先行概念 と科学的概念の相互交渉を活性化 させ る
教授学習法が概念構築に及ぼす効果
―中学校理科における金属概念の構築に着目して∵
人間発達教育専攻,教育コミュニケーションコース
目 次 序 章 問題 と目的 。… … … …… … … …… … … … 二・… … … 1 第
1章
先行概念 と科学的概念の相 互交渉 を活性 化 させ る教授 学習法.…"7
第 ヱ節 先イテ概念と科学的概念の相互交渉の活性化,…………1,…………7 第2節
婦 による力 鋼 際 を 科学 初 勝 の 相互交渉の活性化,…………Iθ 第2章
改変型二重推理法 を導入 した授 業(実践 1).…… … … … …… … …12 第町節 期 」のねらいと〃 ,……7.・・………」2
第2月″ 一 課 と黎 ・…………,,,………,''……2θ 第想師 鰈 │こおける数疫学翻 程の考察,…………'″ 第惚節 アンター トЭ結果 と考察.…………召 第5師
難 調査の結果 と黎 ,……………………………………■"″ 第 δ節 実験や観察′こ対するがa方
とル‐ル適用の周頻艦`………… “ 第7節
社会的相互作用の申での概念構築,…………"・…,δ5 第3章
カテ ゴ リールールのみ を教 示 した授業(実践2).…… …… … …… …82
第1節
美畷フのねらいと〃 。"二………″ 第2節
″群 まの指 ,……………………………………“ "・"
第 θ節 勁薪権蒙瑠裸 と考察,…………"…∂7 第イ節 響議 鍛 漆 のガ働 肇と券 .……………………"
第4章
総合考察 。…"Ⅲ… … … …"。:・… … … …… … … 。93
第 二節 金属の学習夕前の中性 の金属概念に認ナる調認識について,…………","
第2節
先彿 賭 逆 科学 初 廃 つ 相互交渉│こよる調鬱%に
夜進 。………%
舅り節 メタレンウレの如訪の変化と学習内容のな移の側孫僣.…………,I″ 第4節
解 と課題.…………,I%
参考資料.…… … … …・109
文 献.…… … … …・133
序
二早
問 題 と 目的
就学年齢 に達 していない子 どもで あって も,日 常 の経験 を通 して学習 してお り,様
々 な 自生的 に作 り上 げた知識 を獲得 してい る。 では,就
学年齢 に達 した 学習者 の知識 につ いては,ど
の よ うに捉 えれ ば よいのだ ろ うか。就 学年 齢 に達 した学習者 も,
日常 の経験 を通 した学習 を してお り,就
学年齢 に達 して いない 子 ども と同様 に,
自生的 に知識 を作 り上 げてい る。 同時 に,主
に学校 で受 ける 教育 にお いて,体
系立 て られ た学習 を通 して,他
生 的に作 り上げた知識 も獲得 して い る。 つ ま り,就
学年齢 に達 した学習者 は,自
生的な知識 と他 生的 な知識 が渾然 一体 となった知識(以下,「既有知識 」と記す)を持 つてい る と考 え られ る。 いずれ に して も,学
習者 は,既
有知識 に基づ いて授 業で遭遇す る様 々な事象 を 解釈 しよ うとす る。この こ とは,「人 間 は既有 知識 に基づ いて新 しい知識 を獲得 した り物事 を理解 した りす る」 とい うこ とで ある。 したが つて,学
習 を有効 に 援助 す るには,既
有 知識 を足場 にす る こ とが重要 で ある と され る (米国学術研 究推進 会 議,2002)。 学習者 の既有知識 の捉 え方 につ いては,様
々な概 念化がな され ているが,こ
こでは, 1,「
プ リコンセ プシ ョンJ, 2,「
誤概念 」, 3,「
素朴概 念」,の
3種
類 に整理す る捉 え方 に着 目す る。誤概 念 と素朴概念 は,科
学的概念 とは異 なる 「も う1つ
の概念 」 であ り,科
学的概 念 に 「置 き換 える」必要 が あ るもの と定 義 され る。一方,プ
リコンセ プシ ョンは,科
学的概 念 の 「特別 なケース」 であ り,最終的 には科 学的概 念へ と「変化 し得 る資質 を持 つ」と定義 され てい る (高 垣,2005)。 したが って,既
有知識 を足場 とす る教授 学習法 の1つ
として,学
習 者 の既有知識 を科学 的概 念 に変容 させ るた めに,学
習者 それぞれ の既有 知識 の 状態 を測 定 し,そ
の状態 に適す る方法 を選択 す るこ とが想 定 され る。 しか し, 現在 の学校 教 育 の制度 の下で は,通
常,一
斉 授業 が行 われ お り,個
々の学習者 に適 した教授 学習法 を選択 し実践す る ことは難 しい と思われ る。つ ま り,現
在 の学校教 育 の制度 の もとで実践 が可能 で ある こ とを前提 に,学
習者 の既有知識 を科学的概念 に変容 させ る教授 学習法 をデザイ ンす る必要性 があ る と言 える。 その よ うな教授 学習法 は,学
習者 の既 有知識 を足場 とす る ものの,既
有知識 の 状態 に東縛 され る方 法ではない。 したがつて,本
研 究で は既有知識 の状態 に関 わ らない こ とを強調す る意 味で,学
習者 の既 有知識 を先行 概念 と位置づ け,先
行概 念 を足場 にす る教授 学習法 の提案 を試 み る。 さて,こ こで問題 にな るのは,本研 究 にお ける科 学 的概 念 の位 置 づ けで ある。 Lここでは
,科
学 的 に本 当に正 しい こ となのか とい う問題 には触れ ないでお きた い。 なぜ な ら,例
えば,中
学校 理科 で,学
習者 は原 子 につ いて学習す る単元が あ る。 そ の単元 で,学
習者 は 「すべ て の物 質 は原子 で きてい る」 こ とを学習す るので あ るが,こ
の ことは科 学的 に本 当に正 しいのか とい うと,否
で あ る。現 在 で は,原
子 はい くつ か の素粒 子か らで きて い るこ とが明 らかに されて い るか らで あ る。つ ま り,科学 的 に本 当に正 しい のか とい うことに こだわ りす ぎ る と, 「す べての物質 は原子でできている」 ことを学習 させ るこ とは,誤
つた こ とを 教授 してい る こ とにな り,学
校 では誤 つた知識 ばか りを教授 学習 してい る とい う指摘 が懸念 され るか らであ る。 したがつて,本
研 究では,お
もに学校 で教師 に よつて教授 され る一定 の体系化 を伴 つた科 学的知識 を科 学的概 念 と位 置づ け こ ととす る1。 で は,先
行概念 を足場 とす る教授 学習法 と して,
どの よ うな方 法 が想 定 され 得 るので あ ろ うか。 これ につ いて は,麻
柄 (1996,1999,2001)の 一連 の研 究 が参 考 にな る。 麻柄 (1996)は 学習者 の誤 つた知識 を修正す る困難 さにつ いて,大
学 生 を対象 に した調 査 を行 つてい る。 この調査 では,気
体 の力 学的性 質 に 関す る 課題 に対 して,学
習者 が 自 らの知識 を どの よ うに使 つて,
自力 で正 しい理解 に 至 るのか について,そのプ ロセ スを明 らか にす るこ とを試 みてい る。その結果, 学習者 の誤 つた知識 が修 正 され に くい原 因 として, 1.課
題解決 に必要 な情報 が正 しく認 知構 造 に取 り入れ られ ない, 2.仮
にそ の情報 が正 しく取 り入れ ら れ た に して も,そ
の情報 が誤 つた考 え と相互 交渉 を持 ちえず,そ
れ だ けで孤立 した知識 を構成 して しま う,と
す る2段
階 の困難 モデル を想 定 してい る。 麻 柄(1999)は,こ
