2017 年 1 月 30 日
2016 年度 聖路加国際大学大学院 課題研究
集中治療室に再入室を繰り返す慢性心不全患者の 心不全と退院後の療養行動に関する認識
How Non-Compliant Patients with
Chronic Heart Failure and ICU Readmissions Perceive Their Condition and the Required Self-Management Strategies
15MN020
野村 志帆
目次
第1章 序論 ... 1
I. 研究の背景 ... 1
II. 研究の目的 ... 2
III. 研究の意義 ... 2
IV. 用語の操作的定義 ... 3
第2章 文献の検討 ... 4
I. 慢性心不全の急性増悪による再入院の現状 ... 4
II. 再入院の要因と患者の療養行動の実態 ... 5
III. 慢性心不全患者の心不全や療養行動の認識に関する研究動向 ... 6
IV. セルフマネジメントモデルと慢性心不全患者 ... 7
第3章 研究方法 ... 10
I. 研究デザイン... 10
II. 研究対象 ... 10
1. 対象施設と依頼方法 ... 10
2. 研究参加者と選定方法 ... 10
III. データの収集... 11
1. データ収集期間 ... 11
2. データ収集方法 ... 11
3. 収集する情報 ... 11
IV. データの分析... 12
1. 分析方法 ... 12
2. 分析手順 ... 12
3. 信用性と信憑性の確保 ... 12
V. 倫理的配慮 ... 13
1. 参加者への説明と同意 ... 13
2. 研究参加の利益と不利益 ... 13
3. 精神的・身体的負担への対応 ... 13
4. 個人情報の保護 ... 13
5. 研究結果の公表 ... 14
第4章 結果 ... 15
I. 研究施設の概要 ... 15
II. 研究参加者の概要 ... 15
III. インタビューの回数と時間 ... 15
IV. カテゴリの概要 ... 17
1. 心不全に関する認識 ... 17
2. 過去の療養行動 ... 23
3. 過去の療養行動上の困難 ... 27
4. 退院後の療養行動に関する認識 ... 30
5. 心不全を抱えながら生きていくことに対する思い ... 36
6. ICUに再入室を繰り返す慢性心不全患者の心不全と退院後の療養行動に関する 認識のカテゴリの関係性 ... 39
第5章 考察 ... 41
I. ICUに再入室を繰り返す慢性心不全患者の心不全に関する認識 ... 41
II. ICUに再入室を繰り返す慢性心不全患者の退院後の療養行動に関する認識 ... 43
III. ICUに再入室を繰り返す慢性心不全患者に対する看護への示唆 ... 48
IV. 研究の限界と今後の課題 ... 49
第6章 結論 ... 50
I. ICUに再入室を繰り返す慢性心不全患者の心不全に関する認識 ... 50
II. ICUに再入室を繰り返す慢性心不全患者の退院後の療養行動に関する認識 ... 50
表目次
表 1 研究参加者の概要 ... 16
表 2 心不全に関する認識 ... 18
表 3 過去の療養行動 ... 24
表 4 過去の療養行動上の困難 ... 28
表 5 退院後の療養行動に関する認識... 31
表 6 心不全を抱えながら生きていくことに対する思い ... 37
図目次
図 1-1 ICU に再入室を繰り返す慢性心不全患者の心不全と退院後の療養行動に関す る認識のカテゴリの関係性 ... 40図1-2 ICU に再入室を繰り返す慢性心不全患者の心不全と退院後の療養行動に関す る認識の様相... 47
資料目次
資料1 研究の説明書【院長・診療科部長用】 ...i資料2 研究の説明書【看護管理者用】 ... iv
資料3 研究依頼文章及び同意書 ... vii
資料4 研究への参加の同意撤回書 ... xi
資料5 インタビューガイド ... xii
1 第1章 序論
I. 研究の背景
我が国では、高齢化に伴う高血圧や弁膜症患者の増加を背景に、虚血性心疾患に対する急 性期治療成績の向上、エビデンスに基づいた標準的薬物治療やデバイス治療を中心とした 非薬物治療の確立により、心疾患の終末病態である慢性心不全患者が増加していると言わ れている(丸山, 永田, 臼田, 2015; 筒井, 2013)。慢性心不全の罹患率は男女共に加齢と共に 増加し(Ogawa et al., 2007)、その数は2040年頃までは、増加することが見込まれ(Okura et al., 2008)、超高齢社会を迎える我が国にとって、主要な社会問題になることが予測され ている。
慢性心不全は、進行性かつ難治性であり(Yancy et al., 2013)、症状の寛解と増悪による再 入院を繰り返すたびに心機能や腎機能が低下するという病態の特徴がある(Gheorghiade et
al., 2005)。我が国の慢性心不全患者の1年死亡率(全死亡)が7.3%であるのに対し、再入院
率は、退院後6か月以内で27%、1年以内では35%と報告されている(Tsuchihashi, Tsutsui, Kodama, Kasagi, & Takeshita, 2000)。再入院の要因としては、感染症、不整脈、心筋虚血、
高血圧などの医学的要因よりも、塩分・水分制限の不徹底、治療薬服薬の不徹底、過負荷で の運動などの治療・指導に対するコンプライアンスの欠如の割合が高いことが明らかにさ れている(Tsuchihashi et al., 2000)。
心不全のような慢性疾患患者は、慢性疾患を抱えていることによって生じる生活様式の 変更やそれに伴う感情の変化に対し、いかに自分自身で対処するかというセルフマネジメ ントが求められる(岡本, 2013, p.12)。心不全患者のセルフマネジメントは、「病気や疾患を 管理したり、健康習慣を通して健康を維持するプロセスを含むセルフケアの要素の一つで あり、心不全の症状や徴候に対する反応としての認知的な意思決定のプロセス」(Riegel, Carlson & Glaser, 2000)と定義されている。しかし、慢性心不全患者の療養行動に関する研 究では、心不全再入院患者の自己管理の実態を明らかにした研究(赤土, 吉田, 袖山, 藤松, 羽馬, 2008; 乾, 西田, 三木, 羽馬, 2009; 根岸, 荒井, 五十嵐, 大野, 河野, 2015; 信岡, 鷹 林, 徳満, 西山, 2007; 大川, 真鍋, 小堀, 川崎, 古賀, 2005; 山根, 清水, 寺崎, 吉崎, 糸井, 2009)のみで、心不全をどのように捉え、退院後の療養行動をどのように考えているのかの 認識に着目した研究は見当たらない。更に、急性増悪により特に重症化し集中治療室
(Intensive Care Unit: 以下、ICUとする)へ入室する慢性心不全患者に焦点を当てた研究も
2 見当たらない。
よって、急性増悪によりICUに再入室を繰り返す慢性心不全患者の心不全に関する認識 と、退院後の療養行動に関する認識を明らかにすることが求められる。
