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全身疾患に対する基礎知識 ~生活習慣病と歯科との関係~

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Academic year: 2022

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高齢者の対応

1.高齢者とは

わが国の高齢者(65歳以上)人口(令和2年10月1日現在)は、3,619万人で、総人口の28.7%

を占めている。そのうち75歳以上の後期高齢者は1,872万人(14.9%)、80歳以上は1,125万 人(8.9%)となっている。

2.老化とは

人の身体は、加齢とともに「老化」という機能低下が起こる。誰にでも起こり、進行性のもので あるが、その個人差は大きい。原因は解明されていないが、影響する要因は、遺伝、環境、生活習 慣、疾病、障害がある。

1)身体的特徴

一般に身体の諸機能の低下が見られ、心理的、社会的要因の影響を受けやすい。若いころからの 食生活、運動、喫煙、飲酒などの生活習慣により、個人差が大きい。

加齢とともに各臓器の細胞数は減少し、ほとんどの臓器の機能が低下し、体温調整や生活習慣な ど、環境変化に適応しにくくなる。また、病気にかかると完治しにくく、慢性化し、長期の療養生 活が続きやすい。複数の疾病に罹患していることも多く、複数の医療機関を受診している場合も少 なくない。

2)精神的・心理的変化

精神的な特徴としては、新たな内容の学習が難しくなり、計算力や記憶力が低下しやすくなる。

不安感、抑うつ感、孤独感に陥りやすい。特に、生きがいの喪失が自己無用感を生みやすい。

また、今までの豊富な経験を生かした幅広いものの見方ができるようになり、ゆとりも生まれて くる人もいる。

資料

総務省統計局 レポート 2020年9月15日現在 高齢者人口の割合の推移

(2)

3.高齢者に接する場合の注意点

老化や障害をもっても人生の先輩であることを忘れずに、人格を尊重し、尊敬の念を持って 接する。

1)一般的な注意

・残っている機能を生かし、日常生活の自立への援助をする。

・目の高さをできるだけ同じ位置にして話をする。

・いままで培ってきた生活スタイルをもとに個々の価値観を大切にし、

その延長線上で生活できるようにする。

・話を聞くときは、復唱して理解していることを示す。

・できないことを非難せず、今できることを見つけるように気持ちを切り替えるサポートをする。

2)医療における注意

全般的に免疫力、予備力、回復力や適応能力が衰えていることを念頭におき、予防的な対処をす る。二次障害や合併症の引き金にならないように、十分な予防に注意する。

医療従事者は絶えず目を配る。特に、誘導の際には視力の低下や動作が緩慢になっていること から、床の段差、置いてあるもの、すべりやすいものを取り除くよう注意する。急な体位の変換 や移動は避け、声かけを十分に行うようにする。聴力の低下が見られる方には、ゆっくりと高音 にならないように注意し、文章は短く、大きな声で表情豊かに口の形を見せながら話をする。

4.高齢者に多く見られる疾患

高齢者に多くみられる疾患のとして、以下のような特徴がある。

・多臓器にわたる疾患が認められる。 ・症状が非定型的である。

・慢性化しやすい。 ・機能障害につながりやすい。

・合併症を起こしやすい。 ・様々な要因により、病状が変動しやすい。

・薬物動態の変化により、副作用が出やすい。

1)加齢現象・機能的変化に伴う疾患

疾 患 病 名

循環器疾患 高血圧、虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症、狭心症、心筋梗塞 消化器疾患 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、肝硬変、大腸がん

呼吸器疾患 肺炎、肺がん、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)

内分泌・代謝異常 自己免疫疾患

糖尿病、骨粗しょう症 膠原病(関節リウマチ等)

腎疾患 泌尿器疾患

腎不全 前立腺疾患

神経疾患 クモ膜下出血、脳出血、脳血栓(脳血管障害)、脳塞栓(一般的には脳卒中)

パーキンソン病

認知症 アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症など 精神疾患 うつ病

その他 感染症(肺炎、インフルエンザ)、身体機能(骨折)など

(3)

令和2年(2020) 人口動態統計月報年計(概数)厚労省

日本人の死亡原因

第1位 悪性新生物 第2位 心疾患

第3位 老衰 第4位 脳血管疾患 第5位 肺炎

脳血管疾患 肺炎

(平成30年) (平成29年)

主な死因の構成割合(令和2年(2020年))

2)口腔に関わる疾患

根面齲蝕、歯周疾患、アフタ性口内炎、顎関節症(弛緩性関節脱臼、開口障害)、口腔乾燥、味

覚障害、口臭症、摂食・嚥下障害

5.歯科診療時の全身管理

1)バイタルサイン

容易に再現性良く測定でき、生理的状態をよく反映する生理学的変数。

四大徴候…血圧、心拍数(脈拍数)、呼吸数、体温

+ 酸素飽和濃度 第5のバイタルサイン 2)モニタリング

高齢者の歯科治療では予測しない高血圧や不整脈などの循環器系の異常に遭遇することが多い。

異常をできるだけ早く検出する為の手段である。

モニタリングはモニター装置を用いた血圧の測定だけでなく、患者の表情、顔色、不穏な行動等、

数値に出ない発見も含む。

モニタリングの主なバロメーター

血圧・心拍数(脈拍数)・心電図・パルスオキシメータ(経皮的酸素飽和度)

① 脈拍 脈拍数

正常:成人では60~80回/分。

頻脈:100回/分以上。交感神経興奮、

疼痛、精神的興奮、発熱、

状腺機能亢進、

頻脈性不整脈、(洞性頻脈、発作性上室性頻脈、

心室性頻脈、心房細動)

徐脈:60回/分以下。迷走神経反射、頭蓋内出血、

洞性徐脈、房室ブロック、洞機能不全症候群

年 齢 脈拍数(分)