の困難モデル を想 定 した上で,誤
つた知識 を どの よ うに修 正す るのか につ いて さらな る検討 を行 つてい る。誤 つた知識 を修 正す るた めに は,そ
れ とは一致 しない事実や実験結果(以下,「反 証例」 と記す)を示す ことが 有効 で あ る とされ て きた。 一方 で,近
年,こ
の よ うな反証例 の効果 に対 す る疑 間が 出 され てい る こ とを指摘 してい る。反証 例 をめ ぐるこれ まで の研 究 を概観 した上 で,麻 柄 (1999)は,学習者 の誤 つた知識 を修 正す る方 法 につ いて,Tablel
に示す よ うな反証例 に拠 らない教授 学習法 を提案 してい る。 1ヴィ ゴツキニ (2005)は,「科 学 的概 念 の独 自性 を明 らか にす るた めの第一歩 と して,子ども が学校で獲得 した科 学的概 念 と子 どもの 自然発 生的概 念 との比較研 究 の道 を選 ぶ のは 当然で しょ う」 と述 べ てお り,教授 学習 と科 学 的概 念 の発 達 の関係 性 を強調 してい る と思 われ る。 した が つて,本研 究 にお い て も,主に学校 で教授 され る体 系化 され た科 学的知識 を科学 的概 念 と位 置 づ けてい る。Table l
反証例に拠 らない教授学習法の骨子 1 2 3 後続の課題解決に必要な手がかりをあらかじめ学習させる 使用すべき知識の種類を変えた質問を行い複数の解答を引き出す 実験を行い,結財 示す これ らの過程 を学習者 が経 るこ とで,事
実や実験 結果が 自分 の予想 と異 なっ た場合 に,あ
らか じめそれ を説 明 し得 る理 由が学習者 の知 識構 造 の 中に準備 さ れ てい るので,学
習者 はその事 実や 実験 結果 を納得 して受 け入 れ,誤
つた知識 が修 正 され る可能性 が高 まる としてい る。反 証例 だ けを用 いた方 法 では,場
合 に よつて は先行概念 と科 学的概念 との間の認 知的葛藤 が過 大 にな り,学
習者 は そ の事実や実験結果 を受 け入れ るこ とを拒否 した り,別
の理 由づ けを した りす るこ とで,先
行概 念 を矛 盾 か ら守 ろ うとす るのであ る。つ ま り,こ
の教授 学習 法 は,先
行概念 と科学的概念 とを相 互交渉 させ るこ とで,学
習者 が持つ認 知的 葛藤 を適切 な強度 に低減 させ る方法 とい うこ とがで きる。 そ して,麻
柄(1999) は,こ
の教授 学習 法 を 「二重推理法」 と呼んだ。その具体 的 な手続 きをTable2 に示す。Table 2
二重推理法の手続 き 1.課題解決に必要な手がかりの学習2.縦
の断 3. 腱動芭むこ夢 く認 4. 手がかりに基づく瑚 5. 夢むりしヽ邦現勝終 二重推理法 では, 1の
段 階で,科
学 的概念 が学習者 の知識構造 の中に準備 さ れ る。そ して,提 示す る課題 に対 して,次 の よ うに質 問の仕 方 を変 えるこ とで, 学習者 か ら複数 の解答 を引き出 してい る。 それ は, 3の
段 階の 「直感 で答 える とど うな るか」 と, 4の
段 階 の 「先 に学習 した手 が か りに基づ いて答 え る とど うな るか」で ある。この よ うに,課 題 に対す る質 問の仕方 を変化 させ るこ とで, 学習者 が課題解 決 に適用す る概念 を,意
図的 に変化 させ て い るので ある。 つま り, 3の
段 階では先行概念 に基 づ く予想 がな され, 4の
段 階では科 学的概念 に 基づ く予想 がな され るので ある。 そ して,こ
れ らの段階で先行概念 と科 学的概 念 が相 互交渉 し,学
習者 が認 知 的葛藤 を持つ と想定 され て い る。 しか し,あ
ら か じめ科 学的概 念 が学習者 の知識構造 の中に準備 され てい るので,学
習者 の認知的葛藤 は解 消 されやす い状況 にあ る。この よ うな状況 に学習者 を導 くこ とで, 学習者 は先行概念 と科学的概 念 を互 い に関連 づ けなが ら
,実
験や観 察 の結果 を 受 け入 れ,認
知 的葛藤 が解 消す るとされ る。 そ│の結果,科
学 的概 念 が孤 立 した 知識 とな るこ とが妨 げ られ,学
習者 の誤 った知識 が修正 され る と麻柄 は考 える ので あ る。 本研 究 は,中
学校理科 「金属 」 の学 習前 に見 られ る学習者 の金属 に関す る先 行概 念 を明 らか に し,学
習者 が主体 的 に金 属 に関す る概念 を構築 す る教授 学習 法 を開発す る実践的研 究 として位置づ け られ る。具体的 には,本
研 究で は,麻
柄(1999)が 提 案す る二重推 理法 を参考 に しつつ,さ
らに改善 した教授 学習法 を 授 業 に導入 し,金
属 の学 習 を実践す る。金属 の学習 に際 しては,次
の, 1,金
属 は電気 を通す, 2.金
属 は光沢 を もつ, 3,金
属 は熱 を伝 える, 4.金
属は 展性 や延 性 を もつ, とい う4つ
のルール を取 り上 げ る。 なお, これ らのルール が与 える情報 は,「電気 を通す もの」,「光沢 を もつ もの」,「熱 を伝 える もの」, 「展性や延性 をもつ もの」 とい うそれ ぞれ のカテ ゴ リーに 「金属」 のカテ ゴリ ー が含 まれ る とい う包含 関係 を示 してお り,こ
れ らのル ール をカテ ゴ リールー ル と呼ぶ (工藤 ,2010a)。 この4つ
の カテ ゴ リール ール は,大
人 に とつて も自 明な こ とで はな く,伏
見(1995)は,大
学生 が一部 の物質 のみが金 属 であ る とい つた,い
わ ゆ る 「誤れ る特殊化 」を していた り,「金 属」概 念 の内包 を把握 して いなかった りす る実態 を明 らか に してい る。 さらに,伏
見(2013)は,金
属 の学 習 につ いて,銅
を事例 と した場合 とカル シ ウムを事 例 とした場合 を比較 し,前
者 の場合 には 「内包的定式化 」,後
者 の場合 には 「外 延 的定式化」がな されやす い とい う知 見 を得 ている。内包的定式化 とは,「金属」とい う概念名辞 か ら「電 気 を通す 」 な どの金属 が持つ正 しい性 質 を,学
習者 が想起 しやす くな る ことを 指 して い る。一 方,外
延 的定式化 とは,「電気 を通す 」な どの金属 に関す る正 し い性 質 か ら,そ
の物質 が金属 で あるこ とを,学
習者 が指摘 しやす くな る こ とを 指 して い る。 本研 究では,こ
れ らの知 見 を踏 ま え,金
属 の学習 に用 い る事例 に考慮 しなが らも,そ
れ 以上に,学
習者 が主体的 に,「金属 」概 念 の外延 を広 げ,「電気 を通 す 」 な どの内包 を把握 す るこ とを 目指 す。 つ ま り,意
図的 に学習者 が先行概念 と科 学的概念 を相 互交渉 す る よ うに仕 向け,相
互交渉 の過程 で,学
習者 が 自生 的 に金属概念 を構築す る こ とを企 図 してい る。具体 的 には,「 ピカ ピカ光 るもの は,電
気 を通す」 とい うル ール を用 いて,二
重推理 法 に依拠 す る教授学 習法 を授業 に導入す る ものである。なお,「ピカ ピカ光 る ものは
,電
気 を通す」 とい う ル ール が与 える情報 は,金
属 の2つ
の適切属性 であ る「ピカ ピカ光 る(光沢 をも つ)」 と「電気 を通 す」 との連合 関係 を示 してお り,こ
