学位研究 第
3
号 平成7
年6
月 (論文)〔学位授与機構研究紀要〕
近年 の学位制度改革 に関す る一考察
AnOv e r v i e w o ft heRe c e ntRe f o r ma t i ono ft heJ a pa ne s e Ac a d e mi cDe gr e eSys t e m
舘
Aki r aTACHI
Re s e ar c hi nAc ade mz ' cDe gr e e s ,No. 3( J une ,1 9 9 5 )[t hear t i c l e ]
TheJ our nalofNa t i o na lI ns t i t ut i onf orAc a de m icDe gr e e s
近年 の学位制度改革 に関す る一考察
舘 昭*
は じ め に
大学設置基準の 「大綱化」に象徴 され る平成
3
(1 9 9 1 )
年の大学制度の大改革の中で,学位制度 についても一連 の改革が行われた。改革は法律 レベルか ら省令や告示 レベルまでの多岐にわたって いるが,学校教育法上の改正点だけをみて も,①学位に関す る規定を,大学が 「授与することがで きる」 ものか ら 「授与するもの」に変えた,②学士を学位 とした,③学位は博士,修士および学士 とし, 「その他の学位」を法律上削除 した,④学位の授与の対象者規定を法律事項 とし,論文博士 の規定 も法定 した,⑤学位の授与権者に学位投与携樺を加えたなど,大 きな変化がみ られ る。また,これに合わせて,学位規則 (文部省令)の改正が行われたが,その要点をみると,①学士 i
が学位に位置付け られた ことに伴い,学 士に関す る規定を大学設置基準か ら当該規則に移 した,② 博士,修士,学士のそれぞれの種類の規定を廃止 して単に博士,ノ修士,学士 とし,それぞれに適切
I
な専政分野の名称を付記す るもの‑とした,③学鹿授与の対象者規定を法定 して,博士,修士の授与 対象者を大学院の課程の修了者等 とした上 とに伴い,博士,修士の授与対象者を定義 した規定を削l 、 L . 除 した,④学位授与機構の授与す る学位に関す る規定を虚 けた,⑤博士の学位を授与 した場合の文 部大臣に提出す る報告書の様式を簡素化 した, といった改正がなされている。 さらに,博士学位に ついては, これ らの改革に先立 って,平成元年に,修士 とほぼ同様に,研究者ばか りでな く高度の
I 専門職者に対 しても授与 され るよう,学位規則わ改正が実施 された。
また,◆学位 とは呼はない ものの,学校教育法に準学士の称号が登場 し,短期大学及び高等専門学 校を卒業 した者は準学士 と称することができるもの とされた。 また,平成
6
年度か らは一定の基準 を満た した専修学校専門課程 (専門学校) の卒業者に も, 専門士の称号が 授与 されることとなっ た。このように,近年の学位制度改革は相当大幅なものであ り, これ らの改革の中には,①学位等の (
称号の幅を広げ,学位 ・称号制度を整備する,②学位を,大学に とって不即不離なものに位置づけ 直す,③評価に よる学位授与の制度を構築す る, といった新 しい動 きが見て取れる.本稿では,こ うした近年の学位制度の改革について概観 し,それがいかなる方向に向か っているのか, どのよう な課題が残 されているのか等について考察す る。
*学位授与枚構審査研究部教授
‑ 4 5‑
1 .
学士の学位化学位等 の称号 の整備について, まず学士が学位の範噂に加えられた意味か ら考 える。 この改革の もととな った大学審議会答申 「大学教育の改善について」(平成
3
年2
月8
日)では,
「学士につい ては,わが国では伝統的に大学 の学部を卒業 した者の称号 とされて きたが,国際的には,大学の学 部段階の修了証 明 として,第‑学位に位置付け られていることが多 く, この際,我が国において も, 学士を学位 として位置付けるのが適当である」(高等教育研究会,1 9 9
1,p. 2 2 )
と提案 している。学士については,従来は学校教育法上, 「大学に
4
年以上在学 し,一定の試験 を受け, これに合 格 した者は学士 と称す ることがで きる。 」
(第63
粂) と規定 され, これを受けた大学設置基準では「大学は,‑‑卒業の要件を備 えた者に対 しては,‑‑・その履修 した専攻に応 じた学士を称せ しめ ることがで きる
。
」(第34粂) としていた。 これに対 して博士,修士については,同法で 「大学院を 置 く大学は,監督庁 の定めるところに よ り, 博士,修士その他の学位を授与す ることが で き る」I
(第68条) とされ,授与の対 象者や要件等 の規定は文部省令である学位規則に定め られていた。つ
〜
ま り博士,修士は学位であるが,学士は学位ではなか った といえることになる。
ちなみに, こ うした ことか ら学士は 「称号」 で,修士,博士は 「称号ではな くて学位」であると い う言 い方が されてきた。 この表現には以下に示す よ うに問題があるのだが, こ うした言い方の元 の少な くとも一端が 『東京帝国大学五十年史』 の記述にあることは確かである。 明治
2 0 ( 1 8 8 8 )
年 の学位令公布に よって 「学位 ‑博士及大博士 ノ二等 トス」 と規定 され,学位を博士のこととして, 学士が学位の位置づけか ら外 されたが,同年史ではその事の説明として●●●● ●●■ ●●●●●●●,
J学位 の資格 を 失 え る『学士』 の処分に関 しては,之を称号 (原本は稀号) と為す こととし.即 ち分科大学卒業生は其のL人 専攻せ るに従い,某学士 と称す ることと為 し」 (I 傍点は引用者)(東京帝国大学
,1 9 3 2 ,p. 1 0 5 2 )
lと 表現 している。1‑ 1しか し,称号 とは一般的な名詞であ り,学位 も称号の一種である。例えば標準的 な国語辞典 と目 され る 『広辞苑』 (第
4
版,1 9 9 1
年)で も,学位は 「独創的な研究に よって学術文化に寄与 した者●
●
に授与 される称号
」
(傍点に引用者) と記述 されている。 『広辞苑』では, この後に 「旧制の博士 号は論文を提出 し,文部大臣の認可を経て大学において授与。新制の学位は大学院を置 く大学が授 与 し,修士 と博士 とがある」 との記述がつづいてお り,平成3
年以前の状況を説 明 した ものである が, 学位が称号の一種であることは言 い当てている。 なお, 『広辞苑』 に よれば, 「称号」 とは「呼び名。名称。多 く,一定の身分 ・資格を示す ものにい う」 とある。つま り,博士,修士は学位 とい う称号であ り,従来の学士は 「学位外の称号」であったわけで,新登場 の準学士について も,
「学位外の称号」の表現が適切な言い方 といえ よ う。
さて,先に引用 した大学審議会の答申に も示 されているように,国際的には学士 レベルの称号は 当然学位の位置にある。例えば,定評のある高等教育国際百科辞典である
A・S
・ノー レス( Kno wl e s )
編集代表のTheI nt e r nat i o nalEnc yc l o pe di a o f m ghe rEduc at i o 7
1の用語解説に よれば,学位( de gr e e )
は 「学習課程( p r o g r a m o fs t udi e s )
