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沖縄における小学生の学習動機

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

沖縄における小学生の学習動機

著者 杉村 健, 栗山 広治

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

8

ページ 81‑86

発行年 1972‑03‑15

その他のタイトル Children's Motives for Learning in Okinawa URL http://hdl.handle.net/10105/6249

(2)

沖縄における小学生の学習動機*

杉村  健  栗山広治**

(心理学教室)

 本研究の目的は,那覇市(沖縄)における小学生の学習動機が発達的にいかに変化するか,それが 男子と女子ではどう違うか,そして,学業成績の良い者と悪い者とではいかに異なるかを調べ,合わ せて大阪・奈良における小学生の結果(杉村,1968)と比較検討することである。

      方       法

 被験者  被験老は那覇市内の2つの小学校の2,4.6年生8学級ずつ,合計973名である。

学校の選定は、琉球政府文教局総務課長島袋栄徳先生にお願いした。1つの学校は1日市内の中心にあ る4学級からなる学校であワ,もう1つは首里よりの8学級からなる学校であワ,そのうちの4学級 を使用した。これら2つの学校で,那覇市の大体の傾向を知ることができると言ラことであった。表

1は被験者の内訳を示したものである。

妻1 被験者の内訳

2年生  4年生 6年生  合 計

男子 173 164 162 499 女子 171 150 153 474

合計  344  314  315  973

 調査項目  表2に示したような14の項目が用いられた。これらは以前の研究(杉村1967.1968;

杉村・藤田,1971)と同じものである。

表2 調 査 項 目 番号    項 目 内 客

1.

2,

3.

4.

親にほめられたいから勉強する えらい人になりたいから勉強する 新しいことを知りたいから勉強する 先生に叱られるから勉強する

ホ Chi1dren s Mot ives for Leaming in Okinawa

榊Takeshi Sugimura and Hi roharu Kur i yama(Depar tment of Psycho1ogy,

 Nara Un i vers i t y of Educa t i on)

(3)

       5.友だちに負けたくないから勉強する        6.好きだから勉強する

       7.親にいわれるから勉強する

       8、大人になって役に立つから勉強する        9.宿題があるから勉強する

       10、先生にほめられたいから勉強する        11.面白くて楽しいから勉強する        12.テストがあるから勉強する        13、親に叱られるから勉強する        14.成績をよくするために勉強する

 手続き  調査は1971年6月に,杉村が招へい講師として琉球大学に滞在中に行なわれた。それ ぞれの小学校の授業時間中に教室で行ない,所要時間は10分ぐらいであった。児童に回答用紙を配布

し,調査項目を実験者が読み上げて回答させた。回答用紙には学校・学年・組・氏名.および性別を 記入するところと,その下に1から14までの番号が書いてある。回答用紙を配布してから次のような 教示が与えられた。

   これからすることはテストではありません。また,成績にも関係がありませんから気軽にやつ   て下さい・これから,皆さんがどういうわけで勉強しているのか,どんな気持で勉強しているの   かを調べたいと思います。先生が質問文を読みますから,答えが はい のときには番号をOで   囲んで下さい。また,  いいえ のときには番号にXをつけて下さい。1つもぬかさずに○か×

  をつけて下さい。答えは誰れにも見せませんから,正直に思った通ワに答えて下さい。

 教示に続いて、黒板に,はい一○,いいえ一xと板書してから,番号と項目内容を2度ずつ読 み上げた。全員が回答したことを確かめてから,順次14番まで読み上げて回答を求めた。調査をして いる間に,担任教師にその学級で学業成績の良い者を男女3名ずつと,学業成績の悪い老男女3名ず つの氏名を記入してもらった。

       結  果  と  考  察

 学年差と性差  表3は各学年の男女別に,各項目の承認率( はい のパーセント)を示したも のであり,表4は各項目ごとに色変換による2要因の分散分析を行なった結果である。

学年 性…一      1

表3 学年ごとの性別承認率(%)

   項   目   番   号

男.56

91  93  47  84  81  47  81  66  64  75  69  42  91 234567891011121314

三1蔓1葦董琴1ギ萎1;萎1㍗1;葦11

  男17

6   女 10

32  91   8  53  33  16  96  19   7  56  38   9  48

2489105536129423 75841 861

一82一

(4)

妻4 学年と性の分散分析

変動因 ■1、。3

4567891011121314

1学年   』2性131x21

**ホ*  *}}*料********林**淋**

@    *       ホ

@ * **         *      ホ

*5%水準 料1%水準

 表3と表4から次のことが言える。(1)2,4,6年を通して高い承認率を示しているのは,3番と8 番であり,それ故,新しいことを知りたいからとか,大人になって役に立つからというのが支配的な 学習動機である。後者の場合は.学年の上昇につれて増加している点が目立つ。(2)14項目のうち,