のル ール を属性ル ール と 呼ぶ (工藤,2010a)。 本研 究 で は,属
性ルール を教示 した条件 下 で様 々 な課題 に取 り組 んだ結果 と して構 築 され る概念 は,自
生 的 であ る ことを想定 してい る。 なぜ な らば,′ 属性 ル ール は操作 可能性 が高 く,操 作 的思考2を活 性化す ると予想 されて いるか らで あ る (工藤,2010a)。 したがつて,「金 属」―「電気 を通す もの」―「光沢 をもつ もの」 とい う概 念 間の連 合 関係 は強 固 に構築 され て い る と思 われ る。 こ こに, カテ ゴ リール ール に含 まれ る属性 に関す る概 念 の関係 を操 作す る活動 (以下, 「属性操 作」 と記す)を導入すれ ば,こ
れ らの概念 の連合 関係 が 「金属」―「熱 を伝 え るもの」―「展性や延性 をもつ もの」とい う概 念 間の連合 関係 に転移す る こ とが期待 され る (工藤,2010b)。 最 後 に,本研 究 で重視す る分析 の視座 と分析 方法 について述べ る。佐藤(1999) が,「個 人 とい うものそれ 自体 は社 会的 な ものであ る し,個人 の認 知的活 動やそ の産物 は社会的 な ものその ものであ る」 と指 摘 して いるよ うに,個
人の認 知的 活動 は社会や文化 と切 り離 して論 じる ことはで きないので あ る。 この こ とを学 習 にあて はめて考 え る と,学
習 とは,社
会的 な相互 作用 の 中で行 われ る学習者 の認知 的活動 と捉 えるこ とがで きる。つ ま り,教師 は科学的概念 を教授す るが, 概念 は教 師 か ら与 え られ るものでは な く,学
習者 自身が協働 の 中で主体 的 に構 築す るもので あ る と考 え られ る。 したが つて,本
研 究では,学
習者 が他者 との 相 互 作 用 の 中 で 主 体 的 に 概 念 を 構 築 す る過 程 を 学 習 過 程 と捉 え る。 diSessa(2009)は,「介入研 究 の多 くは,事前 と事後 の測定 を主 に用 いてい るが, 概念 変容 の個別 のプ ロセ ス を評価す る際 には,ほ
とん ど役 に立た ない」 と指摘 してい る。 また,佐
藤 (1999)は,Rogoff(1995)の 「共有化 され た取 り組 み に加 わ つてい る時 には,発
達や変容 は個 人 の こ とだ けで な く,そ
の共 同体 の実践に お け る変化 ともなつてい くので ある」 とい う指摘 を根拠 に,一
つ の発達や学習 とい う現象 を眺 め,分
析 す る時 には,必
ず3種
類 の レンズ(1,共
同体・制度的 な平面,2.個
人 間の平 面,3.個
人 の平面)を用意 してお かなけれ ばな らない と述 べ てい る。 そ こで,本
研 究では これ らの示唆 を考慮 し,概
念構築 のプ ロセ 2ェ藤 (2010b)は ,知識 表象 の操 作 に関わ る思 考 を操 作 的思考 と呼 ん でい る。 したが つ て,本 論 文 にお け る操 作 とは,ルール命題 表象 の変換操 作 を指 して い る。 5スの解 明 に対 して
,相
互作用 の 中で学習者 の認知 的活動が生起す る とい う視座 を重視す る立場 か ら概念構築 のプ ロセ スの解 明を試 み る。 以上 の議論 を踏 ま え,本
研 究 では先行概 念 と科学 的概念 の相互交渉 を活性化 させ る教授学習法 が概念構築 に及 ぼす影 響 を,個
人 と社会 の2つ
の側面 か ら探 るこ ととす る。 具体的 には,以
下の仮 説 を検 証す る ことが主た る研 究 の 目的で ある。,
1.授
業 前 の 中学 生 にお いて は,金
属 に関す る誤認 識 が認 め られ るで あ ろ う。2.改
変型 二重推 理 法 を導入 した授 業後,カ テ ゴ リール ール を適用 した課題解 決 が促 進 され るで あ ろ う。3.属
性 操作 を させ ることで,属
性ル ール に関係 す る金属 の概念 間の連合 関係 が,属
性ル ール と関係 しない金 属 に関す る概念 間の連合 関係 に転移 す るで あ ろ う。 また,上
記仮説 とともに,本
研 究 で提案す る教授 学習法 を導入 した授 業 にお ける実験や観 察 に対す る学習者 の感 じ方やそ の感 じ方 と学習者 がル ール を適用 す る こ との関係性 につ いて も併せ て検討 す る。 さらに,グ
ル ープ 内で行 われ る 対話 に着 日 して社 会 的 な認知 プ ロセ ス につ いて も考 察 を加 えたい。第
1土早
先行概念と科学的概念の相互交渉を活性化させる教授学習法
第
1節
先行概念 と科学的概念の相互交渉の活性化
さて,二
重推理 法 と反 証例 に拠 る教授 学習法 との差異 は どこに あ るのだ ろ う か。麻柄 (1999)は,「反 証 例 を用 い る授 業 で あ って も,結
果 と して二重推 理法に な る場合 もあ るこ とに気 づ く」 と述べ てい る。 これ は,何
を意 味 してい るので あろ うか。二重推理法 を導入す る授業 では,「直感 で答 える とどうな るか」と「先 に学習 した手がか りに基づ いて答 え る とど うなるか」 と質 問の種類 を変化 させ る手続 きを教授 学習場面 に導入す るこ とで,学
習者 が持つ先行概念 と科 学的概 念 とを意 図的 に相 互交渉 させ る。 しか し,反
証例 を用 い る授 業で は,偶
然 に先 行概 念 と科 学的概 念が相 互 交渉 す る と,結
果 と して二重推理法 にな る とい うこ とを意 味 してい る。 つ ま り,麻
柄 (1999)は,二
重推 理法 を授 業 に導入す る こと で,意
図的 に先行概念 と科 学 的概念 の相 互 交渉が行 われ る こ とを企 図 した と言 える。 で は,二
重推 理 法 の手続 きを教授 学 習場 面 に導入 しさえすれ ば,先
行概 念 と 科学的概 念 との相 互交渉 がス ムーズ に行 われ,そ して活性化 す るのであろ うか。 二重推理 法では,課
題解決 に必要 な手 がか りの学習(以 下,「先行 学習」 と記す) を行 つてか ら,課 題 に対 して「直感 で答 え る とど うな るか」と質問す るこ とで, 学習者 に先行概念 を意識 させ よ うと試 みてい る。 しか しなが ら,こ
の時 点で, 既 に先行 学習 がな され てい るので,「直感 で答 える と ど うな るか」と質 問 された ところで,学
習者 に よつて は,既
に先行 学習 の手が か り(本研 究 で は,科
学的概 念)に注意 が 向いてい るこ とも予想 され る。も し,こ
の よ うな状況 が生 じる とす れ ば,「直感 で答 える」とい う行 為 そ の ものが,先行概 念 に基づ いた思考 なのか, 科学 的概 念 に基 づ く思考 なのか はつき りと しない。実 際,筆
者 がFigurёlに示 す よ うな図 を示 して,「 どち らの密度 が大 きい と思 うか」と質 問 した ところ,「物 質 の密度 は,物
質lcm3ぁ
た りの質量 である」 とい う先行 学習 を行 つた クラス では,「直感 的 に答 えて ごらん」と教示 した ところで 「わか らない」とい う答 え がな され た。上方,先
行 学習 を行 つて いない クラス では 「右 の図」 とい う答 え で あつた。FiguFe l
同 じ大き さの塊 の中にある原子 物質 の密 度 を考 える ときに,先