を修了 した こと, またはそ うした学習に よって獲 得 され るのと同等の能力を達成 した ことの公式 の認定 として,大学( c o l l e geo runi ve r s i t y )
に よって個人に対 して授与 され る称号
( t i t l e )
O学位には第一学位( f i r s tde gr e e )
,第一専門職学位( f i r s t pr o f e s s i o na lde gr e e )
,修士学位( mas t e r ' sde gr e e )
,博士 または同等学位(doc t or a lo re qui va l e nt de gr e e )
がある」 ( Kno wl e s ,1 9 7 7a,p. 3 4 2 a)
と定義 している。 また,同 じ辞典の学位の項の記述 では学位( a c ade mi cde gr e e )
を 「学習課程( c o ur s eo fs t udy)
を修了 した, または研究上,専門 職業上の達成を果た した個人に対 し,通常は大学か ら授与 され る称号であ り,伝統的には英語圏の 名称で言えば学士( bac he l or )
, 修士( ma s t e r )
, 博士( doc t or )
学位の高等教育上の3
段階がある
。 」 ( Knowl e s ,1 9 7 7 b,p. 1 2 3 0)
と説明 されている。一般的な辞典,例えば 『ウェブスター新世界辞典』 (第
3
カ レッジ版)( We bs t e r ,1 9 9 4 )
を引い てみ ると,教育界の用語 としてデ グ リー( de gr e e )
は 「要件 とされる学習課程を修了 した学生に, または阜越 した人物に名誉 として,大学が授与す る地位( r a nk) 」
と説 明されてお り, 大学院 レベ ルの称号に限 るものではないことが示 されている。ちなみに, ヲテソ語 の
b ac c al ar i s
に由来す るバチ ェラー( ba c he l o r )
の語を第‑学位に用いてい るのはア メリカやイギ リスなどの英語圏の国 々であ り, フランスでは これ と同語源の称号であるバ カ pレア( ba c c a l a ur e at )
は中等学校 の修了資格に用いて, 節‑学位には 1)サ ンス( l i c e nc e )
が当 て られ る。 また, ドイツではデ ィブローム( Di pl om)
な どが当て られ る。 (Une s c o ,1 9 8 2 ,J o ne n
皮
Roc he ,1 9 8 2 )
とにか く, 日本の学士に当たる称号が,国際的には学位に位置づけ られていることは,間違いな い。j 1
2 .
学位の意義の拡 大さて, こ うして学士が学位の列に加 え られた ことの意義は何か。 これは,学位 とは何かがはっき りしない以上,見えて こない。従来か ら学位 とは何かの議論はあったはずであるが, 「博士 と修士 は学位で,学士は単なる称号だ」 とい う言い方で終わ って しまっていたのである0
.̲: .、
学位 とは何かについての法令上 の定義はないが,旧学位規則では,博士,修士それぞれの授与対 i
象を,博士については 「専攻分野について,研究者 として 自立 して研究活動を行い,又はその他の
■
高度に専門的な業務に従事す るに必要な高度 の研究能力及びその基礎 となる豊かな学識を有する者 i
に授与す る」,修士については 「広 い視野に立 って清深な学識を修め, 専攻分野における研究能力 又は高度 な専門性を要する職業等に必要な高度の能力を有する者に授与す るもの とする」 と成定 し てお り,大学院設置基準では こ うした研究能力及び学識を養いあるいは授け ることを博士及び修士 課程 の 目的 と規定 していた。学位規則上 この規定は,学位授与の対 象者規定を法定 して博士,修士 の授与対 象者を大学院の課程 の修了者等 とした ことに伴い削除 されたが,大学院設置基準上の規定 に変化はない。
言 い換えると, これ まで学位 とされて きた ものは,博士については研究者 と研究能力を持つ専門 的業務従事者 の,修士正っいては研究者あるいは高度専門職者の称号に限 られて きた ことになるO もっとも新制 の大学院制度が発足 した当初は博士,修士 とも研究者の称号 も考 えられてお り,修士 の対 象者には っき りと高度専門職者が加え られたのは昭和
4 9
年の大学院設置基準制定か らである。‑
4 7 ‑また博士に研究能力を持つ専門的業務従事者が加えられたのは平成元年の基準改正か ら,つま り, 今回の学位制度改革の先駆け としての処置であった。先に示 した 『広辞苑』の学位の定義が, 「独 創的な研究に よって学術文化に寄与 した者に授与 され る称号」 となっているのほ こうした事情を反 映 している。つま り, これ までは学位を研究者の称号 と考えるのが一般的な感覚だ ったのである。
では,学士が学位に位置付け られた とい うことは,学士が研究者の称号になったか とい うと,そ うではない。学位 とい う言葉が示す範囲が広が ったのである。上記のように,.すでに学位の対 象は 高度専門職者あるいは研究能力を持つ専門的業務従事者に拡大 していたが,大学卒業者 もまた学位 の範噂に加 えられたのである。 この大学卒業者に関 しては,大学院の場合 と違い修士課程,博士課 程相当す る学士課程 とい う言い方はな く, したが って修士,博士のように設置基準上の課程の 目的 か らその性格を判断す るとい うや り方は取れない。ただ し,大学設置基準では大学は 「学部及び学 科又は課程等の教育上の 目的を達成す るために必要な授業科 目を開設 し,体系的に教育課程を編成 す るもの」(第19条第 1項)とし,この教育課程を 「学部等の専攻に係 る専門の学芸を教授するとと
l\
もに,幅広 く深い教養及び総合的な判断力を培い,豊かな人間性を滴養するよう適切に配慮 した」
(同第 2項) もの と規定 しているか ら,大学卒業者 とはこうした教育課程を終えた者 とい うことに なる。 この規定では専門の学芸 とは何か等 あいまいな点が残 るが, ここでは とにか く学士が研究者 の称号でないことだけは確かである。
さらに,博士 とい う学位に して も,それを研究者の学位に限 ってきたのは,近代 日本的な現象で ある.そ もそ も博士に当たる学位 とされ る ドクターの語源であるラテン語の
do c t o rは, その動詞
のdo c e oが t e a c h
すなわち教えることを意味す るように,t e a c he r
っま り教師を意味 し, 大学 の 教師資格の獲得者の称号 として生 まれた。 そ して,そ もそ も大学が発生 した西欧中世には近代的な 意味での研究者( r e s e a r c he r )
はお らず, ドクター学位は法曹,神職乳 医師の学位, つま り高度I 専門職分野の学位であった。 ドクター学位が研究者の学位 として確立 したのは1 9
世紀の ドイツ大学 に置いてであ り,これは ドクター の 中 で も哲学部の出 した学位であった こ とか らDo kt o rde s Phi l o s ophi e ( Phi l o s 呼hi aeDo c t or )と呼ばれた。 この学位は留学生を通 じてアメt
)カに移植 され, 後述のようにアメ1)カでは分野に限 らず研究者学位がほとんどすべてDoc t oro fPhi l o s o phy
っまり
Ph.D.