(1)に述べた2項目を除く12項目については、すべて学年とともに減少している。もちろん,2年→

6年と徐々に減る場合,4年生まで急激に減少し,以後減少が目立たない場合および2年生だけが 異なる場合がある。13)性の主効果については,6番では女子の承認率が高く,13番ではその逆である ことがわかる。(4)学年と性の交互作用は3萄1幡,4番,14番において有意であった。表3から,3,4,

10番においては,2年と6年では性差がないが,4年では3番と10番で女子が高く,4番で男子が高 いこと,および14番においては2年と4年では性差がないが.6年では女子が高いことがわかる。

 学業成績と学習動機  表5は各字隼の成績別に承認率を示したものであり,表6は各項目ごとに 色変換による分散分析を行なった結果である。なお,表5の人数はどの学年も上下64名ずつになるは ずであるが,記入もれと欠席者があったために,64名にならないところがある。

      表5 学年ごとの成績別承認率侮)

皿一^一

学成人N積数

1

2 3 4 5 6 7 8 9 1011121314

 上制2 下64

31 94  95 27 70 86 22 83 34 39 75 48  13 88

V0  84  86 69 88  84 67 75  81 78  80 83  66  83

 上644 下63 3  59  95  2 56  55  8  91  17  5  72 25   8  53 R5  75  87  17  78 60 38 90  40 29  70 48  24  76  上626 下63

2  19 95  6 50 45  3 100 26  3 60 31  3 60

P6  33  84  13  56  30  24  97  21  11  59  54  16  67

下 63.16

33     13  56  30 24 97  21  11  59  54  16  67

表6 学年と成績の分散分析

変動因

1 学 年 2 成 績

3 1x2

項   目   番   号

I 2 3 4  5  6  7  8  9  10 11 12 13 14

*‡ ホ*

ホ*     }*

ホ*  ** *ホ ‡* ‡*  ‡* *‡  *  ** **  *‡

**  **     *‡     *ホ  ‡‡     **  **

*      **         ** *

(5)

 学年の主効果については,表3と表4の結二乗と同じことであるから,成績の上下によるちがい,お よびそれが学年に応じでどのように異なるかという点について考察する。成績の上下に関しては,14 項目中9項目において有意差がある。そのうち,3番以外はすべて成績の悪い者の方が高い承認率を 示している。すなわち,成績の良い者は新しいことを知ワたいから勉強するという気持が強いのに対

して,成績の悪い者は親にほめられたいから,先生に叱られるから,親にいわれるから,先生にほめ られたいから,親に叱られるから,友だちに負けたくないから,宿題があるから,テストがあるから 勉強するという気持が強い。このように,成績の悪い者が示す学習動機は親や教師の称賛・叱貴お よびテストや宿題というような,いわば外的動機づけが中心になっているのである。

 次に,学年と成績の交互作用について検討してみよう。有意な交互作用は,2,4,9,13,14の5項目 について得られたが,表5から次のことが言える。えらい人になりたいから勉強するという気持は,

2年生では成績の良い者の方が強く,4年生と6年生では成績の悪い者の方が強くなっている。先生 に叱られるから,宿題があるから,親に叱られるから勉強するというのは,成績の悪い老の特徴であ ったが,良い者と悪い者の差は2年生で特に大きくなっている。宿題があるから勉強するについては 6年生で逆に成績の良い者が多くなる傾向があるが,他の2項目については,6年生になっても依然 として差がみられるのである。14番の成績をよくするために勉強するは2年生と4.6年生が逆にな っているという点で上述のえらい人になワたいと類似しているが,4年生において成績差が目立って いる。以上のように,成績に応じて学習動機にかなりのちがいのあることがわかる。

 那覇と大阪・奈良の比較  表7は那覇と大阪・奈良の承認率を示したものであり,表8は各項目 ごとに色変換による分散分析を行なった結果である。

表7 那覇と大阪・奈良の承認率(%)

孝地域人数、2、弓517戸、1。号、、121、、、

 君若君窮  344  55  92 93 47  82 82  45  79  63  65  78  67  40  89

2 大祭 416137 8980 237057 36 87 ω 48 4261 32 88

 那覇314 1963901457532091281873ω1266

4

 犬・奈 348 127585 863必 189226 203441 1682

 那覇315 92890 95435149521 75740 955

6

 犬・奈 370 56387 74823 16 9528 63238 1478

‡大阪・奈良の資料は杉村(1968)による。

      表8 学年と地域の分散分析        項   目   番   号

変動因       567891011121314

1 学 年 2 地 域

3 1x2

**  **  **  **  **  **  ホ*  **  **  **

**  ‡*       ホ  **         **

**  **        **  ‡*  **     **  **

* 5%水準    淋1%水準

一84一

(6)

