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修士 学位 論文

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Academic year: 2021

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平成25年 度 修士 学位 論文

障害物 回避判断 における動的視覚情報の有用性 一 隙間通 過場面 に着 目 して 一

首都大学東京大学院 人間健康科学研究科 人間健康科学専攻 ヘルスプロモーションサイエンス学域

室井 大佑

(2)

修 士 学 位 論 文

障 害 物 回避 判 断 にお け る動 的視 覚 情 報 の有 用 性 一 隙 間通 過 場 面 に着 目して一

平 成26年1月7日 提 出

首 都 大 学 東 京 大 学 院

人 間 健 康 科 学研 究 科 博 士 前 期 課 程 人 間健 康 科 学 専 攻 ヘル ス プ ロモ ー シ ョ ンサ イ エ ンス 学 域 学 修 番 号:12899610

名:室 井 大 佑

(指導 教 員 名:樋 貴 広 准 教 授)

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12899610室 井 大 佑

要 旨

本 研 究 で は 、 歩 行 中 の 正 確 な 状 況 判 断 を 可 能 に す る 感 覚 情 報 と し て 、 動 的 視 覚 情 報 で あ る オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー(Opticalflow)の 有 益 性 に つ い て 検 討 し た 。

歩 行 な ど の 移 動 行 動 中 に 障 害 物 と の 接 触 を 安 全 に 避 け る た め に は 、 身 体 と 障 害 物 の 空 間 関 係 を 正 確 に 知 覚 し 、 適 切 な 対 処 行 動 を と る 必 要 が あ る 。 と こ ろ が 先 行 研 究 に よ れ ば 、 若 齢 健 常 者 で あ っ て も 遠 方 か ら 身 体 幅 よ り も大 き い モ ノ と と も に

隙 間 を 通 り抜 け る こ と を 想 定 し た 場 合 、 実 際 に は 接 触 し て し ま う 幅 を 通 過 で き る 判 断 して し ま う こ と(過 小 評 価)が 報 告 さ れ て い る(lliguchietal.,2004,2009;

Wagman&Taylor,2005)。 本 研 究 で は こ の 過 小 評 価 の 改 善 に 寄 与 し う る 感 覚 情 報 と し て 、 オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 有 用 性 に着 目 し た 。 オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー と は 前 進 移 動 時 に 網 膜 上 に 生 じ る 光 学 的 な 変 化 の パ タ ー ン で あ り 、 遠 方 で オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー を 獲 得 で き れ ば 、 そ の 後 に 目 隠 し 状 態 で 障 害 物 を ま た い だ と し て も 、 障 害 物 と の 接 触 を 回 避 で き る 確 率 が 高 く な る こ と が わ か っ て い る(Patla&Greig, 2006)。 遠 方 で 獲 得 さ れ る オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー が 安 全 な 障 害 物 ま た ぎ 動 作 に 寄 与

して い る と い うPatla&Greig(2006)の 先 行 研 究 を ひ な 型 に 、 遠 方 か ら歩 行 に よ りオ プ テ ィ カ ル フ ロ ー を 獲 得 す る こ と が 、 身 体 幅 よ り も 大 き な モ ノ と と も に 隙 間 を 通 過 す る た め の 知 覚 判 断 に お い て も 有 用 で あ る と い う 仮 説 を 検 証 す る こ と と し た 。

そ こで 本 研 究 で は 、 狭 い 隙 間 を 通 り抜 け る 場 面 を 実 験 的 に 作 り出 し 、 ま ず は 遠 方 に て オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー を 知 覚 して 目隠 し後 も 立 ち 止 ま ら な い こ と が 、 隙 間 を 効 率 的 か つ 安 全 に 通 り抜 け る こ と に 寄 与 す る か を 確 認 し た(実 験1)。 そ の 結 果 、 オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー を 知 覚 して 目隠 し後 も 立 ち 止 ま らな い こ とが 、 体 幹 の 回 旋 を 必 要 と しな い 隙 間 幅 で の 不 要 な 体 幹 回 旋 を 減 少 さ せ 、 効 率 的 な 隙 間 通 過 に お い て

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有 用で ある ことが確認 された。

実験2一 実験5で は、主た る検討課題で あるr隙 間通過 の可否 に関す る判断」

にお いて もオ プテ ィカルフ ローを知覚 して立ち止 ま らない ことが有 用である とい う仮説 の妥 当性 を検 証 した。参加 者は所定 の場 所か ら提示 され た隙間 が、66cm の平行棒 を両手 で把持 した状態で、体幹 を回旋せず に通過でき るか どうか を回答

した。オ プテ ィカル フロー を操作す るための隙間の観察条件は4条 件であ り、① 静止立位で観察す る条件(静 的視覚条件)、② 前進 しなが ら観察 し視覚遮断後 に一 旦停止す る条件(動 的視覚 阻害条件)、③ 前進 しなが ら観察 し視覚遮断後 も立ち止 ま らない条件(動 的視覚 ノンス トップ条件)、④視覚遮 断な しの条件(フ ル ビジ ョ ン条件)と した。

実験2、 実験3の 結果、隙 間の観察距離 が遠位3m(実 験2)で あれ 、近位lm (実験3)で あれ、オプテ ィカル フローが獲得で きる歩行 区間が1mの 場合は 、 知覚判 断課題 の成績 向上に寄与 しな い ことがわか った。一方実験4の 結果、オ プ ティカル フローが得 られ る歩行距離 を十 分 に長 くし(3m)、 かつ隙間が近位空 間 に到達 する まで(隙 間の手前1mま で)オ プテ ィカル フローが得 られれ ば、 隙間 通過可否の知覚判断の精度 を改 善できる ことが示唆 された。具体 的にはオプティ カル フローが得 られず、なおか つ観 察時間制限のな いフル ビジ ョン条件 よ りもオ プティカル フローが得 られ る2条 件(動 的視覚 阻害条件 、動 的視覚 ノ ンス トップ 条件)が 有意 に知覚判断課題 の成績が良か った。ただ し、 この結果 は実験1で み られたオ プテ ィカル フ ロー を知覚 して立ち止 ま らな い条件(動 的視覚 ノンス トッ プ条件)の みが、観察時間が 同一で ある他 の2条 件(静 的視覚 条件、動 的視覚 阻 害条件)よ りも有意 に正確 な行 動がで きた という ことと異 なる結果 であ った。そ の理 由 と して 、通過 可 否 の 回 答 を立 ち 止 ま って か ら行 って い た た めで あ る と考 え 、 実験5で は歩 いて オプテ ィカル フ ローを知 覚 している最 中に(つ ま り立ち どまる 前 に)隙 間通過の可 否の回答 をして も らった。 しか し、オプテ ィカル フロー を知

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覚 して立 ち止 まらない条件 によ る知覚判 断課題 の成績 向上は認め られず、仮説は 支持 されなか った。

本研 究 によ り、実際 の隙間通過場面 では遠方 でわず か1mの 歩行 にて獲得 した オ プティカル フローが 、そ の後 の 目隠 しでの隙間通過 を効率 的に実行 させる こと に有用 である ことが確認 された。一方 、知覚判断課題 にお いて は視覚遮 断を行 う 観察条 件(観 察 時間 を統 一 した3条 件)に お いてはオ プテ ィカル フロー の影響は み られ なか った・オ プテ ィカル フロー の知覚判 断へ の有用性 が一部 み られたのは、

観察 の歩行 区問を3mに 伸ば し、なおかつ 隙間の手前1mま で歩行 した場合のみ で あった。 これ らの結果 を総合す ると、知覚判 断場面 におけるオプテ ィカル フロ ーの利用の され方は 、実 際の隙間通過場面 とは乖離が生 じている可能性 が示唆さ れた。

(6)

目次

…9・ …4

第1章 本 研 究 の 理 論 的 お よ び 方 法 論 的 背 景 ・ ・0・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …6

第1節 歩 行 中 の 障 害 物 回 避 に お け る 視 覚 の 役 割 と 知 覚 判 断 能 力6 1ユ 障 害 物 回 避 に お け る 視 覚 の 役 割6

1.2障 害 物 回 避 時 の 知 覚 判 断 能 力7

1.3オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 定 義 と そ の 特 性10

1.4障 害 物 知 覚 に 対 す る オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 有 用 性12

1.5障 害 物 ま た ぎ 動 作 に お け る オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 役 割:Patla&..

