4 4 四国医誌 55巻2号 44 ~84 APRIL ,52 9991 (平)11
エフェクター細胞を用いた肺癌の免疫療法
楊 河 宏 章
徳島大学医学部第三内科学教室 (平成11 年 3月5 日受付)1B
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T h i r d tnemtrapeD Ifloanretn ,enicideM heTytisrevinU Tfoamhisuko loohcS Mfo,enicide nihsukoT 抑 はじめに 肺癌による死亡者数は今なお増加を続けており,その 治療法の確立が望まれている。特に非小細胞癌では早期 診断,早期手術の意義が強調されるが,実際には全身に 転移を来たした状態で診断されることが多い。さらに現 在の手術成績は,原発巣はたとえ制御しえても多くの場 合手術時点ですでに臨床的にはとらえられない転移が存 在することを示唆している。結局肺癌は局所的疾患とい うよりは全身的疾患として対処されるべきと考えられ, 治療戦略としては全身療法の意味が大きい。しかし代表 的な全身療法である化学療法の非小細胞肺癌に対する治 療成績は今なお不良であり 0991 年代後半に至り新規抗 癌剤の登場によりやや向上が見られるとはいえ生存期間 中央値はl
年に満たない1)。そこで全身化した肺癌を制 御するため,生物学的治療の精力的な検討が行われてい る。本稿では肺癌に対する生物学的治療の現状を,我々 がこれまで検討してきたエフェクター細胞を用いた治療 法を中心に概説したい。1
.生物学的治療と工フェクター細胞 生物学的治療は腫蕩細胞の生物学的な性質を応用し, 主に腫蕩細胞と宿主細胞との相互反応を修飾することに より治療効果を目指す方法と考えられ,癌の浸潤や全身 への転移が標的となる。その方法としては腫蕩に対する 生体の免疫反応を応用したいわゆる免疫療法や,近年注 目されている遺伝子治療,また抗血管新生療法,抗転移 図.1 生物学的治療の概念 市異的土フエクター細胞! |非特異的エフェクター細胞| 療法などの治療を含む概念である。想定される生物学的 治療のなかで,我々は,ある種の刺激により癌に対する 抗腫蕩活性を発現するリンパ球などのエフェクター細胞 を肺癌の治療に応用することを試みている。エフェク ター細胞には,癌細胞の表面に存在するいわゆる癌抗原 を認識する抗腫蕩T
細胞,つまり特異的エフェクター 細胞に癌抗原の認識によらずに腫蕩細胞を破壊する非 特異的エフェクター細胞が考えられている(図1。)2
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インタ一口イキン-2
を用いたキラーリンパ球 の誘導による肺癌治療 リンパ球はnikuerletni )LI( - 2 のようなサイトカイ ンで活性化されキラーリンパ球となり,癌抗原の認識に よらず腫蕩細胞に対して抗腫蕩活性を発現することが知エフェクター細胞を用いた肺癌の免疫療法 られている。一般に担癌状態では種々の免疫機能が低下 することが知られているため 肺癌に対する-LI 2 を用 いた治療の前提としてまずn vi itro 条件での検討を行っ た。 -LI 2の末梢血リンパ球に対する活性化能は遠隔転 移を有する肺癌患者であっても保たれていること,肺癌 の進展局所である癌性胸膜炎による悪性胸水に含まれる リンパ球も-LI 2 による刺激により抗腫蕩活性を発現す ることを確かめた32, 。) 臨床治療としては肺癌に合併することが多い癌性胸膜 炎を対象とした。癌性胸膜炎は呼吸困難などの重篤な症 状を引き起こし,肺癌の浸潤局所での病態を反映すると 同時に,その胸水中にはリンパ球などが存在し,肺癌細 胞に対するエフェクター細胞として作用する可能性が考 えられる。実際に癌患者のリンパ球を活性化する方法と しては, -LI 2などの活性化因子を直接癌性胸水に注入 し,胸腔内に存在するリンパ球の活性化を図る方法と, リンパ球をいったん体外にとりだし,培養バッグなどを 用い至適条件でリンパ球を培養し胸腔内に投与する方法 (養子免疫療法)が考えられ(図2),我々はこの両者 を共に検討した。表lに-LI 2を用いた癌性胸膜炎に対 図2. キラーリンパ球の誘導による癌性胸膜炎の治療
