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浴槽での消毒剤の濃度管理による安全性と快適性

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(1)

ニュウヨク ニ オケル アンゼン エイセイ ノ カク ホ ト カイテキセイ ノ コウジョウ ニ カンスル ケ ンキュウ : トク ニ レジオネラ ショウ ニ ツイテ

赤井, 仁志

Yurtec

https://doi.org/10.15017/13531

出版情報:Kyushu University, 2008, 博士(芸術工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第 3 章

浴槽での消毒剤の濃度管理による安全性と快適性

本章は、消毒剤の濃度管理のために不可欠な浴槽水での消毒剤の測定法と大 型浴槽での実測による消毒剤の濃度変化の挙動と解析等について述べた。

「1. 安全性と快適性の向上のための消毒剤濃度管理の測定方法の概要」では、

安全性と快適性を保持するための浴槽水での消毒剤の濃度管理の重要性、飲料 水の遊離残留塩素濃度測定とは異なる浴槽水での遊離残留塩素濃度測定法の特 異性と解決策、入浴施設での遊離残留塩素濃度の制御と分布の課題を述べた。

「2. 現場での浴槽水中遊離残留塩素濃度測定方法の確立」と「3. 現場での浴 槽水中二酸化塩素濃度測定方法の確立」は、結合残留塩素を含む浴槽水でのより 正確な遊離残留塩素濃度の吸光光度法による測定と塩素濃度を拾わない二酸化 塩素濃度の吸光光度法による測定について記述した。何れも実験室試験と実際 の浴槽での測定結果での検証を行った。

「4. 循環系浴槽での消毒剤添加・制御方法」では、消毒剤の投入方法と制御方 法の違いによって、浴槽の中でどのように消毒剤の濃度が時系列変化を示すか の実測調査と解析結果を記した。

「5. 循環系浴槽での消毒剤濃度分布の時系列変化」は、消毒剤の濃度の時系列 変化を数カ所の測定点で測定して、消毒剤濃度の分布の変化を実測した。これ により浴槽形状等による消毒剤分布の課題を述べた。

なお「2. 現場での浴槽水中遊離残留塩素濃度測定方法の確立」は、空気調和・

衛生工学会論文集№122(2007 年 5 月)に掲載された「浴槽水での DPD 法と SBT 法による遊離残留塩素濃度測定法に関する研究」(赤井仁志、紀谷文樹、

岡田誠之、市川憲良、高柳保、中村克彦、工藤浩一、池上天)1を参考にした。

(3)

1. 安全性と快適性の向上のための消毒剤濃度管理の測定 方法の概要

1.1 はじめに

消毒剤の濃度管理は、安全性や快適性には欠かせない。このために適切に消 毒剤の濃度管理をするための測定方法は重要である。

安全面では、消毒剤として最も一般的な塩素でも、遊離残留塩素濃度が低け ればレジオネラ症に対して脆弱である。しかし残留塩素濃度が低い場合だけが 問題ではなく、塩素消毒の副生成物であるトリハロメタンや塩素による健康被 害という課題も指摘されている。

トリクロロメタン(クロロホルム)等の塩素化トリハロメタンは、次亜塩素 酸とフミン質(腐植質)やフルボ酸等の天然有機物質が反応して生成する。ト リハロメタンは肝臓癌などとの関連が指摘されている。残留塩素濃度が高いと トリハロメタン濃度も上がることから、残留塩素濃度が低いことだけが問題で はない。

残留塩素濃度が高いことは、つぎの課題も顕在化している。「水道水の塩素消 毒について」(昭和46年6月1日 厚生省環境衛生局水道課長通知)に「ヒト 赤血球リンパ球、Hela細胞などは大腸菌等の細菌よりも有効に塩素に対して比 較的強い抵抗性をもつが、その1ppm以上の濃度では致死的影響が増大する。」 とある。飲料同様、肌からも塩素は吸収され、水温が高いと細胞膜への拡散速 度が早まり、肌からの塩素吸収が促進すると考えられている。

1ppm 以上の塩素濃度による健康被害を配慮したためか、厚生労働省の基準 は「公衆浴場法第3条第2項並びに旅館業法第4条第2項及び同法施行令第1 条に基づく条例等にレジオネラ症発生防止対策を追加する際の指針」(平成 14 年10 月 29日健発第 1029004 号 厚生労働省健康局通知)から、「浴槽水の消 毒に当たっては、塩素系薬剤を使用し、浴槽水中の遊離残留塩素濃度を頻繁に 測定して、通常1L中0.2ないし0.4mg程度を保ち、かつ、遊離残留塩素濃度 は最大1L中1.0mgを超えないよう努める」とされている。

この基準は2003年(平成15年)2月14日に改正された「公衆浴場における 衛生等管理要領」と「旅館業における衛生等管理要領」(共に厚生労働省生活衛生

(4)

局長通知)にも引き継がれて、現在に至っている。同様に2003年(平成15年)

7 月 25 日の「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指 針」(厚生労働省告示 第264号)にも盛り込まれている。

快適性では、高い塩素濃度による臭いと肌の刺激などがある。しかし残留塩 素濃度が低いことが、必ずしも塩素臭が少ないとは言い切れない。消毒効果の 乏しい塩素消毒をしている浴槽ほど、塩素臭が漂うという表現もできる。

消毒効果の乏しい塩素消毒とは、クロラミンである。塩素が汗や尿に含まれ るアンモニア窒素と反応するとクロラミンを生成する。クロラミンの中でもモ ノクロラミンが塩素臭の中でも嫌な臭いの主成分で、痒みの原因であったりも する。クロラミンは結合状態の塩素である。

換言するとヒトが入浴して、身体に付着したアンモニア性窒素と塩素が化合 して、クロラミンが形成されて、結合残留塩素が増える。結合塩素が増えるこ とは、消毒に有効な遊離残留塩素が低下することにもなり、レジオネラ症に対 して脆弱になり、安全面でも問題である。そこで本研究では、より正確な浴槽 水中の遊離残留塩素濃度を測定方法を確立することを目的とする。

1.2 浴槽水中の消毒剤濃度の測定方法

水道水(飲料水)の残留塩素濃度の測定法は、つぎのように定められている。

2000年(平成 12 年)12 月 26 日の「『水道水質に関する基準の制定につい て』の一部改正について」(生衛発第1876号 厚生省生活衛生局水道環境部長)

と「『水質基準を補完する項目に係る測定方法について』等の一部改正について」

(衛水第63号 厚生省生活衛生局水道環境部水道整備課長)で、残留塩素分析 法が比色法(DPD 法、OT 法)、電流法から、比色法(DPD 法)、電流法、吸 光光度法に改められた。OT法の削除は、2002年(平成 14年)4 月1 日から とした。

新たに追加された吸光光度法は、混和した溶液の適量を吸収セルに採り、光 電分光光度計を用いて、波長510~555nm付近の吸光度を測定する。予め作成 した検量線から、遊離残留塩素濃度を求める。

さらに時代の趨勢で、01年(平成13年)3月30日の「『水質基準を補完す る項目に係る測定方法について』等の一部改正について」(健水第 34 号 厚生

(5)