II. 研究の目的
本研究の目的は、ICU に再入室を繰り返す慢性心不全患者の心不全に関する認識と退院 後の療養行動に関する認識を明らかにすることである。
III. 研究の意義
急性増悪によりICUへの再入室を繰り返している慢性心不全患者がどのように心不全を 捉え、どのように退院後の療養行動を考えているのかを明らかにすることで、患者自身がど のような問題を抱えているのか、また退院後、どのようなことが問題になりそうであるのか を明らかにすることができる。そして、その患者個人の悩みや問題に即したテーラーメイド の知識や技術を提供するための教育的支援の示唆が得られると考える。急性増悪により ICU に入室後、急性期を脱し症状が改善傾向にある時期は、慢性心不全患者にとって呼吸 困難感、倦怠感などの自覚症状がわずかに残っていて、心不全の症状の印象付けることに役 立つため、医療者は早期から退院に向けた教育を開始することが望ましいと言われている (山中, 2015, p.135)。また、高齢化対策に基づく医療費適正化等によって今後、更に在院日 数は短縮されることが予測されるため、ICU 在室中の早期からの教育的支援が必要である と考える。
加えて、我が国において、心不全患者に対する病棟から外来や訪問看護ステーションなど の在宅看護への継続教育の取り組みの報告はいくつかあるが(林, 塚本, 石戸, 中屋, 2007;
櫛部ら, 2015; 大川ら, 2005; 志賀ら, 2010)、その有用性は明らかになっていない。本研究 において患者の語りから、患者自身が心不全をどのように捉え、どのような退院後の療養行 動を考えているかについて具体的に明らかにすることで、ICU における教育的支援のみな らず、ICU から病棟や外来における継続的な教育的支援の示唆も得られると考える。そし て、そのような教育的支援は、特にICUに入室せざるを得ないほどの重症化予防、および 生活の質(quality of life: 以下、QOL)の改善をもたらすことにつながると考える。
3 IV. 用語の操作的定義
慢性心不全患者の認識:認識とは、人間が物事を知る働きおよびその内容(広辞苑 第6版)
である。本研究では、慢性心不全患者が抱く心不全に関する知識 と、退院後の生活に関する患者自身の考えとする。
療養行動:慢性心不全患者が思い描く生活における具体的な取り組み
療養行動上の困難:慢性心不全患者が療養行動を遂行する上で難しいと感じること
再入室:慢性心不全患者が心不全急性増悪の診断にて、ICUへの入室を2回以上経験する
こと。本研究では、一般病棟からICUへの転棟も含むとする。
4
第2章 文献の検討
I. 慢性心不全の急性増悪による再入院の現状
慢性心不全は、「慢性の心筋障害により心臓のポンプ機能が低下し、末梢主要臓器の酸素 需要量に見合うだけの血液量を絶対的にまた相対的に拍出できない状態であり、肺、体静脈 系または両系にうっ血を来たし日常生活に障害を生じた病態」である(日本循環器学会ほか 合同研究班, 2011)。そして、全ての心疾患の終末的な病態であり、その生命予後は極めて悪 い(Kawashiro, Kasanuki, Ogawa, Matsuda, & Hagiwara, 2008; Shiba et al., 2004)。
近年、心不全患者を連続したステージで捉えるべきと考えられるようになり、the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association(以 下 、
ACCF/AHA)ステージ分類(Yancy et al., 2013)が用いられることが多い。ステージAでは、
患者は、高血圧や糖尿病などの心不全のリスク因子を有しているのみで、器質的心疾患はな いため心不全症状も有しない。ステージB では、器質的心疾患を有しているが、心不全症 状には至らず、構造形態の変化から徐々にリモデリングの進行や機能低下をきたす。その後、
心不全症状が出現し、ステージC では、呼吸困難や疲労などの症状、運動耐容能の低下を 認める。症状の急性増悪により、再入院を繰り返し、治療には反応し得るが、断続的に心機 能は低下していく時期である。更に、機能低下が進行したステージD では、身体機能が制 限される難治性の症状を伴い、専門的な介入が必要な時期となる。この時期は、心不全の病 態そのものの悪化による心不全増悪の可能性もある(肥後, 2015, p.253)。
慢性心不全の急性増悪とは、「慢性心不全の代償機転が短期間に破綻し、病態が急速に悪 化した病態」を指す(日本循環器学会ほか合同研究班, 2011)。その症状は、肺静脈のうっ血 に伴う労作時呼吸困難や起坐呼吸、体静脈のうっ血に伴う下腿浮腫や悪心・嘔吐、腹部膨満 感、また、心拍出量減少に伴う血圧低下、チアノーゼ、乏尿などが認められる。治療として は、患者の症状に伴う苦痛改善を最優先に、増悪要因の特定を進めながら、呼吸の安定化と 血行動態の改善を図る。酸素療法や非侵襲的陽圧人工呼吸(Noninvasive Positive Pressure Ventilation: NPPV)による呼吸管理、利尿剤や硝酸薬などの薬物療法のほか、難治例の場合 は、気管挿管による呼吸管理や、大動脈バルーンパンピング(Intraaortic Balloon Pumping:
IABP)、経皮的心肺補助装置(Percutaneous Cardio Pulmonary Support: PCPS)などの補助 循環も考慮される。集中治療によって症状が改善すると、循環器病棟、更には外来での治療 に移行するが、ひとたび急性増悪を起こすことで再度、急性期治療を必要とする。現在、我
5
が国で報告されている慢性心不全患者の再入院率は、退院後6か月以内で 27%、1 年以内
では35%である(Tsuchihashi et al., 2000)。この心不全増悪による再入院の繰り返しは、患
者・家族の負担となるだけでなく、医療経済の圧迫にもつながることから社会問題として捉 えられている。
以上のことから、慢性心不全は、進行性かつ難治性であり、ステージの進行に伴い急性増 悪による再入院を繰り返す。医療者は、このことを念頭に置き心不全の病態把握をした上で、
増悪要因の検索に努めることが重要である。
II. 再入院の要因と患者の療養行動の実態
我が国の心不全の再入院の規定因子を患者因子、医学因子、社会環境因子の関与について 検討した研究(Tsuchihashi et al., 2001)では、「高血圧の既往あり」、「心不全の入院歴あり」、
「入院期間が長い」、「就労なし」、「在宅サポートを受けていない」、「退院後外来受診が少な い」などで再入院が多く、受診頻度がひと月に0~1回の患者は、それ以上の患者より再入 院のリスクが約5倍高いことが明らかにされている。また、慢性心不全患者の不安症状も1 年以内の心不全再入院の独立危険因子であることが明らかにされている(Tsuchihashi- Makaya, Kato, Chishaki, Takeshita, & Tsutsui, 2009)。更に、Tsuchihashi et al. (2000)の 大規模コホート研究では、慢性心不全患者の再入院の要因として、塩分・水分制限の不徹底