(2006)14

1.6本 研 究 の ね ら い と 仮 説16

第2章 実 験 と 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … ・ 一 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …17

第1節 実 験1

L1方

1.1ユ 参 加 者

1.1.2実 験 環 境 1.1.3実 験 課 題

1ユ.4手 続 き

1.1.5従 属 変 数 と 分 析

77892241剛11999

(7)

1.2結 1.3考

009δ

第2節 実 験2 2ユ 方 法

2.1.1参 加 者 2ユ.2実 験 環 境

2.1.3実 験 課 題 2.1.4手 続 き

2ユ.5従 属 変 数 と 分 析 2.2結

2.3考

555667891333333334

第3節 実 験3

3.1方

3.1。1参 加 者 3.1.2実 験 環 境 3.1.3実 験 課 題

3ユ.4手 続 き

3.1.5従 属 変 数 と 分 析

3.2結 3.3考

333344457444444444

(8)

第4節 実 験4

4.1方

4.1.1参 加 者

4ユ.2実 験 環 境

4.1.3実 験 課 題

4.1.4手 続 き

4.1.5従 属 変 数 と 分 析

4.2結

4.3考

第5節 実 験5

5。1方

5.1.1参 加 者

5.1.2実 験 環 境

5。1.3実 験 課 題

5ユ.4手 続 き

5.1.5従 属 変 数 と 分 析

5.2結

5.3考

第3章 総 合 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ …0・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …

引 用 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … ◎ ● ● ●

5・5・5・53555656565659

(9)

緒言

本 研 究 で は 歩 行 中 の 正 確 な 状 況 判 断 を 可 能 に す る 感 覚 情 報 と し て 、 動 的 視 覚 情 報 で あ る オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー(Opticalflow)の 有 益 性 に着 目 し た 。狭 い 隙 間 を 通 り抜 け る 場 面 を 実 験 的 に 作 り 出 し た う え で 、 遠 方 に て 獲 得 し た オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー が 隙 間 を 安 全 に 通 り抜 け る こ と や 、 接触 が 起 こる か ど うか を判 断す る こ とに寄

与 す る か を 検 討 し た 。

歩 行 中 に 前 方 の 障 害 物 を 安 全 に 避 け る た め に は 、 環 境 の 知 覚 、 お よ び 環 境 に 対 す る 身 体 の 運 動 学 的 な 変 量 を 検 知 す る た め の 視 覚 情 報 が 重 要 と な る 。 遠 方 か ら視 覚 情 報 を 得 る こ と は 前 方 の 障 害 物 と 自 分 自 身 と の 空 間 関 係 の 知 覚 を 可 能 に さ せ 、 前 も っ て 歩 行 軌 道 を 修 正 す る こ と や 歩 幅 を 調 整 す る こ と に 寄 与 す る 。 と こ ろ が 先 行 研 究 に よ れ ば 、 身 体 幅 よ り も 大 き い モ ノ(例 え ば 車 椅 子 利 用 や 横 長 の 棒)と も に 遠 方 に あ る 隙 間 を 通 り 抜 け られ る か ど う か を 視 覚 的 に 判 断 す る 場 合 、 た と え 若 齢 健 常 者 で あ っ て も 身 体(+モ ノ)と 障 害 物 の 空 間 関 係 の 知 覚 は 不 正 確 で あ る と 報 告 さ れ て い る(Higuchieta1.,2004,2009;・ ・r&Taylor,2005)。 ま り 、 こ の よ う な 知 覚 判 断 の も と 障 害 物 回 避 動 作 を 行 っ た 場 合 、 障 害 物 と 接 触 し て し ま う こ と が 示 さ れ て い る 。 さ ら に 、 車 椅 子 利 用 時 に 必 要 な 隙 問 幅 の 知 覚 判 断 場 面 で は 、2週 間 に わ た り車 椅 子 を 用 い て 隙 間 を 通 過 す る 経 験 を し た 後 で も 、 正 確 な 判 断 が で き な か っ た と 報 告 さ れ て い る(Higuchieta1.,2004)。 こ の よ う な 身 体 と 障 害 物 に 対 す る 空 間 関 係 の 不 一 致 を 短 期 間 で 正 確 に 向 上 さ せ る た め の 有 益 な 方 略 は 何 か と い う こ と が 、 現 在 盛 ん に 議 論 さ れ て い る(Franchaketal.,ii;

Yasudaetal.,inpress)o

本 研 究 で は 身 体 幅 よ り も広 い モ ノ を 持 っ た 際 の 不 正 確 な 知 覚 判 断 を 改 善 し う る 知 覚 情 報 と して オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー 有 用 性 に 着 目 し た 。オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー とは 、 前 進 移 動 時 に 網 膜 上 に 生 じ る 光 学 的 な 変 化 の パ タ ー ン と 定 義 さ れ て い る(Ca‑ibson,

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1966)。 オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 知 覚 が 環 境 物 と の 到 達 時 間 や 位 置 関 係 を 計 算 す る こ と に 利 用 さ れ て い る こ と が 、 バ ー チ ャ ル リ ア リテ ィ を 用 い た 研 究 に て わ か っ て い る(Warrenetal.,2001;Fajenetal.,2011)。 ま た 、Mohagheghietal.(2004) は 障 害 物 の ま た ぎ 動 作 課 題 に て 、5m程 度 の 遠 方 か ら最 初 の2,3歩 の 間 に 障 害 物 を 観 察 す る だ け で お よ そ の 位 置 や 高 さ を 把 握 す る こ と が 可 能 とな り 、 そ の 後 の 目 隠 し で の 障 害 物 回 避 の 成 功 率 は 目 隠 し し な い 場 合 と遜 色 な か っ た と報 告 し て い る 。

さ ら に 、Patla&Greig(2006)は 障 害 物 を 目隠 し で ま た ぐ 場 面 に て 、 先 行 す る 観 察 段 階 に て オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 有 無 を 操 作 して 、 そ の 有 用 性 に つ い て 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 遠 方 で オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー を 知 覚 して 視 覚 遮 断 後 も 立 ち 止 ま らな け れ ば 、 目隠 し状 態 で の 障 害 物 ま た ぎ 動 作 の 成 功 率 が 高 く な る と 報 告 し て い る 。 こ の よ う に 遠 方 か ら歩 行 に て オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー を 知 覚 し な が ら障 害 物 を 観 察 す る こ と は 、 安 全 に 障 害 物 を 回 避 す る う え で 重 要 な 情 報 と な っ て い る こ とが 明 らか と な っ て い る 。 し か し 、 障 害 物 回 避 の た め の 知 覚 判 断 へ の 影 響 は 十 分 検 討 さ れ て い な い 。 そ こ で 本 研 究 で は オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー を 知 覚 しな が ら障 害 物 を 観 察 す る こ と が 、 狭 い 隙 間 通 過 と い う 障 害 物 回 避 を 安 全 に 行 う た め の 知 覚 判 断(隙 間 が 身 体 を 回 さ ず 通 れ る か 否 か)に お い て も 有 益 で あ る か を 検 討 し た 。

(11)