労働省健康局水道課長)で、吸光光度法を吸光光度法(その 1)に改めるとと もに、吸光光度法(その2)とポーラログラフ法が追加され、次の5 方法にな った。

① DPD法 DPD試薬を用いた視覚による比色法

② 電流法 電流滴定器を用いてフェニルアルセノオキサイド溶液で滴定す る方法

③ 吸光光度法(その1) DPD試薬を用いて、光電分光光度計により吸光度を 測定する方法

④ 吸光光度法(その2) 吸光光度法の自動連続測定

⑤ ポーラログラフ法 無試薬方式又は有試薬方式によるポーラログラフ方 式の連続自動測定

連続的に残留塩素濃度を計り、自動制御に用いる場合は電気化学法が普及し ており、ポーラログラフ式の他にガルバニ式がある。最近は、厚生労働省の基 準にポーラログラフ式が採用されたことにより、写真-3.1.1の無試薬方式によ るポーラログラフ式の 3 極式が漸増している。

塩素濃度を一定以上に維持すれば、生物 膜の生成も少ないことは、第2章の「2. 化 学的洗浄後の循環系でのレジオネラ属菌等 の推移」に記載した通りである。つまりレ ジオネラ属菌の直接的な殺菌以外にも、塩 素濃度管理は必要である。

前述したように2002年(平成14年)4 月1日からOT法が削除された。OT法は、

安価で、操作も容易であることから、広く 利用されていた。試薬のOTは、発ガン性 が疑われ、労働安全衛生法等により規制さ れていた。水質検査には、規制対象となら ない稀薄な濃度の溶液を使用しており、水 質検査後は塩素と反応して分解するため、

問題にならないとしていた。

写真-3.1.1 ポーラログラフ式 残留塩素濃度計(3極式)

(6)

黄色に呈色する OT(O-tolidine:オルトトリジン)法(写真-3.1.2 は、比 色 法 の 濃 度 測 定 器 ) に 代 わ っ て 主 流 と な っ た 。 赤 色 に 発 色 す る DPD

(N,N-Diethyl-p-phenylene-diamine:N,N-ジエチル-パラ-フェニレンジアミ ン)法(写真-3.1.3は、比色法の濃度測定器)は浴槽水、とくに温泉水を用い た浴槽では次の問題点が指摘されている。

① 残留塩素がなくとも亜硝酸性窒素があると、擬似発色する

② 残留塩素濃度が高いと、脱色される

③ pH8.6以上だと発色しにくく、低く表示する

④ 泉質によっては白濁し、測定できない

⑤ 結合残留塩素濃度の影響を受け、高く表示する

「⑤ 結合残留塩素濃度の影響を受け、高く表示する」にあるように、現在、

主流となっている DPD 試薬を用いた簡易測定器(比色法や吸光光度法)によ る遊離残留塩素濃度測定法は、結合残留塩素濃度分の一部をも遊離残留塩素濃 度として認識してしまう欠点があり、的確ではないと考えられていた。

DPD法の短所を解消するため、新規発色試薬により青色を呈するSBT法が 開発され、吸光光度法による計測器も市販されている(写真-3.1.4)。結合残留 塩素を拾わず、温泉成分とも反応しないとされている。本章の「2. 現場での浴 槽水中遊離残留塩素濃度測定法の確立」は、この課題の克服をしたもので、科 学的論証による基礎的な研究である。

写真-3.1.2 OT試薬による比色 法残留塩素濃度計

写真-3.1.3 DPD試薬による比色 法残留塩素濃度計

(7)

また消毒によって、クロラ ミンが生成しないとされてい る二酸化塩素濃度の測定法の 基礎的な研究は、「3. 現場で の浴槽水中二酸化塩素濃度測 定法の確立」に記述した。

入浴施設で安全性と快適性 の向上に寄与するために、浴 槽水中の正しい消毒剤の濃度 測定をできることが重要であ る。「2. 現場での浴槽水中遊 離残留塩素濃度測定法の確

立」と「3. 現場での浴槽水中二酸化塩素濃度測定法の確立」は、これまで解明 や論証がされることのなかった浴槽水での消毒剤濃度測定法の研究で、レジオ ネラ症対策として重要な領域である。

塩素臭を嫌い、塩素濃度を下げたためにレジオネラ症に罹患して死亡した例 もある(03年1月の石川県山中町「ゆけむり温泉村 ゆーゆー館」)。有効に殺 菌するためには、塩素濃度の中でも遊離塩素濃度を正確に測定できることが重 要である。

1.3 消毒剤の添加、制御方法と残留塩素の分布、時系列変化

大量に入浴者があると、結合残留塩素が上がり、消毒に有効な遊離残留塩素 が下がる。また、入浴により浴槽水が溢れ、塩素濃度の低い湯が供給されると、

さらに遊離残留塩素濃度を低下させるため、入浴時に遊離残留塩素が低下しや すい。補給される湯が温泉水の場合、第5章の「3. 温泉の違いによる消毒剤消 費特性」での実験結果から察することができるが、塩素が大量に消費されるこ とが多い。

塩素濃度が変動する要因は、他にもある。水面からの浴槽水の蒸発に伴う塩 素の飛散消失は、水面上の気温、湿度、風速などで大きく変化する。特に露天 風呂では塩素消失量が変動しやすい。

写真-3.1.4 市販されているSBT試薬による 吸光光度法残留塩素濃度測定器

(8)

実際に入浴している浴槽で測定した消毒剤の添加方法や制御方法の違いによ る消毒剤濃度の時系列変化の調査結果をまとめたものが、「4. 循環系浴槽での 消毒剤添加・制御方法」である。その結果、消毒剤の濃度を測定し、自動的に 塩素濃度を安定させる制御設備が必要であるとの知見を得た。

調査によって浴槽水中での消毒剤濃度が時系列的に変動することは、「4. 循 環系浴槽での消毒剤添加・制御方法」でわかった。しかし、ろ過循環式浴槽内 での消毒剤の分布の測定はされたことがなかった。これを調査して、解析した ものが、「5. 循環系浴槽での消毒剤濃度分布の時系列変化」である。

「4. 循環系浴槽での消毒剤添加・制御方法」と「5. 循環系浴槽での消毒剤 濃度分布の時系列変化」の参考データは、実際に入浴している浴槽から採水し なければならず、施設側と利用者の理解を得て実施できた貴重な調査である。

調査は、2005年度に厚生労働科学研究費で(財)ビル管理教育センターに設置さ れた建築物の給水における水質管理に関する調査研究部会と (社)空気調和・衛 生工学会 浴槽水等の保全および計測小委員会の2007年度の研究の一環として 実施した。

1.4 まとめ

浴槽での安全性と快適性を確保するために、浴槽水中の消毒剤の濃度測定方 法は重要である。浴槽水は、飲料水と異なりアンモニア性窒素等が含まれるこ とから結合塩素が多く含まれる。飲料水では DPD 試薬による遊離残留塩素濃 度測定で問題はほとんどないが、浴槽水では正確な遊離残留塩素濃度を測定で きないために問題となる。

正確な遊離残留塩素濃度を測定できることは、結合残留塩素濃度も正確に把 握できることに繋がる。結合塩素は、塩素の異臭や肌の痒みの主要因とされて いるモノクロラミンが成分である。このために結合塩素管理による入浴施設の 快適性の向上も可能となる。

また浴槽での遊離残留塩素濃度の時系列変化と分布を把握することも、安全 性と快適性の向上には大切である。

(9)

