 1.11. 1.22. 1.19. 2.59. 2.81. 2.53. 2.65. 2.60. 2.82. 3.11. 2。84. 2.83. 2。52. 0.96. 1.00. 1.02. 1.05. 0.97. 1.00. 1。07. 1.06. 1.05. 0.92. 2.64. 2.79. 2.69. 2.69. 2。56. 3.17. 3.36 3.11. 2。93. 2.53. 1.03. 1.03. 1.16. 1.16. 0.98. 1.09. 1.20. 1.21. 1.14. 2年 Mean. 5D 全体 Me鋤. 3刀. 1.15. ※ この因子は、得点が高いほど不安が高いことを示している. 一14..

(16) この結果について2(学年)×2(性)×5(領域)の分散分析 を行ったところ、性×領域の交互作用が有意であり、学年×領域の 交互作用も有意であった(それぞれF(生7・8)=4.31,p<.01;F(生7・8)ニ 3.14,p<.05;いずれもMSe=0.57)。. まず性×領域の交互作用について、領域ごとに性の単純主効果を 検定したところ、体操領域・器械運動領:域・陸上競技領域において、. それぞれ男子よりも女子のほうが保健体育全体に対する緊張性不安 得点が有意に高かった(それぞれF(1.・77)=10.97,p<.01;F(1.・77)ニ 10.62,p<.01;F(1.177)=6.29, pく.05)。しかしながらその他の領域に. おいては、男女間に有意な差はみられなかった。また男女ごとに領 域の単純主効果をみたところ、男子は領域間に有意差はみられなか ったが、女子には有意な差がみられた(F(生7・8)=15.45,p<.01)。. そこで女子について多重比較を行ったところ、器械運動領域が最 も有意に高く、球技領域が最も有意に低かった(Figure 2)。 4 a. 得. bc. 点3. C. 平 均. d. 2. 体躁 器腿動 陸上競支. 領. 水泳. 準則. 域. ※ 異なるアルファベットを付与されたものの聞に1ま5%水準で有意な 差がみられた。. Figure 2.女子における領域ごとの緊張性不安. 次に学年×領域の交互作用について、領域ごとに学年の単純主面. 一15一.

(17) 果を検定したところ、どの領域にも保健体育科全体に対する緊張性 不安得点について有意な差はみられなかった。しかし領域の単純主. 効果を検定したところ、1年生も2年生も有意であった(それぞれ F(4.708)=10.20,p<.01;F(生フ08)ニ5。47, p<.01)。そこで1年生につ. いて多重比較を行ったところ、器械運動領域・陸上競技領域・体操. 領域が、水泳領域・球技領域よりも有意に高かった。また2年生に ついて多重比較を行ったところ、器械運動領域・水泳領域・体操領 域・陸上競技領域が、球技領域よりも有意に高かった(Figure 3)。’ 4. 得. A. 点3. a 平 A. A. 均. A b. b. B. 2. 体操 器躍動 陸上騒騒. 領. 域. 水泳. 磁. ※ 異なるアルファベットを付与されたものの間には5%水準で有意な 差がみられた。. F玉gure 3.学年別にみた領域ごとの緊張性不安. (3) 学習の価値. Table 4は、「学習の価値」に関する得点の平均値を、学年ごとに. 示したものである。この結果について2(学年)×2(性)×5(領 域)の分散分析を行ったところ、学年の主効果が有意であり(:F(n77). =8.92,p<.01)、1年生のほうが2年生よりも保健体育全体に対す. る学習の価値得点が高かった。また領域の主効果も有意であった(F (1.・77)=12.12,p<.01, MSe=0.49)。領域の主効果について多重比較を. .16一.

(18) 行ったところ、球技領域は最も有意に高く、体操領域・器械運動領 域は他領域よりも有意に低かった(Figure 4)。. Table 4 各学年・性・領域ごとの「学習の価値」に関する因子得点の平均と標準偏差. 性 男(1年詣名、2年50名、全体88名) 女(1年47名、2年46名、全体93名). 領域体操 器械 陸上 水泳 球技. 体操 器械 陸上 水泳 球技. 1年 Mean. 2.92. 2。98. 3.15. 3。01. 3.46. 2。83. 2.80. 2。94. 2.98. SD. 126. 1.16. 1.08. 1.22. 1.06. 1.05. α91. a96. 1.11 1.13. 2年 M6an. 2.37. 231. 2.75. 258. 3.oo. 2。55. 2.57. 2.62. 2.71. sD. 0.93. α95 1.07. 1.01. O.98. 0.96. 1.02. 1.13. 1.07 1.02. 2.61. 2.60. 2.92. 2.77. 3.20.. 2.69. 2.69. 2。78. 2.85 2.99. 1.12. 1.10. 1.09. 1.12. 1.04. 1.02. 0.97. 1.06. 1.10. 全体 Mean S.Z). 4. 3.10. 2.88. 1.08. 「. 得. a. 点3 平 均. b. b C. ,、C. 2. 体操. 器械運動. 陸上競技. 水泳. 球技. 領 域 ※ 異なるアルファベットを付与されたものの間には5%水準で有意な 差がみられた。. Figure 4.各領域における学習の価値. (4) 運動の有能感. Table 5は、「運動の有能感」に関する得点の平均値を学年ごとに. 示したものである。この結果について、2(学年)×2(性)×5 (領域)の分散分析を行ったところ、性の主効果が有意であり(F. 一17一.

