できる自信のある技を適切に選択しているといえる。
8 実験手続
本実験の手続きをFigure 14に示した。
・ 体力テスト(結果による群の振り分け)
【実験群1】 【実験群2】 【統制群】
事i
Oi iテ1スi :トi,,
・ 内発的動機づけ測定 E 統制感測定
(1) 実験セヅション
第1時は、どの群にもまず器械運動領域での学習の価値について 説明し、その後各群での学習の仕方や学習カードの使い方などにつ いて説明した。そして実験群2では、スモール・ステヅプ学習カー ドを配布し、技の練習をする前に、カードに載ってある技の今まで の挑戦の経験、できばえなどについて記入させておき、練習したあ と、それぞれの技について、どのくらいできたか「少しできる」「ま あまあできる」「いつもできる」のうちから自己評価させた。なお 全くできない場合は空欄とさせた。また実験群1ではこの実験群2 での処遇に加え、各授業の最後に、学習カードの下に設けられた欄 へ、その時間特に練習したり努力したりした点について記入させ・た。
一方統制群では、スモール・ステヅプ学習カードを配布し、各技駕 ついて段階ごとに練習さ甘、練習後、各回のどの段階までできだか をチェヅクさせた。最後に各群それぞれに授業後の感想としで、学 習カードとは別に毎時間の統制感調査を行った。
第2時から第6時までは、それぞれ毎時間異なった技が記入され ているスモール・ステップ学習カードを提示して、第1時と同様に 練習させていった。なおできない技に無理に挑戦するのではなく、
前時までに出てきた技で、できそうな技に挑戦するよう教示した。
さらに第3時からは、授業の後半は、既に学習したできそうな技を 選択して、連続技の練習を行わせた。
第7時では、前半に発表のしかたを説明してから連続技の練習を させた。そして授業の後半、授業者に急に用事ができたとして退出 し、授業者のいない状況での内発的動機づけ行動について測定した。
実際には他教科の教師(担当:社会科)に依頼して、授業が始まつ
てから25分後に授業者を呼びに来てもらい、授業者は自由に練習 しておくようにと教示しておいて退出した。なお安全に配慮するた め、呼びに来た他教科の教師に、その場に残ってもらった。この様 子は体育館のステージに隠して設置されたビデオカメラで撮影され
た。
(2) 効果測定
実験セヅションでは毎時間の統制感を授業の最後に記入させた。
この調査は、無記名方式であったが、一人一人の変容も調査できる よう、事前テストから事後テストまで統一したオリジナルマーク(個 人が自分で決めたマーク)を記入させた。ここには数字や文字の組 み合わせや絵など、様々なマーグが書かれており、重複は1つしか なかった。この重複したマークについては、字の特徴や筆圧などに よって分別した。これにより生徒一人一人の統制感の変容をみるこ とができる。
実験セッション終了後の第8時に、生徒の技能について評価する ための時間を設定した。ここでは、約10分間練習させたあと、発 表会提出カードに、自分の選択した技の名前とそれに対応する得点 を、別表を参考にして記入し、提出させた。教師はそのカードを参 考に、生徒の連続技の発表を、技自体の評価・連続技のスムーズさ の観点から評価した。
事後テストでは、実験群1に施された努力への帰属の程度を確認 するため、原因帰属調査を測定した。また内発的動機づけ、統制感 についても測定した。これらにもそれぞれオリジナルマークを記入 させた。これらの測定は実験セヅション終了後、各学級で学級担任
によって行われた。
9 期日
平成14年9月中旬〜10月上旬
【結果】
1 事前テスト
(1)体カテスト18[
群間の体力面での等質性を検討するため、まず各クラスごζに、
事前に行われていた体力テスト結果の平均と標準偏差をTable 21に
示した。
Table 21 における カテスト詫点の平ノと票 一差
クラス 1年1・2組 1年3組 2年1・2組 2年3組 F値df」3/78 Mean
5D
N
30。45題 6.90
33
32。13b 6.32
16
36.40b 免41
20
36話2亀,
9、80 3.10*
13 MSe=67.10 ※ 異なるアルファベットを付与されたものの間には5%水準で有意な差がみられた。
* P<.05
この結果について分散分析を行ったところ、群の効果は有意であ
った。多重比較の結果、1年1・2組と2年1・2組、1年1・2
組と2年3組との間に5%水準で有意な差がみられたものの、1、年3組と2年1・2組、1年3組と2年3組、2年1・2組と2年3
組のそれぞれの平均の間には有意な差はみられなかった。そこでこ
の1年3組、2年1・2組、2年3組の3クラスを実験に採用する
18)この体力テストとは、文部科学省の新体力テストを指している。これは握力,上体 おこし,長座体前屈,反復横とび,持久走(または20mシャトルラン),50m走,
立ち幅とび,ハンドボール投げの8項目からなり、それぞれの記録を、年齢や男女に応 じた得点に換算するものである。なお得点の幅は、各項目1〜10点である。