第1章 本研 究 の理論的背 景お よび方法論 的背景

本 章 で は 理 論 的 背 景 と し て 、 ま ず 安 全 な 障 害 物 回 避 の た め に 必 要 な 遠 方 か ら の 視 覚 情 報 の 役 割 に つ い て 触 れ る 。 次 に 、 遠 方 か らの 視 覚 情 報 に 基 づ く知 覚 判 断 と し て 、 身 体 幅 よ り も 大 き い モ ノ と と も に 隙 間 を 通 り抜 け よ う とす る 場 合 、 通 過 に 必 要 な 幅 を 小 さ く見 積 も っ て し ま う 過 小 評 価 傾 向 に つ い て 述 べ る 。 こ の 過 小 評 価 傾 向 を 改 善 す る た め の 方 法 と し て 歩 行 中 の オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー に 着 目 した た め 、 オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 定 義 と そ の 役 割 に つ い て 説 明 す る 。 さ ら に 、 歩 行 中 の 遠 方 か ら の オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー が 障 害 物 回 避 動 作 に ど の よ う に 寄 与 して い る か に つ い て 述 べ る 。 な お 、 本 研 究 に お け る オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 操 作 方 法 は 、 障 害 物 の ま た ぎ 動 作 場 面 で オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 有 用 性 を 検 討 し たPatla&Greig(2006)

の 研 究 を ひ な 形 と して 設 定 し た 。そ こ で 方 法 論 的 背 景 と し てPatla&Greig(2006) の 研 究 手 法 と そ の 成 果 に つ い て 詳 し く 説 明 す る 。

第1節 歩行 中の障害物回避 にお ける視覚 の役割 と知覚判 断能 力

1.1障 害 物 回 避 に お け る 視 覚 の 役 割

歩行 中に前方 の障害物 を安全 に避 け るための主た る感覚情報は、視 覚 ・前庭 ・ 体 性 感 覚 で あ る 。 この 中で も特 に視 覚 系 は 、環 境 の 知 覚 、 お よび 環 境 に対 す る 身 体 の運動学的な変量 を検知す る とため、主 に遠方か らの歩行軌道 の修 正に影響 を

与えて いると考 え られて いる(政 二,1999)。

(12)

また、Euxham(2001)は 歩行 中の動 的バ ランスを維 持す るための制御機構 とし て、反応機構 ・予測機構 ・予期機構 とい う3つ のサ ブシステム を想 定 し、それぞ れサ ブ シス テムにおける感覚 情報 の役割 につ いて説 明 している。それ によれ ば反 応機構 とはバ ランス を崩 した とき、それ を もとに戻すため に駆動す る制御機構で ある。 この制御 には視覚 ・前庭 ・体性感覚 系の情報 全てが関わ るが、短潜時で姿 勢 を修正す るよ うな場面では、視覚情報 に基 づ く姿勢の修 正 には時間がかか りす ぎるため、他 の感 覚情報 に比べれ ば視覚情 報の寄与は比較的低 い。予測機構 とは 右足 を出そ うとした ときに先行 して左足 の活 動が高 まるといった、 四肢 の動 きな どに先立つ体 幹や反対側 の筋 の活動 である。体性感覚が主た る役割 を果 たす と考 え られてお り、 こ こで も視覚情報 が大 きな寄与 をす るわ けでは ない。視覚情報 が 重 要な役割 を果たすのは、3つ 目のサ ブシステムで ある予期機構 である。予期機 構では遠方 に見え る障害物 を回避 す るにあた り、前 もって歩行軌道や歩 幅を調 整 してお き、安全な障害物 回避 をサポー トす る。すなわ ち、遠方 の環 境情 報に対 す る視覚情報 をもとに身体 と対 象物 との相互 関係 を認識 し、あ らか じめ動作を修 正 す るのが予期機構 の主要 な役割 で ある。本研究 にお いて検 討するのは、隙間 をぶ っか らず に通過す る とい う障害物回避場面 にお いて 、遠方 の動的視 覚情報が予期 的制御 に どの程度有益 な情 報 を提示す るのか について 明 らかに しよ うとす るもの で ある。

1.2障 害物回避時の知覚判断能 力

前セク シ ョンで述べた ように、障害 物回避のため には視覚情報 に基づ く予期 的 な動作の プランニ ングが重要で ある と考え られ る。 しか し、先行研究 による と、

遠方の視覚情報 に基づ く知覚判 断能 力は身体幅 よ りも広 いモ ノ とともに隙間を通

(13)

過 す る と 仮 定 し た 場 合 、 通 過 に 必 要 な 幅 を 過 小 評 価 して し ま う こ と が 報 告 さ れ て い る 。 つ ま り 、 実 際 に は 通 る こ と が で き な い 隙 間 を 通 る こ とが で き る と 誤 っ た 判 断 を し て い る こ と が わ か っ て い る 。

Higuchietal.(2004)は た と え 若 齢 健 常 者 で あ っ て も 、初 め て 車 椅 子 を 使 用 し た 場 合 に は 、 接 触 な し に 通 過 で き る 幅 を 過 小 評 価 し て し ま う と報 告 し た 。 参 加 者 は 車 椅 子 に て 前 方 の 隙 間 を 通 過 す る と仮 定 し た 場 合 、 接 触 せ ず 通 過 で き る ギ リ ギ リ の 幅 を 正 確 に 判 断 す る こ と を 求 め られ た(図1‑1)。 この 主 観 的 な 最 小 通 過 幅 を 、 実 際 に 通 っ た 際 の 最 小 通 過 幅 で 除 す る こ と に よ っ て 割 り 出 さ れ た 相 対 的 通 過 可 能 幅 が 、1.0に 近 い ほ ど 判 断 が 正 確 で あ る と し た 。 実 験 の 結 果 、 相 対 値 の 平 均 値 は 1.0を 下 回 っ た(過 小 評 価 傾 向)。 つ ま り実 際 通 過 で き な い 幅 を 、 通 過 す る こ とが で き る と誤 っ た 認 識 を し て い た こ と が わ か っ た 。 さ ら に 、4週 間 以 内 に8日 間 、 車 椅 子 に お け る 通 過 可 否 判 断 の 練 習 を 行 っ て も 、 依 然 と し て 知 覚 判 断 能 力 は 過 小 評 価 傾 向 に 変 化 は な か っ た と報 告 し て い る 。

図1‑1車 椅子で の知覚判断課題 の様子

(14)

Waltman&Taylor(2005)は 若 齢 健 常 者 に 対 して 、 横 長 のT字 バ ー を 把 持 し た 状 態 で の 隙 間 通 過 時 の 判 断 に お い て 過 小 評 価 に つ い て 報 告 し て い る 。 実 験 の 目 的 は 隙 間 の3.5m遠 方 か ら 、右 手 にT型 の 長 い バ ー(50cmか ら140cmの 問 でIOcm 刻 み)を 持 っ て 通 り抜 け られ る ス ペ ー ス を 正 確 に 判 断 で き る か を 検 討 す る こ と で あ っ た 。 実 験 条 件 は2条 件 設 定 し、 バ ー を 直 接 見 る こ と な くバ ー を 振 り動 か す こ と で 判 断 す る 条 件(haptic条 件)、 そ して バ ー を 目 の 前 に 置 き バ ー に 触 れ る こ と な く 視 覚 的 に 判 断 す る 条 件(vision条 件)と し た(図1‑2)。 課 題 は 前 方 に お か れ た 幅 ・iの カ ー テ ン の 隙 間 が 、 身 体 を 回 さ ず に バ ー と と も に 通 り抜 け ら れ る か

ど う か をyes/noで 答 え る も の で あ っ た 。 実 験 の 結 果 、yes/登o判 断 の 割 合50%に お い て 、 隙 間 サ イ ズ を バ ー の 長 さ で 除 し た 相 対 値 はhaptic条 件 で0.89、vision 条 件 で0.95と な り 、 ど ち ら の 条 件 も過 小 評 価 傾 向 と な る こ と(す な わ ち 、実 際 に