が33%と最も多く、治療薬服用の不徹底、過活動など、治療・指導に対するコンプライアン
スの欠如が上位を占めていることが報告されている。また、このような自己管理の不徹底が 心不全による入院や心臓死の独立危険因子であることも明らかにされている(Kato et al., 2013)。そのため、我が国において、心不全再入院患者を対象に、具体的な自宅での療養行 動に関する調査が報告がされている。
まず、塩分制限については、減塩の味噌や醤油を使用している(山根ら, 2009)、宅配サー ビスは塩分・カロリー制限を選択している(乾ら, 2009; 信岡ら, 2007)など塩分に注意を払 っている一方で、食事は特に気にしたことがなく、好きなものを食べる(濱岸, 西本, 2012;
根岸ら, 2015)、食事は妻が作るため濃い味付けになる(濱岸, 西本, 2012; 赤土ら, 2008)、自 分で調理するときは、好みの味付けになるよう塩分を足す(赤土ら, 2008)、宅配サービスは 普通食を選択している(信岡ら, 2007)などが報告されている。水分制限に関しては、コップ やペットボトルなどで量を計りながら制限を守っている(根岸ら, 2015; 山根ら, 2009; 信岡 ら, 2007)一方で、好きなように水分を摂っていた(根岸ら, 2015)、飲み過ぎていることを認
6
識しながらも、コーヒーやビールなどを飲んでいた(赤土ら, 2008)、ジュースは水分として 捉えるが、水やお茶は水分だと思っていなかった(信岡ら, 2007)など水分制限が遵守できて いない状況が報告されている。
そして、内服管理に関しては、自分で薬ケースや薬カレンダーに仕分けをし、そこから内 服したり(濱岸, 西本, 2012; 森脇, 武田, 松本, 壺倉, 2010)、家族が1日分セットしてくれ たものを、そこから自分で内服したり(森脇ら; 根岸, 荒井, 五十嵐, 大野, 河野, 2015; 山根 ら, 2009)していた。内服が確実に実行できない状況としては、内服の飲み忘れや中断が報 告されている。内服の飲み忘れの理由としては、家族の介護をしていたため(濱岸, 西本,
2012)、後回しにしていたため(山根ら, 2009)、食事時間が不規則であったため(内藤, 籏持,
2009)などが報告されている。内服薬の中断の理由は、飲んだかわからなく薬を飛ばしてい るうちに飲まなくなった(志賀ら, 2010)、症状がよくなったからやめた(原田, 石井, 影土井, 2005)、などが報告されている。また、薬の数や回数が多いことも内服が確実にできない理 由として報告されている(内藤, 籏持, 2009)。更に、確実に内服はできていたが、薬効や薬 名を知らずに飲んでいた(赤土ら, 2008; 信岡ら, 2007; 森脇ら, 2010)ことも報告されている。
また、安静と運動に関しては、活動で呼吸苦があったときは安静にしている(赤土ら, 2008) と自覚症状に合わせて活動を制限できている一方で、息切れなど自覚症状が出現しても散 歩を続けていた(大川ら, 2005)、動いてはいけないとわかっていながらも家事などをやって いた(乾ら, 2009)、日課として買い物に自転車か徒歩で行っていたが、心不全との関連付け はできていなかった(赤土ら, 2008)などが報告されている。
以上のことから、慢性心不全患者の再入院の要因として最も多い療養行動の不徹底の実 態は明らかにされていた。しかし、患者がどのように心不全を理解し、療養行動について考 えているかは明らかにされていない。
III. 慢性心不全患者の心不全や療養行動の認識に関する研究動向
慢性心不全患者の心不全に関する認識として、心不全増悪症状の理解と症状出現時の対 処行動に関する研究(井上, 齋田, 2015)では、心不全の増悪症状の理解では、呼吸困難が最 も多く(62%)、次いで、動悸、下肢浮腫が多かった。最も理解が乏しかった症状は、食欲低 下(7%)であった。また、呼吸困難を理解している患者は、塩分制限の実施点が有意に高く、
体重増加を理解している患者は、負担のない生活や体重測定の実施点が有意に高かった。更 に、症状出現時に「安静にする」と答えた患者は、息切れ・呼吸困難・動悸・倦怠感を心不
7
全症状と理解している患者に有意に多かった。一方で、心不全増悪症状として倦怠感・下肢 浮腫の理解の有無に関わらず、対処行動として「塩分制限や水分制限を行う」と回答した患 者は有意に少ないということが明らかにされていた。ゴードンの機能的健康パターン分類 を用いて慢性心不全患者をアセスメントした研究(後藤, 長井, 長沼, 高木, 結城, 2005)では、
健康知覚・健康管理パターンにおいて、労作時呼吸困難感や下腿の浮腫等を自覚していたに も関わらず、日常活動や運動を継続していた例や次回の外来受診時まで様子をみようと判 断し、結果的に症状の悪化で不定期な外来受診をしていた例があった。これらの自覚症状に ついて、患者は、「このくらいの症状なら大丈夫と思った」、「まさか入院になるとは思わな かった」、「入院は嫌だった」と表現しており、症状増悪時に対する認識不足と対処の遅れが 報告されている。
また、心不全再入院患者を対象に、服薬指導や生活指導などを含む多職種チームによる心 臓リハビリテーションプログラムの施行後に、患者のヘルスリテラシーを調査した研究(高 橋ら, 2015)では、基礎疾患名を誤って理解していた者は全体の約40%であり、最も多い誤 解答は「心筋梗塞」で、基礎疾患名でなく単に「心不全」と解答する者もいた。基礎疾患と して心臓以外の臓器の病名を答える者はいなく、冠危険因子保持数に関しては70% 以上で 合致していたが、合致していない者の中では、脂質異常症を認識していない者が多かった。
また、ほぼ全員「心臓病は命に係わる」との認識はあるが「重症である」という認識は半数 以下だった。更に、再入院回数が多いほど、朝の内服錠数の間違いや利尿剤内服の無自覚が 多いこと、予後に関する説明を受けた認識がないことが明らかにされていた。また、心不全 再入院患者に対し、心不全という疾患の理解度を調査した研究(草苅, 石田, 杉, 2015)では、
「心臓の動きが悪くなる」、「心臓が機能していない」、「病気のことはわからない」、「完治が 難しいと思っている」などの認識を持っていることが報告されている。
以上のことから、慢性心不全患者の認識として、症状や疾患の理解度を明らかにする研究 が多かった。しかし、慢性心不全患者が、疾患や療養行動に関してどのように考え、取り組 み、退院後もどのように取り組みたいかを明らかにした研究は見当たらない。
IV. セルフマネジメントモデルと慢性心不全患者
慢性疾患患者は、慢性疾患に罹ることにより、生活様式の変更を強いられることが多く、
その結果、フラストレーション、怒り、抑うつなどが生じやすくなる。セルフマネジメント モデルは、慢性疾患をもつ全ての人々がその慢性疾患を抱えながらいかに自分自身でマネ
8
