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中国赴日本国留学生予備学校における基礎日本語教育

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中国赴日本国留学生予備学校における基礎日本語教育

― 2009 年度報告 ―

花薗 悟

(2009. 10. 31 受)

【キーワード】 アドヴァイシング、教師派遣、国費留学生制度、東北師範大学

1. はじめに

 2009 年 8 月 16 日に中国省吉林長春市の東北師範大学浄月キャンパスで 300 名以 上を集めて中国赴日本国留学生開校 30 周年記念式典が、中国教育部1 より副部長、

日本より文部科学審議官をはじめとする多くの国内外からの来賓の他、各分野で活 躍している多くの修了生の出席を得て、盛大に開催された。

 このプログラム(中国赴日本国留学生制度)は、中国教育部と日本国文部科学省 の問で結ばれている“日中教育交流 5 カ年計画”に基づいて運営される日中政府間 レベルの合同事業である2。中国教育部と日本大使館の担当者が面接官となって選 抜された合格者に対して中国赴日本国留

学生予備学校で教育を行なう。予備教育 修了後、日本国文部科学省研究留学生と して来日し、翌冬または翌年度に大学院 博士後期課程3 を受験する。合格すれば 引き続き奨学金が支給される。

 ここ数年予備学校の博士班の教育は、

10 月初旬にはじまり、予備期は予備学 校の教員(中国人教師)が担当、前期(3

東京外国語大学

留学生日本語教育センター論集 36:135~146,2010

――――――――――――――――――――

1

日本の文科省に当たる機関。副部長は副大臣に相当する。

2

おおまかにいって中国国内での経費は中国政府が負担し、来日後の学費・奨学金は日本政 府が負担する(1990 年までは奨学金も中国政府負担であった)。

3

プログラムの開始当時は学部進学留学生のみを対象に行なわれ、しばらく研究生(修士課程 進学生)が並行して行なわれるようになったが、やがて博士課程進学生(「進学博士」)・博士 課程修了後の研究員(「修了博士」)などとなり、現在は新卒(修士課程修了直後)の進学博士 のみを対象としたプログラムとなっている。

30 周年記念式典当日の予備学校

(2)

月~ 7 月)から基礎日本語教師団が加わり、専ら専門日本語教師団4 が担当する後 期(8 月)に引き継ぐ。本稿では筆者が基礎日本語教師団長として 関わった 2009 年 の 3 月から 7 月にかけて行なわれた 17 週間にわたる基礎日本語教育について報告 する。

2. 教育期間・派遣教員など

 今年度の全体的な教育期間と授業時間は以下の通りである。

2.1. 教育期間

 (1) 予備期 2008 年 10 月 13 日(月)~ 2009 年 1 月 9 日(金)中国人教師担当  (2) 前期(基礎期)2009 年 3 月 1 日(月)~ 7 月 17 日(金)

うち 3 月 1 日(月)~ 3 月 20 日(金)中国人教師担当

3 月 23 日(月)から中国人・日本人(基礎日本語教師団)教師が合同で担当  (3) 後期(専門日本語)2009 年 8 月 2 日(日)~ 8 月 28 日(金)

日本人教師(基礎日本語教師団)が担当

2.2. 授業時間

 1/2 時限:8:20 ~ 9:50   3/4 時限:10:05 ~ 11:35  5/6 時限:13:30 ~ 15:00   7 時限:15:10 ~ 16:10

2.3. 基礎日本語派遣教師および派遣期間

・花薗 悟:東京外国語大学留学生日本語教育センター准教授・団長

・稲村すみ代:東京外国語大学非常勤講師

・塩川絵里子:東京外国語大学非常勤講師

・橋本玲子:日本学生支援機構大阪日本語教育センター非常勤講師・副団長

・嶋本紀子:日本学生支援機構大阪日本語教育センター非常勤講師

・竹田慎吾:日本学生支援機構東京日本語教育センター非常勤講師    派遣期間:団長は 2009 年 3 月 15 日(日)~ 9 月 6 日(日)

        その他の団員は 2009 年 3 月 15 日(日)~ 7 月 26 日(日)