2. 現場での浴槽水中遊離残留塩素濃度測定方法の確立

2.1 はじめに

浴槽由来のレジオネラ症の集団感染を受け、2000年(平成12年)12月に改 定された「公衆浴場における衛生等管理要領」(厚生省通知)には、遊離残留塩 素濃度の基準が設けられた。しかし、遊離残留塩素濃度の測定で広く用いられ ている DPD 試薬による比色法や吸光光度法は、水道水の検査方法を準用した もので、必ずしも浴槽水に適合しているとは考えにくい。実際の浴槽での測定 結果も交えて、DPD法とSBT法の考察を行なった。

簡易残留塩素測定では、DPD試薬による比色法や吸光光度計による測定が一 般的である。しかし、検水が硬度の高い(カルシウム、マグネシウム濃度の高 い)場合に白濁したり、亜硝酸性窒素に擬似発色したりする弊害が指摘されて きた。また、検水のpHが高い場合や結合塩素を多く含む場合、DPDでは遊離 残留塩素濃度測定が妨害されたり、測定値が正確さに欠けたりすると報告され るようになった。

このような背景を受けて、SBT 法(Sulfo-benzyl-tolidine)が開発された。

しかし現時点で浴槽水における残留塩素濃度の SBT 法による測定データや発 表論文はなかった。

本項は、(社)空気調和・衛生工学会論文集№122(2007年5月)に掲載の『浴 槽水でのDPD 法と SBT 法による遊離残留塩素濃度測定法に関する研究』(赤 井仁志、紀谷文樹、岡田誠之、市川憲良、高柳保、中村克彦、工藤浩一、池上 天)1を参考に記述した。

2.2 試薬の化学的特性

DPD試薬やSBT試薬は、水中に残留する有効塩素を測定するために用いら れ、残留塩素と反応してDPD 試薬は吸収波長 510 および 550nm付近、SBT 試薬は吸収波長675nm付近の発色を生じる。

これらの発色を標準比色列との目視比較と吸光光度計を用いた吸収スペクト ルを測定することで、水中の残留塩素濃度を求めることができる。

(10)

2.2.1 発色原理 (1) DPD 法

DPDは酸化されてキノンジイミンを生成して、さらに酸化されてセミキノン 中間体を生成して、平衡関係が成り立つ。

ここで生成されたセミキノン中間体が赤色の発色を呈して、発色の濃度はキ ノンジイミンとセミキノン中間体の平衡濃度比率によることを利用して、残留 塩素濃度に換算することが容易となる。

(2) SBT 法

SBTは、OTと同様のベンジジン構造を有している。分子中に4つのスルホ ン酸基を導入していることにより、中性の水に対しても容易に溶ける特徴を持 つ。

2.2.2 pH の影響

試薬が残留塩素と反応して発色する際の平衡反応は、pH と関連がある。充 分かつ安定した発色を得るための最適 pH は、DPD の場合、上水試験法では

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2

1 3 5 7 9

(675 nm)

pH

図-3.2.1 SBT法でのpHに対する特性

(11)

pH6.5 と定められている。一方、SBT は、図-3.2.1 に示すとおり pH4~5 前 後以外では充分な発色が得られない。また、この領域では反応物の分解が促進 され安定した発色を得ることも困難となる。このため、SBT 法の最適 pH は pH4.5~5.5とされる。

そこで、これら試薬を用いて残留塩素濃度を測定する際には、検水のpH を 調整する目的で pH 緩衝剤を使用する必要があり、市販されている DPD 試薬 には、pH緩衝剤があらかじめ混入されているものもある。しかし、検水のpH が極端に高い、または低い場合、pH 緩衝剤では調整しきれないため、発色に 影響を及ぼすことがある。

2.2.3 遊離残留塩素選択性

DPDやSBTは、遊離塩素濃度を測定することを目的とした試薬であるが、

発色後の溶液にヨウ化カリウムを添加することで、総残留塩素と結合残留塩素 を測定できる。しかし、遊離残留塩素に対して結合塩素が過剰となる条件で測 定すると、試薬と結合残留塩素との反応が進行して測定結果が安定しないこと が懸念されている。

残留塩素と試薬の反応は酸化還元反応に基づいており、各試薬溶液、遊離残 留塩素溶液と結合残留塩素溶液の酸化還元電位を測定して、各試薬に対して結 合残留塩素の影響を確認した。

結合残留塩素と試薬の反応性を確かめるために試験を行った。試薬は、OT と DPD、SBT を用いた。結合残留塩素溶液は、塩化アンモニウムの超純水溶液

(2mg/L塩化アンモニウム溶液)と次亜塩素酸ナトリウム溶液を超純水で希釈

して、有効塩素濃度2mg/Lとした次亜塩素酸ナトリウム溶液を各々等量混合し た後、ねじ口瓶に移し密栓して、25℃の恒温槽で1時間静置したものを用いた。

OT溶液は、オルトトリジン塩酸塩135mgを約70mLの超純水に溶解して、

これに濃塩酸15mLを加えた後、超純水で100mLとして調整した。また、DPD 試薬およびリン酸緩衝液(pH6.5)は、上水試験法に定められた手順に従い調 整した。

結合塩素溶液と各試薬を混合した直後の吸光度変化を測定することで、試薬 の結合塩素に対する反応性を評価した。吸光度は、可視紫外分光光度計UV260

(12)

型(島津製作所)、石英セル(光路長10mm)を用いて測定した。

OT法は、OT溶液0.15mLを石英セルに移して、これに結合塩素溶液2.85mL を入れた後、直ちに 437nm における吸光度変化を一定時間ごとに記録した。

DPD 法は、DPD 試薬にリン酸緩衝液を加えて DPD を溶解して、この溶液 0.15mL を石英セルに移して、これに結合残留塩素溶液 2.85mL を入れた後、

直ちに510nmにおける吸光度変化を記録した。また、SBT 法は、石英セルに

結合残留塩素溶液3mLを移して、これに緩衝液およびSBT溶液を加え混合し た後、直ちに 675nm の吸光度を同様に測定した。また、結合残留塩素溶液と 各試薬を混合後150秒が経過した時点でヨウ化カリウムを添加して、総残留塩 素濃度を示す吸光度変化を記録した。

試薬の吸光度変化から算出された遊離残留塩素濃度の変化を図-3.2.2 に示 す。OT は、試薬溶液の添加直後、瞬時に発色が始まり、約 1 分経過するまで に吸光度が増加するが、その後の吸光度の変化は認められなかった。

DPDは結合残留塩素溶液を添加すると、時間の経過とともに吸光度の増加が 確認された。そのため、上水試験法では遊離残留塩素を測定する場合、試薬が 発色した後、1分間が経過するまでに測定するよう示されているが、実際には、

1分以内であっても結合残留塩素による発色の影響は無視できない。

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0

0 50 100 150 200 250 300

残留塩素濃mg/L

経過時間[s]

DPD オルトトリジン SBT

図-3.2.2 結合塩素溶液中で各試薬が示す残留塩素濃度の変化 (0~150秒は遊離残留塩素濃度、150秒以降は総残留塩素濃度を示す)

(13)

一方、SBTは、吸光度の増加はわずかながら認められるものの、その増加速 度はOTやDPDより低いことを観察した。

このことから、各試薬と結合塩素との反応性は、OT、DPD、SBT の順で示 された。また、ヨウ化カリウムを添加すると、吸光度の増大が確認されたため、

試薬との反応には結合塩素が関与していることが確認された。

2.3 浴槽水での問題点

塩素剤による消毒試験では、一般には滅菌精製水に次亜塩素酸ナトリウムな ど対象消毒剤を試験濃度添加し、試験水を調合する。この場合、消毒剤の添加 量は試験水中での遊離残留塩素濃度に正確に対応することになるので、正しく CT 値(消毒剤濃度×接触時間、Disinfectant Concentration×Contact Time Value (mg/L×min))を求めることができる。つまり、微生物ごとの不活化 試験の消毒剤の濃度と接触時間を求めている。