ジメントをしていくかに焦点があてられたモデルである。そのモデルの特徴は、以下の点が 挙げられる(Lorig, 1998)。1つ目は、患者が生活上の役割を維持するための技能および疾患 がもたらす心理社会的側面を克服するための技能を習得すること。2つ目は、処方やそれに 対する遵守ではなく、問題解決、意思決定、および患者の自信獲得に重点をおくこと。そし て 3 つ目は、日常生活での病気の管理は患者主体で行われ、患者と医療専門家をパートナ ーシップの関係におくことである。
Lorig and Holman (2003)は、セルフマネジメントの3つのタスクと6つのスキルを示し
ている。3つのタスクとは、薬を飲む、食事制限をする、受診行動をとるなどの‘治療のマ ネジメント’、仕事、家事、趣味などその人にとって意味のある行動を維持したり変更した りする‘生活のマネジメント’、病気がもたらす怒り、将来への不安、抑うつなどの感情の 変化に取り組む‘感情のマネジメント’である。これらのタスクに対処するために、問題解 決、意思決定、資源利用、患者-医療提供者のパートナーシップ形成、行動計画、自己調整 というスキルが必要であるとされている。セルフマネジメントモデルは、あくまで患者自身 の悩みや問題に焦点が当てられるため、問題解決スキルは主要なスキルである(Lorig &
Holman, 2003)。そして、その問題を解決するにあたりやれそうだと根拠のある自信である 自己効力感を高めることが重要であると言われている(岡本, 2013, p.18)。
心不全患者のセルフマネジメントとは、「病気や疾患を管理したり、健康習慣を通して健 康を維持するプロセスを含むセルフケアの要素の一つであり、心不全の症状や徴候に対す る反応としての認知的な意思決定のプロセス」(Riegel, Carlson & Glaser, 2000)であり、籏 持 (2004)は、概念分析により、心不全患者のセルフマネジメントを、「心不全の症状や徴候 に対する反応としての認知的な意思決定のプロセスであり、心不全状態の管理に必要な日 常生活上の課題(task)である。そしてそれは心不全に伴う生活管理の経験に基づく熟練した 能力(expertise)を含む概念である」と定義している。更に、慢性心不全患者の療養セルフマ ネジメントの構造分析として、『家族支援機能』が基盤となり『主体的療養行動』を経由し て『前向きな取り組み』が規定されることが明らかにされている(久保, 山下, 星, 2013)。ま た、セルフマネジメントの実施状況を測定する独自の質問紙を作成し、健康関連QOLと一 般自己効力感との関係を調査した研究(佐佐木, 重松, 2012)では、療養上の困難の調整がで きている患者ほど、健康関連QOLや一般自己効力感が高いことも明らかにされている。
以上のことから、セルフマネジメントモデルは、慢性疾患患者自身の問題に対する認知的 なプロセスや取り組みを表す概念であるため、慢性心不全患者の認識や行動の基盤となる
9 と言える。
このような文献の検討から、寛解と増悪を繰り返しながら徐々に進行する慢性心不全患 者は、治療の遵守が求められるだけでなく、日常生活への適応や変更、病気がもたらす負の 感情などさまざまな問題に対処しなければならない。そのために、患者自身がどのように心 不全を捉え、どのように退院後の療養行動を考えているかを具体的に明らかにする意義が あると言える。
10
第3章 研究方法
I. 研究デザイン
本研究は、ICU に再入室を繰り返す慢性心不全患者の心不全に関する患者自身の考えや 退院後の生活に関する語りの中から、心不全の認識と退院後の療養行動に関する認識を明 らかにすることを目的とした質的記述的研究である。
II. 研究対象
1. 対象施設と依頼方法 対象施設
事前に研究の実現可能性を検討した際、1施設では、研究調査期間内に研究参加者8~
10名選定できないことが予想されたため、以下の条件を満たす施設より2施設を便宜的 に選定した。
病床数500床以上の東京都内の病院
ICUを完備している
循環器内科を開設し、心不全年間入院患者数が200人以上いる
依頼方法
病院長、看護部長、循環器内科責任者に対して、研究目的や研究意義、研究協力の具体 的な依頼内容、研究実施に伴う倫理的配慮について依頼文書資料 1 を用いて、説明をし た。また、研究参加者である患者に対して研究協力の依頼文書及び同意書資料3、同意撤 回書資料 4 を用いることを説明した。その上で、研究協力に同意が得られる施設を本研 究の対象施設とした。
2. 研究参加者と選定方法 研究参加者
慢性心不全の急性増悪の診断でICUに再入室を繰り返している、20歳以上の成人患者 を対象とした。尚、認知機能障害、聴覚障害者は除外した。
11 選定方法
事前に、循環器内科病棟の看護管理者に研究目的や研究意義、研究協力の具体的な依頼 内容、研究実施に伴う倫理的配慮について依頼文書資料 2 を用いて、説明をした。そし て、病棟に対象条件に見合う患者が現れた場合に、看護管理者よりその患者に対して本研 究に関する説明を研究者から受ける意思があるかを確認していただいた。患者にその意 思がある場合に、看護管理者から研究者に連絡を頂いた。その後、研究者が直接、患者に 対して研究の趣旨を説明し、研究協力の説明をさせていただく許可を得た。そして許可が 得られた場合に、研究者が患者に対して研究協力の依頼文書資料 3 を用いて研究の説明 を行った。そして、研究の同意撤回書資料 4 についても説明をした上で、研究参加の同 意を得た。研究参加の同意が得られた時点で、研究参加者の主治医に対し、研究目的や研 究意義、研究方法、研究実施に伴う倫理的配慮について依頼文章資料 1 を用いて説明し た。
III. データの収集
1. データ収集期間
2016年10月1日~12月7日
2. データ収集方法
インタビューガイド資料 5 を用い、半構造化面接法によりデータを収集した。研究参 加者に許可を得た上で、ICレコーダーに録音し、面接終了後速やかに逐語記録を作成し た。また、補助データとして、面接時の研究参加者の表情や語る時の口調などをインタビ ューメモに記述した。面接場所はプライバシーが確保できる個室で実施した。面接は原則 1回とし、1回に要する時間は1時間以内とし、研究参加者の精神的・身体的負担を確認 しながら実施した。研究参加者の基礎情報は、本人及び看護管理者に許可を得たうえで、
事前に診療録より情報収集を行った。
3. 収集する情報 診療録からの収集
研究参加者の入院時の基礎情報として以下の内容を事前に診療録で情報収集を行い、
診療録に記載がなく収集不可能であった内容を面接時に本人より聴取を行った。
12
・年齢 ・性別
・既往歴 ・慢性心不全の原因である循環器疾患 ・慢性心不全罹患歴
・心不全増悪によるICU入室回数 ・ICU在室日数 ・治療
・ACCF/AHAステージ分類
・NYHA(the New York Heart Association)分類
・CS(Clinical Scenario)分類
・左室駆出率(Left Ventricular Ejection Fraction: 以下、LVEF)
・BNP
インタビューからの収集
