教師の多面的児童理解に関する開発的研究 : 学校教育相談の機能を生かした協働化をとおして
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(3) 1 問題の所在と研究目的. L1 今日の生徒指導上の課題. 1.2 学校における生徒指導推進の課題.. 1.2.1 生徒指導全般の問題点.. 1.2.2 学級経営と生徒指導の問題. L3 生徒指導における児童生徒理解. 1.3.1 積極的生徒指導としての児童生徒理解 1,3.2 先行研究から........ L4 研究の目的. 2. 研究の視点 2,1 学校心理学の視点から 2.1.1 学校心理学における生徒指導と学校教育相談. 2.1.2. 心理教育的援助サービスの3つの段階. 学校心理学における援助チーム... 2,1.4 児童理解と心理教育的アセスメント 2.1.5 コーディネーターの役割,... 児童理解の概念と方法論... 2,1.3. 2.2. 2.2.1 児童理解の概念.. 2.2.2 多面的な児童理解ための理解領域 2.3. 2.2。3 児童理解の方法論 . 小学校教師の児童理解に関する調査より 2.3.1. 調査の概要.................. 2.3.2. 児童理解に対する意識・関与に関する調査結果および考察 児童理解の方法に関する調査結果および考察.. 校内体制づくりに関する調査結果および考察... 2.3.3. 2.3.4 2.3.5. 調査結果の考察............ 2.3,6. 調査結果に基づく実践に向けた視点. 3 児童理解の実践モデルの構築 3.1 児童理解のための校内体制の構築..... 3.L1 学校教育相談の機能を生かした教育活動. 3.L2 会議型援助チームの組織化 3.2 児童理解の実践方法の確立.. 3.2.1 児童記録シート. 3.2.2 児童理解モニターチェック表....... 3.2.3 検査・調査を用いた客観的理解...... 1. 1 1 2 2 1 0 0 0 1 4 5 5 7 1 16 81 34 11 11 14 24 25 27 23 26 26 27 27 20 36 36 36 30 31 4 4 5 5 5 5 5 6 6 6 6 7. 目次.
(4) 5弓ノ. 77. 3.2.4 面接法. 3.2,5 実践の概要. 4.3.2 第一次計画の実践経過... 79 79 79 80 81 81 83 84 85 ..85 86. 4.3.3 第二次計画の実践経過。.. 100. 4.4 実践効果の検証と考察... . 115. 4.4,1 教育的効果の検証 .... 115 127. 4 児童理解の実践と効果の検証 4.1 実践の目的と方法.. 4.1.1 実践の目的... 4.1.2 実践の方法.. 4.2 対象および計画. 4.2.1 実施校の概要および対象. 4.2.2 チームの構成と役割 .... 4,2,3 推進日程. 4.3 実践の経過 4.3.1 実践準備. 4.4.2 実践効果についての考察. 5 総合考察および今後の課題. 131. 5.1 総合考察. 5.2 今後の課題と展望....... 131. 5.2.1 学校教育相談体制のあり方 5.2.2 教師の学校教育相談に対する資質向上. 133. 5.2.3 児童理解を援助につなげるために.. 138. 引用・参考文献一覧. 141. 133 135. Appen“ix A教師の児童理解に関する調査 A.1依頼文(学校長用) A,2依頼文(教師用) A,3調査用紙... 154 154. A,4 自由記述より. 164. B学級生活満足度尺度. 170. C文章完成テスト C,1学習面・身体面に関する内容. 172 172. C.2 心理面に関する内容. 173. 155. 156. ●− 0 1.
(5) 174. C,3 社会面に関する内容. D教育効果測定のためのプレ・ポストテスト D.1児童用プレ・ポストテスト... D.2教師用プレ・ポストテスト.... 175 175 176. ili.
(6) 乞22ZZ2ZZ22ZZ2。22,λZ2。22Z23。3。3333334。ヰ生ヰ生ヰヰ. 0123456789012. 旧文部省が示す児童理解の基本資料. 学校心理学における4領域の内容.. 多面的児童理解の重点内容 調査の概要..... 調査対象者の属性 調査1の各質問項目の評定得点の平均と標準偏差.。 児童理解に対する意識・関与の高い項目.. 児童理解に対する意識・関与の低い項目.. 児童理解に対する意識・関与の因子分析結果 意識・関与の教師経験年数間の分散分析.... 意識・関与の学校規模間の分散分析 調査2の各質問項目の評定得点の平均と標準偏差.. 取り組む傾向が高い項目.......。............ 取り組む傾向が低い項目...... 児童理解の取り組みに関する項目の因子分析結果.... 児童理解の方法因子と意識・関与の因子間相関..... 児童理解の取り組みの教師経験年数間の分散分析. 調査3の各質問項目の評定得点の平均と標準偏差. 校内体制において重要性が高いと示された項目 児童理解のための体制に関する項目の因子分析結果.. 校内体制の重要性に関する意識の教師経験年数間の分散分析. 校内体制の重要性に関する意識の校務分掌間の分散分析.. 学校教育相談の機能を生かした児童理解の活動.. 会議型援助チームによる期待される効果.... 各領域の多面的視点。................ アセスメントの記録内容............ 児童理解モニターチェック表の活用手順........ 児童理解モニターチェック表の観察の視点. 面接における教師の基本姿勢の重点 面接の進め方.... 会議型援助チームの構成員と役割... 推進日程 ..... アセスメント表の活用法.... 面接対象者の判断規準..。. 各児童理解の方法から得られた主な情報の概略... 面接対象者のアセスメントの概略と面接内容の焦点.... A女児の援助方針. 1V. 1. 表目次.
(7) 109. 4.10. B女児の援助方針 C男児の援助方針 D男児の援助方針. 4.11. E男児の援助方針.. 4.12. 自己理解・承認尺度の事前, 事後の平均値比較. 114 116. 4.8. 4.9. 111. 112. V.
(8) 0123456789. 3段階の援助サービスとその対象.. 問題解決型コンサルテーションのプロセス 児童理解の概念.......... 学校教育相談活動の構造..... 会議型援助チームおよびその構成員 児童記録シート(おもて) 児童記録シート(裏). 児童理解モニターチェック表 実践モデルの構造 ..。.. 実践計画の概略......... A組の学級生活満足度尺度集計座標 B組の学級生活満足度尺度集計座標 C組の学級生活満足度尺度集計座標 D組の学級生活満足度尺度集計座標 A女児の記述例...。.... アセスメント表...... 承認領域の平均値比較. 自己受容領域の平均値比較 自己実現的態度領域の平均値比較.. A女児の得点比較 B女児の得点比較 C男児の得点比較 .。........ D男児の得点比較 E男児の得点比較....... 理解への効力感の比較.。..... 理解の方法獲得の比較.......... 児童への関与の比較.. 教師間の連携比較 ..。..... V1. 111111111111. 図目次.