こととした。
(2) 内発的動機づけ
内発的動機づけ測定尺度を用い、各群でのマット運動と体育全般 のそれぞれにおける生徒の内発的動機づけを測定し、Table 22と Table 23に示した。まずマヅト運動について分散分析を行ったとこ ろ、群の効果は有意ではなかった。また体育全般について分散分析 を行ったところ、これも群の効果は有意でなかった。
Table 22 マット における人発的1 づけ得点の平氏と票瀧i差 前テスト)
群 実験群1 実験群2 統制群 F値df」251 Mcan
SD
N
335
0.54
24
3.21
α43 14
2。99 0.55 16
2.25
「iab!e 23 全几における づけ侶、,の平 と票 一差 前テスト
垂垂1 群 統制群 F値df=2/51
M¢an
so
N
336
α51 24
3.42 α5514
3.23 0.43 16
(1.54
(3)統制感
各群でのマヅト運動と体育全般のそれぞれにおける生徒の統制感 を測定し、Table 24とTable 25に示した。
Table 24 マット における、」感渡点の平ノと票 一差 前テスト
群 実験群1 実験群 統制群 F値df」2/51
Mean
N
3刀4.01 0.65
24
3.78
α77 14
3.60 0.87
16
1.38
まずマット運動について分散分析を行ったところ、群の効果は有 意ではなかった。また体育全般について分散分析を行ったところ、
これも群の効果は有意でなかった。
Tab1625 全 における、」感 日点の平ノと票 一差 前テスト
群 実験群1 実験群2 統制群 F値df=2/51
Mean
N
s刀4.14 0.63
24
4.04 α54 14
4.OO O.98
16
0.20
以上の結果から、.実験:に採用した1年3組、2年1・2組、2年3 組の3クラスそれぞれは、体力面,内発的動機づけ,統制感のいずれ も等質であるといえる。
2 実験群における条件差の確認
(1) 生徒の努力帰属反応(タイプA)
実験終了後、実験群1で条件づけた努力帰属自己評価が、他の群 よりも効いていたか確認するため、各群について努力帰属反応調査
を行った。
まず努力帰属反応(タイプA)について、条件差を確認しようと 試みた。この質問の内容は、授業を終えてうまくなった(かわらな かった)と答えたときに、その原因を①練習したり努力したりした (しなかった)②自分には能力や才能があった(なかった)③技の 内容が簡単だった(難しかった)④たまたま、運がよかった(わる かった)の4つについてそれぞれどのくらい思ったか、5段階で答 えさせた。なお分析は努力帰属反応であるため、①を対象とし19}、
この結果の平均と標準偏差を↑able 26に示した。
19)その他の帰属因については、Table 28に示している
Table 26生孟の 力 ヨ属反応 日点 タイプA の平 と票 一差
群 実験群1 実験群2 統制群 F値df』2/51
Mean
50
N
3.96 1.14
24
4.64 0.81
14
3。63 0.99
16 3.65*
(MSe=1.10)
※ 努力帰属反応(タイプA)とは、授業を終えてうまくなった(かわらなかった)原因を、どの程度 練習したり努力したりしたか、5段階で評定したものである
* P<∫)5
生徒の努力帰属反応(タイプA)について分散分析を行ったとこ ろ、群の効果に有意な差がみられた。群の効果について多重比較を
行ったところ、実験群2は努力帰属を統制群よりも有意に高く反応 していた。しかし統制群と実験群1、実験群1と実験群2のそれぞ
れの間には有意な差はみられなかった。
次にもうひとつの質問項目からも、努力帰属反応(タイプB)を 確認しようと試みた。この質問の内容は、「毎時.間授業が終わった
後、自分の練習や努力した点と、技の上達ぐあいの関係について、
どの程度考えましたか」であり、5件法で答えさせた。Table 27は、
その結果を示したものである。
Table 27生!の 力 ヨ属反応z目点 タイプB の平 と燕一差
群 実験群1 実験群2 統制群 F値 df』2/51
Mean
SD
N
3.67 0.94
24
3.71 1.16
14
3.00 0.87
16
2.59†
MSe=1.02
※ 努力帰属反応(タイプB)とは、毎時間授業が終わった後、自分の練習や努力した点と、技の上達 具合についてどの程度考えたかについて、5段階で評定させたものである
† P<.1
生徒の努力帰属反応(タイプB)について分散分析を・行った.とこ ろ、群の効果に有意な傾向がみられた。群の効果について多重比較 を行ったところ、統制群と実験群1の間に有意な差がみられ(p<
.05)、統制群と実験群2の平均の差に有意な傾向がみられた(p<.1)。
実験群は努力帰属を統制群よりも高く反応しており、また同様に、
実験群2も統制群より高く反応していた。しかし実験群1と実験群 2の間には有意な差はみられなかった。