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表.1 L-I 2 による癌性胸膜炎の治療成績 治療方法 症 例 数 著効 有効 無効 i n t e r l e u k i n -2 単独 35 13 (37%) 6 (17%) 16 (46%) \ω
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キラー細胞併用* 4 1 (25%) 3 (75%) 0 (0%) "-. 1009〆
ホex vvoi で培養した2.5-11.6 ×190 個を併用投与 45 する局所療法の臨床効果を示す。全国共同研究で肺癌に 合併した癌性胸膜炎に対し-LI 2を連日41 日間胸腔内に 投与したところ,癌性体腔液に対する効果判定にて35 名 中著効13 例37% ,有効6例17% ,合計で奏効率54% の結 果を得た4)。また体外で-IL 2 と共に培養したキラー細 胞を併用すると症例数は少ないものの100% の効果を得 た5)。この結果は,たとえ肺癌の進展局所であっても, 生体のエフェクター細胞は適当な刺激に反応して癌に対 する抵抗性を発揮しうること,また局所において癌細胞 との密接な接触が可能であるならば エフェクター細胞 が実際に臨床効果を発現することを示す成績と考えられ る。 し か し 同 時 に 我 々 が 行 っ た 局 所 療 法 は 患 者 にQOL (quality of lefi )の改善はもたらしたが,全身化した肺 癌の進展に対しては無効であった。表2
に世界で行われ た-LI2
の全身投与の成績を示すが よい治療効果は得 られていない。-LI 2の全身投与にて転移巣でのエフェ クター細胞の活性化を図ることは困難であると考えられ, いかにして癌の進展局所で強力なエフェクター細胞を誘 導するかが重要な問題として残された。 さらに, -IL 2投与においては二次的なサイトカイン の誘導が問題となった。二次的に誘導されたサイトカイ ンは,胸腔への細胞浸潤と関連したり,抗腫蕩効果に加 え胸膜癒着を促進するなどを介し臨床効果と関連すると 考えられる。しかし,誘導されるある種のサイトカイン は免疫抑制作用を惹起したり また副作用の原因ともな ることが明らかとなった6)。例えば-LI 5などのサイト カインは好酸球の増加を介してcapillary leak syndrome などの重篤な副作用の原因になる可能性があり,また, I L -1 0 などのType 2サイトカインは細胞性免疫に対し 抑制的に作用する可能性が考えられ(図3 ),キラー誘 表2. L-I 2 全身投与による治療成績 a u t h o r rehto tnegast)nesit(ap/esnopser lanruoj West 2-LI nealo 1 PR 5 N Elgn J Med 613 ,8: 98 7891 R o s e n b e r g NFKIAL*,sllec -α。
7 nnA gruS :012 9891,474 K r a d i n ILT**sllec。
11 tecnaL :519891,77 Yang TNF -α 1 PR 16 recnaC seR 151991,: 9663 Jansen lFN -α。
11 rJ lehtonumm : 21 ,072991 S c u d e l e t t i 2-ll nealo 2 PR 8 llC 733991,911 L i s s o n i ninatoelm 2 PR 9 ruE J Crecna A : 92 ,581 3991 A r d i z z o n i LI・2 anelo。
11 recnaC 37,3531 4991 S c h i l l e r TNF -α。
15 Am J Cnil locnO :815991,74 * ldetacitvea-nikohpmy rellik sllec * *nitartlifni-romut g lymphocytes宏 章 図4 . IL 1,5 - 2IL による肺癌患者末梢血単核細胞からの10IL -産生誘導