(9) 第1章問題の所在と研究目的 1.1 今日の生徒指導上の課題 昨今の生徒指導上には,いじめ,不登校,校内暴力,少年非行,学級崩壊など,さ まざまな問題が生している。. いじめは,発生件数が平成7年度をピークに減少傾向にあるが,陰湿ないじめが 集団化し,問題をより深刻化させて,被害児童生徒の自殺や,加害児童生徒の恐喝 といった第2の問題を引き起こしている。 不登校については,児童生徒数が平成13年度をピークにやや減少傾向にあるも のの,小・中学校合わせて,いまだに約13万人もの児童生徒がその対象の基準日数 となる年間30目以上の欠席をしている。しかし,公式統計上には表れてこない数字 として,欠席目数が30日未満であったり,登校はできても教室に入ることができな かったりといった,いわば不登校傾向を示す児童生徒の数まで含めると,かなりの 数の児童生徒がこの問題を抱えている現状が予想される。 森田(1991)*1は,教師が認知していない,不登校傾向の感情を示す潜在的な不登. 校現象をrグレイゾーン」として,将来的に不登校に陥る危険性の高いグレイゾー ンの児童生徒が広がりを見せていると述べている。このような現象も視野に入れる と,不登校現象はいまだに大きな問題として認識しなければならない。 さらに,少年非行の増加も大きな社会問題となっている。刑法犯少年の検挙人数 の近年の増加傾向は,戦後第四の波にあると言われており,凶悪,粗暴な犯罪が増 加する傾向が見られる。そしてそれは,凶悪犯の集団化の進行や,「普通の子」によ る「いきなり」型の非行が目立つなどの特徴がある*2。さらに,近年,少年による. 衝撃的な凶悪事件が相次いで発生している。その度に世間を大きく震憾させ,社会 不安を呼び起こしているのが現実である。 尾木(2000)*3は,こうした現状を今日の「新しい荒れ」ととらえ,その特徴を, 第一に,一見すると「普通」に思われる子が荒れるようになり,非行少年と普通の 子との境界線がきわめて曖昧になっていること,第二に,自分でも原因が分からな いまま「いきなり」「突発的に」暴れ出したり事件を起こしたりすること,第三に, それが凶暴化してきていること,第四に,この「新しい荒れ」や暴力が全国同時多 発的に起きていること,そして第五番目として,小学校で衝動的な暴力行為が多発 していること,の5点を挙げている。 暴力の増加については,文部科学省が行った平成16年度の「生徒指導上の諸問題 に関する状況調査」で,中学校,高等学校の校内暴力は減少傾向にあるものの,小 学校は2004年度の校内暴力の発生数が過去最悪となり,大幅な増加の傾向にあるこ *1森田洋司(1991)『不登校現象の社会学』,pp.23−33,学文社. *2少年の問題行動等に関する調査研究協力者会議(2001)『心と行動のネットワーク ー心のサイ ンを見逃すな,「情報連携1から「行動連携」へ一』 *3尾木直樹(2000)『子どもの危機をどう見るか』,pp.30−35,岩波新書. 1.
(10) とが示された*4。. また,児童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議(1998)*5では,非行の. 低年齢化とともに,周囲が予見し難いような子どもが重大な問題行動を起こし,突 発的・衝動的で,なぜそのような行動に走ったのか周囲もすぐには理解しにくいと いう特徴を,従来から見られる問題行動の特徴との対比から述べている。 以上に述べた,これらの生徒指導上の諸問題は引き続き憂慮すべき状況が続いて いる。これらの問題行動の原因や背景について,文部科学省(2003)*6は,L家庭 における幼児期からのしつけの問題,2.児童生徒の多様な能力・適正などに十分に 対応できていない学校の在り方,3。生活体験の不足,物質的な豊かさの中での他人 への思いやりや人問関係の希薄化,など,社会状況や青少年を取り巻く環境の悪化 等の要因が複雑に絡み合って発生していると考えられるとしている。 この中で,2,の,学校が児童生徒へ対応できていないという点に焦点をあてて生 徒指導を考えたとき,学校の生徒指導の機能が児童生徒の発達課題に対応し切れて いない現状があると指摘できる。したがって,多様化する諸問題に対応していくた めに,学校においては,児童生徒一人ひとりへの望ましい対応の在り方,個に応じ. た指導・援助の在り方を柱とした実践的な取り組みという,生徒指導の機能を生か した具体的な実践を体系的に整備していくことが,今目の生徒指導上の最重要課題 であると考える。. 1.2 学校における生徒指導推進の課題 1.2.1 生徒指導全般の問題点. 1.1で挙げた,多様化する生徒指導上の諸問題を解決していくためには,学校の生 徒指導が担うべき役割がこれまで以上に大きくなっている。しかし,今日は生徒指 導を推進していく上で,その弊害が学校現場にはいくつか存在していると考える。 以下に4点を挙げて考察する。 (1)積極的生徒指導の軽視. 旧文部省(1990)『生徒指導資料第21集』*7では,生徒指導を大きく2つの側面. に分けている。1つは,生徒の人格あるいは精神をより望ましい方向に押し進めよ うとする指導であり,すべての児童生徒を対象にあらゆる教育活動を通して行われ. *4神戸新聞(2005)「荒れる児童,歯止めなし 小学校内暴力最悪1890件」『神戸新聞』9月23目. 記事 *5児童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議(1998)『学校の「抱え込み」から開かれた 「連携」ヘー問題行動への新たな対応一』 *6文部科学省初等中等教育局児童生徒課(2003)「生徒指導の現状と課題についてj『月刊生徒指 導7月増刊号生徒指導白書’03』,pp,8−17,学事出版. *7文部省(1990)『生徒指導資料第21集 生徒指導研究資料第15集 学校における教育相談の考 え方・進め方 一中学校・高等学校編一』,p.7,国立印刷局. 2.
(11) る生徒指導である。これを「積極的指導」という。もう1つは,適応上の問題や心 理面の問題などをもつ児童生徒に対する指導である。これを「消極的指導」という。 江川(1992)*8は,生徒指導の現実目的として,1.開発的目的,2.予防的目的,3.. 治療・矯正的目的,の3っを示している。1.は,すべての児童生徒を対象として,一 人ひとりの発達の可能性や個性を伸長・実現させるとともに,それぞれの発達課題 に応じた様々な課題の習得・達成を目的とするものである。2.は,児童生徒が成長・ 発達の過程で出会うであろう様々な問題行動や適応困難な状況に陥ることを未然に 防ぐことを目的とするものである。3。は,特定の児童生徒を対象として,問題行動 や不適応行動を表している児童生徒が自分のカだけでは解決することが困難であり,. それを治療的指導(非社会的行動に対して)や,矯正的指導(反社会的行動に対し て)により効果的に解決するための,指導・援助を直接の目的とするものである。 以上の考え方を踏まえると,生徒指導の開発的目的と予防的目的は,「積極的生徒 指導」のための目的であり,治療・矯正的目的は,「消極的生徒指導」のための目的 であるといえる。旧文部省(1988)*9は以下のように述べている。 従来ともすれば問題行動の防止や非行対策といった消極的受身的面に傾 きがちであった生徒指導から,生徒指導の原点に立ちかえって生徒一人 一人の望ましい人格の育成を図るという観点に立って,もっと積極的能 動的な生徒指導を展開することが現在求められている。. しかしながら,学校現場ではいまだに消極的生徒指導に重きを置いている感が否 めない。泰(2004)*loは,ここ近年の,これまでになかったほどの教育改革が実施 されているにもかかわらず,生徒指導が旧態依然とした状態が続いており,「非行対 策」「非行防止」そしてr対症療法」に終始したままであることへの問題点を指摘し ている。さらに,最近の「荒れ」がますます多様化している中で,子どもたちの生 活や行動のすべてを厳しく管理・規制するという状況がますます強まってきており, 対症療法に追われるといった消極的生徒指導の悪循環に陥っているとしている。 この現状では,問題への対応が後手に回り,問題が起こってはまたそれをくい止 めようとするカのみが働く。その繰り返しが,問題が起こる前に早期に対応してい こうとする開発的・予防的な生徒指導をおろそかにしてしまい,生徒指導の究極の目 的である「自己実現」の達成ということから大きくかけ離れたものとなってしまう。 (2)生徒指導における教師間の連携の希薄. 生徒指導は,その目標を共通に理解し,指導方針の共通認識のもとで連携しなが ら指導にあたることが最も効果的であると考える。しかし,現実には,生徒指導体 *8江川びん成編集(1992)『生徒指導の理論と方法』,pp.7−17,学芸図書 *9文部省(1988)『生徒指導資料第20集 生活体験や人間関係を豊かなものとする生徒指導』,p。15,. 大蔵省印刷局 雫10泰政春編集(2004)『「生徒指導・進路指導」実践チェックリスト』,pp.10−16,教育開発研究所. 3.