2.4. クラスおよび担当教員

1 班5 :李軍(導入担当)、橋本玲子(練習担当)、学生 18 名 2 班 :薫春淇(導入担当)、嶋本紀子(練習担当)、学生 18 名

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4

東京工業大学の教員が団長となり、10 名ほどの専門別の教師団を組織して、8 月の 4 週間(た だし情報処理の授業は 6 月に 2 週間実施)、専門別に専門日本語教育をおこなっている。

5

クラスのことを中国では「班」と呼んでおり、予備学校でも「1 班」~「5 班」と呼んでいた。

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3 班 :謝忠字(導入担当)、稲村すみ代(練習担当)、学生 19 名 4 班 :馬軍(導入担当)、竹田慎吾(練習担当)、学生 19 名 5 班 :高在学(導入担当)、塩川絵里子(練習担当)、学生 18 名 

(学生数は 2009 年 7 月 16 日のもの6

3. 前期(基礎日本語)の授業 3.1. 赴任前の準備

 赴任にあたって『中国赴日本国留学生予備学校派遣教員報告書 及び 派遣教員の ためのガイドブック』や、過去数年分の『センター活動記録』長春派遣の項目を読 み、派遣の全体像を把握するよう努力した。またセンターで使用している『中級日 本語』とあわせ、初級日本語のテキストとなっている『実力日本語』にもできる限り 目を通し教科書の内容把握に努めた。さらに前年度の団長から折に触れさまざまな 事に関して引き継ぎを受けたほか、この数年間に団員として赴任した方の数人にイ ンフォーマル・インタビューを行ない、「漢字と聴解のあつかいが班ごとにバラバ ラだったので学生が不安をもっていた」「主要テキストについて団長はもっと把握 したほうがよい」「中級日本語の進度が速すぎて教える側にも全く余裕がなかった。

学生はもっと大変だったのではないか」などの意見を聞くことが出来た。これらは カリキュラムを検討したり進度表を作ったりする際に参考になった。

3.2. 前期(基礎日本語)の授業の実際 3.2.1. 使用教材(主教材)

・ 初級:『実力日本語(上下』(東京外国語大学留学生日本語教育センター編著)41 課 から 60 課まで(基礎日本語教師団の練習は 39 課から)

・ 中級:『中級日本語(東京外国語大学留学生日本語教育センター編箸、凡人社)1 課から 21 課まで。

3.2.2. 進度表 

 進度表は巻末の表に示したとおりである。担当してくださった各先生方の御協力 により、特に中級は第 1 課からかなりのハイペースではあったが、前期全体にわたっ てほぼスケジュール通りに授業を進めることが出来た。

3.2.3. 授業内容

初級(3 月 23 日~ 5 月 22 日) 例年どおり中国人教師の文型導入から 3,4 日の間を

――――――――――――――――――――

6

予備学校入学後の 10 月に行なわれた試験の結果で 4 級合格者は 3 月から合流し、2 級合格

者は基礎教育が免除される。2、3 級程度の学生 5 名が 3 ~ 7 月の間に予備教育に加わった。

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おいて応用練習やクラス活動などを行なった7。授業内容は基本的に班の担当の先 生に任せられていた。文型応用練習、ディクテーション、『実力日本語』「基礎会話」

を中心とする暗記チェック(一部は「応用会話」)、漢字テスト、聴解などである。

クラスによってはカタカナ語の聞き取りなども行なっていた。

中級

(5 月 25 日~ 7 月 16 日) 時間的な制約から『中級日本語』本文の読解のみを行 なった年度があったようだが、文型が定着しているか不安だったため、今年度は本 文の読解に加えて初級と同じように『中級日本語 語彙・文型例文集』の文型の復 習も行なった。文型の復習では全教員が分担して中級の練習プリントを作成しクラ スで用いた。その他、ディクテーションやスピーチ、聴解問題練習などもなされた。

文型の復習・本文の精読の際、各教員はパワーポイントでファイルを作っていたが、

授業として日本事情が設定されていないことを鑑み、テキストの読解に併せて画像・

動画などを用いた日本事情の紹介を取り入れる教員もいるなど、各教員が工夫をこ らしていた(稲村すみ代 2010 も参照されたい)。また、今年度は初級、中級を通し て各班の教授内容が少しでも平均化するように各クラス共通の漢字クイズと聴解問 題を作成して使用した(cf.3.1.)。

 