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100 0 」 楊 河 p < 01.0 「一一一一一「 200 150 E童
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|し2 [単独効果] I L・15 Medium。
導に伴ってみられるこれら2
次的サイトカイン産生を制 御することが重大な課題として考えられた。 インタ一口イキン一2 1
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を用いた肺癌治療の3
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基礎的検討 表.3 サイトカインによるリンパ球の活性化 トカインとして8-1LI が同定された。われわれはすでに I L -1 8 は21L-I との併用により濃度依存性に肺癌細胞に 対する抗腫場活性を誘導することを確認しており,今後, このような新しいサイトカインの臨床応用が生物学的治 療に新しい道を開くものと考えられる。 胸水リンパ球 ( i n v)oviつ
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胸水リンパ球 ( i n v)orti +++つ・ 末梢血リンパ球 ( i n v)orti +++?・I
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単球ーマクロファージ系細胞の活性化による肺 癌治療 単球ーマクロファージ系細胞は生体防御機構の基本的 な維持において重要な役割を担っている細胞であり,異 物の貧食機能,リンパ球への抗原提示能,種々の生理活 性物質の産生,分泌能などの機能に加え腫蕩細胞障害能 を有することが知られている01。)0791 年代から行われた 薬剤としては未承認であるが, IL 2以降に同定され リンパ球に対し抗腫蕩活性誘導能をもっ2-1LI や5-1IL に注目し基礎的検討を行った。 n viotri 条件におけるキ ラー誘導に関する検討では- 2LI 同様,,21-LI 5-1LI は 肺癌患者の末梢血リンパ球癌性胸膜炎による悪性胸水 に含まれるリンパ球を活性化しキラー活性を誘導し た7-9。) I L -2
投与によりみられた二次的なサイトカイン誘導 による問題点を克服しうる可能性を検討するため, ni v i t r o 条件における- 2LI および15-IL のサイトカイン誘 導能を比較した。 - 5LI 産生に関する検討では, Iし2が 肺癌患者末梢血リンパ球からその産生を誘導するのに対 し, 5-1LI による活性化は- 5LI 産生を伴わなかった9。) さらに0-1LI に関する検討においても 51-LI の0-1LI 産 生誘導能は-LI 2より低かった(図 4)9。) 以上の結果より,肺癌患者における生体内での抗腫場 活性の誘導能に関しては今後の検討を要するが,少なく とも,21-LI 51-LI はn viroit では肺癌患者のリンパ球に 対しても活性化能力を有していることが確認され(表'3) しかもそれらを適切に併用することにより- 2LI 治療で 見られた- 5LI や01L-I などの二次的サイトカイン誘導 による問題点を軽減しうる可能性が明らかとなった。ま たこれらに加え,最近やはりリンパ球を活性化するサイエフェクター細胞を用いた肺癌の免疫療法 ヒト癌に対する種々の
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lacigoloib( res 卯esn modifiers) を用いた治療研究で その作用機序として単球ーマクロ ファージ系細胞の賦活が考えられたものが多かったこと より,近年インターフエロン,サイトカイン類などの単 球一マクロファージ系細胞活性化因子を用いた治療への 試みが行なわれている 。表4 に示すようないくつかの研 究グループは末梢血単球をほvoiv で活性化し,体内に 投与するという検討を行なっている 。現時点で全身効果 としては際立つたものは認められていないが,局所効果 という点では肺癌の治療においてもさらなる検討の余地 が残されている 。5
.