(12) 制も含めて教師間の本来の連携が形骸化している感がある。そして,教師個人の力 量に任せられていることが,様々な問題を抱え込むといった問題に発展している。 倉田(1992)*11は,生徒指導の諸問題を生徒指導部の教師に押し付けてしまった り,反対に生徒指導部の教師は,問題を起こす生徒への対応に追われてしまったり するといった,役割による対症療法的生徒指導の問題性を指摘している。また,坂 本(1990)*12は,「生徒指導」として,「きびしい」態度で児童生徒に臨む教師と,「あ. たたかい」態度を示す教師が存在し,まったく相反する2つの態度が児童生徒に示 されるという,生徒指導体制の不統一の問題を指摘している。さらに,「あたたかい」. 態度の教師は少数派ということも重なって,権力的な「きびしい」態度に学校中が まとまり,きびしさによる生徒指導を展開する方向へと向かってしまったり,各教 師がバラバラなアプローチをしているため,校内の教師の「生徒指導についての共 通理解」と称して方法の統一の必要性が求められたりするといった,方法の画一化 による弊害と,形式的な共通理解といった問題点についても指摘している。 以上の考察には,校内体制として指導方針に一貫性をもてない連携の希薄さとと もに,先に述べた消極的指導への歩み寄りという傾向が示されている。 泰(2004)*13は,教師集団の連携・協力体制という言葉が「スローガン」だけに 終始し,基本的な「中身」についてはあまり議論されることがなかったとしている。 その結果,困ったとき,苦しいときの「助っ人」程度のことでしかなかったという 問題点を指摘している。. これまでの生徒指導体制も含めて,形式ではなく本来の連携を再確認し,協働的 な生徒指導を構築することが今後の課題である。 (3)学校教育相談の位置づけの曖昧さ. 学校教育相談(以下,教育相談と表記する)を論ずる上で,生徒指導の本来の目的. を明確にしたい。旧文部省および文部科学省は,これまで生徒指導について明確に 定義はしてこなかったが,多くの文献にその定義として引用されているのが,『生徒 指導資料第20集』*14の中の以下の一文である。. 生徒指導とは,一人一人の生徒の個性の伸長を図りながら,同時に社会 的な資質や能力・態度を育成し,さらに将来において社会的に自己実現 ができるような資質,態度を形成していくための指導・援助であり,個々 の生徒の自己指導力の育成を目指すものである。. この考え方を,本論においても生徒指導の定義としたい。この定義は,前述した 生徒指導の積極的な対応としての考え方が前面に出されたものである。 串11小林利宣・倉田侃司編集(1992)『教職専門シリーズ8 生徒指導』,pp.2−20,ミネルヴァ書房 *12坂本昇一(1990)『生徒指導の機能と方法』,pp、9−20,文教書院 宰13泰政春(2004),前掲書*10,pp.10−16. *14文部省(1988),前掲書*9,p.16. 4.
(13) では,教育相談は生徒指導の中でどのような位置づけが図られているのか。『小学 校における教育相談の進め方』*15には,教育相談の考え方が以下のように述べられ ている。. 教育相談は,一人一人の児童の発達と教育にかかわる諸問題をめぐって, 本人及びその保護者などに必要な心理・教育的援助を行うものであり,そ. れぞれの当事者が間題を柔軟にとらえ直し,その解決に向けて主体的に 努力する過程を尊重し,その過程が円滑に生じるように側面から可能な 援助をすることを基本としている。 また,『学校における教育相談の考え方・進め方』*16には,「教育相談は,生徒指導. の一環として位置づけられるものであり,しかもその中心的な役割を担うものであ る」と述べられている。また「生徒指導の一環としての教育相談においては,その 成立の経緯から,発達的観点に立っ積極的な側面よりも,適応上の問題や心理面の 問題などをもつ生徒への対応が重視されてきたが,今日では治療的な側面から,予 防的な側面,更には開発的な側面への役割の重要性が強調されている」とも述べら れている。. これらの考えを踏まえて,生徒指導と教育相談の関係性について考えると,教育 相談は,「生徒の自己実現を促進するための援助の一つ」*17であり,生徒指導が目標. とする「自己指導力」を育成するための,積極的な生徒指導の中核を担う重要な機 能であるといえる。. しかし,学校現場には,このような考え方が浸透し切れていない現状があるもの と考える。教育相談は,従来どおり,問題を抱えた児童生徒を対象とした治療的な 面での役割ととらえられている。しかも,教育相談を機能させる体制が曖昧であり, 担当者は形骸化して,その任務は担任の資質に委ねられている感が否めない。また, 特に問題が表出してこなければその役割が果たされることなく,生徒指導の本来の もつ機能とはかけ離れているという問題点が考えられる。さらには,校内体制自体 が整備されていないといった現状も考えられる。 狐塚ら(1991)*18は,「教育相談に対する理解や認識の仕方が教師によって違いが. あり,そのことが教育相談を学校教育に生かす際に混乱のもとになり,大きな障害 ともなっている」と述べている。飯野(2003)*19は,生徒指導に関する新たな潮流 である,心理学やカウンセリングをべ一スにしたr教育相談」が出現し,生徒指導 と融合するかのように見えたが,生徒指導は教育相談を受け入れながらも,2つを 融合した新たな活動として展開されるにはいたらず,教育相談は,他の活動との融 *15文部省(1991)『小学校生徒指導資料7 小学校における教育相談の進め方』,p5,大蔵省印刷局 *16文部省(1990)*7,前掲書,p.7. *17文部省(1980)『生徒指導資料第15集 生徒指導上の問題にっいての対策 中学校・高等学校 編』,p.59,大蔵省印刷局. *18北海道教育資料研究会編(1991)『学校における教育相談の展開』,p.2,北海道教育資料研究会 *19國分康孝・國分久子監修,飯野哲朗著(2003)『「なおす」生徒指導「育てる」生徒指導』,pp.18−31,. 図書文化. 5.