団長による総合科目 聴解を中心としたが、それに作文の導入と(今年度は授業時

間がつまっていたため)中級に入ってからは文型練習の一部も扱った。作文は、団 長が出題し、各クラス担当が担当学生の作文を添削した。4 回目の作文に関しては 団長がチェックし、また、授業で(事前に承認をとった)各クラス一人の学生の作 文をコピーして配り、皆で添削するという試みも行なった。またこれらの合間に日 本文化を紹介する DVD を見せた(「名刺交換」「じゃんけん」「折鶴」「生け花」など視 聴後に学生とともに体験できるようなものを選んだ)。

 なお、各団員は各班の授業を進めるにあたって中国人教員と連絡を密に取りなが ら行なった。また、団長は期間全体にわたって副校長の張群舟先生、日本語副主任 の馬軍先生と相談しつつ仕事を進めた。視聴覚関係は技官の彭琦先生が聴解教材の 複製や聴解試験の作成など迅速に対応してくれた。また月曜から金曜まで教務補佐 の学生 2 名(周亜林さんと曽露路さん、東北師範大学ビジネス日本語学部 4 年生)が

――――――――――――――――――――

7

1/2 限は中国人教師が『実力日本語』 『中級日本語 語彙・文型例文集』で提出される語彙・

文型の導入、 「文型練習」をつかったドリルを行なっていた。

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毎日交代で勤務し、配布物のコピー・ホッチキス綴じなどの授業準備の補助や予備 学校職員との通訳・部屋の整理など献身的に働いてくれた。スムースな仕事が出来 たのは彼女たちの力も大きい。

3.3. 補講

3.3.1. 文法 初級では、当初は昨年度にならい団長が項目ごとの誤答を計算して

項目ごとの補講を行なった。ただし既に終わった範囲であるので、やや学習の動機 付けが乏しかったことから 5 月からは聴解補講に切り替えた。なお補講の時間(金 曜 5/6 時限)に特別講座が行なわれたため、補講が行えないことが数回あった。

3.3.2. 聴解 ①聴解の点数の低かった学生に対し、部屋で音を聞いているだけで

はなかなか力がつかないとの前団長からのアドバイスもあり、学生と相談との結果、

テーマを与えて会話の準備をしてこさせ、会話をさせるという試みを行なった(た だし過重な負担にならないように原稿を作ってくるまでは要求せず、話すことを箇 条書きしてくる程度にとどめた)。週に 1、2 回、5 ~ 6 人ずつで 5 月 11 日から 7 月 まで週 2 ~ 3 回実施した(情報処理授業の週は休み)。各学生も日本語で会話する楽 しさに気付けたようであり、担当した団長も各学生からの話を楽しく聞きコメント することが出来た。

② 5 月から聴解問題の練習(3 級~ 2 級レベル、はじめは聴解テストの得点の低い 学生、最後のほうは希望者を含む)を 20 ~ 60 名規模で実施した。

 また、これら組織的な補講のほかに、各クラス担当者が必要に応じて補講(個人 指導)を行なっていた。

3.4. 課外活動

3.4.1. 生け花教室・着物の着付け

 今回の基礎日本語教師団に同行した家族に生け花教授の資格を持つものがいたの で、2009 年度独自のプログラムとして放課後の空き時間を利用して会話練習と日 本事情理解を兼ねて希望者に生け花教室を行なった。4 月 21 日から 6 月 2 日までの 間に 5 名ずつ 11 回行ない、希望者全員が一度ずつ生け花を体験した。生け花とい う日本文化を体験するという点だけではなく、生け方を講師から日本語で聞いて やってみることで聴解や会話の練習にもなったと思われる。なお中国人教員の参加 ものべ 10 名以上あった。

 また昨年度行なって好評だったという着付け教室を今年は 3 班のみ行なった。着 物は予備学校進修班8 日本人教員室にあった着物を使用した。担当教員がクラスに 着物をもっていき、T シャツなどの上から各自が身につけて記念撮影をするという

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ものであったが、好評であった。

3.4.2. 食事会

 日本語でコミュニケーションする機会を増やすという意味から、昼食時に学生を 数名ずつ呼んでの食事会を各教員が行なった。団長は 5 月~ 6 月にかけて、各クラ ス担当は随時行なっていた(4 月から 7 月までほぼ毎日行なっていた教員もいた)。