浴槽水のような結合塩素が多く含まれる対象水で、微生物の不活化状態を予 測する場合は、問題が生じる可能性が高い。

「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」(平成 15年7 月25日 厚生労働省告示 第264 号)では、「浴槽水中の遊離残留塩素 濃度は、常に一定ではなく、入浴者数、薬剤の注入時間及び注入速度等により 大きく変動するため、濃度は頻繁に測定して記録し、通常 1L につき 0.2 から 0.4mg程度に保ち、かつ、最大で1Lにつき1.0mgを超えないように努める等 適切に管理を行う」としている。ここで、浴槽水中の遊離残留塩素濃度の測定

値が0.2mg/Lであれば問題ないはずではあるが、結合塩素の影響を受けて、実

際の遊離残留塩素が0.2mg/L未満である可能性も否定できない。当然、濃度を 要素のひとつとしているCT 値も、試験室での実験結果と実際の施設への適応 の値に誤差が生じていることにつながる。

2.4 現場実測での適応性 2.4.1 調査の概要

実際の浴槽水中の遊離残留塩素濃度が、測定方法により表示値に違いが生じ

(14)

ているかを比較し、現場で用いられる測定器による実測の適応性を評価した。

既に廃止されているOTを除き、DPDとSBTを用いて、温泉非利用の浴槽水 で測定した。測定は、「第2章 2.社会福祉施設」の施設I である北海道石狩支 庁内のデイサービスの2浴槽系統と、同・施設Jの北海道後志地方のリゾート ホテル2浴槽系統で行った。また原水・原湯(浴場の水栓からの給水と給湯水)

での検討も行った。

DPDによる吸光光度法は、2種類を用いた(以下、DPD・Aタイプと、DPD・ Bタイプと称する)。SBTによる吸光光度法は、測定器1機種で行った。なお、

総残留塩素濃度はDPD・AタイプとSBT吸光光度法測定器で測定が可能で、

DPD・Bタイプは遊離残留塩素濃度しか測定できない。DPD・AタイプとSBT の試薬は液体状で、DPD・B タイプの試薬は粉末状である。また DPD・A タ イプとSBT吸光光度法測定器の繰り返し精度は、±0.05mg/Lである。

2.4.2 測定方法

各吸光光度法による残留塩素濃度測定器の測定方法を記述する。

DPD・Aタイプ測定器は、浴槽水等の検水10mLでゼロ校正を行った後、pH 緩衝剤0.15mLとDPD試薬0.1mLを滴下混合し、1分以内に吸光度を測定し て遊離残留塩素濃度とする。この状態の検水に、ヨウ化カリウム試薬 0.15mL を滴下混合させて、1 分経過後に吸光度を測定して総残留塩素濃度とする。総 残留塩素濃度と遊離残留塩素濃度の差が、結合残留塩素濃度となる。

DPD・Bタイプ測定器は、検水10mLでゼロ校正を行った後、残留塩素測定 DPD分包試薬1包(0.2g)を溶かし、1分以内に吸光度を測定して遊離残留塩 素濃度とする。

SBTタイプ測定器は、検水10mLでゼロ校正を行った後、pH緩衝剤0.05mL を滴下して発色が無いことを確認する。もし、発色があった場合は、pH 緩衝 剤0.05mLを追加滴下するが、発色がなくなるまでpH 緩衝剤を添加する。発 色が認められなくなった段階で、SBT 試薬 0.1mL を滴下混合し、1 分以内に 吸光度を測定して遊離残留塩素濃度とする。この状態の検水に、ヨウ化カリウ ム試薬0.15mL を滴下混合させて、2 分経過後に吸光度を測定して総残留塩素 濃度とする。

(15)

2.4.3 原水・原湯

原水・原湯のデータは3データのみである。清水では結合塩素が少ないこと から確認のためと、浴槽水の原水であることから実施した。DPD 試薬と SBT 試薬による吸光光度法では、総残留塩素濃度と遊離残留塩素濃度ともに強い相 関を示した。切片を0 とした際の総残留塩素濃度測定値の比較は図-3.2.3 で、

R2=0.989、y=1.034xであることから、DPDの測定値とSBTの測定値に差異 がないことを確認した。

切片を 0 とした際の遊離残留塩素濃度測定値の比較は、図-3.2.4 である。

DPD・Aタイプ測定器を基準とすると、DPD・Bタイプ測定値との決定係数は R2=0.761 で、y=1.050x である。このことから、ある程度の相関を持ち、今 回使用する測定器のメーカーの違いによる DPD 吸光光度法の測定値に違いが 少ないことを確認した。

またSBT測定値との決定係数はR2=0.968で、y=1.00xであることから、

強い相関があり、DPDの測定値もSBTの測定値もほぼ同じことがわかった。

このように原水・原湯を対象とした残留塩素濃度測定では、DPD 試薬と SBT 試薬との測定値の違いやメーカーの違いによる測定値に大きな違いは見られな い。

2.4.4 浴槽水

つぎに浴槽水での回帰分析結果を報告する。切片を 0 とした際の DPD・A タイプ測定器と SBT 測定器の総残留塩素濃度の決定係数(寄与率)は、R2= 0.769で、y=1.009x であることから、ある程度の相関があり、DPD・A タイ プの測定値とSBTの測定値もほとんど変わらないことを確認した(図-3.2.5)。

浴槽水での遊離塩素濃度の測定値の比較は、DPD・Aタイプ測定計を基準と した。切片を0とすると、DPD・Bタイプ測定値との決定係数はR2=0.618で、

y=1.003x であることから、ある程度の相関を持ち、測定器が違っても DPD の測定値には違いが少ないことが解った(図-3.2.6)。

しかし、SBT測定値との決定係数はR2=0.702で、y=0.775xであることか ら、ある程度の相関を持っているものの、DPD測定値よりSBT測定値が小さ

(16)

い値を指示することが解った。また DPD・B タイプ測定器より、SBT の測定 値も小さく表示する。

図-3.2.3 原水・原湯でのDPD・AタイプとSBTの総残留塩素濃度測定値 の相関(切片=0として)

y = 1.0341x R2= 0.9889

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

SBT残留塩素濃度mg/L

DPD・Aタイプ総残留塩素濃度[mg/L]

図-3.2.4 原水・原湯でのDPD・Aタイプと他測定器の遊離残留塩素濃度測 定値の相関(切片=0として)

y = 1.0011x R2= 0.968 y = 1.05x

R2= 0.7605

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

遊離残留塩素濃度[mg/L

DPD・Aタイプ遊離残留塩素濃度[mg/L]

SBT遊離残留塩素濃度

DPD・Bタイプ遊離残留塩素濃度

(17)

2.4.5 まとめ

実際の浴槽での測定結果による相関から、結合残留塩素の原因となるアンモ 図-3.2.6 浴槽水でのDPD・Aタイプと他測定器の遊離残留塩素濃度測定値

の相関(切片=0として)

y= 0.7752x R2= 0.7019 y= 1.0029x

R2= 0.6183

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

遊離残留塩素濃度[mg/L

DPD・Aタイプ遊離残留塩素濃度[mg/L]