(14) 合を拒んでいるかのように,いまだに独自の主張を繰り返しているという問題点を 挙げている。. 大野(1997)*20は,校務分掌の位置づけにともなう諸問題として,位置づけへの. 反対論が存在し,その原因として,L教育相談に関わる人の力量に個人差があるた め,個人的に実践するべきものであり,力量のある教師がいないと成り立たないと する「安定性のなさ」,2.学校教育相談は特殊なものとしてとらえられ,専門的な 領域であるとされるための「一般性のなさ」,3.援助は担任が行えばよく,さらにそ れを包み込むものとして学年会や生徒指導部などの各分掌,事例研究会が十分に機 能すればよく,さらに必要ならば外部の専門機関にお願いすればよいといった「必 要性のなさ」,の3つの考え方が教師に蔓延っているとしている。 香川県教育センター*21は,学校における教育相談の現状と課題についての調査を. 実施している。それによると,教育相談活動全般にっいての問題点では,「情報交換 するための時間や場を確保しにくい」と答えた教師が最も多く,約6割であった。続. いて「専門的な立場から助言してくれる人がいない」が4割「学級担任などに問題 を一人で抱え込む姿勢がみられる」が3割であった。その下には「具体的にどのよ うな活動を行えばよいか分からない」とする回答が約2割と続いた。 この結果から,教育相談のための情報交換が必要であると感じながら,なかなか それができないために,担任がその責任を抱え込むといった問題が考えられる。さ らに,教育相談推進のためのコーディネーターや助言者の必要感を感じていること から,教育相談が必要であるとしながらも,それをどう進めていったらよいか分か らないまま,教育相談という言葉だけが先行して,連携とともにその推進が滞って いるという課題も指摘できる。 本来,教育相談は,生徒指導の究極の目的である「自己実現」の達成に向けた,最. も重要な役割を担っている。それは,従来からの治療・矯正を目的とした消極的生 徒指導への援助とともに,発達課題の達成や問題に未然に自らが対処できる資質を 育てるための積極的生徒指導の援助にも寄与する役割が求められているからである。 したがって,生徒指導と教育相談の関係を再度見直し,教育相談を推進する上での 障害となっている要因を改善し,生徒指導推進の重要なシステムとして位置づける ことが大きな課題であると考える。 (4)児童生徒理解の問題. 生徒指導を行う上で,その基本となる最も重要なことは,児童生徒一人ひとりを 理解することである。児童生徒一人ひとりの個性伸長を図る生徒指導では,児童生 徒のもつそれぞれの特徴や傾向をよく理解し,把握して,その個人に適した援助を 進めていくことが必要となる。当然ながら,教育相談を進めるにあたっても,その. *20大野精一(1997)『学校教育相談 理論化の試み』,pp.12−13,ほんの森出版. *21香川県教育センター(2000)「教育相談における協働態勢づくりに関する研究 一校内研修及び チーム援助の在り方を中心に一」『平成12年度研究紀要 生きるカを育てる教育』,pp.(4)25一(4)28. 6.
(15) 基礎となる活動が児童生徒理解であり,理解を基盤にした適切な個別的援助がなさ れる。. 児童生徒理解については,生徒指導に関する実に多くの文献や資料にその重要性 が述べられており,併記して理解の側面や方法などが示されている。しかし,その 重要性について教師は十分認識しているが,その具体的な方法や理解すべき点など については,学校現場ではあまり議論されてこなかったと考える。つまり,児童生 徒理解は,担任がその個性を生かして行うものであり,担任教師の力量や資質に委 ねられてきたという問題が指摘できる。そのため,理解の方法や理解の深まりなど が教師によって差があり,その結果,理解に基づいた援助もその適正さに格差が生 じる恐れがある。. 近年の児童生徒の「新しい荒れ」によって,子どもの姿がますます見えにくくなっ たという声が現場の教師や大人から聞こえるようになった。そのような中で,次々 と少年による凶悪でいたましい犯罪が繰り返されている。平成16年6月には,長崎 県の小学校で,児童による同級生の殺害事件という,学校を現場とした驚愕的な事 件が起こった。事件の内容についてここで触れるのは差し控えるが,この事件から, 学校における児童生徒理解の問題点をいくつか指摘できる。 長崎県教育委員会は,この事件について『佐世保市立大久保小学校児童殺傷事件 調査報告書(最終報告)』*22をまとめた。この中で述べられている分析結果から,児 童生徒理解の問題点に関わると思われる内容のみを抽出し,要約して以下に挙げる。. ・担任は,荒れる傾向にある学級の生徒指導に追われて,一人ひとり の指導に十分関われなかった。. ・前年度の児童の実態と似ていると判断したため,学級経営案は昨年 度のものとほどんど同じであった。. ・担任は,自分なりに把握している学級の実態をもとに指導にあたっ ていたが,子どもたちの人間関係については詳細な把握ができてい なかった。全般的に児童との関わりが弱かった。 ・全学年の学級担任からの引継ぎを受けなかった。. ・児童の状況を把握するための情報交換の場が日課の上では設定され ていたが,十分に機能していなかった。 ・全学年が単学級であることから,子どもたちのことは,日頃からよ く分かっているという思い込みがあった。 ・教育相談の時間が設定されているが,相談が実施されていなかった。. ・いじめ等の問題行動については,状況の把握に留まり,悩みや調査 の実施や結果の生かし方についても,学級担任に任せており,全体 的な取り組みが不十分であった。 宰22長崎県教育委員会(2004)『佐世保市立大久保小学校児童殺傷事件調査報告書(最終報告)』. 7.
(16) ・学校全体の組織として対応すべき課題が生じた際に,具体的に連携 協力して取り組む体制が十分ではなかった。 ・昨年7月の長崎市における事件後の全体指導や個人面談等について,. その対応は学級担任せで,表面的に問題のある児童だけに注意が向 いていた。したがって,子どもたちの人間関係の把握に対するきめ 細かな観察・指導は,十分になされていなかった。. ・多くの教職員は加害児童を「まじめで努力家」と捉えており,特に 問題視することはなかった。このため,加害児童の心の屈折や心の 中に起こった変化に気づくことができなかった。. さらに,この分析結果を受けて専門家の意見が述べられているが,児童生徒理解 に関わる箇所のみを拾い上げて以下にまとめる。 ・学校としての組織的対応や危機管理のあり方が問われる。また,教 師一人ひとりの指導力や観察力などの資質向上も,今後の大きな課 題である。. ・児童生徒の観察においては,一人の子を複数の目で見る必要がある。. このことが,学校にまだ根付いていないように感じられる。他の学 級のことに,教師がお互い意見できないようなところがないだろう か。また,担任に対しては心を閉ざしていた子どもが,別の教師に は心を開き,不安や悩みなどが明らかになるということも有り得る。 ・教師には,子どもたちの状況を見取る力量を高めることが求められ るとともに,(中略)問題行動の予兆を感じるためには,学習から離 れた時間に子どもと接することが大切である。 ・当該校の教職員が加害児童を「まじめで努力家」といった固定的な 見方で捉えていたことが,サインを見落としていた一因として考え られるが,それを裏返すと,「手のかかる子が問題のある子」と見な し続けていることと共通する。今後の課題としては,子どもの感情 は大人とのコミュニケーションを通して発達するという原点に立ち 返り,子どもの心を育てるために,問題行動等,不快感情の表出を 単に抑圧するのではなく,それに適切に対応できる力量を教師は身 に付ける必要がある。. ・対人関係,情緒,行動,認知等に偏りのある子どもを早期に発見し,. 適切な療育や教育に結びつけることは,今後の大きな課題である。. ・担任が知り得た情報の引き継ぎの方法等について,制度的に定める 必要がある。また,児童生徒に関する指導記録の在り方について, 初任者研修をはじめ各種研修会で教師の理解を深めるべきである。. 8.