3.5. 試験

 復習テストは、文字と文法の到達度試験であり、前年度のものを手直しして使用 した。聴解は 3 級、2 級程度のものを到達度にあわせて使用した。テストは原則と して月末の月曜、7 時限に多目的ホールで実施した。

 修了試験は熟達度をはかるものなので、教科書の内容とは関係なく 2 級レベルの 問題(文字・語彙、文法・読解、聴解の 3 科目)を出題した。修了試験も文法・読 解と文字については多目的ホールで行なったが、聴解試験ではヘッドフォンを使用 することから 4 階の教室で行なった。予備教育免除者を含む 102 名を 6 教室に割り 振って実施した。今年も去年とおなじように、すべての試験の点数の合計が 60 % 以上で合格とした。なお、今年は定期試験の選択問題部分についてはスキャナー を用いたマークシートによる採点を併用したが(修了試験はすべてマークシート)、

採点の能率化には有効であった。

4. 予備教育(予備期・基礎期)の問題点

 かつては進学博士と修了博士の 2 コースに分かれていたのが進学博士だけになっ たこと、また修士課程新卒者のみになったこともあって仕事を抱えたまま予備教育 に参加する学生がほとんどいなくなったこと、また専門日本語とのオーバーラップ がなくなった9 など(基礎日本語教師団にとって)望ましい変化もあるが、新たな問 題も出てきていると思われる。ここでは予備学校に滞在した約半年に個人的に感じ た問題点について述べる。

4.1. 到達度の設定について

 このプログラムの到達目標は日本語能力試験 2 級である。日本の学部入学の段階 でも能力試験 1 級が要求されているところがあり、博士論文を 3 年間で書くことを

――――――――――――――――――――

8

予備学校にある、私費で日本語を学習するクラス。

9

基礎日本語と重なって行なわれていた時期は基礎日本語の試験に気をとられて学生が浮き

足立っていたこともあるという。ただし、基礎日本語と専門日本語が分かれたことによっ

て専門教育の期間が 1 ヶ月になり、4 週間にわたって 7 時限(5 時間半)の授業をしなければ

ならなくなった。専門日本語の教員にとってこれはかなりの負担である。

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考えれば特に来日時の段階(博士後期課程入学までに半年しかない)に 2 級の日本 語力ではかなりの困難が予想される。理系の学生の場合論文は英語で書くことが多 く 2 級程度でも十分だという意見もあるが、文系の学生は不安が大きいという声を 聞いた(08 年 11 月の視察時に初めて予備学校教員から聞き、赴任中もしばしば学 生からこのような声を耳にした)。

 これは 1 年という教育期間の短さ、海外で日本語と接することの少ない環境など を勘案せねばならないが、10 月からの 4 ヵ月で初級が半分しか終わっていないと いうカリキュラムも一つの要因なのではないだろうか(10 月から 1 月は授業は午前 中だけで、しかも視聴覚と会話の授業が 1 コマずつ入る。基礎日本語教師団が来て から、残りの 4 ヵ月でかなりのペースで初級の後半、中級を終わらせる)。初級は 1 月末までに終え、春節の休み明けの 3 月から中級に入れるようにすれば上級レベ ルに入ることもできるのではないだろうか。カリキュラムの早急な検討が望まれる。

4.2. 予備期の教育について

 例年言われているようだが 3 月に基礎日本語教師団が到着した時点で特に聴解力 が弱い学生が多かった。これは授業以外では日本語が聞こえてこず、また身近で 日本語を話すチャンスがない(日本人教師は会話の 1 名のみ)という環境もあるが、

予備期の教室の授業で目で文字を確認しながらの変形・代入練習が中心になってい るということも大きいのではないかと思われる。授業方法を再考する余地がある。

4.3. 基礎期の教育について

 基礎日本語の日本人教師の授業は基本的に各クラスの担任に任されているため、

3.1 で述べたように、これまでも聴解練習を多くする班、漢字に力を入れる班など クラスによって授業内容が大きく異なる場合があったという声を赴任前に聞いた

(学生は 4 ~ 6 人部屋の寮の部屋で頻繁に情報交換しており授業内容の相違を学生 側はより大きく感じているという)。それらを少しでも是正すべく、今年度はクラ ス共通の漢字クイズや聴解問題を団長が作成し各クラスで使用してもらったが、こ れらが授業内容の統一を取るのにどこまで効果があったかは分からない。