 表8からわかるように,地域差は14項目中9項目において有意であった。すなわち,掌隼をこみに したときに那覇の小学生は大阪・奈良の小学生に比べて,親にほめられたいから,新しいことを知ワ たいから,先生に叱られるから,友だちに負けたくないから,好きだから,先生にほめられたいから,

面白くて楽しいから勉強するという気持が強く,逆に成績をよくするために勉強するとカ㍉ えらい人 になりたいから勉強するという気持は弱い。しかし,これらは全体の傾向であって,地域と学年の有 意な交互作用が得られた項自では,そのような地域差が学年によって異なっているのである。

 有意な交互作用は14項目中10項目において示されたが,そのうちのいくつかについて説明しよう。

2番のえらい人になりたいから勉強するは,2年生では地域差がないが,4年,6年と進むにつれて 差が大きくなワ,大阪・奈良の方が著しく高い。もちろん,両地域ともに減少していくのであるが,

那覇において特にその減少が急激であワ(92%→28%),大阪・奈良ではそれよりもゆるやかであ る(89%→63%)。 これとまったく同じ傾向を示しているのが,14番の成績をよくするために勉強 するのである。これら2つとは逆に,学年の上昇につれて地域差が減少していく項目がある。それは,

4番の先生に叱られるからと10番の先生にほめら札るからである。この2項目はともに教師に関係し ているのであるが,2年生では那覇が著しく高く4年生と6年生ではあまワ地域差がない。もう1つ 興味のあるのは,9番の宿題があるから勉強するでは大阪・奈良の6年生が高く,13番の親に叱られ るから勉強するも大阪・奈良の4,6年生が高いことである。このような地域差の発達的な変化は,

教師や親のあり方や考え方を含めて,地域の雰囲気を反映しているものと言えよう。なぜならば子 どもの学習動機は学習されたものだからである。

要        約

 沖縄那覇市の小学生973名の学習動機を調査し,学年差・性差。・および成績差について統計的分析 を行ない,合わせて大阪・奈良の小学生1134名の結果と比較した。その主な結果は次のとおワであっ

た。

 (1〕新しいことを知ワたい、大人になって役に立つからというのが,那覇の小学生に共通する支配   的な学習動機であワ,さらに友だちに負けたくないから,面白くて楽しいから,成績をよくする   ためにの3項目が比較的多い。

 (2)新しいことを知りたいとI大人になって役に立つの2項目以外は,すべて学年上昇につれて減   少する傾向があるが.その減少の仕方は項目によって異なっている。

 (3)学業成績の良い者は,新しいことを知ワたいから勉強するという気持が強いのに対して,学業   成績の悪い者は,親や教師による称賛・叱貴およびテストや宿題などの,いわば外からの動機   づけによって学習している。いくつかの項目においては,学午によって成績差が異なっている。

 (4)那覇の小学生は大阪・奈良の小学生に比べて,新しいことを知ワたいから,好きだから,面白くて楽しいか   ら勉強するという気持が強く,.また教師や親ご関する項目でも高い。これに対して,大阪・奈良の小学生   はえらい人になワたいとか,成績をよくするために勉強するというのが多い。えらい人……と成   績……については高学年になるほど差が大きくなワ,また宿題があるからと親に叱られるからも   大阪・奈良の6年生で多くなっている。先生にほめられるとか先生に叱られるというのは,那覇

(7)

の2年生で著しく高いが高学年になるにつれて地域差が少なくなっている。

      引  用  文  献

杉村 健 1967  小学校4年生と6単生の学習動機  奈良教育大学教育研究所紀要 第3号,

  45−52

杉村 健 1968 小学生の学習動機  奈良教育大学教育研究所紀要第4号29−34.

杉村 健・藤田 正 1971  児童の学習不安と学習動機  奈良教育大学教育研究所紀要   第7号101−107.

(附記) 本研究の資料の蒐集にさいしては,那覇教育区立松川小学校長安里先生をはじめ同校の  諸先生那覇教育区立夫妃小学校長渡慶次先生をはじめ同校の諸先生,および文教局総務課長  島袋先生のお世話になった。また,資料の分析にさいしては心理学専攻生矢倉克悦君の協力を  得た。心から感謝します。

一86一

参照

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