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(3) 内発的動機づけに関する行動次元での分析

  自由練習時間における練習への取り組みを、マット運動の学習に  対する内発的動機づけの程度をあらわす行動とし、まず技に挑戦し  た回数を各個人について測定し、その結果をTable 36に示した。技  への挑戦回数について平均の差を検討したところ、2群間の平埼の  差は有意でなかった。

Table 36  , 日 における生!のマット  の へのヒ の平ピと票 一差

実験

Me紛n

8P

N

19.24 4.00

38

統制群

20.67 3.37

16

t値df」47

0.27

 次に自由練習時問中、それぞれのマヅトをどのくらい活用してい るか、それぞれのマヅトの使用時間を測定した。なお、統制群と実

験群2は1クラスでの授業のためマヅト2枚、実験群1は2クラス

での授業のためマヅト4枚で行われた。この結果をTable 37に示し

た。

Table 37  におけるマットごとの 用日日 少

マットマヅトAマットBマヅトC マットD マットEマットF 平均時間 実験群i531

(4) 生徒の選択した連続技の得点

  マヅト運動の授業における評価の対象として、第8時に連続技の  発表会を行った。ここでは生徒が選択した連続技の合計得点が高け  ればより難しい技を選択していることをあらわしている。

  生徒が選択した連続技の合計得点と実際の教師の評価得点につい  て、各群ごとにその平均と標準偏差をTable 38に示した。

Table 38 発表会における生徒の選択した技得点と教師による評価得点の平均と標準偏差 実験群(N=38)  統制群(N=16) t値(df」47)

生徒の選択得点Mean       8.Z)

教師の評価得点Mean       、SP

11.61

306

9.36 2.84

10.80

326

7.60 2.20

0.85國

7.14*

      * P<.05

 生徒の選択した技得点について、群間の平均の差を検討したとこ ろ、有意でなかった。しかし教師による評価得点については群間の 平均の差が有意であり、実験群のほうが統制群よりも有意に高かっ

た。

【考察】

 本研究の目的は、マヅト運動の学習において、スモール・ステヅプ 学習カードを用いたうえで、さらに練習の成果を自己評価させたり、

その成果を自分自身の努力に帰属させる処遇を施すことにより、生徒 のマヅト運動に対する「統制感」,さらにはマヅト運動に対する生徒 の内発的動機づけが高められるか否かを実験的に検討することであっ

た。

 当初の実験計画では、スモール・ステヅプ学習で努力帰属を促す自

 己評価をさせた実験群1と、スモール・ステヅプ学習で自己評価をさ  せた実験群2、スモール・ステヅプ学習をさせるだけの統制群の3群  を設定していた。しかし努力帰属を促す自己評価をさせた実験群1と、

 努力帰属を促す自己評価をしなかった実験群2の間での努力帰属反応  には、有意な差がみられなかった。そこで実験群1にあたる生徒の自  己評価の具体的記述内容を見てみると、のべ120項目中、努力帰属  を表明する記述に該当していたの は約35%であり、さらに5時間中  4回以上記述していた生徒は24人中5人しかいなかった。その他は、

 簡単な感想であったり空欄であったりした。この結果、実験群1にお  ける努力帰属を促す実験的操作が有効でなかったと判断した。そこで  以後の分析では実験群1と実験群2をあわせて実験群とし、統制群と  の差を検討することとした。なお原因帰属調査における努力帰属得点  については、実験群と統制群の間に有意差がみられ、実験群のほうが  統制群よりも有意に高く判定していた。したがって実験群のほうが統  制群よりも進歩の度合いを自分自身の努力に帰属しているといえる。

マット運動の学習に対する「統制感」

  マヅト運動の学習に対する「統制感」得点については、事前テスト  では群間に有意差はみられなかった。一方事後テストでは、統制群よ  りも実験群のほうが有意に高かった。また「統制感」測定は事前,事  後とも同じ質問紙を使用したので、事前から事後への変容についても  分析を行った。事後テストにおいて、事前テストよりも「統制感」得  点が上昇した生徒の人数について検定したところ、実験群では得点の  上昇した生徒の人数が、期待度数よりも有意に多かった。しかし統制  群は有意でなかった。したがって本実験を通して、実験群における生  徒の「統制感」は高まったといえる。

 実験セヅションにおいて毎時間終了後、生徒の「統制感」調査を行 った。毎時間ごとに統制感を群間でt検定したところ、いずれの時間 においても有意差はみられなかった。しかしFigure 15に示されたよう に、相対的には実験群は統制群よりも「統制感」を高く評定していた。