と呼ばれるようになった。 この ように,国際的にみれば,研究者の称号 としての ドクタ ーは,専門職あるいは教師 としての ドクターに対 してむ しろ新参者である。現在で も,巷で ドクタI ーと言えば研究者 より医師を思い浮かべ るほ うが一般的である。I( Kno wl e s ,1 9 7 7 b,p. 1 2 3 0 ,Ee l l s . 1 9 63 ,pp. 2 ‑ 3 ,pp. 2 0 ‑ 21 )
アメリカの場合について,連邦教育省の統計に用いられ て い る定義でみてみると, 博 士 学 位
( doc t o r ' sde gr e e )
は 「博士の称号を もつ業績学位( ea r ne dde gr e e ) 。 TheDoc t o ro fPhi l o s o phy
学位( Ph.D. )
は最高位の学問学位( ac a de mi cde gr e e )
であ り, 特定の知識分野の修得 と学問研 究の遂行能力の証明を要件 とする。他の博士は,教育( Ed.D.
), 音楽芸術( D. M. A.
),商業経営( D, B. M.
),工学( D.Eng
りD. E. S. )
の ような専門職分野( pr o f e s s i o na lf i e l d)
での専門的な履 修要件を満た した ものに授与される。学問分野で も専門職分野で も多 くの博士学位の取得には修士 学位が前提要件 とされる。M. D.
やD. D. S.
のような第一専門職学位( f i r s t ・ pr o f e s s i o na lde gr e e)
は この項には入 らない
」( U. S.Dpa r t me nto fEduc a t i on,1 9 9 3 ,p. 4 7 2 ‑ 4 2 3 )
とあるように,博士に 研究 と専門職の2
分野があることを示 している。なお, ここで 「業績学位」( e a r ne dde gr e e )
とこ とわ っているのほ,学位には学習課程 の修了や学業 ・研究の達成に対 して与えられる業績学位の他 に,種 々の功績に対 して頗賞 として与え られ る名誉学位( hono r a r yde gr e e )
があるためである。また, ここで言われている第‑専門職学位の語義についてほっ ぎの
「 3 .
学問学位 と専門職学位」で 説 明す る。ではなぜ 日本では博士は研究者の学位 とだけ考えられてきたのだろ うか。それには, 日本では研 究者 としての ドクターの位置が確立 してか ら近代大学制度に コ ミットした こと,そ もそ も欧米の学 位制度を十分に研究 した上で学位制度を作 ったわけではなか ったこと, 日本の大学 と国家あるいは 社会 との関係,特に社会における職業 のあ り方 とのか らみあいなどが理 由 として考え られるが,今
i
後の検討か必要な点である。
なお,学位 としての博士を 「は くし」 と読 ますに しても,その語源が律令制下の官名である 「は かせ」に由来 し,そ うした語感か らか,今 日で も,戦前か らの 「末は博士か大臣か」の言い方に代 表 され るように政界の大臣に並ぶ学会の碩学泰斗のイメージと払拭できないでいる。 『広辞苑』で
I
症, これを 「律令時代の官名。大学寮に紀伝 ・明経 ・明法 ・算 ・音 ・書,陰陽寮に陰陽 ・暦 ・天文i
・漏刻,典薬寮に医 ・針 ・按摩などの博士があって,それぞれの学業を教授 し,学生の課試などを L
つか さどった」 としている。小中村清矩の 『∫ † 官制制度沿革史』に よれば,「大宝令官制」(実際は養 老令)の 「太政官」の章, 「中務省/陰陽寮」 の項で, 「陰陽博士は陰陽生に此道を教授す暦博士
〜〜 ′
は毎年ゐ暦を造 り又暦生に教持す天文博士は天文 (7 今の星学な り)を候ひ天変あれば密奏す又天文 生を教授す漏由博士は漏起の (支那 よ り伝来せ る物 といへ り)時辰器を審察 し守辰丁を して昼夜十し 二時に鼓を撃 ち四十八刻に鐘を打た しむ」 とあ り, また 「式部省/大学寮」の項には, 「l 被接官の 博士,助敦は経業を教授 し,学生を課試す‑‑・又音博士,書博士,算博士は各道を教授せ り・‑・・後 年大学に明経 (経籍学)紀伝 (歴史学)明法 (法律学)算の四道に分かちて教習せ り」,「宮内省/
・ I
典薬寮」の項に 「医師は勅命を以て貴顕の人を診察 し医博士は医生を教授す‑‑針博士は針生を教 授す・‑‑披摩博士は按摩生を教授す‑‑呪禁博士は呪禁生を教授す」(小中村
,1 9 3 5,p. 4 5 ‑ 6 8 )
と 記述 されている。このように,博士が律令制下の官職に由来す る語感か らす ると,博士を碩学泰斗 とみる見方は, 正 しと言え無 くもな く,西欧的な大学数師資格の取得者の意味か ら生 まれた ドクターと同義に使 う には無理があった ように思えるのである。 しか し,律令制下で も博士は主 として教授職の意味であ り, また,いまさら ドクターの訳に博士以外の語を当てわけにもいかないであろ うか ら,博士の語事 感を ドクタ」に近づける努力のほ うが現実的な方策 といえ よう。
1
修士に当たるマスター学位について も, もともとは ドクターと同義だ った とされ
( Ee l l s ,1 9 6 3
,p. 72)
, 当然研究者の領域に限 られた ものではな く, 専門職者の称号 として広 く使われている。さらにいえは,マスターの とい う言葉はギル ドの親方,船長,ただ主人 といった意味で, ドクター以 上に大学外の世界で使われる言葉である。
このように,学位の幅を研究か ら専門職へ広げ,博士,修士のみか ら学士 まで拡張することは,
‑ 4 9 ‑
学位の考 え方をデ ブ])‑本来のあ り方に近づける処置であった といえよう。
3.学 問学位 と専門職学位
さらに,今回の大学設置基準のいわゆる大綱化で,学部の教育課程の編成が各大学の自主性にま か され るよ うになった。 こ うしたことに対応 して,学位については,学士,修士,博士 ごとの種塀 が廃 され,その代わ り各大学において 「適当な専政分野の名称を付記するもの」 とされたのである。
つ ま り,大学は教育課程を設計 し,その課程にふ さわ しい専攻分野名を付記 した学位を設定す るこ ととな ったのである。
ここで種類 とは,主 として学部 ・研究科の名称によっていた専門分野別の種類のことを言 ってい る。従来の学位規則の第 2条で, 「学位は,博士及び修士 とす る。 2 博士及び修士の唾類は,そ れぞれ別表第
1
及び別表第2
のとお りとす る。」 として, 別表には博士については学術博士以下, 文学,教育学,神学,社会学,法学,政治学,経済学,商学,経営学,理学,医学,歯学,薬学,I
保健学,工学,農学,獣医学,水産学の
1 9