は 通 過 で き な い 幅 を 通 れ る と 判 断 して し ま う こ と)が わ か っ た 。

(a) (b)

△無 擁

図1‑2横 長 の バ ー で の 知 覚 判 断 課 題(a)haptic条 件(b)vision条

先行研究 の示 した"身 体+モ ノ"で 隙 間を通 り抜 けよ うとした際の過小評価 傾 向は 、遠方 か ら拡張 した身体 幅 と隙間 の空 間関係 を正 しく認 識できて いな い可能

(15)

性 を 示 唆 して い る 。 さ ら に 、 こ の 知 覚 判 断 能 力 低 下 は 加 齢(Robinovitchetal., 1999)や パ ー キ ン ソ ン病(Cowieetal.,2010)に よ っ て 引 き 起 こ さ れ る こ と が 指

摘 さ れ て い る 。 こ れ ら の こ と を 考 慮 す る と 、 高 齢 者 や パ ー キ ン ソ ン 病 者 な ど の リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 対 象 者 が 車 椅 子 や 歩 行 器 な ど 身 体 幅 よ り も 大 き い モ ノ を 使 用 し た 場 合 、"身 体+モ ノ"を 過 小 評 価 す る 可 能 性 が 高 い 。 さ ら に 、車 椅 子 や 歩 行 器 を 使 用 し て い る 場 合 、 身 体 を 回 旋 して の 障 害 物 回 避 が 困 難 で あ る た め 、 障 害 物 と の 接 触 や 転 倒 を 引 き 起 こ し て し ま う可 能 性 が 高 い こ と が 考 え られ る 。 本 研 究 で 得 ら れ る 成 果 は こ う し た 対 象 の 問 題 改 善 を 考 え る 上 で も 有 用 で あ る と考 え る 。

1.3オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 定 義 と そ の 特 性

歩 行 中 に 得 られ る 動 的 視 覚 情 報 と し て 中 心 的 役 割 を 果 た して い る の は 、 オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー(OpticalFlow)の 情 報 で あ る 。 オ プ テ ィ カ ル フ ロー と は 、 前 進 移 動 時 に網 膜 上 に 生 じ る光 学 的 な 変 化 の パ タ ー ン と定 義 さ れ て い る(!・,1966)。

こ の オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー が 姿 勢 制 御 や 運 動 制 御 に 寄 与 す る こ と を 示 し た 研 究 は 数

多 く 報 告 さ れ て い る 。 例 え ばLee&Fishman(1975)は 天 井 か ら 吊 る さ れ た 部 屋(い わ ゆ る ス ウ ィ ン ギ ン グ ル ー ム)の 壁 を 移 動 さ せ る こ とで 環 境 の 変 化 に お け る 姿 勢 反 応 の 影 響 を み て い る 。 壁 が 身 体 に 接 近 す る と 前 に 倒 れ る と き と 同 じ オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー が 起 こ り 、 身 体 が 後 ろ に 倒 れ る 姿 勢 制 御 が み られ る 。 一 方 、 壁 が 後 退 す る と そ の 逆 の 現 象 が 起 こ っ た と 述 べ て い る 。 っ ま り網 膜 上 に 起 こ っ た オ プ

テ ィ カ ル フ ロ ー に 合 わ せ て 姿 勢 制 御 が 行 わ れ て い た こ と が わ か っ た 。

図1‑3は 、 移 動 行 動 中 の オ プ テ ィ カ ル フ ロー の 流 れ を 模 式 化 し た も の で あ る 。 例 え ば 図 の 中 央 部 に 対 し て 直 進 し て い る 場 合 、 こ の 申 央 部 分 を 起 点 と し て オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー が 拡 散 方 向 に 広 が っ て い る 。 ま た オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー は 、 自 分 に 近

(16)

け れ ば 近 い ほ ど速 度 が 速 い 。 移 動 速 度 が 速 い 場 合 は 、 速 度 に 応 じ て 早 く な り、 回 転 な どで 向 き を 変 え る と 、 向 い た 方 向 と は 反 対 方 向 に オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー が 起 こ る 。 こ の よ う な オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の パ タ ー ン は 、 歩 行 中 で あ れ 乗 り物 の 乗 車 中 で あ れ 、 移 動 行 動 に お い て 共 通 して い る こ と か ら、 脳 は こ の オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 情 報 を 積 極 的 に 利 用 して 、 自分 自 身 の 移 動 速 度 や 進 行 方 向 に つ い て の 情 報 を 獲 得 し て い る 。

Warrenetal.(li)は 人 が 歩 行 中 に オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 起 点 の 位 置 を 知 覚 し て 進 行 方 向 を 知 覚 し 、 歩 行 の 調 整 を 行 っ て い る こ と を 、 バ ー チ ャ ル リア リテ ィ を 用 い た 実 験 に よ り明 らか に し た 。 参 加 者 は 実 験 課 題 と し て バ ー チ ャ ル 空 間 の 画 面 を 見 な が ら 直 進 す る よ う 求 め られ た 。 そ の 中 で 、 画 面 中 央 に 示 さ れ た 赤 い タ ー ゲ ッ ト ラ イ ン と 背 景 の 有 無 と の 関 係 性 に つ い て 検 討 し た 。 背 景 が な く オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー が 起 こ ら な い 状 態 で は 、 あ らか じ め 真 っ 直 ぐ進 む よ う 教 示 し て い て も 、 画 面 中 央 に 記 さ れ た 赤 い 縦 の タ ー ゲ ッ トラ イ ン に つ られ て 大 き く 歩 行 軌 道 が カ ー ブ を 描 い て し ま っ た 。 し か し 、 背 景 を つ け て オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 情 報 を 付 与 す る と 、 途 中 で 歩 行 を 真 っ 直 ぐ の 方 向 に 軌 道 修 正 す る こ と が で き た 。 つ ま り こ の 結 果 よ り 、 オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 情 報 に よ り進 行 方 向 を 知 覚 して い た こ と が わ か っ

た 。

覚 建

一 ゑ弐 ジ

図1‑3オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 模 式 図 。地 平 線 上 の1点 を 中 心 と し て 拡 散 す る 。

(17)

1.4障 害 物 知 覚 に 対 す る オ プ テ ィ カ ル フ ロ0の 有 用 性

歩 行 の 障 害 物 回 避 行 動 に 関 す る 先 行 知 見 、 特 に 段 差 の ま た ぎ 動 作 に 関 す る 先 行 知 見 の 中 に は 、 障 害 物 に 対 す る 視 覚 情 報 処 理 は 障 害 物 に 到 達 す る 手 前 の 時 点(例 え ば 数 歩 手 前)に は 終 了 し て い る こ と 、 す な わ ち 、 遠 方 に お け る オ プ テ ィ カ ル フ

ロ ー の 知 覚 が 障 害 物 の 知 覚 に 有 益 で あ る こ と を 示 し て い る 。Patla&Vickaers (1997)は 若 齢 健 常 者8名 に 対 し 、 歩 行 開 始 か ら4‑6m先 の 障 害 物 を 接 触 せ ず に 跨 ぐ こ と を 求 め 、 そ の 際 に 歩 行 中 に 視 線 が ど こ に 留 ま っ て い る か に つ い て 分 析 し た 。 そ の 結 果 、 歩 行 中 に 障 害 物 に 対 し て 視 線 を 向 け る タ イ ミ ン グ は 障 害 物 を 回 避 す る2歩 前 ま で で あ り、 障 害 物 を 跨 ぐ直 前(1歩 手 前)か ら は 障 害 物 に 視 線 を 向 け て い な い こ と が わ か っ た 。 こ の 結 果 か ら 、4‑6mの 遠 方 か ら 障 害 物 に 到 達 す る2 歩 手 前 ま で の わ ず か な 時 間 の 観 察 に よ っ て 、 障 害 物 を 安 全 に 回 避 す る た め の 方 略 を 立 て る こ とで 、 実 際 の ま た ぎ 動 作 は 無 理 な く安 全 に 実 施 可 能 と な る と 考 え られ る 。