行 学習 を行 つた クラスでは原子 の質 量 が焦 点化 され,先
行学習 を行 つて い ない クラスでは原 子 の数 が焦点化 され てい るので あ る。 つ ま り,先
行 学習 は学 習者 の 「直感 」 に も作用 し,先
行概 念 を引 き出せ な い可能性 があ る と言 える。 この よ うな状況 で は,先
行概 念 と科 学的概念 との相 互交渉 が阻害 され る と考 え られ る。 そ こで,本
研 究 で はTable3に
示す よ うに,二
重推理法 の手続 きの順序 を入 れ替 えた教授 学習法 を提案す る。 もちろん,本
研 究 で提案す る教授 学習法 は,2種
類 の知識(先行概 念 と科 学的概 念)に基 づ く推理 プ ロセ ス を別 々 に発動 させ る点 にお いて,Tablelに
示 した二重推理法 の骨子 と共通 した枠組 み は残 してい る と言 え よ う。 したがつて,本
研 究 で は この方法 を,二
重推 理 法 を変化 させ た もの とみ な し 「改変型二重推理 法」 と呼ぶ こ とにす る。Tablo 3
二重推理法 と改変型二重推理法の手続きの相違点 塾 1.課題解決に必要な手力泌ヽりの学習中2.課
題の鉢a麟
に基ヱ×刊 4. 手がかりに基づぐ瓢ま科学的概念 に基づぐ嘲勲 5. 靱 改変型二重推理法1.離
の赫2
隣術概合に基づぐ甜制
3.課
題解決に必要な手力渤ヽりの学習 4. 手がかりに多 く警 ″u麟艦鎌に基づく月臼楚識 5。 鞣 改変型 二重推理法 では,先
行 学習 と課題 の提示 の順序 を入 れ替 え,課
題 の提 示 を教授 学習過程 の最初 に位 置づ ける。 こ うす る こ とで,先
行 学習 に よつて, 学習者 が先行概 念 を引き出せ な くな る事態 を回避 で きる と考 え られ る。つ ま り, 麻柄 のい う「直感 」(本研 究 では,先
行 概念)を学習者 が よ り出 しや す い状況 であ り
,学
習者 の先行概念 が よ り活性化 してい ると言 える。 また,二
重推 理法に お ける先行学習 は,誤
つた知識 を修 正す るこ とをね らいに してい る。 したがつ て,そ
の性格 上,先
行 学習 は科学的概念 に基 づ いて行 われ てい る こ とになる。 しか し,二
重推理 法 の よ うに,先
行 学習 を手続 きの最初 に位 置づ け る と,こ
の 時点では,学
習者 の意識 は先行概念 に向いてお らず,こ
の 間,学
習者 は先行概 念 と科 学的概 念 を十分 に相互交渉 させ られ ない。 それ に対 して,改
変型 二重推 理法 では,学
習者 の意識 が先行概念 に向いた状態 で,課
題解 決 に必要 な手 がか りの学習 を行 うので,学
習者 は,こ
の 間 も絶 えず,先
行概 念 と科 学的概念 を相 互交渉 させ る こ とが可能 にな る。つ ま り,改
変型 二重推理 法 を用 い る と,先
行 概念 と科学 的概念 の相 互交渉 が よ り活性化 す る と考 え られ る。 したが つて,こ
の手続 きに基 づ く教授 学習法 は,科
学 的概念 が孤立 した知識 とな ることを妨げ るた め,学
習者 が新 しい概念 を構築 させ るの に よ り効果 的 な方法 で ある と考 え られ る。 また,改変型 二重推理 法 では,Table3に
示 した手続 きの3,4,5の
段 階 に, 積 極 的 に学習者 ど うしの対話 を促進す る試 み を導入 す る。 具体的 には,後
述す る通 り,ル
ール とその事例 を協働 で学習す る条件 下 で,課
題解決 に必要 な手が か りの学習や手 がか りに基づ く予想 を し,実
験や観 察 を行 う。改変型二重推理 法 に,学
習者 ど うしの対 話 を促進す る試 み を導入す る意義 は,次
節 で述 べ る。 9第
2節
対 話 に よ る 先 行 概 念 と科 学 的 概 念 の 相 互 交 渉 の 活 性 化 二重推理法 は,個
人 間の討論 で はな くて個人 内の対話 を重視 して,そ
れ を教 師 が最初 か ら意 図的計画 的 に成 立 させ る試 み とされ る (麻柄,1999)。 したがつ て,二
重推理 法 では,学
習者 ど うしの対話 は統制 され る対象 で あ る。 つ ま り, 麻柄 の 「学習者 の誤 つた知識 を どの よ うに修 正す るかJと
い う問いは,学
習者 の認 知 的活動 はあ くまで個人 的 な ものであ る とされ る前提 の も とに立て られた と考 え られ,認
知 的活動 の社会 的な側 面 を重視 して いない と思 われ る。 しか し,最
近 の社 会構成 主義 を重視 す る潮流 の 中,教
授 学習法 を提案 す る上 で,社
会 的相 互作用 を無視す ることはで きない。 む しろ,そ
の よ うな相 互作用 を積極 的 に教授 学習活動 に取 り入れ る必要性 があ る と考 え られ る。したが つて, 改変型 二重推理法で は,学習者 ど うしの対話 を積極 的 に導入す る こ とを試 み る。 学習者 ど うしの対話 に よ り, 1人
の学習者 が持つ先行概念 とその学習者 が習得 した科 学的概念 に基づ く思考 の枠組 み との相 互交渉 だけで な く,他
者 が持つ先 行概 念及 び他者 が習得 した科 学的概 念 に基づ く思考 の枠組 み との相互交 渉 も可 能 とな る。 っ ま り,自
己 と他者 の相 互作用 は,先
行 概念 と科学的概念 の相互交 渉 を よ り活性化 させ る と考 え られ る。 また,こ の こ とは,Table4に
示す改変型二重推理 法のプ ロセス にお け る学習 者 の認 知 的活 動 に大 き く作用す る と考 え られ る。 │Table 4
改変型二重推理法のプロセス 改変型二重推理法の手続き 学習者の認知的活動 1.課題の断 2. 夕ぎ司賠Nこ透基づく認 3.課題解決に必要な手がかりの学習0学
的概念の期 4. 手がかりに基づく予想 。日│―噛 こ即 く¬レ楚う 5。 実験や観察 ・ 先行概念の発動 ・ 先行概念の明確化 ・ 科学的概念に基づく思考の枠組みの習得 ・ 認知的葛藤の生起 先行概念と科学的概念の相互交渉 ・ 認知的葛藤の抑制 科学的概念を受容する覚悟 ・ 認知的葛藤の解消 臆 の構築 例 えば,そ
れ は,何
らか の課題 に対 して,一
貫 して正 しく答 え られ る学 習者で あつて も,自
己の思考 が他者 の声 に揺 さぶ られ る こ とに よ り,認
知的葛藤 が強 化 され るで あろ う。 この よ うな場合,学
習者 がわか りきつて い る と感 じて いるこ とで さえ
,事
実 と して確認 した り,実
験 で確 か めた りしたい とい う気 持 ちが 強 ま る と考 え られ る。 したが つて,学
習者 は あ る程 度 の意外感 を持 つて事実や 実験結果 を受容 す ることが予想 され る。 また,別
の学習者 は,他
者 の声 に媒介 され て,科
学 的概 念 に基 づ く思考 の枠組 み を習得す ることが可能 とな るか もし れ ない。 この よ うな場合 は,他
者 の声 が この学習者 の認知 的葛藤 を低減 させ, 認知 的葛藤 を解 消 させ た結果 と捉 え られ る。 つ ま り,学
習者 ど うしの対話 は, どの学習者 に対 して も下定 の決 ま りきつた効果 を与 える訳 ではな く,そ
の学習 者 自身 が必要 とす る効果 を,そ
の学習者 が主体 とな り,他
者 の声 か ら引 き出す もの と考 え られ る。 11第
2章
改 変 型 二 重 推 理 法 を導 入 した 授 業