SBT遊離残留塩素濃度

DPD・Bタイプ遊離残留塩素濃度

図-3.2.5 浴槽水でのDPD・AタイプとSBTの総残留塩素濃度測定値の相 関(切片=0として)

y = 1.0092x R2= 0.7691

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8

SBT残留塩素濃度mg/L

DPD・Aタイプ総残留塩素濃度[mg/L]

(18)

ニアやその化合物の少ない原水・原湯では、DPD 測定器、SBT 測定器ともに 総残留塩素濃度と遊離残留塩素濃度の測定値は、ほぼ同等であった。

一方、浴槽水では、DPD・A タイプ測定器と SBT 測定器による総残留塩素 濃度の測定値に、相関が見られた。DPD・A タイプ測定器と SBT 測定器によ る遊離残留塩素濃度の測定値は、ある程度の相関が見られる。またDPD・Aタ

イプとDPD・Bタイプの遊離塩素測定値にも、ある程度の相関が見られた。

しかし、浴槽水を対象とした遊離残留塩素濃度測定値では、SBTの測定値が、

DPDの測定値より小さい値を表示する傾向が見られた。総残留塩素濃度では測 定値に違いが見られない。このことから、総残留塩素と遊離残留塩素との差で ある結合残留塩素要素の一部を、DPDでは測定していると考えられる。

よって飲料水より結合塩素が多い浴槽水の特性から、原水・原湯を水道水と した浴槽水での遊離塩素濃度測定には、DPDよりはSBTのほうがが適してい ると判断できる。

浴槽での安全性と快適性を確保するために、浴槽水中の消毒剤の濃度測定方 法は重要である。正確な遊離残留塩素濃度を測定できることは、結合残留塩素 濃度も正確に把握できることに繋がる。結合塩素は、塩素の異臭や肌の痒みの 主要因とされているモノクロラミンが成分である。このために結合塩素管理に よる入浴施設の快適性の向上も可能となるためである。

(19)

3. 現場での浴槽水中二酸化塩素濃度測定方法の確立

3.1 はじめに

アメリカ合衆国では、飲料水をはじめ加工食品等の消毒にも二酸化塩素が普 及している。わが国でも、厚生労働省健康局長通知である『遊泳用プールの衛 生基準』に、二酸化塩素による消毒の際の残留濃度等の基準がある。

アメリカ合衆国では、プラント規模での利用が中心なために、簡易的な二酸 化塩素濃度の測定方法の要求が少ない。日本では、浄水処理施設や加工食品分 野への二酸化塩素の利用は、限定的に認められるようになった程度で、アメリ カ合衆国とは利用規模が異なっている。このような背景から、日本での二酸化 塩素濃度測定には、簡易測定法による、廉価で持ち運びが容易な携帯型の測定 器が求められている。

塩素での残留率が低い温泉泉質でも、二酸化塩素による消毒は適応しやすい。

また二酸化塩素は塩素より低い濃度で、レジオネラ属菌を不活化できやすい傾 向があることがわかっている。このことは、「第5 章 3. 温泉の違いによる消 毒剤消費特性」や「第 5 章 4. 温泉の違いによるレジオネラ属菌の不活化」に 述べている。

しかし二酸化塩素は、残留濃度の測定方法が確立していないとの指摘がある。

例えば2006年(平成18年)3月に都道府県、政令市と特別区の環境衛生監視 員(いわゆる保健所職員)を対象に、厚生労働省健康局生活衛生課が開催した 第4回全国レジオネラ会議の中で、国立感染症研究所の遠藤卓郎氏(当時)か ら、測定方法に問題があると指摘された。

2006年(平成18年)11月に、(社)空気調和・衛生工学会から『浴場施設の レジオネラ対策指針』が発行されたが、この指針では浴槽水の消毒方法として、

二酸化塩素による消毒も適用することができるとしている。同指針には、二酸 化塩素発生装置(生成装置)の発生効率(生成効率)や発生能力、注入能力の 記載はある。また遊離塩素濃度の測定方法や濃度監視制御装置についての記載 はあるが、二酸化塩素濃度の測定方法等は記載されていない。

浴槽水は飲料水と異なり、有機物やアンモニア性窒素が多く含まれている。

このため浴槽水での二酸化塩素濃度は、飲料水より、さらに測定しにくいと考

(20)

えられる。

そこで浴場施設での二酸化塩素濃度の測定方法を検討するため、遊離塩素濃 度の測定方法にもある DPD 試薬を用いた吸光光度法による実験室と現場での 測定結果も交えて、二酸化塩素濃度の簡易測定方法の考察を行なう。

3.2 二酸化塩素濃度測定の経緯

現在、わが国では遊離塩素による消毒が主流であるが、①トリハロメタン等 の有害物質がほとんど発生しない、②塩素の2.6 倍の殺菌力がある、③反応が 早い、④pH が変化しても殺菌力が大きく左右されない、等のことから二酸化 塩素試験による消毒処理適用範囲の拡大が検討されている。

これらの背景もあって、1993年(平成5年)版の(社)日本水道協会発行『上 水試験法』から、二酸化塩素濃度の試験方法として以下の方法が掲載されるよ うになった。

1)ヨウ素滴定法…遊離させたヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定する方法。

2)イオンクロマトグラフ法…陰イオン分離カラムを用いてイオンクロマト グラフ法により測定する方法。

3)ジエチル-p-フェニレンジアミン法(DPD 法・DPD 吸光光度法)…DPD 試薬を用いて吸光度を測定する方法。

4)電流滴定法(2001年版より追加)…フェニルアルセノオキサイドを用い

て電流測定する方法。

5)隔膜電極法…電極に流れる電流量を測定する方法。

また詳細はないが、この他に隔膜電極法と同様の電極法としてポーラログラ フ法についても触れられている。現場で、浴槽水を対象にした二酸化塩素濃度 の適当な測定方法としては、浴槽水としての使用範囲である1mg/L以下の低濃 度域を測定できて、高価で大掛かりな機器や複雑な操作を必要としないことが 条件となる。ヨウ素滴定法は数mg/L 以上の高濃度の測定に使用するために浴 槽水には適応できない。イオンクロマトグラフ法、DPD法、電流滴定法は実験 室に据え付けて測定する機器が必要で、現場での測定には不向きである。そこ で、持ち運び可能な簡易測定器によるDPD法を検証する。

(21)

3.3 DPD 吸光光度法

3.3.1 DPD 吸光光度法の原理

DPDは二酸化塩素によって酸化されてキノンジイミンを生成し、さらに酸化 されてセミキノン中間体を生成して赤色を呈色する。

図-3.3.1は、純水に二酸化塩素を添加して、上水試験法に従いDPDを呈色 させたときの吸収スペクトルである。DPD吸光光度法は、DPDの吸光度がサ ンプル水中の二酸化塩素濃度に比例するのを利用した測定方法である。すなわ ち DPD の吸光度を測定して、比例関係から二酸化塩素濃度に換算するもので ある。

図-3.3.2に二酸化塩素濃度を変化させたときの、波長ピークである510nm と555nmの吸光度を示す。555nm の吸光度のほうが510nm よりやや高い。

しかし上水試験法に「波長 510nm 付近の吸光度を測定し」と記述されている ので、本論文では以降、510nmの吸光度を採用して試験を行った。

遊離塩素濃度の測定方法にも DPD 吸光光度法があるが、換算する際の検量 線が異なるだけで原理は変わらない。図-3.3.3 は、510nm での二酸化塩素と 遊離塩素の濃度と吸光度の関係である。同じ濃度では、遊離塩素の吸光度のほ うが高い値となっている。