種類が,修士については学術修士以下,文学,教育学, I)神学,社会学,国際学,法学,政治学,行政学,経防学,商学,経営学,理学,医科学,歯科学, 薬学,看護学,保健学,衛生学,栄養学,工学,芸術工学,商船学,農学,水産学,家政学,芸術 学,体育学の
2 8
種類が定め られていた。 また,学士については,大学設置基準の第3 4
条で, 「‑‑・I
別表第 4に定める学士の種類の うち,その履修 した専攻に応 じた学士を称せ しめることがで きる」〜 として,別表 に文学士以T;教育,礼 社会,教養,学芸,,社会科,法,政治,経済,商,経営,
◆
理,医,歯,秦,看護,保健,鋤灸,栄養,工,芸術工,商船,顔,獣医,水産,Lil家政,芸術,体 育 の各学士
2 9
種類が定め られていた。これを, こ うした種類を設けず,ただ博士,修士,学士 とし, 「大学‑‑は,学位を授与す るに 当たっては,適切な専攻分野の名称を付記す るものとす る」 (学位規則第
1 0
粂) としたのが今回の 処置であった。 これには,頭に 「○○学」 と冠 した学位の種類あま り増やすのは好 ま しくない,悼 士,修士,学士それぞれに同質性を強調 したい, さらには文学博士等一部の学位は碩学泰斗 とのイ メージが強 く博士課程の修了時点では実質上授与 されていないので改名の用がある等の判断があっ た ようである。 (大学審議会答申 「学位制度の見直 し及び大学院の評価について」)
(高等教育研究 会,1 9 91 ,p. 4 3 )
, こうして, どのような専攻分野の名称を付記す るかは大学の自主的な判断にまかされることにな ったOその後,名称付記がどのような状況にあるかについては学位授与横樺が平成
6
年度現在でア ンケー ト調査 した ものがある. (青野正 巳,1 9 9 4
年,pp.1 1 7 ‑1 5 5 )
このアンケー トの回収率は大学 院のみの大学を除 く全大学の9 5
パーセン ト,修士課程を置 く大学の9 5
パーセソ ト,博士課程を置 く 大学の91
パーセソ トであった. これによると,博士に付記 された専政分野名は1 2 6
種額,修士は1 8 0
種類,学士は2 5 1
種類 と,改正前のそれぞれの学位の種類 と比べ ると大幅に増えている。 これは, 従来は学位名になかった学部名が加わった り (例,音楽), 学科や専攻の名称 (例,英文学)が付 記 されるようになったためである。さて,教育課程の目的を明確に して,その日的に応 じた学位を用意するとなると問題になるのは,
学問教育 と職業教育の関係である。国際的には学位は研究者だけではな く専門職業人 の称号で もあ ること, またその レベルは学士,準学士を含む ものであ り, 日本 の学位の位置付け もこの方向を取 り入れた方向に向か ってい ることは これ までにみて きた とお りであるが, 日本の学位は こ うした多 様 な機能を反映す る形にはな っていない。教育課程 自体が研究者養成 のものなのか,職業人養成の ものなのか, また学問教育 なのか職業教育 なのかの区別が判然 とせず,学位の表示をみて も学位の 性格 はわか らない。
この点についてア メ リカの学位についてみてみ よ う。 ア メ リカの大学教育はアカデ ミック(学問) 教育 とプロフェ ッシ ョナル (専門職)教育 に区別 され る。 アカデ ミックとい う言葉は, 「大学 の」
とい う意味で使われ る場合 もあるが, ここでは プロフェッシ ョナル,あるいはボケ‑シ ョナル と区 別 した学問的 とい う意味 で使 う例に よる。専門職教育は学問的知識 と実践知識 ・技術の総合 とされ てお り,学問的教育の 目的が認識 その ものにあ るとすれば,専門職教育の 目的は高度な専門的職業 に従事す る能力にある。個 々の プログラム (教育課程)は, この どちらかをは っき りさせた上で設 計 され,それに応 じた学位が設定 され ている。
ア メ リカのア クレデ ィテ‑シ ョソ協会の1つである北中部地区基準協会の認定では,大学 の教育 課程 の種塀を特畠 して審査が行われ るが,その基本 タイ プとされ るものを示 したのが,表1である。
l
表1 北中部地区基準協会の認定教育課程の種類
1
修了時に資格証明書や卒業証書が授与される課程 (この課程では学位は与えられない)を指し,加 盟校認定証には了 ̀Certificat(es","Diplomas''などと表示されるo こうした課程は,学部 レベルのも
のに限られ,大串院 レベルでは,こうした証書のみを出す課程を認めてはいない。
A/a
人文学系,理学系の準学士 (一般に,A. A.
,A. S.
を意味する)課程を指 し,l加盟校認定証には,〟A s s oc
主i a t e' s( a r t sa nds c i e nc e sc ur r ic ul a )"
と表示される。A/v
職業技術系の準学士 (一般に,A. A.
,A. S
,以外の全ての準学士を意味する)課程を指 し,加盟牧 認定証には," A s s oc i a t c ' S( voc a t i ona l ・ t e c hni c a lc ur r i c u la )"
と表示される。B/ a
人文学系,理学系の学士 (一般に.B.A・,B・ S
・を意味する) 課程を指 し, 加盟校認 定 証 に は" Ba c he l or ' 亨( a r t sa nds c i e nc e sc ur r i c u la )"
と表示される。B/ p
専門職系学士'(一般に,B. A
,,B. S.
以外の全ての学士を意味する) 課程を指し,加盟校認定証に は," Ba c he l or ' S( pr of e s s i ona le ur r i c ul a )"
と表示される。M/ a
人文学系,理学系の修士 (一般に,M. A
,,M. S.
を意味する) 課程を指し, 加盟校認定証には,・Ma s t e r ' S( a r t sa nds c i e nc e sc ur r ic ul a ) "
と表示される。M/ p
専門職修士 (一般に,M.
A,,M. S.
以外の全ての修士を意味する) 課程を指し, 加盟校認定証に は," Mas t e r ' S( pr of e s s i ona lc ur r i c ul a ) "
と表示される。S
スペシャリス ト的な資格や学位 (一般に,教育学系準博士( Educ at i onSpe c i a l
is
t)を意味する)の 課程を指し,加盟校認定証には,H Spe c i a l i s t "
と表示される。D/
ト 研究職の博士 (一般に,Ph・ D,Ed・ D
・などを意味する)課程を指し,加盟校認定証には,"Doc t or ' S ( r e s e a r チ c hc ur r i c ul a )"
と表示される。D/ p
専門職の博士 (一般に,M. D.
,∫. D. ,D. Mi n.