抗腫蕩T
細胞の誘導による肺癌治療 前項で述べた非特異的エフェクター細胞に加え,癌細 胞の表面に存在する癌抗原を認識して癌細胞を破壊する 抗腫蕩T
細胞はより強いエフェクター細胞として作用 する可能性がある 。抗腫蕩T
細胞の誘導には,リンパ 球に効率良く癌抗原を提示する必要があるが,抗原提示 細胞として最近樹状細胞が注目されている。樹状細胞は 生体に少数しか認められないため 効率良い分離が問題 となっていたが,近年,末梢血単球が-LI 4 , GM-CSF といったサイトカインの存在下でT
リンパ球に対する 4 7 高い抗原提示能をもっ樹状細胞へ分化することが明らか となった11。 肺癌患者を対象とした基礎的検討の結果で) は,単球から誘導した樹状細胞に関し,その機能と関連 するとされる表面マーカーを検討すると,健常人と肺癌 患者で差を認めず肺癌患者からも樹状細胞の誘導が可 能と考えられた12)。 さらに樹状細胞の誘導は,単球より さらに分化し,悪性胸水中に存在する胸腔マクロファー ジ,また肺胞に存在する肺胞マクロファージからも可能 であるとの結果を得ている 。 一方,最近,抗腫蕩T
細胞が認識することの出来る いわゆる癌抗原が メラノーマを中心に肺癌でも報告さ れるようになってきた。 これらは特定のHLA により癌 細胞の表面に提示され,T
細胞の標的となることが明ら かになっている 。そこで,肺癌に発現している癌抗原, 例えばMAGE- 3 と呼ばれる抗原のペプチドを直接樹状 細胞に反応させ,この樹状細胞を用いて癌細胞の表面に 存在する癌抗原を認識する抗腫蕩T
細胞を誘導するこ とが可能であると考えられる(図5)。先般,治療プロ トコールが徳島大学附属病院の倫理委員会で承認された ので,今後腫蕩特異的なエフェクター細胞として臨床的 検討を予定している 。 表.4 活性化単球の移入による 癌 治療 報告者 報告年 対象疾患 対 象 症 例 数 投 与 経 路 活性化物質 臨床効果 Stevenson HC 9871 大腸癌腹膜転移 5 腹腔内 N-yIF (安全性の検討) Andreesen R 1990 種々の進行癌 8 静 脈 内 N-yIF 効果なし 癌性腹膜炎 7 腹腔内 N-yIF 2例で、腹水消失 1 9 9 5 大腸癌等の肝転移 7 肝動脈内 N-yIF 効果なし 1 9 9 7 大腸癌等の進行癌 9 静脈内 IFN-y+ LPS 1 OS F a r a d j i A 1919 癌性腹膜炎 9 腹腔内 lamsopoil MTP -PE (安全性の検討) 1 9 9 1 非小細胞肺癌 11 静脈内 N-yIF (安全性の検討) Lopez M 2199 メラノーマ等の進行癌 21 静脈内,腹腔内 N-yIF 1 PR, 2 DS 1 9 9 6 大腸癌 51 静脈内 l円、4・Y 3 OS LPS ,edirhaccasylopopil lamosopil MTP-PE muramyl editpepid ueanalog PR plaitra .ensopser DS: esaesid noitazilibats酒 司 曹 司 量 掴 昌 司 書 調 2 2 1 1 41 1 7 一 官 官 J 1 E i i 宏 章 lymphocytes lfo gun eracnc .stneitap .npJ
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局所投与による癌性胸膜炎治療-臨床効果,作用 発 現 機 序 に 関 す る 検 討 -,yparhetoiB 8 : 1-150 楊 河 図5 .特異的抗腫傷T細胞の誘導 による癌治療ワ
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,rceanC : 687 -61 6 2 0 , 1 9 9 8 1 0 . 楊河宏章:マクロフ ァージ. erygruS ,reitnorF 5 : 8 7 -9 2 , 1 9 9 8 1 1 . ,reluhcS ,.G ,errnTuh B .. ,nioamR :.N citirdneD :sllec from dreogni sllec mot oraj sreyalp T -nidetaidem-llec i m m u n i t y . .tnI h.rcA ygerllA ,.lonummI 211 : 3-71 3 2 2 , 1 9 9 7 1 2 . 鈴記好博,楊河宏章,竹内栄治, adhlarP jaraP ilu 他:第75 回日本癌学会発表,8991c
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抗腫損傷性T細胞 T リンパ球 6 . 7 . おわりに エフェクター細胞を用いた今後の生物学的治療の戦略 として,やはり大きな腫蕩量は手術による切除が適当な 方法 と考えられるので,いわゆるアジュバントとしての 治療に関する検討,さらに他の生物学的治療や,既存の 化学療法との適切な併用療法に関する検討が重要な課題 と考えている 。 9 . 献 1. BunnJr 吋,.A.P and ,ylleK
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