(17) 長崎県教育委員会は,調査報告の分析と専門家の意見をふまえて,総括して見解 をまとめた。その中で,児童生徒理解に関わる内容を以下にまとめる。 ・関係教職員からの聴取から,後になってふり返ると予兆ではなかっ たかと思われる加害児童の行動や様子が浮かび上がってきた。子ど もたちの心の変化やサインをしっかりと受け止め,適切に対応する には,教職員一人ひとりに豊かな感受性と子どもの心に真に向き合 う姿勢が求められる。. ・今回の事件では,子どもたちの状況等にっいて教職員問で情報を共 有し,必要に応じて組織的に対応することの大切さが再確認された。 子どもたちの心の状態は,一人の教師の見方や判断だけでは的確に 捉えきれないことがある。各学校において確実に機能する生徒指導 体制を確立することが重要である。(以下省略) ・子どもたちの心の状態や変化を的確に把握するうえで,これまでの ような問題行動を起こさない子が「良い子」であるという捉え方だ けでなく,様々な見方や留意しなければならない側面があることを 改めて認識した。教師や学校だけでは判断や対処が十分に行えない 状況も考えられることから,専門家と学校とが連携して問題行動等 の予兆を把握できるシステムづくりが必要であることを痛感した。. ・児童一人ひとりへのきめ細かな対応を図るための体制づくりや,学 級生活の中で,学習時間以外においても,子どもとの触れ合いの場 を充分に確保していくことが求められる。. 以上のように,調査の分析結果には,学校の児童生徒理解のあり方について,実 に多くの問題点と課題が指摘されている。「学校運営や学級運営の問題」と指摘され た内容の大部分が児童生徒理解に関する内容である。また,それを受けて,専門家 の意見や教育委員会の総括の中でも,学校としての児童生徒理解のあり方を見直す という点で,生徒指導の体制も含めて多くの課題を提起している。 しかし,これほどまでの児童生徒理解に関する問題点が挙げられたことを考える と,本事件の現場となった小学校の児童生徒理解の問題点は,この学校に限った特 別のことでなく,多くの学校において児童生徒理解のあり方に関して少なからず問 題点を抱えているという実態を示唆しているものと考える。 この報告書をもとに,筆者がとらえた学校の児童生徒理解のあり方に関する問題 点を以下に5点まとめる。. 1,学校の生徒指導体制による児童生徒理解のためのシステムが確立されていない。. 2.教師の連携による情報交換など,児童生徒理解の協働化がなされていない。. 3.児童生徒理解は,学級担任の資質に任されており,共通理解の上で確立された ものとなっていない。. 9.
(18) 4.児童生徒を的確に把握できないために,学級経営,個人への指導や援助が児童 生徒の実態と合わない。. 5.教師個人の主観による判断に委ねられ,連携による多面的な理解ができない ために,児童の実態とのずれが生じ,それが児童の情報として一般化されて いる。. この調査報告で示されたように,生徒指導の重要な基盤である児童生徒理解が学 校の教育活動として機能していない現状において,教師は児童生徒理解に対してど のような考えをもっているのだろうか。 岩手県総合教育センター(1998)*23では,学校における教育相談の在り方に関す. る実態調査として,児童生徒理解に関する調査を行っている。 これによると,児童生徒理解の難しさを感じると答えた教師は,小・中・高校教 師合わせて96%であった。また,どのようなときに難しさを感じるかについては, 「児童生徒とうまくいかないとき」と答えた教師が最も多く,小・中・高校教師合わ せて約59%であった。続いて「児童生徒同士の関係がうまくいかないとき」「児童. 生徒が問題を起こしたとき」がともに約55%であった。 この結果を受けて,児童生徒と日頃の信頼関係作りや児童生徒同士の人問関係づ くりが十分なされていないことや,教師と児童生徒との信頼関係がうまくいってい ない状況の中で問題行動が起こり,対応が適切・有効になされていないことを指摘 している。. 児童生徒理解の難しさを感じる児童生徒の姿については,「問題を表面的に見せな い児童生徒」と回答しているのが約58%と最も高く,続いて「間題をかかえている が反応を示してくれない児童生徒」が55%であった。っまり,教師に内面を語らな い,あるいは反応を示さない児童生徒を理解することへの困難さを感じている。 調査チームは,反応を示そうとしない児童生徒の内面を理解するために,児童生 徒とのふれ合いを日常的に行い,児童生徒との信頼関係を作っていこうとする努力 が不十分であることを指摘している。 児童生徒理解に関する疑問や課題については,「教師間の児童生徒理解についての 共通理解の難しさ」「生徒とふれ合う時間をもてない」「児童生徒理解の方法を知り たい」という項目が目立った。. 以上の調査結果から,教師と児童生徒の信頼関係を基盤とした児童生徒理解を進 めていくことが重要な課題であり,教師はその課題の認識で一致しており,児童生 徒理解の難しさを感じながら,児童生徒理解の方法や目的について教師間の共通理 解を図っていきたいと望んでいることが考えられる。 児童生徒理解は,その言葉だけが先行し,理想とする基本的教育活動として理解 はされきたが,その現状は教師個人にその手立てと活用を任せてきたという,学校 の推進体制上の無関心さが間題点として指摘できる。学校としての基本的構えがお *23岩手県総合教育センター(1998)「学校における教育相談の在り方に関する研究(第1報)」『平 成10年度教育研究 154』,pp.134−135. 10.
(19) ろそかでは,学校としての生徒指導の目的を推進していくことに困難やゆがみが生 じる。. 1.2.2 学級経営と生徒指導の問題. 学級経営は,生徒指導の機能を生かす上で,生徒指導の基盤の上に進めていく必要 がある。それは,学校における人間形成ないし成長発達は,その大部分が学級での 生活の中で行われるものであるからである。そのために,学級担任は,学級一人ひ とりの成長・発達を促進させるために,また,学級集団としてのよりよい社会的資 質を向上させるための,適切な指導・援助の中心者となる。 しかし,10年ほど前からにわかに騒がれるようになった問題として,「学級崩壊」 が大きく取り上げられるようになった。 学級崩壊について,学級経営研究会(2000)*24は,「学級がうまく機能しない状況」 として以下のように定義している。. 子どもたちが教室内で勝手な行動をして教師の指導に従わず,授業が成 立しないなど,集団教育という学校の機能が成立しない学級の状態が一 定期間継続し,学級担任による通常の手法では問題解決ができない状態 に立ち至っている場合. この問題に今目の学級経営が抱える問題点を探ることができると考える。学級経 営研究会では,「学級がうまく機能しない状況」に関する調査で,10のケースに類別 して考察しているが,それぞれのケースには重複する事例もあり,一概に独立した 状況ととらえることができないとも述べている。それだけ複雑に要因が絡み合って いる問題である。そこで,この事例を参考にしながら,学級経営における生徒指導 上の問題点を以下に2点挙げて考察する。 (1)学級王国と教師間連携の希薄さの問題. 学級経営研究会が類型した10のケースのうち,筆者が判断した教師間の連携不足 が少なからず要因として認められるケースは6ケースである。その中で,校内の連 携・協力が確立していなと明確に類型されたのは1ケースである。しかし,他の5 ケースについても,校内組織体制の不安定さ,連携意識の欠如という問題点がみら れ,その要因の一つとして,閉鎖的な「学級王国」への感覚がいまだに根付いてい るということが考えられる。. 学級経営研究会が指摘しているように,学級担任の指導力の不足も要因の一つと して挙げられているが,その指導力を補うために,校内での研修の充実を図ること. *24学級経営研究会(2000)「学級経営をめぐる問題の現状とその対応 一関係者間の信頼と連携に よる魅力ある学級づくり一」『学級経営の充実に関する調査研究(最終報告書)』,文部省委嘱研 究(平成10・11年度),p.8. 11.