図-3.3.1 DPD の吸収スペクトル

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25

700 600

500 400

吸光度

波 長 [nm]

0.1mg/L 0.7mg/L 1.5mg/L

(22)

3.3.2 DPD 吸光光度法の原理 (1) pH の影響

図-3.3.4 に示す通り、DPD の呈色はサンプル水の pH により影響を受け、

図-3.3.3 二酸化塩素と遊離塩素の濃度とDPD吸光度の関係

(波長510nmの吸光度)

0.0 0.1 0.2 0.3

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

(510nm)

濃度 [mg/L]

二酸化塩素 遊離塩素

図-3.3.2 二酸化塩素濃度とDPD吸光度の関係

(波長510nmと555nmの吸光度)

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

吸光度

二酸化塩素濃度 [mg/L]

555nm 510nm

(23)

特にアルカリ側での減色が大きい。上水試験法では、測定時のpH を6.5 に定 めている。

サンプル水のpH を調整するために、予めリン酸水素二ナトリウムとリン酸 二水素カリウムがpH 緩衝剤(以降、「リン酸系pH 緩衝剤」と呼ぶ)として添 加されているDPD試薬がある。図-3.3.5は、サンプル水のpH と、リン酸系 pH 緩衝剤を含む DPD 試薬を添加した後の pH の試験結果である。pH3~11 の範囲では、試薬を添加するとpH が6.5 付近に調整されている。しかし、サ ンプル水の pH が 3 以下、もしくは 11 以上の場合には緩衝剤の効果がないの で、事前にpH値を確認して、調整する必要がある。

図-3.3.6は、サンプル水のpHと、リン酸系pH 緩衝剤を含むDPD試薬の 吸光度の試験結果である。pH緩衝剤の効果によって図-3.3.4 よりもpH によ る影響は少なくなり、pH3~12のサンプル水でほぼ一定の吸光度となっている。

(2) 妨害物質

温泉等でカルシウム濃度やマグネシウム濃度の高い、いわゆる硬度の高い水 をサンプルとした場合、DPD試薬の添加により白濁が起こる。これはリン酸系 pH 緩衝剤に含まれているリン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素カリウムが

図-3.3.4 サンプル水のpHとDPD吸光度の関係

0.00 0.05 0.10 0.15

0 2 4 6 8 10 12 14

(510nm)

サンプル水pH

(24)

反応して、リン酸カルシウムとリン酸マグネシウムが生成されて沈殿するため である。この場合は、リン酸系以外のpH緩衝剤を使用する必要がある。

前の「(1)pHの影響」に示したものは、上水試験法で指定されているリン酸 系pH 緩衝剤の試験結果である。硬度の高いサンプル水にクエン酸や酢酸化合 物のpH 緩衝剤(以降、「非リン酸系pH 緩衝剤」と呼ぶ)を添加しても白濁し 図-3.3.6 サンプル水のpHとリン酸系pH緩衝剤添加時のDPD吸光度の関係

0.00 0.05 0.10 0.15

0 2 4 6 8 10 12 14

(510nm)

サンプル水pH

図-3.3.5 リン酸系pH緩衝剤添加によるpH調整効果

6.0 6.2 6.4 6.6 6.8 7.0

0 2 4 6 8 10 12 14

添加後pH

サンプル水pH

(25)

ない。そこで非リン酸系pH 緩衝剤が、リン酸系pH 緩衝剤と同程度のpH 緩 衝性能を有していることを確認した。

図-3.3.7は、サンプル水のpHと、非リン酸系pH 緩衝剤を含むDPD試薬 を添加した後のpHの試験結果である。サンプル水のpHが4~10の範囲で、

pH6.5付近に調整されることがわかった。リン酸系pH緩衝剤は、pH3~11の 範囲で調整できたことに較べると、やや狭い範囲ではあるが、pH 緩衝性能を 有していると考えられる。

図-3.3.8は、サンプル水のpHと、非リン酸系pH 緩衝剤を含むDPD試薬 の吸光度との関係を示したものである。図に示した通り、pH4~10 の間では pH緩衝剤の効果で吸光度が一定になっている。

DPDは前述したように、酸化されることにより呈色する。このため塩素以外 の酸化剤であるオゾン、臭素、ヨウ素等が存在すると、正の誤差が生じる。ま た Cu2+、Fe2+、Mn2+等の金属イオンでも正の誤差が起こり得る。金属イオン はEDTA や CyDTA のようなキレート剤で除去することができる。このため、

DPD試薬に予めキレート剤を添加していることも多い。

そこで二酸化塩素がキレート剤により影響を受けることなく、DPD試薬が呈 色することを確認した。図-3.3.9は、キレート剤を添加した場合と、しない場 合の二酸化塩素濃度と DPD 吸光度の試験結果である。このように、キレート 剤の添加の有無によるDPD吸光度の差はみられなかった。

(3) グリシンの効果

図-3.3.3に示したように、遊離塩素も二酸化塩素と同様にDPDを呈色させ る。DPD吸光光度法で二酸化塩素を測定する際、遊離塩素によるDPDの呈色 の影響をなくすために、事前にグリシンを添加する。グリシンは別名アミノ酢 酸と呼ばれ、遊離塩素と直ちに反応して塩化アミノ酢酸を生成することで、遊 離塩素をマスキングする。塩化アミノ酢酸は、結合塩素と同様に、ヨウ化カリ ウム存在下ではDPDと反応して赤色を呈する。

グリシンの効果を確認するために、遊離塩素溶液にグリシンを添加して、

DPDを呈色させた時の吸光度の経時変化を評価した。

(26)

試験方法を次に示す。pH緩衝液とDPD 試薬を混合して、DPD溶液を準備 する。このDPD 溶液 0.1mLを 10mm 長の石英セルに移す。これに、10%グ リシン溶液が添加されている遊離塩素溶液(約 1.0mg/L および 4.5mg/L)を

図-3.3.7 非リン酸系pH緩衝剤添加によるpH調整効果

6.0 6.2 6.4 6.6 6.8 7.0

0 2 4 6 8 10 12 14

添加後pH

サンプル水pH

図-3.3.8 サンプル水のpHと非リン酸系pH緩衝剤添加時のDPD吸光度 の関係

0.00 0.05 0.10 0.15

0 2 4 6 8 10 12 14

(510nm)

サンプル水pH

(27)

2.9mL入れた後、直ちに分光光度計で510nm の吸光度を測定する。グリシン を添加しない遊離塩素溶液でも同様に測定する。また、グリシン添加溶液には 180秒経過した時点でヨウ化カリウムを添加して、総塩素を測定する。

結果を図-3.3.10 に示す。グリシンを添加することにより、遊離塩素による 呈色が抑えられていることがわかる。しかし、時間が経つにつれて、徐々に吸 光度が高くなった。さらに、ヨウ化カリウムを添加すると、吸光度がグリシン なしと同程度になったことから、遊離塩素が全て総塩素として測定できたこと がわかる。また、遊離塩素濃度 1.0mg/L より 4.5mg/L のほうが吸光度の増加 が激しい。このため、遊離塩素が含まれているサンプル水では、呈色させてか ら直ちに測定しなければならない。