(実
践
1)
第
1節
実践
1の
ね らいと方法
1.実
践1の
ね らい 実践1の
ね らいは,学
習者 が持 つ金属 に関す る先行概念 と教師 が教示す る科 学的概 念 の相 互交渉 を意 図的 に活性化 させ た授 業 を行 い,金
属 に関す る誤 つた ル ール を棄却 させ,「金 属 は電気 を通す(電気伝導性)」 ,「金属 は熱 を伝 え る(熱伝 導性)」 ,「金 属 は光沢 をもつ(光沢 の有 無)」 ,「金 属 は展性や延性 を もつ(展性や延 性 の有無)」 とい うルール を理解 させ るこ とで ある。 さらに,「 ピカ ピカ光 るも の(光沢 を もつ もの)は,電
気 を通 す 」 とい うよ うな金属 の適切 属性 間の連合 関 係 を様 々 に記述 で きるよ うな豊 かな金属概 念 を構築 させ る ことで あ る。 そ のた めに,改
変型 二重推 理法 を導入 した授 業 を行 い,金
属概念 の構築 に及 ぼす影響 を調べ る。2.研
究方 法 ① 分析対 象者 後 に述 べ る4つ
のセ ッシ ョンに参加 したH県
内の 同 じ学級 に所 属す る 中学 2 年 生32名
が分析対象者 であ る。 ② 期 日 一連 の調査 は,2012年
9月 か ら 11月 に行 つた。 ③ 手続 き 分析 対象者 に対 し,9月
に事 前調査(約15分
)を実施 した。事前調査 の分析 を 基 に授 業 を計画 し,11月
に改変型 二重推理 法 を導入 した授 業(約50分
)を2単
位 時 間行 つた。 第2時
の最後 にア ンケー ト(約10分
)を実施 し,授
業 を終 えた。 さらに事後調査(約15分
)を,授
業 の 5日 後 に実施 した。なお,事
前調査及 びア ンケー ト,事
後調 査 の開始前 には,個
人 の成 績 には影響 させ ない こ とや,分
か らない こ とは素直 に 「分 か らない」 と記述 して もよい こ とを説 明 した。 各セ ッ シ ョンの 内容 について以 下 に述 べ る。④ セ ッシ ョンの 内容 (1).事 前調査 事前調査 は
,問
題 1と 問題2の
2間
で構成 した。 問題1は
,概
念 の外 延 と内 包 を問 う課題 で あ る。 また,問
題2は
,金
属 の電気 伝導性 と自由電子 の 関係性 を問 う課題 で あ る。次 に,そ
れ ぞれ の課題 の内容 について説 明す る。I.概
念 の外延 を問 う課題 まず,問
題1で
,銅 ,鉄
,ア
ル ミニ ウム,金
,ナ
トリウム,カ
リウム,
リチ ウム,マ
グネ シ ウム,水
銀,カ
ル シ ウム(以下,「焦 点金属事例」 と記す)につい ての簡 単 な説 明文 を読 み,そ
の物質 が電気 を通す と思 えば 「○」 印,電
気 を通 さない と思 えば 「×」 印 をつ けて も らった。 ただ し,説
明文 にはすべて の物質 に対 して,そ
の物質 が 「金属 で あ る」 こ とを明示 してお いた。 この問題 では, 「金属 は電気 を通す」 とい う概念 を事例群 に適用す ることができ るか ど うかを 調 べ て い る。 この問題 を本研 究では,外
延 的理解課題 と位 置づ け る。課題 の概 要 をTable5に
示す。 Ⅱ.概
念 の 内包 を問 う課 題 さらに,問
題1で
は,そ
れ ぞれ の物質 が電気 を通 す と考 えた理 由や電気 を通 さない と考 えた理 由を記述 して も らつた。 この問題 では,事
例群 に共通 す る特 徴 で あ る 「金属 は電気 を通す 」 とい うことが記述 で きるか を調 べ てい る。 この 問題 を本研 究 では,内
包 的理解 課題 と位置づ ける。課題 の概 要 をTable5に
示 す。 13Tablo 5
外延的理解課題 と内包的理解課題の概要 問題 1(外延的理解課題・内包的理解課D
導線が電気をよく通す ことは知 つていると思います。導線 は,金属を材料にしてつ くられています。次の① ∼⑩の物質はすべて金属です。それぞれの金属に関する説明をよく読んで,導線に使われている金属のよう に,電気をよく通す と思 う金属には 「○」印,電気を通 さない と思 う金属には 「X」 印をつけて くだ さVヽ また,「○」や 「×」に した理由も力ヽヽて ください。 ①銅 少なくとも1万年前から使用されている全星で,青銅器などに利用されてきました。ちなみ に, 10円玉は,C同でできています。 ②鉄 日本では弥生時代から使われるようになった金昼で,鉄器や刀などに加工して利用されてき ま した。現在でも鉄骨や鉄筋などの建材 として利用 されています。 ③アルミニウム 19世紀になってから使われるようになった金属です。とても軽量で,また加工 しやすいので,新幹線などの車体の材料として使われています。 ④金 昔から貴重な金属 として知 られていて,遺跡などから多くの金でできた装飾品が見つかつて います。現在では,携帯電話などの電子機器の基板にも使われていま丸 ⑤ナ トリウム 反応性の高い金属で,自然界では,食塩などの化合物 として存在 しています。また, 人体にも多く含まれ 神経のはたらきと関係 しています。 ⑥カ リウム 人体に不可欠の金星で,神経のはたらきに重要な役割を果たしていますLまた,植物 にとつても重要な栄養素の一つで,肥料などにも多く含まれています。 ⑦ リチウム 海水中に多量にとけている全星で,ボ タン電池の材料などに利用されています。爆発 することもあるので,航空機などで輸送することは禁止されています。 ③マグネシウム ニ酸化炭素を出さずに,よく燃焼する金星で,石 油に代わる次世代のエネルギー として注目されています。また,ワカメやヒジキなどの食品にも多く含まれています。 ⑨水銀 常温で液体の金星で,蛍 光灯や水銀灯の発光体として不1用されてきました。水俣病の原因 となつた金属 として知 られ,高い毒性をもつ金属です。 ⑩カルシウム 人体に最も多く含まれている金星で,主に骨や歯の材料になっています。カルシウ ムは,牛乳や小魚などの食品に多く含まれていま丸 ※学習者に配布した用紙の回答欄には,「外延」「内包」の語句は記載されていなかった。 III.金属 の 電 気 伝 導 性 と 自 由 電 子 に 関 す る課 題 問題2で
は,金
属 が 電 気 を よ く通 す 「ヒ ミツ」 を 知 っ て い れ ば か い て くだ さ い とい う質 問 に対 して知 つ て いれ ば,そ
の ヒ ミツ を記 述 して も らい,金
属 の電 気 伝 導 性 と金 属 が 自 由電 子 を持 つて い る こ との 関係 性 につ い て,学
習 者 が どの 程 度 理 解 して い る か を調 べ て い る。 課 題 の概 要 をTable6に
示 す 。Tablo 6
金属の電気伝導性 と自由電子に関する課題問題
2C気
伝導性 と自由電子に関する課0
電気をよく通す と思つた金属 が,電気をよく通す 「ヒミツ」を知っていればかいてくだ さい。知 らなければ
「知 らない」 と答えて くださセゝ
(2).改 変 型 二 重 推 理 法 を導 入 した 授 業 実 践
1に
お け る 改 変 型 二 重 推 理 法 を 導 入 した 教 授 学 習 プ ロ セ ス の 概 要 をTable7に
示 す 。Table 7教
授学習プロセスの概要 時 教授学習過程 具体的な学習活動 1,翻 の 断2.先
行概念に基づく予想・
3.ル