(20) や,学年,学校レベルでの連携による支え合いや学び合いが必要であることを指摘 している。しかし,その連携を阻む雰囲気がいまだに存在していると考えられる。 高旗(1997)*25は,学級を閉鎖する状況として,「学級王国」が存在する例を次の ように3点を挙げている。. L学級指導や学級経営が不十分で,それを他者に見せたくないから 「学級王国論」の名の下に学級を持ち上がる。. 2.学級間の競争意識から生まれる学級の閉鎖性。. 3.教師集団への不適応から担任が学級の子どもたちとの関係へ逃避 する。. そして,このような状況がrとなりを助けない,となりに助けを求めない学級風 土」が生まれるとしている。 児童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議(1998)*26は,学校の問題行. 動の取り組みに関して,学級王国とその弊害による学校組織の問題点を以下のよう に述べている。. ・自分が担任する学級には問題行動を起こす児童生徒などいるはず がない,あるいは児童生徒の起こした行為を問題行動だと認めるこ とは自らの指導の至らなさを認めることになり容認できないなどと いった意識がある。また,仮に児童生徒が問題行動を起こしたとし ても,それは自分の指導方法で解決できるという思い込みがある。 こうして,教員が学級王国を形成している。. ・問題行動に関して個々の教職員がばらばらの対応をしており,学校 としての組織的な対応がなされていない。. つまり,学級で確認できた児童生徒の問題について,担任が自分のカでどうにか 解決しようとして表に出さないまま問題が進行し,学校組織としての生徒指導体制 による対応ができてないまま,担任が手に負えないほどまで問題が深刻化したとき に初めて学校としての対応が始まるという,後手の対応が問題を悪化させているこ とが考えられる。これが,個人の問題も含めて学級集団への崩れを生み,やがて集 団化した学級崩壊へとっながっていく場合があると考えられる。 この間題を学校として改善するためには,もはや担任教師にその意識を変えるよ うに働きかけても改善できない。むしろ,ハード面からの対応として,学級の閉鎖 性を取り払うような生徒指導体制を確立し,常に情報交換や行動の連携を推進でき. *25高旗正人(1997)「となりを助けない,となりに助けを求めない学校風土」『児童心理12月号臨 時増刊号』51(19),pp.39−46,金子書房. *26児童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議(1998)『学校の「抱え込み」から開かれた 「連携」ヘ ー問題行動への新たな対応一』,p.5. 12.
(21) る組織を整備し,逆に学級王国的な学級の閉鎖性を崩壊させるためのシステムを確 立していく必要がある。 (2)児童生徒理解の問題. 児童生徒理解に関する問題点については,1.2.1でも取り上げたが,学級経営にお ける児童生徒理解も重要な要素を含んでいる。 学級経営においては,個別の状況や学級集団の特性など,児童生徒を十分に理解 した上で指導・援助計画が図られなければならない。児童生徒の実態と指導方針と の間に一旦ずれが生じると,児童生徒の実態に合わない指導や援助が次々と強制さ れて,そのことが児童生徒にストレスを生じさせ,個人としても学級集団としても 崩れが始まるという恐れがある。つまり,学級経営は正確な児童生徒理解を基盤と したものでなければならない。 しかし,先にも取り上げた,学級経営研究会が示した「学級がうまく機能しない 状況」の10の類別*27のうち,筆者が判断しただけで,児童生徒理解の不足が要因と. して認められるケースは9ケースもあった。つまり,学級崩壊のほとんどのケース で児童生徒理解の不十分さが指摘でき,他の要因と絡んで問題を深刻化させている という様相が見られる。. 10のケースの中で,児童生徒理解の問題点として重複している例を除いて取り上 げると,以下のような問題が指摘できる。 ・就学前の児童生徒について,その現状が十分に理解できていない。. ・教育的配慮の必要な児童生徒の心身の情況を適切に把握できてい ない。. ・子どもの家庭環境や養育状況を適切に把握できていない。. ・授業以外の場面において積極的な声かけや様子の把握ができてい ない。. ・いじめなどの問題について,目常の子どもたちの状況や心理を正し く理解できていない。. ・保護者・地域の実態に関する十分な情報をもっていない。 ・ 「学級王国」的な状況が,学年内の情報交換や連携を阻んでいるた. め,児童生徒に関する共通理解が得られない。. ・学級における子どもたちの学習状況や生活の様子について正確な情 報を家庭に提供できない。. 児童生徒理解は,担任だけでなく,教師間の横と縦のつながりの中で開かれたも のになるように,連携のもとで進められなければならない。上記のようなケースに 事27学級経営研究会(2000),前掲書*24,pp.14−33. 13.
(22) よって児童生徒理解が学校組織の中で行われてこなかったことが,学級の荒れを拡 大を招いたものと考えられる。 学級経営における児童理解の重要性は,『生徒指導をめぐる学級経営上の諸問題』 *28の中で,すでにその考えが次のように述べられている。. 望ましい学級経営を目指すためには,学級における教師と児童及び児童 相互の人問関係,学級全体の雰囲気や集団構造などについて把握するこ とが前提となる。(中略)すなわち,学級における人間関係や児童の特性 を十分に把握した上で,より望ましい人間関係や集団活動を育てるため の具体的方策,例えば,友人間で孤立していたり,排斥されている児童 を救済するための交友関係の指導,学習を促進するためのグループ活動 の指導,所属感や連帯感を高めるための役割分担や係活動の工夫,児童 全員が参加できる学級目標の設定のための工夫などについて,適切な配 慮が払われなければならない。. このように,学級経営における児童生徒理解の重要性が強調されているにも関わ らず,いまだに児童生徒理解のあり方が曖昧なまま確立されておらず,校内の連携 の上に立った学級経営が図られていないといった現状がある。今後,学級経営は,児 童生徒理解を基本としながら,開かれた学級経営として生徒指導の基盤の中で進め ていくために,学校としてのその方策を確立することが重要課題である。. 1.3 生徒指導における児童生徒理解 1.3.1 積極的生徒指導としての児童生徒理解. これまで述べてきたことから,生徒指導の抱える問題点には,「積極的生徒指導」 「学校教育相談」「校内体制としての教師間の連携」「児童生徒理解」という4つの. キーワードが挙げられる。これらが今後の生徒指導を推進していくための大きな課 題として,焦点化できる。. 特に,児童生徒理解は,生徒指導の基盤として位置づけなくてはならない。『生徒 指導の手引』*29の中でも,「児童生徒理解によって,どこをどう伸ばし改善するのか,. いつ,どのような方法によって指導するのかが最も効果的であるのかということが 明らかとなる」と述べているように,理解と指導・援助は表裏一体となるものであ り,言い換えれば児童生徒理解がなされなければ指導・援助をすることができない といえる。. これまで出されてきた旧文部省の生徒指導資料集だけでなく,旧文部省および文 部科学省から出された生徒指導に関する告示,通達を見ても,児童生徒理解の重要 *28文部省(1989)『小学校生徒指導資料6 生徒指導をめぐる学級経営上の諸問題』,p.13,大蔵省. 印刷局 *29文部省(1981)『生徒指導の手引 改訂版』,p.54,大蔵省印刷局. 14.