など実務系の博士を意味する) 課程を指 し, 加盟 l校認定証には,HDoc t or ' S( pr o f e s s i ona l c ur r i c u la )'
'と表示される。(大学基準協会,1
9 9 5 ,p. 4 6 ‑ 4 7 )
この分規では, ア メ リカの大学 の教育課程が学問的な (訳文 に従 えば 「人文学系,理学系」
)
課程〔 A/a,ち/a,M/a,D/r 〕
と専門職的な (専門職系)課程〔 A/
Y,ち/p,M/p,S,D/p〕
に区別 され, 学位 ・称号の名称はそれに対応す るよ うにな っていることが示唆 されている。‑ 5 1‑
次に示すのは, カ リフォルニア大学バークレー校のカタログに示 された学問学位 と専門職学位の 違 いの説明である
( Be r ke l e y,1 9 9 3 ,p. 50) 0
大学院学位は大 きくは次の 2種塀に分類 され る。
(1)専門職
( Pr o f e s s i o na l )
‑専門職分野の総合的知識 の 熟達及び当該分野の重要課題の系 統立て と調査能力の認定のもとに,専門職学部に よって授与 される学位( 2 )
学問的( Ac a de mi c )
‑特定の学問分野の広い幅 の 関連科 目の能力,1
つ以上の外国語 の修得及び当該分野に重要な貢献をする研究能力の認定の も と に,学問学科( ac ade mi c de pa r t me nt )
及び一部の専門職学部に よって授与 される学位。狭義の大学院学位の意味は,抽象的には以上のようなものであるが,バークレーのカタログの説 明にもあるよ うに,具体的な形は学部の種類 と結びついている。
アメリカの大学の学部 (大学院 と区別する意味での学部ではな く,学術分野別の組織を指す)は, 学芸 ・科学学部
( Fac ul t y/ Sc hoo lo fAr t sa ndSc i e nc e )
等の学問学部 と法学,医学,工学,農学, 経営学等のプロフェッショナル ・スクール (専門職学部)か らなる。学問学部の専門教育課程は専t ㌔ 門化 した学問教育を 目的 とす るもので,専門職学部の実施す る課程は専門職教育を 目指す ものであヽ しIi
る。学問学部は人文学,社会科学∴ 自然科学の専門教育 とともに大学全体の前期課程,いわゆる一 般教育 (正 しい訳は普通教育)を担当す る。専門職学部は通常は一般教育を学問学部にまかせ,当 該専門職の専門教育のみを担当す るが,前期課程を自ら担当 した り,大学全体の一般教育に協力すI ることもある。専門教育の課程には学士 ・準学士 (
ア
ンダーグヲデュェ‑ ト) レベル と大学院 (グ ラデュエー り レベルがあ り,専門職学部に よっては大学院 レベルの教育 しか実施 しないものもある。 '
日本で も,医学部や工学部の一部学科等のように,特定の学部の卒業者に特定の職業に付 くため の免許資格又は免許試験の受験資格が与 えられる。 しか しこれ らの学部を専門職学部 として学問学 部 とことさら区別することはない。専門職的な学部で も学問的教育研究のためにあ り,結果 として 免許に結びつ くとい うスタソスを取 っている。専門教育,専門課程 とい う概念は存在するが, これ は一般教育,教養課程に対 して言われ るのであって,学問的教育 と専門職教育を区別す る意味のも のではない。
アメリカの専門職の場合 も法制度化 された もの と,そ うでないものがある。法制度化 された もの は,当該分野の専門職学位が,州の免許資格あるいは免許試験の受験資格 となる。医師,法曹等が この例である。 また専門職学位は当該の専門職団体‑の加入資格 とされるので,法制度化 された専 門職ではない場合で も団体加入権 としての意味を もつ。 また,商業経営
( bus i ne s sadmi ni s t r a t i o n)
のM. ち. A.
学位のように特に当該の専門職団体が存在す るわけではないが, 企業内での特定 ポストへの採用 ・昇進資格 として機能する専門職学位 もある。
専門職学位には第一専門職学位 とい う概念がある。 これは当該専門職に付 くためには必ず取得 し ていなければならない基礎学位であ り,それ無 しにはた とえ上級の専門職学位を取 っていて も,実 務にはつけない種塀の学位を指 している。
‑5 2‑
ただ し,連邦教育省教育 (統計センター
( NCES) )
の 『教育統計要覧』
で 「第‑専門職学位」として扱われているのは,以下の定義に よるものであ り,その他の第一専門職学位は特に断 り無 く 学士,修士,博士に分析 されている。 「所定の専門職につ くための学習要件の修了 と,学士号に通 常要求 され る以上の専門技能水準の両方を意味す る学位。 この学位は,通常は少な くとも
2
学年分 の大学 レベルの準備学習 と,準備学習 と専門の課程を合わせて少な くとも6
学年分 の学習を修了要 件 とす る教育課程を基礎に与え られ る.NCES
の定義に よれば,節‑専門職学位は歯科学( D. D. S.
,D. M. D. )
,医学( M. D.
),検限( 0. D.
), 整骨治療医学( D. 0. ) .
薬学( D. p九a r
.),足痛医学( D.
P. M.
),獣医学( D. Ⅴ. M.
),脊椎矯正( D. C. ,D. C. M.
),法学( ∫ . D.
),神職( M. Di v. ,M.
H.L.) の分野で授与 され る」
(U.S.De pa r t me nto fEduc a t i o n,1 9 9 3 ,p. 4 7 4 )
。 これ らの学位は,名称は 博士又は修士であるが,別扱いさ れ て い る。表 2には, アメ リカ教育協議会の 『アメ ))カ大学総 覧』
の説明を もとに,専門分野 ごとの第一専門職学位の レベル (名称)を 示 し た。( AEC,1 9 9 2 . pp. 4 9 ‑ 1 1 4 )
表
2
分野別の第‑専門職学位○博士のみ,または主として博士
医学,歯科医学,獣医学,検眼,接骨治療,足病医学,脊椎矯正,法曹,臨床心理学
○修士のみまたは主として修士
‡神職,医療サ‑ビス経営,公衆衛生, 1)‑t='1)チ‑ショソ・カウソセ1)グ,言語治療,図書館