インタビューガイドは、心不全に関する考えや退院後の療養行動に関する考えを問う 内容とした。原則、インタビューガイドに沿って質問をし、研究参加者に自由に語って頂 いた。そして適宜、研究参加者の語りやその場の状況に応じて、インタビューガイドには ない質問をした。
IV. データの分析 1. 分析方法
本研究は、インタビューにて得られた患者自身の言語的表現をデータとし、データの内 容を客観的・体系的にカテゴリ化を行う内容分析を用いた。
2. 分析手順
インタビュー内容を文章化し、逐語録を作成した。逐語録全体を繰り返し読み、心不全 に関する認識と退院後の療養行動の認識に関連する文節を抽出した。抽出した部分につ いて可能な限り研究参加者の言葉を用いてコード化を行った。コードの類似性と差異性 をもって比較検討し、類似した意味をもつものでサブカテゴリ、カテゴリ化を行った。
3. 信用性と信憑性の確保
分析結果の信用性と信憑性の確保のために、インタビューの際は、研究参加者の用いた 言葉の意味や意図を確認しながら行った。また、研究の全過程において、質的研究に精通 した研究指導者にスーパービジョンを受けながら実施し、分析時は各々の過程で繰り返
13 し検討した。
V. 倫理的配慮
1. 参加者への説明と同意
研究参加者に本研究の目的や方法、発生し得る不利益について説明し、参加は自由意思 であること、参加撤回の自由があること、決して参加を強制するものではないことを伝え た。また、同意の拒否や撤回は治療上において研究参加者の不利益にならないことを説明 した。これらは、研究協力の依頼文書と口頭で説明し保証した。そして、同意の確認をし た上で、同意書の記入を依頼した。方法は、研究参加者と研究者の両者が署名を行い、研 究参加者と研究者で1部ずつ保管した。研究者は鍵のかかる保管庫で保存し、管理した。
同意書への署名の際に、研究協力の同意撤回書と封筒を配布した。そして同意後に研究参 加者より同意撤回の意向がある場合には、病棟看護管理者への提出か、研究者への郵送を もっていつでも参加を辞退できることを説明した。
2. 研究参加の利益と不利益
研究参加に伴う研究参加者への直接的な利益は想定していなかった。一方、不利益とし て、インタビュー回答に際し、約60分程度の拘束時間が生じた。これに対し、研究参加 者の日常生活及び検査や治療に支障のない範囲で行えるように、研究参加者、病棟看護師、
研究者で相談し、日時を設定した。また、インタビュー回答中または終了後に、研究参加 者の精神的・身体的負担が生じる場合が想定された。
3. 精神的・身体的負担への対応
研究参加者がインタビューに伴う精神的・身体的負担を訴えた場合や研究者が感じた 場合には、インタビューを即時中止し、速やかに病棟看護管理者に報告し、適切な対応を 迅速に受けられるように努めた。インタビューの中止もしくは継続の判断は、研究参加者 及び看護管理者または主治医と相談の上、決定した。
4. 個人情報の保護
診療録からの情報やインタビューで得られたデータは、第三者に漏れることのないよ うに研究者が責任を持って厳重に管理し、研究目的以外には使用しないことを説明した。
それらは、両者とも匿名性を保持するために研究参加者のID番号をつけ、個人が特定で
14
きる情報(氏名など)と連結可能な状態にした。そして、そのID照合表や収集したデータ、
関連資料は鍵のかかる保管庫に保存し管理をした。インタビューの途中で同意撤回の申 し出があった場合には、同意撤回書に基づきその時点までに収集したデータに関して研 究の使用希望の有無を確認し、希望しない場合には全て破棄する予定であった。データは 一定期間(5年)、研究の結果の再現性を保つために厳重に管理し、その後は一切のデータ を復元不可能な状態に消去、またはシュレッダーなどで細かく裁断し破棄する予定であ る。
5. 研究結果の公表
研究結果は、課題研究としてまとめ、個人情報が特定されないよう配慮し、学会や学術 雑誌にて公表する予定であることを説明し同意を得た。
尚、本研究は聖路加国際大学研究倫理審査委員会の審査を受け、承認を得た上で実施した。
(承認番号:16-006A)
15 第4章 結果
I. 研究施設の概要
東京都内の病院から2施設(以下、対象施設a、対象施設b)を便宜的に選定し、研究実施 の同意を得た。
対象施設 aは、心不全クリニカルパスに沿って、ICU在室中から心不全手帳やパンフレ ットを用いた患者教育が行われていた。病棟では、患者個々に自動血圧計が貸し出され、患 者は自分で測定を行っていた。また、対象施設bは、病棟にて、プライマリー看護師によっ て心不全手帳やパンフレットを用いた患者教育が行われていた。
II. 研究参加者の概要
研究参加者は、5名(男性4名、女性1名)であった(表1参照)。研究参加者の年齢は、平 均82.6歳(SD=6.77)であった。循環器疾患は、虚血性心疾患が2名、心筋症が1名、弁膜 症が1名、虚血性心疾患と弁膜症の併存が1名だった。既往歴は、5名とも高血圧を有し、
その他、前立腺肥大、脂質異常症、高血圧、糖尿病など複数の疾患を有していた。慢性心不 全罹患歴は、平均7.88年(SD=9.55)であり、5名全員がACCF/AHAステージ分類C~Dで あった。慢性心不全の急性増悪によるICU入室回数は、平均2.8回(SD=0.98)であった。入 院時、平均LVEF45%(SD=10.22)であり、治療は、NPPVやネーザルハイフロー(Nasal High
Flow: 以下、NHF)を使用した酸素療法や、血管拡張薬、利尿薬などの薬物療法が行われて
いた。
III. インタビューの回数と時間
インタビューは、5名に各1回ずつ行い、インタビューに要した時間は、40分~79分で 平均54.4分(SD=15.7)であった。
16
表 1 研究参加者の概要 研究参加者の概要
対象 A氏 B氏 C氏 D氏 E氏
年齢(歳) 80代後半 90代前半 80代後半 80代前半 70代前半
性別 男性 男性 男性 男性 女性
循環器疾患 心筋梗塞(経皮的冠動脈形成術後) 肥大型心筋症 不安定狭心症(冠動脈バイパス術後)
大動脈弁狭窄症(大動脈弁置換術後) 狭心症(冠動脈バイパス術後) 大動脈弁閉鎖不全症 僧房弁閉鎖不全症 三尖弁閉鎖不全症
主な既往歴
高血圧 慢性腎臓病 慢性閉塞性動脈硬化症
前立腺肥大 気胸
高血圧 慢性腎臓病 左副腎腫瘍(左副腎摘除術後)
クッシング症候群 前立腺癌(化学療法後) 洞不全症候群(CRT-D6)留置)
高血圧 脂質異常症
糖尿病 前立腺肥大
高血圧 脂質異常症 高尿酸血症 糖尿病 前立腺肥大
肺炎
高血圧 たこつぼ型心筋症
冠攣縮狭心症 胸腹部大動脈瘤(人工血管置換術後) 食道癌(食道全摘胸骨後食道再建術後)
慢性心不全罹患歴 約26年 5年10ヶ月 1年11ヶ月 1年 4年8ヶ月
ICU入室回数(回) 2 4 4 2 2
主な治療
NHF5) 血管拡張薬持続投与
利尿薬投与
強心薬持続投与 利尿薬投与 抗生剤投与
血管拡張薬持続投与 抗生剤投与
NPPV7) 血管拡張薬投与
抗生剤投与
血管拡張薬投与 利尿薬投与
ICU在室日数(日) 3 0 3 9 3