(23) 性が数多く言われ続けている。しかし,学校にはその重要性の認識はある程度浸透 してきているが,具体的な方策がとられていないのが現状である。さらに,生徒指 導体制や教師間の連携,学校教育相談の位置づけなども,常にその重要性が言われ 続けているが,このような課題に対する実践的取り組みにいまだ課題を残している 感が否めない。. 文部科学省は,平成15年に実施された児童生徒の問題行動等への対応の在り方 に関する点検結果について分析,考察している*30。その中で,上記の課題について,. 問題点を明確に挙げている。以下に関連する箇所のみを引用する。. ・個別の指導計画又は指導記録の作成が十分に行われていないことか ら,生徒指導や学習状況の情報,指導方法等について共有化が不十 分である。. ・教員相互間,あるいは教員とスクールカウンセラーの間での児童生 徒に関する情報の共有化が不十分な学校がある。 ・学校の指導方針に対する各教員の理解度や取組について,個人差が 見られる学校がある。. ・学年,学級で問題を抱え込んだり,逆に学年,学級任せになったり している学校がある。. ・教育相談の計画や実施方法等についての教職員間の連携や相談体制 が不十分な学校がある。. ・教員がカウンセリングマインドをもって児童生徒に接することなど が十分できていない学校や事例も見られる。 このように,生徒指導の抱える諸課題に対する抜本的な改善が求められている今,. 生徒指導推進の最も重要な基盤である児童生徒理解を抜きにしてこの課題を改善す ることはできない。. 児童生徒理解は,教育相談,生徒指導体制の中でもその中核を担う活動である。 生徒指導の中での指導・援助に果たす役割が大きい教育相談において,その体制を 整備し,その基盤となる活動に児童生徒理解を位置づけることは,教育相談が生徒 指導の機能として明確になるだけでなく,生徒指導の本来の目的を達成するための 「積極的生徒指導」としての体制を築くことにつながると考える。. 1.3.2 先行研究から. 以上に述べてきた課題については,これまでも学校レベルでの研究が進められて きている。主なものとして,名古屋市教育センターが平成7年度から3ヵ年計画で,. *30文部科学省(2003)「児童生徒の問題行動等への対応の在り方に関する点検について(報告のま とめ)」文部科学省初等中等教育局児童生徒課『生徒指導上の諸問題の現状と文部科学省の施策 について』,pp.212−218. 15.
(24) 学校における教育相談の充実を目指した実践的な研究を行い,教育相談係の役割や 働きのあり方,教育相談体制づくりについて検討を深めている*31。. 平成7年度は,教育相談から見た教育相談体制の現状と教育相談に対する意識に ついて調査を実施し,「教育相談体制にかかわる要素」「教育相談係にかかわる要素」. の抽出を試みた。その結果,教育相談体制にかかわる要素は「積極的な関心」「情報 交換」「生徒指導部会の運営」「いじめ等対策委員会の運営」「相談活動の活性化」の. 5つが教師の意識として抽出され,教育相談係にかかわる要素については「体制づ くりへの意欲」「研修への意欲」「個別相談活動への意欲」「相談活動推進への意欲」. の4つが教師の意識として抽出された。さらに,それらの項目について,学校種,経 験年数などでの意識の差の比較を行っている。 また,平成8年度は,前年度の調査結果を受けて,教育相談体制にかかわる5つの 要素に基づいてそれぞれの要素の充実化を図るねらいで,具体的目標や方法を検討 し,各要素に関する実践研究を行っている。さらに,実践を支える理論の構築,教 育相談係としての役割の明確化を試みた。. 平成9年度は,前年度の実践の見直しを進め,教育相談体制に基づく具体的な実 践を進め,教育相談の充実に向けたより具体的な要素を検討している。 岩手県総合教育センターでは,平成9年度から2ヵ年計画で,学校における教育 相談にかかわる課題を把握し,教育相談のあり方についての具体的理論と方法の確 立を目指した研究を行っている。. 平成9年度の研究においては,教育相談にかかわる内容として,児童生徒理解,不 適応児童生徒への対応,教育相談全般のそれぞれに関しての意識や実態について調 査を行っている。そして,それぞれの内容について課題を明らかにした上で,学校 における教育相談の在り方の基本構想を作成している*32。. また,平成10年度は,前年度の調査を踏まえて,学校における教育相談の在り方 に関して検討し,指導・援助試案を作成した。また,教育相談体制の在り方や校内 研修の進め方について具体案を作成し,実践事例を示した*33。. その他,個人レベルでの研究としては,河村・田上(1997)*34が,児童個人や学 級集団の適応の状況を客観的に理解するためのテストとして,「小学生版 学級生活 満足度尺度」を開発している。さらに河村(1999)*35は,中学生版も開発している。. これらの学級生活満足度尺度を活用した学級適応に関するアプローチは数多く研究 がなされている。. *31名古屋市教育センター(1996,1997)「学校における教育相談の充実に関する研究 一教育相談 係を中心とした教育相談体制の機能化一」『研究報告 生徒指導に関する研究』,7−02,8−02,9−02 *32岩手県総合教育センター(1998),前掲書*23,pp.131−145 *33岩手県総合教育センター(1999)「学校における教育相談の在り方に関する研究(第2報)」『平. 成11年度教育研究 155』,pp.109−124 *34河村茂雄・田上不二人(1997)「いじめ被害・学級不適応児童発見尺度の作成」『カウンセリン グ研究』30(2),pp.112−120,目本カウンセリング学会. *35河村茂雄(1999)「生徒の援助二一ズを把握するための尺度の開発 一学校生活満足度尺度(中 学生用)の作成一」『カウンセリング研究』32(3),pp.30−38,目本カウンセリング学会. 16.