(19) (1.・77)=6.80,p<.05)、男子のほうが女子よりも保健体育全体に対す. る運動の有能感得点が高かった。また領域の主効果も有意であった (F(n77)ニ9.87, P<.01, MSe=0.67)。. Tabie 5 各学年・性・領:域ごとの「運動の有能感」に関する因子得点の平均と標準偏差. 性男(1年38名、2年50名、全体88名)女(1年47名、2年46名、全体93名). 領域体操 器械 陸上 水泳 球技. 体操 器械 陸上 水泳 球技. 1年忌Mean. 2.48. 2.66. 2.64. 2.81. 3.19. 2。44. 2.37 2.33. 2.63. 2。80. 8P. 0.94. 1.01. 0.97. 1.04. 0.97. {λ87. 0,88 0.91. 1.40. 1.06. 2年 Me紐n. 2.61. 2.58. 3.01. 2.57. 3。09. 2.33. 235 2.40. 2.42. 2。70. 8刀. 0.98. 1.02. 1.06. 1.21. 1.15. 0.80. 0,91. 1.14. 0.99. 2.55. 2。61. 2.85. 2.68. 3.13. 2.39. 2。36 236. 2.52. 2。75. 0.97. 1.02. 1.04. 1.15. 1.07. α84. α89 0.97. 128. 1.03. 全体 Mean. s刀. 1.03. 領域の主効果について多重比較を行ったところ、球技領域がその 他の領域よりも有意に高かった。また器械運動領域は、球技領:域以 外の領域との間に有意な差はみられなかった(Figure 5)。. 4. 得. 平3. a. b. 均. b. b. b. 2. 体操. 器械運動 陸上寝技 領 域. 水泳「. 球肢. ※ 異なるアルファベットを付与されたものの間には5%水準で有意な 差がみられた。. Fjgure 5.各領域における運動の有能感. .18..

(20) (5)失敗不安 Table 6 各学年・性・領域ごとの「失敗不安」に関する因子得点の平均と標準偏差. 性 男(1年38名、2年50名、全体88名) 女(1年47名、2年嘱望、全体93名). 領域体操 器械 陸上 水泳 球技. 体操 器械 陸上 水泳 球技. 1年M・・nλ6・(葱n5322・λ42 S.Z). 0.88. 0.92. 0.81. 0.85. 0.77. 2年 Mean 2.59 2.89 2.43 2。51 2.58 81). 0.97. 1.00. 1.02. 1.08. 1.16. 全体 Mean 2.60 2・77 2・47 240 2・51 S1). 0.93. 0.98. 0.93. 1.00. 1.01. λ75. M盆96λ62雄. 1.04. 1コ1. 0.89. 0.95. 1.11. 2.60. 2.98. 2.75. 2.60. 2.65. 1.07. 1.11. 1.09. 1.10. 0.96. 2.68. 3.03. 2。85. 2.61. 2.64. 1.06. 1.11. 1.00. 1.03. 1.04. ※ この因子は、得点が高いほど不安が高いことを示している. Table 6は、「失敗不安」に関する得点の平均値を学年ごとに示したも. のであるωこの結果について2(学年)×2(性)×五.(領域)の分散 分析を行ったところ、性の主効果に有意な傾向がみられ(F(1.・77)=3.50,. p<.1)、女子のほうが男子よ.りも保健体育全体に対する失敗不安得点が 高かった。また領域の主効果に有意な差がみられた(F(1.・77)=7.40,p <n1, MSe=0.53)。領域の主効果について多重比較を行』つたところ、器械. 運動領域がその他の領域よりも有意に高かった(Figure 6)。. 4. 得. 点3. a. bc. 平. b C. 均1. bc. 2. 体操. 器械運動. 領. 陸上競技. 水泳. 球技. 域. ※ 異なるアルファベットを付与されたものの間には5%水準で有意な 差がみられた。. Fjgure 6.各領域における失敗不安. 一19一.

(21) 3 各学年・性・領域における好意度. Table 7 各学年・性・領域ごとの「好意度」の平均と標準偏差 性 男(1年38名、2年50名、全体88名) 女(1年47名、2年46名、全体93名). 領域体操 器械 陸上 水泳 球技 1年. Mean. 3.18. 3.26. 3.50. 332. 体操 器械 陸上 水泳 球技. 4.50. 3.40. 3。51. 3.Z) 1.33 1.35 121 1.21 0.94. 1.35. 125. 2年 Mean 3。04 2。90 356 2.94 4。36. 3。15. 2.91. 1.02. 128. 51). 1.34. 1.39. 1.43. 1.62. 1.13. 全体 Mean 3・10 3・06 3・53 3・32 4・42 81). 1.34. 1.38. 1.34. 1.52. 1.05. 334 121. 3。62. 1.62. 3.02 1.31. 4.13 1.42. 3.04 1.52. 4.39 1.13. 3.28 322 3.18 333 4.26 1.20. 1.30. 1.27. 1.60. 1.29. Table 7は、好意度に関する得点の平均値を学年ごとに示したも.の. である。この結果について2(学年)×2(性)×5(領域)の分散 分析を行ったところ、学年×領域の交互作用がみられた(F(欄)= 3.52,p<.01, MSe=1.22)。そこで領域ごとに学年の単純主効果を検定し. たところ、器械運動領域と水泳領域で、1年生のほうが2年生より・も 保健体育全体に対する好意度得点が有意に高かった(それぞれF(1.・77) =5.80,p<.05;F(1.177)=10.02, p<.01)。しかしながらその他の領域. には学年差はみられなかった。また領域の単純主効果をみたところ、 1年生.も2年生も有意であった(それぞれF(47・8)=12。68,p<.01;F (47・8)=26.49,p<.01)。1年生について多重比較を行ったところ、球技. 領:域は最も有意に高く、器械運動領域・体操領域陸上競技領域は、競. 技領:域・水泳領域よりも有意に低い結果となった。また2年夏につい. て多重比較を行ったところ、これも球技領域が最も有意に高く、器械 運動領域は最も低い結果となった(Figure 7)。. 一20一.