NYHA1)分類 Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅱ Ⅳ
CS2)分類 1 2 2 1 1
ACCF/AHA3)ステージ分類 C D C~D C C
LVEF4) 41 45 29 50 60
BNP(pg/ml) - 2456 - - 1318
NT-proBNP(pg/ml) 9402 - 20056 - -
同居人の有無 有 有 有 有 無
仕事の有無 無 無 無 有 有
1) NYHA: the New York Heart Association 2)CS: Clinical Scenario 3) ACCF/AHA: the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association 4)LVEF: Left Ventricular Ejection Fraction 5) NHF: Nasal High Flow 6) CRT-D: Cardiac Resynchronization Therap Defibrilator 7) NPPV: Non invasive Positive Pressure Ventilation
17 IV. カテゴリの概要
インタビューでは、ICU に再入室を繰り返す慢性心不全患者の心不全に関する認識と退 院後の療養行動に関する認識についての語りの中から、“心不全に関する認識”や“退院後 の療養行動に関する認識”だけでなく、“過去の療養行動”や“心不全を抱えながら生きて いくことに対する思い”に関する語りも抽出された。また、“過去の療養行動”の語りの中 には、“過去の療養行動上の困難”の語りも含まれていた。これら、“過去の療養行動”、“過 去の療養行動上の困難”、“心不全を抱えながら生きていくことに対する思い”は、本研究の 目的である“心不全に関する認識”と“退院後の療養行動に関する認識”と関連していると 判断し、結果として5つに分類した。そして、これら各要素のカテゴリの関係性を示すとこ ろまでを結果とした。
以下に、その要素毎に詳細を記述する。なお、本文中の各要素を“ ”、各カテゴリを【 】、 各サブカテゴリを《 》、各コードを〈 〉で示した。
1. 心不全に関する認識
ICUに再入室を繰り返す慢性心不全患者の“心不全に関する認識”については、44コ ード、19サブカテゴリ、8カテゴリが抽出された(表2参照)。
そのうち、カテゴリは、【息苦しさ、あばら骨の下の圧迫感、気持ち悪さ、動悸が心不 全の症状だと考えている】、【心不全の症状は、いつ起こるかわからず、治療後にはその症 状がすぐに取れていると感じるが、治らない病気だと考えている】、【心不全の原因は、塩 分や水分の摂り過ぎで体重が増えたことによって、心臓や肺に負担をかけたことだと考 えている】、【心不全の原因は、精神的ストレスだと考えている】、【高血圧や糖尿病などが あることも、心不全の原因だと考えている】、【心不全の原因は、肺炎になったことだと考 えている】、【心不全の原因は、塩分以外の食べ物の蓄積だと考えている】、【心不全の原因 は、仕事を頑張り過ぎたことだと考えている】の8つが抽出された。
18 表 2 心不全に関する認識
心不全に関する認識
カテゴリ サブカテゴリ コード
非常に息苦しかったけど、まぁなんとか我慢してタクシーで病院に来た
今回、思いがけなくひどい呼吸困難に陥って、心臓っていうのが初めてこういうものなんだ とわかった
急に心臓が痛くなって、呼吸が乱れるような息苦しさで起きた 心不全は、座っているとまぁまぁだけど、寝ていると息苦しい
医師に「寝ていると心臓の面積増えるから、その分息苦しくなるはずだ」と言われて、なる ほどなと思った
あばら骨の下が膨らんできて、危ないなと思っていると、重苦しいような症状が出るのを繰 り返している
食事を気を付けていても、2~3日してると、あばら骨の下辺りが苦しくなる
1年間で4回も心不全で入院しているから、周期的にあばら骨の下の圧迫感が発生してくる のだと思う
症状は、お腹全体の圧迫感
症状は、とにかく動くと息苦しくなること
速く歩くと息苦しくなってきて、心臓に負担がかかっていると感じる 動くと息切れがする
症状は、いつもなんとなく気持ちが悪いということだと思う
気持ちが悪い症状が出るのは大体、夜中寝ているときが多いと思う 症状は、動悸をうつこともある
動くと動悸がする
時々、気持ち悪くなったりするから、その症状がいつ起こるかわからないから不安を感じて いる
慢性心不全と言っても、症状は急にくるものだとわかっている 入院して治療すると、症状が割合すぐに取れていると感じる 1回目の心不全の発作で入院して治療した後は症状を感じなかった 心不全は治らない病気だと思っている 心不全を調べたら、なんだこれ、治らないんじゃないかって思った
息苦しくなった原因は、塩分の摂り過ぎじゃないかと思う
塩分が多くなって水を飲むと、心臓と肺に水が溜まるから、それが息苦しくなった原因だと 考えている
心不全に悪いのは、よくいろいろなところで塩分が多いことだって言われているので、それ はだいたいわかっている
以前、ここに入院していたときと比べて体重が3~4Kg増えて、それが心臓や肺に負担をか けて、今回悪くなったと考えている
心臓肥大で収縮力が弱いから、普通の人は2000mlまでいいのに、私は1000mlでも多いか ら水が肺のほうにいって、心不全になっているのだと思う
水分を補給しなきゃいけないことはすごく重要であるけれども、摂り過ぎてはいけないという ことは、心不全において最も重要じゃないかなと思う
心不全に対し、運動の負荷よりもイライラするような精神的なストレスのほうがあまり良くな いと思う
精神的なストレスがあると、ストレスがない時と比べて、息苦しい状態といった自覚症状が 長時間続くと思う
運動だったら、運動をやめて、ミオコールスプレーをするだけで息苦しさは治まるけれども、
精神的なストレスが原因の場合はすぐには収まらないと思う 今回の入院のきっかけの1つは精神的ストレスだと思う
仕事で座ってパソコンをやっているだけでも精神的ストレスになっている、ということがわ かった
約半年間にわたり、3時間も4時間も座りっぱなしで原稿依頼の仕事をやっていたことが精 神的ストレスとなって、入院に至ったと思う
高血圧があると、この慢性心不全の発作が起きやすいということを今回、非常に勉強に なった
今回の入院で、高血圧ということがわかって、就寝前の血圧の薬を始めたら、寝て心臓が 息苦しい状態が一切なくなって、なるほどなと思った
心不全の一番の原因は糖尿病を抱えていることだと思っている
暴飲暴食と運動不足が糖尿病にも悪くて、それが心不全のきっかけになったと考えている 風呂から出たあとに、汗がひかなくてずっとタオルを交換して過ごしていたという悪い生活 習慣が、今回の入院の原因だと思う
毎回入院の原因は同じで、長風呂から出たあとに、汗がひかなくてずっとタオルを交換して 過ごしていたことが肺炎につながったことだと考える
肺炎の症状によって心不全になって入院したと考え