さ ら に 、 障 害 物 に ア プ ロ ー チ して い る 際(す な わ ち 障 害 物 が ま だ 前 方 に あ る 時 点 で は)、 単 に 障 害 物 の 特 性 を 視 覚 的 に 処 理 し て い る だ け で な く 、そ の 視 覚 情 報 を 基 に 歩 行 中 の 動 作 修 正 が す で に 始 ま っ て い る 場 合 が あ る(MOfaesetal.,2004)。

Nloraesetal.は 若 齢 健 常 者12名 を ラ ン ダ ム に2グ ル ー プ に 分 け 、 通 路 に あ る 長

方 形 の 穴(40cm×20cm、 縦 方 向 ま た は 横 方 向 の い ず れ か に 配 置)を 前 後 ま た は 左 右 に 避 け る 課 題 を 設 定 し た 。 そ の 結 果 、 穴 を 回 避 す る1歩 手 前 の 接 地 場 所 を 規 定 し な い 場 合 、2β 歩 前 か ら徐 々 に 歩 幅 を 伸 ば す こ と で 、 穴 と で き る だ け 近 い 位 置 か ら ま た ぎ 動 作 を行 う こ と が わ か っ た(図1‑4)。 す な わ ち 、 数 歩 手 前 か ら 障 害 物 回 避 の た め の 動 作 修 正 を 始 め る こ と で よ り前 進 を 妨 げ ず 、 さ ら に 安 定 し た 着 地 に な る よ う 予 期 的 に 調 整 し て い る こ とが わ か る 。

(18)

こ う し た 予 期 的 な 動 作 修 正 の た め に 、 遠 方 で 得 られ る オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー が 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 。Mohagheghieta1.(2004)は10名 の 若 齢 健 常 者 に 対 し て 、7歩 手 前 か ら5歩 手 前 ま で 歩 き な が ら障 害 物 を 観 察 し 、 そ の 後 視 覚 遮 断 し て 障 害 物 を ま た ぐ動 作 を 視 覚 遮 断 な し の 歩 行 と 比 較 し て い る 。 そ の 結 果 、4歩 前 か ら の 視 覚 遮 断 に よ り、 先 行 す る 足 に お い て ア プ ロ ー チ や 障 害 物 を 跨 ぐ 際 の 足 の 挙 が り方 が 大 き く な る 傾 向 が み られ た が 、 障 害 物 へ の 接 触 回 数 は 視 覚 遮 断 し な い 場 合 と差 が な か っ た と報 告 し て い る 。 つ ま り、5m程 度 の 遠 方 か ら最 初 の2,3 歩 の 観 察 に よ り、 お よ そ の 障 害 物 の 位 置 や 高 さ を 把 握 し 、 自 分 自 身 と の 相 対 的 な 空 間 関 係 を 知 覚 す る こ と で 、 障 害 物 回 避 が 成 功 で き た こ とが わ か っ た 。

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(b}・ へ!凄 ・.」㌔ 一 ㌦轡.重 一 → デ㍉{

図1‑4障 害 物 回 避 の 際 に 見 ら れ る 予 測 的 な 歩 幅 の 修 正(Moraesetal.,2004、

図 は 樋 口 ・森 岡,2008よ り転 載)。 通 常 の 歩 幅(a)を 維 持 す る と 着 地 位 置 が 歩 幅 に 一 致 し て し ま う 場 合 、 着 地 地 点 を 前 方 へ 修 正 す る(b)。

ま た そ の 修 正 は 、 障 害 物 を 回 避 す る 数 歩 前 か ら始 ま っ て い る 。

(19)

1.5障 害 物 ま た ぎ 動 作 に お け る オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 役 割:Patla&Gfeig(2006)

これ ま で 述 べ て き た よ う に 、遠 方 で 歩 き な が ら得 られ る オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー は 、

歩 行 中 の バ ラ ン ス 維 持 や 障 害 物 の 安 全 な 回 避 に 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る こ と が 明 らか とな っ て い る 。 し か し 、 障 害 物 回 避 の た め の 知 覚 判 断 へ の 影 響 は 十 分 検 討 さ れ て い な い 。 本 研 究 で は 、 オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー が 隙 間 通 過 の 際 の 知 覚 判 断 場 面 に お い て も有 益 で あ る か を 検 討 す る こ と を 目 的 と し て い る 。Patla&Greig(2006)

は 障 害 物 ま た ぎ 動 作 に お け る 遠 方 の オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 役 割 を 検 討 し 、 そ の 有 用 性 を 示 し た 。 本 研 究 の ひ な 型 と し て 、Patla&Greig(2006)の 研 究 デ ザ イ ン

を 採 用 し た た め 、 以 下 に そ の 詳 細 に つ い て 紹 介 す る 。

Patla&G‑reig(2006)の 研 究 で は 、12名 の 若 齢 健 常 者 の 参 加 者 が 液 晶 シ ャ ッ タ ー ゴ ー グ ル と い う視 覚 遮 断 の 有 無 を 操 作 で き る 眼 鏡(p19,図2‑3を 参 照)を か け 、 約1.5秒 の 障 害 物 観 察 後 、 目 隠 し 状 態 で5‑6歩 前 方 に 置 い た5種 類 の 高 さ の 障 害 物 を 歩 い て ま た ぐ 課 題 を 行 っ た(図1‑5a)。 目 隠 し歩 行 に 先 立 つ 遠 方 で の 観 察 条 件 を操 作 す る こ と で 、 オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 有 用 性 を 検 討 し た 。

実 験1で は 、 前 進 移 動 に 伴 う オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー が 障 害 物 回 避 に 有 用 で あ り 、 障 害 物 と の 接 触 率 を 低 下 さ せ る と い う仮 説 の 妥 当 性 を 検 証 し た 。独 立 変 数 と して 、 障 害 物 観 察 中 の オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 有 無 を 操 作 し た 。 具 体 的 に は 、 観 察 条 件 と し て 静 止 条 件(す な わ ち 隙 間 に 対 す る オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー は 得 ら れ な い)、3歩 進 し て 立 ち 止 ま る 条 件(前 進 方 向 の オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー が 利 用 で き る)、3歩 後 退 して 立 ち 止 ま る 条 件(後 進 方 向 の オ プ テ ィ カ ル フ ロー が 利 用 で き る)、 お よ び 視 覚 制 限 の な い フ ル ビ ジ ョ ン 条 件 の4条 件 を 設 定 し た 。 結 果 は 仮 説 を 支 持 せ ず 、 前 進 方 向 の オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー が 得 ら れ る3歩 前 進 条 件 で あ っ て も 、 障 害 物 の 接 触 率 が50%程 度 と な り、そ の 接 触 率 は 視 覚 情 報 が 制 限 さ れ る 他 の2条 件(す な わ ち 静 止 条 件 と3歩 後 進 条 件)と 有 意 差 は み ら れ な か っ た 。

(20)

実 験1に お い て 前 進 移 動 条 件 の 接 触 率 が 改 善 さ れ な か っ た 理 由 と して 彼 らは 、 前 進 移 動 中 の オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 有 用 性 は 、 途 中 で 立 ち 止 ま っ て し ま う と キ ャ ンセ ル さ れ て し ま う の で は な い か と 推 察 し た 。 そ こで 実 験2で は 、3歩 前 進 し な が ら 観 察 し て 一 旦 立 ち 止 ま る 条 件(visionduringforwardwalkingforthree

stepsandstopping:FW)と 、3歩 前 進 しな が ら 観 察 し て 立 ち 止 ま ら な い 条 件 (visionduringforwardwalkingforthreestepsandnotstopping:FW‑NS)を

