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中国と日本における小学生の宿題
著者 杉村 健, 于 斌
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 29
ページ 153‑158
発行年 1993‑03‑01
その他のタイトル Children's Homework in China and Japan
URL http://hdl.handle.net/10105/6816
中国と日本における小学生の宿題
杉 村 健・干 (心理学教室)
斌
要旨1中国天津市と奈良県111西町の小学生について、国語の授業の好き嫌いと、
国語の宿題への取り組み方および宿題以外の復習・予習の仕方を比較した。中 国の子どもの方が、国語の授業を好む者、自分から好んで、進んで、毎日宿題 をしている者、宿題をすれば勉強がわかるようになり、成績が良くなると思っ ている者、宿題がすんだ後、親に見てもらっている者、国語の復習と予習をし ている者が多かった。また、国語の宿題は毎日あるが、その分量は適度である
と答えた者が多かった。
キーワード:宿題への取り組み、宿題の効用、親の関与、復習と予習
先の研究(杉村・多喜,1991)では、宿題の頻度と分量、宿題への取り組み、親の関与、宿題 の効用、復習と予習の観点から、小学2年生、4年生、6年生の国語と算数の宿題について調べ れその結果によると・学年が進むにつれて・宿題に要する時間や宿題をいつもしている子ども は増加するが、宿題が好きな子ども、成績の向上や授業の理解に役立つと考えている子ども、復 習や予習をいつもしている子どもは減少した。次の研究(杉村・田村,1992)では、内発的意欲 が強い子どもは弱い子どもと比べて、宿題に対して積極的に取り組み、2年生では宿題が授業の 理解に役立つと考えてるいる子どもが多く、4年生では宿題に対する親の関与が少なく、復習を
よくしている子どもが多いことがわかった。
中国と日本の小学生の学習動機を比較した研究(杉村・干,1991)によると、中国では いろ いろ調べるのが好きだから 問題を解くのが好きだから といった内発的動機によって勉強し ている子どもが多く、日本では 宿題があるから 凹テストがあるから 親や先生からほめら れたいから といった外的動機によって勉強している子どもが多かった。また、 宿題が多いと きに勉強がいやになる と答えた子どもは、中国では10%程度であったが、日本の4年生と6年 生では80%を越えていた。しかし、宿題に関する国際比較を行なったChen&Stevenson(1989)
の研究によれば、日本やアメリカよりも中国の方が明らかに宿題が多かった。このことから、中 国の子どもは宿題が多くてもいやにならずに頑張っているのに対して、日本の子どもは宿題があ るから勉強するが、宿題が多いと勉強がいやになるといったように、宿題に対する積極的な取り
Chi1dren s Homework in China and Japan Takeshi SUGIMURA and Yu Bin
(Dψαr伽eηオ。ゾp8ツ。ん。Zo醐,Mαrασ肋e戸s柳。ゾ〃αcα之i㎝,Mα〃630)
組みが欠けていることが示唆される。
本研究の目的は、中国と日本の小学生が国語の授業、宿題、復習・予習に対してどのように考 えているかを比較検討することである。これまでの研究成果から、中国の子どもの方が国語の宿 題に対してより積極的で望ましい考え方や態度を示すことが予想される。
方 法 調査対象
中国の子どもは、天津市西門楼小学校の2年生87名(男児の43名、女児44名)、4年生89名
(男児44名、女児45名)、6年生89名(男児49名、女児40名)で、各学年2学級ずっであった。全 学年4学級ずつで、天津市では高い地位の小学校である。
日本の子どもは、奈良県磯城郡川西町結崎ノ1、学校の2年生91名(男児44名、女児47名)・4年 生89名(男児42名・女児47名)・6年生118名(男児63名・女児55名)で・各学年3学級ずつであっ れなお・日本の子どもの資料は杉村・多喜(1991)を用いれ
言周査項目
表1に示したように・国語の授業の好き嫌い・宿題の頻度と量・宿題への取り組み・宿題への 親の関与、宿題の効用、復習と予習の13項目からなっている。中国の子どもに対しては、著者の 一人が中国語に翻訳したものを用いた(付表参照)。
調査方法
子どもたちの教室で調査を行なった。回答用紙を配布して、 これから国語の宿題について質 問します。成績には関係がないから、思った通りに答えてください と教示し、質問項目を読み 上げ、該当する回答の番号に丸をつけさせた。
結果と考察
表2は・国別・学年別の回答の割合(%).と、項目ごとに2(国)×3(回答)のκ 検定を 行った結果を示したものである。
国語の授業:国語の授業が好きと答えた者は、学年が進むにつれて減少するものの(94%→67%)、
中国の子どもの方が著しく多かった。日本の4年生と6年生では僅かに15%にすぎず、6年生で は半数の子どもが嫌いと答えている。教科の好き嫌いが宿題の仕方に反映するが、中国の子ども の方が国語の授業を好む主な理由として、次のことが考えられる。①国語の授業が毎日の生活や 将来の生活に役に立つと考えている。②国語の授業内容が子どもたちの興味・関心に合致してい。
る。③国語の授業が好きになるように教師が工夫している。④国語の授業の重要性を自覚してい
る。
宿題の頻度と量:宿題が毎日あると答えた者は、中国では70%前後であるのに、日本では6年生 でも36%にすぎず・中国では宿題が多いという結果(Chen&Stevenson,1989)と一致す乱宿 題の分量が丁度よいと答えた者は、中国の4,6年生では90%に近いが、日本の4,6年生では
一154一
妻1 調査項目
国語の好き嫌い
①国語の授業は好きですか。
1 はい 2 いいえ 3 どちらでもない 宿題の頻度と量
①一週間にどのくらい国語の宿題がありますか。