(22) 5. 得4. 漸年生. 点. 国2年生. 平. 均3. 2. 体操 器械運動陸上競技 水泳 球技 領 域 ※ 異なるアルファベットを付与されたものの間には5%水準で有意な 差がみられた。. Figure 7.学年別にみた各領域における好意度. 4 器械運動領域における運動の有能感と不安との相関 内発的動機づけ測定尺度の下位次元について、それぞれ領域別に比 較したところ、器械運動領域は特に緊張性不安・失敗不安因子が高く、. 運動の有能感が低い結果となった。そこで被験者全員について、因子 間の相関を調べたところ、どちらも弱い負の相関が得られた(Tab藍e 8)。. Table 8 運動の有能感と緊張性不安・失敗不安との相関 緊張性不安. 運動の有能感. 失敗不安. 一.22**. 一.29*** **. 一21一. @P<.01. ***. @p<.001.

(23) 【考察】. 研究1の目的は、保健体育科の各領:域での生徒の内発的動機づけの. 特徴について比較・検討することであった。内発的動機づけ尺度への 評定値をもとに因子分析を行ったところ、「学習への肯定的態度」「緊 張性不安」、「学習の価値」、「運動の有能感」、「失敗不安」が得られ. た。それぞれの因子得点を算出し、学年・性・領域間の比較を行った ところ、それぞれ次のようなことが明らかになった。. まず学年別に比較したところ、全領域的に差がみられたのは学習の. 価値であり、2年生のほうが1年生よりも学習の価値得点が有意に低 かった。この結果から、生徒は学年が経つにつれて保健体育の学習を 価値があるものと思わなくなってきているのではないかと思われる。. また水泳領域における学習への肯定的態度得点と好意度で、1年生の. ほうが2年生よりも有意に高かった。つまり1年生は2年生よりもこ の領域が好きであるため、学習に対して肯定的に臨むことができてい るといえる。しかしこの結果は、先の学習の価値とは異なり、限定的 な領域のことであるため、それぞれの学年の特性であると思われる。. 次に男女別に比較したところ、学習への肯定的態度は、全体的に女 子のほうが高かった。しかしこれとは逆に、運動の有能感は全体晦に 男子のほうが高く、失敗不安は全体的に女子のほうが高かった。また 緊張性不安は体操領域,器械運動領域,陸上競技領域で、それぞれ女 子のほうが高かった。つまり体育学習を行う際、男子は女子よりも運 動について有能さを感じているといえる。一方女子は男子よりも学習 に対して肯定的に臨むことができているものの、緊張性不安や失敗不 安を感じやすいといえる。. .22..

(24) 次に領域別に比較したところ、球技領域は、学年,性別に関係なく、. 好意度も高く、内発的動機づけ尺度のどの因子得点も他の領域に比べ て高かった。つまり生徒は球技領域を最も好んでおり、この領域は学 習に対してどの面からも内発的に動機づけられている領域であるとい える。これは保健体育科の授業担当者としての経験からも、十分納得 のいく結果である。. 次に体操領域,陸上競技領域,水泳領域は、どの因子得点も領域間 にあまり大きな差はみられず、どれも球技領域のそれよりも有意に低 い結果であった。生徒はこれらの領域での学習では、球技領域よりも 内発的に動機づけられていないよいうである。. 今回の研究で最も注目した器械運動も個人種目であるため、先の3・. 領域と同じようなことが考えられ、結果として似たような傾向がみら れた。この理由として末利(1978)や波多野・中村(1981)らの指摘する. 個人種目と集団種目との違いが大きいのではないかと考えられる。す なわち中学校で学習する球技領域のほとんどは集団種目であり、この 領域は主に集団対集団で攻防を展開し、得点を取り合って勝敗を競う ことをねらいとしている。この中ではチームの課題や自己の能力に適 した課題の解決に取り組んだりすることで、間接的にでも勝利に貢献 することができ、成就感,達成感をもつことができる。一方個人種目 は、できるできないがはっきりとみられやすいため、友達や教師たち の評価の目を気にしてしまうためであると思われる。またたとえどれ だけできても、他の生徒がそれを上回ればくなかなか自分が有能であ. ると認知することができなかったりするためではないかと考えられ る。. さらにこの器械運動領域は他の領域と比較して、特に緊張性不安や. 一23一.