新生児 1週 3~6ヵ月 6~12ヵ月

1~5歳 5~8歳 8歳~12歳

成 人

140~180 124~130 130~140 110~130 100~120 90~100

80~90 60~80 脈拍の正常値

(4)

② 呼吸

正常な呼吸 成人で14~20回/分

1回の呼吸毎に出入りするガスの量(1回換気量)は500ml。

呼吸の正常値 年 齢 呼吸数(分) 換気量(ml)

新生児 40~60 20

1年 30~40 60~80

15年 20 400

成 人 14~20 500

③ モニタリングのための測定機器 血圧 血圧計

脈拍 パルスオキシメータ…皮膚の上から動脈血液中の酸素化の状態を側定。脈拍数も表示。

心電計… 胸部に電極を張り、心電図を測定する。

血圧と酸素飽和度も同時に測定できるタイプもある。

呼吸 パルスオキシメータ…非信襲的に低酸素状態を発見でき、脈拍の変動も監視できるこ とから有効性の高いモニタである。

6.血圧について

心臓が「生体のポンプ」として全身に血液を送り出すときの力。血圧の変動によって患者の

「生体のポンプ」がどのような状態にあるかを捉えられる。

ことが可能。

収縮期血圧:心臓が収縮したときの血圧。最高血圧、最大血圧。

拡張期血圧:心臓が拡張したときの血圧。最低血圧、最少血圧。

脈 圧 :収縮期血圧と拡張期血圧の差。

平均血圧 :拡張期血圧+脈圧/3

血圧の区分 (日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」)赤字:高血圧

分 類 収縮期血圧 拡張期血圧

正 常 域 血圧

至適血圧 <120 かつ <80

正常血圧 120-129 かつ/または 80-84 正常高値血圧 130-139 かつ/または 85-89

高血圧

Ⅰ度高血圧 140-159 かつ/または 90-99

Ⅱ度高血圧 160-179 かつ/または 100-109

Ⅲ度高血圧 ≧180 かつ/または ≧110

(孤立性)収縮期高血圧 ≧140 かつ <90 1)血圧を変動させる生活・環境因子

①体位 ②上腕の太さ ③動脈硬化 ④多血症 ⑤肥満 ⑥貧血症

⑦日内変動 ⑧精神的緊張や興奮 ⑨飲酒や喫煙 ⑩室温 ⑪尿意 ⑫疼痛 脈拍の測定

(5)

2)主な血圧計の種類

水銀レス血圧計 電子血圧計、アネロイド式血圧計

3)水銀レス血圧計の構造

「水銀に関する水俣条約」

(平成25年.10月)

水銀及び水銀化合物の人為的な排出から 人の健康および環境を保護する。

*2020年までに製造・輸出入が 禁止される水銀添加製品として

水銀血圧計が含まれている 電子血圧計(上腕用)

血圧計(手首用)

マンシェット

(カフ)

送気球 調節ねじ 目盛

血圧を変動させる要因

(6)

4)水銀レス血圧計による測定方法

① 患者に血圧を測ることを説明して了解を 得たうえで測定部位を出す。

② 血圧計を安定した場所に水平におく。

③ 枕などを利用して血圧測定部位(マンシェット の位置)が心臓と同じ高さになるように調整する。

④ マンシェットを上腕に巻く。この時、カフ

(ゴム嚢)の中央部が上腕動脈にかかるよう に巻き、巻いたときに指1~2本入る程度にする。

また、マンシェットの下縁が肘窩部の2~3cm 上部にくるように巻く。

⑤ マンシェットにすばやく空気を送り、肘窩の 上腕動脈(中央かやや小指側)に聴診器をあて

ながら、触診法による目安の2mmHg高値まで加圧する。

⑥ 1秒間に2~3mmHgの速度でメモリが下がるように送気球の排気ネジをゆるめる。

⑦ 拍動音が聞こえはじめた値を収縮期血圧、聞こえなくなった値を拡張期血圧とする。

⑧ マンシェットをすみやかにとりはずし、患者の衣服を整え、可能な範囲で測定値を説明する。

5)歯科治療と血圧について

血圧の上昇につながる歯科治療

①患者がリラックスして治療を受けられる環境を作ることが第一である。

②患者に負担をかけない治療を心がけることも大切である。

③余裕をもって対処できる時間をとり、患者にとっても楽な体位で無痛的な治療を心がける。

④口腔内に唾液や水をためないようにする。

歯科治療に対する

不安・緊張が精神的ストレス

局所麻酔や治療時の疼痛

唾液等の貯留などの肉体的な ストレス

長時間の開口状態の保持

kango-roo.com.より引用

(7)

7.パルスオキシメータについて

1)構造

指先や耳鼻などの組織を挟むプローブと本体からなる。プローブは発光部と受光部があり、

データを本体に送り、本体はSpOを算出し表示する。

2)使用方法

① 経皮的動脈血酸素飽和度(SpO)センサー

(ブローブ)に爪を上にして奥の壁に指先が接触 するまで挿入して挟む。

② 測定ボタンを押下し、SpOと脈拍数を測定 する。

③ 測定が終わったら測定ボタンを2秒間押すか 指をプローブから外すことで電源をOFFする。

3)正常値

90~100%である。90%未満であれば、酸素投与をはじめとする救急処置が必要となる。

歯科医院にある血圧計やパルスオキシメータは、使用方法を確認しておきましょう。

スタッフ同士で測定しあうなど、いざという時に戸惑わないようにしましょう。

☆自分の血圧・SpO

2

は?

収縮期(最高)血圧/拡張期(最低)血圧 SpO

2

( / ) ( )%

歯科医院のスタッフとして、

高齢の患者さんが安全に治療を受けられるように対応しましょう。

参照

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