(25) 教師の児童理解の実態に関する研究は,藤村・河村(2001)*36が,個々の児童の 学級生活に対する満足度と,それをとらえる担任教師の認知を比較することにより, 教師の児童理解の実態を調査・分析している。その結果,教師は児童の満足度を低め. に認知しているという結果から,児童のネガティブな行為に印象づけられて,児童 を過少評価しているという可能性を示した。また,教師経験が多い教師ほど,児童 を否定的に見て児童理解に歪みを生じさせる可能性が高いことを示した。また,同 一校に長年在籍した教師ほど,多面的な多くの情報に接する機会が多く,認知のず れが小さいこと,担任2年目より1年目の教師の方が先入観が少なく,認知のずれ が小さいことが示された。さらに,認知のずれの小さい教師の学級は,児童の学級 満足度が高いことが示された。 以上の結果から,1.教師は幅広い多次元的な視点から児童を理解すること,2.教 師問の情報交流の場を設けるなど,目々新たな視点から児童を理解する必要がある こと,3.経験則による理解の危険性,4.認知のずれが学級経営にマイナスの影響を 及ぼす危険性,の4点が示唆されたとしている。この調査結果は,今後の児童生徒 理解のあり方に大いに参考になる視点である。. 1.4 研究の目的 1.3。2に挙げたように,教育相談体制や児童生徒理解に関する研究は多く見られる。. しかし,校内レベルにおいて,児童生徒理解のシステムを学校体制のもとで構築し た研究に関してはいまだ見られない。これまで述べてきた生徒指導の問題点の改善 に寄与する研究のためには,児童生徒理解を基盤とした校内体制による積極的な生 徒指導の実践に他ならない。そこで,本研究の柱を児童理解と教育相談に置く。な お,研究の対象を小学校とするために,以下を「児童理解」とする。 国立教育政策研究所(2005)の『学級運営等の在り方にっいての調査研究報告書』 *37の中に,「学級運営と生徒指導の充実改善のための具体的な方策」が示されている。. そこには「児童理解の深化」として,以下のように述べられている。. ・児童理解を深めるためには,児童一人一人の内面への共感的な理解 に基づく学級運営を進めると同時に,学校の生徒指導体制を確立し, 児童に関する幅広い情報の収集と多面的な理解を図ることが必要で ある。学級経営と生徒指導の機能を生かし,相互に関連付けていく こと,そのことが児童理解を深め,一人一人の児童の見方を豊かに していく。. ・児童理解を深めるためには,(中略)多面的・総合的に児童理解を行. 宰36藤村一夫・河村茂雄(2001)「学級生活に対する児童認知とそれを推測する担任教師の認知との ずれにっいての調査研究」『カウンセリング研究』34(3),pp.36−42,目本カウンセリング学会. *37国立教育政策研究所生徒指導研究センター(2005)『学級運営の在り方についての調査研究報告 書』,PP.10. 17.
(26) う必要がある。この点からも,学年段階の情報交換や学校段階の連 携等を図る。また,情報化などの社会変化は急速であり,子どもの 意識や行動についてたえず実証的なデータ等を通し客観的・多面的 につかむ。. ・児童はそれぞれ能力・適正,興味・関心,性格等も異なっている。 教師は,このような個々の児童の特性を多面的・多角的に理解し, それぞれに応じた適切な指導を行うことが大切である。(以下略). ここに示された内容は,研究目的の視点となり得るものである。この考え方を踏 まえつつ,現在の生徒指導の抱える諸課題に対する改善策の一例としての研究を試 みる。生徒指導の積極的な対応としての児童理解のモデルを,教育相談体制のもと で確立するというねらいで,本研究は以下の2点を研究の目的とする。 研究の目的. 1.児童理解が学校教育相談体制において機能し,多面的な理解を促進するた めの児童理解の校内システムを開発し,協働的な児童理解の実践モデルを 構築する。. 2.児童理解の校内システムによる教育的効果を検証して,実践モデルの有効 性を明らかにする。. 研究の対象は小学校とする。小学校の生徒指導の重要性は,『学校の「抱え込み」 から開かれた「連携」へ』*38にも以下のように明記されている。. 近年,非行の低年齢化の進行や小学校における問題行動の広がりが 見られることを考えると,小学校段階からの組織的な生徒指導を充実さ せることにより,小・中・高等学校を通じた指導の強化を図ることが急 務である。. 小学校においては,学級担任が自らの学級の子どもたちと接する時 間が長く,生徒指導面においても子どもに対する理解や判断,指導が学 級担任に大きくゆだねられている。しかし,子どもたちの実態を多面的 に把握し,行動の意味をより的確に判断するためには,複数の教職員に よる情報の収集・分析を行うことが必要だと考える。学級担任は,自分 の受け持つ子どもたちは自分の学級の一員であると同時にそのの学校の 一員でもあることを認識し,他の教職員と協力し合って育てていくとい う姿勢を持つ必要がある。. これは,学級担任制という小学校の特殊性から見られる生徒指導の課題を提起し たものであり,小学校から意図的・意識的に教師問の連携に立った児童理解を推進 *38. 童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議(1998),前掲書*26,p.8. 18.
(27) し,校内の連携体制を強化していかなければならないという考え方に立ったもので ある。そして,小学校において教師間連携のもとでの児童理解のシステムが構築さ れれば,そのモデルは中学校や高等学校においても一つの参考モデルともなり得る と考える。よって,本研究は,教師間連携という課題を改善するべき対象としての 小学校に研究対象を求める。. 研究の推進については,まず児童理解の概念を明確にする。そして,小学校におけ る児童理解の現状と課題を明らかにして,実践のための視点を得る目的で,教師を 対象とした調査を実施する。その上で,教育相談の体制のあり方や児童理解の方法 について検討し,児童理解の方法論に基づいた具体的手立てを開発する。さらに,理. 論によって構築した児童理解のシステムを小学校現場において適用するために実践 研究を行い,その教育的効果を検討し,実践モデルとしての有効性を明らかにする。. 19.
(28) 第2章研究の視点 2.1 学校心理学の視点から 2。1.1 学校心理学における生徒指導と学校教育相談. これからの生徒指導を考えるとき,学校心理学の考え方を拠り所としてとらえる ことで,より実践的な生徒指導のあり方を考えることができる。 石隈(1999)*39は,学校心理学における心理教育的援助サービスについて,「一人 ひとりの子どもの学習面,心理・社会面,進路面,および健康面における問題状況 の解決を援助し,成長を促進することをめざす」ものであり,「学校教育の目標との 調和の中で行われる,子どもの福祉をめざしたヒューマン・サービスである」とし ている。さらに,「心理教育的援助サービスは学校教育の一環として行われる活動で あり,教育活動の枠組みの検討は学校教育の視点からなされる」と述べている。 『生徒指導の手引』*40に示されているように,生徒指導は,児童生徒の学校生活 全般にかかわる教育活動のすべてを対象とし,学校の教育目標を達成するための重 要な機能であり,個別的かつ発達的な教育を基礎とするものである,という考え方 を踏まえると,学校心理学における心理教育的援助サービスは,生徒指導の果たす 役割を十分に含んでいるととらえることができる。 1.2.1に記した,旧文部省の生徒指導の定義について,山口(2005)*41は,学校心. 理学の観点から,「一人の人問としての発達課題」と「生徒指導として教育を受ける 上での課題」への取り組みへの援助が含まれているとして,発達課題と教育課題に おけるサポート(援助)という学校心理学の視点は,生徒指導の見直しに有効だと 思えると述べている。 また,石隈(1999)*42は,学校心理学における心理教育的援助サービスの実践と. して代表的なものは「学校教育相談」であり,学校心理学の実践において,教師の 教育活動である学校教育相談が大きな基盤となる,と述べている。 大野(1997)*43学校教育相談が学校心理学に学ぶ点として,以下の3点を挙げて いる。. 1。学校教育相談担当者の在り方を明確にすることができる。つまり,. 学校教育相談担当者は,指導・援助の深さと広さ(専門性と現実的 な妥当性や必要性)に対応しつつ,「専門的ヘルパー」に転換すべき. 字39石隈利紀(1999)『学校心理学 一教師・スクールカウンセラー・保護者のチームによる心理教 育的援助サービスー』,p.89,誠信書房 *40文部省(1981),前掲書*29,pp,1−7. *41山口豊一編集・石隈利紀監修(2005)『学校心理学が変える新しい生徒指導 一一人ひとりの援 助二一ズに応じたサポートをめざして一』,p.19,学事出版 *42石隈利紀(1999),前掲書*39,p67−71. *43大野精一(1997)「学校教育相談の実践的な体系にっいて」広島大学学校教育学部附属教育実践 総合センター紀要『いじめ防止教育実践研究第2巻』,pp.1−41. 20.
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