 もちろん、教師ごとに細かいところで授業のやり方が異なってくるのは当然だと しても、内容が大きく異なるのは問題だろう。クラス間の授業内容の調整する方法 を考えるべきであるが10、今年度も非常にタイトなスケジュールの中で授業内容の すり合わせをする時間的余裕がなかった。また、教師によっては授業内容を公開す ることにあまり積極的ではないという場合もあり、教師間の連絡が十二分にうまく 行ったとはいえない。

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 ただし、上のような点はあったにせよ、今年も基礎日本語教師団の先生方は非常 に熱心に授業を準備し、宿題の添削なども含め毎日遅くまで授業の準備や採点をし てくださった。3 月の時点で前年にくらべてやや出遅れていた学生もだんだんと力 をつけてきたのは先生方の真摯な努力によるところが大きい。

4.4. 学生の質の変化

 学生は中国全土から選ばれた修士課程新卒者(2009 年からは全員新卒者)である。

数年前に行なわれた選考制度の変更などもあり、以前と比べて質的にかわってきて いるという話がある。たとえば、これまでもやむをえない事情(親族の死去や病気)

でなく全く個人的な理由(家族の誕生日、帰省するためのチケットを買いに行くな ど)で授業を欠席する学生がいたことが指摘されているが、今年は運転免許取得の ために欠席をする11 学生が続出した。私的な理由で休んだものには厳しく対処す ることを告げると運転免許で休むということは表面的には問題ではなくなったが、

このようなことが問題になってきていることからも学生が質的に変化していること が見て取れる。なお、学生のレベルがどのように変化しているかを知るため、毎年 同程度の問題を解かせ結果を蓄積していく必要がある。

 また、今年度の修了試験は 7 月 17 日であったが、出産予定日が 7 月 19 日である 学生がおり追試験についての問い合わせがあった。団長は出産は当然の権利である と考え予備学校側に追試験実施を尋ねたが、予備学校側は同様な学生が続出するの を心配したためか明確な回答は得られなかった(該当の学生は試験前に無事出産、

試験も他の学生とともに受けることが出来た)。対象学生が新卒の進学博士のみ変 更されたためこのようなことは今後も予想されるので、適切な対応が望まれる。

5. 派遣を振り返って

 赴任以前に過去の基礎日本語教師団員だった先生から聞いていたように、基本的 に中国の学生たちは熱心で教師のいうことにも忠実に従う、きわめて教えやすいよ い学生たちであった。このように真摯で熱意ある学生たちの留学の第一段階に関わ ることが出来たことは幸運なことであった。また海外で教師団を組織し、授業のコー

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10

派遣事業開始当初は団長が班の担任を持っており授業・テキストの詳細をきちんと把握し ていた。また各教員が担任とともに別のクラスの副担任ももっていたという。各班の授業 内容を把握するためにも、団長が総合科目(だけ)でなく班の通常授業に関わるというのも ひとつの方法であろう。

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長春で運転免許を取得すると費用が比較的安くすむためという話がある。

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ディネートをするという得がたい経験をさせてもらったと思う。

 なお前章で問題点を述べたが、気付いてはいながら力不足で実行出来なかったこ と、やってみたがあまりうまく行かなかったことも多い。また団長の事務的能力の 低さから資料やスケジュールの作成がぎりぎりになることも数回あり、教師団の先 生方にご迷惑をおかけすることもあった。このような団長を許し、また慣れない異 国の地で深夜まで授業を準備し、それぞれのクラスを熱心に教えてくださった基礎 日本語教師団の先生方に感謝したい。

 冒頭にも述べたように 2009 年は予備学校創立 30 周年の記念すべき年であり、記 念式典が開催され、過去の基礎日本語教師団員や国際交流基金の元担当者などさま ざまな方と知り合うことが出来た。また「予備学校 30 年史」が編纂中であることも あり、関係者からこの事業が開始された初期の様子などさまざまな歴史を知ること ができた。事務連絡など関連の仕事が今年はあったが、それ以上のたくさんのこと を学ぶことが出来た。

 

 赴任中、団長にさまざまな援助をくださった予備学校の先生方・事務の方、ご支 援くださったセンターの先生方・事務の方々、特に折に触れいろいろご教示くださっ たセンター長春係の土屋順一先生に深く感謝しつつこの稿を終えることとする。