ている 肺炎の症状が心不全の誘因になっていて、それで入院になったのが今回で2回目である 塩分とか食べ物を注意していても、それでもあばら骨の下が膨らんでくるから、原因は他に あるのではないかと思う
肺に水が溜まるのは、塩分ではなくて、それ以外の食べ物にあるのではないかと思う 息苦しくなる原因は、食べ物が排泄されず蓄積され
ることだと考えている
食べたものが十分に排泄されないから蓄積されて、あばら骨の下が膨らんできて、苦しくな ると考えている
心不全の原因は、仕事を頑張り過ぎたことだと考え ている
疲れてどうしようもないときに、仕事を頑張り過ぎた ことで発作が起きたと考えている
疲れて疲れてどうしようもないときに、仕事をちょっと頑張りすぎちゃったら大きな発作が起 きたと思っている
心不全の原因は、塩分以外の食べ物の蓄積だと考 えている
今回の入院のきっかけは仕事で精神的ストレスを 抱えていたことだと考えている
精神的ストレスがあると息苦しさが続くと思う
心不全の原因は、精神的ストレスだと考えている
心不全の原因は、肺炎になったことだと考えている
塩分を注意していてもあばら骨の下が膨らんでくる から、肺に水がたまるのは、塩分以外の食べ物にあ ると考えている
息苦しくなる原因は、塩分の摂りす過ぎだと考えて いる
心不全の原因は、塩分や水分の摂り過ぎで体重が 増えたことによって、心臓や肺に負担をかけたことだ と考えている
入院の原因は、長風呂のあとにタオルを交換して汗 が引くまで過ごしていたことで、肺炎になったことだ と考えている
高血圧や糖尿病などがあることも、心不全の原因だ と考えている
糖尿病を抱えていることが、心不全の原因にもなる と考える
高血圧があると心不全の息苦しさが起こることがわ かった
水分の摂り過ぎや、体重が増えたことによって、心 臓や肺に負担がかかり心不全になったと考えている 息苦しさ、あばら骨の下の圧迫感、気持ち悪さ、動
悸が心不全の症状だと考えている
心不全の症状は、治療後すぐに取れていると感じる 症状はいつ起こるかわからない
心不全の症状は、いつ起こるかわからず、治療後に はその症状がすぐに取れていると感じるが、治らな い病気だと考えている
あばら骨の下の圧迫感
気持ち悪くなる 非常に息苦しくなる
動くと息苦しくなる
動悸をうつ
19
【息苦しさ、あばら骨の下の圧迫感、気持ち悪さ、動悸が心不全の症状だと考えている】
このカテゴリは、《非常に息苦しくなる》、《あばら骨の下の圧迫感》、《動くと息苦しく なる》、《気持ち悪くなる》、《動悸をうつ》といった5つのサブカテゴリが含まれた。
《非常に息苦しくなる》は、〈非常に息苦しかったけど、まぁなんとか我慢してタクシ ーで病院に来た〉、〈今回、思いがけなくひどい呼吸困難に陥って、心臓っていうのが初め てこういうものなんだとわかった〉などの5つのコードから導き出された。
《あばら骨の下の圧迫感》は、〈あばら骨の下が膨らんできて、危ないなと思っている と、重苦しいような症状が出るのを繰り返している〉、〈食事を気を付けていても、2~3日 してると、あばら骨の下辺りが苦しくなる〉などの4つのコードから導き出された。
《動くと息苦しくなる》は、〈症状は、とにかく動くと息苦しくなること〉、〈速く歩く と息苦しくなってきて、心臓に負担がかかっていると感じる〉などの 3 つのコードから 導き出された。
《気持ち悪くなる》は、〈症状は、いつもなんとなく気持ちが悪いということだと思う〉、
〈気持ちが悪い症状が出るのは大体、夜中寝ているときが多いと思う〉の 2 つのコード から導き出された。
《動悸をうつ》は、〈症状は、動悸をうつこともある〉、〈動くと動悸がする〉の2つの コードから導き出された。
【心不全の症状は、いつ起こるかわからず、治療後にはその症状がすぐに取れていると 感じるが、治らない病気だと思っている】
このカテゴリは、《症状はいつ起こるかわからない》、《心不全の症状は、治療後すぐに 取れていると感じる》、《心不全は治らない病気だと思っている》といった 3 つのサブカ テゴリが含まれた。
《症状はいつ起こるかわからない》は、〈時々、気持ち悪くなったりするから、その症 状がいつ起こるかわからないから不安を感じている〉、〈慢性心不全と言っても、症状は急 にくるものだとわかっている〉の2つのコードから導き出された。
《心不全の症状は、治療後すぐに取れていると感じる》は、〈入院して治療すると、症 状が割合すぐに取れていると感じる〉、〈1回目の心不全の発作で入院して治療した後は症
20
状を感じなかった〉の2つのコードから導き出された。
《心不全は治らない病気だと思っている》は、〈心不全を調べたら、なんだこれ、治ら ないんじゃないかって思った〉の1つのコードから導き出された。
【心不全の原因は、塩分や水分の摂り過ぎで体重が増えたことによって、心臓や肺に負 担をかけたことだと考えている】
このカテゴリは、《息苦しくなる原因は、塩分の摂りすぎだと考えている》、《水分の摂 り過ぎや、体重が増えたことによって、心臓や肺に負担がかかり心不全になったと考えて いる》といった2つのサブカテゴリが含まれた。
《息苦しくなる原因は、塩分の摂りすぎだと考えている》は、〈息苦しくなった原因は、
塩分の摂り過ぎじゃないかと思う〉、〈塩分が多くなって水を飲むと、心臓と肺に水が溜ま るから、それが息苦しくなった原因だと考えている〉などの 3 つのコードから導き出さ れた。
《水分の摂り過ぎや、体重が増えたことによって、心臓や肺に負担がかかり心不全にな ったと考えている》は、〈以前、ここに入院していたときと比べて体重が3~4Kg増えて、
それが心臓や肺に負担をかけて、今回悪くなったと考えている〉、〈心臓肥大で収縮力が弱 いから、普通の人は2000mlまでいいのに、私は1000mlでも多いから水が肺のほうにい って、心不全になっているのだと思う〉などの3つのコードから導き出された。
【心不全の原因は、精神的ストレスだと考えている】
このカテゴリは、《精神的ストレスがあると息苦しさが続くと思う》、《今回の入院のき っかけは仕事で精神的ストレスを抱えていたことだと考えている》といった 2 つのサブ カテゴリが含まれた。
《精神的ストレスがあると息苦しさが続くと思う》は、〈心不全に対し、運動の負荷よ りもイライラするような精神的なストレスのほうがあまり良くないと思う〉、〈精神的な ストレスがあると、ストレスがない時と比べて、息苦しい状態といった自覚症状が長時間 続くと思う〉などの3つのコードから導き出された。
《今回の入院のきっかけは仕事で精神的ストレスを抱えていたことだと考えている》
21
は、〈今回の入院のきっかけの1つは精神的ストレスだと思う〉、〈仕事で座ってパソコン をやっているだけでも精神的ストレスになっている、ということがわかった〉などの3つ のコードから導き出された。
【高血圧や糖尿病などがあることも、心不全の原因だと考えている】
このカテゴリは、《高血圧があると心不全の息苦しさが起こることがわかった》、《糖尿 病を抱えていることが、心不全の原因にもなると考える》といった 2 つのサブカテゴリ が含まれた。
《高血圧があると心不全の息苦しさが起こることがわかった》は、〈高血圧があると、