1毎日 2ときどき 3ない
②国語の宿題は多いと思いますか。
1少ない 2ちょうどよい 3多い 宿題への取り組み
①国語の宙題はいつもしていますか。
1 いつも 2 ときどき 3 いいえ
②国語の宿題は自分から進んでしていますか。
1 いつも 2 ときどき 3 いいえ ③国語の宿題をするのは好きですか。
1 すき 2 きらい 3 どちらでもない 宿題への親の関与
①国語の宿題をするとき、親に見てもらっていますか。
1 いつも 2 ときどき 3 いいえ
②国語の宿題がすんだあとで、親に見てもらいますか。
1 いつも 2 ときどき 3 いいえ 宿題の効用
①国語の宿題をすれば、勉強がわかるようになると思いますか。
1 はい 2 いいえ 3 わからない
②国語の宿題をすれば、よく覚えられると思いますか。
1 はい 2 いいえ 3 わからない
③国語の宿題をすれば、成績が良くなると思いますか。
1 はい 2 いいえ 3 わからない 復習・予習
①宿題のほかに、国語の復習をしていますか。
1 いつも 2 ときどき 3 いいえ
・ ②宿題のほかに、国語の予習をしていますか。
1 いつも 2 ときどき 3 いいえ
多いと答えた者が50%前後であった。このように、中国では宿題は毎日あるが分量は適度であり、
日本では毎日はないが分量か多いと思われているが、分量の多少はかなり主観的である。
宿題への取り組み:国語の宿題をいっもしている者は、中国では90%から100%に近く、日本で
は36%から72%に増加しているが、中国よりもかなり少ない。国語の宿題を自分から進んでして
いる者は、中国では100%に近いが、日本では50%前後であった。国語の宿題が好きであると答
えた者は、中国も日本も学年とともに減少するが、中国の方が明らかに多かっ一た。嫌いと答えた
表2 国別、学年別の回答の割合(%)
2年生 4年生 6年生
中国 日本 κ2 中国 日本 κ2 中国 日本 エ 1 95
国語の授業 2 5
3 1
60 87 24 ** 0 16 13
15 53 **
32
67 15 0 36 **
33 50
頻度と量
1 67
①2 33 3 0
18 75 81 ** 24
1 1
20 80 **
O
74 36 26 65 **
0 0 ユ 23
②2 71 3 6
15 ユエ 73 87 12 2
5 51 **
45
6 2 88 46 **
6 52 1 89
①2 11 3 0
36 94 62 ** 6
2 0
60 37 **
4
97 72 3 26 **
0 3 1 91
取り組み ②2 8
3 1
46 98 32 ** 1 22 1
53
38 淋
9
99 45 1 30 **
0 25 1 91
③2 6 3 3
55 81 21 ** 1 24 18
13 45 **
42
48 12 6 52 淋 46 36
親の関与
1 45
①2 20
3 35
36 8 6
42 ** 26 24
22 66 70
11 0 29 16 榊 60 84 1 86
②2 14 3 0
41 52 37 ** 22 22 26
6
22 榊 72
5 0 47 12 **
48 88 1 97
①2 2 3 1
81 99 7 * 1 12 0
55 21 **
24
89 48 7 6 **
4 46
1 94
宿題の効用 ②2 4
3 2
80 98 9 * 1 11 1
41 25 **
34
85 45 9 9 **
6 46 1 91
③2 8 3 1
78 97 10 * 1 12 2
37 17 **
46
81 41 11 13 榊
8 46
復習・予習
1 78
①2 20 3 2
44 43 42 ** 55 14 2
7 37 **
56
20 2 78 36 榊
2 62 1 65
②2 29 3 6
33 52 40 淋 46 27 2
8
28 榊 64
53 2 47 29 **
0 69
*P<.50 **P<.01
156一
者は中国では殆どいなかったが、日本の4,6年生では50%前後にも達していた。中国の子ども たちは、自分から進んで毎日宿題をし、宿題を嫌っている者は殆どいない。その主な理由として、
次のことが考えられる。①宿題は殆ど毎日あるので、当然やらなくてはならないものであるとい う自覚をもっている。②宿題の内容が毎日の授業と直接関係している。③教師による宿題の点検 が的確に行なわれている。④宿題以外の勉強(たとえば学習塾)をしなくてもよい。
宿題への親の関与=日本では、宿題をするときと宿題がすんだ後での回答の分布が殆ど同じであ り、2つを込みにすると、宿題を全く見ていない親が2年生(22%)から4年生(71%)にかけ て著しく増加し、6年生では86%にも達している。中国でも、学年とともに宿題を全く見ていな い親が増加するが、その割合は日本よりも少ない。中国では2つの回答の分布がかなり異なって おり、2年生では宿題をするときいっも見ている親は45%であるが、すんだ後でいつも見ている 親が86%もおり、4年生でも同じ順に8%と52%であった。このように、中国の親の方がより多
く宿題に関与し、特に、宿題がすんだ後の点検に力を入れている。
宿題の効用=日本では、3項目ともに はい の割合が学年とともに減少し(80%前後→45%前 後)、6年生では50%近くの者が わからない と答えている。これに対して中国では、6年生 で若干低くなるが、3項目ともに はい の割合が著しく高い。特に、4年生と6年生では中国 と日本との間に顕著な違いがある。このように、中国では殆どの子どもが、国語の宿題をすれば 勉強がわかるようになったり、よく覚えられたり、成績が良くなると思っている。その主な理由 として、次のことが考えられる。①国語の宿題をすることと毎日の授業や成績と直接関係がある。
②宿題をすれば、勉強がわかるようになり、よく覚えられ、成績が良くなるという体験をしてい る。③宿題の必要性や重要性を強く認識している。これらは、宿題への取り組みとも関係してい
る。