参考文献

東京外国語大学留学生日本語教育センター将来計画検討委員会編 2000 ~ 2009『1999

~ 2008 年度版 センター活動記録』東京外国語大学留学生日本語教育センター 伊東祐郎 2001「中国赴日本国留学生予備学校における基礎日本語教育 : 2000 年派遣

報告」『留学生日本語教育センター論集』27 東京外国語大学

藤村知子 2002「中国赴日本国留学生予備学校における基礎日本語教育 : 2001 年派遣 報告」『留学生日本語教育センター論集』28 東京外国語大学

坂本 惠 2003「中国赴日本国留学生予備学校における基礎日本語教育 : 2002 年派遣 報告」『留学生日本語教育センター論集』29 東京外国語大学

東京外国語大学編 2008『2007 年度中国赴日本国留学生予備学校派遣教員報告書 及 び 2008 年度派遣教員のためのガイドブック』

東京工業大学編 2009『2008 年度中国赴日本国留学生予備学校派遣教員報告書 及び  2009 年度派遣教員のためのガイドブック』

土屋順一・藤間貴子 2009「中国赴日留学生予備学校における初級テスト項目分析と

(10)

補講実施 : 2008 年度基礎日本語教育報告」『留学生日本語教育センター論集』35 東京外国語大学

李若柏編 2009『中国赴日本国留学生予備学校創立 30 周年記念事業中間発表論文』中 国赴日本国留学生予備学校

稲村すみ代 2010「パワーポイント利用による日本事情教育を取り入れた授業実践の 一例について(中国赴日本国留学生予備学校における『実力日本語』『中級日本 語』授業報告)」 『留学生日本語教育センター論集』36 東京外国語大学 田山のり子 2010「中国赴日本国留学生予備学校 30 周年記念式典参加報告」『留学生

日本語教育センター論集』36 東京外国語大学

基礎日本語教育日程

10 月 13 日 (月) 予備期授業開始(中国人教師担当)4 クラス、日本語週 24 時間 1 月 16 日 (金) 予備期授業終了

3 月 2 日 (月) 前期授業開始(中国人教師担当)5 クラス、日本語 24 時間 3 月 15 日 (日) 基礎日本語教師団長春へ赴任

3 月 20 日 (金) 基礎日本語オリエンテーション

3 月 23 日 (月) 日本人授業開始(日本人・中国人教師合同)日本語週 28 時間 3 月 30 日 (月) 「実力日本語」31-40 課復習テスト

4 月 6 日 (月) 清明節休日

4 月 10 日 (金) 補講開始 学生会主催歓迎会 4 月 27 日 (月) 「実力日本語」41-50 課復習テスト 5 月 11 日 (月) 日本語教員合同会議

5 月 14 日 (木) 『中級日本語』使用開始(中国人教師)

5 月 25 日 (月) 「実力日本語」51-60 課復習テスト 5 月 28 日 (木) ~ 30 日(土) 端午節休日 5 月 31 日 (日) 端午節のふりかえ出勤日

6 月 7 日 (日) ~ 9 日(火) 文科省辻係長、東工大視察団授業見学 6 月 8 日 (月) 日本語教育合同会議

6 月 9 日 (火) 日本留学説明会

6 月 16 日 (火) ~ 6 月 26 日(金) 東工大笠井教員による情報処理授業 6 月 22 日 (月) 「中級日本語」1-12 課復習テスト

6 月 30 日 (火) 学生会主催なわとび大会

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- 145 - 7 月 6 日 (月) 日本語教員合同会議 7 月 3 日 (金) 1、4 班謝恩会 7 月 13 日 (月) 2、5 班謝恩会 7 月 17 日 (金) 基礎日本語修了試験

7 月 26 日 (日) 団長以外の基礎日本語教師団帰国 7 月 31 日 (金) 専門日本語教師団到着

8 月 2 日 (日) 専門日本語オリエンテーション 8 月 3 日 (月) 専門日本語授業開始

8 月 28 日 (金) 修了式。次年度予備教育に関するうちあわせ会議 8 月 30 日 (日) 専門日本語教師団帰国

9 月 6 日 (日) 基礎日本語教師団長帰国

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(12)

※予定表は3班の例。総合日本語は1班 月/5.6限、1班 月/5.6限、2班 火/5.6限、4班 木/5.6限、

5 班 木 /3・4 限であった。

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参照

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