ールの読み取 り 4. ′レールに基づく予想 鉄や10円玉,薬の梱包容器が電気を通すこと,氷砂糖や岩塩,ス ト ローが電気を通さないことを確認する。 どのようなものが電気を通すか(または通 さない力うについて仮説を 立てる。 仮説を根拠にして,水銀,ナ トリウム,マグネシウム,カルシウム が電気を通すかどうかを予想する。 ルール命題の操作を導入 したいくつかの事例に関する課題を行い, その事例についてルールがあてはまるか確認する。 水銀、ナ トリウム,マグネシウム,カルシウムが電気を通すかどう かを再考する。 ・ 水銀,ナ トリウム,マグネシ ウム,カルシウムが電気を通す ことを 確かめる実験を行 う。 ・ 教示 されたルー ル以外に,「ピカピカ光るもの」に続 く属性やカテゴ リーを考 える。 ・ 身近にある「ピカ ピカ光るもの」について,電気 を通すか どうかを 調べる。 ※ただし,「6.属性操作」は改変型二重推理法の教授学習プロセスには含まれない。 具 体 的 に は,
どの よ うな も の が 電 気 を よ く通 す の か(ま た は,通
さな い の か) につ い て仮 説 を立 て た 後 、 そ の仮 説 を根 拠 に い くつ か の金 属 につ い て 電 気 を通 す か ど うか を予 想 して か ら,そ
れ らの 金 属 が 電 気 を 通 す こ とを実 験 で確 か め る 展 開 と した。 第1時
で は,ま
ず,い
くつ か の物 質 に つ い て 電 気 を通 す もの と通 さな い もの が あ る こ と を確 認 させ た 上 で,学
習 者1人
ひ と りに どの よ うな も の が 電 気 を通 す の か(ま た は,通
さな い の か)につ い て仮 説 を立 て させ た(1.課
題 の提 示)。 そ して,仮
説 を根拠 に水銀,ナ
トリウム,マ
グネ シ ウム,カ
ル シ ウム(以下,「実 験金属事 例」 と記す)が電気 を通す か ど うか を予想 させ た(2.先
行 概念 に基づ く予想)。 そ の後,「金 属 は電気 を通すJと
「金 属は光沢 を もつ」 とい う金属に 関す る2つ
の適 切属性 を関連 づ けた 「ピカ ピカ光 る ものは,電
気 をよく通す」 5。 実験や観察6.属
性操作とい うル ール を教示 した。次 に
,ピ
カ ピカ光 らず 明 らか に電気 を通 さな さそ う な事例 と して「割 りば し」,ピ
カ ピカ光 り明 らかに電気 を通 しそ うな事例 として 「アル ミホイル 」と「500円
玉」,ピ
カ ピカ光 つてはい るが電気 を通す か ど うか は疑 わ しい事例 と して 「ア ラザ ン」 と「金色 の折 り紙」を提示 し,Table8に
示 す課題 をグル ープ の活動 として行 わせ た。 これ は,変
数操 作 を導入 した課題 と 言 え る (工藤,2010b)。Table 8
グループ活動 として取 り組ませた課題の内容 ① ② ③ ④ ⑤ 割りばしは,(ピカピカ光る。ピカピカ光らなしうので,電気を(よく通す 。通さなセうだろう。 アルミホイルは,(ピカピカ光る。ピカピカ光らなセうので,電気を(よく通す 。通さなVうだろう。 500円玉は,( アラザンは,( 金色の折 り紙は,( )ので,電気を(よく通す 。通さなし,だろう。 )ので,電気を(よく通す 。通さなレうだろう。 )ので,電気を(よく通す・通さなしうだろう。 この課題 の後件 の値 は,す
べ ての設 間で 「よ く通す 」 と 「通 さない」か ら選択 させ たが,前
件 の値 につ いて は,①
と② は教示 したル ール に拠 り 「ピカ ピカ光 る」 と 「ピカ ピカ光 らない」 か ら選 択 させ,残
りの設 間で は,自
由に記述 させ る形 式で行 つた。 その上 で,そ
れぞれ の事例 につ い て電気 を通す か ど うか を確 認 した(3.ル
ール の読 み取 り)。 最 後 に,「 ピカ ピカ光 る ものは,電
気 を通す」 とい うル ール が適 用 され るこ とを教示 し,実
験金 属事例 のそれ ぞれ の物 質 が電 気 を通す か ど うか を改 めて予想 させ た(4.ル
ール に基づ く予想)。 第2時
では,ま
ず,実
験 の対象 とな る物質 を電極 に触れ させ る と,光
と音で 電気 を通 す こ とが確 か め られ る「ピカ・ブー・テス ター」と呼ぶ道 具 を用 いて, 実験金 属事例 のそれ ぞれ の物質 が電気 を通す ことを確 か め る実験 を行 つた。水 銀 は,ガ
ラス の小 さな容器 の 中に入れ,電
極 のつ けた コル ク栓 で フタを した状 態 に し,学
習者 が水銀 に直接触 れ な い よ うに配慮 した。 ナ トリウムは安全性 を 考慮 し,小
片 に した上 で各 グループ に配布 した。 さ らに,手
で触れ るこ とがな い よ うに ピンセ ッ トでナ トリウムの小片 を押 さえてカ ッターナイ フで切 つてか ら実 験 に用 い るよ うに指示 を した。 マ グネ シ ウム とカル シ ウムにつ いて は,紙
ヤス リで表面 をみがかせ てか ら実験 に用いた。 そ して,ピ
カ・ ブー・ テ ス ター を用 いて, 4つ
の物質す べてが電気 を通す こ とを確 かめた(5.実
験や観 察)。 その後,金
属 が共通 して持 つ4つ
の性 質 を教 示 し,「電気 を通す こ と」と 「熱 を 伝 えるこ と」は,電
気 や熱 を 自由電子 が運 ん でい る と説 明 した。「金 属光 沢 をも 17つ こと」について は,自 由電子 が光 を反射 してい る こ と,「展性 や延性 を もつ こ と」 につ いて は
,自
由電子 が糊 の よ うなはた らきを してい る と説 明 し,金
属が 共通 して持つ4つ
の性質 と自由電子 の関係性 について教示 した。 また,金
属 の 展性 につ いて は,実
物 の金箔 を見せ る とともに,職
人 が金 を打 ち広 げて い る映 像 を視聴 させ た。そ して,「 ピカ ピカ光 るものは,電
気 を通 す 」以外 に考 え られ るル ール を,「 ピカ ピカ光 る」 とい う言葉 に続 けて3つ
考 え させ た(6.属
性操 作)。 最後 に,ピ
カ ピカ してお リー見す る と電気 を通 しそ うなアル ミナ を蒸着 さ せ た食 品 を保護 す る袋 が電気 を通 さない こ とを示 した。 この袋 が電気 を通 さな い理 由をたずねた上 で,ア
ル ミナは電気 を通 さないので金 属ではない こ とを確 認 した。 そ して,身
近 に存在 す る 「ピカ ピカ してい るもの」が電気 を通す か ど うか を確 か め る活動 を行 い,授
業 を終 えた。 この よ うに授 業 では,ま
ず,実
験金 属事例 の電気 伝導性 について,先
行概念 に基づ く予想 を行 わせ た。次 に,「 ピカ ピカ光 るものは,電
気 を通す 」とい うル ール を教示 した。 そ の後,実
験金属事 例 の電気伝 導性 につ いて,ル
ール に基づ いて予想 を行 い,実
験 で結果 を確 か め させ た。 これ は,改
変型二重推理 法 に沿 つた授 業 の展 開であ る。 そ して,こ
の よ うな展 開の後,カ
テ ゴ リールール を教 示 し,属
性操作 を行 わせ た。(3).ア ンケー ト ア ンケ ー トは
,質
問1か
ら質 問5の
5つ
の項 目で構 成 した。 そ の概 要 をTable9に
示 す。 次 にそれぞれ の内容 につ いて説 明す る。Table 9
アンケー トの概要 僕 験に対する感じ方の設D