(25) 失敗不安が高いことがわかった。この領域の種目は、確かに他の個人 種目と似た特性をもっているが、水泳や短距離走のようにタイムや距 離を競う場合、できるできないという感覚よりも、どちらかといえば 人より劣っていると感じるものである。これに対し、この領域の運動 種目はどれも演技の正否がはっきりと目に見えやすい、つまりできる できないが他の領域よりもはっきりとしているといえる。また失敗す ると痛いとか恥ずかしいなどの、負の特性やイメージが強いため、特 にこの領域で不安を感じるのではないかと思われる。. そこで運動の有能感と不安には関係があるのではないかと考え、全. 体について、器械運動領域での2つの不安と運動の有能感の関係を調 べたところ、,どちらにも負の相関が得られた。したがって運動の有能. 感を高めれば、これらの不安が低下する可能性も考えられる。つまり 器械運動領域で運動の有能感を高めてやれば、緊張性不安や失敗不安 が低下し、生徒の内発的動機づけが高まるのではないかと推測できる。. そこで研究IIでは、器械運動領域における運動の有能感に注目して、 生徒の内発的動機づけを高める方法について検討することとする。 ところで桜井(1997)は、内発的動機づけの発現プロセスについて、. 内発的動機づけを支えているものには、有能さと自己決定があり、そ. れらを取り巻く環境に、他者からの受容感がある。これら3つの源に 支えられて外界へ積極的に働きかけていき、知的好奇心,達成,挑戦 などの学習行動に現れてくると述べている。 また岡沢ら(1996)は、内発的に動機づけられているということは、. すなわち有能さを認知.し、さらに有能になることを求めて動機づけら. れることであると考え、有能感の観点から生徒の内発的動機づけを捉 えている。この研究では運動有能感測定尺度を用いて小学生から大学. 一24..

(26) 生までを対象に、保健体育科における内発的動機づけを測定し、その 発達傾向や性差を考察している。. これら、をあわせて、保健体育科における内発的動機づけの発現プロ セスをFigure 8のように示した。. 「楽しさ」「満足」. 「知的好奇心」. 「達成」. 「挑戦」. 内発的動機づけの現れ. 「他者からの受容感」. 「自己決定」. 身体的有能さの認知」+「統制感」. 有能感〉. 内発的動機づけの源. Figure 8.. 保健体育科における内発的動機づけの発現プロセス (桜井1997、岡沢ら1996から構成). このFigure 8は、保健体育科における内発的動機づけを、桜井(1997). の内発的動機づけの源のうち、有能さについて、岡沢ら(1996)の運動. 有能感の視点から捉えている。したがって有能さとは、運動有能感の 下位次元である「身体的有能さの認知」「統制感」「他者からの受容 感」から構成されていると捉えられるというものである。したがって 保健体育科における内発的動機づけを高めるためには、これらを高め ることが重要であると思われる。しかし「身体的有能さの認知」とは、. 自己の運動能力,運動技能に対して肯定的に認知していることを示す. 一25一.

(27) 内容であるため、特に能力が低い生徒にとって、この因子が高まるこ とは難しいと思われる。そこで、この因子以外の統制感,他者からの. 受容感を高めることにより、この運動有能感が高まるのではないかと 考えられる。. そこで研究IIでは、統制感と他者からの受容感が、生徒の内発的動 機づけにどのように影響しているか、また生徒はこれらをどのように 捉えているか検討する。. 一26一.

(28) 研究II. 【目的】. 器械運動領域において、統制感と他者からの受容感が内発的動機づけ に及ぼす影響について実験的に検討するとともに、どんなときに統制感. や他者からの受容感を感じることができるか質問紙法によって把握す る。. 【方法】. 1 対象者. 対象は愛媛県今治市の公立A中学校3年生3学級の生徒99名(男 子54名、女子45名)および同県越智郡のB中学校1∼3年生4学級 の生徒114名(男子59名、女子55名)であり、前者は以下に示す 実験の対象者、後者は後述の質問紙調査の対象者であった。. 2 実験計画. 2(統制感:H,L)×2(他者からの受容感:H, L)の要因計 画であり、いずれも被験者間要因とした。被験者の割り当ては、各ク. ラス間の差を相殺するため、いずれのクラスの男女も4条件を均等に 振り分けるようにした。6). 6)配布の仕方は後述の実験手続に示している. 一27一.

(29) 3 状況記述文の構成 実験変数を操作するために、状況記述文を次のように構成した。ま ず「統制感」の高低は、できない技に何度も挑戦するか否かによって 操作した。Figure 9は高群,低群に提示する状況記述文を示したもの である。一方「他者からの受容感」は、一緒に練習しようと言ってく. れたり応援してくれたりする友達がいるか否かによって操作した (Figure 10)o. 高群(H群) A君は、開脚前転の練習をしていました。はじめおしりをついていました が、何度も何度も練習しているうちに、回転スピードを上げるコツをつかみ、 やがてできるようになりました。. 低群(L群) A君は、体育のマット運動の時間、開脚前転がうまくできなかったけど、 あまり練習をすることもなく、すぐに別の種目の練習を始めてしまいました。 Figure 9。統制感の状況記述文. 高群(H群) このA君には、「一緒に練習しよう」と言ってくれたり、応援してくれた り、はげましてくれたりする友達がいます。. 低群(L群) このA君には、特に「一緒に練習しよう」と言ってくれたり、応援してく れたり、はげましてくれたりする友達はいません。 F壇ure 10.他者からの受容感の状況記述文. この記述文を組み合わせて、「統制感」も「他者からの受容感ゴも ともに高い群(以下HH群),「統制感」が高く「他者からの受容感」. が低い群(HL群),「統制感」が低く「他者からの受容感」が高い 群(LH群),「統制感」も「他者からの受容感」もともに低い群(:L L群)の4条件を構成し、各条件に対応する状況記述文を作成した。7). 7)各条件に割りあてられた記述内容の詳細は資料II−1を参照. 一28..