これらの結果をあわせると、練習したり努力したりしたらできるだろ うといった「統制感」は1授業時間程度では大きく差は出ないが、・8 時間という長いスパンの中で、その差が大きく出現してくるのではな いかと考えられる。生徒は毎時間違った課題を練習するため、主にそ の時間練習した技について判定しているので、このような結果になっ たと思われる。また実験セヅション終了後の第8時では、両群とも「統 制感」が低下していた。これはこの時間がマヅ・ト運動の最後の授業で あり、次の時間に練習する機会がすでにないため、練習すればできる ようになるだろうといった「統制感」をあまり高く判定しなかったの ではないかと考えられる。

 第8時の発表会において、生徒が選択した技の難易度について両群 での平均を分析したところ、有意差はみられなかった。しかし実際に 教師が評価した得点は、実験群のほうが統制群よりも有意に高かった。

このことから実験群の生徒は、自分ができるという自信のある技を適 切に選択して発表したといえる。すなわち実験群の生徒は自分の進歩 の度合いを適切に把握しているのに対し、統制群の生徒は自分のでき る技を過大に評価していると推測できる。Table 26及びTable 27におけ る努力帰属反応得点は群間に有意差がみられ、実験群のほうが統制群 よりも課題の達成を努力に帰属していた。一方Table 29における運へ の帰属においても群間に有意差がみられ、こちらは統制群のほうが実 験群よりも強く運に帰属していた。つまり統制群の生徒が上達した原

 因を主に運に帰属しているのに対し、実験群の生徒は土達した原因を  主に努力に帰属していたといえる。この結果は、努力帰属教示をした  場合、能力帰属教示をした場合よりも運などの外的要因に帰属しにく  いという伊藤(1983)の指摘とほぼ合致する結果であったといえる。し  たがって統制群の生徒は、進歩の度合いを練習や努力の成果であると  考えるよりも、運がよかった(悪かった)からと考えており、自分の  進歩の度合いをあまり適切に判断することができていないと推測でき

 る。

  この結果を次のように解釈することができる。「統制感」が高かっ  た実験群では、練=習したり努力したりすればできるだろうとい畠う思い  を強く感じており、その結果進歩の度合いを自分自身の努九に帰属す  ることができたといえる。しかし「統制感」があまり高くなか・つた統  制群では、進歩の度合いをあまり自分自身の努力に帰属しておらず、

 むしろ運などの他の要因に帰属していたといえる。

  したがって教師は授業を行う際、元塚(1999)の指摘のように、生徒  自身が自らの進歩の度合いや課題達成の原因を適切に把握できるよう  な配慮をする必要があるといえる。

マヅト運動の学習に対する内発的動機づけ

  マヅト運動の学習における生徒の内発的動機づけについて丸事前テ  ストとして内発的動機づけ測定尺度得点を用いて、実験群と統制群の  得点平均の差を検討したところ、群間に有意差はみられなかった。ま  た事後テストにおいでも同様に検討したところ、全体得点では有意な  差がみられなかった。そこで内発的動機づけ測定尺度の下位次元ごと  に得点を算出し、分析した。その結果「学習への肯定的態度」「緊張  性不安」「学習の価値」「有能感」のそれぞれについては、有意差は

みられなかったものの、「失敗不安」は、実験群が統制群よりも有意 に低かった。このことから、マヅト運動での生徒の内発的動機づけ全 体を高めるまではいかなかったものの、「失敗不安」を低減させるこ とはできたと考えられる。この領域の種目は他領域に比べ、失敗する と痛いなどのイメージが強いため、「失敗不安」が他の次元よりも特 に内発的動機づけに影響を及ぼしていたのではないかと思われる。

 マット運動の学習に対する内発的動機づけに関し、本研究では行動 次元での分析も行った。自由練習時間における技への挑戦回融を行動 次元での内発的動機づけと位置づけて分析した結果、群間に有意差は みられなかった。しかし授業の様子を観察したところ、マットの数が 限られており、1人が技に挑戦している間は安全に配慮するため、そ の他の生徒は待機をしていた:。ある生徒がマヅトを使用していた場合、

他の生徒は待機しなければならないため、一人あたりの挑戦回数には 限界があるのではないかと考えた。そこで、各マットが自由練習時間 中どのくらい使用されていたかその時間を測定することとした。その 結果、使用時間は統制群よりも実験群のほうが長かった。すなわち統 制群ではマットが空いているのに、誰も練習していない時間が実験群 よりも長かったということをあらわしている。このことから、実験群 は統制群よりマヅト運動の学習に対する内発的動機づけが、相対的に はより高かった可能性があるものと推測できる。ただしマヅトや生徒 の数に大きな差があるため、統計的に両群の差を検討することは困難 であった。また撮影されたビデオを分析したため、待機をしている生 徒が順番を待つために待機していたのか、それとも他のことを考えて いたのかまでは判断することができなかった。したがって、この点に ついてはあくまでも推測に過ぎない。またマヅト運動の、特に接転技

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