○修士または学士 経営,教育
○学士のみ,または主として学士
▲工学,建築,建設,景観建築,薬学,食餌療法,林学,看護,物理療法,社会福祉,家政学,ジャー ナリズム,美術,音楽
なお,専門分野 と学位 の種類 の関係については,拙稿 「アメリカにおける学位 と専攻分野の関係 について
」(
『学位研究』第 1号)や拙著 『現代学校論‑ アメリカ高等教育の メカニズムー』 を参照していただけ ると幸いである。
また;表
3
には,アメ I)カの年間の学位授与者数について示 した。 この ように, アメ t)カでは卒 業者 ・修了者数ではな く,学位の取得数が統計になる。 なお, 「専門職」は,上記の説明の連邦教 育省統 計上 の第一専門職学位である。 また,専門職 と学問の分野区分は,原本にはな く, アメ リカ で一般的に用 い られている区分に従 って筆者が加えた ものである。この表でわか るように,学士では学問分野
4 0
万7
千件に対 して専門職分野7 2
万3
千件で専門職分 野 の授与数が学問分野の1 . 8
倍 なのに対 して,修士では学問が5
万5
千件に対 して専門職が2 9
万4
千件 と実に5. 4
倍になる。学問的分野 の修士の件数は, 「専門職」の7
万4
千件に も及ばない。 こ れは,学問分野の学士取得者の多 くが進学す る場合,学問分野の大学院の課程に進むのでほな く, 専門職修士,あるいは 「専門職」 の課程に進学することと関係 している。こ うしてア メ リカの学位の状況を見て くると, 日本の学位の ように学問的学位 と専門職学位の区 別 をは っき りさせないままに大学院 レベルの課程を拡大 し,学位授与者数を増やす ことには,十分 な検討 と計画 の必要性を感 じる。 また,細かな点では, 日本の医学部や歯学部など
6
年制の課程の‑ 53 ‑
表 3
分野別学位授与数( 1 9 91 ‑1 9 9 2
年度)準学士 学 士 修 士, 「専F職
」
博 士<専門職分野>
脊椎矯正
歯学 法律 医学検眼
整骨療法 薬学足治療 ・足医学 神学
獣医学
その他の 「専門職」
農学 ・自然資源 建築 ・建築関連課程 商業 (ビジネス)経営
コミュニケーション コ ミュニケ‑ショ・/技術 コンピュータ ・情報科学 教育
工学 工学関連技術 保健専門職 家政学 法律 ・法研究 図書館学
公園 ・1)ク1)エーシ ョン レジャー ・健康研究 精密生産業 防護サービス 公経営 ・公サービス
ROTC
・軍事技術 神学研究運輸 ・物資輸送 視覚 ・実演芸術
5 , 2 51 1 5, 1 2 4 4 4 3 8, 75 3 1 0 2, 2 2 7 2 5 6, 60 3 1 , 88 6 5 4, 2 5 7 1 , 79 4 27 0 9, 2 90 24, 5 5 7
10, 2 6 7 1 0 8, 00 6 2, 6 85 61 , 2 0 6 3 5, 8 61 1 6, 3 3 5 79, 4 5 3 61 , 7 2 0 6, 4 3 6 1 4, 8 9 8 7, 0 5 3 2, 1 4 4 1 0 3 9 7 6 2 0 8, 4 4 6 9, 0 0 5 3 7 8 1 5, 1 1 7 1 8, 8 5 5 3, 1 6 2 1 5, 9 8 7 1 72 1 8 4 49 6 4, 7 2 9 2, 41 8 3, 5 9 8
ll , 8 8 8 4 6, 5 2 2
3, 73 5 3, 6 4 0 8 4, 64 2 4, 1 8 0 28 4 9, 5 3 0 9 2, 66 8 24, 9 8 3 99 4 2 3, 06 5 2, 41 2 2, 3 69 4, 8 9 3 1 , 3 5 8 0 1 , 29 4 1 9, 2 4 3 0 5, 1 8 5 3 8 5 9, 35 3
1 , 21 4 1 3 2 1 , 2 4 2 25 2 3 7 7 2 6, 8 6 4 5, 4 8 8 1 1 1 , 6 61 2 9 3 6 8 5 0 61 0 24 4 3 2 0 1 , 2 5 9 0 9 0 6 2, 6 9 4
3, 5 9 3 3 8, 8 4 8 1 5, 2 4 3 1 , 2 3 2 1 , 3 2 6 1 , 3 3 9 5 0 4 5, 2 51 2, 04 4 2, 0 7 2
専門職分野計
3 05, 62 7 72 3, 1 1 9 2 9 4, 1 6 8 20, 7 3 2
<学問分野>
地域 ・民族 ・文化研究 生物/生命科学 英語 ・英文学 外国語 ・外国文学
自由/普通学 数学
多元/学際研究 哲学 ・宗教 物理科学 心理学 社会科学 ・歴史
29 5, 3 42 1 , 3 61 4 2, 9 41 1 , 01 9 5 4, 9 51 4 3 3 1 3, 9 0 3 1 5 4, 5 9 4 32, 1 74 7 4 4 1 4, 7 83 7, 8 41 20, 6 4 7 6 0 7, 5 26 2, 0 6 6 1 6, 9 6 0 1 , 2 0 9 63, 51 3 3, 1 6 0 1 3 3, 9 7 4
1 , 38 5 4, 785 7, 45 0 2, 9 2 6 2, 3 9 4 4, 01 1 2, 1 2 6 1, 1 4 6 5, 3 74 1 0, 21 5 1 2, 7 0 2
1 5 5 4, 2 4 3 1 , 2 7 3 8 5 0 6 7 1 , 0 8 2 2 31 4 7 5 4, 3 91 3, 3 7 3 3, 21 8
学門分野計1 7 2, 51 6 4 0 6, 71 4 5 4, 51 4 1 9, 3 5 8
その他 ・分煩不能2 6, 0 8 8 6, 7 20 4, 1 5 6 5 6 9
全分野計5 0 4, 2 31 1 , 1 3 6, 5 5 3 3 5 2, 8 3 8 7 4, 1 4 6 4 0, 6 5 9
( TJ l eCh r o ni c l eo fHi gh e rEdu c a t 1 ‑ o n.Al ma na c ,1 9 9 4 )
4‑
卒業者 の学位が学士のままでいいのかな ど,学位 と課程の水準の対応関係など考えなければな らな い問題がい くつ もあることに気づ く。
4 .