(30) 4 従属測度 まず被験者に「統制感」及び「他者からの受容感」を操作した記述 内容を読ませる。その生徒の気持ちを想像させて、その生徒はどの程 度「自分は努力したり練習したりしたらいろいろな技ができる」と思 っていると思うか、また「まわりの人たちに受け入れてもらっている」. と思うかについて回答させた。次に被験者がもしその生徒だったとし たら、内発的動機づけに関する質問についてどの程度思うと思うか回. 答させた。この質問の内容は、西田(1990)のAMPETの下位次元で ある「学習への肯定的態度」「学習の価値」「運動の有能感」・に、一. 般的な内発的動機づけを問う項目を加えた4項目で構成した。 次に被験者自身の器械運動領域における統制感」他者からの受容感,. 内発的動機づけおよび好意度を測定した。なおこごでの内発的動機づ けについては、上記の4項目と同様に構成した。. 回答形式はいずれも「すごくそう思う」「だいたいそう思う」「ど ちらともいえない」「あまりそう思わない」「ぜんぜんそう思わない」. の5件法であった。. 5 質問紙の構成8}. 質問紙はB4サイズ1枚を2つ折りとした。表面には、まず1条件 分の状況記述文が示されており、・その下に質問1−1が配置されてい. た。質問1−1はその状況を想像したときの、その生徒の「統制感」 及び「他者からの受容感」を問う項目が配置された。またこの項目に 回答したあと、指示があるまで裏面に進まないよう書かれていた。裏. 8)資料II−1 参照. 一29一.

(31) 面には質問1−2が配置された。質問1−2は、先の状況の生徒の内 発的動機づけを問う4項目であった。そしてその下には、質問2とし て、被験者自身の内発的動機づけに関する3項目及び「統制感」,「他. 者からの受容感」,好意度についてそれぞれ1項目ずつを配置した。. 6 実施手続 質問紙は、無記名方式とし、学級単位の集合調査法で行った。質問 紙は各条件に割りあてられる人数や男女比が均等になるよう、あらか じめ実験者により質問紙を条件順に並べかえておく。そしてまず男子 だけに配布し、つぎに女子に配布する。これによりそれぞれの学級で.. 男女とも4条件の質問紙を、ほぼ同数配布することができた。そして 各学級担任が回答の仕方をよく説明したあと記入させだ。回答に際し ては、被験者がもしこの記述文に出てくる生徒だったら、マヅト運.動. の学習に対してどのように思うと思うか想像させた。なお回答の際、. 質問1と質問2の内容が混乱しないよう、全員が質問1を回答し終わ るまで裏を見ないよう指示した。実施者は全員が質問1を終えたのを 確認した後、裏にある質問2を行わせた。なお回答に要した時間は約 15分であった。. 7 「統制感」「他者からの受容感」に関する質問紙 (1) 質問紙の内容’}. 質問の内容は、器械運動の各種目(跳び箱、マヅト運動など)に ついて、①器械運動の授業で、どんなときに「やればできそうだ」. とか「練習するとできそうだ」と自分自身で感じることができます 9)資料II−2 参照. 一30一.

(32) か②器械運動の授業で、どんなときに「友達や先生が自分を認めて. くれている」と自分自身で感じることができますか、の2項目であ った。なお回答形式は、自由記述法であった。. (2)実施手続. B中学校の114名を対象に、無記名方式で、学級単位の集合調 査法により行った。回答の仕方を学級担任がよく説明したあと、そ れぞれの項目に書いてある内容をどんなときに感じることができる. か回答させた。なお回答に要した時間は約10分であった。. (3)調査期日. 平成14年7月上旬. 【結果】. 1 実験的操作の確認 Table 9は、「統制感」に関する項目への評定値の平均と標準偏差を 条件別に示したものである。. Table 9 「統制感」得点の平均と標準偏差. H群. 統制感 他者からの受容感. L群 :L群. H群. H群. L群. Mean. 3。92. 3.92. 2.04. 2.54. SD. 1.44. 0.86. 1.28. 1.22. 26. 24. 25. 24. N. ※ H:高,L:低. 一31一.

(33) 2(統制感H,L)×2(他者からの受容感H, L)の分散分析を 行ったところ、「統制感」の主効果のみ有意であった(F(1.g5>ニ48.47, p. <.01)。そこで「統制感」に関する実験的操作は、成功したものとみ なした。. 一方Table 10は、「他者からの受容感」に関する項目への評定値の平. 均と標準偏差を条件ごとに示したものである。 Table 10 「他者からの受容感」得点の平均と標準偏差. 統制感 他者からの受容感. L群. H群 L群. H群. H群. L群. Mean. 4.19. 2.63. 3.84. 1。71. SD. 0.88. α90. 1.19. 0.84. 26. 24. 25. 24. N. ※H:高,L:低. .2(統制感H,L)×2(他者からの受容感H, L)の分散分析を 行ったところ、「他者からの受容感」の主効果が有意であった(F(・鮒 =87.34,p<.01)。しかしながら「統制感」の主効果も有意であり(F(1鮒. =10.28,p<.01)、「統制感」H群ほどL群より「他者からの受容感」. を高く感じていた。これらの結果は「他者からの受容感」に関する実. 験的操作は、確かに「他者からの受容感」のH群,L群を操作的に作 り出すのに成功してはいるものの、「統制感」の操作と独立に機能し. なかった可能性があることを意味している。実験計画上は、これら2 つの要因は相互に独立でなければならない。そこで以後の分析は以下 の2通りの方法で進めることとした。. まず1つめは「統制感」,「他者からの受容感」は計画通り適切に. 操作されたものとみなし、2(統制感H,L)×2(他者からの受容 感H,L)の実験計画に基づいた分析を行う。 2つめは「統制感」と「他者からの受容感」が交絡する形で操作さ. 一32一.