水銀,ナトリウム,マグネシウム,カルシウムが電気を通すことを確かめた実験について質問します。 ① すべての金属が電気を通す結果に,どれぐらい意外牲を感じましたか? 0.意外ではなかった 1,あまり意外ではなかった 2.少 し意外だった 3。 まあまあ意外だつた 4。 とても意外だつた ② この実験は楽助 ヽったですか? 0.楽しくなかった 1.あまり楽しくなかつた 2.少 し楽しかった 3.まあまあ楽しかった 4.とヽ 楽しかった 0レールの理解に関する設FnC 「ピカピカ光るものは,電気をよく通す」というルールについて質問します。 ③ このルールに,どれぐらい納得しましたか? 0,納 得できなかった 1.あまり納得できなかった 2.少 し納得できた 3。 まあまあ絡 できた 4。 とでも1織得できた ④ 質問③で4または5を選択した人に質問します。このルールを納得できたのはどの場面ですか?複数の場面を 選択しヽ 構いません。 1,「 ピカピカ光るものは,電気をよく通す」というルールを聞いた場面 2.500円玉やアラザン,金色の折り紙が電気を通すかどうかを,予想した場面 3.500円玉やアラザン,金色の折り紙が電気を通すことを確かめた場面4.水
銀,ナトリウム,マグネシウム,カルシウムが電気を通すかどうかを予想し直した場面 5.水銀,ナトリウム,マグネシウム,カルシウムが電気を通すことを確かめる実験を行つた場面 6.「 ピカピカ光るものは,○○○はずだ」と,ピカピカ光るものの性質をまとめた場面 7.ピカ・ブー・テスターを使つて,教室のいろいろなものが電気を通すかどうかを確かめた場面 8.その他の場面 (メタ認知に関する設FnD あなたの金属に対する理解の変化について質問します。 ⑤ あなたの金属の知識は,どのように変化したと感じていますか?I,実
験 に対す る感 じ方 の設 間 質 問1で
は実験結果 に対す る意外感,質
問2で
は実験 の楽 しさについ て,そ
れ ぞれ5段
階尺度(0∼
4)で評 定 を して も らった。 実践1で
は,水
銀,ナ
トリ ウム,カ リウム,カ ル シ ウムが電気 を通す か ど うか を調 べ る実験 を,「 ピカ ピカ 光 る ものは,電
気 を通す 」 とい うル ール に基 づ く予想 を した上 で行 つた。 うま 19り
,学
習者 は あ る程度実験結果 につ いて予想 した状 況で,実
験 を行 つた と言 え る。 したが つて,こ
れ らの設 間では,こ
の よ うな状況が,学
習者 の実験結果 に 対す る意外性や 実験 に対す る興 味に,
どの よ うに影 響 を及 ぼす か を調べ ること を 目的 とす る6 Ⅱ,ル
ー ルの理解 に関す る設 問 質 問3で
は 「ピカ ピカ光 るものは,電
気 を通す」 とい うルール に対す る納得 度 を5段
階尺 度(0∼
4)で評 定 して も らった。 また,質
問4で
は このル ール を 十分 に納得 した学習者(質問3で
3ま
た は4の
評 定 を した学習者)を対象 に,ル
ール を納得 で きた授 業場面 をあ らか じめ7つ
想定 してお き,そ
の 中か らル ール を納得 で きた場面 を選択 して も らつた。 なお,複
数 場面 の選択 と,ル
ール を納 得 で きた場面 が, 7つ
の場面 の 中にな けれ ば,自
由にその場面 の記述 を して よ い もの と した。ル ール に対す る納得度 を調 べ るこ とで,ル
ール を どの程 度,学
習者 が受容 で きたか を知 るこ とがで き る。 また,ル
ール を納得 で きた場面 は、 学習者 のル ール に対す る認識 が変化 した場 面 と捉 え るこ とがで き る。 したがつ て,ル
ール を納得 で きた場 面 にお け る学習者 の認 知 的活動 を検討す るこ とは, 金属概念 の構築 に関す る重要 な示唆 を得 るこ とがで きる と考 えた。 III.メ タ認知に関す る設問 質 問5で
は,学
習者 に対 して 「あなたの金属 の知 識 は,
どの よ うに変 化 した と感 じています か」 と尋ね,金
属 に対す る理解 の変化 を 自由に記述 して もらつ た。 これ は,客
観 的 に 自分 の金属 に対 す る知識 が どの よ うに変化 したか を記述 す る こ とを求 めてお り,学
習者 のメ タ レベル にお け る金属 に対す る知識 の変化 を測定 し得 るもので ある。 学習 に対 してメタ認 知研 究の持 つ理論 的意義 の1つ
に,「学習者 が どの よ うにメタ認知 を働 かせ るのか を調べ る ことは,学習 の能動 的側 面,自 己制御 的側 面 に光 をあて ることに なる」(三宮,2008)と されて いる。 メタ レベル にお いて,学
習者 が先行概 念 を学 習 に よつて,
どの よ うに構 築 し直 したか を測定す る ことは,学
習者 の認 知 的変容 を評価す る1つ
の方法 とな り得 る と考 えた。 20(4).事 後調 査 事 後調査 は
,問
題1か
ら問題3の 3間
で構成 した。その概 要 をTable10に
示 す。 次 にそれ ぞれ の内容 について説 明す る。Tablo 10
事後調査の概要 問題1(外延的理解課0
次のア∼コの物質はすべて金属です。それぞれの金属が示す性質(①よく電気を通す,②よく熱を伝える,③ ピカピカ光る,④たたくと薄く広がる)はどれでしょう。金脇 のあとにかいてある①∼④の( )の中に, その金属が示すと思う性質には「〇」,示さないと思 う性質には「×」とかいてくださレヽ (ア)銅①
( )② ( )③ ( )④ ( )
に)鉄①
( )② ( )③ ( )④ ( )
(ウ)アルミニウム ①( )② ( )③ ( )④ ( )
(工)金①
( )② ( )③ ( )④ ( )
(オ)ナ トリウム①
( )②
( )③ ( )④
( ) (力)カリウム①
( )② ( )③ ( )④ ( )
(キ)リ チジム①
( )②
( )③ ( )④
( ) (ク)マグネシウム ①( )② ( )③ ( )④
( ) (ケ)水銀①
( )② ( )③ ( )④ ( )
(コ)カルシウム ①( )② ( )③ ( )④ ( )
問題2納包的理解課題 パラジウムとい う金属があります。天然に存在する量は少なく,いわゆるレアメタルですが,金属単体もし くは合金 として, 1つ の鉱石に含まれて産出します。さて,このパラジウムとい う金属は,金属 としてどの ような性質を持つていると考えられます力、 あなたが予想できる性質を,箇条書きで記入 してくだ さい。 問題3饒見的推論課題´ ポリアセチレンとい う銀自色のピカピカ光るプラスチックがあります。ピカビカ光るプラスチックの写真を 見て,吉竹 さんと角谷 さんは,それぞれ次のように考えま した。あなたは,吉竹 さんと角谷 さん, どちらの 意見に賛成 します力、 その理由もかいて ください。 ・ 吉竹さん 「ポリアセチレンはプラスチックだけれ ど, ピカピカ光つているので電気を通します。」 ●角谷さん 「ピカピカ光っていてもポリアセチレンは,プラスチ ックなので電気を通 しません。」 帥 吉竹さんに賛成 ・ 角谷さんに賛成 。どちらでもない I。 外 延 的理解課題 問題
1で
は,事
前調 査 と同 じく問題 文 中に 「金 属 で あ る」 と明示 した上で, 焦 点金属 事例 に対 して, 1.よ
く電気 を通 す(電気 伝 導性), 2`よ
く熱 を伝 え る(熱伝 導性),3.ピ
カ ピカ光 る(金属光沢 を もつ),4。 たた くと薄 く広 が る(展 性や延性 を もつ),と い う4つ
の性質 を,そ
の物質 が持つ と思 えば 「○」印,持
つ と思 わな けれ ば 「×J印
をつ けて も らつた。 ただ し,事
前調査 と異な り,そ
21れ ぞれ の 問題 に対 して 「○」や 「×」 とした理 由の記述は求 めなか つた。 した が つて
,問
題1は , 1,「
金 属 は電気 を通す 」, 2.「
金 属 は熱 を伝 える」, 3.