「その他の学位」さて,今回の改革で,学位の幅は広が った ものに,逆に学校教育法の上で学位は博士,修士,学 士 の こととされ, 「その他の学位」 の規定が消滅 した。 もちろんこれ まで も学位洗剤には これに関 す る規定が設け られず,実際には 「その他の学位」が授与 され ることはなか ったわけであるが,国 際的な学位制度 の状況をみ るとき, 「その他の学位」 の問題は これで終わ った とは言い切れない。
まず,準学士を ど う扱 うかが問題 になって くる。平成し l
3
年 の大学審議会答申 「I l短期大学教育の改 善について」では, 「諸外国では,短期大学に相 当す る教育機関に担 、ll て称号が授与 されてお り,」(高等教育研究会,1
9 91,p. 9 0)とい う認識を示 しているが,少な くともアメ リカの場合をみ ると,
i連邦教育省の 『教育統計要覧』ゼ学位
( de gr e e )杏,準学士 ( a s s oc i at e )
, 学士( ba c he l or , S )
, 修 士( mas t e r ' S )
,博士( doc t or ' S )
,第一専門職学位( f i r s t ‑ pr of e s s i ona l )
に分類 して扱 っているよう に,準学士 も当然のこととして学位の範囲に入れ ているのである。( U.S.De pa r t me ntofEduc a・
t i on,1 9 93)
‥ 、もっとも,準学士 とい う名称は, ア ソシエー ト
( as s oc i a t e )の訳 とす るとあま り正確な もの とは
言えない。 この不都合は 日本語の 「準」 「学士」 を英語に してみるとア ソシエー ト・バチ ェラーと な り,ア ソシエー トと違 って しま うことか らもわか る。 ア ソシエー ト・デ グ 1)‑の直訳は準学位で あ り, もともとは学士学位に準 じるもの とい うよ りは,学位に準ず るもの とい う意味だ った と思お れ る。その点では, ア ソシエー トの称号は学位に準 じるものであって,学位ではなか った ことにな るが,現在では学位に位置づけ ちれている。 もっともこれをいまさら準士 と訳す ように主張す るわ けではない が, ア ソシエー ト学位の要件は学士学位 の2
分 の1
で あ る か ら, 「準学士」 の意味が「学士に準ず る」 とい う意味だ とす るとあま り適切 な表現 とはいえないことだけは頭に入れておし丁 たほ うが よいか もしれない。
先に示 した よ うに, 連邦教育省の 『教育統計要覧』 は準学士を学位に分類 し て お り, 準学士
( as s oc i at ede gr e e )を 「通常は少な くとも2
年 のフルタイムの (あるいはそれ と同等 の) 大学 レ ベルの学習を要件 とす る,副学士課程( s ub・ もac c a l a ur e at epr ogr am)
の成功裏の修了に対 して授 与 され る学位( de gr e e ) 」
と定義 している。( U.S.De par t me ntofEduc a t i on,1 9 9 3 ,p. 4 71 )ただ
し,一般的な理解を〜『ウェブスター新世界辞典』 で見てみると,)as s oc i a t eの説明は 「
短期大学が 正規 の2
年 コースの修了者に授与す る学位( de gr e e )
または免状 (c e r t i f i c at e ) 」
となってお り,Ba血e l or aofAr t sや Mas t e rof
Ar t s
,あるいはdoc t or at eの同辞典での説明がそれ らを de gr e e
と言い切 っているの と比べて,微妙なニュア ンスの違いがあることを伺わせ る。
「その他の学位」 の問題 としては,国際的には学位の極所が学士,修士,博士あるいは準学士だ けに とどまらない ものである点 も意識 してお く必要がある。 日本の学位や準学士の称号は,英語圏 の学位,特にはア メ ])カのそれを念頭に制度化 されているが,先述のように, フランスでは第‑学 位には リサ ソス
( l i c e nc e )
, ドイツではデ ィブローム( Di pl om)
等 であ り,オランダの大学では第‑ 55 ‑
‑学位は修士 レベルとされ る
doc t o r aa l
で工学,農学ではi r .
,法学ではmr .
,その他でdr s .
の称 号がある (舘,1 9 9 3,p. 41 )
とい った具合に,かならず Lもアメ リカ塾になっているわけではない。また,ア メ リカの場合は,法律に もとづ く全国的な統一制度があるわけではな く,連邦教育省の 統計では明示 されていない工学分野のエ ンジニア
( Engi ne e r )
, 教育分野 のスペ シャ リス ト( Spe ‑ c i a l i s t )
な どの称号が,概ね学位 として社会的に認め られている。 先に示 した北中部地区基準協会の認定におけ る大学の教育課程の種類の表 (表 1)で も, スペ シャ リス トが修士 と博士の間に置か れ, 「資格や学位」 ととい う言い方が されている。
スペ シャ リス トの例 として・甫 フロ リダ大学の場合を示す。
( VSF,1 9 9 3 ,p・ 1 02 )
こ の 大 学 は1 9 5 6
年設立の州立大学で,1 9 9 4
年のカーネギー分類では研究大学 Ⅰに位置づけ られている。 この大 学 の教育学部( Co l l e geof
Educ at i on)
では, 修士 よ り上 の学位課程 として教育 スペ シ ャ リス ト( Ed.S.
),教育博士( Ed.D.
),哲学博士( Ph.D. )
の3
つが開設 されているが,以下は同大学 の /カタログでの
Ed. S.
の説 明である。Educ at i ona lSpe c i a l i s t
(Ed.S. )
:この学位( de gr e e )
は教育管理/指導 とカ リキ ュラム及び 教授法 の分野で, カ リキ ュラム及び教授法のPh. D.
に示 した領域 (成人教育,初等教育,教 育 ガイ ダソス及びカウンセ リング,高等教育,学際研究,数学教育,教育測定及び評価,音楽 教育,読書/言語芸術教育,学校心理学,特殊教育,職業教育) の大部分の専攻に もとづいて 授与 され る。 この学位は修士学位 よ り上 の3 6
単位 (特別 プロジェク ト9
時間を含む)で構成 さ れ,要件には柔軟性がある。 .〔入学要件
〕1 3 ‑1 6
貢を見 よ。 (大学院一般の要件が記載 されている。‑ 引用者)〔特別要件〕
1. もし,学士段階の
GPA3. 0
の要件を満た していない場合は,修士 レベルでGPA
が3. 5 2 .
推薦状3
通3.
アクレデ ィテ‑ショソを受けた大学院*での業績( e a r ne d)
修士学位*学校心理学では この要件は免除
このように, この大学の場合スペ シャ リス トは修士 と博士の間に位置づ く大学院 レベルの資格で, かつ学位 とされている。
しか し,次の ウィスコンシン大学 マジソソ校 の教育学部
( Sc hoolo f
Educ a t i on)
の例では, ス ペ シャリス トは学位( de gr e e )
とはいわず,免状( Ce r t i f i c a t e )
とされている。( UWM,1 9 9 3 ,p.
6 8 )
以下は同学部のカタpグでの,その説 明部分である。教育管理学科
授与学位 :
M.S.i nEduc at i ona lAdmi ni s t r a t i ona ndPh.D.wi t hama j o ri nEduc a t i ona l Admi ni s t r a t i on
免状 (修士後)
( Ce r t i f i c a t e( pos tmas t e r , S ) )‥Spe c i a l i s ti n' Educ a t i ona lAdmi ni s t r at i on
ウィスコンシン公教育省に よって認可 されて( a ppr o ve d)
いる免状には,初等/中間学校校長,中間/中等学校校長,視学,教務主任,特殊教育及び生徒サー ビス主任,学校 ビジネスマ ネージャーがある。
なお,いずれに して もアメ リカのスペ シャ リス トは修士 よ り上 の資格であ り, この点で,新 しく 生 まれた専門士の称号の英訳には注意を要す るところである。
5 .