(34) れてしまったとみなし、「統制感」のH群はH群だけで、L群はL群 だけでというように、別々に分析する。それぞれの中で内発的動機づ. けを従属変数として「他者からの受容感」H群とL群との差を分析す る。また、それぞれを独立した2っの変数とはみなさず、当初の実験. 計画を崩して、内発的動機づけを従属変数とする1要因4水準(生徒 のタイプ;H’ g群,B:L群, LH群, LLI群)の実験計画として捉え、 分析する。. (1) 「統制感」,「他者からの受容感」の実験的操作がともに有効で. あったとみなした場合 まず「統制感」,「他者からの受容感」の実験的i操作がともに有 効であったと仮定して分析を行った。Table 11は内発的動機づけ得し 点の平均と標準偏差を示したものである。 Table 11 内発的動機づけ得点の平均と標準偏差. 統制感 他者からの受容感. L群. H群 H群. :L群. H群. L群. Mean. 3.40. 3.08. 2.75. 2。69. SD. 0.81. 0.75. 0.99. 0.83. 26. 24. 25. 24. N. ※ H:高,L:低. 2(統制感H、L)×2(他者からの受容感H、 L)の分散分−析 を行ったところ、「統制感」の主効果がみられたものの(:F(1殉= 8.88,p<.01)、「他者からの受容感」の主効果や、両要因の交互作用. はみられなかった。統制感H群は、統制感L群より、内発的動機づ け得点が有意に高かった(Mean;H=3.25, L=2.72)。. 一33一.

(35) (2) 「統制感」と「他者からの受容感」が交絡する形で操作されたと. みなした場合 次に「統制感」と「他者からの受容感」が交絡した形で操作され. てしまったとみなし、「統制感」のH群とL群を独立させて、それ ぞれ「他者からの受容感」H群とL群の間の差を検定した。Table 12. は、各群における内発的動機づけ得点の平均と標準偏差を示したも のである。 Table 12 「統制感」H・しで分けた場合の内発的動機づけ得点の平均と標準偏差. 他者からの受容感H群 統制感. Me紐n. H群 SD. N. 統制感Me勧n. L群 SP N. 他者からの受容感L群. 3。40. 3.08. 0.81. 0.75. 26. 24. 2.75. 2.69. α99. 0.83. 25. 24. t値 1.39. 0.19. まず「統制感」H群における「他者からの受容感」H群と:L群と の平均の差を検定したところ、有意な差はみられなかった。また「統. 制感」L群における「他者からの受容感」H群とL群についても、 有意な差はみられなかった。「統制感」H,L群のいずれにおいて も、「他者からの受容感」の高低間での内発的動機づけ得点には差 がみられなかった。. また、同様に2つの要因が交絡したとみなし、2つの要因をそれ ぞれ完全に独立したものと捉えず、HH群, LH群,HL群, L:L 群の4タイプとして捉え、タイプ(群)ごとに内発的動機づけ得点 の平均と標準偏差を算出し、Table 13に示した。. 1要因4水準の分散分析を行ったところ、群の効果が有意であっ た。多重比較を行ったところ、内発的動機づけ得点はHH群が最も 高く、ついでHL群、 LH群となり、 LL群が最も低いという結果. 一34..

(36) となった。, Table 13 各群ごとの内発的動機づけ得点の平均と標準偏差. HH群. HL群. LH群. LI」群. Mean. 3.40、. 3.08、b. 2.75b. 2.6%. SD. 0.81. O.万. O.99. 0.83. 26. 24. 25. 24. 群. N. F値(dfヒ3/95). 3.59* (MSe=0.75). ※ H;高,L:低 HH群とは「統制感」高、「他者からの受容感」高を意味する ※ 異なるアルファベットを付与されたものには5%水準で有意差がみられた. * pく.05. 2 マット運動の学習時に、実際に生徒が感じている統制感,他者から の受容感,内発的動機づけ,好意度の実態 (1) 生徒が感じている統制感,他者からの受容感と内発的動機づけの 関係. 次に、実際に生徒が感じている「統制感」や「他者からの受容感」 を求めた。まず生徒自身の反応した「統制感」「他者からの受容感」 得点の平均を算出し(それぞれM=3.71;M=3.37)、・ぞ・れそれの平均. よりも高く反応している生徒を高(H)群、平均よぴも低く反応し. ている生徒を低(L)群とし、HH群・LH群・HL群・LL群の 4群に分類し(統制感,他者からの受容感の順)、Table 14に示した。. Table 14 各群にあてはまる生徒の人数と統制感,受容感得点の平均と標準偏差 群. HH群〔N=36). 統制感得点平均 4.53. 51). 050. 受容感得点平均 4.19 51). 0.40. HL群{N=24}. LH群(N=10}. LL群{N=29n. 4。42. 2.90. 238. a49. α30. 0.72. 2.71. 4.20. 2.62. α61. α40. a76. ※ H:高,L:低 HH群とは「統制感」高、「他者からの受容感」高を意味する. 一35一.