「金属 は光沢 をもつ」, 4。 「金属は展性や延性 をもつ」 とい う金属 に関す る4 つのルール を,焦
点金 属事例 に対 して適用 で きるか ど うか を調 べ る課題 と言 え る。 したが つて,こ
の問題 を事後調 査 にお け る外延 的理解課題 とす る。H.内
包 的理 解課題 問題2で
は,パ
ラジ ウム とい う金 属 につ いて,金
属 として どの よ うな性質 を 持 つてい るか を,箇
条書 きで記述 して も らつた。一般的 に,パ
ラジ ウム は金属 と して知 られ ていない物質 と考 え られ る。 つ ま り,問
題2は
,金
属 と知 られて いない事例 に対 して 「金 属 で あ る」 とい う情報 を与 えれ ば,金
属 に共通す る4
つ の性 質 を想起 し記述 で きるか ど うか を調べ る課題 と言 え る。 したがつて,こ
の問題 を事後調査 にお ける内包 的理解 課題 とす る。 III`発見 的推論課 題 問題3で
は,「ポ リアセチ レン3と ぃ ぅピヵ ピカ光 るプ ラスチ ックがあ る」 こ とを明示 し,ポ リアセ チ レンが ピカ ピカ光 って い る写真 を示 した上 で,「ポ リア セチ レン とい うプ ラスチ ック」 が電気 を通す とい う意見 と電気 を通 さな い とい う意 見 の どち らに賛成す るか を, 1.電
気 を通す に賛成, 2.電
気 を通 さない に賛成, 3,ど
ち らで もない,の
3つ
か ら選 択 し,そ
の理 由を記 述 して も らつ た。「ピカ ピカ光 るものは,電
気 を通す 」 とい う属性ルール は,「金属 は電気 を 通す 」 と 「金属 は光沢 を もつ」 とい う2つ
の金属 に関す るカテ ゴ リール ールに 裏づ け られ て い る もので ある。 しか し,こ
の2つ
のルール の逆命題 であ る 「電 気 を通す と金属 で ある」や 「光沢 を もつ と金属 であ る」 は,必
ず しも真 で はな い。この こ とか ら,「金属 でな くて も,金
属 の よ うな光沢 を持 つて い る物 質 は電 気 を通 す のではないだ ろ うか」 とい う推論 が可能 となる とい う点 において,本
研 究 では,こ
の問題 を発見的推論 の課 題 と位 置づ け る。 3自川 英 樹 博 士 は,従来 の常識 を覆 して 「電気 の流 れ るプ ラスチ ック」 の発 見 を した。 ポ リ アセ チ レンは,自川 博 士 が最初 に電気 を流れ る事 を見 つ けた 物質 で あ る。 ポ リアセ チ レンで は,すべ ての炭 素 の鎖 に垂直方 向のp軌道 が重 な り, π軌道 が鎖 の 中 に広 が り,π電 子 が 自 由に動 け る状 態 とな つてい る。 この よ うな状態 の物 質 に,外
部 よ り光,熱,酸
化還元 な どの 刺激 を与 え る と,電気 が流 れ る よ うにな る と され て い る (太田,2006)。 22第
2節
事 前 調 査 の 結 果 と考 察1.外
延的理解課題について 問題 1(電 気伝導性 に関す る設 問)で焦点金属事例 の各物質 について電気 を通 す と判断 した者 を正答者 とし,そ
の正答率 をFigure2に
示す。 90:6 ― ` ___ _84.4 56.3 46.9 43._8 一 A Au NaFigure 2電
気伝導性 に関す る設間の正答率(%)
一般 的 に金属 として よ く知 られ てい る と思 われ る鉄 と銅 は,それぞれ81.3%
(26人)と 59。4%(19人
)の学習者 が電気 を通す と予想 した。一方,金
属 と して あ ま り知 られ てい ない と思 われ る リチ ウム と水銀 は,そ
れ ぞれ 90。6%(29人
)と84.4%(27人
)の学習者 が電気 を通す と予想 し,一
般 的 に金属 と して知 られてい る と考 え られ る物質 よ りも高い正答 率 を示 した。一方,カ
ル シ ウム とい う物質 は よ く知 られ た物質 と思 われ るが,正答 率 は43.8%(14人
)と 低 か つた。同様 に, カ リウムの正答率 も46,9%(15人
)と 低 いが,こ れ はカ リウム とい う物質 その も のが,あ
ま り知 られ てい ない物質で あ るこ とも影響 した結果 と考 え られ る。 半 数 の物質 で正答率 が6割
を下回 つてお り,全
体 的 に正答 率 が高 い状況 とは言 え ない。 また,す
べ ての設 間に正答 した完全正答者数 は5人
(15.6%)と,極
めて 少 ない状況 で ある。 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 9 8 7 6 5 4 3 2 1 23 8■.3-2.内
包 的理解課題 について 外延的理解課題 に正答 し,そ
の理 由を を内包 的理解課題 の正答者 とみ な した。 9 . 4 Cu 10 「金属 であるか ら」 と記述 した学習者 その正答率 をFigure3に
示す。 3 3.︲ 一 ■ ■ ■ ■ 一 6 . 3 6 . 3 6 . 3 AI Au Na K Li Mg Hg CaFigure 3
内包的理解課題 の正答率(%)
内包的理解課題 の正答 率が高 い物質 は銅 と水銀 で あった。 しか し,そ
の正答 率 は9.4%(3人
)と 非 常に低 い。また,外
延 的理解課題 にお いて正答率 が最 も高 か つた リチ ウムの内包 的理解課題 の正答 率は3,1%(1人
)であつた。電気 を通 す と予想 した残 りの87.5%(28人
)は,リ チ ウムが 「金属 であ るJと
い う以外 の情 報 か ら,
リチ ウムが電気 を通す と判 断 してい るので ある。 この こ とは,外
延 的 理解課題 にお いて,学
習者 が リチ ウム を金属 で あ る と考 えて,電
気 を通す と判 断 した のでは な く,
リチ ウムの電気伝 導性 を予想す る際 に与 え られ た別 の情報 の影響 が大 きか つた ことを示唆 して い る。他 の物質 の正答 率 も極端 に低 い こ と か ら,他
の物 質 につ いて も同様 の こ とが言 え る。 つ ま り,学
習者 が 「金属 は電 気 を通 す」 とい うル ール を思考 の枠組 み として焦点金属事 例 の電気伝 導性 を予 想すれ ば,「金 属で ある」とい う情報 のみで,す
べ ての物質 が電気 を通す と判 断 で きるはずで ある。 しか し,実
際 には,多
くの学習者 が 「金属 である」 とい う 情報 とそれ 以外 の情報 を総合 して,焦
点金 属事例 の電気伝 導性 を判 断 してい る ので あ る。 したが つて,外
延 的理解課題 の正答 率 は,学
習者 が 「金属 は電気 を 通す 」とい うル ール を,それ ぞれ の事例 に適用 した結果 とす るこ とはで きない。 外延 的理解課題 の完全正答者 数 は5人
(15。6%)で
あ ったが,そ
の理 由 を一貫 し て 「金属 であ るか ら」 と記述 した学習者 は,そ
の うちの1人
(3.1%)に す ぎなか つた こ とも,上
記 の推論 に沿 つた結 果 と言 え る。さ らに
,電
気 を通 す とか電気 を通 さない と考 えた理 由 と して記述 され た内容 を分析す る と,「電池 の材料 で ある(リ チ ウム)」 や 「蛍光 灯 の発 光 体で あ る(水 銀)」 な ど,電
気 に関係 す るよ うな説 明 を した物質 について電気 を通す と判 断す る者 が複数見 られ た。一方,「食 品に含 まれ て いる(マ グネ シ ウム)」 や 「生体 を 構成 してい る(カ ル シ ウム)」 な ど,生 物 に関係 した説 明 を した物質 につい ては, 電気 を通 さない と判断す る者 が複数 見 られた。3.金
属 の電気伝 導性 と自由電子 に関す る課 題 につ いて 問題2は
,1名
のみが記述 してい たが,その内容 は誤 つてお り,32名
全員 が, 「金属 が電気 をよ く通す ヒミツ」,すなわ ち金 属が 自由電子 を持つ ことを知 らな かつた り,金
属 が 自由電子 を持 つ こ とと金 属 が電気 を通す ことを関連づ けた り す るよ うな理解 には至 ってい ない こ とが分 か る。 以上 の こ とか ら,事
前 の実践1の
分析 対象 者 の状 態 は,1.「
金 属」 と 「電気 を通す もの」 とい う概念 間に連合 関係 を構 築 で きていない状態 で あ る, 2,仮
に1を
構 築 していて も,そ
れ を課題解 決 に適用 で きない状 態で あ る,3,「
食 品 にふ くまれ てい る もの」や 「生体 を構成 してい るもの」 と 「電気 を通 さない も の」 とい う概念 間 に誤 つた連合 関係 を構築 した状態 であ る,の
3点
にま とめ ら れ る。 25第