比 較 し 、 こ の 推 察 が 正 し い か ど う か を 検 討 し た 。 そ の 結 果 、3歩 前 進 し な が ら 障 害 物 を 観 察 し 、そ の ま ま 立 ち 止 ま ら ず 歩 く 条 件(FW‑NS)で 障 害 物 へ の 接 触 率 が 30%に ま で 改 善 し 、3歩 前 進 し て 一 旦 立 ち 止 ま る 条 件(FW)よ り有 意 に 接 触 率 が 低 下 し た と 報 告 し て い る(図1‑5b)。 以 上 の 結 果 か ら 、 彼 らの 推 察 通 り 、 視 覚 が 遮 断 さ れ た 状 態 で 障 害 物 を ま た ぐ場 面 に お い て 、 遠 方 に て オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー を 知 覚 し 、 な お か つ 立 ち 止 ま らず に 障 害 物 に ア プ ロ ー チ で き る 場 合 、 そ の 情 報 は 安 全 な 障 害 物 回 避 に 有 用 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。

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3歩 前 進 一ems(FW}障 害 物Fwrw・NS

ま た は ノン ス トップ(FW‑NS)観 察 条 件

図1‑5(a)Patla&Greig(2006)に お け る 実 験 課 題(実 験2)。 目 隠 し で の 障 害 物 ま た ぎ 動 作 に 対 し 、 先 行 す る 観 察 条 件 を3歩 前 進 して 一 旦 立 ち 止 ま る 条 件(FW)と3歩 前 進 し て 立 ち 止 ま らな い 条 件(FW‑NS)を 設 定

し 比 較 した 。(b)実 験2に お け る 各 観 察 条 件 で の 障 害 物 と の 接 触 率 。

(21)

1.6本 研 究 の ね ら い と 仮 説

本 研 究 で はHiguchietal.(2004)やWagman&Taylor(2005)が 明 らか に し た 、"身 体+モ ノ"で 隙 間 を 通 り抜 け よ う と し た 際 の 知 覚 判 断 の 過 小 評 価 傾 向 に 対 し て 、 歩 行 中 に 得 られ る オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー が 有 用 で あ る か ど う か を 検 討 す る こ と を 目 的 と し た 。 本 研 究 に お け る 事 前 確 認 と し て 、 こ れ ま で 障 害 物 回 避 場 面 と し て は 段 差 の ま た ぎ 動 作 場 面 で の み 確 認 さ れ て き た オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー の 効 果 が 、 隙 間 通 過 場 面 に も 有 効 で あ る か を 確 認 した(実 験1)。 そ の う え で 、 遠 方 か ら 瞬 時 に 正 し い 知 覚 判 断(隙 間 を 通 る こ と が で き る か 否 か)を 導 く知 覚 情 報 と し て 、 オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー が 有 用 で あ る か ど う か を 検 討 す る こ と と し た(実 験2輿 験5)。

仮 説 はPatla&Greig(2006)の 研 究 に お い て 有 益 性 が 示 さ れ た 、 オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー を 知 覚 し て 立 ち 止 ま ら な い 条 件 が 、 実 際 の 隙 間 通 過 場 面 に お い て も 有 用 で あ り、 な お か つ 知 覚 判 断 課 題 の 過 小 評 価 の 改 善 に 寄 与 す る と し た 。

(22)

第2章 実 験 と考 察

第1節 実 験1

実 験1で は 、 遠 方 に お け る 歩 行 中 の 動 的 視 覚 情 報(オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー を 知 覚 して 立 ち 止 ま ら な い こ と)が 、 実 際 の 隙 間 通 過 行 動 に お い て も 有 用 で あ る か に つ い て 検 討 す る こ と を 目 的 と し た 。 歩 行 移 動 に 伴 う オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー を 操 作 す る た め の 隙 間 観 察 条 件 は4つ あ り、① 静 的 視 覚 条 件(オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー な し)、 ② 動 的 視 覚 阻 害 条 件(オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー を 知 覚 で き る が 立 ち 止 ま る こ と で 阻 害 さ れ る)、③ 動 的 視 覚 ノ ン ス ト ッ プ 条 件(オ プ テ ィ カ ル フ ロー を 知 覚 し て 立 ち 止 ま ら な い)、 ④ フ ル ビ ジ ョ ン 条 件(視 覚 遮 断 な し)と し た(図2‑1)。

図2‑14つ の 観 察 条 件 。 隙 間 の 観 察 は 、 条 件 ① で は3m位 置 で 静 止 に て 、 条 件 ② 、 ③ で は4m位 置 か ら3m位 置 ま で2歩 前 進 し な が ら行 う 。2 歩 前 進 後 、 条 件 ② で は3mラ イ ン で 静 止 し 、 条 件 ③ で は 歩 行 を 継 続 す る 。 ④ で は 視 覚 遮 断 な し で 行 う。 な お 、 観 察 時 間 は す べ て の 条 件

に お い て1.5秒 に 統 一 。

(23)

こ こ で 、 ② と③ の オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー を 知 覚 で き る 条 件 が 、 そ れ ぞ れPatla&

Greig(2006)に お け る3歩 前 進 し て 一 旦 停 止 す る 条 件(FW)と 、3歩 前 進 し て 立 ち 止 ま ら な い 条 件(FW‑STS)に 対 応 し て い る(第1章 セ ク シ ョ ン1.5参 照)。

静 的 視 覚 条 件 で は3mの 位 置 で 止 ま っ て 隙 間 を 観 察 し、 そ の 後 に 目隠 しで ドア を 通 過 し た 。 動 的 視 覚 阻 害 、 お よ び 動 的 視 覚 ノ ン ス ト ッ プ 条 件 で は 、 そ れ ぞ れ4m の 位 置 か らlm歩 き な が ら ド ア の 隙 間 を 観 察 し た 後 、 一 旦 立 ち 止 ま る 条 件 、 ま た は そ の ま ま 立 ち 止 ま らず に 歩 く 条 件 と し た 。 フ ル ビ ジ ョ ン 条 件 で は ド ア か ら3m の 位 置 に て 観 察 し 、 目隠 しな し で 隙 間 の 通 過 を 行 っ た 。

Patla&..i(2006)と 同 様 、 前 進 移 動 に よ り オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー を知 覚 し て 、 な お か つ そ の 直 後 に立 ち 止 ま らな い こ と が 重 要 で あ る の な ら、 ド ア と の 接 触 回 数 や 体 幹 回 旋 動 作 の 各 指 標 に お い て 、 動 的 視 覚 ノ ン ス ト ッ プ 条 件 の 成 績 が 静 的 視 覚 お よ び 動 的 視 覚 阻 害 の2条 件 よ り も 良 く 、 な お か つ 視 覚 制 限 の な い フ ル ビ ジ

ョ ン条 件 と 比 べ て も遜 色 な い と 予 測 さ れ る 。

1。1方

1.1.1実 験 参 加 者

若 齢 健 常 者12名(女 性1名 、平 均27.7±3.2歳)が 参 加 し た 。平 均 身 長174.96.5cm、

身 体 の 最 大 幅 平 均49.3士3.4cm。 裸 眼 ま た は 矯 正 視 力 に て 視 力 の 平 均 は 右1.0土0.2、

左1.10.2で あ っ た 。 各 参 加 者 か ら 実 験 内 容 の 同 意 と 実 験 参 加 の 承 諾 を 得 た 。 ま た 本 研 究 の 手 続 き は 、首 都 大 学 東 京 倫 理 委 員 会 に よ り審 査 を 受 け 、承 認 さ れ た(承 認 番 号24°12)。

(24)