(37) そして各群ごとに内発的動機づけ得点の平均と標準偏差を算出. し、1要因4水準(HH群、 LH群、HL群、 LL群)の分散分析 を行ったところ、有意な傾向がみられた。多重比較を行ったところ、. HH群はLL群よりも内発的動機づけ得点の平均が高い傾向がみら れた(Table 15)。. Tab董e 15 各群ごとの内発的動機づけ得点の平均と標準偏差 LL群 F値(df」3/95) 群 HH群 LH群 HL群. Mean. 3.42a. 333曲. 3.17。b. 2.86b. S.Z). 4.19. 4.20. 2.71. 2.62. 24. 29. N. 2.19† (MSe=0.79). 36 、 10 ※ H:高,L:低 HH群とは「統制感」高、「他者からの受容感」高を意味する ※ 異なるアルファベットを付与されたものには5%水準で有意差がみられた. † P<.1. Table 16は、内発的動機づけ得点の全被験者の平均(M=3.19)をも・. とに、それよりも得点が高い生徒を高群とし、それよりも低い生徒 を低群として、各群の人数を表したものである。κ2検定の結果、 人数の偏りは有意であった(Z2=11.88, df=3, p<.01)。 Table 16 内発的動機づけ得点高群と低給における各群の人数 群. 内発的動機づけ. HH群. HL群. LL群. LH群. 合計. 26(18.9). 13(12.6). 4(5.3). 9(15.2). 52. 10(17.1). 11(11.4). 6(4.7). 20(13.8). 47. 得点・高群 内発的動機づけ. 得点・低群 ※ 内発的動機づけ得点の平均(3.19)を基準に、平均よりも高い場合を高群、低い場合を低群とする ※ ( )内は期待度数. ※ H:高,L:低 HH群とは「統制感」高、「他者からの受容感」高を意味する. Table 17 Table 16に関する調整された残差. HL群. LH群. 内発的動機づけ得点・高群. 2.97**. 0.19. 一〇.84. 内発的動機づけ得点・低群. 一2.97**. .0.19. 0。84. HH群. 群. LL群 2.76** 2.76**. ※H:高,L:低HH群とは「統制感」高、「他者からの受容感」高を意味する. ** P<.01. 一36..

(38) そこで残差分析を行ったところ(Table 17)、内発的動機づけ得点. 高群ではHH群が期待度数より有意に多く、 LL群が有意に少なか った。また内発的動機づけ得点低群ではHH群が期待度数より有意 に少なく、LL群が有意に多かった。 以上の結果を総合すると、「統制感」も「他者からの受容感」も 高いタイプの生徒は、「統制感」も「他者からの受容感」も低い生 徒より、内発的動機づけ得点が高いといえる。. (2) 内発的動機づけ,統制感,他者からの受容感,好意度の関係 マヅト運動における内発的動機づけ,統制感,他者からの受容感, 好意度について、それぞれの問の相関係数を求めた(Table 18)。 Table 18・内発的動機づけ,統制感,他者からの受容感,好意度のそれぞれの間における相関. 統制感. 内発的動機づけ. 他者からの受容三. 57. 統制感. 好二度 .18. .75. .42. .48. 他者からの受容感. .23. この結果、内発的動機づけと好意度との間に強い相関がみられた。. また統制感と内発的動機づけ、統制感と好意度との間にそれぞれ中 程度の相関がみられたものの、他者からの受容感は統制感との間に 中程度の相関がみられただけであった。. 3 「統制感」「他者からの受容感」に関する自由記述調査の結果 器械運動の各種目(跳び箱、マヅト運動など)について、「統剣感1」、. 「他者からの受容感」をどんなときに感じるか、それぞれ自由記述法 により書かせた。この結果を分類し、「統制感」に関することをTable 19に、「他者からの受容感」に関することをTable 20に示した。. 一37一.

(39) まずどんなときに「統制感」を感じるかについては、主として自分 の努力や練習に関すること、技術指導に関することがあげられていた。. 一方どんなときに「他者からの受容感」を感じるかについては、周囲 の肯定的評価・励ましなどに関することがあげられていたものの、「統. 制感」を感じるときと同様に、自分の努力や練習に関することがあげ られていた。. Table 19 自由記述による、「統制感」を感じるときの内容. A 自分の努力や練習に関すること. もうちょっとでできそうなとき…・………・… …. 自分の努力や練習の成果…・… …………・…… 自信をもつ …………・……・・…………・・…. 23 22 13. B 技術指導に関すること. 手本を見たとき、手本になったとき…………・丁…. 14. やり方、コツを伝授してくれたとき・・……・・……. 6. 段階的な練習・・・… …・・・… …… ……………. 楽しそうな技をするとき……………・…・・…・・. 2 1. C その他. 授業のよい雰囲気……………・・………・…・・. 6. ほめられたとき ・・・・・・………・・・・・・…………・. 1. 時間があればできそう ……・………・…・…・…. 1. Table 20 自由記述による、「他者からの受容感」を感じるときの内容. A 自分の努力や練習に関すること. 技を達成したとき ………・………・……・…・・26 努力しているとき ・… ……………・… …・…・・ 5 B 周囲の肯定的評価・はげましなどに関すること. ほめられたとき ・……・…………・………・…22 アドバイスをしてくれたとき・・・・・・・・…………・・11. 自分が手本になったとき………・…・……・…・・ 6 失敗したときにはげましてくれたとき………・・… 2. C その他 ・ 授業のよい雰囲気・……・・………・・・・………・ 1. 一38一.