同様に二酸化塩素溶液にグリシンを添加して、DPDを呈色させたときの結果 を図-3.3.11 に示す。グリシン添加の有無による吸光度の影響はなく、グリシ ンは遊離塩素だけを抑制していることが証明された。

これらの試験結果から、グリシンの添加により二酸化塩素による呈色を妨げ ることなく、遊離塩素による呈色を抑えて、二酸化塩素だけの濃度を測定して いることが確認された。

図-3.3.9 キレート剤によるDPD吸光度の影響

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

吸光度(510nm)

二酸化塩素濃度 [mg/L]

キレートあり キレートなし

(28)

3.4 実測データによる簡易型 DPD 測定器の評価

DPDの吸光度を測定する機器として、実験室では最も精度のよい分光光度計 図-3.3.10 遊離塩素にグリシンを添加した時のDPD吸光度の経時変化

(180秒でヨウ化カリウム添加)

0.0 0.5 1.0 1.5

0 60 120 180 240

(510nm)

経過時間 [秒]

グリシン添加 1mg/L グリシンなし 1mg/L グリシン添加 4.5mg/L グリシンなし 4.5mg/L

図-3.3.11 二酸化塩素にグリシンを添加した時のDPD吸光度の経時変化

0.0 0.2 0.4 0.6

0 60 120 180

(510nm)

経過時間[秒]

グリシン添加 グリシンなし

(29)

を使用できる。しかし分光光度計は、高価で持ち運びができないために現場で は実用が困難である。このため、現場での測定器としては、持ち運び可能なハ ンディ型のDPD吸光度測定器(以降、「簡易型DPD測定器」と呼ぶ)が市販さ れている。

分光光度計の測定では、事前に検量線を作成して、測定した吸光度を濃度に 換算する。一方、二酸化塩素濃度測定用の簡易型 DPD 測定器には、検量線が 予め内蔵されている。ゼロ点を合わせた後に DPD 吸光度を測定することで、

二酸化塩素濃度が表示される。

簡易型 DPD 測定器での実測精度を評価するために、分光光度計を用いた DPD吸光光度法を基準にして、簡易測定器の実測を行った。まず実験室で水道 水を使用して測定を行い、つぎに浴槽水の測定を行った。

3.4.1 水道水を用いた簡易型 DPD 測定器の評価

水道水による実験室データの評価は、兵庫県朝来市の市水を使用して行った。

二酸化塩素濃度と、上水試験法に従い分光光度計で測定した DPD 吸光度の関 係を、図-3.3.12 に示す。二酸化塩素溶液はヨウ素滴定法で濃度を求めた溶液 を、正確に希釈して調製した。R2=0.997という高い相関が得られた。よってこ の検量線を基に、吸光度から換算した二酸化塩素濃度を吸光度換算値として今 後の実験に使用する。

つぎに吸光度換算値と簡易型DPD測定器での測定値の関係を求めた。

簡易型DPD測定器の測定方法は、次の通りである。サンプル水を6 mL 採 取して、ゼロ校正を行う。10%グリシン溶液4滴を滴下混合した後に、DPD分 包試薬1包(0.2 g)を溶かして、吸光度を測定して二酸化塩素濃度とする。

結果を図-3.3.13に示す。y=0.958xでR2=0.999という高い相関が得られた。

誤差はほとんどなく、簡易型 DPD 測定器でも吸光度換算値と同程度の精度で 二酸化塩素を測定できるといえる。

さらに遊離塩素を混合させた場合の、DPD試薬添加後の吸光度の経時変化を 確認するために、以下の試験を行った。水道水に、浴槽水の使用範囲の0.5mg/L

と1mg/Lになるように二酸化塩素濃度を調製した後に、同濃度になるように遊

離塩素を混合させた。この溶液にグリシンを添加した場合と、添加しない場合

(30)

の180秒間の吸光度を測定した。

試験結果は図-3.3.14で、実測範囲の1mg/L以下の遊離塩素の混合では、グ リシン添加でも吸光度に大きな変化はない。それでも時間経過とともに吸光度

図-3.3.12 二酸化塩素濃度と上水試験法によるDPD吸光度との関係

y = 0.129x + 0.001 R² = 0.997

0.00 0.05 0.10 0.15

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2

(510nm)

二酸化塩素濃度 [mg/L]

図-3.3.13 水道水での吸光度換算値と簡易型DPD測定器測定値との関係

y = 0.958x + 0.004 R² = 0.999

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

[mg/L]

吸光度換算値 [mg/L]

(31)

が高くなるため、DPDを呈色させてから1分以内に測定することが望ましい。

3.4.2 浴槽水を用いた簡易型 DPD 測定器の評価

現場の浴槽水でのデータ評価は、岩手県八幡平市に建つ社員保養施設の男子 浴槽系統と、宮城県仙台市郊外に建つ社員研修施設の女子浴槽系統で行った。

何れの施設も浴槽水の原水は水道水であり、前者は八幡平市の市水を、後者は 黒川郡富谷町の町水を用いている。

浴槽水を使用した時の吸光度換算値と簡易型 DPD 測定器での測定値の関係 を図-3.3.15に示す。y=0.993x、R2=0.981で、誤差は±0.1mg/L以内であった。

市水と比べるとややばらつきが大きいものの、簡易型 DPD 測定器は浴槽水で も精度良く測定できることが確認できた。

3.5 まとめ

浴槽水を対象に、現場で用いる二酸化塩素の濃度測定方法として、吸光光度法 の簡易型DPD測定器の評価、検討を行った結果、次の知見を得た。

サンプル水のpH値が、おおむね3~11の範囲内であれば、予めpH緩衝剤 図-3.3.14 二酸化塩素と遊離塩素との混合溶液にグリシンを添加した時の

DPD吸光度の経時変化(水道水)

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

0 60 120 180

吸光度(510nm)

経過時間 [秒]

グ リ シ ン な し 0.5mg/L

グ リ シ ン 添 加 0.5mg/L グ リ シ ン な し

1mg/L

グ リ シ ン 添 加 1mg/L

(32)

が添加されているDPD試薬で、pHの影響を受けずに二酸化塩素濃度を測定が 可能である。また二酸化塩素濃度を測定する際、遊離塩素の影響はグリシンを 添加することにより抑制できることがわかった。

簡易型DPD 測定器は、実験室で分光光度計と同程度の高い精度を示した。

浴槽水でも精度よく測定でき、現場での二酸化塩素濃度測定方法として使用で きることが立証された。

図-3.3.15 浴槽水での吸光度換算値と簡易型DPD測定器測定値との関係

y = 0.993x - 0.035 R² = 0.981

-0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

[mg/L]

吸光度換算値 [mg/L]

(33)

4. 循環系浴槽での消毒剤添加・制御方法

4.1 はじめに

レジオネラ症対策として消毒剤濃度の維持は重要である。消毒剤濃度を維持 するためには、添加方法や制御方法がカギとなる。

消毒剤の中で最も一般的な塩素は、高めの濃度でも低めの濃度でも安全性に 問題がある。高い塩素濃度は、快適性を損なう要因にもなり得る。

そこで、実際の施設で調査した結果をまとめたのが、本項である。「4.3 自 動制御装置有無の残留塩素濃度の比較」は、同じ浴槽系統での遊離残留塩素濃 度の自動制御装置の設置前後で計測した。