1.1.2実 験 環 境

本 実 験 は 、670cm×590cmの 部 屋 に 約6mの 歩 行 通 路 及 び 隙 間 を 設 置 して 行 っ た (図2‑2)。 参 加 者 が 通 過 す る 隙 間 は 、地 上 か ら2mの 位 置 に60.5cm×175.5cmの 黒 い 塩 ビ 板 を2枚 設 置 し て 作 成 し た 。個 々 の 塩 ビ 板 は モ ー タ 駆 動 に よ り移 動 で き 、 そ の 位 置 を パ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ ー タ に よ り制 御 し た 。 部 屋 の 壁 の 一 部 や ドア の 下 に 暗 幕 を 張 る こ と で 、 壁 の 模 様 な ど か ら通 過 幅 に 関 す る 情 報 を 得 られ な い よ う 配 慮 し た 。

ヵメラ9く 》

カメラ8び

カメラ7々

や ・

0カ メラ1

光 学 セ ンサ ー

(ドア 開) 力メラ2

光 学 セ ンサ ー

(シャッター ゴ ー グ ル 閉)

カメラ,

カメラ4

図2・2実 験 室 環 境

(25)

視 覚 の 遮 蔽 に は 液 晶 シ ャ ッ タ ー ゴ ー グ ル(TranslucentTechnologies,Canada)

を 使 用 し た(図2‑3)。 ゴ ー グ ル 周 辺 に 緩 衝 材 を 張 り付 け る こ と で 、 ゴ ー グ ル 装 着 時 に で き る わ ず か な 隙 間 か ら見 え る 視 覚 情 報 を 利 用 で き る こ と を 妨 げ た 。 ゴ ー グ ル の レ ン ズ は 遠 隔 で の ボ タ ン 操 作 ま た は 、 ドア 手 前3m地 点 に 置 い た 光 電 セ ン サ ー 位 置 を 参 加 者 が 通 過 す る こ と に よ り、 透 明 ・不 透 明 が 切 り替 わ っ た 。 実 験 中 に

参 加 者 が 把 持 す る 平 行 棒 は 塩 ビパ イ プ 製 で あ り 、長 さ ・i、 直 径2.2cmで あ っ た(図2‑4b)。 平 行 棒 の 両 端 に 取 手 が つ い て お り、 参 加 者 は 取 手 を 握 り、 平 行 棒 を 腹 部 に 軽 く 接 触 さ せ る 方 式 に て 平 行 棒 を 把 持 し た(図2‑4a)。 平 均 身 体 幅 45.2cmに 対 して 、 平 行 棒 は 約1.5倍(1.3‑1.6倍)の 身 体 幅 の 拡 張 とな っ た 。 実 験 課 題 申 の 歩 行 速 度 を 参 加 者 間 で 一 定 と す る た め 、 メ ト ロ ノ ー ム を 使 用 し た

(SQ‑7r、SEIKO社 製)。

歩 行 の3次 元 動 作 解 析 の た め 、9台 の カ メ ラ(OQUS300、QualisysSweden社

製)を 用 い た(図2‑2)。 動 作 解 析 用 の 反 射 マ ー カ ー(直 径1.9cm)を 、 参 加 者 に 5か 所(両 肩 峰 に 各1個 ず つ 、 第7胸 椎 に1個 、両 側 の 踵 に 各1個 ず つ)、 平 行 棒 の 両 端 に 各1個 、お よ び 隙 間 を 作 る 左 右 の ドア に 各1個 の 計9個 の マ ー カ ー を 装 着 し た 。 動 作 解 析 の サ ン プ リ ン グ 周 波 数 は120Hzで あ っ た 。

(26)

(b)

(a)

(c)

図2・3視 覚 遮 断 の た め の 液 晶 シ ャ ッ タ ー ゴ ー グ ル 装 置 。(a)液 晶 シ ャ ッ タ ー ゴ ー グ ル 装 置(b)ゴ ー グ ル 開(c)ゴ ー グ ル 閉

(a)

(b)

66cm

図2・4実 験 課 題 に 使 用 す る 平 行 棒 と 課 題 中 の 姿 勢 。(a)課 題 中 の 姿 勢(b)両 端 に取 手 が っ い た 幅66cmの 平 行 棒

(27)

1.1.3実 験 課 題:隙 間 通 過 課 題

参 加 者 は 歩 行 中 の 視 覚 情 報 を 遮 断 す る た め の 液 晶 シ ャ ッ タ ー ゴ ー グ ル を 装 着 し 、 66cmの 棒 を 謄 の 位 置 で 持 っ た 状 態 で ドア 手 前 の 所 定 の 位 置 に 立 っ た(図2‑4a)。

参 加 者 の 課 題 は 一 定 時 間 の み 観 察 を し た 隙 間 幅 に 対 し て ア プ ロ ー チ し 、 接 触 を せ ず に 隙 問 を 通 過 す る こ と で あ っ た 。 実 験 実 施 前 に 観 察 した 隙 間 幅 が 体 幹 を 回 す 必 要 が あ れ ば 体 幹 を 回 して 通 過 し 、 回 す 必 要 が な け れ ば ま っ す ぐ に 通 過 す る よ う 教 示 し た 。

隙 間 幅 は 棒 の 幅 の0.8,1.0,1.2,1.4倍 の4条 件 で あ っ た 。 こ の う ち 、0.8,1.0倍 条 件 で は 必 ず 体 幹 を 回 し て 通 過 す る 必 要 が あ り、1.2,1.4倍 条 件 で は 体 幹 の 回 旋 を 必 要 と し な くて も 良 い 条 件 で あ っ た 。 観 察 条 件 は4条 件(図2‑1)で あ り 、①3mラ イ ン に て 静 止 立 位 で1.5秒 観 察 す る 条 件(静 的 視 覚 条 件)、 ②2歩 前 進 後 に3mラ イ ン で 視 覚 遮 断 し、 一 旦 停 止 す る 条 件(動 的 阻 害 視 覚 条 件)、 ③2歩 前 進 後 に3m ラ イ ン で 視 覚 遮 断 し 、 そ の ま ま 停 止 せ ず 通 過 す る 条 件(動 的 視 覚 ノ ン ス トッ プ 条 件)、 そ し て ④ 通 過 ま で 一 切 視 覚 制 限 の な い 、 フ ル ビ ジ ョ ン 条 件 と し た 。

1.1.4手 続 き

各参加者が4つ の観察条件 の全て を実施 した。各参加者が実施す る観察条件 の順序 にお いて、 フル ビジ ョン条件 につ いては全員最後 に実施 した。 これは フル ビジ ョン条件 にお いて視覚 あ りの状態 で隙間 を通過す る経験が、残 りの3条 件の パ フ ォー マ ン ス に影 響 す る こ とを避 け る た め で あ る 。 そ れ 以 外 の3条 件 の 実 施順 序 については 、参加者 間で カウ ンターバ ランス を取 った。

各観察条件 にお ける隙間幅観察 の手続 きは以下の通 りである。静的視覚 条件で

(28)

