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若者の社会的孤立の研究

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社会学研究科年報 2016 №23

- 75 - 修士(2015 年度)

若者の社会的孤立の研究

柳川 高弘 1.問題意識と目的

近年「ニート」や「ひきこもり」など、いわゆる若者論における「若者像」の一要素と して、「人間関係の喪失」が注目されてきたが、依然それ自体を対象とした分析枠組みは不 足していた。したがって、「人間関係の喪失」それ自体に注目した、「社会的孤立研究」の 分析枠組みを援用し、「若者の社会的孤立」という分析枠組みを構築することによって、特 に「人間関係の喪失」という要素から現代日本の「若者」像を明らかにすることが、本論 文の目的である。

2.先行研究

社会的孤立の研究では、人間関係の喪失を、客観的な要素と、主観的な要素の二つを要 点とし分析されている。前者は友人の数など、ネットワーク論的なアプローチ、後者は孤 独感といったような、心理学や社会心理学的領域に共通するアプローチとしてある。本論 文ではこの分類方法を、実際の分析において援用している。

現代日本では、若者に限らず、90年代後半から2000年代にかけて、「無縁社会論」に象 徴されるような、人間関係の喪失が注目されてきている。ただしこの議論においては、不 況や社会保障制度といった、社会的排除や貧困の問題でもあり、過度に人間関係の問題と して捉えてしまう危険性が指摘されている。

若者論においても、現代日本における社会的排除や貧困の問題は、いわゆる若者問題の 社会背景として重要な要素の一つであり、例えばニートが単なる「怠け者」ではなく、「労 働市場からの若者の排除」の問題であるということに、留意すべきであるとされている。

また、本論文では、若者の人間関係に関する議論において、現代日本の新自由主義化に 伴う社会構造の変化を背景に、若者の人間関係がリスク化しているという、リスク論的な 観点で若者の人間関係を示す議論を、分析枠組みとして援用している。

実際に若者の社会的孤立を分析する際には、その人間関係の喪失を具体的にどう示すか という点で、社会関係資本論の分析枠組みを援用し、若者の人間関係の喪失を、「若者の社 会関係資本の喪失」とすることで、理論的な整理と、計量的な可視化を試みている。

3.分析

分析においては、JGSS2010の二次データを用いた数量分析を行った(1)。本分析において は、「若者(若年層)」を20歳から39歳までとし、他に40歳から59歳までの「中年層」 60歳以上は「高齢層」とし、年齢性別に比較をしている。まず、様々な人間関係(≒社会 関係資本)を示す変数を分析したところ、若者は未婚であり、組織に加入していない、職 場での連帯感が低いといった要素で、社会関係資本の喪失の傾向が見られた。また、一般 的信頼の低さ、ソーシャルサポートの得にくさ、友人満足度の低さという点で、「男性」性 の弱さも確認された。

さらにこの諸変数を、客観的な要素と主観的な要素の二つに大別し、その傾向を分析し

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た。結果、客観的要素では、若年層と高齢層にその喪失の傾向が見られた。逆に主観的な 要素においては、若年層は比較的充足している傾向が見られたが、男性は女性よりも人間 関係の喪失の傾向が見られ、若年層においてもそれは例外ではなかった。以上のことから、

若者の社会的孤立は確かに存在し、さらに男性性という要素を含むと、そのリスクは重層 性を持つ可能性が示唆された。

こういった「リスク」構造に注目し、「若者の社会的孤立のリスク構造」という仮説と、

男性性の弱さを加味した、「若年男性における社会的孤立の重層的なリスク構造」という仮 説を立て検証を試みた。その際、リスク意識の指標として「孤独感」「将来への希望の無さ」

「ネットワークリスク意識」を採用し、どういった人間関係の喪失がこれらのリスク意識 の規定要因となるのかを、3つのモデルでそれぞれ重回帰分析をした(図13(2)

結果、「孤独感モデル」では若者の社会的孤立に加えて、情緒的サポートの喪失、友人不 満足度などの点で、若年男性特有の社会的孤立のリスク傾向が示されたが、「将来への希望 の無さモデル」においては、むしろ若年女性特有の社会的孤立のリスク傾向を示した。こ ういった点は、職場の連帯感の無さ、未婚であることなどが、年齢差以上に、性差におけ る男性のリスクの大きさを示したことからも、考察の余地が残された。

4.考察と結論

「若者の社会的孤立」は確かに存在し、さらに「男性」という要素を含めた、「若年男性 における社会的孤立の重層的なリスク構造」という仮説は、一部それを支持する結果を示 すことができた。本研究において、若者の人間関係の喪失という要素を統計的に実証でき た点は、大きな成果であった。一方で、本論文では「男性」性へ注目するに至ったが、同 時にそのもう一つの面として浮かび上がった「女性」性という要素をどう捉えるか、年齢 と性別の優位性をどう整理するかという点で課題が残された。

本論文におけるもう一つの課題は、世代効果のさらなる検証であった。分析において時 代的特徴と結びつく若者像の要素はいくつか確認できたものの、不十分な点も多かった。

したがって今後は方法論的な改善や、特に若者論における貧困や社会的排除などの議論と のさらなる接続が求められるだろう。

1)日本版General Social SurveysJGSS)は、大阪商業大学JGSS研究センター(文部科学大臣認定 日本版総合的社会調査共同研究拠点)が、東京大学社会科学研究所の協力を受けて実施している 研究プロジェクトである。

2)孤独感と将来への希望の無さについては、互いの間接効果を想定し、階層的モデルを検討して いる。

図 1 孤独感モデル 図 2 将来への希望の無さモデル 図 3 ネットワークリスク意識モデル

図 1 孤独感モデル  図 2 将来への希望の無さモデル  図 3 ネットワークリスク意識モデル

参照

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