学位 と大学の関係の強化つ ぎに,今回の学位制度改革が,学位を大学に とって追加的な ものか ら,大学の教育あるいは人 材養成の 目的を示す本質的な もの,不即不離 な存在 として位置づけた とい う点に注 目する。
鍵釆の学校教育法の規定では,学士については, 「大学に
4
年以上在学 し,一定の試験を受け, これに合格 した著は学士 と称す ることがで きる」(第63粂),修士,博士については 「大学院を置 く 大学は,監督庁 の定め るところに よ り,博士,修士その他の学位を授与することがで きる」
(第6 8
粂) とい う具合に 「す るととがで きる」 とい う形で表現 され,あたか も学士の称号や学位の授与が, 大学 に とって付随的な仕事であるかの ような記述になっていた。 これが,新法では 「大学は,大学〜
を卒業 した者に対 し学士 の学位を,大学院の課程を修了 した者に対 し修士又は博士 の学位を授与す るもの とす る」 (第
6 8
条の2)
とい う具合に 「授与す るもの とす る」 とい う表現で,大学が必ず行うべ き行為であ ることが明示 されたのである。
1これは一見す ると些細な変化に思われ るか もしれないが,学位 とい うものの大学制度における位i 置付 汀 と考えると,極めて本質的な変革である。筆者が こ.の点を強調す る理由は,国際的には 「大 学が学位を授与す る」 とい うのではな く, 「学位を授与す るのが大学」だ と考え られているか らで ある。 日本では大学 とい う名称を法律で守 り,他の機関は使えない。そ して,大学でない と学位が■ 出せない とい う尭想を取 っている。 しか し,アメ リカの例でわかるよ うに,学位を出す枚関の名称
i : 1I
は別 に 「大学」 に限 られない。 日本の大学に該当す るア メ 1)カの概念は ユニ,i‑シテ ィー
( uni ‑ ve r s i t y)
とカ レッジ( c o l l e ge )であるが,それ以外に もマサチ ューセ ッツ工科大学( Mas s ac hus e t t s I ns t i t ut eofTec hno l ogy)や カ リフ ォルニア工科大学 ( Ca l i f or ni aI ns t i t ut eo fTe c hnol ogy)の例
が示す ように,インスティチ ュー ト( i ns t i t ut e )
と名乗 る大学 も多い。 アカデ ミー( ac a de my)
,ス クール( s c hool )な どが用い られている場合 もある。 また逆 に大学 とは言えない機関で ち, カ レッ
ジあ るいはユニバーシテ ィーの名称を用いているもの もあ り,名称だけで機関の性格を特定す るこ とliで きない。 ドイ ツで も,直訳すれば高等学級 (Hoc hs c hul
e) とい う名前の機関が博士 までの学 位授与権を持 ってお り, 日本流にいえば大学である。少 な くともア メリカ的な理解でい うかぎ り,機関の名称が問題なのではな く,その機関が学位を 授与す るものか ど うかが問題なのである。 したが って,ア メリカの連邦教育省の統計では,高等教 育を 「準学士,学士又はそれ よ り上 の学位課程
( pr ogr am)を実施 している機関におけ る中等学校
よ り上 の学習」 と定義 した上で, 「大学」 とい う概念 で は な く 「高等教育機関」 ( i ns t i ut i onsof hi ghe re duc at i on)とい う概念が用い られている 。( U.S.De pa r t me nto fEduc at i on,1 993 ,p. 4 7 7)
また,ア メ I)カの高等教育界で最 もよく用い られているカーネギーの 『高等教育機関分析』では,
‑ 5
7
‑前回の
1 9 8 7
年版 までは学位の レベルと大学の性格( mi s s i ons )
を基礎に,大学を①研究大学,②博 士号授与大学 (①,② を合わせて博士号授与機関), ③総合制大学, ④ 自由学芸大学 (リベラルア ーツ ・カ レッジ),⑤ 2年制大学 (ジュニア ・カ レッジ, コ ミュニティー ・カレッジ等),⑥専門職 大学 .専門大学の6
カテ ゴ 1)‑分類 し て き た (①Re s e a r c hUni ve r s i t i e s
, ②Doc t o r a t e ‑ Gr ant i ng Uni ve r s i t i e s
(①,②でDoc t or a t e ‑ Gr a nt i ng l ns t i t ut i ons )
, ③Compr e he ns i ve Uni ve r s i t i e s a nd Col l e ge s
,④Li be r a lAr t sCo l l e ge s
,⑤Two・ Ye a rCommuni t y,J u r ni o rand Te c hni c a lCo l l e ge s
,⑥Pr o f es s i ona lSc hoo l sa ndOt he rSpe c i a l i z e di ns t i t ut i ons )
。 しか し,1 9 9 4
年版では,①研究大学,②博士号授与大学,③修士 (総合制)大学,④学士 (自由学芸)大学,⑤準学士大学,⑥専門職大 学 ・専門大学 (①,② 〔変わ らず〕, ③
Ma s t e r ' S( Compr e he ns i ve )Uni ve r s i t i e sa ndCo l l e ge s
,㊨Bac c a l a ur e at( Li be r a lAr t s )Co l l e ge s
,⑤As s oc i oa t eo fAr t sCo l l e ge s
,⑥ 〔変わ らず〕 )
といっ た具合に, よ り学位の レベルを全面に打ち出 した分額項 目に変 えている。社会的に,学位の t/ベル, 種類で 「大学」をみる風潮が さらに強 まっている証左 とみることが で き よ う。■ ( Ca r ne gi e ,1 9 8 7
,pp. 7 ‑ 8 / Chr oni c l e ,1 9 94 ,p, A1 8)
このように,国際的にみると,学位につなが る課程を姥供 しているか,その機関で学位が取れる か ら問題なのであ って, 「大学は学位を授与することがで きる」 といったスタンスの問題ではない のである。
また, このことは,大学の内部の諸課程についても言える。国際的には,何 とい う名前の教育組 織に属するかではな く,その教育組織の捷供す る教育課程が どの ような学位あるいは資格に結びつ くのが問題である。 日本の大学の中には専攻科 とか別科 とかが置かれる。 また,研究生 とか,聴講 生 といった身分があ り,今時の改革で科 目等履修生が加わ った。 これに対 して,大学の本体 としてI 学部や大学院があることになるが, この間の区別の何に よるのか唆姥であった,俗に,彼者を 「本 科」, 後者の学生を 「正規の学生」 とか呼ぶ場合 もあるが,前者 の組織や学生が正規ではない とい うのも変である。 こ うした酸味 さは,従来 「学部」 と呼んで きた ものを学士学位課程, 「大学院」
と呼んで きた ものを修士学位課程,博士学位課程 と位置付ければは っき りす る。他の組織,他の身 分の学生は学位を取得できる課程には属 していないのである。 しか し,他の教育組織で も,その捷
I
供する課程の 目的を明示 し,修了者には相当の称号を与える必要がある。 こうした発想の違いが, 日本に対する留学の不満要因の 1つになっていることは想像に難 くない。
また, これに関連 して,単位の修得 とい う概念 も整理を してお く必要がある。科 目等履修生につ いては,大学設置基準第
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条では 「大学は,‑‑当該大学の学生以外の者で1
又は複数の授業科 目 を履修する者 (以下 「科 目等履修生」をい う。)に対 して, 単位を与えることがで きる」 と定め ら れているが,文字通 り読む と科 目等履修生が 「当該大学の学生」ではない とい うことになる。 しか し,科 目等履修生の場合 も 「入学金」を修め 「正規」に学んでいるのであるか ら,当該大学の学生 ではない とい うのも変である。それに,科 目等履修生でない学生を ど う呼べばいいのか。 ここで も,「正規学生」 とい う呼び方がでて くるが,正式に履修が認め られている科 目等履修生を正規ではな い とい うのはおか しい。
この混乱は, 「当該大学の学生」 とされ る学生が 「当該大学の学位課程の」学生であるとい う点