は 、 参 加 者 は 観 察 位 置 で あ る3mラ イ ン に 立 ち な が ら、 シ ャ ッ タ ー ゴ ー グ ル が 開 く1.5秒 間 の 間 に 隙 間 を観 察 し た 。1.5秒 の 観 察 後 、シ ャ ッ タ ー ゴ ー グ ル が 閉 じ る た め 、 参 加 者 は そ の 直 後 に 視 覚 を 利 用 で き な い 状 況 下 で 隙 間 に ア プ ロ ー チ し 、 接 触 し な い よ う に 通 過 し た 。 動 的 視 覚 阻 害 条 件 で は 、 参 加 者 は 観 察 終 了 位 置 で あ る 3mの2歩 手 前 の 位 置 に 立 っ た(ド ア 手 前 約4m)。 参 加 者 は シ ャ ッ タ ー ゴ ー グ ル が 開 く と 同 時 に 、2歩 前 進 し て 歩 行 を 停 止 し た 。 な お 、 隙 間 幅 の 観 察 時 間 が 静 的 視 覚 条 件 と 同 じ約1.5秒 と な る よ う に 、2歩 の 歩 行 速 度 に つ い て 、 実 験 実 施 前 に あ らか じめ 聞 い て い た メ ト ロ ノ ー ム の リ ズ ム(:i・/min)に 合 わ せ る よ う 教 示 し た 。2歩 前 進 し た 直 後 、光 電 セ ンサ ー に よ り シ ャ ッ タ ー ゴ ー グ ル が 閉 じ る た め 、 参 加 者 は 約1秒 間 停 止 した 直 後 に 歩 い て 隙 間 通 過 し た 。 動 的 視 覚 ノ ン ス トッ プ 条 件 の 手 続 き は 動 的 視 覚 条 件 と ほ ぼ 同 様 で あ る が 、2歩 前 進 直 後 に シ ャ ッ タ ー ゴ ー グ ル が 閉 じ た あ と も 、 立 ち 止 ま らず に 隙 間 を 通 過 す る 点 が 異 な っ て い た 。 フ ル ビ ジ ョ ン 条 件 の 手 続 き は 静 的 視 覚 条 件 と ほ ぼ 同 様 で あ る が 、1.5秒 の 観 察 後 、 シ ャ ッ タ ー ゴ ー グ ル は 閉 じ な い た め に 、 視 覚 を 利 用 し た 状 態 で 隙 問 を 通 過 す る こ とが で き る と い う点 で 異 な っ て い た 。

歩 行 中 に シ ャ ッ タ ー ゴ ー グ ル が 閉 じ る3条 件(す な わ ち 静 的 視 覚 条 件 、 動 的 視 覚 阻 害 条 件 、動 的 視 覚 ノ ン ス ト ッ プ 条 件)で は 、視 覚 遮 断 直 後 に(ド ア 手 前 約2.8m)、

光 学 セ ン サ ー に よ り ドア 幅 を119cmま で 大 き く 開 き 、歩 行 軌 道 が 中 心 か らず れ て も 隙 間 通 過 時 に ドア と の 接 触 に よ る フ ィ ー ドバ ッ ク が 与 え られ な い よ う 配 慮 し た 。 ま た 、 隙 間 幅 の 調 整 は シ ャ ッ タ ー ゴ ー グ ル を 閉 め て い る 間 に お こ な い 、 そ れ 以 外 の 状 況 で 隙 間 幅 を 確 認 で き な い よ う に した 。 休 憩 は 各 観 察 条 件 の 終 了 後 、 参 加 者 が 主 観 的 に 疲 労 回 復 し た と 判 断 す る ま で と っ た(お よ そ5‑10分)。

隙 間 幅 の 呈 示 方 法 に つ い て は 、棒 の 幅 の0.8,1.0,1,2,1.4倍 に 設 定 し た 隙 間 幅 を ラ ン ダ ム に 呈 示 し た 。 参 加 者 は 各 観 察 条 件 に お い て 、 隙 間4条 件(棒 の 幅 の 0.8,1.0,1,2,1.4倍)× 繰 り返 し4試 行(す な わ ち 計16試 行 実 施)行 い 、 計64試

(29)

行実施 した。本 試行 を行 う前 に、練習試行 を実施 した。練習試行は、本試行 と同 様 の手続 きにて各 隙間幅2回 ず つ最低10試 行行 った。参加者の主観的な恐怖心 がな くな らな い場合 は練習試行 を追 加 した。

1.1.5従 属 変 数 と 分 析

各観察 条件 にお いて どの程度安 全 に隙間を通過で きた のか を検討す るため、各 条件 にお ける ドア との接触 回数 を測 定 した。 ただ し本研究 の場合 、接触 によ るフ ィー ドバ ックを避 けるため視 覚遮断後 に ドアを大 き く広 げている ことか ら、事前 に設定 されて いた隙間幅に対 して接触が起 こるのか どうかを計算 によ り割 り出 し た。 また、視覚 を遮 断され た状態 での隙間 に どのよ うにアプ ローチ したのか を検 討す るため、最大体幹 回旋 角度 、体 幹 回旋 の有無、お よび隙間通 過時の隙間 中心 か らの左右偏寄度 を測定 した。 さらに、体幹 の回旋が 生 じた試行 について、その 位置(隙 間か らの距離)と 速度 につ いて も算 出 した。

いずれ の指標 も、3次 元動作解析 よ り得 られ たデー タを基 に計算 を行 った。ドア との接触 回数の計算方法 と して、最 初の観察段階で提示 され た ドアの左右 のマー カーよ り、実際の通過時 に肩 が外 を通過 した場合 に ドア との接触 ととらえ、カウ ン トした。体幹 回旋角度は ドア と平行 の前額面 に対す る水平面 上での動 きを、第 7胸 椎 と両肩 を結 んだ ライ ンか ら算出 した。一般 に隙間通過 に対す る体幹 回旋行 動は、隙間 を通過す る時点 の回旋 角度 に基づ いて分析 を行 う。 これ に対 して本研 究では、4つ の観察条件 中3条 件 にお いて視覚 を遮 断 した状態で 隙間を通過す る ため、隙間通過のため の体幹 回旋行動 が正確 に隙間の位置で実行 され る とは限 ら な い 。 そ こで 、 体 幹 の角 度 が 最 大 に な っ た 時 点 を参 加 者 が 隙 間 の あ る位 置 と認 識 した位 置 ととらえ、その角度 を計測 した。

(30)

体 幹回旋の有無 につ いては、歩行 開始直後1秒 間の体幹 回旋角度 の標準偏差(SD) を算 出 し、その後、回旋角度が平均+3SDを 超えた場合 を隙 間に合わせて体幹 回 旋 を実行 した と判断 した。 また 隙間通過 時の中心か らの逸 脱 に関しては、左右 の ドアのマー カーの中心 と体幹 の 中心 をと らえた第7胸 椎 のマーカー との距離 を算 出 した。 中心 か らの逸 脱距離 の値が正 の場 合、身体 中心点が隙 問の 中心位置 よ り も右 に偏椅 している ことを意味す る。 これ まで述べた全ての従属変数 に対 し、観 察条件(4)× 隙間幅(4)の2要 因分散 分析 を行 った。

隙間通過 時に体 幹 回旋が認 め られ た試行 につ いて は、そ の位置 と速度 につ い て計算 を行 った。 これ らの従属変数 につ いては、体 幹回旋の有無が各観察条件 に よって異 な りデータ数が揃わな いと予想 され るため、統計解 析は行わず参考情報 と した。

1.2結

ドア との接触 回数

各 条 件 に お け る 隙 間 通 過 時 の ドア と の 接 触 回 数 を 図2‑5に 示 し た 。2要 因 分 散 分 析 の 結 果 、 ま ず 観 察 の 要 因 の 主 効 果 が 有 意 で あ っ た(F(3,33)=13.02,p<

0.001)。Ryan法 を 用 い て 多 重 比 較 を 行 っ た と こ ろ 、フ ル ビ ジ ョ ン 条 件 に 比 べ て 、 3mラ イ ン で 視 覚 遮 断 を 行 う3つ の 観 察 条 件 の 接 触 回 数 が 有 意 に 多 か っ た 。次 に 、 隙 間 の 要 因 の 主 効 果 が 有 意 で あ っ た(F(3,33)識10.62,p<//!)。 多 重 比 較 を 行 っ た と こ ろ 、隙 間 幅 の 要 因 に お い て は 隙 間 幅0.8と1.0、 隙 間 幅1.2と1.4(す な わ ち 、 体 幹 を か な らず 回 す 必 要 が あ る 隙 間 幅0.8と1.0の 間 と 、 体 幹 を 回 す 必 要 の な い1.2と1.4の 間)の2つ の ペ ア を 除 く 全 て の 条 件 間 で 有 意 差 が 見 られ た 。

参照

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