本項は、(社)電気設備学会全国大会講演論文集『大型浴槽の遊離残留塩素濃 度管理と制御に関する研究』2や(社)空気調和・衛生工学会北海道支部学術講演 会論文集『浴槽水の消毒剤濃度現地測定法に関する調査研究』3等を参考にし ている。

4.2 残留塩素濃度の添加方法と制御方法 4.2.1 残留塩素濃度の実測

塩素剤添加方法の異なる5浴槽の残留塩素濃度の推移は図-3.4.1~図-3.4.5 の通りである。

図-3.4.1 定量注入浴槽の遊離塩素濃度変化(施設A) 0 10 20 30 40

0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

15:00 16:00 17:00 18:00

入浴者数(人)

留塩素濃度(/L

時刻 遊離残留塩素濃度

入浴者数

(34)

施設Aは、栃木県内の温泉ホテル大浴場(浴槽容量:40.0㎥)で、薬注ポンプ にて次亜塩素酸ナトリウムを定量注入している(図-3.4.1)。施設 B は、新潟 県内の介護老人保健施設大浴場(浴槽容量:3.8 ㎥)で、タイマで薬注ポンプ を制御し次亜塩素酸ナトリウムを注入している(図-3.4.2)。施設 C は、宮城 県内の企業研修施設女子大浴場(浴槽容量7.7 ㎥)で、ポーラログラフ三極式 濃度計によるフィードバック二位置制御で薬注ポンプを稼動させ、電解次亜塩 素酸を注入している(図-3.4.3)。

施設Dは、宮城県内の社員寮大浴場(浴槽容量:6.4㎥)で、トリクロロイ

図-3.4.3 制御注入浴槽の遊離塩素濃度変化(施設C) 0.4

0.6 0.8 1.0 1.2

00:00 04:00 08:00 12:00 16:00 20:00

残留塩素濃度(mg/L)

時刻 遊離残留塩素濃度

0 2 4 6 8 10

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

9:00 11:00 13:00 15:00

入浴者数(人)

残留塩素濃度(mg/L)

時刻 遊離残留塩素

結合残留塩素 入浴者数

図-3.4.2 タイマ注入浴槽の遊離塩素濃度変化(施設B)

(35)

ソシアヌル酸錠剤を塩素供給装置に投入し、成行き溶解している(図-3.4.4)。 施設Eは、宮城県内のデイサービス大浴場(浴槽容量:4.1 ㎥)で、ジクロロ イソシアヌル酸ナトリウム顆粒を直接浴槽に投入し、自然溶解させている(図 -4.5)。

施設Aと施設 Dは、塩素濃度管理のもと、随時調整している。施設A は、

連続注入しているものの入浴者増加に伴う塩素濃度低下がみられる。塩素濃度 が減少している15時~17時までの時間帯で、塩素濃度と累積入浴者の関係を 示したのが図-3.4.6 である。施設 D は、溶解速度調整は妥当であるが、初期

0.0 0.1 0.1 0.2 0.2 0.3

09:00 13:00 17:00 21:00 01:00 05:00

残留塩素濃度(mg/L)

時刻

遊離残留塩素濃度

図-3.4.4 成行き溶解浴槽の遊離塩素濃度変化(施設D)

0 2 4 6 8 10 12 14

0 0.1 0.2 0.3 0.4

9:00 10:00 11:00 12:00

入浴者数(人)

残留塩素濃度(mg/L)

時刻 遊離残留塩素濃度

結合残留塩素濃度 入浴者数

図-3.4.5 自然溶解の遊離塩素濃度変化(施設E)

(36)

濃度が低い。

施設Cは、塩素濃度を高めに設定しているが、制御が効き、入浴時間帯に頻 繁に薬注ポンプが稼動していることが伺える。一方、施設Bと施設Eの塩素濃 度管理は不適格である。

4.2.2 塩素の消失と時系列変化の要因

施設A の図-3.4.6と同様、施設 E での塩素濃度と累積入浴者数の関係が図 -3.4.7である。浴槽容量、塩素減少量と入浴者数のみの要因では、1人当りの 塩素減少量が、施設Aで16.0g、施設Eで28.3gとなる。この時間帯では、塩 素添加量や溶解量を増す必要が認められる。

実験室で入浴に伴う塩素減少量は、第4章の「2. 入浴による消毒剤の消費特 性」で詳述するが、身体洗浄や性別による違いはあるものの概ね 60~110mg/

人であった。

入浴による塩素の消失のほか、浴槽では次の不確定要因が挙げられる。手動、

定量や成行き添加では、濃度管理が困難な浴槽も多いと考えられる。

① 原水・原湯の補給量変動

② 温泉泉質の季節等の変動

③ 換水…水質次第で、数時間に亘り反応

④ 砂式は逆洗からの、カートリッジ式であれば、交換からの経過日数

⑤ 次亜塩素酸ナトリウム(薬液)の濃度低下

⑥ 気泡浴や超音波浴の稼動

⑦ 屋外浴槽では、温湿度、風速、日射、降雨

⑧ 水と塩素の比重差

塩素消失の不確定要因も多いことから、遊離残留塩素濃度基準を保つのに多 大な労力を要するため、自動制御による濃度管理が容易である。だが、無試薬 式のポーラログラフ3極式濃度計は、水質により適応できない場合もあり、今 後 pH や ORP による推測手法確立が必要である。また有機物と反応しにくい 二酸化塩素消毒も考察すべき課題だと考えている。

(37)

4.3 自動制御装置有無の残留塩素濃度の比較

さらに消毒剤の自動制御装置の有効性を、第2 章「1.社会福祉施設」で測定 した施設Jを例に考察する。施設Jは、北海道後志地方のリゾートホテルであ る。大型浴槽系統の夏季の消毒剤の注入は定量で行っていたが、冬季は遊離残 留塩素濃度を計測して自動制御により注入した。

y = -0.0004x + 0.4004 R² = 0.954

0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

0 50 100 150 200 250

遊離残留塩素濃度(mg/L)

累積入浴者数(人)

図-3.4.6 遊離塩素濃度と累計入浴者の関係(施設A)

y = -0.0069x + 0.2841 R² = 0.9678

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4

0 10 20 30 40

遊離残留塩素濃度(mg/L)

累計入浴者数(人)

図-3.4.7 遊離塩素濃度と累計入浴者の関係(施設E)

(38)

入浴者数と塩素濃度の推移の夏季のグラフを図-3.4.8 に、冬季を図-3.4.9 に示す。入浴者数は夏季が294名、冬季が314名である。夏季は21時~23時 までに入浴者のピークを迎えたが、冬季は16時~17時がピークであった。遊 離残留塩素濃度だけを抽出して、夏季と冬季を並べたものが図-3.4.10である。

夏季は時間が経つにつれて遊離残留塩素濃度が低くなっている。冬季は制御に

図-3.4.8 施設J・大型浴槽系統の夏季の入浴者数と残留塩素濃度の推移

0 20 40 60 80 100

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

11:00 14:00 17:00 20:00 23:00

浴者数人)

塩素濃度mg/L

時刻

遊離残留塩素 結合残留塩素 二酸化塩素 入浴者数

図-3.4.9 施設J・大型浴槽系統の冬季の入浴者数と残留塩素濃度の推移

0 20 40 60 80

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8

13:00 16:00 19:00 22:00 25:00

入浴者数(人)

素濃度(mg/L

時刻

遊離残留塩素 結合残留塩素 二酸化塩素 入浴者数

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