肺原発ホジキン病の一例
大森樹美枝 小山敏雄 奥脇英人 千葉成宏 1)山梨県立中央病院病理科 2}山梨医科大学第2外科 3)山梨県立中央病院外科 はじめに 肺に原発するポジキン病は非常にまれである。これまでに世界で約65例が 報告され1: 3)、1961年にKern・Wらによってその診断基準が示されている・Lc 多くの症例が咳、体重減少、呼吸困難、胸痛などの非特異的症状を訴え、胸 部レントゲンで結節状陰影を呈するため、その確定診断には開胸肺生検が用 いられている。治療は、非肺原発のホジキン病に準じて行われる事が多い]t、 今回我々は、肺に原発した と考えられるポジキン病の 一例を経験したので報告す る。 症例 患者)19才 男性。 主訴)胸痛。 既往歴)18才より神経症に て思春期外来通院中。 家族歴)特記すべきことな し. 現病歴)平成6年10月頃より、 胸痛が出現した。 平成7年5月頃より、しだい に胸痛増強するも放置。10 月下旬に感冒症状見られ、 近医受診し、胸部レントゲ ン写真(図1)にて、前縦 隔に腫瘤陰影を指摘図1
入院時胸部レントゲン写真された,同 年11月9日、 精査目的に て当科を紹 介受診、肺 吸引細胞診 でclass I、 針生検で胸 腺腫が疑わ れた。同年 12月7日、手 術目的に入 院するも、 本人が手術 を拒否した ため手術を 中止し、18 図2(rr像 日退院した。同年12月22日、呼吸困難が出現し、再び手術を希望されたため、 平成8年1月4日に再入院となった。 入院時現症) 身長169.4cm、体重57.Ong、血圧140/80mmHg、脈拍80〆分、体温36.8℃、貧血 黄疸を認めず。表在リンパ節を触知せず。呼吸音、心音ともに正常。 検査) WBC15100(Eo 1.O St9. O Seg70.O Lymp 17.O Mo3.0)fMm3 Hb14.5gfdl PLT328×103/㎜3()RP4.98
ALP462 LDH207鉄137μg/d1
その他、血液所見に異常を認めず。 %VC94.6% FEVI o85.6% PO296.6mmHg PCO243,8mmHg 経過)入院時の胸部単純X線写真では左肺門から前縦隔にかけて結節状陰影 を認めた。 er(図2)では左肺動脈と大動脈に接する6.7×5.6cmの境界明瞭な前縦隔内 腫瘍陰影を認め、腫瘍の辺縁は比較的整で、空洞は有していなかった。また、 肝臓、脾臓、リンパ節の拡大を認めなかった。 −12一1月10日腫瘍 摘出術、左 肺上葉部分 切除術、胸 腺全摘術を 施行した。 腫瘍は左の 肺上葉から 発生してお り、胸腺左 葉と左腕頭 静脈に浸潤 していた。 また、胸膜 との癒着を 見た。
図3摘出標本の全体像
病理所見 切除標本は 左肺上葉の 一部と胸腺 が一塊とな っており、 その中に9× 8×6(mの腫 瘍を認めた (図3).腫 瘍の主座は 肺実質にあり、 胸腺への微 小な浸潤を 認めた。割 図4 摘出標本の割面 矢印は胸腺組口の範囲を示t 面は淡黄白色、充実性で境界明瞭であった。 −13一組織学的には著明に厚い膠原線維の隔壁を周囲にもつ結節状の腫瘍を認めた。 腫瘍実質に はHodgk血 細胞、成熟 リンパ球、 マクロファ ージ、好酸 球などが混 在していたe Lacvnar cell、 Reed− Sternberg巨 細胞も散見 された。さ らに、免疫 染色におい てKi−1 (CD30)に陽 性であるこ 図5 組織像 ×200 HE とより、肺原発の結節性硬化型H。d9㎞病と考えらた(図5)。 術後、化学療法を予定していたが、1月29日に投身自殺した。 考察 HOdgkin病(HD)は1832年にThomas HOdgkmが報告した疾患であり、病理組 織学的にHOdgkin細胞とRead−Sternberg細胞が見られ、その背景のリンパ球に 異型を認めない病変とされている。HDは臨床的には多くがリンパ節に初発 し、本邦では節内性が約90%、節外性が約10%といわれている・・。さら に節外性の中でも、肺を原発とするHOdgkin病は非常に稀で、今までに約65 例が報告されている。1961年にKern Wら…5が、その診断基準を次のように示 している。1)病理学的にHDの診断が得られていること2)その病変は肺 を主体としており、肺門と縦隔への侵襲は微小であること3)臨床的、病理 学的にその他の部位に病変が見られないこと。 本症例は左上葉に径約7.5cmの結節性の腫瘍があり、胸部レントゲンおよび crで肝臓、脾臓、リンパ節などの他臓器に病変を見ないこと、その病理学的 検索でHDと診断されたことから、この診断基準をほぼ満たしていると考え られる。 1986年に、Sa皿uel Aら6)が肺原発のポジキン病15症例について、1990年には .Arthur 1ら}]が61症例についてまとめ、比較検討しているeその結果は女性 に多く、その比は1:1.4で、20−30才と60・・80才にピークをもっている。そして、 −14一