(40) 【考察】. 本研究の目的は、器械運動領域において「統制感」と「他者からの受 容感」が内発的動機づけに及ぼす影響について実験的に検討するととも に、どんなときに「統制感」や「他者からの受容感」を感じることがで きるかを質問紙によって把握することであった。. まず「統制感」「他者からの受容感」がそれぞれ高い群、低い群を実 験的に操作し、それぞれの群における内発的動機づけの差について検討 することを試みた。. 「統制感」「他者からの受容感」への実験的操作について確認したと ころ、「統制感」への実験的操作については有効であったものの、「他、 者からの受容感」への実験的操作については有効でなかった可能性があ』. つた。そこで2つの要因への実験的操作がともに有効であったとみなし. た場合と、2つの要因が交絡してしまったとみなした場合の2通りで分 析することとした。. まず1つめとして、2つの要因への実験的操作がともに有効であった. とみなして、内発的動機づけを従属変数とする2(統制感H・L)×2 (他者からの受容感H・L)の分散分析を行ったところ、「統制感」の 主効果がみられた。この結果から、「他者からの受容感」の高低に関わ らず、「統制感」が高いほど内発的動機づけが高いといえる。. 次に2つめとして、2つの要因が交絡してしまったとみなして、「統 制感」のH:群とL群を独立させて、「他者からの受容感」H群とL群の 差を検討した。その結果、どちらにも有意な差はみられなかった。これ により「統制感」の高い状況では「他者からの受容感」が高くても低く ても内発的動機づけはあまり変わらず、「統制感」の低い状況において. 一39..

(41) も「他者からの受容感」の高低に関わらず内発的動機づけはあまり変わ らないといえる。ただしこの場合は「統制感」を独立させて分析したた め、「統制感」の高低の差については論じることができない。しかしこ の結果は、1つめの結果とほぼ同じであるといえる。. また同様に2つの要因が交絡してしまったとみなして、2つの要因を. 独立したものと捉えず、それぞれ4群(HH群、HL群、LH群、 LL 群)について、内発的動機づけ得点を従属変数とする1要因の分散分析. を行った。その結果、HH群が最も有意に高く、ついでHL群、 LH群 となり、LL群が最も低いという結果になった。これも1つめの結果と ほぼ同じであるといえる。. 以上の結果から、内発的動機づけに最も影響しているのはまず「統制 感」であり、この「統制感」が高い前提のもとで、さらに「他者からの 受容感」が高いほど内発的動機づけも高いといえる。これはFigure 8の. 内発的動機づけの発現プロセスを支持したものであり、「統制感」が低 い状態のまま「他者からの受容感」を高めても、内発的動機づけへの効 果はあまりないと思われる。. 次に、実際にマット運動の学習時に生徒が感じている統制感,他者か らの受容感,内発的動機づけ,好意度の実態について検討したところ、. 内発的動機づけが最も高いのは、やはりHH群であり、最も低いのは:L. L群であることがわかった。しかしこの調査の中でLH群に該当する生 徒は10人であったが、その内訳をみたところ、このうち9人までの判 定が3(どちらともいえない)であった。この結果から推測するに、実 際には「統制感」が低く、「他者からの受容感」が高い生徒はほとんど いないと思われる。. また内発的動機づけ,統制感,他者からの受容感,好意度のそれぞれ. 一40,.

Table 1 保健体育における生徒の内発的動機づけについての因子分析結果 No 項 目 内 容 1 H  皿  IV  V 共通性 9 1 2 8 16 10 苦手な種目でもうまくなろうと一生懸命努力する 自分の良い点や悪い点をよく考えながら運動している上手になるために、何回も繰り返し練習す筍 うまくできる方法をよく考えてから運動するようにしている たとえうまくできなかったとしても、あきらめずに最後までがんばっている 体育の授業は、人よりもまじめに受けているほうだ .80  一.03   .20   .0
Table 26生孟の 力 ヨ属反応 日点 タイプA の平 と票 一差 群 実験群1 実験群2 統制群 F値df』2/51 Mean 50 N 3.96 1.1424 4.640.8114 3。630.9916  3.65* (MSe=1.10) ※ 努力帰属反応(タイプA)とは、授業を終えてうまくなった(かわらなかった)原因を、どの程度 練習したり努力したりしたか、5段階で評定したものである                          * P<∫)5  生徒の努力帰属反応(タイプA)について分散分析
Table 28 能力・曇 の 帰属因 ・に ヨ属した佃点の平と票 差 実験群1(N=24)実験群2(N=14)統制群(N=16)F値(df」2/51)  能力 課題の困難度  運 Mean3.z)Me鋤8刀Mean 5D 2.46 1.192.83121 2。46b1.12 2。641.112.431.05 λ14h1.12 2。560.862.881.05 3。88aO93  0.12 0.69  11.35** MSe瓢1.20 ※ 異なるアルファベットを付与されたものの間に1%水準で有意な差がみられ
Table 34 全 における、」感佃点の平ノと票 一差  後テスト 群 実験群 統制群 七値df」52 Mean 8D N 4。23 0.7638 4.07 0.6616 0.75  しかし体育全般に対する平均の差を検討したところ、有意でなか った。  また「統制感」についての質問紙は事前テストも事後テストも同 じものを使用したので、有意差のあったマヅト運動における統制感 について、各群の統制感の推移をFigure 16に示した。 5ρ0 得 400 点 3ρ0 目◎一統制群{実験群   事前      

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