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残留塩素濃度の添加方法と制御方法 .1 残留塩素濃度の実測

4. 循環系浴槽での消毒剤添加・制御方法

4.2 残留塩素濃度の添加方法と制御方法 .1 残留塩素濃度の実測

塩素剤添加方法の異なる5浴槽の残留塩素濃度の推移は図-3.4.1~図-3.4.5 の通りである。

図-3.4.1 定量注入浴槽の遊離塩素濃度変化(施設A) 0 10 20 30 40

0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

15:00 16:00 17:00 18:00

入浴者数(人)

留塩素濃度(/L

時刻 遊離残留塩素濃度

入浴者数

施設Aは、栃木県内の温泉ホテル大浴場(浴槽容量:40.0㎥)で、薬注ポンプ にて次亜塩素酸ナトリウムを定量注入している(図-3.4.1)。施設 B は、新潟 県内の介護老人保健施設大浴場(浴槽容量:3.8 ㎥)で、タイマで薬注ポンプ を制御し次亜塩素酸ナトリウムを注入している(図-3.4.2)。施設 C は、宮城 県内の企業研修施設女子大浴場(浴槽容量7.7 ㎥)で、ポーラログラフ三極式 濃度計によるフィードバック二位置制御で薬注ポンプを稼動させ、電解次亜塩 素酸を注入している(図-3.4.3)。

施設Dは、宮城県内の社員寮大浴場(浴槽容量:6.4㎥)で、トリクロロイ

図-3.4.3 制御注入浴槽の遊離塩素濃度変化(施設C) 0.4

0.6 0.8 1.0 1.2

00:00 04:00 08:00 12:00 16:00 20:00

残留塩素濃度(mg/L)

時刻 遊離残留塩素濃度

0 2 4 6 8 10

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

9:00 11:00 13:00 15:00

入浴者数(人)

残留塩素濃度(mg/L)

時刻 遊離残留塩素

結合残留塩素 入浴者数

図-3.4.2 タイマ注入浴槽の遊離塩素濃度変化(施設B)

ソシアヌル酸錠剤を塩素供給装置に投入し、成行き溶解している(図-3.4.4)。 施設Eは、宮城県内のデイサービス大浴場(浴槽容量:4.1 ㎥)で、ジクロロ イソシアヌル酸ナトリウム顆粒を直接浴槽に投入し、自然溶解させている(図 -4.5)。

施設Aと施設 Dは、塩素濃度管理のもと、随時調整している。施設A は、

連続注入しているものの入浴者増加に伴う塩素濃度低下がみられる。塩素濃度 が減少している15時~17時までの時間帯で、塩素濃度と累積入浴者の関係を 示したのが図-3.4.6 である。施設 D は、溶解速度調整は妥当であるが、初期

0.0 0.1 0.1 0.2 0.2 0.3

09:00 13:00 17:00 21:00 01:00 05:00

残留塩素濃度(mg/L)

時刻

遊離残留塩素濃度

図-3.4.4 成行き溶解浴槽の遊離塩素濃度変化(施設D)

0 2 4 6 8 10 12 14

0 0.1 0.2 0.3 0.4

9:00 10:00 11:00 12:00

入浴者数(人)

残留塩素濃度(mg/L)

時刻 遊離残留塩素濃度

結合残留塩素濃度 入浴者数

図-3.4.5 自然溶解の遊離塩素濃度変化(施設E)

濃度が低い。

施設Cは、塩素濃度を高めに設定しているが、制御が効き、入浴時間帯に頻 繁に薬注ポンプが稼動していることが伺える。一方、施設Bと施設Eの塩素濃 度管理は不適格である。

4.2.2 塩素の消失と時系列変化の要因

施設A の図-3.4.6と同様、施設 E での塩素濃度と累積入浴者数の関係が図 -3.4.7である。浴槽容量、塩素減少量と入浴者数のみの要因では、1人当りの 塩素減少量が、施設Aで16.0g、施設Eで28.3gとなる。この時間帯では、塩 素添加量や溶解量を増す必要が認められる。

実験室で入浴に伴う塩素減少量は、第4章の「2. 入浴による消毒剤の消費特 性」で詳述するが、身体洗浄や性別による違いはあるものの概ね 60~110mg/

人であった。

入浴による塩素の消失のほか、浴槽では次の不確定要因が挙げられる。手動、

定量や成行き添加では、濃度管理が困難な浴槽も多いと考えられる。

① 原水・原湯の補給量変動

② 温泉泉質の季節等の変動

③ 換水…水質次第で、数時間に亘り反応

④ 砂式は逆洗からの、カートリッジ式であれば、交換からの経過日数

⑤ 次亜塩素酸ナトリウム(薬液)の濃度低下

⑥ 気泡浴や超音波浴の稼動

⑦ 屋外浴槽では、温湿度、風速、日射、降雨

⑧ 水と塩素の比重差

塩素消失の不確定要因も多いことから、遊離残留塩素濃度基準を保つのに多 大な労力を要するため、自動制御による濃度管理が容易である。だが、無試薬 式のポーラログラフ3極式濃度計は、水質により適応できない場合もあり、今 後 pH や ORP による推測手法確立が必要である。また有機物と反応しにくい 二酸化塩素消毒も考察すべき課題だと考えている。