この慢性心不全の発作が起きやすいということを今回、非常に勉強になった〉、〈今回の入 院で、高血圧ということがわかって、就寝前の血圧の薬を始めたら、寝て心臓が息苦しい 状態が一切なくなって、なるほどなと思った〉の2つのコードから導き出された。
《糖尿病を抱えていることが、心不全の原因にもなると考える》は、〈心不全の一番の 原因は糖尿病を抱えていることだと思っている〉、〈暴飲暴食と運動不足が糖尿病にも悪 くて、それが心不全のきっかけになったと考えている〉の 2 つのコードから導き出され た。
【心不全の原因は、肺炎になったことだと考えている】
このカテゴリは、《入院の原因は、長風呂のあとタオルを交換して汗が引くまで過ごし ていたことで、肺炎になったことだと考えている》、《肺炎の症状によって心不全になって 入院したと考えている》といった2つのサブカテゴリが含まれた。
《入院の原因は、長風呂のあとタオルを交換して汗が引くまで過ごしていたことで、肺 炎になったことだと考えている》は、〈風呂から出たあとに、汗がひかなくてずっとタオ ルを交換して過ごしていたという悪い生活習慣が、今回の入院の原因だと思う〉、〈毎回入 院の原因は同じで、長風呂から出たあとに、汗がひかなくてずっとタオルを交換して過ご していたことが肺炎につながったことだと考える〉の2つのコードから導き出された。
《肺炎の症状によって心不全になって入院したと考えている》は、〈肺炎の症状が心不 全の誘因になっていて、それで入院になったのが今回で 2回目である〉の 1つのコード
22 から導き出された。
【心不全の原因は、塩分以外の食べ物の蓄積だと考えている】
このカテゴリは、《塩分を注意していてもあばら骨の下が膨らんでくるから、肺に水が たまるのは、塩分以外の食べ物にあると考えている》、《息苦しくなる原因は、食べ物が排 泄されず蓄積されることだと考えている》といった2つのサブカテゴリが含まれた。
《塩分を注意していてもあばら骨の下が膨らんでくるから、肺に水がたまるのは、塩分 以外の食べ物にあると考えている》は、〈塩分とか食べ物を注意していても、それでもあ ばら骨の下が膨らんでくるから、原因は他にあるのではないかと思う〉、〈肺に水が溜まる のは、塩分ではなくて、それ以外の食べ物にあるのではないかと思う〉の2つのコードか ら導き出された。
《息苦しくなる原因は、食べ物が排泄されず蓄積されることだと考えている》は、〈食 べたものが十分に排泄されないから蓄積されて、あばら骨の下が膨らんできて、苦しくな ると考えている〉の1つのコードから導き出された。
【心不全の原因は、仕事を頑張り過ぎたことだと考えている】
このカテゴリは、《疲れてどうしようもないときに、仕事を頑張り過ぎたことで発作が 起きたと考えている》といった1つのサブカテゴリが含まれた。
《疲れてどうしようもないときに、仕事を頑張り過ぎたことで発作が起きたと考えて いる》は、〈疲れて疲れてどうしようもないときに、仕事をちょっと頑張りすぎちゃった ら大きな発作が起きたと思っている〉の1つのコードから導き出された。
23 2. 過去の療養行動
ICUに再入室を繰り返す慢性心不全患者の“過去の療養行動”については、26コード、
12サブカテゴリ、5カテゴリが抽出された(表3参照)。
そのうち、カテゴリは、【心臓に負担がかからないように、可能な範囲で運動に取り組 んできた】、【食事のバランスや量、カロリーに気をつけてきた】、【塩分や水分の摂り過ぎ に気を付けてきた】、【体重や血圧を測定し、気を付けてきた】、【精神的ストレスを避ける ために、会社に責任者を配置したり、楽しく過ごせる時間を作ってきた】の5つが抽出さ れた。
24
表 3 過去の療養行動 過去の療養行動
カテゴリ サブカテゴリ コード
外ではなく、家の中で多少は歩くようにしている 運動不足になるから、おかっての食器洗いをしている
運動はやらないけど、ある程度のリハビリで教わってる動きを家の中で行っている 結構重いノートパソコンをテーブルに持ってくるのが10mぐらいで、往復すると息切れがする けれども、それも一つの運動だと思って朝と夕方行っている
重い荷物を持っていると、心臓への負荷がかなり重く、息苦しくなるので、3分間歩いては ちょっと休むというのを繰り返している
10m歩くと苦しくなるから、呼吸に合わせて、自分のペースで歩いている 重いものを持ったりなど、心臓に影響がでることは家
族にやってもらってきた
高い棚に食器を上げたり、鍋を洗ったり、布団などの重いものを持つことは、心臓にすぐ影 響するから、妻にやってもらっている
心不全手帳に、米、穀類、野菜類、果物、魚、と書いてるから、それに準じて、あとは家庭 の医学も合わせて見て食事を考えている
自宅では、病院で出てきたものを、妻に伝えて、こういうの食べてもいいんじゃないかとか 話して決めて食べていた
食事の量に気を付けている 食事のカロリーを気にしている
チョコレートを食べ過ぎないようにしてきた 甘いものも食べてはいけないのだけど、一番好物だから、ちょっとずつチョコレート1枚のや つをだいたい3~4日間で食べている
1週間に12食は減塩の介護食の宅配サービスを利用している
塩分が多くなると水を飲むから、塩分が少なくなるように食べ物そのものを注意していた 買ってきた食事は塩分が多いから、半分とか、1/3とかに減らして食べている
塩分を少ない食事を摂るようにしている
水分は、1日につき1000ml以内で止められるように、飲んだらノートに書いている 水の飲みすぎに気を付けてきた
ジンジャエールは砂糖が入っていておいしくてたくさん飲んじゃうので、それをハーブティに するだけで違うと思う
家では、体重を、朝は8時に時間を決めて測っている 体重が増えないように気を付けている
家では、血圧を、朝は8時、夜は6時と時間を決めて測っている 血圧が上がらないように気を付けている
精神的におかしくならないように、パソコンで囲碁や将棋をやって自分なりに楽しく過ごせる 時間を探し出している
ストレス解消はしている ストレスがかからないように、会社に責任者を配置
してきた
ストレスを避けるために、それぞれの会社に責任者を配置し、だいぶもう99%ストレスがな いような状態にしている
心臓に負担がかからないように、可能な範囲で運動 に取り組んできた
自分なりに楽しく過ごせる時間を作ったり、ストレス 解消をしてきた
飲んだ量をノートに書いたりして、水の飲み過ぎに 気を付けてきた
体重を測定し、増えないように気を付けてきた 家の中で歩いたり、食器洗いをしたり、リハビリで教 わった運動をしたりしてきた
心臓への負担がかかり、息苦しくなるので、呼吸に 合わせて自分のペースで歩いたり、休みながら歩く ようにしてきた
食事のバランスや量、カロリーに気を付けてきた
精神的ストレスを避けるために、会社に責任者を配 置したり、楽しく過ごせる時間を作ってきた
減塩の宅配食を食べたり、塩分の少ない食事を摂る ようにしてきた
塩分や水分の摂り過ぎに気を付けてきた
体重や血圧を測定し、気を付けてきた
血圧を測定し、上がらないように気を付けてきた 食事の量やカロリーを気を付けてきた
食事のバランスや内容に気を付けてきた